5分でわかる「医療情報の標準化」 地域医療連携の拡大、電子カルテや大規模なオーダリングシステムの導入によって 病院間、病院と診療所間、病院内のシステム間での情報交換が問題になっています。 人と人との間で情報を交換する、すなわちコミュニケーションを進めるためには、 同じ言語で話すことや、双方が共通に理解できる単語を使うことなどが必要です。 コンピュータは人間より、頭が固いので、ルールがないとコミュニケーションが進みません。 自分の部門だけ、病院内だけで通じるルールではなく、日本全国で通じるルールによって 問題に対処しませんか? ©2011 ITEC 1 一般的に、情報を利用・共有するためには 平文の情報は、情報共有には不適当。 事情が判っている人が聞けば関連づけできるが、 判っていない人には関連づけが難しい。 まして、コンピュータにはサッパリ理解できない システム稼働事例を平文で表現すると・・・ • 亀田総合研究所のシステムが、京都の音羽会にて稼動している。 • 昭和大学横浜市北部病院は、平成20年に富士通の電子カルテをレベルアップした。 • 大阪の国立循環器センターは、2005年にNECのオーダリングシステムを導入した。 JAHIS/月刊新医療調査より編集 ©2011 ITEC 2 一般的に、情報を利用・共有するためには 平文で表記するのではなく 項目を決めて、記入ルールを決めることが要件 これが標準化の基本 記入ルール 項目は、病院名、所在地、病床数、システム区分、ベンダー名、導入時期とする。 病床数は、一般病床数とする。システム名は、基幹システムとする。… 項目 設定 コード 都道府県 施設名 病床数 システム区分 システム名 ベンダー名 稼動年月 13 東京都 東京医科大学病院 1091 オーダエントリー PC-ORDERING/AD NEC 2004年5月 14 神奈川県 昭和大学横浜市北部病院 661 電子カルテ HOPE/EGMAIN-FX 富士通 2008年5月 22 静岡県 静岡県立総合病院 720 電子カルテ e-カルテ ソフトウェアS 2006年7月 26 京都府 洛和会音羽病院 618 電子カルテ Kai シーメンス亀田/IBM 2000年10月 27 大阪府 国立循環器病センター 640 オーダエントリー PC-ORDERING/AD NEC 2005年9月 JIS コード 県別 一般 病床数 基幹 システム ©2011 ITEC 記入ルール 西暦 3 一般的に、情報を利用・共有するためには 標準化の視点では 共有のルールを定めるとは ■項目や記入ルールの決め事 ・都道府県の欄には、東京都と記入し練馬区と書かない ・病床数の欄には、一般病床数を記入する 交換規約 ■データの決め事 ・都道府県コードはJISのコードを使う 用語・コード ■フォーマットの決め事 ・A4横書き ・日本語 フォーマット ©2011 ITEC 4 医療情報の共有・連携に必要な標準化とは 1.交換規約(プロトコル)の標準化 • 交換するデータ項目 • 氏名、生年月日、検査項目、検査結果 • データ項目毎の記載ルール • 氏名は、姓、名、ミドルネーム • 交換メッセージの形式 • 依頼情報に含む項目、結果情報に含む項目 HL7 DICOM 2.用語・コードの標準化 • 用語 • GAMMA-GTPとγ -GTPの統一 • コード • 医事コードと物品コードの連携 病名 処方 検査 画像 3.フォーマットの標準化 • 画像フォーマット • DICOMフォーマット、JPEG、BMP • 波形フォーマット • 心電図、脳波計 DICOM MFER ©2011 ITEC ICD-10 HOT JLAC10 JJ1017 5 医療情報システムの標準化の背景 システムが大規模化し、かつ多機能となったため 全てのシステムを一社で開発することは不可能となり、 マルチベンダーによるシステム構築と、システム間の接続が必要になった。 システム間接続が拡大し、その費用が増大したため、費用軽減要求が 高まった。 病院完結型医療から地域完結型医療となり、 他院から自院、自院から他院への情報受け渡しが必要になった。 電子化された情報が増大し、システムリプレース時、 情報の継続利用(移行)要求が高まった。 蓄積データの検索、分析、活用の要求が高まった。 etc. ©2011 ITEC 6 マルチベンダー化による接続プログラムの増大 少し以前 X社 検査システム 全てA社製システム 全てA社手順 A社手順 オーダリング 放射線システム A社手順 薬剤システム 医事システム DICOM Y社 給食システム T社 PACS 現在 A社製 オーダリング B社製 C社製 放射線システム 薬剤システム この費用を抑制したい! T社 PACS X社 検査システム A社製 医事システム 接続プログラムの数は、 システムが7つあれば 最悪7×6個の組合わせ分が必要! Y社 給食システム 日本医療情報学会セミナー資料(浜松医科大学 木村通男教授)を参考に編集 ©2011 ITEC 7 医療機関の内外で、情報交換の必然性が高まるが… 地域医療連携のためには、施設間で標準化されたデータが必須 マスタ変換で 無理やり! 例えば同じ薬品でも、部門ごとに名称やコードをつけると 物品管理 名称 マーデン錠 物品コード 406345 オーダリング 名称 塩酸トリヘキシフェニジル 薬品コード 223456 医事会計 名称 塩酸トリヘキシフェニジル錠 薬品コード 40634508 例えば同じ検査でも A病院 名称 γ -GTP B病院 名称 Gamma-GTP 連携困難 検査結果 120 検査結果 110 正常値 6-38 正常値 8-50 検査法が違う 例えば放射線画像でも A病院 CT画像 JPEG2000 B病院 CT画像 DICOMフォーマット A病院 B病院 オーダリング 検査 物品 医事 放射線 ©2011 ITEC γ-GTP=120 GAMMA-GTP=120 JPEG DICOM 検査 放射線 8 推奨する解決策は、保健医療情報分野の厚生労働省標準規格の採用 ©2011 ITEC 9 (別紙) 保健医療情報分野の標準規格として認めるべき規格について 1 厚生労働省標準規格 厚生労働省標準規格は以下の規格等とする。 HS001 医薬品HOT コードマスター HS005 ICD10 対応標準病名マスター HS007 患者診療情報提供書及び電子診療データ提供書(患者への情報提供) HS008 診療情報提供書(電子紹介状) HS009 IHE 統合プロファイル「可搬型医用画像」およびその運用指針 HS010 保健医療情報-医療波形フォーマット-第92001 部:符号化規則 HS011 医療におけるデジタル画像と通信(DICOM) HS012 JAHIS 臨床検査データ交換規約 ※標準規格の称は、医療情報標準化指針(医療情報標準化推進協議会)における名称を使用。 ※規格の詳細については、医療情報標準化推進協議会のホームページを参照すること。http://helics.umin.ac.jp/ 2 厚生労働省標準規格について 医療機関等における医療情報システムの構築・更新に際して、厚生労働省標準規格の実装は、情報が必要時に利用 可能であることを確保する観点から有用であり、地域医療連携や医療安全に資するものである。また、医療機関等にお いて医療情報システムの標準化や相互運用性を確保していく上で必須である。 このため、今後厚生労働省において実施する医療情報システムに関する各種施策や補助事業等においては、厚生労 働省標準規格の実装を踏まえたものとする。 なお、厚生労働省標準規格については、医療機関等に対し、その実装を何ら強制するものではないが、実装によるメリ ットを十分考慮することを求めるものである。 医療機関等に求められている標準化、相互運用性確保については「医療情報システムの安全管理に関するガイドライ ン第4.1 版」第5 章を参照すること。 3 厚生労働省標準規格の更新について 厚生労働省標準規格については、今後「保健医療情報標準化会議」の提言等を踏まえ、適宜更新していくものである。 ©2011 ITEC 10 推奨する解決策は、保健医療情報分野の厚生労働省標準規格の採用 標準プロトコルに対応する基幹システムや部門システムを採用することにより システム間接続の確認打ち合わせや接続テストの期間の削減 システム間の接続費用、システム更新時の再接続費用の削減 が実現可能です。 標準マスタや標準データフォーマットを使用することにより 医療機関内のシステム間のデータ交換 医療機関外とのデータ交換(地域医療連携) システムリプレース時のデータ継続性確保 蓄積されたデータの分析 が容易になります。 また現在お使いのプロトコルやマスタを、標準規格のものに変更する場合に、 現在のプロトコルを継続する方が、更新費用が安価であったり、現行マスタを 継続する方が、マスタを更新する労力が少ない場合もあります。 こうしたケースにおいても、長い目で見ると標準規格の採用はメリットがあります。 全てをいちどきに採用するのではなく、中長期の計画をたて段階的に採用して いく手法をお勧めいたします。 ©2011 ITEC 11 既存システムを活用し、地域連携に参加する場合に 地域医療連携は喫緊の課題であり、既存システムのリプレースまで待てない、または既存システムを標 準マスタに置換すると影響が大きいという理由で、すぐにはできないケースがあります。 こうした場合に、既存システムを活用しつつ、地域医療連携に必要なデータを既存システムから抽出し、 標準化して情報交換を可能とするしかけが、厚生労働省電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX)です。 主な電子カルテベンダーも、データ抽出までパッケージ機能として有しており、「厚生労働省 医療分野の 情報化の推進について」http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/johoka/等も参考に検討をお勧めします。 ©2011 ITEC 12
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