フィラデルフィア染色体陽性白血病に対する同種造血幹細胞移植後の

フィラデルフィア染色体陽性白血病に対する同種造血幹細胞移植後のダサチニブ投
与の有効性と安全性に関する後方視的解析
Safety and efficacy of dasatinib for Ph+ leukemia after allogeneic stem cell transplantation
中世古知昭 1、大橋一輝 2,鬼塚真仁 3、阿部大二郎 1,矢野真吾 4,森毅彦 5、
神田善伸 6,酒井リカ 7、立花崇孝 8、渡部玲子 9,高橋聡 10,金森平和 8、
丸田壱郎 8、坂巻壽 2、岡本真一郎 5
1 千葉大学 血液内科
2 東京都立駒込病院 血液内科
3 東海大学 血液内科
4 東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科
5 慶應義塾大学 血液内科
6 自治医大さいたま医療センター 血液内科
7 横浜市立大学市民総合医療センター 血液内科
8 神奈川県立がんセンター 血液内科
9 埼玉医科大学総合医療センター 血液内科
10 東京大学医科学研究所 血液腫瘍内科
11 関東造血細胞移植共同研究グループ
Chiaki Nakaseko1, Kazuteru Ohashi2, Masahito Onizuka3, Daijiro Abe1, Shingo Yano4,
Takehiko Mori5, Yoshinobu Kanda6, Rika Sakai7, Takayoshi Tachibana8, Reiko Watanabe9,
Satoshi Takahashi10, Heiwa Kanamori8, Atsuo Maruta8, Hisashi Sakamaki2,
Shinichiro Okamoto5
1. Department of Hematology, Chiba University Hospital
2. Department of Hematology, Tokyo Metropolitan Komagome Hospital
3. Division of Hematology, Department of Medicine, Tokai University School of Medicine
4. Division of Oncology and Hematology, Department of Medicine, Jikei University School
of Medicine
5. Division of Hematology, Department of Medicine, Keio University School of Medicine
6. Division of Hematology, Saitama Medical Center, Jichi Medical University
7. Department of Hematology, Yokohama City University Medical Center
8. Department of Hematology, Kanagawa Cancer Center
9. Division of Hematology, Saitama Medical Center, Saitama Medical University
10. Department of Hematology and Oncology, The Institute of Medical Science, The
University of Tokyo
11. Kanto Study Group for Cell Therapy (KSGCT)
【目的】ダサチニブは CML, Ph+ALL に対する有効性が示され,有害事象の頻度も
明らかとなっている。しかし同種造血幹細胞移植(Allo-SCT)後のダサチニブ治療の有
効性と安全性は明らかではなく,至適投与量は不明である。我々は KSGCT 参加施設
において,Ph+ALL,CML(BC 既往)に対する Allo-SCT 後のダサチニブ療法の有効
性と安全性について後方視的に解析した。
【対象】KSGCT 参加施設において Allo-SCT
後にダサチニブが投与された 11 例のうち,早期死亡や化学療法併用例を除く 8 例。
診断は Ph+ALL6 例,CML2 例。初回移植 5 例,2 回目以降の移植 3 例で,血縁者間
移植 3 例,UR-BMT4 例,CBT1 例。【結果】Allo-SCT 後 45-487 日(中央値 137 日)
にダサチニブ投与が開始され,その理由は,血液再発 1 例,細胞遺伝学的再発 1 例
(CML),分子再発 3 例,移植後 BCR/ABL 残存 2 例,分子寛解(CMR)での維持療法 1
例。投与期間は 24-557 日(中央値 72 日)。ダサチニブ開始量は中央値 75mg/日
(20-140mg/日)であったが,有害事象により減量され 8 例中 7 例で 70mg/日以下の投
与となり維持量中央値は 45mg/日(20-140mg)であった。有害事象は胸水貯留 4 例
(50%),5 万/μl 以下の血小板減少 4 例(50%)などを認めたが,重篤な出血や GVHD の
増悪は認めなかった。投与前 CMR1 例と未検 1 例を除く 6 例中 4 例で CMR が得ら
れ,2 例は再移植を行い,観察期間中央値 588 日(462-964 日)で全例寛解生存中であ
る。
【考察】Allo-SCT 後のダサチニブ投与では,血小板減少,胸水貯留などの有害事
象が高率に生じる可能性があり,特に移植後 6 ヶ月以内の分子再発例では低用量から
開始し慎重に投与する必要がある。一方で低用量でも高率に CMR が得られることが
示された。今後は本治療法の有効性と安全性を前向きに検証し,安全な投与法を検証
する必要がある。