企業・産業動向レポート

企業・産業動向レポート
= 2016年1月1日~31日の報道内容 =
Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況
◎函館ドック労連関連
◆室蘭の内航船新造から撤退/函館どつく、函館での外航船建造に集約 函館どつくは、室蘭製作所で行っていた作
業船や内航船の新造船事業を休止する。収益面で厳しい状況が続いていた小型船の建造から撤退し、室蘭は修繕と、
橋梁などの陸上事業に絞る。新造船事業は、函館造船所で手掛ける外航船に集約する。室蘭製作所を統括する「室蘭
事業本部」を廃止し、「新造船事業本部」と「艦船修繕事業本部」に人員を振り分ける。室蘭の従業員約125人のうち総務
や営業、設計などの人員最大50人を4月1日付で函館に配置転換する。函館どつくは1984年以降、室蘭製作所で新造事
業を休止していたが、2008年に隣接する楢崎造船を買収し、2009年から楢崎の事業を継承する形で、室蘭で小型船の
新造・修繕事業を開始していた。これ以降、内航貨物船や防災船、タグ、調査船など多岐にわたる新造船を建造してき
た。ただ、多品目・短納期の体制のため、操業が不安定な点が課題だったほか、採算も厳しい状況が続いていた。一方の
函館造船所ではハンディサイズ・バルカーの連続建造で収益が改善しており、修繕事業も拡大。競争力の強化に向け
て、これら主力事業にリソースを集約することになった。
◆三菱重工、提携を解消/汚職問題、ブラジル造船株売却 三菱重工業は6日、ブラジル大手造船会社のエコビックス
-エンジェビックスとの資本提携を解消する方針を固め、ブラジル当局に申請したことを明らかにした。今治造船、名村
造船所、大島造船所、三菱商事の5社連合で2013年に約3億㌦でエコビックス株式を取得したが、国営石油会社のベトロ
ブラスをめぐる汚職問題に端を発し、一昨年秋頃から海洋構造物の工事代金が入金されていない。すでに14年度に減
損処理しており、大きな損失は生じない模様だ。エコビックスはエンジニアリングや発電などを幅広く手がけるジャクソ
ングループの傘下企業。ぺトロブラス向けに、沖合のプレソルト層油田から石油を採掘するために用いるFPSO(洋上浮
体式生産・貯蔵・積出施設)船体8隻を建造するために設立された。三菱重工らは同社に約30%を出資しており、株式を
ジャクソングループに売却する意向。
◆三菱重工ら、ブラジル造船撤退 三菱重工業と今治造船、名村造船所、大島造船所、三菱商事の5社は、ブラジルで
共同出資していた造船所エコビックス・エンジェビックス社の株式を現地の株主に売却する。国営石油ペトロブラスの汚
職問題の余波で、出資先造船所の先行きが見通せなくなった。重工会社と専業造船所が共同で海外事業を行うとい
う、日本造船業にとって過去に例のないプロジェクトだったが、現地の情勢混乱に巻き込まれる形で、わずか2年余りで
撤退することになった。日本連合5社は2013年10月にブラジル事業への共同出資を決めて、現地に特別目的会社(SP
C)を設立し、同社を通じてエコビックスの株式30%を取得していた。出資額は約300億円で、うち半分を三菱重工が出
資していた。今回、株式の70%を保有するジャクソン・グループに、日本保有分の全株式を売却する方向で、エコビック
スが手続きを進めている。既に日本の5社は前期決算で出資額を減損処理している。エコビックスは、南部リオグランデ
・ド・スル州の造船所RGエスタレーロ(リオグランデ造船)でペトロブラス向けにFPSO(浮体式生産・貯蔵・積出施設)8隻
の船体部やドリルシップ3隻などの建造を進めている。三菱重工が人員を派遣していた。だが、ペトロブラスの汚職問題
で、造船所幹部に逮捕者が出たり、ドリルシップ発注者のセッチブラジル社からの建造資金支払いが途絶えるなどで混
乱が発生。造船所は人員削減などにも手をつけて事業の立て直しを図り、FPSO船体の引き渡しにまでこぎつけていた
が、汚職問題に起因する同国内の混乱が収束せず、原油価格低迷もあり、事業継続が厳しくなっていた。
◆三菱重工業、工作機械事業/脱単体機・微細加工に重点 ▽分社化は再起策▽2015年10月に断行した工作機械事
業の分社化は、業界内で事業撤退への序章と臆測された。工作機械は連結売上高5兆円を目指す大重工会社にあっ
て、事業規模が500億円弱と小ぶりで、しかも低成長が続いた。同じ機械・設備ドメインの事業整理が相次いだこともあ
り、撤退臆測は火のあるところの煙だろう。ただ、機設ドメイン長の木村和明は「グループ内に工作機械事業を持つ意
味がある」と、再起策として分社化を選んでいた。三菱重工業は工作機械事業を機械加工の総本山と位置付けてきた。
10年には同事業部内に、蓄積した加工ノウハウを他事業部に横展開するための組織を設けている。メーカーが生産設
備部門を社内に有し、互いにブラックボックスなどなく連携できる利点は大きい。製造部門側はより最適な加工、生産設
備部門としてはユーザー要求をすぐに吸収できる。原動機や航空宇宙といった一段高い信頼性が求められる製品の製
造、そのための工作機械の開発には有利だ。ここに工作機械事業の存在意義の一端がある。とはいえ、事業としての現
実はその存在意義にあぐらをかく状況でない。原動機など社内の大型工作物の製造で培った大型加工機だが「なかな
かもうからない」(木村)。足元は主力顧客の建設機械やエネルギー分野の停滞が響く。中国製造の大型加工機は月1台
の受注目標が厳しい。稼ぎ頭の歯車加工機は省エネ性能の向上を狙った変速機の多段化で需要増にある。しかしトヨタ
自動車が50年までに純粋なエンジン車をなくすという環境宣言を代表例に、自動車の電動化が進めば変速機向けの
歯車の需要が減り、歯車工作機械への影響も計り知れない。新会社、三菱重工工作機械社長の白尾誠二は「向こう10
年くらいは自動車の電動化による歯車工作機械への影響は大きくない」とみる。裏を返せば、10年より先は未知数だ。
- 1 -
そこで白尾は新会社発足に前後し、二つの重点戦略を策定した。脱単体機販売と微細加工だ。20年に売上高をほぼ2倍
の1,000億円に引き上げる。脱単体機戦略は、年産設備計画の検討から年産設備と技術ノウハウの提供までを一括で請
け負う。ラインアップにない工作機械は他社から買って設置する。▽以外な選択▽微細加工の重点化は意外な選択だ。
中核機種の超精密加工機は微細金型の加工などに用いる製品で、約10年前に競合から来た開発者を中心に完成させ
た。ただ、年間30台程度の販売にとどまっている。別の中核機種の常温ウエハー接合装置も約10年前に完成させたが、
事業としては開花前だ。いずれも引き合いが増えており、将来性が高いと判断した。事業会社に切り離すのは事業再起
策の常とう手段だ。環境化学や印刷紙工機械などの成功例がある。工作機械の競合各社はオーナーの下に一致団結し
立ち向かう力が強いだけに、「三菱重工の制度設計の中では事業を弱くしてしまう」(木村)と機動力が課題。木村は
「専門会社と伍するには意思決定が早まる事業会社の方が経営しやすく、世の中の流れについていきやすい」と説明
する。工作機械産業全体は分岐点にあるとみている。「今のままでこの業界自体が継続的に成長していける形とは思
わない」(木村)と、IoT(モノのインターネット)や3Dプリンターといった新しい技術が既存の構造を大きく変える可能性
を指摘する。新しいうねりの着地点が今はまだ不明確だ。M&A(合併・買収)にしても、着地点が見通しづらく大型投票に
踏み込めない。自動車業界の厳しい要求に応えながら、課題解決をしてきた自負がある。これまで同様に顧客に寄り添
い仕事をすることで、解を見つけ出すだろう。(敬称略)
◆第二創業「知の覚醒」 ≪三菱重工業、商船事業改革、退路断ち解体から再出発≫米ボーイング向け機体構造部材
の生産拠点である広島製作所江波工場(広島市中区)、MRJ(三菱リージョナルジェット)の主翼製造を担う神戸造船所
(神戸市兵庫区)。いずれも商船建造から撤退し、海から陸、さらに空へと、時代の変化に対応しながら製造品目を変え
てきた。そして今、長崎造船所(長崎市)が背水の陣で改革に挑んでいる。≪面影はなく≫韓国や中国との価格競争に敗
れ、縮小を余儀なくされてきた三菱重工業のルーツである商船事業。長崎造船所、下関造船所(山口県下関市)を合わ
せた事業規模は約1,500億円と、今や連結売上高の5%を下回る。わが国造船業をリードしてきた面影はなく、「もはや
大手ではない」(造船関係者)。足元は客船建造の失敗で1,600億円超の損失を生み出し、抜き差しならない状況に追い
込まれる。社長の宮永俊一が出した答えが客船をエンジニアリング事業とし、長崎造船所の商船、船体ブロック建造事
業を別会社にするという〝解体″からの再出発だ。コンテナ船やタンカーなど汎用船の自社建造から手を引き、客船
など中韓勢ができない高付加価値船に軸足を移したのが数年前。「(短期でビジネスモデルを変える)象徴が客船や資
源探査船だったが、難しくてリソースが追いつかなかった」(横田宏執行役員長崎造船所長兼三菱重工船舶海洋社長)。
宮永の"荒療治″は退路を断つ最後通告と言って良い。3度目の納期遅延に追い込まれた欧アイーダ・クルーズ向け大
型客船の1番船。4月の就航に向けて峠を越えたかと思われたが、火災を起こし、2番船建造はまだ佳境。客船事業につ
いて、宮永は「2隻が終わってから考える」と撤退を匂わせる。≪厳しい受注環境≫長崎の商船事業は当面、LNG船の連
続建造に捲土重来を期すが「シェールガス輸送用の大型発注は一段落した」(アナリスト)。海洋事業でやけどを負った
韓国造船大手が商船シフトを強める中、受注環境は厳しさを増す。早急に次の打ち手を探さねばならない。一方、下関
造船所にとっては今回の商船事業改革は「吉」。従来は商船SBU(戦略的事業単位)として一括りになっていたが、単独S
BUに位置づけが変わり、自由度が増した。フェリーや調査船などに照準を絞り、造船不況をくぐり抜け、黒字を維持して
きた下関造船所。赤字基調の商船SBUの中で投資が限られてきたが、今後は利益に応じて「可能な限りの設備投資を行
い、エンジニアの海外研修などもやりたい」と下関造船所長の北村徹は意気込む。地元には造船をカリキュラムに入れ
る有数の県立工業高校があり「成績優秀者が『大学に行ったら三菱重工に入社できないかもしれない』と言ってくれ
る」(北村)。また、同造船所大和町工場(下関市東大和町)ではボーイング「787」の主巽に組み込む炭素繊維強化プラ
スチック(CFRP)製ストリンガー(縦通材)を手がけるなど、工場全体として変化の荒波を乗り越えてきた。経営史上最大
の正念場を迎える長崎造船所の商船事業。国内最大級のドック近くには「環境変化に柔軟に力強く対応し、全員で香焼
の未来をつくりあげよう」。こんなプレートがある。改革は緒に就いたばかりだ。
◆建造中大型客船で火災 ≪三菱重工、損失拡大の恐れも≫三菱重工業は12日、長崎造船所香焼工場(長崎市香焼
町)で建造中の欧アイーダ・クルーズ向け大型客船(約12万5,000総㌧、約3,300人乗り)で11日20時15分頃に火災が発
生し、21時40分頃に鎮火したと発表した。「引き渡しについては、顧客と十分に協議の上、対応していくが、4月30日より
予定されているクルーズへの影響はないものと考えている」として、コスト影響などについては詳細を確認後に開示す
る。三菱重工はすでにアイーダから受注した2隻の客船をめぐり累計1,600億円超の損失を計上しており、損失が膨らむ
恐れがある。出火したのは香焼工場の修繕ドックで艤装中の1番船。発表によると「24時間監視の安全体制と安全システ
ムが稼働状能だあり、火災発生後、スプリンクラーが正常に稼働し、直ちに船主と当社が共同して初期消火を実施し
た」。船主乗組員と三菱重工の作業員約400人が乗船していたが、全員避難しけが人はいない。また「直ちに消防署の
指導に基づき被害区画の保全を行い、その他の区画については安全確認後、速やかに引き渡し前の残工事を再開し
た」という。被害区画に関しては、警察や消防署等の現場検証を受けている。三菱重工は02年にも豪華「客船「旧ダイ
ヤモンドプリンセス」が、海上試運転を目前に火災を起こし、36時間にわたり延焼、およそ4割を失った大事故を経験して
いる。今回はぼや程度に収まったとみちれるが、再度の火災に現場管理の甘さを指摘されそうだ。三菱重工は11年にア
イーダから大型客船2隻を受注した。受注額は1,000億円規模とみられている。その後、度重なる設計変更などを受け、
当初納期の15年3月から大幅に建造が遅れ、巨額損失を計上するに至った。
◆三菱重工/客船1番船で出火 ≪復旧規模や工程への影響は不明≫三菱重工業が長崎造船所で建造中のアイーダ
向け客船1番船“AidaPrima”で11日夜に火災が発生した。劇場などが入る第7デッキで一部区画が焼けた。けが人はなか
った。火災による焼失規模は小さいとみられるが、公式試運転直前という最終段階だったこともあり、内装へのダメー
ジの範囲などによっては、復旧に伴う追加工事で工程に影響も出てきそうだ。出火後にスプリンクラーーが作勤し、消
防が出動しておょそ3時間半後に火が消し止められた。三菱重工によると、出火時点で船内には乗組員170人と作業員
約200人がいたが、全員が無事に避難した。12日に消防による実況見分行われており、焼損面積や原因などの確認作業
が続いている。“Aida Prima”は昨年12月中の引き渡し予定だったが、納期を再度延期していた。主要工事はほぼ終わり、
- 2 -
近く試運転を控えていた。既に船員の居住も始まっている。火災の規模については12日時点では確認中。焼損範囲は
小さいものとみられるが、消火作業時の放水による内装への被害なども予想される。現状では今後の工程にどの程度
影響が出てくるかは不明だ。
◆「4月のクルーズに影響なし」 ≪三菱重工、客船火災でコメント≫三菱重工業は12日、長崎造船所で建造中のアイー
ダ・クルーズ向け客船“Aida Prima”で11日夜に発生した火災の状況を発表した。引き渡し時期への影響は「詳細を確認
中」としたものの、「4月30日より予定されているクルーズへの影響はないものと考えている」とコメントした。火災は劇
場やレストランが入る第7デッキで発生した。被害区画以外では既に昨日から、安全確認後に引き渡し前の残工事を再開
している。被害区画については、警察や消防署等の現場検証を踏まえ、今後原因究明と復旧対策を早急に具体化、推進
するという。アイーダは新造船“Aida Prima”の処女航海として今年4月30日からのハンブルク発のクルーズを予定して
いる。三菱重工は納期を昨年12月から延期しており、新たな引き渡し時期は「顧客とも十分に協議の上、対応する」とし
ているが、4月のハンブルク発のクルーズには間に合わせるとの姿勢を示した。三菱によると、火災は11日午後8時15分
頃に発生した。既に同船では24時間監視の安全体制と安全システムが稼働状態にあったことから、火災発生後にスプリ
ンクラーが正常に稼働し、船主と三菱が共同して初期消火を実施。その後に消防署が本格消火を行い、1時間半後の午
後9時42分に鎮火を確認したという。
◆三菱重工の客船2番船/引き渡し半年以上延期 三菱重工業が客船世界最大手、米カーニバル系向けに建造中の
大型客船の2番船が、3月の納入予定から半年以上遅れる見通しであることが分かった。2015年度内の引き渡しをめざ
す1番船については既に3回延期しており、三菱重工は累計1600億円超の特別損失を計上している。2番船の納入遅れ
で、さらに損失が膨らむ恐れが出てきた。新たに納入が遅れる見通しとなったのは、カーニバル傘下のアイーダ・クルー
ズ向け大型客船2番船だ。長崎造船所(長崎市)で1番船と同時建造しており、1番船と合わせて数千人規模で日本人や
外国人の現場技能者を投入している。2番船の建造では大型クレーンを使わず、客室部分に家具や内装品を搬入する
ための簡易式エレベーター部品・資材の情報管理システムなどを導入して納期短縮に取り組む予定。「1番船で得たノウ
ハウを2番船にいかして、造り方や物流管理を改善する」(三菱重工幹部)だが1番船の引き渡しが延びている影響で人
員などを2番船に計画通り回せず、今年3月の納期から少なくとも半年程度遅れる見込みとなった。1番船は当初、昨年
3月に納入する予定だったが、設計や資材、内装の仕様変更などで3回延期しており、現在の納期は未定。今月には2度
にわたり船内でぼやも発生した。三菱重工は「4月30日から予定されているクルーズへの影響はない」として年度内の
引き渡しをめざす考え。客船2隻の受注額は1000億円程度とみられる。だが人員や資材の追加投入などで三菱重工は
受注額を上回る計1600億円超の特別損失を計上した。2番船の遅れで追加損失の恐れも高まっている。現時点で16年3
月期の連結純利益は前期比18%増の1300億円を見込んでいる。
Ⅱ.国内造船・造機関係の動向
◆11月の造船統計/竣工16隻 国土交通省がまとめた2015年11月の造船主要54工場の鋼船受注・建造実績は、起工
28隻・93万1,000総㌧、竣工16隻・68万2,000総㌧、竣工船価857億円だった。竣工船のうち国内船は3隻・9万2,000総㌧
で一般貨物船、自動車航送船、その他船舶が各1隻だった。輸出船は13隻・59万1,000総㌧で、内訳は貨物船が10隻(一
般貨物船2隻、ばら積船5隻、鉱石兼ばら積み船3隻)、油送船が3隻(化学薬品船2隻、LNG船1隻)だった。
◆昨年の輸出船契約/7%増3年連続増 ≪駆け込み需要、反動確実JSEAまとめ≫日本船舶輸出組合(JSEA)が14日発
表した2015年1-12月の輸出船契約実績(一般鋼船)は前年比7%増の2,222万1575総㌧となり、3年連続で増加した。16
年1月から施行された窒素酸化物(NOx)3次規制前の駆け込み需要で受注が積み上がったとみられ、その反動が出るの
は確定的。加えて海洋構造物の工事で巨額損失を計上した韓国の造船大手が商船シフトを進めるとみられ、16年は競
争激化による船価下落など、受注環境が厳しさを増す公算は大きい。15年の契約実績は08年のリーマン・ショック以降
の暦年としては過去最高となり、8年ぶりに2,000万総㌧の大台に乗せた。契約隻数は424隻(前年は336隻)。内訳は貨
物船51隻、ばら積み運搬船258隻、油送船115隻。一方で、15年1-12月の通関実績は280隻、前年比4・8%減の1,100万3,8
49総㌧。12月末時点の手持ち工事量は807隻、3,899万1,937総㌧。約3年分の工事量は確保している格好だ。同日発表
された12月単月の契約実績は前年同月比86・3%増の226万3,599総㌧。8カ月連続で増加した。隻数は63隻。納期別内
訳は16年度4・5%、17年度19・2%、18年度43・9%、19年度26・2%。20年度6・・2%。通関実績は9隻、同11・6%増の37万2,75
7万総㌧。船種別内訳は一般貨物船2隻、ハンディ型ばら積み運搬船23隻、ハンディマックス型ばら積み船5隻、パナマッ
クス型ばら積み船1隻、ポストパナマックス型ばら積み船1隻、チップ船1隻、セメント運搬船1隻、液化天然ガス(LNG)運搬
船1隻、VLCC(超大型タンカー)1隻、アフラマックス型タンカー4隻、プロダクトタンカー11隻、ケミカルタンカー4隻。
◆15年受注50%増2,222万総㌧ ≪リーマン以降最高 駆け込み反映、船舶輸組まとめ≫日本船舶輸出組合が14日発
表した2015年の輸出船契約(受注)実績は、2,222万総㌧(1,055万CGT=標準貨物船換算㌧)で、前年比50%増(CGTベ
ースで46%増)に膨らんだ。海運市況の低迷、船腹過剰など事業環境は厳しかったものの、H-CSR(調和共通構造規規)
やNOx(窒素酸化物)3次規制適用を回避するための駆け込み需要があったことなどを反映した。リーマン・ショック後最
高となり、1966年以降の実績でみても5番目に高い水準となった。期間中の輸出船契約隻数は、88隻増の424隻。この
うちバルカーは7隻減の258隻だった。ハンディサイズ、ケープサイズ、鉱石船などが隻数を伸ばしたものの、ハンディ
マックス、パナマックスなどは前年実績を下回った。貨物船はコンテナ船が堅調で25隻増の51隻。タンカーはプロダクト
- 3 -
船、アフラマックス、LNG(液化天然ガス)船などが大幅増となり、71隻増の115隻に達した。輸出船通関の15年実績は、1,1
00万総㌧(519万CGT)で5%減(CGTベース2%減)。通関隻数は10隻増の280隻だった。15年12月末時点の輸出船手持
ち工事量は807隻、3899万総㌧(1,889万CGT)。前年末の674隻、2,827万総(1,373万CGT)を上回った。≪12月は63隻22
6万総㌧≫15年12月単月の輸出船契約実績は、226万総㌧(118万CGT)で前年同月比86%増(CGTベース64%増)、契約
隻数は39隻増の63隻。このうち、海外船主向けの純輸出船は21隻だった。63隻の船種別内訳は、一般貨物船2隻▽ハン
ディサイズバルカー23隻▽ハンディマックスバルカー5隻▽パナマックスパルカー9隻▽ポストパナマックスバルカー1隻
▽チップ船1隻▽セメント船1隻▽VLCC(大型原油タンカー)1隻▽アブラマックスタンカー4隻▽LNG船1隻▽プロダクト船1
1隻▽ケミカル船4隻。契約は全て現金払い。㌧数ベースの契約形態内訳(シェア)は円建て7%、円・外貨ミックス15%、
外貨建て78%で、商社契約は33%。納期別内訳は16年度5%▽17年度19%▽18年度44%▽19年度26%▽20年度6%。
◆受注/大台突破の2,222万㌧ ≪15年の輸組統計、駆け込みで8年ぶり≫昨年の日本造船業の新造船受注量は、2007
年以来8年ぶりに2,000万総㌧の大台を超える高水準となった。日本船舶輸出組合(輸組)が14日発表した2015年1-12
月の輸出船契約実績は計424隻-2222万総トンで、総トンベースで前年実績を50%上回った。新規制適用前の駆け込み
契約が相次いだことで、オイルショック時の1973年や造船ブーム期の2003年、06年、07年に次ぐ5番目の契約量になっ
た。また、ドライバルク市況の長期低迷を受けて、タンカーやコンテナ船が大幅に増加したのも特徴だ。過半数をバルカ
ー以外の船種が占めており、日本の造船所は受注方針を大きく転換した。≪規制前駆け込み相次ぐ≫日本の造船所の
年間受注量の推移は別表のとおり。受注量を押し上げた背景には、昨年7月の新共通構造規則(調和化船体構造規則:H
-CSR)、今年1月の窒素酸化物(NOx)3次規制の2大規制の適用がある。新規制の対応に伴って建造コストが大幅に増加
する上、デザインの見直しが必要だったことから、規制適用前に契約を交わす動きが相次いだ。H-CSR適用直前の6月
には467万総㌧、NOx3次規制前の駆け込みが佳境を迎えた10月には349万総㌧など、単月ベースでも記録的な受注量
になった。内定案件を中心に契約を交わす動きは土壇場まで続き、昨年1年間で約2年分の手持ち工事に相当する受注
量になった。≪タンカー・コンテナブーム≫昨年の船種船型別の受注内訳は別表のとおり。14年まで全体の8割程度を占め
ていたバルカーの比率が過半数を下回り、タンカーやコンテナ船が大幅に増加した。全体に占める割合は総㌧ベース
でバルカー45%、タンカー34%、コンテナ船や自動車船などの貨物船21%。対前年比では、バルカーが微減、タンカー
が4倍増、貨物船が2倍増だった。日本の造船所はドライバルク市況の長期低迷を受けて、タンカーやコンテナ船の受注
にシフトしていたが、そのことが統計にも表れた。タンカーの契約はリーマン・ショック後最高で、造船ブーム最盛期に匹
敵する水準だった。特に好調だったのがアフラマックスをはじめとした中型タンカーで、2008年以来7年ぶりにスエズマ
ックスの受注もあった。ここ数年発注が低迷していたVLCCも二桁に乗せた。また、プロダクト船やケミカル船も好調だっ
た。コンテナ船は1万TEUのメガコンテナ船のほか、3,000TEU級のフィーダーコンテナ船が世界的に発注ブームを迎え
た。コンテナ船にシフトした日本の造船所も受注につなげた。≪邦船向け7割超に回復≫発注船主別にみると、邦船社系
向けの案件が前年に比べて増加した。海外船主向けの純輸出船の受注隻数は106隻で、隻数ベースで全体の25%だっ
た。近年は、13年に純輸出船が過半数を超え、14年も3割以上を占めるなど海外船主向けの増加が顕著だったが、海外
船主の発注は一巡したようだ。4-12月の船主系列別内訳(総㌧ベース)は邦船系74.6%、欧米系7.4%、ギリシャ系6.0
%、香港系0.8%、その他11.2%だった。また、受注船の契約態様として外貨建てが7割以上を占めた。造船ブーム期に
は円建て契約が大半だったが、2011年以降は外貨建てが総㌧ベースで過半数以上を占めるようになり、13年以降は8
割以上を占めていた。昨年と比べて減少しているものの、依然として外貨建てが主流になっている。
◆12月の受注/200万㌧超の高水準 ≪今年3番目、内定案件の契約続く≫日本船舶輸出組合(輸組)がまとめた2015
年12月の輸出船契約実績は63隻・226万総㌧で、㌧数ベースで前年同月比86%増となった。規制前の駆け込みは趨勢
を決していたものの、内定案件を中心に契約を交わす動きが続いたようだ。12月の契約船の内訳は一般貨物船2隻、バ
ルカー40隻(ハンディ23隻、ハンディマックス5隻、パナマックス9隻、ポストパナマックス1隻、チップ船1隻、セメント運搬船
1隻)、タンカー21隻(VLCCl隻、アフラマックス4隻、LNG船1隻、プロダクト船11隻、ケミカル船4隻)となっている。63隻のう
ち純輸出船は21隻だった。12月の受注船の契約態様は、㌧数ベースで円建て契約7.3%、円・外貨ミックス15.1%、外貨
建て77.6%だった。現金払い契約は100%、商社契約は32.8%。納期別では2016年度もの4.5%、17年度もの19.2%、18
年度もの43.9%、19年度もの26.2%、20年度もの6.2%だった。竣工量に相当する通関実績は、前年同月比12%増の9
隻・37万総㌧だった。
◆手持ち工事量、3・5年分の3,899万総㌧ 日本船舶輸出組合がまとめた2015年12月末時点の手持ち工事量は807
隻・3,899万総㌧(1,889万CGT)で、造船ブームが始まった2003年と同様の水準となっている。15年の竣工量を基準にす
ると、手持ち工事量はおよそ3.5年分に相当する。手持ち工事量は5カ月連続でプラスとなっており、1年前と比べると1,
072万総㌧増加している。納期別の内訳は、2015年度引き渡し分117隻・474万総㌧、16年度255隻・1,128万総㌧、17年度2
03隻・1,017万総㌧、18年度151隻・836万総㌧、19年度以降81隻・444万総㌧だった。
◆新造船竣工量が02年以来の低水準 ≪国内造船、15年は1,100万㌧、回復まだ≫日本の造船所の新造船竣工量は
造船ブーム期以前の水準まで減少している。日本船舶輸出組合の統計によると、2015年1-12月の竣工量に相当する輸
出船通関実績は前年比5%減の計280隻・1,100万総㌧で、2002年以来の低水準を更新した。人手不足やドライバルク市
況の長期低迷の影響により、建造量の減少が続いている。日本の造船所の竣工量は表のとおり。2010年をピークに減少
が続いており、昨年はピーク比37%減になった。円高是正を背景とした13年以降の大量受注により、14年以降は造船所
が徐々に操業を戻す予定だったが、14年から顕在化した人手不足の影響やドライバルク市況低迷に伴う納期延期など
- 4 -
もあり、操業は回復しなかった。船種別にみると、昨年はタンカーの建造量が著しく少なかった。リーマン・ショック以降、
バルカーの受注に特化して進めてきたことが改めて浮き彫りになった。ただ、今年から徐々にバルカーの建造比率が
下がり、タンカーやコンテナ船などの建造量が増える見通し。日本は、既に18年いっぱいの手持ち工事にめどを付けた
造船所も多い。ただ、ドライ市況の低迷を背景とした納期延期の要望が海外船主から寄せられていることや、人手不足
により操業水準を大幅に回復させることが難しいことから、年間建造量の急激な増加は見込めそうにない。操業水準
の回復は先送りになる公算も大きくなっている。
◎国土交通省関連
◆艦艇2隻・海保11隻を新造整備 ≪補正と16年度で予算化、研究船は見送り≫政府は昨年末、2016年度予算案を閣
議決定し、15年度補正予算案と合わせた各省庁の船舶・艦艇の新規整備予算案が出そろった。防衛省はイージス・シス
テム搭載護衛艦(DDG)1隻と潜水艦1隻を新造し、海上保安庁は新規に巡視船など11隻を新造整備する。また、文部科学
省が求めていた「北極域研究の戦略的推進」は一部予算化されたものの、概算要求で盛り込まれていた研究調査船は
予算化が見送られた。各省庁の新規整備予算は次のとおり。【防衛省】概算要求では新規整備としてイージス艦1隻と潜
水艦1隻の計2隻を要求していたが、16年度予算でいずれも認められた。イージス艦は、8,200㌧型の2隻目。既に15年度
予算で、1隻目の建造とともに2隻目のイージス・システム調達が予算化されている。今回は1,734億円(概算要求額は1,6
75億円)が充てられる。潜水艦は2,900㌧型“そうりゆう”型の12番艦で、636億円が予算化された(概算要求額は662億
円)。従来の“そうりゅう”型に比べて水中持続力などを向上させる。このほか護衛艦の艦齢延伸で16億円(部品調達5隻
分)と潜水艦の艦齢延伸で30億円(艦齢延伸工事4隻と部品調達4隻分)が認められた。【海上保安庁】巡視船艇など計1
1隻の新規整備を概算要求で求めており、15年度補正予算と16年度予算でいずれも認められた。新規整備の内訳は、規
制能力強化型巡視船3隻、ヘリ搭載型巡視船1隻(補正加え56億8,000万円)、中型巡視船2隻(13億3,000万円)、大型巡
視艇2隻(18億3,000万円)、小型巡視艇2隻(9億円)、小型測量船1隻(1億4,000万円)。尖閣諸島周辺を含めた日本全国
の海上保安体制の構築のため、高性能化を図った巡視船などの代替整備を進める。【文部科学省】「北極域研究の戦略
的推進」として9億円が予算化(概算要求14億円)された。この一環として、新たな北極域国際研究プラットフォームとし
ての海洋研究船の建造に向けた概念設計を概算要求に盛り込んでいたが、16年度の予算化は見送られた。今後も研究
船の検討は進めていくようだ。
◆「造船ニッポン」復活へ部会 ≪坂下海事局長≫国土交通省は造船業の国際競争力強化に向けて生産性革命やIT
活用などを推進する「クニづくり・マチづくり 造船ニッポンプロジェクト」を立ち上げる。坂下広朗海事局長が22日の
記者団との懇談で述べた。交通政策審議会海事分科会に「海事イノベーション部会」を新たに設置し、来月初旬にも第1
回を開催。2016年度初頭をめどにロードマップをとりまとめる。懇談での坂下局長コメント要旨は次の通り。<2016年度
海事局予算>Δレイノベーションと人材が核。今後世界的に進む海のIoTへのチャレンジに先行して取り組み、技術力や
サービス、製品力を高める。海洋開発やCO2削減の施第も継続する。そのほか、15年度に長崎でスタートした造船の人材
育成モデル事業に引き続き取り組む。また、「海の日」のプロモーションにかかわる取り組みも進める。16年度から統合さ
れる海技教育機構と航海訓練所についても、新しい組織として機能を発揮できるよう取り組みを進める。また、外国人
旅行者に船を使ってもらうよう、全国展開で事業者と連携した取り組みを今年進める。<海事イノベーンヨン部会>Δ円
高が是正され、日本の技術が再評価され、造船受注が昨年増加した。造船はGDP(国内総生産)の増大に貢献し、地域の
経済を支えている重要産業。地方創生に貢献できる産業として、競争力向上に向けた策を部会で検討していく。製品・
サービスの力、新事業分野を拓く力、造る力、人の力を高める方策を検討し、数値的な目標も設定していきたい。政府は
地方創生の交付金制度も設けている。創意工夫にあふれた地域の取り組みで、制度を活用していくことも視野に、業界
と検討していく。<バラスト水・シップリサイクル条約>ΔIMO(国際海事機関)が条約の発効要件である船腹量35%に至
っていないことを発表した。発効要件を満たすまであと一息。パナマが批准に向けた国会手続きを進行中と発表した
が、これは他国の批准のはずみにもなっている。決められた期限までに装置を搭載しなければならない時期にある。そ
う船主が認識すべき時だ。Δシップリサイクル条約についてもパナマは批准手続きに入ったとアナウンスした。条約発
効は解撤畳も条件になっているが、パナマが批准すれば船腹量への寄与が大きい。日本も作業を進めて批准に備えて
いきたい。解撤量が大きい中国はいずれ締結する。さらに大きな解撤国であるインドにも入っていただけるよう、条件
を満たしたヤードの整備に従来から協力してきた。同国の批准準備も進むよう並行して働きかけていく。Δ来月3日にロ
ンドンでシップリサイクル国際セミナーを開催する。昨年に日本海事協会がインドの解撤ヤードを認証し、解撤ヤードの
改善を証明した。こうしたことをしっかりPRし、条約発効に向けて勢いをつけていきたい。<水先人問題>Δ先日の検討
会で短期的な課題と、中長期的な課題への対策の素案を提示した。短期的課題への対策として派遣支援を提示した
が、内海水先区については関係者の考え方がまだ収劍されていない。次回には解決策が出せるのではないか。
◎業界団体関連
◆年頭あいさつ/取り組むべき不変のテーマ/日本造船工業会・村山滋会長 ▽昨年を振り返ると、国内においては、ア
ベノミクスの効果によって企業収益の改善、賃金の上昇等デフレからの脱却が着実に進んできた。一時は、平均株価が
2万円台を回復するなど、わが国経済にも力強さが戻りつつある。今後も景気はゆるやかに回復を続けていくものとみ
られ、経済の好循環を維持し、持続的な成長のためにも、アべノミクスによる「新三本の矢」の着実な推進に期待した
い。▽一方、世界経済においては、中国をはじめその他新興国の景気減速、原油等エネルギー価格の下落により、先行
きの不透明感が拭えない状況にある。加えて、昨年11月にパリで発生した同時多発テロによる社会不安が、経済活動に
悪影響を及ぼすことも懸念される。しかし、本格的な回復基調に入りつつある米国経済を中心に、全体としては、緩や
かに景気回復が進んでいくものと見込まれる。▽さて昨年の海運市況は、依然として存在する大量の過剰船腹によっ
- 5 -
て市況の低迷が続き、特にバルク市況においては、より深刻な状況に陥った。中長期的には、世界経済の回復に伴う海
上荷動量の増加、老齢船・不採算船のスクラップの進展などにより、需給ギャップは解消し、海運市況も好転していくも
のと見込まれるが、短期的には、今しばらく時間がかかるものとみられる。▽幸いなことに、わが国造船業は、新共通構
造規則およびNOx(窒素酸化物)3次規制適用前の駆け込み需要等により、昨年はリーマン・ショック以降で最高となる受
注量を記録し、当面の工事量を確保することができた。今こそ目先の状況にとらわれることなく、長期的な視点に立っ
て、慎重かつ合理的な経営を続けていくことが重要であると思う。▽昨年、日本造船工業会の会長に就任した際、取り
組むべき重要課題として、「経営基盤の強化」、「技術基盤の強化」、「国際協調の推進」の3つのテーマを掲げて、業界
としての施策を展開してきた。これらは全て不変のテーマであり、今後とも重要施策として推進していきたい。具体的
には、次世代省エネ船や高環境性能船の開発、液化水素運搬船等新たな船舶の開発など、わが国造船業が誇る先端技
術の革新に弛まぬ努力を続けていく。また、IMO等の国際的な規制などに対する戦略的な対応、JECKU造船首脳会議を
通じた国際協調の推進等にも、より一層注力していく。▽わが国造船業は、良質な船舶の安定供給、高度な艦艇等の建
造などによるわが国経済、安全保障への貢献はもとより、地域密着型の大規模事業所として、多数の関連産業とともに
地域の経済・雇用に貢献するなど海洋国家日本における重要な産業の一翼を担っている。引き続き、経済・安全保障・
海洋開発・地方創生など、わが国の喫緊の課題に関わりの深い造船業を国の重要な産業と位置付けて頂き、強固で魅
力ある造船業の構築に向けた支援を頂けるよう、政府にお願いしたい。▽今後も、わが国造船業が魅力ある産業として
あり続けるために、業界一丸となってこれらの課題に取り組み、最大限の努力を行っていく所存である。
◆年頭あいさつ/技術環境の変化に対応/日本中小型造船工業会・東撤会長 ▽アベノミクスによる行き過ぎた円高
の是正を契機に新造船の受注環境が改善し、現時点ではわが国造船業界の手持ち工事量は回復してきた。タンカー、コ
ンテナ船などの受注は増加しているが、中国の景気後退などによる市況悪化の影響を受け、ばら積み運搬船の受注が
低迷するなど需要構造に変化が生じており、また、世界の造船市場における需給ギャップの解消も見通せず、不透明な
事業環境は変わっていない。▽私ども中小型造船業界において長年培った技術力と顧客本位の事業活動を評価して
いただき当面の工事量を確保しているが、厳しい国際マーケットにおいて競争力を維持するためには、今後とも顧客の
ニーズに迅速に応えるとともに、規制動向、IoT等の技術環境の変化に適切に対応することが必要と考えている。▽近
年相次ぐ安全・環境に関する国際規制の改正・強化への対応については、日本財団並びに日本海事協会のご支援を得
て、船内騒音対策事業やEEDI改善研究事業に会員一丸となって取り組み着実に前進してきた。しかし、未だ課題は多く
残されており、NOx第三次規制への対応など今後とも皆様のご助力をいただきながら工業会として正面から取り組ん
でいく。▽一方では会員造船所における設計技術者の高齢化と人材不足、高品質な船舶を造りあげる現場技能者の確
保難など人材問題が深刻化してきている。このため、国土交通省、自治体並びに日本財団のご支援を得て開設された
全国6カ所の造船技能研修センターにおいて、新人教育や専門技能研修を通じて造船技能者の育成を行っているとこ
ろだが、昨年からは日本海事協会のご支援も得て研修内容の一層の充実を図っていく。▽設計面については、日本財
団並びに日本海事協会のご支援により設計技術者育成講座を開講し、若手技術者のスキルアップを図るとともに、基本
設計、機能設計、生産設計などの専門技術者の育成に努めている。さらに人材不足に対応すべく、日本財団のご支援を
得て、未熟練の技術者でも操作可能な使い勝手の良い安価な3次元艤装設計支援ツールの研究開発にも着手した。▽
当会は、日本財団のご支援を得て、進水式の一般公開をしてきたが、昨年夏には、日本財団の「あなたのまちの海の日
サポートプログラム」によるご支援を受け、進水式やものづくりの現場の見学会、体験乗船会を一斉開催し、大勢の子
供たちや父兄の方々に造船業について学んでいただくことができた。今後とも地域社会にご理解をいただくための
造船業の情報発信に努めたい。▽人材問題と地域社会のご理解をいただくために欠くことのできないものが安全で
快適な職場環境だ。私どもは安全・快適な職場づくりを経営の重要課題と位置づけ、職長・安全衛生責任者教育などの
安全衛生研修や会員相互の工場点検活動を通じて安全意識の高揚、安全活動の定着を図るとともに、全国造船安全衛
生対策推進本部とも連携して安全衛生管理水準のさらなる向上に取り組んでいる。▽全国各地に所在する中小型造船
所がわが国海事クラスターの構成員として、また、地域経済の担い手としてこれからも持続的な発展を続けることがで
きるよう引き続き国土交通省並びに日本財団はじめ関係各位のご指導、ご支援をお願い申し上げる。
①新造船
◆新造船価相場/年明け横ばいスタート ≪タンカーも弱含み鮮明≫2016年の年明けの新造船価相場は、ほぼ全船種
で前年末比横ばいでスタートした。ただ、前年の国際ルール改正に伴う新造船駆け込み発注の反動、世界的な造船キャ
パシティーの過剰を反映し、ドライ市況低迷を主因とするバルカ一に加え、運賃市況が堅調なタンカーでも弱含み基調
が鮮明になってきた。マーケット筋によると、タンカーの足元の新造船価レベルは、前年末と比べVLCC(大型原油タンカ
ー)が弱含み横ばいの9,350万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは弱含み横ばいの6,300万㌦(15万7,000重量㌧
型)、アブラマックスも弱含み横ばいの5,200万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製
品)タンカーは横ばいの3,550万㌦で推移している。バルカーの船価レベルは、全船型で弱含み横ばい。ケープサイズ
は4,600万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは2,580万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,430万㌦(6万2,00
0重量㌧型)、ハンディサイズは2,050万㌦(3万5,000重量㌧型)。ガス船はLNG(液化天然ガス)船がやや弱含み横ばい
の1億9,900万㌦、大型LPG(液化石油ガス)船VLGCは横ばいの7,700万㌦。コンテナ船は1万3,000TEU型が横ばいの1億1,
600万㌦、2750TEU型は弱含み横ばいの2,950万㌦。自動車船(PCTC)は50万㌦高の6,000万㌦。
◆新造船価相場/タンカー・BC横ばい ≪中古船続落 ケープ下落圧力強まる≫新造船マーケットで、新造船価相場は
タンカー、バルカーともに弱含み横ばいで推移している。ただし、新造船マーケットの先行指標となる中古船マーケット
では、ケープサイズバルカーの中古船価相場が続落しており、ケープサイズは新造船価でも目先は下落圧力が強まり
- 6 -
そうだ。マーケット筋によると、タンカーの足元の新造船価レベルは、原油船がやや弱含みながら横ばい。VLCC(大型原
油タンカー)は9,350万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6,300万㌦(15万7,000重量㌧型)、アブラマックスは5,200
万㌦(11万5,000重量㌧型)。MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,550万㌦と横ばいながら、地合
いは小じっかりとしてきた。バルカーの足元の新造船価レベルは、ケープサイズ4,600万㌦(18万重量㌧型、パナマック
ス2,580万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックス2,430万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,050万㌦(3万5,
000重量㌧型)。全体的に弱含み横ばいの中、ケープサイズの下押し圧力が他船型よりも強まっている。ガス船は、LNG
(液化天然ガス)船が400万㌦高の2億300万㌦(17万4,000立方㍍型)に上昇した。大型LPG(液化石油ガス)船VLGCは横
ばいの7,700万㌦(8万2,000立方㍍型)。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、2,750TEU型は弱含み
横ばいの2,950万㌦。自動車船(PCTC)はやや強含み横ばいの6,000万㌦で推移している。
◆新造船価相場/タンカー・バルカー弱含み横ばい ≪原油船 目先成約ベースで下落も≫タンカー、バルカーの新造船
価相場は共に弱含み横ばいが続いている。足元のレベルはVLCC(大型原油タンカー)が気配値で9,350万㌦。ただし、
韓国造船が1月1日以降の起工船に適用されたNOx(窒素酸化物)3次規制を取り込んだ新デザインで新造船を受注し、
船台を埋めるには運賃市況が相対的に良好なタンカーが最有力とみられていることから、今後は実際の成約ベースで
新造船価が下落する可能性がある。マーケット筋によると、タンカーの足元の新造船価レベルはVLCC9,350万㌦(32万
重量㌧型)、スエズマックス6,000万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックス5,200万㌦(11万5,000重量㌧型)と原油船
は弱含み横ばい。MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは横ばいの3,550万㌦となっている。バルカ
ーは全船型で弱含み横ばい。ケープサイズ4,600万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス2,580万㌦(7万6,000重量㌧型)、
ハンディマックス2,430万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,050万㌦(3万5,000重量㌧型)。ガス船は、LNG(液化
天然ガス)船は弱含み横ばいの2億300万㌦(17万4,000立方㍍型)、大型LPG(液化石油ガス)船VLGCは横ばいの7,700
万㌦(8万2,000立方㍍型)。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、2,750TEU型は弱含み横ばいの2,9
50万㌦。自動車船(PCTC)はやや強含み横ばいの6,000万㌦(6,000台積み)となっている。
②中古船
◆中古船価/バルカー続落 ≪パナマッケス5年物1,300万㌦台≫英国ボルチック・エクスチェンジの4日付の中古船価
インデックス(船齢5年)は、バルカーが全船型で続落し、タンカーはMR型を除いて下落した。バルカーの下落はケープ
サイズ、パナマックスで14週連続、スープラマックスで11週連続。ケープサイズは前週比47万㌦安い2,531万㌦、パナマッ
クスは35万㌦安い1,384万㌦となった。スクラップ船価はインド亜大陸解撤の全船型で反発した。直近のマーケットレポ
ートで報告されたバルカーの中古船売買成約は、ケープサイズで17万6,346重量㌦型“Nord Power”(2005年ユニバー
サル造船建造)をギリシャバイヤーが1,225万㌦で買船。ポストパナマックスは8万8,300重量㌧型“Ikan Kurau”(06年今
治造船建造)をオルデンドルフが610万㌦で買船。パナマックスでは7万3,500重量㌧型“HeMing”(12年浙江造船建造)が
1,000万㌦で買船された。ハンディマックスでは5万2,600重量㌧型“FurnessKarumba”(01年新来島どっく建造)が390万
㌦、5万2,433重量㌧型“westernSingapore”(03年常石セブ建造)が500万㌦でそれぞれ買船された。ハンディサイズで
は3万1,784重量㌧型“Eco Discovery”(99年函館どつく建造)を欧州バイヤーが400万㌦で買船した。タンカーの中古
船マーケットでは、ケミカル船で3万6,032重量㌧型“Cielo di Salerno”(02年STX造船建造)をSWキャップ・フェラット・シッ
ビングが1,300万㌦で買船したほか、1万7,999重量㌧型“Mar Adriana”(02年スペインのヴアルカーノ造船建造)が1,000
万㌦で買船された。1万4,300重量㌧型“Lodestar Grace”(02年浅川造船建造)をシンガポールバイヤーが1,100万㌦で
買船した。
◆バルカー中古船価/大幅続落 ≪ケープサイズ5年物2,300万㌦台に≫英国ボルチック・エクスチェンジの11日付の中
古船価インデックス(船齢5年)は、バルカーが全船型で大幅に続落し、タンカーは全船型で上昇した。バルカーの下落は
ケープサイズ、パナマックスで15週連続、スープラマックスで12週連続。ケープサイズは前週比161万㌦安い2,370万㌦
になった。スクラップ船価は中国、インド亜大陸解撤の全船型で下落した。直近のマーケットレポートで報告されたバルカ
ーの中古船売買成約は、ケープサイズで17万7,775重量㌧型“Faustina”(2010年上海外高橋造船建造)をギリシャ船主
テナマリスが1,900万㌦で買船。ボルチック・エクスチェンジの船齢5年物の中古船価インデックスよりおよそ470万㌦安
い。パナマックスでは7万2,891重量㌧型“Deep Seas”(99年三星重工建造)を中国筋が288万㌦で買船。また、パラゴン
シッビングが11日に7万2,493重量㌧型“KindSeas”(99年今治造船建造)を350万㌦で売船したと発表した。買主は明らか
にしていないが、マーケットレポートではギリシャ筋と伝えられている。タンカーの中古船マーケットでは、VLCCで32万10
0重量㌧型“Hemsedal Spirit”と“Voss Spirit”(ともに10年大宇造船建造)をサウジアラビアのバーリが1隻当たり7,750
万㌦で買船。15万2,923重量㌧型“DHT Trader”(00年現代重工建造)をグローバルユナイテッドが2,650万㌦で買船。ケ
ミカル船では4万7,400重量㌧型“Gener8 Consul”(04年クロアチアのウルヤニク造船建造)をノルウェーバイヤーが1,
750万㌦で買船したほか、7,000重量㌧型3隻(09-11年ペナン造船建造)をマレーシアのジャサ・メリンが1,710万㌦で一
括買船した。
◆中古船価相場/バルカー下落基調強まる ≪タンカーは年明け上昇≫年明けの中古船マーケットは、バルカーの船価
が下落基調を強め、全船型で下げ幅が大きくなってきた。一方、タンカーの船価レベルは、全船型で上昇している。マー
ケット筋によると、バルカーの足元の船価レベルは直近と比べ、ケープサイズは新造リセールが200万㌦安の3,700万
㌦、船齢5年物は100万㌦安の2,400万㌦、船齢10年物、15年物はそれぞれ弱含み横ばいの1,350万㌦、850万㌦。パナマ
ックスは、新造リセールが100万㌦安の2,400万㌦、船齢5年物、10年物、15年物は弱含み横ばいで、それぞれ1,400万㌦、
850万㌦、500万㌦。ハンディマックスは、新造リセールが150万㌦安の2,100万㌦。船齢5年物、10年物、15年物は弱含み
横ばいで、それぞれ1,350万㌦、800万㌦、450万㌦で推移している。ハンディサイズは、新造リセール、船齢5年物が弱
含み横ばいで、それぞれ1,900万㌦、1,000万㌦。船齢10年物は100万㌦安の700万㌦、船齢15年物は50万㌦安の400万
㌦。タンカーの足元の船価レベルは、VLCC(大型原油タンカー)が新造リセールは横ばいの1億㌦、船齢5年物は200万㌦
高の8,200万㌦、船齢10年物は300万㌦高の5,800万㌦、船齢15年物は横ばいの3,800万㌦。スエズマックスは、新造リセ
- 7 -
ールが横ばいの7,000万㌦、船齢5年物は100万㌦高の6,100万㌦、船齢10年物は300万㌦高の4,500万㌦。アフラマック
スは、新造リセールが横ばいの5,500万㌦、船齢5年物は100万㌦高の4,700万㌦、船齢10年物は100万㌦高の3,200万
㌦。
◆中古船価相場/ケープ軒並み安 ≪タンカーは全船型横ばい≫中古船マーケットで、ケープサイズバルカーの中古
船価が続落し、全船齢で軒並み安となっている。一方、タンカーの中古船価レベルは、全船型で横ばいで推移している。
マーケット筋によると、バルカーの足元の中古船価レベルは直近と比べ、ケープサイズが新造リセール(転売)は100万
㌦安の3,600万㌦、船齢5年物は100万㌦安の2,300万㌦、船齢10年物は50万㌦安の1,300万㌦、船齢15年物は50万㌦安
の800万㌦と全面安となっている。ドライ市況でケープサイズのマーケットが極度に低迷しているのが影響しているも
のとみられる。パナマックスは全般的に弱含み横ばい。新造リセール2,400万㌦、船齢5年物1,400万㌦、船齢10年物850
万㌦、船齢15年物500万㌦となっている。ハンディマックスは、新造リーセル、船齢5年物は弱含み横ばいで、それぞれ2,
100万㌦、1,350万㌦。船齢10年物は100万㌦安の700万㌦。船齢15年物は弱含み横ばいの450万㌦。ハンディサイズは、
新造リセールが弱含み横ばいの1,900万㌦、船齢5年物は50万㌦安の950万㌦。船齢10年物、15年物は弱含み横ばい
で、それぞれ700万㌦、400万㌦となっている。タンカーの足元の中古船価レベルは、全般的に横ばいながら小じっかり
した展開。VLCC(大型原油タンカー)は、新造リセール1億㌦、船齢5年物8,200万㌦、船齢10年物5,800万㌦、船齢15年物
3,800万㌦。スエズマックスは、新造リセール7,000万㌦、船齢5年物6,100万㌦、船齢10年物4,500万㌦。アフラマックス
は、新造リセール5,500万㌦、船齢5年物4,700万㌦、船齢10年物3,200万㌦となっている。
◆ケープ5年物2,100万㌦台に ≪中古船価、バルカー続落≫英国ボルチック・エクスチェンジの25日付の中古船価イン
デックス(船齢5年)は、バルカー全船型で下落した。バルカーの下落はケープサイズ、パナマックスで17週連続、スープ
ラマックスで14週連続。ケープサイズは前週比78万㌦安い2,194万㌦になった。タンカーはVLCCとMR型が上昇し、アフラ
マックスが続落した。スクラップ船価は中国、インド亜大陸解撤の全船型で続落した。直近のマーケットレポートで報告さ
れたバルカーの中古船売買成約は、17万2,500重量㌧型“Nisshin Trader”(2001年NKK建造)をトルコのカラデニズが62
5万㌦で買船。パナマックスでは8万1,500重量㌧型“EternityIsland”(12年現代重工建造)をアルファ・バルカーズが1,370
万㌦で買船したほか、7万5,700重量㌧型“salvatore Cafiero”(01年三井造船建造)を中国バイヤーが350万㌦で買船。
ハンディマックスではボレアリス・マリタイムが5万8,100重量㌧型“sandra”(12年常石舟山建造)を1,200万㌦、5万6,500
重量㌧型“selecta”(10年ベトナムのナム・チュウ造船建造)を950万㌦で買船したほか、5万8,100重量㌧型“Hudson Tra
der I”(09年常石舟山建造)が800万㌦で買船された。5万5,600重量㌧型“Bianco Dan”(04年大島造船所建造)を中国
バイヤーが520万㌦で買船。4万5,900重量㌧型“JoostSchulte”(97年カナサシ造船建造)が220万㌦で買船された。ハ
ンディサイズでは2万8,400重量㌧型“zini”(98年函館どつく建造)を中国バイヤーが280万㌦で買船した。タンカーの中
古船マーケットでは、MR型で5万2,000重量㌧型“CFO Japan”と“CPO Korea”(それぞれ10年、9年現代尾浦建造)をギリ
シャバイヤーがそれぞれ2,850万㌦、2,750万㌦で買船。4万500重量トン型“H Ismail Kaptanoglu”(05年ルーマニアの
ブロドトロギル造船建造)が1,100万㌦で買船された。3万7,900重量㌧型“AIpine Hibiscus”(10年現代尾浦建造)をエレッ
トソン・ガスが2,450万㌦で買船したほか、3万5,400重量㌧型“Elbtank German”(99年大宇造船建造)が975万㌦で買船
された。このほか1万6,500重量㌧型“Kenza”(01年しまなみ造船建造)を韓国バイヤーが850万㌦で買船した。
◆中古船価相場 タンカー・バルカー続落 タンカーとバルカーの中古船価相場が続落した。タンカー市況の反落、ドラ
イ市況の底ばいを反映したとみられる。タンカーは原油船の全船型で下落、バルカーは中型船のパナマックス、ハンデ
ィマックスが軒並み安となった。マーケット筋によると、タンカーの足元の中古船価レベルは直近と比べ、VLCC(大型原
油タンカー)が新造リセールは200万㌦安の9,800万㌦、船齢5年物は100万㌦安の8,100万㌦。船齢10年物、15年物は横
ばいで、それぞれ5,800万㌦、3,800万㌦。スエズマックスは、新造リセールが100万㌦安の6,900万㌦、船齢5年物は200
万㌦安の5,900万㌦、船齢10年物は100万㌦安の4,400万㌦に下げた。アフラマックスは、新造リセールが横ばいの5,500
万㌦、船齢5年物は200万㌦安の4,500万㌦、船齢10年物は200万㌦安の3,000万㌦。バルカーは、ケープサイズが新造
リセール、船齢5年物、10年物は弱含み横ばいで、それぞれ3,600万㌦、2,300万㌦、1,300万㌦。船齢15年物は100万㌦安
の700万㌦という。パナマックスは、新造リセールが100万㌦安の2,300万㌦、船齢5年物は100万㌦安の1,300万㌦、船齢
10年物は50万㌦安の800万㌦、船齢15年物は100万㌦安の400万㌦。ハンディマックスは、新造リセールが100万㌦安の
2,000万㌦、船齢5年物は50万㌦安の1,300万㌦、船齢10年物は50万㌦安の650万㌦、船齢15年物は50万㌦安の400万
㌦で推移している。ハンディサイズは、新造リセールが100万㌦安の1,800万㌦。船齢5年物、10年物は弱含み横ばいで、
それぞれ950万㌦、700万㌦。船齢15年物は50万㌦安の350万㌦となっている。
◆国内造船、韓国の受注攻勢に警戒 ≪韓国大手が昨年実績上回る受注目標≫日本の造船所が新規制適用前の駆
け込みなどを背景に線表を2019年以降に進める中、新造船市場では2018年納期の船台をまだ確定していない韓国造
船所の動向に注目が集まっている。発注が期待されるタンカーなどで受注攻勢に出るとの見方もあるからだ。業績悪
化の影響から極端な安値の受注には踏み切らないとの声もあるが、韓国大手3社は昨年実績を大幅に上回る受注目標
を設定している。日本の造船所は一定の手持ち工事を確保しているものの、タンカーやプロダクト船などでは競合の激
化が予想され、厳しい受注環境となる可能性もありそうだ。日本の造船所は昨年、新共通構造規則(H-CSR)や窒素酸
化物(NOx)3次規制の動向などを考慮しながらいち早く商談を進めてきた。既に2018年納期の船台を多くの造船所が
売り切り、3年程度の手持ち工事にめどを付けている。これに対して韓国造船所は18年納期の船台にもまだ空きがある
とみられ、得意とするタンカーで期近納期を提示できるようだ。タンカー市況が好調なこともあり、今年も発注が期待
できるのはタンカーと予想する日本の関係者も多いが、競合の激化を懸念する声も大きい。韓国造船所の受注目標を
みると、各社とも昨年の受注目標は下回るものの、昨年の実績を大幅に上回る受注目標を設定しているようだ。最大手
- 8 -
の現代重工業は全部門を含めた現代重工単体で195億㌦、グループ全体で計265億㌦としている。昨年実績と比較す
ると、単体で約4割、グループ全体で3割強上回ることになる。サムスン重工業や大宇造船海洋は受注目標をまだ公表
していないものの、複数の韓国現地紙で昨年目標比1-2割減と伝えられており、昨年実績と比べてサムスンが20-35%
増、大宇が2倍以上の受注目標になる見通しだ。3社とも業績の大幅な悪化を受けて、収益を優先する方針を示してお
り、採算度外視の受注攻勢には出ないと考えられる。プロダクト船やタンカーなどを建造する韓国中堅造船所も、実質
的な銀行管理となる自律協約下での再建を図っており、極端な赤字では受注できない。ただ、厳しいマーケット環境下
で昨年実績を上回る目標を掲げていることから、積極的な受注姿勢を示しているようだ。また、韓国大手の商船回帰
が加速し、一般商船での競合が激化する可能性がある。収益面でも巨額損失の原因となった海洋関連を避け、一般商
船で積極的に受注を進める見通し。現代重工も昨年目標では商船部門が占める割合は全体の5割程度だったものの、
今年は7-8割になるとの予想も現地紙では報じられている。韓国大手3社の受注実績は昨年の受注目標をいずれも大
幅に下回った。現代重工業がグループの全部門で200億㌦強、造船・海洋部門で150億㌦前後となった見通しで、年初の
受注目標に対する達成率は70%程度にとどまった。大型の海洋案件の受注があったサムスン重工も達成率70%程度の
100億㌦で、巨額の損失で経営危機に陥った大宇は35%程度の45億ドルにとどまった。昨年に受注目標を大幅に下回っ
たことで、韓国造船所が今年巻き返しを図る可能性はありそうだ。ドライバルク市況が年明けから記録的な安値水準で
推移するなど「最悪の環境でのスタートになった」(国内造船所関係者)今年の新造船市場。バルカーだけでなく、市況
が好調なタンカーでも駆け込みの反動や船価の弱含みから商談の足取りは鈍い。新規制対応のコストが船価に折り込
まれるまでには時間がかかり、新規商談の本格的な再開は、少なくとも年後半にずれ込むとの見通しもある。日本の造
船所は、当面は様子見に入らざるを得ない中、韓国造船所がどのような受注方針をとってくるかで、マーケットの様相
も大きく変わってきそうだ。韓国が受注攻勢に出ることで、船価相場の下落を懸念する声もある。
◆バルカー以外の船種建造へ本腰 ≪国内中小造船、新規制対応など設計ネックも≫国内の中小造船所でバルカー
以外の船種の受注を並行して進める動きが活発化している。小型船型を中心に建造する造船所は、まだ18年納期の船
台を確定していないことも多く、受注できる船種を模索している。ただ、主力のバルカーの新規制への対応や建造間隔
が空いたことで、かつて手掛けていた船種や内航船などの引き合いがあっても、設計の手が回らず、受注を見合わせ
なければならない状況もあるようだ。ハンディサイズや近海貨物船の新造需要低迷が長期化する懸念もあり、どの船
種の建造を優先するか難しい判断を迫られている。ドライバルク市況の長期低迷や規制前の駆け込みの反動を背景に
バルカーの新造商談は停止している。国内の大手や中手の造船所が昨年来、タンカーやコンテナ船などバルカー以外
の船の受注にシフトしてきたが、ハンディサイズ以下の船型をメーンに建造する造船所でも同様の動きが出てきた。冷
凍船や内航船、フェリーなどの建造を進める造船所も増えている。ただ、ネックになるのが設計陣だ。今年の起工船か
ら適用になる窒素酸化物(NOx)3次規制などの新規制対応にリソースを投入していることや、ベテラン設計陣の退職も
あり、「設計も現場も人手が足りない」(国内造船所関係者)。造船所によって異なるものの、小型船型を中心に建造す
る造船所が1年に手掛けられる新船型は総じて1隻プラスアルファ。主力製品で大掛かりな設計の見直しが必要になれ
ば、1隻ごとに個別設計が必要になる内航船やフェリーなどを手掛ける余力は少ない。特に内航船は短納期の案件が
中心となるため、設計リソースが集中的に必要になる。2014年以降、IMOの船内騒音規制、NOx3次規制など大型規制の
適用が続き、造船所にとっては頭の痛い問題となっている。ハンディサイズ主力ヤードは、既存顧客からの要望に応え
るべく、まずは主力製品の規制対応船型の開発に取り組んでいる造船所が多い。既に居住区に1層追加して居室を上に
上げるなどの対策で騒音規制はクリアできる見通しで、NOx3次規制についても積み上げたスペースに排気ガス後処理
装置(SCR)などを投入することで方向性は固まっている。ただ、今後も詳細設計などの造り込みで設計リソースを投入
しなければならず、設計陣が不足する傾向は続きそうだ。また、リーマン・ショック以降、需要の底堅いバルカーの建造に
絞った造船所も多く、他の船種の建造間隔が空いていることも大きく影響している。バルカーの連続建造と設計や現
場のベテラン人材の退職が重なり、建造したことのある船種でもゼロからの開発になることも多いようだ。このため、
かつて取引のあった船主から引き合いがあっても、二つ返事で受注できない状況となっている。昨年の規制適用前の
駆け込みで18年納期の船台を確定してきた国内の造船所だが、まだ18年納期の船台を確定していない造船所もある。
短納期になることが多い近海船や内航船クラスの船型を手掛ける造船所は17年納期の船台が埋まっていないところ
もある。少なくとも2年以上の手持ち工事は確保した造船所が多いものの、駆け込みが終わったいま、次の商談が動き
出す気配はない。「NOx規制への対応でコストアップが避けられず、商談の再開はまだ先になる」(市場関係者)。対応策
を講じる造船所が増えているが、手持ち工事のあるうちにどこまで手を打てるかがカギになりそうだ。
◆スエズ型タンカー新造発注が高水準 ≪昨年70隻規模、06年に次いで2番目≫昨年表面化したスエズマックス・タン
カーの新造発注は、本紙集計で確定分で67隻、オプションを含めると80隻規模の高水準だった。1月の起工船から適用
された窒素酸化物(NOx)3次規制前の駆け込みの影響などで発注が増加した。2000年以降では、未曾有の発注ブーム
となった2006年に次ぐ水準になる。発注残が積み上がったことを受けて、発注に一服感もあるものの、海運市況が好
調なことや新パナマ運河の開通に伴う需要増加など、引き続き期待を寄せる声も多いようだ。スエズマックスは昨年、
年間を通じてコンスタントに発注があり、67隻プラス・オプション11隻が発注された。発注ブームのあった2006年の83隻
に次ぐ水準で、2010年の58隻を上回った。発注した顔ぶれを見ると、約7割がギリシャ船主系。リプレースのほか、好調な
市況や発注残比率の低さ、値頃感などを背景に発注に踏み切ったとみられる。また、ケープサイズ・バルカーなどから
の船種変更も一定量あった。スエズマックスの発注先は、韓国の現代重工業グループと成東造船海洋の2社の寡占状態
がここ数年続いていたが、昨年はサムスン重工業や大宇造船海洋の韓国大手や、新時代造船や中海工業(江蘇)ら中
国造船所も受注を再開している。また、日本もジャパンマリンユナイテッドが新船型を開発し、海外船主向けに受注を決
めた。バルカーの需要がなくなったことで、今後も参入や再開を検討する造船所もありそうだ。船価水準は年間を通し
てほぼ横ばいだった。成約を基にすると6000万-6700万㌦。韓国大手が6,500万㌦前後なのに対して、中国造船所は6,
000万㌦前後と開きがあり、今後の動向が注目される。14年以降の発注ブームで発注残が積み上がっており、発注に一
- 9 -
服感もある。2011年以降は3年間でわずか7隻しか発注されていなかったスエズマックスだが、ここ2年で110隻以上が
発注されたことになる。クラークソンの統計によると、昨年12月末時点のスエズマックスの発注残は100隻を超えた。た
だ、既存船隊に占める発注残比率は2割程度とそれほど高くないうえ、依然として用船市況も堅調だ。また、新パナマ
運河の開通に伴って、スエズマックスの新たなトレードが出てくる期待もある。
◆国内造船業、採算が曲がり角に ≪新規船で苦戦、為替・受注残もリスク≫国内造船所の事業採算が曲がり角を迎
えている。ここ数年は為替の追い風を受けて、他国よりも高い利益率を確保していたが、今期から収益が悪化し始めて
いる。海洋関連工事などで大型の赤字案件が表面化しているが、これ以外にも造船所が新規に取り組んでいる船種な
どで、採算が悪化する例が出ている。一般商船の分野でも、採算の厳しい低船価の受注船が大半を占める。1㌦=120円
前後の円安水準で業績が下支えされている面があるものの、今後の為替動向や鋼材価格が懸念されるほか、受注残
の大半を占めているバルカーをめぐる契約変更などのリスクも高まっている。今期は総合重工系で赤字決算が相次ぐ
見通しだ。三菱重工業は客船と調査船で苦戦。川崎重工業と三井造船、IHIも、海洋関連工事で赤字決算となる見込み
だ。発足以来黒字基調だったジャパンマリンユナイテッド(JMU)も、今期は新規船が集中していることもあり、採算が厳
しくなる見通し。これ以外の造船所でも、新たに取り組んだ船種で、工数の増加や工程混乱などに伴い、採算が悪化す
る例が出てきているようだ。今後は「脱バルカー」として受注した新規船種の建造が、各造船所で増えてくる。乗り出し
当初は、バルカーの連続建造時ほどの生産効率を発揮することが難しいため、採算面では苦労することになりそうだ。
ここ数年、日本の造船所は為替などを追い風に高い利益率を上げていた。韓国が海洋プロジェクトでの巨額損失と一
般商船でのウォン高による採算悪化により赤字決算に落ち込んだほか、中国も商船の悪化で赤字に沈む中で、日本の
好調さは際立っていた。特に専業造船所は2ケタの利益率を維持。比較的高い操業をキープし、船価高騰時の受注船が
残っていたことなどが背景にあった。総合重工も、操業は落としながらも、一般商船では採算ラインを維持していた。や
はり業績好調の最大の理由は為替にあった。円安によって工事採算が好転したほか、円高時に積み増した損失引当金
が円安になって戻り、利益がかさ上げされた側面があった。だが、少なくとも引当金の戻りによる「上げ底」は今後はな
くなる。今期は1㌦=120円前後の円安水準が続いているにもかかわらず、国内造船所は減益基調にある。為替が変動
すれば、円安時に受注した船の採算計画なども大きく狂いかねない。また今後の業績へのリスクとして認識されている
のが、バルカーの受注残だ。ドライバルク市況の低迷が長期化することで、契約の不履行のリスクが高まっている。
Ⅲ.各国造船業の動向
◆2015年/世界の新造発注1,400隻突破 ≪タンカーけん引527隻、バルカーは149隻にとどまる≫2015年の世界の新造
発注隻数は1,400隻を突破した。2度にわたる国際ルール改正が建造コストアップ・燃費性能低下を招くため、これを回
避しようと海運・造船両サイドが積極的に成約に動いた。特に運賃市況が好調なタンカーがけん引し、原油船・プロダク
ト(石油製品)船・ケミカル船を合わせ527隻に達した。対照的にドライ市況低迷が続きトンネルの出口が見えないバルカ
ーは、大型のケープサイズから小型のハンディサイズまでの船型合計で149隻にとどまった。本紙の集計によると、15年
の世界の新造発注は1,419隻(解約・転売除く)。13年の2,123隻、14年の1,754隻に続き、3年連続の高水準となった。主な
船種別内訳は、タンカー527隻、コンテナ船319隻、バルカー149隻、ガス船59隻、自動車船(PCTC)52隻、その他313隻。
タンカーは、原油船がVLCC(大型原油タンカー)59隻、スエズマックス68隻、アフラマックス94隻だった。一方、プロダクト
船は、LR(ロングレンジ)Ⅲ52隻、LR(ミディアムレンジ)97隻。ケミカル船は106隻。邦船社にとって主戦場であるVLCCが
59隻に積み上がったものの、デリバリーは最も集中している17年で30隻と分散したため、14年までに発注された新造
船を加味しても、世界の原油需要の増加基調によっては供給圧力を十分に吸収できる可能性がある。対照的に、16年1
月1日以降の起工船にNOx(窒素酸化物)3次規制が適用されるのを受け、アフラマックス、MR、ケミカル船では駆け込み
契約が年末に向け積み上がった。MR、ケミカル船では、まだ表面化していない新造船も多数あるとみられている。バル
カーは、ケープサイズが10隻にとどまった。ポストパナマックスは14隻、カムサマックス・パナマックスは17隻。ドライ市況
の中でも特に低迷著しいパナマックスはわずか4隻だった。ハンディマックスは25隻。船価が相対的に低いハンディサイ
ズは消去法的に投資対象として選ばれ、83隻に積み上がった。ガス船は、大型LNG(液化天然ガス)船が27隻、大型LPG
(液化石油ガス)船VLGCは32隻。自動車船(PCTC)は52隻だった。海運主要3部門のうち運賃市況が低迷しているコンテ
ナ船で、さらにサプライ・プレッシャーが強まることが最も懸念される。
◆中国造船/ケミカル舶受注に傾斜、バルカ一発注消失で 中国造船が、ケミカルタンカーの受注を積極化させてい
る。寧波新楽造船は2万6,300重量㌧型最大4隻を獲得し、建友船舶は5,390重量㌧型1隻を受注した。ドライ市況の長引
く低迷に加え、竣工船の品質問題からバルカーの新造発注が中国で姿を消す中で、中国造船は昨年からケミカル船の
受注を活発化させている。マーケット筋によると寧波新楽造船はプライム・シッビング(ドバイ)から2万6,300重量㌧型ケ
ミカル船2隻プラス・オプション2隻を受注した。デリバリーは確定の2隻が2017年3月、6月。船価は明らかにされていな
い。オプション2隻は、行使されれば18年9月、12月納期となる。新楽造船がフルステンレスのケミカル船を受注・建造す
るのは初めてとみられる。確定2隻はデリバリー・ポジションが比較的早く、納期に間に合わせて引き渡しできるか注目
を集めそうだ。建友船舶は、厦門建友シッビング(中国)から5,390重量㌧型ケミカル船1隻を受注した。デリバリーは17
年6月。昨年から、中国ヤードのAVIC鼎衡、江蘇韓通、華泰重工などがケミカル船を積極的に受注。ケミカル船関係者
は、実際に新造船が引き渡されるのか注目している。
- 10 -
◆中国造船/受注半減の3,100万重量㌧ ≪15年のCANSI統計、竣工量はピーク比半減≫中国船舶工業行業協会(CAN
SI)はこのほど、2015年の中国造船業の年次報告書を公表した。新造船受注量はバルカー需要の低迷などが影響し、前
年比48%減の3,126万重量㌧。新造船竣工量は前年を上回る4,184万重量㌧だったものの、ピークの2011年と比較する
と5割近く減少している。2015年1-12月の新造船実績は表のとおり。受注量が減少する一方で、竣工量が増加したこと
で、手持ち工事は大幅に減少した。また、11月までは月間200万重量㌧前後の受注量と不振が続いていたが、12月には8
07万重量㌧を受注し、巻き返した。12月はNOx3次規制前の駆け込み契約分などがあったとみられる。報告書の中で201
6年の新造船市場の見通しについては、世界全体の受注量を約7,000万重量㌧と予想している。また、中国の竣工量は1
5年並みの約4,100万重量㌧、受注量もほぼ横ばいで、手持ち工事量は1億2,000万重量㌧規模に減少すると想定してい
る。2015年実績のうち輸出船は、竣工量が12%増の3,707万重量㌧、受注量が50%減の2,770万重量㌧、手持ち工事が1
8%減の1億117万重量㌧で、竣工・受注・手持ち工事量に対して輸出船が89%、89%、96%を占めている。一定規模以上
の船舶関連企業1,449社の1-11月の実現主営業務収入は2%増の6,886億元(約12兆2,000億円)。このうち造船所3%増
の3,532億元(約6兆2,800億円)、舶用メーカーは8%増の904億元(約1兆6,000億円)、修繕ヤードは3%減の197億元
(約3,500億円)。同期間の一定規模以上の船舶関連企業の実現利潤は37%減の156億元(約2,800億円)。このうち造船
所が14%減の123億元(約2,200億円)、舶用は11%増の43億元(約760億円)、修繕は2.5倍の8億2,000万元(約150億
円)。中国の修繕は増益となったものの、造船・舶用は減益となった。昨年と比べて対象となる一定規模以上の船舶関
連企業数は43社減となっている。
◆16年の受注目標1割減の265億㌦ ≪現代重工グループ、三湖や尾浦は前年並み≫韓国の現代重工業は、証券取引
所への公示や年頭所感で2016年の受注目標をグループ全体で全部門を含めて計265億㌦に設定したことを明らかに
した。現代三湖や現代尾浦は前年目標並み以上に設定しているものの、グループ全体では1割減になる。今年の新造船
市場の焦点の1つが、まだ船台に余裕のある韓国造船所の動向だけに、最大手の現代がどれほどの受注を見込んでい
るか注目される。現代重工グループの16年の受注目標、売上高目標、引き渡し予定は表のとおり。受注目標は、現代重
工本体が195億㌦、子会社の現代三湖重工が40億㌦、現代尾浦造船が30億㌦で、15年の受注目標と比べて、現代三湖
は微増、現代尾浦は横ばいとしたものの、現代重工本体は15%減となった。ただ、現代重工本体も部門別の内訳を明ら
かにしておらず、商船でどれほどの受注を見込んでいるかは不明。昨年の受注実績をみると、11月末時点で現代重工が
部門全体で138億㌦、現代三湖が36億㌦、現代尾浦が28億㌦となっており、グループ全体で年初に設定した受注目標
には届かない見通し。ただ、現代尾浦や現代三湖は受注目標並みに達している。現代重工本体も造船部門は受注目標
には届かないものの、昨年の受注実績を上回る見通し。海洋案件の低迷や大規模な損失の計上から商船へと回帰する
傾向が強くなっている。今年の新造船マーケットの焦点の1つに韓国造船所の受注動向がある。商船回帰に加えて、日
本と比べると、期近な納期の船台にまだ余裕もあることから、市場の中心が韓国造船所になるとの見方も多い。特に市
況が好調なタンカーは、韓国が得意とする船種だけに、その動向に注目が集まっている。
◆韓国/15年船舶関連輸出 微増 ≪今年は海洋の納期延期懸念≫韓国の産業通商資源部がまとめた同国輸出入
実績(速報)によると、2015年の船舶関連輸出額は前年比0・3%増の400億㌦(4兆7,200円)だった。上期に海洋プラント
の引き渡しが相次いだのが寄与しプラスを確保。下期以降は海洋プラントの納期延期などが急増し失速した。産業通商
資源部は、16年は引き渡し数量の減少や海洋プラントの納期延期・契約解除の発生が懸念されるとしている。韓国造船
大手3社(現代重工業、サムスン重工業、大宇造船海洋)の中で昨年、海洋プラントを受注したのはサムスン重工(3件・6
基)だけだった模様だ。海洋プラントをめぐっては、15年に受注が低迷したほか、引き渡し延期や建造契約解除が発生。
韓国取引所への告示ベースで、サムスン重工がドリルシップ(掘削船)の建造契約4件・6隻に関して発注者の要請で納期
を先送りしたほか、1隻について発注者による一方的な解約があった。さらに今年に入りFLNG(浮体式LNG〈液化天然ガ
ス〉生産・貯蔵設備)の船体1隻の建造契約について、契約期間延長を告示。期限が15年12月末から16年2月末に延びた。
発注者による建造着手指示(ノーティス・ツー・ブロシード、NTP)が着工の条件で、期限までにNTPがない場合は解約に
なるとしている。大宇も昨年、ドリルシップ1隻の建造契約を発注者の契約不履行により解除。別の計3隻を船主の要請
で納期延長した。年末には計4隻の納期先延ばしを発注者と協議していると明かした。現代重工グループも昨年、セミ
マーシブル・リグ(半潜水型掘削装置)2基について、納期遅延により発注者から契約を解除されたことが表面化した。
◆16年の受注目標は最大430億㌦ ≪韓国造船大手、15年実績は285億㌦≫韓国造船大手3社の造船・海洋(オフショ
ア)部門の昨年の年間受注実績が出そろった。受注高は計285億㌦で、前年比27%減となった。16年の年間受注目標
は、3社合計で最大430億㌦規模とみられ、15年の実績を大幅に上回っている。海洋案件の低迷を受けて、商船の受注
比率が高めに設定されているもよう。現代重工業グループの16年の受注目標は、公表しているIR資料によると、現代重
工本体の造船部門が85億㌦、海洋が32億㌦、現代三湖重工が40億㌦、現代尾浦造船が30億㌦で、計187億㌦になる。
また、韓国現地紙によると、サムスン重工業は100億-150億㌦、大宇造船海洋は90億-100億㌦に16年の受注目標を設
定したようだ。3社グループの15年の受注実績は表のとおり。現代の造船・海洋部門の受注実績は、グループの現代三
湖や現代尾浦を含めて160隻・140億㌦で、前年同期比17%減だった。現代重工が60隻(タンカー25隻、コンテナ船15隻、
LNG船2隻、LPG船15隻、その他3隻)、現代三湖が41隻(タンカー20隻、コンテナ船5隻、LNG船2隻、LPG船4隻、その他10
隻)、現代尾浦が59隻(プロダクト船31隻、コンテナ船2隻、LPG船11隻、自動車船10隻、その他5隻)を受注した。中小型船
を主力とする現代尾浦を中心に8月以降、商船で受注の巻き返しを図った。サムスン重工は、ここまでの受注実績は49
隻(コンテナ船10隻、LNG船3隻、タンカー30隻、海洋構造物6基)。受注高の6割超を海洋案件が占めている。大宇造船海
洋は、これまでに31隻(コンテナ船11隻、タンカー8隻、LNG船9隻、LPG船2隻、その他1隻)を受注した。11月にタンカー1隻
を受注した。
- 11 -
◆韓国、造船不況の様相広がる 韓国で造船不況の様相が広がってきた。韓進重工は主取引銀行の韓国産業銀行
(ⅩDB)を筆頭とする銀行団から1300億ウォン(約130億円)の金融支援を受ける見通し。短期借入金の返済に充てる。リ
ストラの一環で釜山工場を売却し、造船事業はフィリピンのスービック工場に集約することも選択肢として浮上している
ようだ。船価低迷で新造船事業の損益が悪化し、原油価格下落の影響でオフショア(海洋構造物)事業で苦戦が続く韓
国造船業界では、現代重工がオフショア・ヤードの稼働をこの3月いっぱいで停止する。韓進重工は管財人による管理を
回避するため、自主的な負債削減、KDBと共同運営を行うことで合意済み。海外からの情報によると、銀行団によるデュ
ー・デリジェンス(資産査定)の結果、2500億ウォンの資金不足に陥っており、銀行団はまず、この4月までに短期借入金
の返済に必要な⊥300億ウォンを緊急融資する。韓進重工は以前から、韓国国内の釜山工場を造船事業から撤退させ、
同事業をフィリピンに集約したい意向を持っていたものの、雇用などの観点から実施できずにいた。しかし、業績悪化に
よりリストラを余儀なくされる事態となったのを受け、釜山工場売却が現実味を帯びてきた。同社の負債総額は4兆680
0億ウォン。一方、現代重工は、第2オフショア・ヤード(20万平方㍍)の稼働を3月いっぱいで停止する。受注済みのプラン
トの工事を消化し、工事がなくなるため。同ヤードは2012年に稼働を開始した。
Ⅳ.造船・造機以外の産業動向
◎外航海運
◆15年運賃、29年ぶり低さ/ばら積み船、需給ギャップ拡大 天然資源などを運ぶばら積み船の運賃水準を示すバル
チック海運指数(BDI、1985年=1,000)は、2015年平均で718となり86年(715)に次いで過去2番目に低かった。中国経済
の減速で輸送需要に頭打ち感が出てくる中、船舶の新規供給が続き需給ギャップが広がった。BDIは英バルチック海運
取引所が主要海域の運賃や用船料(海運会社が船主から船を借りるチャーター料)を基に算定し、公表している。15年
は14年平均に比べて35%低下し、3年ぶりに1,000を下回った。なかでもばら積み船の最大船型で、鉄鉱石や石炭を運
搬するケープサイズの不振が目立つ。スポット(随時契約)市場の用船料は15年中の最高額が1日あたり約1万9,500㌦
で、海運業界の採算ラインとされる2万~2万5,000㌦に一度も届かなかった。ここ数年、世界的な金融緩和を背景に船舶
投資が活発だったため、16年いっぱいは新規供給が高水準で推移するとの見方が多い。一方で中国など世界経済の先
行きに不透明感が強く、荷動きの伸びは鈍っている。「歴史的な海運不況」(国内海運大手)が終わる兆しは見えてこな
い。
◆ばら積み船運賃の下落加速 ≪海運指数、400割れ目前≫天然資源や穀物を輸送するばら積み船のスポット(随時
契約)運賃の下落が加速している。総合的な値動きを示すパルチック海運指数(BDI、1985年=1,000)は12日時点で前日
比13ポイント低下し402となった。6営業日連続で過去最低を更新し、400を初めて割り込む可能性が高まっている。季
節的に荷動きが鈍る時期を迎えたのに加えて、資源価格の下落も影響している。昨年は船舶の供給過剰に中国経済の
減速が重なり、年平均では85年の集計開始以降、86年に次いで過去2番目に低かった。ばら積み船の需給は緩く、主に
鉄鉱石を運ぶ大型船のケープサイズ、石炭を輸送する中型船パナマックスなど、すべての船型で用船料や運賃が安値
で推移している。
◆タンカー運賃 騰勢鈍る ≪中東一東アジア直近高値比4割安≫大型原油タンカーのスポット(随時契約)運賃が下落
した。運賃水準を示すワールドスケール(WS、題準運賃=100)は代表的な航路の中東-東アジア間で直近の高値だった
2015年12月上旬に比べて4割安くなった。原油価格が一段と値下がりするとの見方が広がり、当面の買い付けを手控え
る動きが強まった。騰勢が続いたタンカー運賃は上昇の勢いが鈍ってきた。≪原油先安観で調達手控え≫WSは国際的
な海運業界団体のワールドスケール協会が燃油などのコストをもとに算定する基準運賃に対し、実際の運賃がどの水
準にあるか示す。中東-東アジア間では前週平均が53・5となり、前々週に比べて3割下がった。2015-16年の基準運賃に
照らした場合、海運業界の採算ラインは50-60とみられ、海運会社の利益が目減りした形だ。原油価格の下落は「産業
界への恩恵が大きく、トレードも活性化する」(国内海運大手)が、先安観が強まると一段の値下がりを期待する需要家
がタンカーの調達を手控える傾向がある。実際、WSも原油の値下がりが加速した先週から下げピッチが速まった。1月に
入ってからは運賃が安くなりがちな老朽船や、定期修理を終えたばかりの船の契約が多かったこともWSの下げに拍車
をかけた。原油の荷動きも「現在の下げ基調から、様子見が続きそうだ」(日本郵船の近藤耕司タンカーグループ長)。1
2月上旬にはWSが100に迫るなどタンカー市場が過熱気味だったこともあり「15年末の高値の反動が生じた」(他の海
運大手)との指摘もある。それでも原油の荷動き自体に悲観的な見方は少ない。経済の減速感が強まっている中国で
も、15年12月の原油輸入量は前年同月比で9%増と7カ月連続で前年水準を上回った。2月以降は中東諸国や西アフリ
カなどからの出荷が増えるとの観測もあり「需給ギャップは再び縮む」(近藤氏)との見方もある。16年のタンカー運賃
を左右するのは船舶供給の動向だ。タンカーはここ数年、船主の投資対象が液化天然ガス(LNG)船などに移ったこと
もあり、新造船の就航数が少なかった。14年秋に原油価格が下落基調に転じて以降、タンカーの建造投資が拡大し、「今
年は新造船が大幅に増える見通し。イランへの米欧諸国の経済制裁が解除され、同国の国営企業が保有する大型タン
カー20-30隻も市場に本格復帰する可能性がある。
◆海上コンテナ運賃軟調/スポット、欧州航路6割近く下落 アジアから世界各地に向かう海上コンテナのスポット(随時
契約)運賃が軟調に推移している。船舶の過剰感が特に強い欧州航路は前年同期の水準を6割近く下回る。米西岸向け
も3割安い。中国が春節(旧正月)に入る前の時期は荷動きが毎年活発になるが、今年は需給バランスの緩和で価格競
争が激しく、海運各社による値上げが浸透しにくくなっている。《値上げが浸透しにくく》アジア-欧州のスポット運賃は
20フィートコンテナ1個あたり約550㌦で、前年の同じ時期に比べて57%安い。スポット市場での採算ラインとされる140
0~1500㌦を大きく下回る。日本海事センター(東京・千代田)によると、アジア発欧州向けの輸送量は2015年1~11月の
- 12 -
累計で前年同期比4・4%減と荷動きが鈍い。海運業界では一段の収益悪化を防ぐため、コンテナ船の運航を一部休止
する動きもあるが需給バランスの緩い状態が続く。米国向け荷動きの7割近くを占める西岸向けも40フィートコンテナ1
個あたり約1400㌦と前年同期を33%下回っている。東岸は14年冬からほ年春にかけて西岸の港湾労使紛争のあおりで
運賃が高騰した反動もあり、前年同期の半分にとどまる。底堅い個人消費を背景に荷動きは堅調さを保っているが、不
振の欧州から大型船が米国航路にシフトするなど供給に過剰感が出ている。アジア発のコンテナ貨物の6~7割を占め
る中国は毎年、旧正月の休暇を控えて貨物の出荷が一時的に活発になる。16年は旧正月の休暇日程が昨年より約10日
間早まり、昨年12月から「輸送需要が前倒しで出ている」(国内海運大手)。貨物の増加を見込んだ海運各社は12月中に
欧米向けの運賃を相次ぎ値上げし、一時は浸透した。しかし、船舶の空きスペースを埋めるために海運会社が割引に応
じる動きが広がり、年明け以降は再び値下がり基調に転じた。2月上旬まで海運各社の値上げは断続的に続く見通しだ
が、「運賃の一段の下落を何とか防いでいる状態にすぎない」(海運大手幹部)との声もある。今後の荷動きについて「1
6年は景気回復が期待される欧州向けが前年比3~4%、米国も5%程度伸びる」(日本郵船)との見方もある。ただ、毎
年1~3月は旧正月前を除き、荷動きが比較的少ない時期にあたる。コンテナ運賃は春先まで安値圏で推移する可能性
がある。
◎内航海運
◆内航燃油価格/A・C重油とも下落、10~12月期/原油値下がりで 2015年10~12月期の内航燃料油価格をめぐり川
重商事との間で最も早く妥結した川崎近海汽船は5日、両社間での決定価格を公表した。1㌔㍑当たりの油種別価格はA
重油が前期(15年7~9月期)に比べ1万1,300円安い5万8,800円、C重油が9,100円安い4万2,300円だった。その他の内航
各船社と石油元売り系特約店などとの価格交渉も同水準で決まる見通し。原油価格の下落で、A重油、C重油とも値下
がりとなった。C重油は2四半期連続の値下がり、A重油は2四半期ぶりの値下がりとなった。16年1~3月期は原油価格が
下落傾向にあることから、A重油、C重油とも値を下げる可能性が高い。A重油は総原価が15年10~12月期平均で1㌔㍑当
たり3万7,332円と、前期比2万9,255円下落したこともあり値を下げた。一方、C重油は内航燃油価格値決めの指標とな
る紙・パルプ向けC重油価格(王子製紙とJX日鉱日石エネルギーが四半期ごとに決める工場ボイラー用高硫黄C重油
価格)の15年10~12月期価格が昨年末、前期より9,100円安い3万9,800円に決まったことを受け、内航向け価格も値を下
げた。A重油とC重油の価格差は1万6,500円で、前期比2,200円縮小した。16年1~3月期以降の内航燃油は、原油価格が
下落していることから値を下げていくとの見方が強い。「現段階では上昇要因はあまりない。1~3月期はA重油3,000円、
C重油6,000円程度下落することが予想される」(川崎近海汽船)としている。
◆11月期建造申請/15日に認定審査 内航総連 日本内航海運組合総連合会は15日に開く定例理事会で、2015年11
月期の船舶建造募集に応募した組合員(内航事業者)からの船舶の建造申請について、審査・認定する。11月期の申請
船は20隻・4万8,300対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)。14年11月期の申請ベース(13隻・2
万3,500対象㌧)と比べ、隻数で7隻増加。㌧数も2・1倍に達した。13日に開かれる建造認定委員会での審査の結果を受
け、理事会審査を行い認定船を決める運び。11月期建造募集は、暫定措置事業規程に基づき15年度の第4回建造申請
受け付けとして、11月1日から20日までを受付期間に実施された。
◆内航建造申請/1月期30隻超ペース ≪新制度移行前駆け込みも≫日本内航海運組合総連合会(内航総連)は、傘
下5組合(内航事業者)からの2016年1月期船舶建造申請(改造と転用含む)を20日に締め切る。今月1日から始まった募
集では18日までに28隻が応募。最終的には応募隻数が30隻を上回るペースで推移している。1月期の建造申請は現在
の暫定措置事業規程に基づき実施される最後の募集。16年度からは船種のほか、環境要件や代替建造の有無などで建
造納付金単価が異なる新制度に移行する。内航関係者は「申請船増は新制度移行後の応募を敬遠し、前倒しして建造
申請を行っているのではないか」とみている。18日時点の応募船の28隻は、すでに15年1月期の認定船19隻を上回って
いる。内航総連の建造募集は締め切り間際にも申請提出が集中する傾向にあり、最終的に応募隻数が膨らむ可能性が
高い。内航業界では、今回の建造申請が暫定事業制度変更前の最後の機会で、駆け込み応募が生じるかに注目が集ま
っていたが、実際に応募が相次いでいる。応募の増加理由として、新制度移行後の代替建造制度で設定される、環境性
能基準別の建造納付金単価差がない現段階のうちに応募▽15年度で終了する留保制度を活用したい▽15、16年度で
建造納付金単価差が生じない-といった点が挙げられる。内航船の建造需要自体は貨物船の荷動き鈍化や、石油業界
の先行き不透明感などもあって、高まっていない。1月期の建造申請の活発化は新制度移行前の特殊要因によるものと
みられる。現行の暫定事業制度規程では、新年度に入ると事業者が支払う納付金単価が前年度に比べ低減されるた
め、毎年5月期は年平均よりも申請数が多くなる傾向にあった。ただ、新制度移行後の今年5月期は、今年度と比べ納付
金単価が低減されないため、こうした動きはなくなりそうで、1月期の反動で申請数が落ち込む可能性がある。
◆建造申請/過去最多130隻 ≪15年度 新制度控え駆け込み、内航総連まとめ≫日本内航海運組合総連合会は21
日、2016年1月期の船舶建造募集に対する組合員(内航事業者)からの建造申請が全船種合わせ42隻・8万1,500対象㌧
(貨物船・重量㌧、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)となり、隻数、㌧数ともに前年同期(19隻・3万5,400対象とを大
きく上回ったと公表した。1月期の申請数を加えた15年度の建造申請隻数(5、7、9、日月期は認定隻数)は改造、転用含
めて130隻で暫定措置事業開始以降、過去最多となった。暫定措置事業新制度を前に、16年1月期などに前倒しして申
請を行うなどの動きが顕在化した。 改造や100総㌧未満船などを除いた場合でも、13年度に記録した110隻(認定船)
を15隻上回る125隻と、1998年に開始した暫定事業では過去最も多い申請数となった。20日に締め切った1月期建造申
請は現在の暫定事業規程での最後の募集だった。16年度からは船種のほか、環境要件や代替建造の有無などで建造納
付金単価が異なる新制度に移行する。そのため、内航業界では、制度移行を前に、駆け込み応募が表面化するかに注
目が集まっていた。結果として、1月期は応募が活発化した。その理由として、新制度移行後の代替建造制度で設定され
る、環境性能基準別の建造納付金単価差がない現段階のうちに応募▽15年度で終了する留保制度を活用▽15、16年
度で建造納付金単価差が生じない-といった点が挙げられる。海運組合などの関係者は「内航船の建造需要自体は荷
動き低迷や先行き不透明感から高まっていない。申請の増加は今回だけの特殊な要因」と分析している。1月期の建造
- 13 -
申請の船種別隻数は、一般貨物船24隻、油送船12隻、コンテナ船2隻、石材・砂・砂利専用船、曳船各2隻。申請事業者が
内航総連に納める建造納付金額は免除額を差し引き概算で22億700万円。
◆暫定事業/建造申請16年度は不透明 ≪1月期駆け込み顕在化も≫日本内航海運組合総連合会が実施主体の暫定
措置事業で、2015年度の建造申請(15年5、7、9、11月期は認定隻数)が130隻(改造など含む)と1998年の事業開始以来
過去最多を記録した。新制度移行前に応募しようとする動きが顕在化したことで、16年1月期を中心に申請隻数が伸び
た。ただこうした動きは今回だけの特殊な事情によるものとみられる。内航荷動き低迷などを背景に建造需要自体が
高まっていないため、新制度がスタートする16年度の建造申請動向は不透明感が漂っている。20日に締め切った1月期
は42隻・8万1,500対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)と隻数、㌧数ともに前年同期(19隻・3
万5,400対象㌧)を大きく上回った。船種別では一般貨物船24隻・4万500重量㌧、油送船12隻・2万2,800立方㍍、コンテ
ナ船2隻・5,700重量㌧、石材・砂・砂利専用船2隻・3,480重量㌧、曳船2隻・9,000馬力だった。一般貨物船では1万1,400総
㌧型の大型船のほか、主力船型の499総㌧が10隻、299総㌧以下も8隻、749総㌧型も3隻と各船型とも申請が相次い
だ。油送船は今年度、申請の動きが鈍かったが、340立方㍍型の小型船から6,500立方㍍型の大型船までさまざまな船
型の申請があった。申請の活発化は①新制度移行後の代替建造制度で設定される、環境性能基準別の建造納付金の
単価差がない現段階のうちに応募②15年度で留保制度が終了する前に留保㌧数を活用したい③15、16年度で建造納
付金単価差が生じない-といった点が背景にある。16年度に暫定事業は新たなスキームに移行。建造納付金単価額は
環境要件や代替建造の有無などで異なることになる。これまで新年度最初の申請期となる5月期は、建造納付金単価
が前年度に比べ低減されていたが、新スキームに移行する今年5月期は今年度と納付金単価が変わらない。従来、毎
年同月期は年平均よりも申請数が多くなる傾向だったが、16年はこうした動きはなくなりそうだ。内航関係者は「1月期
はかなり多くの応募があった。その反動が5月期以降、16年度の建造申請に出てくる。応募の動きは鈍くなるのでは」と
みており、今年度に比べ申請が鈍化する見通しを示した。
◆制度移行後の建造申請動向注視 ≪暫定措置事業「節目の16年」≫今年は、日本内航海運組合総連合会が実施主
体の内航海運暫定措置事業にとって節目の年だ。1998年にスタートした暫定事業は今年度で解撒交付金、建造納付金
免除、留保の各制度が終了。2016年度から暫定事業の債務を返済していくための代替建造制度が設けられるなど新た
な枠組みに衣替えし、24年度の事業終結へ歩み出す。4月の制度移行まであと2カ月余りだが、新しい制度の内容につ
いて周知徹底を図り、スムーズに移行できるよう期待したい。制度移行前の現行制度最終の建造申請受け付けだった1
月期の船舶建造募集は、組合員(内航事業者)からの建造申請が全船種合わせ42隻・8万1,500対象㌧(貨物船・重量㌧、
油送船・立方㍍、曳船・馬力など)を記録。隻数、㌧数とも前年同期(19隻・3万5,400対象㌧)を大幅に上回り、1月期の申
請数を加えた15年度の建造申請隻数(5、7、9、11月期は認定隻数)は改造・転用含め130隻と、暫定措置事業を開始して
以来最多となった。今回の大量応募は1月期だけの特殊事情によるものだ。「新制度移行後に始まる代替建造制度で設
定される環境性能基準別の納付金単価差がない1月期に応募したい」という駆け込み需要が発生した。今年度で終了
する留保制度を活用したいといった理由もある。1月期の応募が活発化したことで、年間の建造申請数を押し上げた。1
月期の建造申請は暫定事業の制度移行前という、これまでにない状況だっただけに、その動向に注目が集まってい
た。一部の内航関係者からの「新制度移行前に駆け込み応募が顕在化する」との予測通り、応募が活発化した。環境要
件や代替建造の有無などで異なる建造納付金単価額が設定されるなど、暫定事業は16年度からから新たな制度がス
タートする。その最初の申請期となる5月期は、1月期の駆け込み応募の反動が出るとの見方が支配的だ。また、現在の
制度では、新年度最初の受け付けとなる5月期は単価額が前の年度と比べ低減されたが、今年は15年度と単価額が変
わらないことによる影響も出てくる可能性もある。内航船の足元の建造需要自体は、荷動き低迷や先行きの不透明感
から高まっていない。一方で、老齢船が多い内航海運業界にとって、労働環境改善が期待できる新造船への切り替えは
人材確保につなげる上で重要で、安全・安定運航を担保する上でも欠かせない。代替建造には資金が必要で、荷主な
どの理解が不可欠だが、潜在的な建造需要は高い。1月期の駆け込み建造需要の反動がどの程度現れ、いつまで続く
のか。足元の低調な荷動きが回復し、潜在的な代替需要がどれくらい高まっていくのか。暫定事業の節目となる16年の
建造動向に注目していきた。
①橋 梁
◆鋼製橋梁業界の展望 ≪15年度鋼橋需要は全体で26万㌧、保全のビジネスモデル構築を≫15年度の鋼橋事業は上
期の時点で、首都高速道路の大規模更新事業などが寄与して、前年度同期比15・0%増の11万400㌧。下期も大規模更
新が期待できることから、鉄道橋などの民間を含めた鋼橋需要は26万㌧まで回復すると見込む。海外では、政府が質
の高いインフラ輸出の促進を積極的に開始、アジアを中心に鋼橋関連のODA案件が出件しつつある。大規模更新事業
や点検・維持管理などの維持・更新市場は首都高羽田線を皮切りに始動。鋼橋業界の16年度を展望する。15年度は、大
規模更新事業が寄与して26万㌧まで回復すると見込む。鋼橋発注量が8年前に比べて半減以下になっていることば紛
れもない事実で、業者がそれほど減少していない中、受注競争の激化は変わらない。海外事業では、政府が質の高い
道路や鋼橋技術をはじめとするインフラ輸出の促進を開始した。国交省の15年度補正予算でも、インフラシステムの輸
出促進として、広報コンテンツを作成する戦略的広報のために1億800万円を充当する。さらに今月、トルコで日本・トルコ
橋梁技術セミナーが開催される。両国関係者が長大橋技術に関して発表するもので、日本からは国土交通省、橋建協、
海外交通・都市開発事業支援機構などが発表する予定。道路・橋梁分野における両国間の相互の理解・協力の深化を図
るよい機会といえる。昨年では円借款事業によるインドのデリー-ムンバイ間貸物専用鉄道西線、バングラデシュでの橋
梁建設・改修工事、インドの高速鉄道システム事業など西南アジアを中心に出件し、日本企業が受注している。首都高1
号羽田線を皮切りに動き出した大規模更新事業は、東・中・西日本の高速道路会社3社の事業費が約3兆円。このため、
- 14 -
維持管理・保全市場に参入する企業が増加しつつある。ファブにとっては売上面で貢献するが、製作物が少なく工場稼
働率には寄与しないという装置産業の構造的な課題を抱えている。工場の統廃合、生産体制の効率化や、グループ内
での効率的な生産体制の再構築を図っており、生産コストの削減と需給のアンバランスを解消する動きが活発化してい
る。既存の事業展開ではない、新たなビジネスモデルを構築できるかがカギとなるであろう。一方、昨年10月に横河ブ
リッジと横河工事が合併して新生・横河ブリッジが始動。東京鐡骨橋梁と片山ストラテックが経営統合に合意、11月まで
には新会社として出発することが発表された。これまでとは違い、株主や売上高経常利益率の重視の面から事業の選
択が求められつつある。利益が見込まれる事業にポートフォリオをおくことは当然で、加速化していくであろう。「選択
と集中」による企業の経営資源の効率的活用を図るとともに、10年、20年先を見据えた新たな企業統合などを考える
時代が到来したといえる。
②鉄 骨
◆推定鉄骨需要量は約40万㌧ ≪2カ月連続で下回る≫国土交通省の11月の建築着工統計調査報告によると、全着
工床面積は前年同月比1・4%減(前月比1・6%減)の1,073万7,000平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が同0・3%
減(同0・8%減)の397万4,000平方㍍、SRC造は同22・0%減 (同73・4%減)の7万7,000平方㍍。全床面積中のS造、SRC
造の比率は37・7%、推定される鉄骨需要量は約40万1,000㌧の水準(前年同月は約40万㌧※表2)と2カ月連続で下回
った。
◆工作機械受注1・9%減 ≪日工会まとめ 2年ぶり前年割れ、昨年1兆4,804億円≫日本工作機械工業会(日工会)が1
4日発表した2015年の工作機械の受注額(速報値)は前年比1・9%減の1兆4,804億8,600万円となり、2年ぶりに前年を
割り込んだ。年間受注目標だつた1兆5,500億円には届かなかったが、過去3位の高水準。内需は為替が円安基調で推
移したことを背景に自動車向けを中心に設備需要が増え、7年ぶりに5,000億円を超えた。内需は同18・1%増の5,862億
9,500万円となり、3年連続で増加した。設備投資を支援する政府の補助金が需要を喚起した。年後半は補助金効果の
反動減や、16年の補助金を見込んだ買い控えがあったが、年を通じて安定感があった。外需は同11・7%減の8,941億9,1
00万円で2年ぶりに減少した。前年は1兆円を超えたが、15年は北米市場が伸びきらず、中国経済の減速影響もー部見
られた。12月単月は前年同月比25・8%減の1,070億7,200万円だった。内需は同11・5%減の426億2,000万円、外需は同3
2・9%減の644億5,200万円。スマートフォン向けの特需による押し上げが期待されたが、伸び悩んだ。
◆工作機械受注9・9%増 ≪主要7社本社調べ、おおむね高水準 昨年≫日刊工業新聞社が14日まとめた工作機械主
要7社の2015年の工作機械受注実績は、前年比9・9%増の4,274億9,100万円だった。牧野フライス製作所の合計額が過
去最高を更新するなど年央までの旺盛な受注を取り込み、各社がおおむね高水準だった。内需は同24・4%増の2,016
億5,600万円。自動車を中心に幅広い分野で設備投資が進み、大幅に前年を上回った。牧野フライスは合計と外需が過
去最高。国内の前年比20%に迫る増加は「金型向けの需要が増えた」(業務部)ことが大きい。海外は欧米の減少をア
ジアが補った。オークマは全体額が好調だった前年から2ケタ増。前年比約30%増となった国内は「自動車の好調をベ
ースに(政府が設備投資を支援する)省エネ補助金による上積みがあった」(営業部)。7社の外需は同0・4%減の2,258
億3,500万円。年初から米国が高水準ながら停滞感があり、年央に中国経済悪化の影響がみられた。しかし足元の中国
向けは「商談の時間が長くなったが、件数そのものは減っていない」(オークマ営業部)と底堅い。新興国事業では三菱
重工工作機械が「12月にインドと台湾で歯車加工機のまとまった受注があった」(企画管理部)。12月単月は前年同月比
16・0%減の316億5,500万円。
◆昨年の工作機械受注、1・9%減1兆4,805億円 ≪日工会まとめ 2年ぶり前年割れ≫日本工作機械工業会(日工会)
が19日発表した2015年1-12月の工作機械の受注実績(確報)は前年比1・9%減の1兆4,805億9,200万円となった。2年ぶ
りに前年を割り込んだ。外需は年央から足踏みした上に、前年好調だったスマートフォン(スマホ)向けが停滞したが、内
需が年間を通じ総じて堅調に推移。過去3番目の高水準となった。12月単月は前年同月比25・7%減の1,071億7,800万円
だった。内需は3年連続で前年を超えた。08年のリーマン・ショック後で初めての5,000億円台となった。円安の為替環境
下で政府の補助金が設備投資を後押しした。外需は2年ぶりに減少したが、過去3番目の高水準だった。北米は堅調で
はあったが、6年ぶりに減少した。アジアはスマホ向けがベトナムで年前半に旺盛だったものの、年央から年末までは勢
いを欠いた。12月単月は内需が4カ月連続の減少、外需が7カ月連続の減少だった。
◎産業機械
◆11月産機受注2・8%増の3,096億円 ≪産機工調べ 2カ月連続増≫日本産業機械工業会(産機工)が13日発表した
2015年11月の産業機械受注額は、前年同月比2・8%増の3,096億3,500万円で2カ月連続でプラスとなった。内需は同21
・7%増の2,088億8,000万円と2カ月連続増、外需は同22・2%減の1,007億5,500万円と2カ月ぶりのマイナス。内需のう
ち製造業向けは同23・9%増、非製造業向けは同31・5%増、官公需向けは同18・3%増、代理店向けは同1・3%増。外需の
うちプラント案件は2件で、同35・4%増だった。主要約70社の産業機械輸出契約高は同20・2%減の932億2,500万円で、
2カ月ぶりのマイナス。地域別構成比はアジア77・5%、欧州8・0%、北米6・9%、アフリカ3・0%など。
◎環境装置
◆環境装置受注35%増 ≪11月 民需に大口案件あり急伸≫日本産業機械工業会が13日発表した2015年11月の環境
装置受注実績は、前年同月比35・9%増の311億7,600万円で4カ月連続の増加となった。官公需は同4・1%増の155億90
0万円にとどまったものの、民需は鉄鋼向けのスラグ(鉱滓)処理装置と電力向けの排煙脱硫装置および石炭灰溶融処
理装置で大口案件があり同2・7倍の146億2,400万円と急伸した。外需は都市ゴミ処理装置が減って同59・9%減の10億
- 15 -
4,300万円だった。民需の内訳は製造業が同2・3倍の91億4,900万円、非製造業が同4・0倍の54億7,500万円。主な装置
別の内訳は大気汚染防止装置が同2・1倍の24億3,500万円、水質汚濁防止装置が同2・1%減の154億3,800万円、ゴミ処
理装置が同2・2倍の132億3,300万円。
①乗用車
◆新車販売/4年ぶり減 ≪昨年504万台 軽増税など響く≫日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協
会連合会(全軽協)が5日発表した2015年の新車販売台数は、前年比9・3%減の504万6,511台で4年ぶりに前年割れと
なった。500万台超は4年連続で維持したが、14年4月の消費増税後の需要低迷が尾を引いた。軽自動車は15年4月の軽
自動車税増税の影響も重なり、前年比2ケタ減と落ち込んだ。登録車は同4・2%減の315万310台で2年ぶりのマイナス。
乗用車は同5・5%減の270万4,485台、貨物車は同3・5%増の43万2,438台、バスは同11・7%増の1万3,387台だった。軽
自動車は同16・6%減の189万6,201台。4年ぶりに前年を下回るとともに、3年ぶりに200万台を割り込んだ。ブランド別で
はダイハツ工業がスズキを上回り、暦年ベースで2年ぶりに首位へ返り咲いた。新車販売に占める軽の比率は37・6%で
前年を3・3ポイント下回った。12月単月の新車販売は前年同月比14・5%減の36万9,460台となり、12カ月連続のマイナ
ス。軽は14年末に上位2社がシェア首位を争って販売合戦を操り広げた反動で、同34・8%減と大きく目減りした。登録車
は同3・1%増で3カ月連続のプラスだった。16年は、17年4月の消費増税に伴う駆け込み需要が期待されるが、自販連は
「前回と増税幅が異なり影響を読めない」と説明。全軽協は「1-3月は、軽増税前の駆け込み需要があった前年同期に
比べると1割ほど落ちそう。4月以降は多少上向くことを期待したい」としている。
◆トヨタ、4年連続首位 ≪世界販売、昨年1,015万台≫トヨタ自動車は27日、2015年暦年の世界販売台数(ダイハツ工
業、日野自動車を含む)が1,015万1,000台(前年比0・8%減)だったと発表した。ディーゼルエンジンの排ガス不正問題で
失速した2位の独フォルクスワーゲンを上回り、4年連続で世界首位となった。トヨタは16年販売を1,011万4,000台と計画
するが、「15年を上回るように努力したい」(同社広報)という。トヨタの15年世界販売は北米や中国が全体を引っ張っ
たが、国内と新興国の不振で前年を下回った。北米ではガソリン安を受けて「RAV4」や「タコマ」などが好調で、トヨタ単
独の北米販売は270万8,000台(同5・2%増)となった。このうち米国は249万9,000台(同5・3%増)で、262万台だった0
7年以来の高水準となった。中国は「カローラ」などが好調で、過去最高を更新して112万2,000台(同8・7%増)となった。
2位の独VWはディーゼル問題を受けての販売失速や新興国不振で、約993万1,000台(同2・0%減)と13年ぶりに減少に
転じた。3位は米ゼネラルモーターズ(GM)で、約984万1,000台(同0・2%増)となり3年連続で過去最高を更新した。
◆車8社、世界生産0・7%増 ≪昨年 4年連続前年超え≫乗用車メーカー8社が27日発表した2015年(1-12月)の生産
・販売・輸出実績によると、8社合計の世界生産は前年比0・7%増の2,658万6,252台となった。4年連続の前年実績超え。
米国販売が好調で北米を中心に海外生産が伸び、低迷した国内生産を補った。国内生産は同5・1%減の874万4,103台
となり2年ぶりに前年割れとなった。消費増税や軽自動車税の増税で国内市場が低迷し、生産の現地化も進んで輸出
が振るわなかったことも響いた。国内販売が好調に推移したマツダと、米国販売が好調で輸出が伸びた富士重工業の
みが前年超えとなった。富士重は国内生産、輸出ともに過去最高となった。ホンダの国内生産は、01年以降では東日本
大震災が起きた11年の71万台に次ぐ低水準。国内販売の低迷に加え、輸出を減らす方針が裏目に出て落ち込みが目立
った。日産自動車とホンダの海外生産は北米や中国がけん引。トヨタ自動車は主力のタイやインドネシアの低迷を、中
国、中南米やロシアで補い微増となった。ダイハツ工業と三菱自動車を除く全社が過去最高を記録した。世界生産は日
産、ホンダ、スズキ、マツダ、富士重が過去最高だった。12月単月の世界生産は前年同月比2・1%増の214万6,631台。7カ
月連続の前年実績超えとなった。国内生産が同1・4%減の71万1,106台となり、3カ月ぶりに前年割れ。おおむね国内生
産の不振を海外生産で補う構図は単月でも変わらない。トヨタの国内生産は年末に日本で発売したハイブリッド車(HV)
「プリウス」の全面改良モデルの影響で同10・4%増と高い伸びを示した。2ケタ増は27カ月ぶり。
②トラック
◆普通トラック1・4%増 ≪昨年8万9,321台 6年連続プラス≫トラック業界がまとめた2015年の普通トラック(積載量4
㌧以上の大型と中型トラック)の販売台数は、前年比1・4%増の8万9,321台だった。2年連続で8万台を超え、前年比で6
年連続のプラスとなった。15年上期(15年1-6月)は建設需要に支えられ、ダンプトラックなどが伸びた。14年4-6月は消
費増税に伴う反動減の影響があったが、15年4-6月はその影響が解消されプラスになった。下期は物流需要が伸び、荷
台部分を箱形に架装したバンなどのカーゴ系車両が押し上げた。メーカー別では日野自動車が大型と中型トラックのシ
ェアを3割以上確保するなど販売台数を伸ばした。15年12月は前年同月比12・5%減の7,652台で、前年同月比で2カ月
連続のマイナス。牽引役のカーゴ系車両の需要が落ち着き、大型トラックは同9・1%減と9カ月ぶりに減少に転じた。1-3
月の見通しについて業界関係者は「前年同月実績を下回る傾向が続く」と指摘。ただ15年度(15年4月-16年3月)は上
期が堅調だったため、「需要が拡大した14年度とほぼ同等の水準を見込んでいる」という。
◆白物家電2・8%減 ≪国内出荷額 昨年、大型品が低調 JEMA調べ≫日本電機工業会(JEMA)が25日発表した2015
年の白物家電の国内出荷額は、前年比2・8%減の2兆2,043億円と2年連続で前年を下回った。天候不順や14年に消費
増税前の駆け込み需要があった反動減などで冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど主要製品を中心に伸び悩んだ。16年も特
段大きな成長が見込めるとはいえず、横ばい状能薫続きそうだ。製品別では特に大型品の低調さが目立った。冷蔵庫
が同9・4%減の4,080億円、洗濯機が同5・7%減の2,865億円、ルームエアコンは同3・1%減の6,631億円と前年実績を下
回った。一方で、ジャー炊飯器は訪日外国人の需要増を背景に同11・0%増1,262億円と伸びた。電動歯ブラシやドライヤ
ーといった持ち運びしやすい理美容品も堅調だった。JEMAの担当者は今回の結果について「猛暑の影響でエアコンな
- 16 -
どの売れ行きが好調だった13年と比べても悪い数字ではない」とした。16年については「3月に見通しを発表するが、こ
れまで以上に市場が拡大するとは言いがたい」とコメントした。15年12月の国内出荷額は2,201億円で前年同月比1・0%
増と前年並みだった。
◆粗鋼生産量5%減 ≪昨年1億515万㌧ 3年ぶり減少≫日本鉄鋼連盟によると、2015年の粗鋼生産量(速報)が前年
比5・0%減の1億5,15万2,000㌧となり、3年ぶりに減少した。昨春以降の大規模減産が在庫調整の遅れや内需低迷で予
想以上に長引いたのに加え、夏頃から中国経済の減速が鮮明になり、輸出も低迷した。同年12月単月もマイナスで、16
カ月連続の前年同月割れとなった。炉別では、高炉系の転炉鋼が前年比4・6%減の8,104万3,300㌧で2年連続、電炉鋼
が同6・1%減の2,410万8,800㌧で2年ぶりにそれぞれマイナスとなった。鋼種別でも、普通鋼が同4・3%減の8,170万1,8
00㌧で2年連続、特殊鋼が同7・2%減の2,345万30㌧で3年ぶりにそれぞれ減少した。鉄連の柿木厚司会長(JFEスチー
ル社長)は「年度でも15年度は2年連続のマイナスになるだろう。中国の減速で市況下落が進んだ。需要面では原油安
でエネルギー向けが減退し、アジア市場も低迷した」と述べるなど、非常に厳しい1年だったと総括した。12月単月の生
産量(速報)は前年同月比4・5%減の859万700㌧。1日当たりの生産量も11月比4・9%減と一進一退が続いている。
◆世界粗鋼生産2・8%減/昨年、09年以来の前年割れ 世界鉄鋼協会がまとめた2015年の世界粗鋼生産量(速報)
は、前年比2・8%減の16億2280万8000㌧で6年ぶりに減少した。全体の約半分を占める中国が同2・3%減の8億383万
㌧と34年ぶりのマイナスとなったのをはじめ、全世界でほぼ満遍なく低迷し、リーマン・ショックの余波が残る09年以来
の前年割れとなった。上位10カ国では唯一、インドのみがプラスとなり、2ケタの減少率となった米国を抜いて3位に躍
り出た。ロシアとドイツは微減にとどまり、ロシアは韓国を抜いて5位に上がった。このほか、ブラジルとトルコの順位が入
れ替わった。欧州連合28カ国は同1・8%減の1億6618万1000㌧だった。また、12月の世界66月で前年同月割れとなった。
上位10カ国では韓国のみプラスで、米国は同16・3%減という大幅なマイナスとなった。年間でプラスだったインドも2カ
月連続のマイナスとなるなど正念場を迎えている。
◆鉄鋼輸出5カ月連続減 ≪12月 普通鋼鋼材が減少≫日本鉄鋼連盟は28日、財務省貿易統計を基にまとめた2015
年12月の鉄鋼輸出実績が、前年同月比6・0%減の357万5,477㌧で、5カ月連続のマイナスになったと発表した。これま
で堅調だった普通鋼鋼材が同3・7%減の236万7,863㌧と3カ月ぶりに減少したのが響いた。仕向け先別では韓国や中
国、タイ、米国など主要国向けがそろって減少した。特殊鋼鋼材は同22・7%減の62万6,329㌧の大幅減。半製品は同13・
6%増の47万7,547㌧とプラスに転じたが、大勢に影響なかった。普通鋼鋼材の約半分を占める熱延広幅帯鋼は同2・2
%増の114万7,696㌧で17カ月連続プラスとなり、奮闘したが、厚板や亜鉛メッキ鋼板、冷延広幅帯鋼が大幅なマイナス
となり、全体を押し下げた。なお、15年の全輸出量は前年比1・1%減の4,164万2,177㌧で2年連続の減少となった。普通鋼
鋼材は同4・2%増と2年ぶりにプラスへ転じたが、特殊鋼鋼材や半製品などが落ち込んだ。
以 上
- 17 -