労働基本権の 回復をめざして

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労働基本権の
回復をめざして
労働者の権利が危機にさらされている今だからこそ
権利を守り発展させるたたかいが重要です
いま、国と地方をあわせて600兆円もの借金をかかえ
る「財政危機」を口実に、国家公務員や自治体職員、教職
員の賃金抑制がねらわれ、いくつかの自治体では賃上げ勧
告が凍結される事態となっています。政府は、
「労働基本権
をうばった代わり」との理由で、人事院勧告制度を作りま
した。なのに、一方的に勧告さえも凍結することは、
「ルー
ル違反」そのものです。
くわえて、勧告制度によって、これまで公務員賃金が恣
意的に抑制され、それに準拠して賃金が決められる公共業
務職員、さらには民間労働者までもが大きな影響を受けて
きました。日本の低賃金政策の要としての役割を果たして
きたのが、人事院勧告制度なのです。
民間労働者の権利侵害も深刻
いっぽうで、民間労働者は、リストラ「合理化」攻撃に
さらされ、職場の労働強化もすすみ、労働基本権が骨抜き
にまでされ、
「門を入れば憲法もない」
とまで言われる職場
実態となっています。
労働基準法の改悪につづき、労働者派遣法など労働諸法
制の全面的な改悪が着々とねらわれつつある現状をふまえ
れば、いまこそ、労働者の権利を守るために、官民の労働
者がともに手をたずさえてたたかいに立ち上がるときです。
民間労働者の権利侵害も深刻
公務共闘は、公務員労働者の権利を確
立するたたかいの一環として、ILO151号条約の批准
を求める運動などをすすめています。課題の大きさからす
れば、公務・公共業務労働者だけのたたかいでは、要求の
前進は困難であることもあきらかです。何よりも、民間労
行革・規制緩和の推進と公務労働者の権利確立の意義
国民・住民犠牲の行革・規制緩和がすすめられる中で、
公務労働者の権利侵害がいっそうすすんでいる。その一つ
は、ゼネコン本位の公共事業のムダ使いを主な原因とする
国と地方自治体の財政危機を口実とした人件費抑制、賃金
改善の凍結・値切りである。これは公務員労働者からスト
ライキ権を奪った「代償措置」とされる人事院・人事委員
会勧告にもとづく賃金改善すら実施しないもので、二重、
三重に不当な措置と言わねばならない。
また、国の「行政改革」や自治体のリストラのもとでの
国、自治体の仕事の民間委託、行政機関の民営化と独立行
政法人化、正規職員の削減と身分不安定なパート・臨時職
員の増大、能力・成績主義の強化、医療や社会福祉職場な
どでの競争・市場原理の導入と賃金体系の改悪、権利侵害
など公務労働者全般に対する賃金・労働条件の抜本的な改
悪とあらたな権利侵害がすすめられようとしている。
働者をふくめて、権利闘争のすそ野をいかに大きくしてい
くかがカギとなります。そうした運動や世論を広げていく
第一歩として、職場からの積極的な学習・討議を呼びかけ
ます。
国の医療機関・診療所の統廃
合に反対し、その存続と労働者
の労働条件の改善を求める全医
労に対し、厚生省当局は、IL
Oも断罪し、その速やかな是正
を求めた極めて不当な組合破壊
攻撃を行い続けている。
こうした中で、当局による公
務労働者への権利侵害の不当性
を告発するとともに、行政や医療、教育、社会福祉、さら
にそこで働く公務労働者が国民、住民に対して本来果たす
べき役割を明らかにし、そうした役割を発揮するためにも
労働基本権をはじめとする諸権利の確立と労働条件の改善
が不可欠となっていることへの国民、住民の理解を広げる
ことが重要となっている。
公務員労働者から たたかう武器を奪った マッカーサー書簡と政令 201 号
第二次世界大戦後、新憲法によって労働者の権利が確立
されるとともに、日本の労働運動は急速に発展していきま
した。公務員労働者にも、ストライキ権が保障され、猛烈
なインフレに対処するため、当時の公務員産別組合である
全官労(全国官庁職員労働組合協議会、1946年9月結
成)は、
「生活補給金」を要求してストライキで闘いました。
憲法が保障する労働基本権を一方的に剥奪!
ストライキを含む大衆行動を背景に、全官労は、大蔵大
臣との直接交渉によって、3千円近い賃上げを勝ち取るな
ど、賃金闘争は新たな高まりをしめしました。敗戦の混乱
の中、労働運動の担い手でもあった官公労働組合は、戦後
日本の民主化推進の担い手でもあったのです。
しかし,労働運動の高揚に危機感をいだいた占領軍司令
官マッカーサーは,48 年 7 月に争議権と団体協約締結権を
禁止する書簡を日本政府に提出し,これを受けた政府は,
政令により,公務員労働者
の労働基本権を一方的に剥
奪しました。これが政令2
01号です。憲法で保障さ
れている基本的人権をふみ
にじる暴挙でした。
戦後反動勢力の労働者支配の手段に
一片の政令によって,公務員労働者からストライキとい
う武器がうばわれ,そのことは,高揚しつつあった官・民
労働者のたたかいをも分断することとなりました。労働基
本権剥奪は,戦後の労働運動や民主運動を抑圧することに
も大きな役割を果たしたのです。
このように,労働基本権の剥奪は,単なる労働政策にと
どまらず,戦後日本の反動的支配のために不可欠な根幹的
な政策だったのでした。
マッカーサー書簡
官公労の賃金闘争が大きく前進し,一斉に争議行為に突
入する直前の1948年7月22日に,占領軍司令官マッ
カーサーは,日本政府に書簡を送り,公務員の争議行為を
禁止し,団体交渉権を否定するよう求めた。書簡は,
「公務
員の争議行為は,彼等自身において要求が満足させられる
までは,政府の運営を妨害する意図のあることを明示する
ものにほかならない。自ら支持を奪った政府をまやかしせ
しめようと企図するような行為は,想像しえないものであ
ると同時に,許しえないものである」と述べている。書簡
はさらに,当時政府が直接管理していた国鉄,専売につい
て公共企業体に再編するように求め,公務員を分断する意
図を示した。
政令201号と国公法の大改悪
マッカーサー書簡を受け取った民主,社会党などによる連
立政府は,単なる「書簡」にもかかわらず,
「時を移さず」
具体化することを決定した。すでに憲法が制定されていて
争議権等の剥奪は憲法に違反するという世論や占領軍内部
からも反発があったが,政府は7月31日に「連合国最高
司令官書簡に基づく臨時措置
に関する政令」
(201号)を
国会にはかることなく公布・
即日施行した。
政令は,①公務員は,同盟
罷業または怠業的行為等の脅威を裏付けとする団体交渉権
を有しない,②公務員は,何人といえども同盟罷業または
怠業的行為その他の争議手段をとってはならない,③違反
した者は1年以下の懲役または5千円以下の罰金に処する
というものであった。
政府は暫定的なものであった政令201号を法制化すべ
く,同年11月に国家公務員法の大改悪案を提出し,国会
内外の反対闘争を無視して速記中止のかさなる国会で11
月30日に強引に成立させた。公布は12月3日で,ここ
に公務員のスト禁止法制が確立された。
労働者はドレイではない∼労働基本権は人間の尊厳と自由を守る権利
政府は 48 年 12 月,労働基本権剥奪の「代償措置」であ
るとして,人事院勧告制度を発足させました。しかし,第
1 回勧告後,人事院は,5 年間にわたって賃上げ勧告を出
さず,その後も金額や実施時期の値切りがしばしば強行さ
れてきました。それ自体,許されないことですが,そもそ
も,労働基本権の「代償措置」などがあるのでしょうか。
生存権,自由権としての意義を持つ労働基本権
憲法第 28 条は,労働者の団結権・団体交渉権・団体行
動権(ストライキ権)を保障しています。それは,憲法第
25 条で保障している生存権を実現するうえでも,不可欠
だからです,人間らしい生活のためには,賃金改善はもと
より,労働時間の短縮,休暇や福利厚生の充実などを使用
者に要求し,たたかうのは当然の権利です。そのことから
も,労働基本権は,生存権としての意義をもっています。
くわえて大切なことは,労働基本権は,人間としての尊
厳をまもり,自由をかちとるための権利であるということ
です。いま,日本には,長時間・超過密労働,過労死や一
方的なリストラ「合理化」など,人間の尊厳さえもふみに
じるような過酷な現実があります。奴隷のような労働はき
っぱりと拒否する。自分の意思に反して労働を強制されな
い。資本からは支配されない。労働基本権は,そうした人
間としての尊厳と自由を実現するための根源的な権利なの
です。
「代償措置」などは本来存在しない
したがって,労働基本権が,奴隷のような労働から開放
し,労働者が人間らしく生きるための権利である以上,そ
の剥奪にともなう「代償措置」などは,本来,存在しませ
ん。このことは,スト処分をめぐる裁判闘争の多くが,こ
の「代償措置」をめぐってたたかわれていることからも,
非常に大きな論点です。
ただちに消防職員の団結権の保障を
消防職員の「職責と現場規律の維持」を口実にして,政
府が団結権を認めていないのは,世界
でもいまや日本だけである。これは,
勤労者の団結権を保障した日本国憲法
や日本国政府も批准したILO87 号
条約にも明確に違反している。
消防職員の団結権保障の世論が高ま
る中で,政府は 95 年に消防法を「改
正」し,各消防職場に消防職員委員会が設置されることにな
った。しかし,これは実際の運営は上司が一方的に議事を
進め,自由な議論もできないなど極めて非民主的な運営と
なっており,団結権保障とはまったく無縁のものである。
団結権の保障は,市民の生命,財産をまもるために,消
防職員が安心してはたらける職場環境,労働条件を確立す
るうえでも欠かすことはできない。労働基本権のなかで,
最も基礎となる団結権をただちに保障すべきである。
ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」と権利確立
「教員の地位に関する勧告」
(1966年)は,ILO総
会で採択された「結社の自由および団結権保護条約」
「団結
権および団体交渉権条約」などの基本的人権の保障を前提
とし,それらを保管するものとして採択された。
勧告では,学問の自由をはじめとする教育における自主
的権限の保障,政治活動の自由など市民的権利の確立を求
めている。
給与と労働条件の労使間交渉をつうじての決定,争議を
解決するための労使合同機構の設置,争議解決のための手
立てをつくしたうえでのスト行為などの保障を求めている。
さらに,教員の責任を果たせるようにするため,教育政
策の策定などについて教員団体との協議を当局に要求する
など,勧告に示された権利の確保は,今日的にも重要な意
義を持ち,その実施は国際的な責任ともなっている。
裁判闘争できりひらいてきたたたかいの到達点
∼労働基本権をめぐる最高裁判決
労働基本権が,生存権を実現し,人間としての尊厳と自
由を守る権利であるからこそ,減俸や訓告などの処分,刑
事罰をおそれず,公務員労働者は,繰り返しストライキで
闘いぬき,要求を前進させてきました。たたかいの中には,
ストライキ禁止の違憲性を世に問う裁判闘争もすすめられ
てきました。
たたかいの高揚のなかで出された画期的な判決
66年10月,最高裁大法廷は,スト処分をめぐって争
われていた「全逓東京中郵事件」において,生存権の実現
のために,労働基本権はすべての労働者に保障すべきとす
る判決を出しました。それまでの大法廷の論旨をくつがえ
す画期的な判決でした。
さらに69年4月,
「都教組事件」の判決でも,最高裁は,
ストライキへの刑事処罰には違憲の疑いがあるとして,7
名の被告全員を無罪としました。あいついで出された最高
裁判決は,公務員労働者の権利回復に画期的な展望をひら
くものとなりました。
これらの勝利判決を勝ち
取った背景には,当時の労
働運動の大きな盛り上がり
がありました。60年代後
半のこの時期,官公労働組
合は,政府の使用者責任を
追及して,全国的な統一行
動を配置しながら闘いを前進させ,それが牽引車となって,
労働運動全体が大きな高揚をみせました。労働者の団結し
た力が,政府・財界を追い込む中での勝利判決だったのです。
司法反動の中で裁判闘争もきびしい局面に
しかし,こうした動きに恐れを抱いた政府は,最高裁判
事を入れ替え,政府の意のままになる裁判官を順次任命し
ていきました。その結果,最高裁は74年4月,
「全農林警
職法事件」において,わずか4年前の都教組判決を全面的
にくつがえし,ストライキ禁止を合憲とする判決を出しま
した。その後も,77年5月の「名古屋中郵事件」など,
司法反動がすすむもとで最高裁の不当判決がつづきました。
権利闘争の歴史と教訓に 確信をもってたたかいへ
∼ILO87号条約批准・スト権スト
マッカーサー書簡から50余年,官公労働運動の歴史は,
権利回復を求める粘り強いたたかいの歴史でもありました。
賃金闘争と権利闘争とを結び付けてたたかう中で,70年
代には,政府から有額有率にせまる回答を引き出すなど,
人事院勧告制度の打破に接近する前進をとげ,権利問題で
も,政府部内で官公労働者のストライキ禁止のあり方が議
論され,スト権奪還が射程距離に入ったと言われるまでの
到達点を築いた時期もありました。
貴重な経験をのこした ILO87号条約批准のたたかい
とりわけ,ILO87号(結社の自由と団結権保護)条
約批准と結合させて,要求と運動を前進させてきた60年
代前半のたたかいは貴重な経験となっています。87号条
約批准とひきかえに,政府が公務員法の改悪を狙う中で,
公務員労働者はストライキを含む大衆行動で闘いぬきまし
た。
いっぽう,ILO理事会は65年1月,調査団(ドライ
ヤー委員会)を日本に派遣までして,日本政府に早期批准
をせまりました。その結果,この年の5月,ついに条約批
准が実現したのです。
また,70年代には,公労協が中心となって,ストライ
キ権の奪還そのものを目標においた「ス
ト権スト」が闘われました。国鉄,郵便,
電電など,公共企業体の労働者80万人
が参加したこのストライキは,残念なが
らその目標を達せず,闘いなかばにして
中止せざるをえませんでした。
この「スト権スト」は,労働基本権回
復には,何よりも幅広い労働者・国民の
共感と支持の高まりこそが必要であることを,あらためて
明らかにしました。
たたかいの火を絶やさずに運動を引き継ぐ
今日,反動勢力の巻き返しや,労働戦線の右翼再編など
によって,私たちの権利闘争が直面する困難は決して小さ
くはありません。しかし,50年間のねばり強い闘いの中
で,先輩たちが切り開いてきた数々の前進と豊かな経験は
ドライヤー委員会とその報告
ILO理事会の度重なる勧告にもかかわらず,87号条
約の批准をさぼりつづける日本政府に業を煮やしたILO
は,1963年11月にドライヤー氏を委員長とする3人
構成の「結社の自由に関する実情調停委員会」を設置し,
日本政府の同意を得て9月から証人喚問等による調査を開
始した。
ドライヤー委員会は65年1月に来日し,政府関係者,
組合代表等から公務部門の労使関係についての事情聴取す
今なお貴重です。
運動の歴史に確信を持ち,闘いの火を私たちが受け継い
でいこうではありませんか。
るなど詳細な調査を行った。その結果を同年8月に「日本
の公共部門に雇用される者に関する報告」として公表した。
ドライヤー報告は,全部で6部から構成され,2253
項目,
本文のみで750ページを超える膨大なものである。
その内容は,日本の公共部門における労使関係を詳細に分
析し,国際基準に照らして問題点を指摘しており,現在に
おいても有効な多くの示唆を与えている。
ナショナルセンター規模のたたかいへ すべての労働者と共同をひろげて
∼運動をすすめる基本方向
賃金闘争と権利闘争を一体で
権利闘争をすすめていく基本方向は、どこにあるのでし
ょうか。
まず、賃金闘争としっかり結合させて闘うことです。民
間組合のように団体協約締結権が保障されていないため、
公務員の賃金は交渉の事項になるものの、政府や人事院・
人事委員会によって一方的に決められる仕組みになってい
ます。こうした制度をうち破り、賃金要求を前進させるた
めにも、労働基本権回復の闘いと一体ですすめる必要があ
ります。
公務員の権利は民主主義のバロメータ
そして何より重要なことは、
「公務員労働者の権利水準
は、民主主義のバロメータ」との言葉とおり、労働基本権
の確立の課題は、日本の民主主義的な諸権利を発展させて
いく課題と深く結びついていることを国民の間に広げ、国
民的な支持と合意のもとで運動を大きく前進させていくこ
とです。全体の奉仕者である公務員労働者に対して、民主
的な権利が保障されることによって、行政や地方自治、教
育などの民主化も実現していくことになります。
そのことからも、署名運動や宣伝活動を通して、公務員
労働者の労働基本権確立の重要性を一人でも多くの人たち
に伝えていく必要があります。そうした粘り強い闘いが、
政府との力関係を変え、公務員労働者の権利回復、そして、
すべての労働者の権利拡充へとつながっていきます。
とくに、ナショナルセンター・全労連への結集を強め、
その役割と機能を発揮させながら、幅広い労働者との共同
を広げることが重要です。闘いの旗を高くかかげ、大きく
外に足を出していきましょう。
ILO 組合活動の制限是正を日本政府に勧告
政府・厚生省当局による国立病院・診療所つぶしの攻撃
が強まる中で、これに反対して闘う全医労に対して、厚生
省当局は、団体交渉拒否をはじめ、労働組合運動への不当
な介入を続けている。
全医労は1996年8月、代表団をジュネーブのILO
本部に派遣して、厚生省当局による組合攻撃や差別の実態
などをまとめたレポートを事務局に提出した。ILO「結
社の自由委員会」は、全医労の訴えを正式に受理した。
その後、委員会の審理を経て、ILO理事会は1997
年12月、日本政府に対して、組合活動に対する不当な妨
害をやめるよう勧告を出した。
この勧告は、組合活動の制限をしてはならないと明確に
述べており、その点から、全医労にとどまらず、さまざな
な制限下で闘いを続けているすべての労働者を励ます画期
的な意義を持っている。
人勧凍結スト処分の取消を求めた札幌地裁判決
99年2月26日の札幌地裁は、国と道の人事院勧告値
切り・凍結に抗議する教職員の争議行為(82年∼83年)
に対する懲戒処分を違法として、取消請求を認める判決を
下した。
判決は、ストの目的が人勧の機能回復にあり、また暴力
行為を伴うものでないこと、影響面でも生徒に取り返しの
つかない重大な支障を与えるものでないこと、また民間労
働者と比べて、勧告凍結、値切りの必要性はないこと、世
論は勧告完全実施を支持していたことなどを考慮し、スト
処分は裁量権濫用で違法と結論づけた。
判決は、
「懲戒権者が裁量権を濫用したものと認められ
る場合に限り違法と判断すべき」とし、公務員の争議行為
の禁止は憲法28条に違反しないとの立場にあり、この点
は認められるものではない。しかし限定された条件の範囲
とは言え、争議行為の妥当性を認めた点で、今後の権利闘
争にとって大きな意義がある。
資 料
<先進国のスト権にかかわる法制度>
アメリカ
連邦職員のストは違法とされ、スト参加者は解雇の対象
となる。州の大部分も判決等によって違法とされ、残りの
州もスト権行使には抑制的な制圧がある。
ドイツ
二つに大別され、
約6割を占める官吏はストが禁止され、
雇員と労務者は民間と同じ扱いで労働基本権が認められて
いる。
イギリス
警察を除いてスト禁止の法律はないが、政府はスト参加
者に対して使用者としての懲戒権を行使できる。
フランス
警察、刑務官などを除き、法の規制する範囲内でスト権
の行使ができるが、病院、航空管制など最低必要業務の維
持、必要不可欠業務へのスト労働者の徴用、波状スト禁止
など、いくつかの制約がある。また賃金カット、違法スト
への超過有為処分は可能である。
イタリア
警察、航空管制官などごく一部を除いてはスト権を制限
する法律はなく、これまでに必要最小業務を保障する目的
の立法が試みられたが、実効性はない。
以上、スト権が無条件に行使できない諸国でも、アメリカを除いては賃金などの労働条件決定は、一義
的に労使の団体交渉に委ねられ、合意に至らない場合は、仲裁、調停の手続きを踏むことになっていま
す。