ウガンダ (267KB、2014年5月)

ウガンダ医療情報
以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の
服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバ
イスを受けるようにしてください。
最新更新履歴:2014 年 4 月 1 日更新
1. 渡航前の準備
(1) 予防接種
ウガンダ入国に際し、黄熱病流行地からの入国者に対してイエローカード(黄熱病
接種証明書)の提示が求められる。したがって、流行地以外の国から入国する場合
は法的に義務づけられたものはない。
2010 年 11 月にウガンダ北部で黄熱病が流行し、北部で大規模に地元住民へ黄熱病
予防接種が展開された経緯がある。いまだに地方で黄熱病流行は認められることも
あること、また首都カンパラでの黄熱病ワクチンのストックが少なくなる可能性を考慮
し、赴任前に接種して赴任することが望ましい。
また近年、ウガンダから近隣アフリカ諸国への入国時に黄熱病ワクチン予防接種
証明書提示の要求が年々厳しくなっている。傷病緊急発生時には、第 3 国へ移送す
る可能性があり、緊急時に速やかに対応できるように、赴任前または赴任後すぐに首
都の医療機関で接種すること。そしてイエローカードはパスポートと共に保管しておく
ことが望ましい。
その他 A 型肝炎、B 型肝炎、破傷風、狂犬病の各ワクチンをできるだけ接種を完
了させて赴任することが望ましいが、現地でも接種可能である。
現地で流行する腸チフスや、コンゴやスーダンに隣接する西部・北部で大流行して
いる髄膜炎については、赴任後速やかに予防接種をお勧めする。
髄膜炎ワクチンは ACWY の 4 種混合ワクチンを勧める、またポリオワクチンの接種
を勧める。しかしながらウガンダでは成人に投与する習慣はないため速やかな接種
は困難。よってポリオ接種は赴任前に接種を勧める。首都の医療機関(The Surgery)
では不活化ポリオワクチンが接種可能。
ウガンダの新生児に対してのワクチン接種スケジュールは、以下のとおりである。
出生時に BCG+Polio0、生後 6 週には Polio1+DPT+Hib1+HepB1、10 週目には
Polio2+DPT+Hib2+HepB2、14 週目に Polio3+DPT+Hib3+HepB3、9 ヵ月後に
Measles が接種される。ポリオ(生)や DPT の基礎予防接種料は公的医療機関で接
種すれば無料になる。
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
(2) その他の準備
赴任前には必ず歯科検診・治療を完了しておくこと。現地では日本と同じレベルの
治療は受けられないため、齲歯予防を心がけるべきである。
眼鏡やソフトコンタクトレンズの作製・購入は現地でも可能であるが、高酸素透過性
ハードコンタクトレンズは購入不可、使い捨てソフトコンタクトレンズの種類が少なく取
り寄せが必要となることがあり、高額であるため、現在使用中のものに加えコンタクト
レンズ・メガネの予備を持参したほうがよい。
また持病の治療薬や、自身が普段よく使う常備薬を持参すること。持病の治療薬
については、その成分の英語名(商品名ではなく、成分名が英語で記入されたもの)
を明確にしておくとよい。現在の主治医に相談して英文での紹介状(症状、治療法な
どを記したもの)を持参すること。
2. 医療事情
(1) 医療機関
一般に現地の人が利用している国立病院では、医療機器・医薬品・人材・ベッドな
どが常に不足しており、日本人が期待する医療サービスは受けられない。私立の病
院や個人の開業医に受診し、治療を受けることを勧める。
多くの邦人が利用する医療機関は次のとおりである。
<私立病院>
The Surgery
42 Naguru Drive, Naguru, Kampala
Reception:0772-756003
TEL:0414-256003/346994
24 時間診療可能
診療科目:一般診療全般
入院施設:4 床。食事サービスはないが、隣接する喫茶室で軽食のオーダー可。
入院費:一日 100 米ドル程度。
超音波エコー・心電図・X 線撮影・各種血液検査が可能。処置室、分娩室、検査室、
薬局を併設。救急車あり。
20 年以上現地で医療活動を続けているイギリス人 Dr. R. Stockley 医師の診療所。
数名の欧米人医師と現地人医師が診療にあたっている。外国人の受診が多い。
2013 年 12 月初めにナグル地区に移転し、現在レントゲン撮影が不可。
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
International Hospital Kampala(IHK)
Plot 4686, Kisugu-Namuwango
TEL:031-200400/031-340531 FAX:031-340531
24 時間診療可能。
診療科目:一般診療全般
入院施設:100 床。食事サービスあり。
胃カメラ、超音波診断エコー、心電図、X 線撮影可。CT スキャンは故障中。手術
室、分娩室、検査室、ICU、薬局を併設。救急車あり。
腹腔鏡下術可。現在冠動脈造影検査や PTCA、STENT ができる心臓センターを
現在建設中である。
外国人も多く利用しているが、医療レベルについては不確かなところである。
新病院を建設し、2005 年にオープンした。ヘリポートがあり、緊急移送ができるシ
ステムもある。
Norvik Hospital and Research Centre LTD.
Plot 13 Bombo Road, Kampala
TEL:0414-4346772/3/4
Email:[email protected]
24 時間診療可能。
診療科目:一般診療全般、産婦人科、循環器内科、小児科、整形外科
X 線撮影機あり。検査室、薬局を併設。救急車あり。
インド人 Dr、Ns が主に勤務している。食事のサービスはないが、入院施設はある。
Nakasero Hospital
14A Akii-Bua Road, Nakasero
TEL:0414-346150/2
2009 年に設立された新しい医療機関であり、ケニア・南アフリカ人 Dr が月に数回
訪れている。24 時間受診可。入院施設ありベッド数 80 床。入院中の食事サービス
あり。
診療科目:一般診療全般
超音波診断装置、心電図、X 線撮影機、CT、マンモグラフィーあり。手術室、NICU、
分娩室、検査室、薬局を併設。救急車あり。腹腔鏡下術可。
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
<開業医など>
Dr. Edward B. Kasirye
Children’s Clinic Kampala LTD
Plot 40 Kyadondo road
TEL:0414-533100
診療科目:小児科
診療時間:月曜~金曜 830AM~6PM、土曜 9AM~2PM
Dr. S. J. Mattas、Dr. Rose Mutumba
Mengo Hospital
TEL:0414-270222
診療科目:眼科
アメリカ系医師
Dr. Robert Businge
Nakasero hospital
診療科目:産婦人科
Dr. A. Shirazi / Dr.Madewo
Ultima Trauma & Orthopaedic Centre Ltd.
Plot 13 Lumumba Ave
TEL:0414-231254
診療科目:整形外科
外来診察、入院(5 床)、検査、超音波診断、Xray、理学療法、手術が可能。
関節鏡下手術が可。外来診察は要予約。
Dr. Mutyabule Tom
PAN Dental Surgary
Plot 67 Buganda Road
TEL:0312-251525/0414-347608
診療科目:歯科
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
Dr. Musawwir Ahmad
3 Entebbe Road
TEL:0414-256880
診療科目:歯科
USA で歯科医師の免許を取得している。機材等も清潔で、安心して治療が受けら
れる。
Dr. P. Aliker
14 Bukoto Street, Kamwokya
TEL:0414-531259、031-262357
診療科目:歯科
Dr. Byanyima K
Kampala IMAGING Center
Above Central Police Station
TEL:0414-349577
診療科目:放射線科医
CT スキャン、マンモグラフィー、超音波検査、X 線撮影機検査可。(他院での医師
のオーダー必須)
Osler Clinic
Plot 537 Bitikiro road、Mengo
TEL:0414-344789
診療科:内科・皮膚科専門医
(2) 緊急時の対応と措置
在留邦人には、傷病発生時には前述の The Surgery で診察を受け、入院が必要
な場合には IHK(International Hospital Kampala)に入院する事が多い。
重症の場合および状態悪化の兆しがある場合の移送先として、ケニア・南アフリカ
が考えられる。
救急車は The Surgery のほか、他の私立病院に電話で依頼することもできる。
3. 医薬品、衛生用品
(1) 携行することが望ましい医薬品
風邪薬や胃腸薬など、使い慣れた家庭用常備薬および持病(アレルギー性鼻炎、
痔、アトピー性皮膚炎など)の治療薬は持参すること。また、小児用の解熱剤(坐薬)
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
や湿布薬、日本で処方される喘息用吸入薬は入手困難なので、必要であれば十分な
量を持参すること。
(2) 現地で調達できる医薬品
日本独特の医薬品(「正露丸」「ワカマツ」「整腸剤」「総合感冒薬」など)を除き、ひと
とおりの医薬品は入手可能である。ただし、日本での商品名とは違うので、薬品の成
分名を告げる必要がある。
(3) 現地で調達できる衛生用品
タンポンも含め生理用品は、欧米・タイ・ケニア・エジプト・南アフリカ製の物がスー
パーマーケットで購入できる。避妊具(コンドーム)もスーパーマーケットや薬局で入手
可能である。弾力包帯やばんそうこうなども購入可能だが、良質なガーゼは入手困難
である。
(4) 薬局
薬局は数多くあり市販薬の購入に困ることはない。原則では、抗生物質など医薬
品購入には処方箋が必要である。
日本人が利用している特定の薬局はなく、各人が必要に応じ必要な場所で購入し
ている。医薬品にはインド・パキスタン・ケニア・ヨーロッパ製などがある。
4. 妊娠、出産、育児
(1) 妊娠した場合の対応
妊娠が確定したら速やかに本邦に帰国しての出産が勧められる。正常な妊娠期を
過ごしていたとしても、妊娠中にマラリア感染を起こすと慎重な治療を要すること、医
療機材の不備、産後輸血が必要な場合の血液の安全性、低体重児の管理、産後う
つなど精神面での対応などにも不安が残る。
(2) 出産後の対応
公立の医療機関では出産後の集団母子検診を定期的に行っている。外国人の場
合は、自主的にかかりつけの産婦人科医または小児科医に相談し、検診や予防注
射を受けている。乳幼児の基礎予防接種はすべて接種可能だが、接種時期は日本と
は多少異なる。
(3) 育児
哺乳瓶、おしゃぶり、紙オムツ、ベビーパウダー、ベビー石鹸などはジョンソン・エン
ド・ジョンソン製品などが入手可能である。布おむつ(サラシ製)、おむつカバー、肌着
などは、日本のような品質は期待できない。
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
粉ミルクは、アメリカ・アイルランド・ケニア製など数種が入手可能だが、豊富ではな
い。ベビーフードはアメリカ製の瓶詰が売られている。
<育児上の留意事項>
気候は赤道直下でサバナ気候である。朝夕は 20 度前後で涼しく、日中は高地のた
め日差しが強く 30 度近くまで気温が上昇することもある。また、マラリアは年中流行
する国であることを念頭に置き、子供が高熱を出すようなことがあれば、必ずマラリア
を疑うようにする。就寝時には蚊帳を利用し、蚊に刺されないようにすることが肝要で
ある。
赴任後は、できるだけ早く信頼できる小児科医の情報を得、電話番号や所在地を
把握し、医師との面識を得て予防注射の相談などを済ませておいたほうがいい。
5. 手術
(1) 現地で可能な手術
医療施設や機器が充実しておらず、技術の信頼性も低いことから、特に急を要す
る場合(帝王切開、急性虫垂炎、事故など)を除き、手術は先進国または日本で受け
ることを勧める。
(2) 手術設備の状況
邦人が受診するいくつかの医療機関に手術室があるが、手術台や麻酔設備はい
たってシンプルなもので、日本の手術室とは大きく異なる。
(3) その他の留意点
さまざまな感染症(HIV、各種肝炎、性病、マラリアほか)が蔓延しており、血液銀行
でこれらが確実にスクリーニングされているかは保証できない。また停電が頻繁にあ
ることから保存状態は良好とは言えない。しかしながら、緊急対応として輸血が必要
であった場合は、感染のリスクも考慮した上で実施するかどうかを決定する。輸血を
実施した場合は、必ず輸血後感染症検査を実施する。
6. 現地での傷病
(1) 一般の疾病
朝夕の寒暖の差が激しく、土埃が多い。首都は排気ガスが多いことなどから、風邪
や扁桃炎にかかりやすい。
さまざまな原因による下痢症が多い。生水、生もの(加熱が不十分な食品)は、滞
在中なるべく口にしないこと。手洗いの励行は必須である。
幼稚園や学校で、麻疹(はしか)、水疱瘡、おたふく風邪、しらみなどが流行するこ
とがある。
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
米の中に石が混じっていることがよくあり、それを誤って噛み、歯のかぶせ物が脱落
することがよくあるので、注意する。
(2) 風土病、感染症
<マラリア>
世界でも有数のマラリア流行地で、ウガンダの 90%以上がマラリア汚染地域であ
る。熱帯熱マラリアが主であるが、三日熱マラリア感染や混合感染も見られる。治療
が適切に行われない場合、死に至ることもある。蚊に刺されないよう対策を講じること
が肝要である。マラリアの予防薬や虫除けスプレーは、ほとんどの薬局で販売されて
いる。
<コレラ、腸チフス、赤痢、ギョウ虫、鈎虫、ランブル鞭毛虫、アメーバー赤痢>
食品(飲料水を含む)を十分に加熱することで、感染は予防できるので、生野菜は
避けて火を通すこと。肉類はしっかり中まで火を通すこと。
<破傷風>
地方で時々発症が散見される。赴任前に予防接種を受けておくことが望ましい。<髄
膜炎>
北部や西部で大流行している。予防接種を勧める。
<HIV/AIDS>
全国に蔓延しており、身近な人にも HIV 感染者がいる可能性がある。通常の接触
では感染する可能性はないが、直接血液に触れる行為は避け、性的接触を持つこと
は厳に慎むべきである。また、レイプなどの事件に巻き込まれないように日頃から注
意が必要である。
<エボラ出血熱>
2000 年にグルでスーダン型、2007 年にブンディブギョでブンディブギョ型が流行し、
多くの方が亡くなった。2011 年 5 月には首都カンパラに近いルウェロ県で 1 名発症し、
亡くなっている。最近では 2012 年 7 月よりウガンダ中西部のチバレ県にてスーダン
型のエボラ出血熱患者が見つかり、ウガンダ保健省が終息に努めている状況であ
る。
患者が出ているとされる地域やその医療機関、患者と疑われる人には近づかない、
エボラで亡くなったと疑われる人の葬式には参列しない、野生の動物特に猿やこうも
りには近づかない、手洗い・うがいは頻繁にするなどの注意が必要である。
(3) 有害動物、病害虫
<狂犬病>
予防接種を済ませ、犬や猫、こうもりを含む野生動物や哺乳類動物等にはむやみ
に触らないこと。もし自身で犬や猫などの哺乳類動物を飼う場合は、必ず現地の獣医
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency
を受診し、必要な手続き・予防接種等を受けること。
<住血吸虫症>
住血吸虫は経口感染ではなく、経皮感染する。ビクトリア湖、ナイル川や全国の淡
水湖、河川は住血吸虫で汚染されているので、直接水に肌を晒すこと、泳ぐことは避
けるべきである。また、レジャーとしてナイル川のラフティングがあるが、住血吸虫症
の感染率が高いため、勧めない。
7. 保健衛生
(1) 飲料水
カンパラなどの都市では水道水が日常的に利用できるが、飲用するには必ず煮沸
すること。ボトルウオーターは各種購入可能である。井戸水は必ず濾過・煮沸して飲
用する。
(2) 牛乳
ブルセラ病が蔓延しているため生乳は必ず煮沸してから飲む。
(3) 濾過器の入手
アルミ製や素焼きの濾過器が一般的であり、購入可能である。濾過器は定期的に
洗浄する必要がある。
(4) その他の留意点
ウガンダ国内の医療水準は高いとはいえず、各症状が重症化した場合、迅速に適
切な処置を受けることは期待できない。したがって、日ごろの健康管理が最も重要で
あり、病気になった場合には、軽症のうちに対処することが肝要である。
All Rights Reserved, Copyright(c) 2014 Japan International Cooperation Agency