特集 カーディーラーは 鈑金塗装入庫台数、 内製処理台数ともに減少 カーディーラーの鈑金塗装内製化の実態を探るべく、 トヨタ自動車、日産自動車、 マツダ、三菱自動車工業のカーメーカー各社と、 さらにヤナセオートシステムズを取材。 系列ディーラーにおける鈑金塗装の入庫状況、 内製推移について聞いた。 自動車保険等級制度の改定が 大きく影響 の修理仕事が着実に減っているのは間 いるのはうなずける。ただ、各社とも 違いない。ディーラーへの鈑金塗装入 に厳しい状況の中、トヨタが 5%(約 カーディーラーにおける鈑金塗装の 庫が大きく減少しているのも当然とい 76,000 台)のマイナスにとどめてい 総入庫台数は、予想以上に大きく減少 えよう。 るのはさすがである。 している。これは、新車販売や景気動 向によるものではなく、自動車保険の ノンフリート等級別料率制度改定の影 内製化工場における処理台数(年 各社ともに入庫量の確保が 最優先課題 間)も、前回と比較して各社とも減少 している。トヨタ、マツダでは 3 〜 8 響に他ならない。 表 1 は、各社系列ディーラーの鈑金 %のダウンに抑えているが、日産にい 損害保険料率算出機構が毎年発行し 塗装内製状況をまとめたもの。2 年前 たってはおよそ 17%(約 61,000 台) ている「自動車保険の概況」からも、 (2012 年 7 月。 本 誌 2012 年 12 月 号 特 のマイナス。これほどの大きな落ち込 対物賠償責任保険や車両保険への加入 集参照)に比べて、各社とも鈑金塗装 みとなると、もはや入庫台数減少の影 件数がかつてない減少幅を示している の入庫台数が減少している。 響だけでは説明できない。 ことが見て取れる。さらに、従来まで トヨタがおよそ 5%、日産とマツダ その要因として、超高張力鋼板・高 は等級ダウンのなかった飛び石による は 1 割強のダウン。2012 〜 2013 年で 張力鋼板の修理や高機能塗装といった ガラス破損などの入庫も大幅に減少し 新車登録車の販売台数が落ち込み、連 高難易度修理の増加、熟練技術者の減 ており、車体修理需要、特に保険扱い 動して鈑金塗装の入庫台数も減少して 少による生産性の低下、各販社ごとの 表 1 カーメーカーの鈑金塗装内製状況 系列 ディーラー数 内製 ディーラー数 内製化率 内製 拠点数 鈑金塗装 総入庫台数(年間) 内製化工場 処理台数(年間) 内製率 トヨタ 280 社 184 社 約 66% 341 工場 約 1,380,000 台 約 670,000 台 約 49% 日産 124 社 94 社 約 76% 173 工場 約 446,400 台 約 300,000 台 約 67% 40 社 28 社 約 70% 85 工場 約 138,000 台 約 87,000 台 約 63% 106 社 36 社 約 34% 48 工場 約 98,100 台 - - - - - 9 工場 約 55,000 台 約 24,000 台 約 44% マツダ (参考) 三菱 ヤナセ 28 ボデーショップレポート 2014 年 12 月号 BSR12_026-034.indd 28 2014/11/04 13:12 特集 着々と内製化を推進するホンダ系ディーラー 小型車フィットや軽自動車 N シリーズ 年間 50 万台近くの鈑金塗装入庫があ 力工場との関係維持の中で、鈑金塗装の の販売が好調な本田技研工業。系列ディ るホンダだが、要員育成の遅れなどで生 内製・外注のバランスをいかに保ち、さ ーラーのサービス体制、特に鈑金塗装サ 産性が計画通りに上がらない工場も少な らなる売り上げの拡大に向かうのか、そ ービスの方針、戦略にも変化がみられる。 くないとの話を耳にする。すべて順風満 れとも利益を追求していくのか、注目さ 提携協力工場との「共存共栄」を掲げ、 帆というわけではないようだ。今後、協 れるところだ。 鈑金塗装入庫に関しては外注に依存して いたホンダ系ディーラーだったが、それ も以前の話。大都市圏を中心に内製化工 場の新設、リニューアル、それに伴う要 員の確保、育成を進め、今やホンダ全体 の内製率は 10%を優に超え、その勢い は 20%にも迫るものと推測される。 各地で内製化が進み、従来の指定・協 力工場に対する要求、条件も大きく変わ っている。整備認証資格の取得はもちろ ん、環境・安全衛生面に対するコンプラ イアンス(法令遵守)、使用設備・機器・ 材料の各種条件も設定されている。さら に外注の仕事に対するレス率も上昇傾向 にあり、なかには 45%という高レス率 を提示しているディーラーもある。 等級制度改定の影響で入庫台数は減少、内製率も低下 隔年で実施している全国のカーディー およそ 3 分の 2 の 63.5%の内製化工場 推移を示したのが表 2。平均は 66.7% ラーの内製化工場を対象としたアンケー が「減少した」と回答している。カーメ で、前回調査時(2012 年、72.4%) ト調査において、今回、2012 年 10 月 ーカーの系列ごとに新車販売の状況が異 より 5.7 ポイント低下している。特に、 から順次適用が開始された「自動車保険 なるため、鈑金塗装入庫の減少幅に差は 内製率 80%以上に対する回答数が大き ノンフリート等級別料率制度」改定の影 みられるものの、多くのディーラーが厳 く減少しており、等級制度改定に伴う中 響が、ディーラー内製化工場にどの程度 しい状況に直面している。ちなみに「増 ダメージ車の入庫減により、多くの内製 及んでいるのかを尋ねた。 加した」と回答したディーラーはゼロだ 化工場の生産性、稼働率が落ちているこ グラフ 4 は、等級制度改定後の鈑金塗 った。 とがうかがえる。 装の入庫台数の変化について聞いた結果。 2008 年以降のディーラーの内製率の 表 2 カーディーラーの鈑金塗装内製率分布 2014 年 2012 年 2010 年 2008 年 3.9% 2.3% 2.1% 2.2% 20 ~ 39% 13.7% 18.6% 10.6% 19.6% 40 ~ 59% 15.7% 7.0% 12.8% 10.8% 60 ~ 79% 27.5% 14.0% 21.3% 17.4% 80 ~ 99% 31.4% 44.2% 39.4% 30.4% 7.8% 13.9% 13.8% 19.6% 66.7% 72.4% 72.9% 70.0% 20%未満 100% 平均 30 グラフ 4 ノンフリート等級別料率制度改定後、 鈑金塗装の入庫台数の変化は? 変化していない (%) 36.5 63.5 等級制度改定前より 減少した ボデーショップレポート 2014 年 12 月号 BSR12_026-034.indd 30 2014/11/04 13:12
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