薬の疑問

薬の疑問
H23 年 9月号
作成:矢嶋
Q.ビタミン剤、ビタミン含有製剤は全て遮光する?
A.当院採用の注射薬医薬品でビタミン剤及びビタミン含有製剤は、
①アスコルビン酸②ケイツーN 静注③メチコバール注④ビタメジン静注用⑤ネオラミン・マルチ V 注射
用⑥ビーフリード点滴静注用⑦エルネオパ1号、2号
です。これらについて溶解後の光に対する安定性を調べました。
①アスコルビン酸(ビタミン C)
輸液中でビタミンB2注射液と共存すると、B2の光増感反応により酸化分解される。
<保存条件 2000lux,6h>
・アスコルビン酸単独⇒残存率 94%
・ビタミンB2含有⇒残存率 64%
②ケイツーN(ビタミン K)
③メチコバール(ビタミン B12)
調製・保存条件
生食 250mL
で希釈
生食 500mL
で希釈
暗所保存
室内散光下(500lx)
遮光カバー①使用
暗所保存
室内散光下(500lx)
遮光カバー②使用
試験項目
初期値
含量(残存率%)
100
含量(残存率%)
100
含量(残存率%)
100
含量(残存率%)
100
*遮光カバー①:橙色 250mL用、エーザイツールMI9023AKJ
*遮光カバー②:赤色 500mL用、エーザイツールMBL9033DKJ
30分
60分
120分
100.3
67.4
48.3
23.5
100.7
67.3
49.2
24.6
④ビタメジン静注用(ビタミン B1 、ビタミン B6、ビタミン B12)
⑤ネオラミン・マルチ V(総合ビタミン製剤)
⑥ビーフリード(ビタミン B1含有)
⑦エルネオパ1号、2号(総合ビタミン含有)
<結論>
通常、残存率が 90%以上で光に安定とされています。
以上のデータ等より薬剤科では以下のように推奨します。
☆遮光が必要⇒アスコルビン酸(VB2が配合される時)、ケイツーN、ビタメジン、ネオラミン・マ
ルチ V、エルネオパ*1
☆遮光しなくてもよい⇒アスコルビン酸(単独投与時)、ビーフリード
☆メチコバール注射液は遮光カバーをしても、メコバラミンの分解を防ぐことは出来ないことから、
メチコバール注射液の投与は、筋注、静注又は輸液セット側管から短時間に行うのが望ましい。
*1:エルネオパは 24 時間まで室内散乱光下で 90%以上の残存率であるが、総合ビタミンを含有してお
り、メーカー側も遮光を明記している為遮光としています。
参考資料:添付文書、インタビューフォーム
病院薬学、6(4)、251 (1981)
エーザイ株式会社社内資料