力学 (物理学A) 2014年度 1学期開講 7月8日 第11回 剛体の運動2 担当教員 : 陣内修 (基礎物理学専攻) 11章 剛体の運動2 応用例 − 斜面を転がる球 − ヨーヨーの運動 − ビリヤード球 − スーパーボールの動き − コマの歳差運動 2014/7/8 力学(陣内) 2 (例1) 斜面を転がる球 • 右図のように球が坂を転がり降りるとき • 加速度はどうなる? あれ、いつもの斜面問題?何が違うの? • 静止摩擦がかかっていて(斜面と球の間に 滑りはない)、球の回転の速さと、重心の 落ちる速さが等しい • 最初にあった重力ポテンシャルは、重心の 運動エネルギーの他、球の回転のエネル ギー(質量は球内部で一様に分布)にも 使われる a H ω v y θ その他の条件 a、 最初の静止位置(高さ) 、 球の半径 H I v ω 高さ y における重心の速度 、回転角速度 、斜面の角度 、 球の慣性モーメント θ [1] 転げ落ちるときの加速度はどうなるのか [2] どの角度まで滑らずにいられるか(角度きつくすれば当然・・・) 2014/7/8 力学(陣内) 3 (例1) 斜面を転がる球 続き [1] 転げ落ちる時の加速度 方程式をたてる 回転エネルギー 1 1 Mv 2 + I ω 2 + Mgy = MgH 2 2 v = aω ・・・① ・・・② dy ①の斜面方向の速度 v (運動エネルギーに関与)と高さの変化 が dt dy dt = −v sin θ も使う) リンクするところがミソ ( リンクさせるため、②代入後、両辺時間微分 1 I dv dy (M + )2v + Mg =0 2 2 dt dt a I dv (M + ) = Mg sin θ 2 dt a dv 1 = Mg sin θ 2 dt M +I a 2 2 ところで、球の中心を貫く軸のまわりの慣性モーメントは I = Ma 5 dv 5 = g sin θ 単なる重心の移動なら g sin θ それよりは遅い、回転のエネルギーに取られてる為 すると dt 7 (質量は一様に分布) 2014/7/8 力学(陣内) 4 (例1) 斜面を転がる球 続き2 [2] 滑りはじめない条件を考える F (静止)摩擦力 が球の回転の力を与えている (もし摩擦がなかったら、球は回転せずに、ずるずる・・・) 回転の運動方程式を立てよう dω ω = v a より I = Fa dt ω F v θ I dv I = Mg sin θ (前ページ参照) 2 dt 2 a Ma + I = 2 7 Mg sin θ F= これが最大静止摩擦力 F0 と比べてどうか F0 = µMg cosθ (µ x 垂直抗力) 2 7 Mg sin θ F = <1 F0 µMg cosθ 7 この角度を超えたら滑り始める tan θ < µ 2 2014/7/8 力学(陣内) これが円柱だったらどうだろうか? (自分でやってみよう) 5 (例2) ヨーヨーの運動 • ヨーヨーの動き、なんとも不思議である • 回転を伴いながら、重力のせいで当然加速する(しかし遅い) • 何が速度・加速度を決めているのだろうか?? 問題の条件 R • ヨーヨーの質量は で、全て半径 の一様な密度の M 円板からなると近似 • 半径 r の巻き取り軸(質量無し)に糸が巻いてある(糸重量=0) • 巻いた後、十分な高さの天井に吊るし、自然に放した R r M 問題 [1] 始めに放した地点から距離 だけ下降した地点Pにおいて このヨーヨーの中心Oの速さ v を求めよ Kr [2] 並進運動エネルギー Kt と、回転運動エネルギーの の比 を求めよ [3] P点を下降方向に通過、ヨーヨーの加速度、糸の張力を求めよ 2014/7/8 力学(陣内) 6 (例2) ヨーヨーの運動 続き 質量が重心に集まったとして扱ってよい [1] 速度を求める (位置ポテンシャル)=(並進運動エネルギー)+(回転エネルギー)になる 1 1 Mg Mv 2 I ω2 2 2 1 2 円板の慣性モーメントは(2つの円板だが、重ねて考えればよい)→ I = MR 2 回転の角速度x巻き取り軸半径=下降速度 → v = rω 1 1 v Mg = Mv 2 + MR 2 ( )2 2 4 r ⎛ 2⎞ 1 2 ⎜⎜ 1 ⎛⎜ R ⎞⎟ ⎟⎟ g g = v ⎜⎜1 + ⎜⎜ ⎟⎟ ⎟⎟ ⇒ v = 2r 2 2 2 ⎜⎜ 2 ⎜⎝ r ⎟⎠ ⎟⎟ R + 2r ⎝ ⎠ [2] 運動エネルギーの比 2 1 2Mv 2 1 2Mv 2 Kt 1 = = = (r R) Kr 1 2I ω 2 1 2×1 2MR 2 ×v 2 r 2 2 巻き取り軸が太い→速く糸が出る→遅く回転→(相対的に)並進運動エネルギー大 これは直観と合う もう一点気付くこと:糸の長さに関係していない 2014/7/8 力学(陣内) 7 (例2) ヨーヨーの運動 続き2 [3] ヨーヨーの加速度、糸の張力 加速度 a は下向きに正。重心、回転の二つの運動方程式を立てる Ma = Mg −T dω I = rT dt T ω r また重心の加速度と、角速度の間に dω = a の関係がある、これを上の式に代入、 の2変数、2式なので解ける a,T dt 1 I = MR 2 は使う 2 r à a = g 2r 2 2 2r + R 2 , T = Mg Mg R2 2r 2 + R 2 気付くこと、どちらも一定(糸の長さ に拠っていない) 2014/7/8 力学(陣内) 8 (例3) ビリヤード球 • ビリヤードは羅紗のテーブルの上を転がる、静止摩擦 • 係数は結構高い 順回転、逆回転、加速、減速、 球のどこを打つとどうなるか? 力積 M P 状況 h 叩く場所は右図のように高さ の一点 力は撃力(力積)で与えられる (撃力のルール) 力積=運動量の変化 h O R 球の慣性モーメントは既知とする 2 I = MR 2 5 叩かれた直後の初期速度は P = Mv0 ⇒ v0 = P M これは球全体の速度 ω0 Δt 一方で、与えられた回転の速度も考える必要あり ヒット直後 初期回転速度 とする 2014/7/8 力学(陣内) 9 (例3) ビリヤード球 続き 球の中心のまわりの回転の運動方程式をたてる Δt 叩いた瞬間( )だけ I dω = F(h − R) dt 球は回転速度>進行速度、摩擦が生じる 球の加速方向、徐々に進行速度が上がる 両辺一瞬だけ時間積分すると 7 R < h < R のとき 5 I (ω0 − 0) = FΔt(h − R) = P(h − R) 5P(h − R) ω0 = ・・・① 2MR 2 球は回転速度<進行速度、摩擦が生じる 球の減速方向、徐々に進行速度が下がる v0 = Rω0 のとき v0 = P 5P(h − R) 7 = ⇒h = R M 2MR 5 v = Rω 上記どちらも に落ち着いたら、 滑らなくなるので、摩擦力は発生しない → 等速度運動に変わる つまり h= 7 h > R のとき 5 ボールの下を叩いた場合 7 R のとき 5 球は回転速度=進行速度、即ち羅紗の上を 滑らずに転がる 0 < h < R のとき、 さてどうなるか? 球は戻ってくるか? 2014/7/8 力学(陣内) 10 (例3) ビリヤード球 続き2 ω0 (< 0) 右図の右方向を速度の正方向にとる 初期に逆回転がかかるので、摩擦力は図のように負方向 M dv = −µMg dt ⇒ M 力積 v(t) = v0 − µgt P 回転の運動方程式は摩擦によって回転が遅くなる向き 2 dω MR 2 = µMgR 5 dt ①より ω0 = ⇒ 5P(h − R) 2 ω(t) = ω0 + O R h µMg 5µg t 2R t1 時間が経ったとき v = Rω となる時間 は 2MR 5v (h − R) 5µg v0 − µgt1 = 0 + t1 2R 2 t1 = v0 5h (1 − ) µg 7R 計算してもらう ⇒ v1 = v0 − µgt1 = v0 (1 −1 + 2014/7/8 5h 5h )= v0 (> 0) 7R 7R 力学(陣内) つまり最終速度は正 ビリヤード球はどんなに逆回転をかけても 戻ってはこない 動画見る 11 (例4)スーパーボールの動き • 回転してるスーパーボールを床に落とすとどうなるか • スーパーボール、何が特別? • 床に着いたときに、静止摩擦係数が高い(強い • ω0 M ,I a グリップ)からすべらない、角運動量、 力学エネルギーの保存が成り立つ スーパーボールを回転させながら真下に落とす • 地面についた瞬間、摩擦のおかげで、右手にキックされる • 直前までの角速度 ω0 v1 ω1 • 直後の角速度 、直後の水平方向速度 〜思い出しましょう〜 全角運動量=(重心の角運動量)+(重心からみた角運動量) C点まわりの角運動量保存則 I ω0 = I ω1 + Mv1a 運動エネルギー保存則 1 1 1 I ω02 = I ω12 + Mv12 2 2 2 y方向は同じなので省略 2014/7/8 着いた瞬間 垂直抗力N 2 I = Ma 2 を代入すると 5 v1 = 0 という解は却下 3 ω1 = − ω0 , 7 v1 = 4 ω0a 7 F C スーパーボールは逆回転になり右に飛び出す 力学(陣内) 12 (例4)スーパーボールの動き 続き • 前頁で跳ねたあとどうなるか、 • 同様に保存則を立てる 別の初期条件も考えてみよう I ω1 + Mv1a = I ω2 + Mv2a ・・・② 1 1 1 1 I ω12 + Mv12 = I ω22 + Mv22 ・・・③ 2 2 2 2 ②③は常に成り立つ、 これに v2 = −v1 3 4 2 I = Ma 2 ω1 = − ω0 , v1 = ω0a 7 7 5 を代入すると さっきと同じ解は捨てる ω2 = ω0 , v2 = 0 つまり右左に行ったり来たりを考える このとき ω2 = −ω1 回転も逆転する ②よりもし速度、角速度が同符号だと 左辺=正、右辺=負 となり矛盾 即ち、逆符号になる、これはまさにスーパー ボールの動き つまり 時計回り回転は戻り、真上に跳ねる 初期条件に戻るので、後はこれの繰り返し 同じ軌道に戻る 左右に飛び跳ねる 2014/7/8 力学(陣内) 13 (例5)コマの歳差運動 • コマは回転対称の形をしている • 軸が直立した状態では、対称にまわり続ける • 軸が斜めになったとき、どうなるか?そのまま一気に倒れ るのか?→ そのまままわり続ける、軸はゆっくりと地面に 鉛直な軸のまわりを回る、これを歳差運動と呼ぶ 問:どうしてこんなことが起こるのか?なぜ倒れないか? 問:コマが反時計まわりに回っているときに、歳差運動は どちらまわりか? L G どうして倒れないか:重心Gにかかる重力はMg下向き 点Oを支点とした動きしかできない→Mgはトルクとして貢献 もともとコマの角運動量がゼロだった場合(回ってないと) このトルクは角運動量の変化に使われる。つまりコマを 倒すという変化に使われる θ Mg O コマが回っている場合、図の を変化させることに L 使われる(次ページ)、なので倒れない 2014/7/8 力学(陣内) 14 (例5)コマの歳差運動 続き • 重力によるトルクの向きは紙面に刺さる向き N = OG ×Mg , • L N = Mgl sin θ このとき、コマの角運動量 の変化は右下図のよう L Ω に円周上を回る、歳差運動の角速度を とすると 右下図より コマが反時計まわりのときには、 dL = L sin θ Ωdt 歳差運動も反時計まわり また dL = Ndt = Mgl sin θdt Mgl Ω= L G θ N⊗ O コマの回転が遅くなる→ 小 L Ω が速くなる L sin θ 確かに経験上の方向と合致している→ 動画見る L (マメ) コマのように軸を倒す力がかかる場合、自転方向と歳差運動の方向 は同じになる、地球の地軸の傾きのように太陽の引力で地軸が立て直される 向きに力がかかるときは、自転と歳差運動の回転方向は逆になる 2014/7/8 Mg 力学(陣内) dL L + dL N 15 まとめ • 質点、剛体の応用問題にあたってみた • 是非、自分で解き直してみよう 次回 • 相対運動その1 • 回転しない座標系 • 重心系と実験室系 • 回転座標系 2014/7/8 力学(陣内) 16
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