パナマ - JICA

パナマ医療情報
以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の
服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバ
イスを受けるようにしてください。
最新更新履歴:2016 年 11 月
1.赴任前の準備
(1)予防接種
入国に際して義務づけられているワクチンはないが、A 型肝炎、B 型肝炎、破傷風邪、
狂犬病の予防接種は勧める。黄熱予防接種証明書は要求されていないが、黄熱に
感染する危険のある国である。パナマ運河よりも東側(エンベラ自治区、クナヤラ自
治区の全地域、ダリエン県、コロン県とパナマ県)の大陸地域に渡航する生後 9 か月
以上のすべての渡航者に、黄熱の予防接種が推奨されている。渡航先がパナマ運
河の西側地域、パナマ市、パナマ運河地域、バルボア諸島(パール/Pearl 諸島)、サ
ンブラス諸島に限られる場合は、黄熱の予防接種は推奨されていない。小児につい
ての定期接種ワクチンは当国でも小児科で接種可能である。
(2)その他の準備
眼鏡は眼科医の指示により購入可能。コンタクトレンズは、ソフト、ハード、使い捨
てタイプが購入可能。
常備薬に関しては、鎮痛解熱剤、風邪薬など一般的なものは薬局で購入可能。慢
性的な疾患で治療中の場合、日本と同じ薬は手に入らないこともある。薬については
日本で成分名を英文できちんと標記してもらうようにする。
2.医療事情
(1)医療機関
パナマでは私立病院と公立病院(総合病院)、クリニック、保健所がある。一般的に
私立病院は複数の医師が同一施設内に各々の診察室を開設し診療を行い、検査・
入院棟は病院内の施設を共有するシステムがとられている。私立病院のほとんどは
パナマシティ内にあり、一部で高いレベルの医療が提供されている。しかし、地方の
医療レベルは低く首都とは格差が見られる。邦人が良く利用する病院は以下の通り
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である。
総合病院
◎施設名:Centro Medico Paitilla (パイティージャ 病院 )
所在地:Avenida Balboa y call53, Panama
電話:265-8800(代表), 8888(救急外来)
診療時間: 担当の医師により時間、曜日が違う。要予約。
診療科目:全科
日本人スタッフ:なし
備考: 英語での診察可能。
入院費は一泊 US$140 程度。
◎施設名:Hospital Punta Pacifica(プンタパシフィカ病院)
所在地:Boulevard Pacífica y Vía Punta Darién
Ciudad de Panamá
電話:204-8000
FAX:204-8010
診療時間:担当の医師により時間が違う。要予約
診療科目:全科
日本人スタッフ:なし
備考:国際病院評価機構 JIC(Joint Commission International)の認定取得病
院となっている。近くにヘリポートがあり委託業者のヘリコブターを依頼で
きる。
Web: http://www.hospitalpuntapacifica.com
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クリニック
◎施設名:Clinica de Alergia Dr.Emilio J.Saturno F.
所在地: Hospital Punta Pacifica
Piso 2, No.204,205
電話:,204-849FAX:204-8493
診療時間: 8:30~17:00(月~金)要予約
診療科目:アレルギー、喘息
日本人スタッフ:なし
備考:アレルギーが専門でパッチテストもしてくれる。アメリカで医師資格取得。
英語での診察可能。
歯科医院
◎施設名: Dra Shunek Escala de Cattán
所在地: El Dorado Aventura Plaza #254(2F)(Felix の向かいのビル)
電話:260-0522
診療時間:月~土(時間要相談)
診療科目:歯科一般
日本人スタッフ:日本人スタッフはいないが、日本語での診療が可能な日系人医
師がいる。
(2)緊急時の対応と措置
緊急時は、24 時間対応可能な救急外来を利用する。救急車は公立病院等がもっ
ているものと、個人で契約して利用する私立の救急車に分けられる。契約制の救急
車はほとんどパナマシティのみだが、最近一部地方都市でも稼動している。公立病院
や赤十字は各県にあるため使用は可能だが、救急車の台数が少ない。そのため必
要なときにすぐに動けるとは限らない。
地方の病院は、設備面で首都との格差が大きい。首都に上がるまでに車で 8 時間
以上かかるところもあるため、緊急を要する場合は、地方の病院で一次救急的な処
置をして首都に運ぶ必要がある。
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3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
医薬品は、パナマ製以外に米国製、ブラジル製、その他の国々からの輸入も多い。
日本製は手に入らない。同様でなくてもほぼ同じような薬効の医薬品は手に入るが、
飲みなれた常備薬の持参を勧める。
(2)現地で調達できる医薬品
ほとんどの医薬品は手に入る。
(3)現地で調達できる衛生用品
生理用品、包帯、ガーゼ、避妊具等ほとんどのものは手に入る。サポーター、コル
セットなども手に入る。
(4)薬局
抗生物質などの薬品は医師の処方箋がないと購入できない。ただし、かゆみ止め
や鎮痛解熱剤、胃薬などの常備薬は処方箋なしで購入できる。
◎薬局名:Super Farmacia Paitilla S.A
所在地:Avenida Balboa Y Calle53、Panamá
電話:264-7584
備考:Centro Medico Paitilla に隣接している。24 時間営業。
◎薬局名:Farmacia Punta Pacífica
所在地:Planta Baja,Hospital Punta Pacífica
電話:204-8500
備考: Hospital Punta Pacífica の一階にある。
これら以外でも、薬局はたくさんある。処方箋を持っていけばどこでも購入可能。
4.妊娠、出産、育児
(1)妊娠した場合の対応
首都の私立総合病院において妊婦健診・分娩に関しては対応可能であるが、胎児や
母体に異常が見られる場合、胎児の心臓疾患などパナマでの手術件数が少ない場
合などは、近隣国の専門医を紹介されることもある。邦人の場合は異常発生時の対
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応など考慮して、本邦での出産が望ましい。
(2)出産後の対応
正常分娩の場合、出産後2~3日程度で退院するので、出産後の母子検診は1週
間後に産婦人科で母親の検診、小児科で子どもの検診をする。その後1ヶ月後も同
様に検診を実施する。
(3)育児
育児用品については哺乳瓶などは、スーパーや薬局で購入可能。哺乳瓶は日本
と同様のガラス製、プラスチック製などがあり、乳首も複数サイズが購入可能。その他
のマグマグ、離乳食用スプーン、入浴用の温度計などベビー用品は日本と同様のも
のが手に入る。粉ミルク、ベビーパウダー、ベビー用石鹸、ローション等ほとんどのも
のは手に入る。
5.手術
(1)現地で可能な手術
首都に関しては、開胸手術や開頭手術なども実施されている。比較的高い医療水
準の治療が受けられる。内視鏡での手術も頻繁に行われる。
(2)手術設備の状況
手術等をするための設備は整っている。ICU、CCU等も設備は整っている。CT や
MRI などの医療機材も一般的になっている。手術の技術に関しては問題ないと思わ
れるが、術後管理が十分でない場合もある。
(3)その他の留意点
病院では独自に血液バンクを持っている病院もあり、遺伝子レベルの検査(PCR
法)ができる所もあるが、輸血後感染の可能性は否定できないため、その後の感染
の有無についてのモリタリングが必要である。
入院時の付き添いに関しては、個室の場合ソファがあるので、そこで眠ることは可
能。毛布等は貸し出ししてくれる。
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6.現地での傷病
(1)一般の疾病
パナマは、事務所、ショッピングセンターなどの室内は冷房が強く、外との気温差が
激しいので、脱ぎ着できる上着などを準備して風邪をひかないように注意する。
下痢はボカスデルトロ、エレラ、チリキに多く見られる。それ以外の地方でも全体的
に下痢の報告は多く出ている。高温多湿の気候のため、食中毒には注意する必要が
ある。必ず火のよく通ったものを食べるようにする。また、路上で売られている食べ物
などは衛生管理がきちんとされていないことも多いのでできるだけ避ける。
呼吸器感染は、パナマでは高温多湿な環境とビルディング等の閉鎖空間も多く、パ
ナマ市内も含め、カビ・菌糸類による感染に注意が必要になる。皮膚や爪の表面だけ
でなく、肺などの呼吸器に影響を及ぼし喘息や気管支炎の原因になる。予防には身
の回りの掃除、衣服の洗濯、入浴により体を清潔に保つことが必要である。場合によ
っては入院治療が必要になる場合もあるため、早めに医療機関を受診することを勧
める。
(2)風土病、感染症
◎デング熱
毎年数百から数千例の報告がある。2014 年は 5.517 件の報告があったが、2016
年 42 週時点では 1.895 件である。発症の多い地域はボカスデルトロ、パナマ、サン・
ミゲリートである。それ以外でもパナマ全土で散発的に見られる。
類似疾患であるジカウィルス感染症、チクングニア熱も発症している。ジジカウィル
ス感染症は 2016 年 44 週時点では 511 件でクナヤラ、パナマで多く発症している。チ
クングニア熱は 2016 年 23 週時点で 11 件である。デング熱、ジカウィルス感染症、
チクングニア熱を媒介する蚊は年中見られるため、蚊に刺されないための対策が必
要である。
一般的な風邪の罹患も多いのでデング熱との鑑別のために発熱時は病院の受診
を勧める。重症化を防ぐためにも、解熱剤を飲むときにはアスピリン系(バファリンな
ど)ではなくアセトアミノフェン系(パナドール、パラセタモールなど)を使用するよう心
がける。
◎マラリア
大西洋沿岸地域コロンビア、コスタリカとの国境地域(クナヤラ、ダリエン、パナマ、
ノベブグレ)で多く発症している。パナマシティと運河ゾーンはほとんど見られない。毎
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年数百人の感染者のうちほとんどが三日熱マラリアで、熱帯マラリアは 5%程度であ
る。
◎黄熱
黄熱はパナマでは1974年以降発症の報告はない。蚊に刺されないための対策と
ワクチンを接種し予防に努める必要がある。(1.赴任前の準備(1)予防接種参照)
◎狂犬病
狂犬病に関しては、1990~2003年の間にダリエン県の金採掘者の間に野生の
コウモリから感染、他に2002年にコロンで2名の狂犬病死亡例以降報告はない。し
かし、地方では野良犬も多くワクチン接種は必要である。
◎ハンタ症候群
2000年、ロスサントス、エレラ両県にハンタ・ウィルスによる肺症候群で21名が死
亡した。その後も毎年数名の死亡者が出ている。この病気はネズミ類を介して人に感
染する。ネズミの尿や糞に汚染された空気を吸い込んだり、汚染された飲食物が主な
感染源である。致死率が高く有効な治療薬がない為に十分な注意が必要である。
◎結核
2000年から結核患者へ集中的な治療対策を行った結果、結核の患者数は減少
しているが、毎年 1000 人以上の罹患している。2016 年 10 月現在 1014 人である。
地域的にはパナマ、コロン、ボカスデルトロに多い。
◎HIV
ここ数年、新規の AIDS 患者が 700 人弱報告されている。AIDS 発症者のうち感染経
路は、異性間性行為によるものが約7割を占め、30~40 歳の発症率が高くなってい
る。ほとんどの患者はパナマ、サンミゲル、ラスクンブレス、チリブレ、コロンで発生し
ている。HIV 感染者については、約 9000 例の報告があるが、実際の感染者は2万人
~3万人と推測されている。
◎シャーガス病
サシガメに刺されることで発症するシャーガス病は、パナマでも一部の地方で見ら
れる。地方を巡回する場合など、蚊帳を使うなどしてサシガメに刺されないように注意
し予防する必要がある。
◎リューシュマニア症
サシチョウバエに刺されることで発症する。パナマのリューシュマニア症は顔面や
四肢の皮膚に限局し、潰瘍を形成するものがほとんどである。自然治癒もするが、薬
剤で治療可能である。
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(3)有害動物、病害虫
蚊、ハエ、サシチョウバエなど、疾患を媒介する害虫が常在する。疾病予防のため
にも害虫への注意が必要である。また、サシガメも地方によってはみられるため、シャ
ーガス病にも注意する必要がある。地方や密林では暑くても出来るだけ半ズボン、サ
ンダル等、露出度の高い服装は避け、虫に刺されないような注意が必要になる。就寝
中に虫に刺されないように戸や窓の開閉に注意し、必要に応じて網戸や蚊帳(かや)、
虫除けスプレーの使用を心がける。
地方部を中心に毒蛇、サソリも多く生息している。地方の保健所や病院では血清を
持っているので、もし、毒蛇やサソリに刺されたら、すぐに近くの医療機関を受診す
る。
7.保健衛生
(1)飲料水
パナマは上水道の設備は整っていると言われており、水道の水はそのまま飲んで
も問題はない。ただし、各家庭、ホテル、アパートなどの配管、貯水槽の管理等によっ
ては飲料に適さないこともあるため煮沸したほうが確実である。
ボトルウォーターはペットボトルから20リットルタンクまで簡単に入手でき、比較的
安全性も高い。
地方に関しては、煮沸して飲むか、ボトルウォーターを購入したほうが安全である。
(2)濾過器の入手
市内随所で様々な濾過器が販売されており、多くのパナマ人家庭でも利用されて
いる。いずれもフィルターの適切な交換さえ怠らなければ特に問題はないようである。
(3)その他の留意点
パナマでは、交通事故を含めた不慮の事故による外傷や自殺、殺人、その他の暴
力行為による死亡が死亡原因の上位を占めている。日常多くの交通事故が発生して
いる。増加する車の数に加え運転マナーも悪いので、自動車の運転に際しては細心
の注意が必要である。
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