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ピラミッド学校見学日誌①

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Bankbridge Development Center
報告:峯
勇人
1. Bankbridge Development Center とは
1994年にニュージャージー州、グロースター郡に設立された、自閉症を
含む発達障がいなど様々な特別なニーズを持つ生徒の通う学校である。自閉症
の教育と研究で世界的に有名な、アンディ・ボンディ博士とロリ・フロスト女
史、現在のメグ校長が開設にかかわっており、当初の生徒数は3人であった。
現在は3歳から21歳の生徒が計185名通っている。ニュージャージー州の
人口は、およそ800万人で、100あまりの学校区がある。各学校区にそれ
ぞれ特別支援プログラムがあるが、各郡で独自に持っているところもある。こ
こもその1つであり、優れた実践を行っているために特別なニーズを持つ生徒
が、周辺の地域からも通ってきている。この学校の主な役割は、その生徒の発
達に合った重要で役立つスキルの指導をして、生徒自身が住む地域の学校に戻
っていけるようにすること、できる限り通常の教育環境に戻すようにすること
である。実際に地域の学校に戻って大学に進学した生徒もいる。
2. クラスルームと、指導にあたる先生について
学校の施設内はとても広く、A ウイング、B ウイングに分けられている。A ウ
イングは、3歳から7歳のプリスクール(就学前の教室)の生徒が中心で、B ウ
イングは小・中・高の生徒が中心に活動している。
クラス分けは、基本的に年齢別であるが、授業によっては、発達レベルでク
ラス分けをすることもある。1クラスに最大10名まで入れるが、現在は大体
約8名前後。各クラスには担任の先生が1人と、アシスタントの先生が2人配
置されている。さらに、州の制度で問題行動が激しい生徒や、医療的ケアが必
要な生徒のためには1対1で加配の先生が入ることになっており、とても手厚
い教育支援がされている。
学校には、教員の他に言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、ソーシャルワ
ーカーが常勤で働いていて、職員は全部で120人ほどになる。質の高い教育
を提供するためにスタッフトレーニングを強調して取り組んでいる。
授業時間は、月から金曜日の8:45から14:15までで週5日開校され
ている。年間の授業日数は200日である。
3. 実際の教室について
教室の物理設定は、遊び、学習、集まりといったコーナーがあり、より通常
の生活場面に近づけるために、仕切りの高さを低くしたり、部屋の壁をうまく
利用したりして、プリスクールの教室でも物理的構造化は最小限に抑えられて
いる。高校生のクラスになると、机と椅子が普通に配置してあるだけで仕切り
などは見られなかった。
プリスクールの教室の構造
見通しを持って自立して行動できるように、各生徒全員が1つずつ個別の視
覚的なスケジュールが用意され、その形態は、絵だけ、絵+文字、文字のみと
生徒により様々である。スケジュールをチェックするための合図は出さず、課
題や活動の終了が、次のスケジュールをチェックするための自然な合図となる
ように指導されている。そのため、スケジュールの操作を習得中の子どもには、
先生が黒子のように後ろについて身体ガイドで教える。自立して行動するのを
妨げるような声かけはしない。
プリスクールの教室にあった視覚スケジュールと視覚指示
表出と理解のための様々な視覚的コミュニケーションのシステムが用意され
ている。視覚スケジュール以外の理解のシステムは、様々な禁止項目(友達を
噛まないなど)が視覚的に絵で示されている。表出のシステムでは、好みの活
動を選択するための視覚的な選択ボードや、絵カード交換式コミュニケーショ
ンシステム(PECS)を使っている。音声言語でコミュニケーションが取れる生
徒は話し言葉でコミュニケーションをとっている。
スケジュールの中には、「並んで待つ」とい
うものがあった。これは教室運営上、時々時間
調整をする必要があるのと、子ども自身が「待
つ」ことを習得するために用意されている。教
室外に移動する時は、写真のような椅子に座っ
てみんなが集まるのを待ってから出かける。
学校には、言語聴覚、作業療法、理学療
法の部屋があり、個別教育計画に基づい
て、それぞれの生徒が専門の指導を受ける
ことができる。メグ校長が説明している写
真は、理学/作業療法室にあったテンプル
グランディンさんが開発した締め付け機
が置いてあった。値段は30から40万円
ほどとのこと。
指導内容は、各年齢や発達段階に応じて実生活に即した機能的活動の中から
組み立てられている。個別指導計画の会議によって決定された指導目標にそっ
て、それぞれの生徒や目標に応じてレッスンプランが作成されバインダーにと
じてある。レッスンプランを初めから作成しなくてもよいように、各クラスに
は、領域別にレッスンプランの課題例のシートが用意されており、生徒の目標
に近いものをそこから選んで使ったり、アレンジして使ったりしている。
各クラスにデータ収集のシステムがあり、そのデータは目標としている行動
に関して、週に2~3回取るようにしている。その目的は、進歩の状況や、手
続きに変更を加えるかどうかを確認するためである。むやみにとるわけではな
い。
活動や課題内容のバリエーションの変化は、季節に合わせて変えるようにな
っている。私たちの見学時期がちょうど10月のハロウィンの季節であったた
め、ハロウィンに関するものづくりや語彙学習などが行われていた。
ハロウィンに関連する展示物
中学や高校になると家庭や地域生活や職業により特化した授業内容になる。
中学部で一番印象的な授業は、大きな地図を見ながら、お店までの行き方やそ
のお店の名前、そして、その機能(何をするお店か)まで学ぶという、とても
実生活に即した授業が行われていたことであった。週に1回は、実際に地域に
出かけて行き、そこで学習する場面も設けられている。その時に使う手順書も
用意してあった。身体の不調や痛みを聞くためのシートもあった。
地域のお店を調べる地図
身体の不調を聞き出すシート
高校のクラスには、パソコンやインターネットを使った授業があった。スマ
ートボードと呼ばれる最新の視聴覚ディスプレイ機器(巨大な i-Pad のような
もの)は、タッチ式で操作でき、様々なプログラムがパソコンと連動されてい
る。パズルや買い物の計算など様々なプログラムがセットされていた。パソコ
ンは、生徒用に何台も用意され実生活でインターネットを活用する方法を学ぶ。
たとえば、インターネットを使って見に行く映画の時間を調べるなどである。
家庭と学校のコミュニケーションのために連絡帳が有効に活用されている。
さらに中高生の場合は、自分でその日にやった活動について「何をしたか?」、
「どのような感想か?」を聞くような用紙を用意している。
スマートボードとパソコン
4. まとめ
生徒数185名に、教師や職員の総数が120名と計300名近くの人がい
ることになるが、巨大な敷地と、広い廊下のため、狭さを感じさせない作りに
なっている。中庭には多くの運動器具が用意されていて、けがをしないために
地面は砂ではなく、全面シートが張ってあるなど、安全面に対する配慮も随所
に見ることができた。
作業療法士や理学療法士など、様々な専門分野のスタッフが在中していて、
生徒の指導・支援に協力しているため、教育支援計画を立てるときには、各教
室で教える教師達だけの見解ではなく、1人の生徒に対して複数の専門分野か
らの見解を受けることができ、その生徒1人1人に合った多面的な教育支援計
画を立てることが可能となる。
また、日々の指導の中には、アンディ・ボンディ博士が開発した、ピラミッ
ド教育アプローチと呼ばれる、応用行動分析(ABA)の考え方を基に体系化した
教育指導法が随所に取り入れられていて、生徒の指導・支援に使われている。
開設後16年経った現在でも、ボンディ博士やフロスト女史のコンサルテーシ
ョンを定期的に受け、120名いる教師のスキルアップを図っている。
この学校の最終目標は、生徒自身が住む地域の学校に戻れるようにするとい
うことで、より通常の生活場面を想定した物理的構造化や、言語指示に従う学
習、待つ時に並ぶことを学ぶなど、実際の地域生活、学校生活で必要になって
くるスキルを学ぶことが重要視されているのだと感じた。
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