アクアフィットネスコンファレンスレポートその1

尾陰由美子のちょっとひとこと
「アクアフィットネスコンファレンスレポートその1」
2008 年の夏、2 年に 1 度の国内アクア・インストラクターの祭典「アクアコンファレンス(前アクア国内総会)
」
が開催されました。3 日間にわたるこのアクアの祭典に講師プレゼンテーターとして、そして受講者として 3 日
間参加させていただきましたので、今月と来月号ではこのレポートをさせていただきます。
まず、
「アクアコンファレンス」は今年で 8 回目を向かえ、㈱アクアダイナミックス研究所の所長今野純氏が
アメリカでのAEA(全米アクアエクササイズ協会)のサポートを受けて、16 年にわたって継続されている国内
最大のアクアコンベンションです。私は、第 1 回目から全部で 7 回講師として参加させていただいています。
何事も「継続は力なり」といいますが、これほどまでの盛大なアクアコンベンションを 16 年間続けてきたと
いうことは並大抵のことではありません。まず、3 日間プールを貸してくださる場所の確保が必要ですし、公平
でバランスよい講師陣の選出、受付などの諸所業務にかかる労力はかなりのものです。また、1 講座に 100 人近
い方が参加されるわけですから、その誘導やアンケート回収、レッスン時の諸注意への協力など運営面において
もかなり大変そうです。毎回、講師として参加させていただく度に思うことですが、さまざまなセッションや講
習会がある中で、
「アクアコンファレンス」
ほど事前の準備が行き届いたコンベンションは、
お目にかかりません。
半年以上も前に講師依頼をいただいたあとは、レジュメの提出や準備物の確認などきめ細やかにやり取りがなさ
れ、さらに当日は、講師に 2 人ほどの担当者がついてすべての運営がスムースになされるように案内をしてくだ
さいます。講座が始まると同時に音響のスタッフが、講師の指示の元に音楽をかけてくださり、VTR撮影をし
てくださるという、かゆいところに手が届きすぎるくらいの運営です。
さらに驚くのは、これらの開催期間中の運営は 50 名ほどのボランティアスタッフ(AEA・ADI認定者)に
よってなされているということです。聞くところによると、このボランティアスタッフの希望者が多く、スタッ
フになれなかった人もいたとか・・・今回は、半分くらいの方が初ボランティアスタッフだったということです。
ボランティアスタッフになられた方の話を聞くと、
「普段 1 人でレッスンを準備し、運営しているフリーインス
トラクターにとって、このように多くの人と何かを作りあげていくという機会が得られることは、非常に勉強に
もなり、モチベーションにつながっている!」ということでした。1 人の力は小さくても多くの人たちと同じ目
的に向って、たった 4 日間ではあるものの「アクアコンファレンス」を成功に導いていくという機会を与えてく
れるアクアダイナミックス研究所のスタッフや今野純氏の求心力はすごいものがあります。講師、ボランティア
スタッフ、実行委員のメンバー、そして参加者みんなが心をこめて作り上げていく 2 年に 1 度のイベントなので
す。
今回の「アクアコンファレンス」の特徴は、
「アクア国内総会」から名前を変えたということもあって、新しい
若い参加者、初めての参加者が多かったということです。また、AEA/ADI認定者と一般の方の参加も半分ず
つであったということです。昨今、
「アクアの集客が厳しい!」とか、
「アクアのニーズはない!」とか、
「お客様
のアクア離れが進んでいる!」とかいう方もいらっしゃいますが、この 3 日間で集まった指導者や関係者に話を
伺った限りでは、そうばかりとはいえないように感じました。一部のフィットネスクラブが、経費の削減にプー
ルを持たない施設の考え方を取り入れたり、スタジオプログラムばかりにのみプログラム展開を求めた結果がネ
ガティブな意見や考えになっているように思われます。そもそも水中のプログラムは、運動するにあたって「水」
という環境が必要な人の為にあるものです。それをトレンドやスタジオプログラムと同じように考えてしまうこ
とに無理がありますし、参加者のニーズからも外れているように感じます。今回の講座を、いくつか受講して思
ったことですが、アクアエクササイズの方向性が確実に変わってきているように感じました。
まずは、ほとんどの講師のプログラム展開が、現場から生まれたものであること。つまり「参加者ありき」の
目線で作られた、効果と楽しさの演出に工夫がなされたものであったということです。また、
「水の特性」をかな
り有効に引き出したプログラムも目立っていました。一時の器具を多用することは減っていて、自分の身体を使
って多様にプログラムが展開されています。そこには、私たちの身体が本来持っている機能的で自然な姿勢や動
きを意識したものが多かったようです。この 10 年くらいの間に、アクアプログラムを提供する講師陣のスキル
やプレゼンテーション能力が高くなったとともに、参加者の受講目的や参加意識もずいぶん変わったように感じ
ます。以前は、ある意味エネルギッシュで、パワーがあってコリオグラフィーがどんどん展開されるものに人気
があったように感じますが、エネルギッシュかつパワーあるレッスンは当然ですが、それらは正確で明確なパフ
ォーマンス、論理的なプログラミングとティーチングが存在した上でのものであるということです。エアロビク
ス以上にアクアエクササイズの指導者の年齢層は幅広くなっています。親子 2 世代から 3 世代になろうとする年
齢幅です。指導歴も 30 年以上の方もいれば、数ヶ月の人もいます。そんな参加者の心と身体を 1 つにしていく
講師陣のパフォーマンスは圧巻です。こういった現場をもっと多くの施設関係者や、管理者の人たちが見ると「ア
クアエクササイズ」に対する考え方や発想がポジティブになるような気がします。私たちは、
「元気」という商品
を掲げて売っているわけですから、ネガティブな発想はなるべく尐なくしたいものです。
「弱み」を「強み」に変
えられるのは、やはり「人」の力だということに気づかされるはずです。
期間中、今野氏とお話を何度かさせていただくことがあり、印象深かったのが「これから"水”は貴重になる!
つまり”アクアエクササイズ”は貴重な運動となる!誰もができる運動ではなく、”水”を手にすることができる人
のみの運動となるであろう・・・」ということでした。水道を捻ればいつでも水が出てくる日本では、想像がつ
きにくいかもしれませんが、この地球上の水を人が利用できるのは、たった0.01%ということです。水の自
給できない国がたくさんあり、水を得られない人口が 11 億人ということです。5 人に 1 人は、水の恩恵を受けら
れないということです。
「油」よりも「水」不足のほうが深刻とも言われています。私たちの行っていく「アクア
エクササイズ」は、ある特殊な人たちしかできないということになるのなら・・・そのニーズを探り、プログラ
ム開発をしなければなりません。水がない国の人に、海水や排水を「真水」にするプラント技術は日本が世界一
だということです。日本人が水を作る技術を持っているのなら、私たち指導者は、その水を使った世界一の運動
プログラムを、必要としている人々に届けていきたいものです。今回の「アクアコンファレンス」では世界に向
けて発信できるような非常に質の高い「アクアエクササイズ」が満載だったように思います。今後は、そのプロ
グラムを習得しやすくするためのシステムやツールを考えていく必要もあるでしょう。
「アクアエクササイズ」に
関しては、日本の指導者は、世界のなかでもレベルが高いと思われます。水が自給できるようになった国に、健
康になるためのアクアエクササイズ、治療としてのアクアセラピーが今後は広がっていくのではないかと密かに
期待したいと思います。
来月号は、アクアコンファレンスの講座の内容を尐しレポートしたいと思います。