本誌PDF - 日本工業出版

口
5 VoE.46 No.6
00NTENTS
銅腐食
特
●銅の腐食 と耐食性
●建築用銅配管の腐食 と防食
北海道大学 能 登谷武紀
鹿島建設帥 中島博志 8
●淡水中における銅および銅合金の耐食性
●海水通水下の銅含金の生物腐食
集
住友軽金属工業輸 山 田 豊 15
帥関西テクノカンパニー 川 辺允志 21
エ ネルギ ー ジ ャー ナ リス ト 越 後屋佐助
一
慶 應義塾大学
丼出秀樹
■設計
●エノヾラ流 動床 ガ ス 化溶 融 シス テム
●保 温材 とステ ン レス応 力腐 食 害」
れ モ デル 試験
●電気化 学 ノイ ズ,去によ る腐 食 モ ニ タ リング
■法 令 ・規格
ー
ー
…
東
閉
1内陽志生
洋エンジニアリング閉 岩脇大仁 り
●エ ミ ッシ ョン対応バル ブ評価試験の 国際規格
0配 管設計入門 。再入門講座②
PEコ ンサルタン ト高橋 高 橋利彦 62
0配 管装置の トラブルとその未然防止①
西野配管装置技術研究所 西 野悠司 68
連
佐藤 眺 村 上忠博 55
コ ラ ム
●配管技術者のための米国参考書
… … 西野配管装置技術研究所 西 野悠司 85
棗
座
010分 で分かる!!超
初心者のためのPC講 座
O♪ 娘の誕生日♪どこにデー トにいこうかな ♪
載
●「
水問題」と配管技術
②水資源と水需要
い荏原製作所 カ
ロ
藤涼―
JSP鈴 木 1多 小浦孝次
9 7 2 6 9
2 3 4 4 4
●東 シベ リアのコビクタ天然ガス ・パイプラインの回中韓 によるFS
●ガ ス 事 業 法 改 正 と 今 後 の 課 題
]
本田久親 75
…
…
…
0 197PIα
92
″J7aS力
…
…
0 広 告目次
044
…
0 ベ ンダーズ リス トー製造販売会社一覧 - 0 2 9
《1 )
鋼 の腐 食 と耐食性 ・
H0402‐20
0385‐9894/0″ γ500渇命X/」CLS
特集 :銅腐食》
《
銅 の腐食 と耐食性
<銅 はなぜ腐食するのか、銅 の耐食性 は何 によるのか>
北海道大学 能 登谷 武 紀
Takenori Notoya
1. は じめに
鋼は、最 も古 くから使用 されてきた金属 である。銅
は、電気伝導性および熱伝導性に加え、機械加 工 陛が
よく、半田付 けや ろう付けが容易なため、広 い分野で
多 くの用途に使われている。銅は、金や銀 のような貴
金属 の 1つ として分類 され、耐食性に優れた金属であ
ることはよく知 られている。自然環境において銅の腐
食速度が極めて小 さいことを証明する事例 は多数存在
す る。銅および青銅の工芸品が何千年 もの間、地中又
は海水中でほとんど形 を変えずに存在 していた例や、
もかかわらずt最 初 の100年 間に、肉厚 は0.lmm程 度
しか減っていなかった。 また、銅は多 くの塩、アルカ
リ性物質お よび有機物 に対 して も充分な耐食性 を示
す。銅 は、塩化物溶液中で も熱力学的 に安定であ り、
酸素 な どの酸化剤 を除 くだけで防食が可能である。
「
耐食性」 とい うのは、勿論、相対的な言葉 で あ り、
腐食す るか否かは環境による。鋼製品の変色や銅管の
孔食事故 は、依然 として問題 となっている。銅は、何
は何によ
故腐食す るのであろうか、また、鋼 の耐食 l■
るのであろうか。
2.銅
ンシャルとい う量 で表される。酸化性 の環境 に曝 され
ている銅 は高い化学 ポテ ンシャルをもっているため、
低 い化学 ポテ ンシャルをもっている銅酸化物や銅硫化
物な ど酸化状態 にある銅化合物 よりも不安定である。
従 って、銅の腐食 は、避ける ことが 出来ない。 しか
し、その速度を減 らす ことは可能である。銅の腐食過
程を第 1図 に示す。
柾 ネーー ヘ ャ心ヽ卜嶋訃ギ ーー▼当
銅屋根が200年 間、0.4mmし か腐食 しなかった例 もあ
る。 ニュー ヨークにある自由の女神像は、長年、工場
か らの大気汚染物質を含む海洋環境に曝されていたに
除 くこと、即 ち、鉱石を還元す ることによって造 られ
たものである。物質の安定性は、物質の もつエネルギ
ーの高低 で決 まる。 このエネルギーの高低を化学 ポテ
銅酸化物
銅水酸化物
銅ハ ログ ン化物
腐食過程 ―
第 1図 銅 および銅腐食生成物の安定性
が腐食 する理 由
金属には、金や白金 のように腐食 しにくい貴な金属
と鉄や亜鉛のように腐食 しやすい卑な金属がある。そ
のいずれも、環境 の腐食 隆に依存す る。銀や銅は、鉄
や亜鉛 とは異なり天然に自然銀および自然銅 の状態 で
存在す る。古代 の銅鐸は、 自然銅か らつ くられた と言
われてい る(1`また、 自然界 における銅は、他の金属
と同様 に酸化物や硫化物の鉱石 としても存在す る。金
属銅は、鉱石にエネルギーを加えて酸素や硫黄を取 り
銅が腐食 しやすい環境 は、軟水でpHの 低 い井戸水、
酸化性 の酸、酸素 を含む非酸化性 の酸、熱濃硫酸、
銅 と錯体 をつ くるアンモニア性溶液、アミン類、 シア
ン化合物、酸化剤 として作用す る硝酸および亜硝酸 と
ビ性の重金属塩お よび硫化物を含む溶液な
その塩 酸イ
どである。また、銅 は抗菌性 を示すけれども、特定の
バ クテリアの代謝物質 によって孔食が促進されること
°X°
もある 。
配管技術 2004.5.1
│
・
〈2 )
銅の腐食 と耐食性・
3.銅 の腐 食生成物
銅の腐食は、環境 との相 互作用により進行し、環境
に存在する成分を取 り込みなが ら腐食生成物 を生成
は、例 えば、黄銅鉱 (chalcopyrite CuFeS2)の
ように
一
い
の金
るも
のも
銅以外
属 も 緒に含 まれて
少 なくない
が、銅 の腐食生成物 と同じ化学組成 の銅鉱石を第 1
表か ら第 4表 に示す。これらの銅鉱石 の他 に、銅 アン
モ ニウム錯体や銅 シアン化錯体 なども安定 に存在す
す る。最も安定な腐食生成物 は、銅酸化物 ではなく塩
基性銅複塩又 は塩基性銅錯塩である。銅鉱石の中に
第 1表 銅 の腐食生成物 とF・
lじ組成の銅鉱石 (その 1)
化学式
名称
銅酸化物
銅水酸化物
塩基性炭酸銅
結晶系
色
立方晶
赤銅
Cu0
単斜品
黒灰色
Cu(OH),
無定形
青緑
malachite
CuC03・ Cu(OH)2
単斜品
azurite
2CuC03・ Cu(OH)2
単斜 品
淡い緑
ガラス状青
georgeite
CuC03・ Cu(OH)2
単斜品
淡い青
単斜晶
緑青
cuprite
Cu,0
tenorite
sperinite
chalconatronite Na2Cu(C03)2・ 3H20
rosaslte
(Cu,Zn)2C03(OH)?
単斜晶
青緑
aurichalcite
(Cu,Zn)5(C03)2(OH)。
斜方品
淡い緑
六方品
透明青
白、淡い緑
claraite
(Cu,Zn)3(C03)(OH)4・
nantokite
CuCl
立方品
atacamite
β‐Cu2(OH)3Cl
斜方品
ガ ラス状 緑
γ‐Cu2(OH)3Cl
菱面体晶
Cu2(OH)3Cl
単斜晶
淡い緑
淡い緑
銅塩化物および paratacamite
塩基性塩化銅
clinoatacamite
4H20
botallackite
Cu2(OH)3CI
単斜品
青緑
anarakite
(Cu,Zn),(OH)ACl
菱面体品
薄緑
第 2表 銅 の腐食生成物 と同じ組成の銅鉱石 (その 2)
化学式
名称
結晶系
CuS04・ 5H,0
三斜 晶
濃青
brochantite
CuS04° 3Cu(OH)2
単斜晶
ガラス状緑
antlerite
CuS04・ 2Cu(OH)2
斜方品
ガラス状緑
pOsnjakite
CuS04・ 3Cu(OH)2・ H20
CuSO′ ・3HoO
単斜 品
単斜晶
ガラス状緑
淡い青
Cu25(OH)3S04・ 2H20
単斜晶
淡い青
単斜品
緑青
bonatite
Strandberず
s
compound
硫酸銅および
langite
CuS04・ 3Cu(OH)2・ 2H20
塩基性硫酸銅
Tutton's salt
Cu(NH4,S04),・ 6H,0
schulenber」
te (Cu,Zn)7(S04,C03)2(OH)10 菱面体品
3H20
硫化銅
2 配 管技術 2004.5
色
chalcanthte
淡い緑青
人工化合物
Pb4Cu(C03)(S04)
caledonite
Cu2Pb5(S04)3C03(OH)6
斜方品
青緑
beaverite
Pb(FeCuAl)3(S04)2(OH)6
菱面体 晶
青緑
guildite
CuFe(S04),(OH)4・
deviline
H20
単斜品
黄土色
CaCu4(S04)2(OH)6・
単斜 晶
真珠状緑
SDangOlite
3H20
Cu.Al(SO′ )Cl(OH),。・3H,0
六方品
青緑
anilite
Cu7S4
斜方品
chalcocite
Cu2S
六方品
青い灰色
濃い灰色
chalcocite,lowT Cu2S
六方品
濃い灰色
chalcocite,highT
正方品
covellite
CuS
六方品
黒灰色
濃い灰色
digeite,lowT
Cu18S
菱面体品
青/黒
diiurleite
Cu16S
灰色
geerite
Cu16S
単斜品
立方品
roxbyite
3ul招S
単斜晶
青い灰色
spionkipite
Cuほ ,S
菱面体晶
vite
yarro、
Cul,S
菱面体晶
青い灰色
青い灰色
青い灰色
│
r食 と耐食性 ・
・
(3)
銅 のl■
第 3表 銅 の腐食生成物 と同じ組成の銅鉱石 (その 3)
銅燐酸塩
結品系
化学式
名称
色
オリーブ色
libethenite
Cu?(PO`)(OH)
菱面体品
cornetite
Cu3(P01)(OH)3
DSelldomalachite
Cu5(P04)2(OH).
菱面体,詰 緑 青
ガラス質緑
単斜品
tanttlite
Cu,P04(OH)H120
単斜品
ガラス質緑
ludiibaite
Cu.(PO.),(OH).
三斜品
ガラス質緑
SamDleite
NaCaCu5(P01)4Cl・ 5H20
菱面体l諧 真珠状薄青
zapatalite
CuRAl`(P04)3(OH)9。 4Hρ
四面体品
半透明淡青
水和塩基性燐酸塩 Cu。(PO.),・2H?0
銅硝酸塩
rll珪
酸塩
turquoise
CuA16(P04)(OH)8・
4H20
三斜品
chalcosiderite
CuFer(POJ)(OH)R・
4H?0
三斜 品
ガラス質青緑
ガラス質薄青
ri斜岬1
蝋 質黄緑
菱面体品
透 明緑
4H20
faustte
(Zn,Cu)A16(P04)4(OH)8・
gerhardtite
Cu,(NOR)(OH)8
likasite
Cu3(N03)(OH)5・
buttgenbashite
Cul,(NOR)?(OH)8?C13・ H20
chrysocolla
(Cu,Al)2H2Si205(OH)4° XH20
ガラス質黄緑
cuprorivaite
CaCuSi40
ガラス質肯
菱面体品 半透明緑
2H20
六方品
ガラス質青
diOptase
CuSi03H20
ガラス質緑
plancheite
Cu8(Si4011)2(OH)4・ H20
半透明青
shattuckite
3ui(Si03)4(OH)2
半透明暗青
第 4表 銅 の腐食生成物 と同じ組成の銅鉱石 (その 4)
名称
copper(I)formate
Cu(HC00)
copper(■ )formate
Cu(HC00)2
copper(■ )formate
Cu(HC00)2・
baslc
copper(Ⅱ )formate
Cu(HC00)(OH)
蟻酸銅および
塩基性蟻酸銅 basic
copper(Ⅱ )formate
化学式
結晶系
色
2H20
単斜 品
淡い青
単斜品
2Cu(HC00)2Cu(OH)2・
basic
cOpper(1)formate
Cu(HC00)2・
Cu(OH)2
basic
copper(Ⅱ )formate
Cu(HC00)2・
2Cu(OH)2
三斜 品
2H20
basic
[Cu(CH3C00),]2Cu(OH)2・
copper(Ⅱ )acetate
5H20
basic
[Cu(CH3C00)2]Cu(OH)2・
copper(■ )acetate
5H20
copper(Il)acetate
淡い青
主曰
塩基性酢酸銅 basic
青
Cu(CH3C00)2[Cu(OH)2]2
basic
copper(Ⅱ )acetate
Cu(CH3C00)2[Cu(OH)?]3・
2H?0
緑
baslc
copper(1)acetate
Cu(CH3C00)2[Cu(OH)2]4・
3H20
肯緑
る。銅鉱石は様 々な色調を示す。例 えば、赤色系 の酸
黄色系 の黄銅鉱 (chalcopyrite)、
化第一銅 (cuprite)、
4.銅 の耐食性 は何 によるの か
銅 の耐食 性は、金属の標準電極電位列において貴な
電位をもつことおよびその表面に保護性 の銅化合物皮
塩基性硫酸銅
緑色系 の塩基性炭酸銅 (malachite)や
塩
青色系 の硫酸銅 (chalcanthite)や
(brochantite)、
の塩
自色系
化
基性酢酸銅 (basic copper acetate)、
よび黒色系 の硫化銅 (covellite)
第一銅 (nantokite)お
膜を生成す ることによる。
4-1 標
準電極電位列 と腐食電位列
第 5表 に25℃における金属 の標準電極電位を示す。
などがある。
銅 の標準電極 電位 (0.377V vs SHE)は 、金 (1.52V)
配管技術 2004.5.3
4)
鋼の腐食と耐食性 〈
第6表 銅 のアノー ド溶解反応と対になりうるカソー ド反応例
第 5表 25℃ の水溶液における金属の標準電極電位列
電極反応
金属
K
K・ +e=K
電位 [V vsSHE]
-2925
電極 厠 き
2H2S03+2H‐
電位 [V vs SHE]25℃
+4e=S2032+3H30
Ca
Caダ +2e=Ca
-284
Na
Na+e=Na
-2714
ヽIg
ヽ4g2`+2e r、 lg
267
H2S03+4H`+4e=S+3H20
0500
Be
Be`・+2e=Be
0645
-1676
021■
ol+2H20+3e=40H
02・ 2H・ +2e=H202
Al
Mn
Cr
Fe
Cd
Co
Ni
A131+3e=Al
`・
h/1n +2e=ヽ ln
・
Znι +2e=Zn
0,+2H20+4e=40H
0401
NH20H,a。 │+H20+2e=NH3,ol+20H
0420
N03-・ 2H‐ +2e=NOと
0695
+H20
HIO
Cr`・+2e=Cr
■ 7626
-090
Fe2・+2e=Fe
++2e=Cd
Cdι
→ 44
-04025
H202屹o 十 H・ +e=OH.Q tt H20
02+4H +4e=2H20
Co2+2e■ Co
++2e=Ni
Niピ
-0277
Sn2++2e=Sn
→ 257
-01357
PbZ++2e=Pb
-01263
HNO。
+H++2e=r+H,o
20H
1246
1363
0(g)+H20+2e=20H
1602
2HBrO.,。│+2H++2e=Br,(1)+2H,O
+2H++2e=C12(g)+2H20
2HC10
1630
+4e=N,(g)+2H,0
1678
2H・ +2e=Hっ
Cu
Cu2・ +2e=Cu
Ag
Ag +e=Ag
07991
H()2.d+2H++2e=2H20
Hg
Hζ
Q8535
S?ORケ +2e=2SO`ケ
++2e=Hg
0996
2N02(g)+8H +8e=N2(g)+4H,0
(H)
00000
0985
+H・ +e=NO(g)+H,o
03+H20+2e=02■
0835
2NO(g)+4H・
1604
1763
Pd`++2e=Pd
++2e=Pt
Pず
Au
1188
Au`++3e=Au
(出典 :第 5版 ,電 気化学便覧,p92,丸
善榊 (2000))
や銀 (0.7991V)ほ
ど貴でないが、ニッケル (-0.257V)、
ロム
ク
鉄 (-0.44V)、
←o.90V)よりず っと貴 である。金
属 の腐食反応 は、金属 が 十イオンとなって溶解するア
ノード反応 と水 中の酸化剤が還元するカソード反応 の
組み合わせによって起 こる。従 って、金属 の腐食 は水
中に酸化剤が存在す る場合 にのみ起 こる。最 も一 般
的な水中の酸化剤は水素イオンと溶存酸素である。と
ころが、25℃ で銅 は水素 の標準電極電位 (OV)よりも
貴な電位をもつため、水素 イオンのカソード還元 によっ
て水素 を発生しながら銅がアノード溶解す る可能性 は
ないことを示すものである。銅がアノ‐ド溶解するため
には、銅 の標準電極電位より貴 の電位 に平衡電位 をも
つ還元剤が必要である。その代 表的な還元剤 は溶存
酸素 である。酸素還元反応の標準電極電位 として02+
1と
106m01kご
した場合のPourbaixダイヤグラム (後
述)にお いて、100℃以上で銅の標準電極電位 は水素
“
発生電位 より卑 になる t
実際 の腐食環境 にお いて、他 の金属 との腐食性 を
比較す る場合には、標準電極電位ダ1よりも腐食電位列
の方が役 に立 つ。例 えば、標準電極電位列では、銅
(0.377V)よ
り卑 の電位 を示 す ジルコニウム ←1.54V)や
チタン(-1.63V)は
、不働態および不感体 を考慮 した腐
食電位列では銅 より貴 になり、pH8.2の 海水中におい
て銅 は0.1lVであるのに対し、ジルコニウムおよびチタ
ンの電位 は、不働態化によりそれぞれ0.2617お
よび0.45
Vの 高 い電位 を示す。腐食電位列 では、環境が変 わ
ると金属間の相対的位置も変わりうる。それでも、鋼 の
腐食電位は、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、コバ
ルト、亜鉛、モリブデンなどより貴 の電位を示す。金属
の標準電極電位列とその金属が不働態化することによ
り、標準電極電位 よリアノード方向に大幅に移行した腐
2H20+4e=40Hの 反応では0.401V、
そして02+4H++
4e=2H20の 反応では1.2"Vで あるから、これ らの反応
が銅のアノード溶解反応 と対 になりうるカソード反応で
ある。この酸素還元反応 の代 わりとなりうるカソード反
食電位列を第 7表 に示す。銅 は、不働態金属 のように
不働態皮膜 の形成による明瞭な不働態 は示さず、両者
応として酸化状態 の高 い化学種 の還元反応がある。そ
ス鋼などの不働態金属 にみとめられるすき間腐食を生
じない。銅 の腐食現象 を鉄系の腐食 と同様 に考 えて
れを第 6表 に示す。水 の温 度が高 くなると水 の解離定
数Kwが 小 さくなるためt酸 性領域で銅が水素発生 を
伴 って溶解す る可能性がある。因みにKwは 100℃で
12.3、
20Cl℃
以上で 11.3と
なる。水中の銅 イオン濃度を
4 配 管技術 2004.5.
の電位変動 は、不働態金属 に比 べ ると小 さい。また、
銅および銅合金には、チ タン、アルミニウム、ステンレ
防食対策を講ずると多 くの場合、失敗する。
4-2 酸 化皮膜の生成
乾燥 した空気中で最 も一般的な鋼 の腐食は、銅 と吸
・
(5)
銅の腐食と耐食性。
が02-と なる。皮膜 の成長は、銅原子が Cu20皮 膜 を
通 して外側 に拡散 し、酸素 と反応する。Cu20は P 型
第 7表 金 属の標準電極電位列 と腐食電位列
標準電極電位列
l Cold
腐食電位列
Rhodium
2
Tantalum
3
01d
5 Ruthenium
1ridium
6 Palladium
Platinum
半導体 であ り、その中には移動可能な正孔が存在す る
が、他の場所にCu2+が 入る ことによ り電気的中性 は
l
Nlobium
4
5
6
Titanium
7
保たれている。約 100℃ までは、 この酸化皮膜は放物
線的に成長す る。air_formed filmの成長初期 には、
下地銅の結晶配向に依存 してエピタキシヤルに成長す
る。 この皮膜が表面 の金属光沢を保 てないほど享く成
8 Silver
Panadium
8
9 0smium
Ruthenium
9
長すると次第に干渉色を示す ようになる。この現象が
10 Selenium
0smium
変色 である。干渉色は皮膜 の厚 さにより変化す る。痕
跡程度の硫化水素 ガスを含む空気中では、変色は顕著
10
ll Tellu五um
ヽ
Iercury
ll
12 Polonium
Callium
12
Zirconiunl
13
Silver
14
15Bも muth
Tin
16 Aninlony
Copper
15
17 Arsenic
Hafnium
17
Beryllium
18
16
Aluminium
19
20 Rheniunl
1ndium
21 (Nickel)
Chromium
22 (Cobaltl
Selenium
23 Thallium
Technetium 23
24 Cadmlum
Tellu五um
24
25 1ron
Bismuth
25
26 Tin
27 Molybdenum
Polonium
Tungsten
26
27
28 Tungsten
1ron
29 Cermanium
20
21
22
28
(Nickel)
29
30 1ndium
(Cobalt)
30
31 G」 lium
Antiinony
31
32 Zinc
Arsenlc
32
33 Niobium
(Carbon)
33
34 Tantalum
Lead
34
35 Chromium
Rhenium
36 Vanadium
Cadmium
37 ヽ4anganese
Zinc
38 Zircontum
NIIolybdenum 38
35
36
37
39 Aluminium
Cermanium
39
40 Hafnlum
Vanadium
40
41 Titanium
ヽ4agnesium
41
42 Beryllium
Thallium
42
43 Magnesium
N71anganese
43
一
着酸素 の直接反応 による酸化第 銅 Cu20 Cuprite)
の生成である。この酸化反応は、室温で起 こ り、温度
の上昇 と共に促進 される。この酸化皮膜をair_formed
i l m とい う。
4Cu+020発 着)→2Cu20
速度論的には格子欠陥のような表面活性点 に酸素が
吸着 して核生成 し、続 いて酸素が単分子吸着すること
により二次元的に広がる。最外層 の銅原子が電子を放
出してCu+イ オンとなり、その電子を受け取った酸素
になる。その場合、銅酸化物に加えCu2Sも 生成する
ことがある。air―
formed■ lmに 覆われた銅は、特殊な
溶液を除き、!舌性態 一不働態遷移挙動を示 さない。銅
を室温の淡水に曝す と、その表面に、内層はCu20`
外層は厚 さが不均一で多子レ陛のCu20と CuOの 混合酸
°X°
化物が生成す る 。この皮膜は、チタン、アルミニウ
ムお よびステ ンレス鋼上 の不働態皮膜 ほ ど緻密 でな
く、高速の流水により容易 に破損 し、炭酸水や有機酸
溶液中で溶解する。初期に生成 したCu20皮 膜 は、多
孔性 で密着性 に乏 しい力ヽ 環境 との相互作用 により次
第に安定 した皮膜へ と変化す る。水中ではCu20皮 膜
は数 μmの 厚 さにまで成長 して安定化するため水環境
に存在す る限 り、かなりの程度耐食性を示す。
4-3 緑
青の生成 (Palnalon)
銅表面 で起 こる凝縮水中の初期反応は、鋼水酸化
物 の生成 である。
Cご +OH → CuOH
このCuOHは 、加水分解 により酸化第一銅 (Cu20)
として析出す る。
2CuOHttH20→ Cu20+2H20
緑青は析出 したCu20上 に成長する。大気中には、炭
酸 ガス、亜硫酸 ガス、アンモニア、酢酸、蟻酸および
海からまたは凍結防止塩からの塩化ナ トリウムや塩化
カルシウムなどが懸濁 したエアロゾルなどが含 まれて
いる。緑青の色調 は、大気中のガスによって変 わる。
例え│よ 炭酸 ガスが雨水に溶けて炭酸を生成 し、その
一部 は、次のように解離す る。
H20+C02=H2C03
H++HCOf=2H+十 C03と
酸性雨の成分である亜硫酸ガスは、亜硫酸に変わる。
H20+S02=H2S03
H2S03=H++HS03お
=S_204+2H20
よび2HS03 +2H+
大気 に曝 され た銅 製 品上 に見 られ る腐 食生 成物 は、
配管技術 2004.5.5
・
鋼の腐食と耐食性・
〈6 )
様 々な色合 い を示す。
cu十十C「 =CuCl
2
︲
…自色系
2CuO+C02+H20
…
0
︲
=CuC03Cu(OH)2(malachite)
淡緑色系
02=Cu0
“
Cu20+与
> ゴロ
4CuO+H2S03+2H20+与 02
=CuS04 3Cu(OH)2(brOChantite)
6
0
…淡緑色系
8
0
3CuO+CuCl+3H20
=CuC13Cu(OH)2(ataCamiteま
たはparatacamite)
… 緑色系
…黒色系
これ らの腐食生成物は、銅イオ ンの外側 への移動 を
妨げないが、酸素の下地銅 表面へ の拡散障壁 となる。
また、侵食性アニオンとの反応に乏 しい。更に、これ
らの腐食生成物 は電導性に乏 しく、銅表面を均― に覆
うため、カソー ド反応部位が失われ、 さらなる腐食の
進行を妨げる。天然緑青の生成には、10か ら20年 の
暴露期間を要するカミ 銅表面を前処理す ることによ り
酸化過程を促進 して、緑青を短期間で生成 させる人工
緑青生成法が開発 されている。
5。 電位 ― pH図 (Pourba挟ダイヤグラム)
電位 ―pH図 は、平衡論により熱力学的に最 も安定
な物質やイオン種の領域を示 したものである。各種金
つ
属の電位 一pH図 についてはPOurba破の著割 詳 しい
°によりまとめられてい
カ
ミ鋼の電位―pH図はDubデ
る。 これ らの電位 ―pH図 は、銅が種 々の溶液成分
(Cl、S、C02な の を含む溶液中で、 どのような腐食
生成物やイオ ン種が安定であるかを予測するのに役立
つ。水環境が酸イビ性か還元性力ヽま、水に含まれている
成分および溶存酸素 の量によって決まる。天然水 の特
(9t数
徴 を示 したダイヤグラムを第 2図 に示す
多 くの
天然水の酸化還元電位お よび pHを 測定 して電位 ―
0。
。
pH図 中にプロットしたのが第 3図 である 天然水の
多 くは、比較的高 い電位 (酸化性)か ら低 い電位 (還
元性)ま で分布 しているが、pHは 4か ら8の 範囲内
pH
第 2図 電 位 ―pH図 における天然水の分布傾向
06
>04
国 02
0
42
●4
Ю6
0
2
4
6
8
10
12
pH
第 3図 天 然水 の実測値分布
に収 まっている。25℃ でC「を含み C02お よびS02ガ
スと接 している水 における銅 の電位 一pH図 を第 4図
activityが
1の とき、0.337Vであるのに対 し、Cu+ィ
オ ンのactivityが
1の とき、銅の電位は0.52Vである。
に示す。pHが 約 2.5以上では、Cu20が 安定であ り、
鋼表面はCu20で 覆 われることが予想 される。中性の
よ り酸化性 の条件 では、塩基性炭酸銅 (malachite)
従 って、Cu2+ィォ ンの方が Cu+イ オンよりも熱力学的
に生成 しやすいからである。銅 表面における平衡反応
cuttcu2+=2Cu+も ず っと左の方へ偏 っている。 しか
が、弱酸性側で塩基性 硫酸銅 (brochantiteお よび
antlerite)の生成が予想 される。Cu20皮 膜に覆われ
た銅は、水溶液中でCu2+ィォンとなって溶解する。な
ぜ な ら、25℃ にお け る鋼 の 電位 はCu2+ィ ォ ンの
し、海水中では銅 表面に吸着 したCl イォ ンと銅が反
6
酉己管l支術
2004.5.
応 してCuclを生成 し、更に、次の反応でCucげ の錯
イオンを生成して溶解するため、銅は 1価イオンとし
て溶解する。
(の
銅の腐食と耐食性 。
<参 考文献 >
-1
-2-3-4-5‐ 6
(1)久 野雄 一郎,末 永先生米寿記念献呈論文集,p1787(1985)
n Microbial
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Vater ICA
PrOject No 405,Interim report lnternatiOnal Copper Associ‐
a■on Ltd,Aug (199o)
(3)J T Ⅵ ralker,CヽV Keevil,P J Dennis,」McEvoy and J S
Vater Chemistry ttnd Environmen―
C。lbOurne The lnfluence ofヽ
tal Conditions on the Microbial ColonizatiOn of Copper Tubing
Leading to Pitting COrrosion, Especially in lnstitutional
Buildings ICA PrOject No 407,Final report lnternational
>
Copper Association Ltd,(1990)
=04
(4) B BeVerskog and I Puigdomench J Electrochem Soc,
Vol 144,3476 (1997)
( 5 ) 」K r u g e r idЫ V d 1 0 6 8 4 7 ( 1 % 9 )
(6)C.Shanley,R Hummel and E Verink Corros.Sci Vol.20,481
(1980)
Atlas of Electrochemical Equlibria''PergamOn
(7)■71 Pourbalx“
Press,Oxford‐
Cebelcor,Brussels,p384 (1966)
(8)P Duby“ The Thermodynamic PrOperties of Aqueous
lnOrganic Copper Systems'',INCRA Senes On theヽ 4etallurgy
pH
第 4図 22ppmCI、 229ppmC02、 46ppmS03を 含む
あ ℃の水における電位 ―pH図
of Copper Ⅳ,New YOrk,p149(1977)
(9) F Schweizer``In Ancient and HistoricヽIetals Conservation
and Scientiic Research''ed D A Scott,」
Podany and B B
Considine,p33 (1994)
roore」 ceO10gy,
OCI L G Bass Becking,I R Kaplan and D Ⅳ
Vd 68,243(1960)
CuCl+Ci→
CuC12
ところで、電位 一pH図 には、限界 があることを認識
する必要がある。電位 ―pH図 を作 る際には、速度論
的要因は考慮 されていないため、銅 表面で実際に起 こ
り難 い反応 も表示 されている。この図の中に示 されて
いる腐食生成物の中には、す ぐには生成 しない もの も
載 って いる。例 えば、電位 ―pH図 に酸化銅 (cuo
tenorite)の安定域が示 されているカミ 実際には、 こ
の電位お よび pH条 件 ではCuoは なかなか生成 しな
い。 この条件 で銅上に生成す るのは酸化第一銅 Cu20
である。高い酸化条件ではCu203が 安定であると示 さ
れている力ヽ この酸化物 を、通常の条件では、見るこ
とは出来ない。
Oll M Pourbaix “Lectures on ElectrOchemical CorrosiOn''
Plenum Press,New York‐ London,p267,(1973)
12 能 登谷武紀,「防錆 ・防食技術総覧」輸産業技術サービスセンタ
ー,p747(2000)
OЭ 「
防食技術便覧」腐食防食協会篇,日 刊工業新聞社 (1986)
能 登 谷 武 紀 (昭和 15年 6月 14日生 ・北海道出身)
北海道大学 大 学院 工 学研究科
分子化学専攻
T060‐8628
札幌市北区北 13条西 8丁 目
TEL :011‐7066353
FAX:011706‐ 6353
E‐
mail i
tnotoya@eng hOkudai.ac.ip
〈
主 なる業務歴及び資格〉
6.お わ りに
銅お よび銅合金は、一般的に耐食 性であるカミ 環境
お よび物理的条件 によっては腐食す ることを説明 し
た。銅および銅合金の腐食形態は、全面腐食 の他、孔
食、エロー ジョン ・コロー ジョン (潰食)、 ガルバニ
ック腐食、脱合金化、応力腐食割れ、腐食疲労、蟻
の巣状腐食 などに分類 されている。その典型的事例、
lla10な
どに紹介
特徴 および対策については、便覧な ど
いる
。
されて
現在、北海道大学大学院工学研究科。昭和 41年 3月 北
海道大学工学部大学院応用化学専攻修了後、冶金工学科
に就職、現在に至る。
工学博士。
(主なる執筆〉
銅管
「 の蟻の巣状腐食」近代文藝社 (1"4)
ベンゾ トリアゾール系インヒビターの腐食抑制機構およ
「
びその応用」 日本防錆技術協会 (1986)
銅お よび鋼合金の腐食防止 のために」上 ・下巻,電 気
「
化学会,海 生生物汚損対策懇談会 (2∞4)
支冽に 2004.5、 7
酉己籠
雪夕
(1)
建築用銅 配管 の腐 食 と防食 ・
H0402‐10
9894/0″γ5oαttt/」CLS
0385‐
特集 :銅腐食》
《
建築用銅配管の腐食 と防食
鹿島建設腕 中 島 博 志
Hiroshi NakaJima
1. は じめに
建築設備において銅管は、耐食性、接合の容易 さ、
価格、曲げ加工の容易 さ、熱伝導 の良さ等 の理由に
より、古 くか ら海外で、設備用途 に使用 されて きた。
戦後 日本 においては、鉄鋼業 ・機械産業が発展 した
ことと、電力などのイ ンフラが整 つていたこと等 によ
り、給水 。給湯に鋼管 のネジ接合が主 として使用 され
た。これはね じ切 り機が無い と、ネジ接合が不可能な
事 を考えれば非常 に珍 しい現象で有 ったと言える。鋼
管 はバーナーーつで信頼 性の高い接合が可能となる材
料 で あ る。更に珍 しい現象は、鋼管が飲料、給湯 の
用途 に対 して耐食性が不足 している事が判明 した時期
に、樹脂 ライエ ング鋼管が誕生 したことである。これ
は日本の工業 レベルカミ 非常に高かった事 の現 われで
ある。この樹脂 ライエ ング鋼管のネジ接合法の改良の
為 に、 日本は約20年 間を費や した。銅管 は給水 ・給
湯 ・冷温水 ・冷却水 ・熱交換 コイル等、建築設備 の
あ らゆる用途に使用可能である力ヽ その耐食1生
が初期
皮膜形成時の水質 に依存するので水質に注意を払 う
(1ゝ
必要がある
2.建 築設備における材料としての銅の耐食′
ピう
鋼 の耐食性の特徴 は、他 の材料即 ち鋼、 ステ ンレ
ス、亜鉛 と比較す ると理解 しやす い。 第 1図 に淡水
(中性で導電率が海水 ほど高 くない水)中 におけ る各
種金属材料 の耐食性 を示 す。鋼 (厳密 には炭素鋼)
は淡水中では全面腐食モー ドでのみ腐食 し、局部腐食
を発生 しない。 ステ ンレスは空気中で形成された非常
に薄い皮膜 (クロム リッチな皮膜で不動態皮膜 と呼 ば
れる)が 水中で も充分な耐食性 を示 し、脱不動態化
pHで ある2以 上の水中では局部腐食 しか発生 しない。
銅 。亜鉛はpHが 約 5以 下で全面腐食、6以 上では全
面腐食モー ドと局部腐食モー ドのどち らで腐食す るか
8 配 管技術 2004.5
瘍
轟
応力腐食 全面カソード
ー
的 割 れ 部 分アソ ド
靱
Stress Corroslon Cracking
躙
串
輻 輻
躙 黎
'
第1図 建築設備に使用される金属の淡水中の腐食形態。
は水質に依存する。この事 は銅の耐食性が水中に浸漬
された後 に形成 される皮膜 に依存 してい るか らであ
る。水中において、銅は一度銅イォ ンになり、再 び表
面で酸化第一銅 Cu20)と な り、温 度や、水中の酸
化剤 (残留 塩素 )に よってその 表面 に酸化 第 二 銅
(CuO)を 形成する。耐食性が上がる事は即ち表面に
溶解性 の低 い皮膜が形成される事 である。この皮膜に
は銅の酸化物 だけでなく、水中のシリカ (珪酸)と 銅
の化合物 も同様の働 きをすると考えられている。耐食
性が上がると、局部腐食を起 こ しゃす くなり子L食を発
生する場合がある。この事から銅は炭素鋼やステ ンレ
スに比 べ水質によりその耐食性が大 きく影響 を受ける
材料であるといえる。
又銅は他の金属材料に比 して柔 らかい事か ら物理的
な浸食に対 しては弱 く、気泡の発生消滅や、砂等の硬
度の高い物質 の混合 された流体によ り表面の損傷 を受
ける。物理的な皮膜の浸食が不均一 に発生すると、浸
食を受 けた部分 と受けていない部分で電位差を生 じ、
物理的な浸食以上の銅の溶解 (潰食 :エ ロージョンコ
ロ‐ジョン)力溌 生する。同じ柔らかさにより、温度
差による膨張収縮 により曲げを繰 り返すような配管施
・
〈2)
建築用銅配管の腐食 と防食・
工 をすると、疲労亀裂を発生 し漏水す る。
銅 の耐食性を別の見方で見ると、第 2図 は給水給湯
用途に使用 された自ガス管 (亜鉛め っき鋼管)、第 3
図は銅管が竣工から何年 目に腐食 トラブルを発生 した
かを約 100の中規模以上の建物について調査 した結果
である。図か ら判 るように自ガス管では経年につれて
に依存 していると考え られる。
現実 の建築設備配管用途においては、銅管は塩 ビラ
イニング鋼管やステ ンレス鋼管に比べ、接合部 の耐食
性が直管部に比 して劣化 しない極めて大 きなメリット
を持っていると言える。塩 ビライエ ング鋼管やステン
腐食 トラブル率が増加す るカミ 銅管は経年 とトラブル
率に相関が無 い。 これは腐食 トラブルが、銅管では個
レス鋼管は直管部は腐食 に対 して鈍感である力ヽ 発生
する殆 どの腐食問題が継 ぎ手部 に生 じることが特徴 で
ある。従 って銅管 の耐食性 は施工に左右 されにくい と
別建物 に固有の事情 (潰食 :流 速、子し食 :水 質等)
いえる。
圏 給水白ガス健全数
□ 給水自ガス腐食数
国 給水 自 ガス健全数
田 給水 白ガス腐食数
使用年数 [年]
が
第2図 給 水白ガス管の腐食漏水率の経年変イ
圏 給湯銅健全数
□ 給湯銅腐食数
使用年数 [年]
。
.
第 3図 給 湯銅管の腐食漏水率の経年変化
配管技術 2004.5.9
建築用銅配管の時食と防食・イ3)
3.建 築設備 にお ける銅 の トラブル と対ガ リ
第 4図 に建築設備に用 い られた銅管 トラブルのヒス
トグラム を示す。給湯配管は昭和 40年代前半迄 は亜
鉛めっき鋼管が使用 されていたカミ 後半 にはいると銅
配管が一般的 になった、その後昭和 50年代か らステ
ンレス鋼 と耐熱塩 ビライエング鋼管 ・樹脂管 (ポリブ
テ ン、架橋ポリエチレン)も 徐 々に使用 されるように
なった。最近では銅管に代 わる材料 として、錫めっき
銅管が使用 され始めた状況である。
いずれにしても、 中央循環式 と個別一過式では材料
に対す る考え方 を変える必要がある。個別一過式の場
合の材料選択では特別の地域を除き腐食 は重要な要因
にならない (ただし鋼管は使用できない)。
H)が 使用
中央循環式給湯には硬質銅管 (C1220T―
ー
ロ
され接合方法は
付けが採用 されている。
第4図に銅管メーカーで腐食調査した件数を示ず口
。
3-1 潰
食 (エロージョンコロージョン)
第 4図 の如 く給湯銅管の腐食で最 も件数が多 いもの
である。 この腐食 は返 り管 の継手下流側の近傍に最初
に現れるので、漏水位置を聞けば潰食であると特定で
きる。竣工後 4年 から6年 目で最初の漏水が発生す る
ことが多 い。
何故返 り管に発生するかについては、返 り管は給湯
系 の放熱損失に見合 う流量だけ流れればよいので管サ
イズが細 いため流速が大 となる。そして循環ポ ンプの
設計における選択 の時に余裕をみて大 きいポ ンプが選
ばれ易 い。限界流速は1.5m/sと も1.2m/sと も言われ
てい るが、最近 の事例 で超音波流速計で測定す ると
1.Om/s程度の流速で発生 しているとしか考え られない
場合 もある。返 り管のサイズは充分に大 きく設計 した
方が良 い。次の要因は給湯循環 ポ ンプを24時 間連続
運転にするか間欠運転にするかである。これはエロー
ジョンでや られた皮膜 を回復 させる時間があるかどう
かに関係 していると考えられる。
返 り管のサイズ、ポ ンプの選定の他に返 り管 に定流
量弁を設置す ることによって も確実に防止できる。潰
食が発生 した ら初期に対策をとれば、その後 10年 程
度の寿命 を期待す ることは困難ではない。返 り管の流
速を下げる、循環 ポ ンプを間欠運転 もしくは停止 させ
る等 の対策で充分である。
3-2 孔
食
銅管 の腐食で次に多 いの力VL食 である。銅管に発生
食には断面形状で分類 して、I型 と Ⅱ型に大
す る子し
て、配管表面の酸化物等の皮膜を破壊するエ ロージョ
ン現象が原因 となる。 さらに皮膜 を破壊 されて銅の地
きく分け られる。給湯 で発生す るのは Ⅱ型である。
第 4図 において。型 孔 食が発生 しているのは住宅の一
過性給湯配管を含んでいるためで、住宅の給湯配管は
一 日の大部分の時間は温度が低 いか らで
ある。 Ⅱ型
ンレス
ス
の
テ
孔食 断面は半球状で
鋼に発生す る孔食 と
似通っている。配管内部を観察す ると孔食は周囲の大
肌の出た活性な部分 と皮膜 の残 つている部分の電池作
用によって腐食が進む。 よってエロージョンコロー ジ
ョンと呼ばれている。
部分が健全 (全く損傷を受けていない)で 孔食 の上部
に塩基性硫酸銅 の蓋 (青または青緑色)を かぶってい
るのが観察 される。 I型 は冷水 で発生す る孔食 で孔
この腐食のメカニズムは、水中の気泡カミ 酉
己
管の曲
が り部分で生ずる流体 の乱れによる圧力変化によって
発生 。消滅 し、消滅す る際に発生す る衝 撃波 によっ
フラ ックス に よる腐 食
全面腐食
I型 孔食
:
フラックスによる腐食
孔食 型不 明
ろう付け不良
°
給湯銅管の腐食事例の調査件数
(4)
建築用銅配管の腐食 と防食 ・
食が密集して観察されるのでステンレス鋼の孔食とは
違 うメカニズムを持っていることがわかる。第 5図 に
Ⅱ型孔食、第 6図 に I型 孔食の断面 と水質要因、対
策を示す。
。
型7LE9泄
3-2-l Ⅱ
中
管
孔
央循環式給湯銅管に漏水が発生 しその位置が往 き
の直管部で発生 していれば孔食 と考えて良い。給湯
食発生時期 はそのメカニズムから同じ様な水質であ
●残留塩素減 (UV照 射)
。低 シ リカ水 源
● ラ ング リア指 数 改 善
(消石 灰 注 入 )
::勲雷ヨ
麟:,I葺
灘
カ ソ ー ド反 応
÷
0 2 + H 2 0 + 2 e →2 0 H
ラ ンゲ リア指数改善 鞘 石灰注入)
●
●
脱酸素処理
食の要因 と対策
第 5図 銅 に発生する Ⅱ型子し
●電位 L昇 ベース要因
●カーボン量の小 さい鋼管
●錫 メッキ鋼管
C02C03(OH)2
補給水孔食指数 (MWPI)
lCXl
●低 シリカ水源
0 0 1 μm
フィルタリング
0ア ノー ド
(カーボン被膜欠陥部)
連鎖による
電位上昇加速要因
●pH上 昇
oMア ル カ リ増
(弱ア ニ オ ン交換 処 理 )
●孔 食成 長 要 因
cu+イ オ ンの 安 定 性
=
==
一
■一
一
¨
¨
一
カソ ー ド反 応
2Cu2++H20+÷
02→2Cu2++20H
2Cu2+十
÷
02+4e→ Cu20
°
●脱酸素処理
密閉回路
第 6図 銅 に発生する I型 孔食 の要因 と対策
配管技術 2004.5.11
・
建築用銅配管の腐食 と防食・
〈5)
って も給湯使用量 と給湯温度、使用時間に依存 し、ホ
テル ・病院等で竣工後 5年 目頃から事務所 ビルで 8∼
10年 目に最初の漏水力漱台まる。
第 5図 に示す如 く、給湯銅管に発生す る Ⅱ型孔食
は、ステンレスの子L食に近い典型的な子L食で、
① シ リカ と銅 の化合物であるオル ト珪酸銅
Cu2Si04・XH20)に より全面的な耐食l■
_が高ま
り、表面に炭酸カルシウムのカソー ド反応障壁が
形成されない水。
② 高 温と残留塩素により、銅の耐食性皮膜である
酸化第 2銅 (Cu20)力Ⅷ発
化第 1銅 (CuO)に 変
化 して、全面的な耐食性が更に高まる。
4k ttpち
③ 水 質がマ トソン上
ピ
硫酸イオン [mg/L]
が重炭酸イオン (Mア ルカリ度に1.22を乗 じて得
られる)mノ Lよ りも大きい水質である。
以上の①②③のバ ランスで発生する。従ってどれか
一つの要因が突出して
大 きい場合には他の条件が成立
していなくても発生する。即ち① シリカ濃度が異常に
高い場合、②残留塩素が異常に高い場合には他の条件
に関わらず発生する。③マ トソン比の意味は食孔が形
成された場合 に、食孔内部が低 pH(3程 度)に なっ
た場合にで も溶解 しに くい塩基性硫酸銅 (Cu4S04
(OH)6)カミ 食孔の蓋として形成される条件 と考えら
れている。③の条件が成立しない場合食孔は有る程度
成長すると蓋が破れ横方向に進展 し、断面が I型 孔
食に近づ く事 が知 られている。断面は I型 孔食に近
くて も給湯銅管では孔食が密集 して発生することは無
く、孔食の周辺には健全部が広 く存在する。関東地方
では第 7図 に示す如 く、浄水場 における凝集沈殿剤が
硫酸バ ン ドからポリ塩化アルミ (PAC)に 変更された
ことで、硫酸イオン濃度が変化 しマ トソン比が変化 し
ている。
〔Ⅱ型 孔食の防止 方法〕
マ トソ ン比が 1を 超 え、か つ シ リカの濃度 が 40
mg/Lを 超える水質では普通の銅管 の使用は止めて錫
めっき付 き銅管を使用する。
マ トソ ン比が 1を 超 え、か つ シリカの濃度が 15
myLを
超える水質では以下のことに注意する。
給水中の残留塩素 を水質基準である0.lmg/Lの 近
くに維持することが大事である。残留塩素が0.lmg/L
を大 きく超 える場合給湯補給水 に対 してUV(紫 外
線)照 射装置を用 いて残留塩素を減ずる対策に効果が
(7t
ある
給湯温度は不必要な高温を避ける。また、循環ポ ン
プの運転 は必要最低限とす る。
不幸にして発生 した場合には上記の対策をとる他 フ
イチン酸 を用 いることもできる。フィチン酸 は銅表面
のキレー ト化による全面溶解 を促進 し孔食を防 ぐと考
えられている。
また、紫外線照射装置 も効果があり、給 湯孔食発生
後に給湯水に紫外線を照射 して残留塩素を除去すると
孔食の成長が停止することを実験 したデー タもある。
酸消費量
―
硫酸イオン
漱0 " マ ットソン比
0
9 度
9
︲ 年
第 7図 東 京都金町浄水場の浄水水質 (年平均値)の 経年変イ
が
12 配 管技術 2004.5.
”
甲ヽ〇の\︲
Oo目]聟ヽ外 ´レ
咄無 澪さ
■ 0 9
富 ヽ 日 ] ヽ ヽ ヽS S ・ 冨 ︶〓島
一
建築用銅配管の腐食 と防食…( 6 )
給湯補給水 に膜式脱酸素装置 を設置 し、溶存酸素
iit度レベ ルを0.5mg/L以 下に維持す れば孔食に限 ら
ず、金属に生ずる殆 どの腐食 の発生 。進行を止めるこ
とが可能 となる。
3-2-2 1型
7Lマ
空調冷温水に使用され る銅管や銅 コイル、給水や一
過性給湯に使用 される銅管においては、銅の I型 の
孔食 を起 こす場合 がある。第 6図 に銅 に発生する I
型孔食の要因 と対策を示す。
第 6図 に示す如 く、銅の I型 子L食は、断面が浅 く
皿状に広が る事 に特徴がある。
① 基 本的には軟質銅管 に発生する。 これは銅 の鋳
塊 を引き抜 いて配管にするときに使用する潤滑油
が、加工硬化 をなます為 の、還元性雰囲気 で光
輝焼鈍す る際に表面に残留す るカーボン皮膜が原
因であると考えられている。 カーボン皮膜は、銅
注入法 ・石灰石浸漬法 で水質改善 を行 うか、初期皮
膜を形成 させた銅 コイルを用 いる等を検討す る。給水
配管 では(2)補
給水孔食指数 (MWPI)を 確認 し、可
は錫めっき鋼管や樹脂管を使用す る。
が有る場合
能性
氷蓄熱 の場合 は(2)補給水孔食指数 (MWPI)を 確認
し、大文夫な場合 で も運転中の水 の(1)循環冷水孔食
指数 CWPI)を 定期的に管理す る。氷蓄熱 の場合は
補給水が OKで も、運転中にpHが 低下 して I型 孔食
が発生すること力液口られている。
② の水中の汚 れや炭酸カルシウム、シリカの析出の
無 い系では I型 孔食が発生 しない。地域熱供給施設
で需要家が少ない内に供給を受けた銅 コイルが健全で
あること、給水管で低温にさらされ る部分 にシリカの
溶解度が低 いために孔食が発生 し、地中埋設部分で発
生 しない現象カミ この事を裏付けている。
3-3 青
水
の全面的な耐食性を向上 させ、 カソー ド電流密度
を増加 させると考えられている。
② 冷 温水 では水中の汚れ (鉄亜鉛の酸化物等)、
銅管の トラブルによくあるのが青水 である。通常は
トラブルとしてとりあげられても1か ら2年 で発生 し
なくなるため深刻な問題 にはならない。 しか し補給水
欧米 (硬水地域)の 給水 で は炭酸 カルシウム、
日本 (軟水地域)の 給水ではシリカが原因となっ
ている。 これはカーボ ン皮膜 の欠陥にこれらの物
に遊離炭酸が多 くpHが 低 い水源 (地下水等)を 使用
している場合、内面 の酸化皮膜 の成長が遅 く、なかな
か止まらない場合 がある。また、同 じ水源 を持つその
建物 の廻 りで発生 していないのに発生 している場合に
は給湯器 ・貯湯槽 の電気防食 の影響 を疑 う必要があ
質が沈殿析出 して、全体の電位 を上げる原因 と
なると考えられている。
③ pHが 低 く、腐食性のイオ ンの比率が高 い事 が
る。
原因 となっている。これは孔食の成長条件 (食孔
内の浚性を低 pHに 保持す る)に 関係すると考え
られている。
青水 の防止策には、給水水質の pHと 遊離炭酸 を測
定 し、遊離炭酸が多 い場合、または他の原因で pHが
低 い場合にはpHの 調整や遊離炭酸 の除去をす る。pH
銅 の I型 孔食 は上記①②Эの条件 が重なる事 で発
生する。
の調整は消石灰注入等 による。遊離炭酸は受水槽内の
バ ッキ等 によって除去することが可能である。錫めっ
〔I型 子L食の防上方法〕
③ の水質条件 に関 しては孔食指数が提案 されて い
き付 き銅管 も使用出来 る。 日常 の使用量 に対 して特別
の場合 だけの給湯使用量によってシステムが設計 ・施
工 される場合や、全 く使用 しないのに加熱 ・電気防食
。
0。
る
A=Mア
ルカ リ度 [mg/L]AsCaC03
B=硫 酸 イオ ン [mg/L]
C=塩
化物 イオ ン [mg/L]で
(1)循 環冷水孔食指数 (CWPI)
CWPI=100/((0.02*A)/(B/48+C/35.5)+1)一
電源を投入す る場合 には運用上 (定期的な湯 の排出)
で pHの 低下を防 ぐ。また、電気防食 の専門業者 の設
計 していない機器 の場合には単位面積当た りの電流値
をチェックする。
ーづけによる腐食
3-4 ロ
MWPI=100/((0.02*A)/(B/48+C/35.5)+1)一
最近では少ないが銅管の普及当初 には良 く発生 して
いた。銅管 のロー付けには軟 ロー付けと硬 ロー付けが
ある。軟 ロー付け と一般に呼ばれている接合法 は正 し
C44.9*pH-289)>0
たは(2)が
正で孔食発生可能性有 り
(1)ま
開放型冷温水 のシステムでは事前ば 2)補給水孔食指
くはハンダ付けである。電気回路のハンダ付け と異な
る点はハンダの材質である。電気回路に使用 されるハ
ンダは錫 と鉛の合金である。給湯銅管 に用 い られるハ
(44.9*pH-318)>0
(2)補 給水孔食指 数 (MWPI)
数 (MWPI)を
確認 し、可能性が有 る場合 は消石灰
ンダは錫に銀 を5%程 度 いれた もの等 が使用 される。
配管技術 2004.5.13
建築用銅配管の腐食と防食 ・
(7)
そして軟 ロー材 には国内規格がないことにも注意が必
要である。硬 ロー付けに用 い られるロー材 はJISに 規
格 (Z3264)が あ り、銅 に銀 とリンを入れた ものであ
る。軟 ロー (ハンダ)付 け と硬 ロー付けの違 いはその
温度にもある。軟 ロー付けは2611℃程度、硬 ロー付け
は700∼ 800℃ 程度である。そ して腐食 と関係する最
大 の違 いは軟 ロー付けにはフラックスが必要なことで
ある。 フラックスを過剰に使用すると内部の銅表面を
腐食させる。 ロー付けで腐食事故を起 こすのは軟 ロー
付けのフラックスである。高温 を嫌 う場所 ・機器や作
業を確実 に管理できる場合 を除いて硬 ロー付けを使用
す る。
(°
3-5 外
面 か らの蟻の巣状腐食
酢酸や蟻酸等の有機酸の環境 で蟻の巣 に似た断面を
持つ腐食 を起 こす。被覆銅管の保温材 の分解生成有機
酸によ り発生 した例 もある。空中に有機酸が漂 う環境
(例 :す し屋、漢方薬原材料倉庫)で 銅管外面をむき
cause of Corrosion and Counter‐
ヽ4easures],Br cOrrs J,Vo1 3,
Sept,1968
(5)山 内重徳 ・佐藤史朗 :[淡水中における銅管の腐食について],防
食技術,Vo1 30,pp 467477,1981
(6)佐 藤史朗 ・小王俊明 ・久松敬弘他 :[給湯用銅管の孔食事例の調
査],防 食技術,Vo1 31,pp3‐11,1982
(7)笠 原晃明 ・小向茂他 :[紫外線照射残留塩素分解 による銅配管の
孔食防止],防 食技術,Vo137,pp 423431,1988
●)能 登谷武紀,:[有 機カルボン酸を含む湿潤環境における銅管の蟻
の巣状腐食],住 友軽金属技報,31228,1989
(9)中 島博志 :[給湯系 の腐食 と防食],防 錆管理 (日本防錆技術協
会),1995,Nol,pp 2740,1995
00 中 島博志 :[空調機器銅 コイルの=L食について],第 44回材料 と環
境言
寸記
, C‐
305, pp 377, 1997
録̀ヽ
0 中 島博志 :[空調配管の腐食事例と対策],「腐食事例と対策技術J,
総合技術センター,pp151,1994
02 祖 父江和冶 ・馬飼野信一 ・川El明康 ・降屋幹男 ・曽我雅康 ・中
島博志 ・山田 豊 ・今井八郎 :[冷温水用銅管におけるの I型 孔食
の発生],材 料 と環境,Vo1 48,pp425[7],1999
13 浜 元 ・渥美 。河野 :[冷水型孔食の事例調査],「伸銅技術研究会
出しで使用 してはならない。
3-6 赤
水 ・黒水
誌」,Vo129,1990
0の 中 島博志,腐 食防食協会編 :[腐食 ・防食ハ ン ドブック第 Ⅶ編第
5章 建築,建 築設備],丸 善,pp 807 840,2∞0
00 中 島I13志「
建築の腐食 と材料 ・防食技術の動向」,材 料 と環境 ,
赤水 は系内に鉄製の継手やポンプ ・脱機器等を使用
す ると発生する。赤水 と混同す るのが黒水である。給
水中においては微量のマンガンが数年かけて内表面 に
腐食防食協会,VO150,No3,pp 81‐ 87,2001
00 中 島博志 「
衛生設備 の長寿命」,建 築設備 と配管工事,日 本工業
出版,Vo139,No6,pp ll1 23,2001
0つ細 谷 清 ,中 島博志 :給湯システム銅管の 2型 孔食事例,材 料 と
蓄積 し、ある厚 さになった後 で剥離 し給湯水が黒色を
環境2002講演集,B313,21102
0' 中 島博志 :[硬質銅管空調用の I型 孔食 (加工油の影響)],材 料
呈する。
4.お
と"景
136, 2003602
力竜2003, B_108, pp■33‐
わ りに
建築設備 に使用 される銅管について、 どのような事
が起 こるか、 どうすれば防げるかについて概要を示 し
た。昨年 レジオネラ対策 として、建築物における衛生
的環境 の確保 に関す る法律 (略称 :建 築物衛生法、
ビル管理法)の 関連す る政省令が改正 され、平成 15
年 4月 1日 か ら特定建築物 (3,000m2以上の事務所 ビ
ル等)で 、給水 と同様に給湯水についても、0.lmg/L
以上の残留塩素を保持す ることが求 められている。耐
食性金属即ち局部腐食 しか発生 しない金属 にとって、
環境中の酸化剤濃度が増すことは、腐食発生可能性 を
高めることである。永年の歴史を持つ銅 を上手に使用
することが求められている。
<参 考文献 >
(1)佐 藤史朗他 :[復水器管の耐食性におよぼす初期皮膜の重要性],
住友軽金属技報,Vd 14,No.2,pp 76‐ 87,Ap五 1,1973
0)田 中穫次 :[水 道用銅管の腐食 につい て],住 友軽金属技報,
Vo1 3, Nol, pp 7381, 1962
( 3 ) M P O u r b a i x : [ 平 衡電位 の 意義 と応用] , 防 食技術, V o l 1 9 ,
No3, pp 137‐
149, 1970
(4)Eヽ lATTSSON etal:[Piting Corroslon in Copper Tubes‐
14 配 管技術 2X104.5.
中島博 志 (昭和25年 1月 15日生 ・岡山県出身)
鹿島建設卸 エ ンジニアリング本部 担 当部長
〒1“-1029 東京都新宿区西新宿3‐
71
ー
ー
パ
クタヮ
29階
新宿
TEL:03‐ 5321-7303
FAX'035321_7315
E―
Man i [email protected]
主なる業務歴及び資格〉
〈
一級建築士、技術士
(衛生工学部門)、工学博士
主なる執筆〉
〈
「
配管防食マニュアル」 (日本工業出す
詢 他 多数
・
《1)
淡水中における銅および銅合金の耐食性 。
H0402・
09
CLS
0385‐
9894/04/Y500′
論■l」
特集 :銅腐食》
《
淡水中における銅 および銅合金の耐食性
住友軽御属工業榊 山 田 豊
Yutaka Yamada
1. は じめに
世界における銅 の歴 史は古 く、石器時代に続 く青銅
器時代で知 られるように金属材料 として最 も古 くから
人類に使用されてきた。主 として銅力平ヒ学的に安定 な
2.銅 および銅合金 の耐食特性
銅および銅合金の耐食性の特徴 を列挙すれば次のよ
うである(lt
① 水素発生を基本とする腐食反応は起こらない。
金属であり、 自然銅 として産出した り、加熱するだけ
で容易 に金属銅や青銅に還元されたためであると考え
このことは銅力金 属の標準電極電位序列 において
水素 よりも貴な電位を示す ことによっている。従
られる。
って、銅が水溶液中において腐食反応を生 じるた
めには酸素 (溶存酸素)ま たはそれに代わる酸化
剤 の存在 が必要である。
我が国においても、奈良時代にはすでに銅が産出さ
れ、貨幣に鋳込まれたことは知 られている力ヽ その後
徳川時代 まで、長崎その他の開港地にてオランダ人や
支那 との交流の支払物産 として輸出されてお り、年間
6,000トンの産出記録 もあ り当時世界的産銅国 として
知 られていた。
鋼 の加工、すなわち伸銅 工業 も京都付近 において、
二次世界大戦終結までは、軍需品の需要増加にともな
って目覚 ましい発展 を示 した。終戦による軍需工業の
一
解体 とともに伸銅工業の性格 も 変 した力ヽ 経済復興
に基づ く一般需要、或 いは電源開発 ・電気機械 ・車
両造船等、諸産業へ の需要にさせ られて順調に回復
し、1991年以降毎年 100万 トン以上の生産量 となって
いる。 この増加 は特 に空調 (エアコン)用 伝熱管や建
築用配管等に使用 される銅管の生産量の増加によって
もたらされている。
このように古 くか ら多用 されて きた伸銅品は淡水、
海水および大気環境で使用 されるカミ 生 じる腐食 の特
徴 は異なる。本稿では銅および銅合金の耐食特性 と淡
水実使用環境下での耐食性について述べ ることとした
い。
20
//
(15
日
日
口
10
燃
照
/闘
古 く徳川時代 より板や箔が作 られてお り、明治以降の
伸銅工業の母体 となっていた。明治時代に入ってから
は、設備の近代化 ・製造技術 の進歩 とともにその規模
を増大 し、 日清 。日露 。第一次世界大戦、そ して第
② 明 瞭な不働態皮膜の存在は知られておらず、隙
間腐食は一般に生じない。
③ 第 1図に示すように溶存酸素を含まない水や非
酸化性の酸に対 して熱力学的に安定で腐食傾向
2も
ヾ
をもたなυ
/
讐0 5
//≦
Oδ
5
塩
硫酸
m__其
10
15
20
25
30
酸素量 [%]
第 1図 非 酸化性酸 12N溶 液中の腐食速度に及ぼす酸素濃度の影響
④ 大 気や天然水としての淡水や海水に耐食陛が優
れている。
⑤ 合 金の種類によっては脱成分腐食を生 じる (例
えば黄銅の脱亜鉛腐旬 。
⑥ 激 しい流動条件下で皮膜が剥離 し衝撃腐食或
いは潰食 と呼ばれる腐食 を生 じる。 この場合、腐
配管技術 2CX14.5.15
・
淡水中における銅および銅合金の耐食性・
(2)
食速度 は溶存酸素量 とともに増大す る。
この 2種 類 の I型 孔食 と Ⅱ型子L食を日本の使用環境
⑦ 耐 食 陛を示 さない環境 として、CNや NH4+等 、
銅 と錯塩 を作 る曝気溶液、硫化水素、硫化物、
等 を考慮 し、I型 子L食では地下水使用下で の孔食を
I'型孔食 と蓄熱槽水使用下での子し
食を I"型子L食、 Ⅱ
濃厚 アルカリ溶液 (KOH、 NaOH)、 酸化性重金
属 (例え│よ FeC13`Cu(N03)2な の 、酸化性の
型では従来か ら強制循 環式配管で経験す る子L食を Ⅱ
型孔食、最近、一過式配管給水 。給湯配管で経験す
るようになった孔食をマ ウン ドレス型子し
食 として分類
酸 (例えlよ 硝酸、濃硫酸)、湿潤なガス (例え
│よ C12`Br2`C02な ど)で ある。
③ 銅 合金の中には応力腐食割れを起 こすものがあ
る。応 力腐食割れを起 こす合金 と腐食媒 の組み
合 わせ としては黄銅 に対す るアンモニアが最 も良
く知 られている。
3.実 使用環境下 での耐 食性
銅管は給水 。給湯用配管 として使用 され、長期使用
において良好な実績を収めている。たとえ│よ 給水用
配管 として20年 間使用 された大阪の近鉄堂島ビルの
銅管の腐食速度は0.007mm/y、 給湯用配管 として33
年間使用された東京の世界貿易 センター ビルの銅管の
腐食速度は0.012mm/yな どである。 しか し、使用 さ
れる環境 によっては孔食等の腐食を経験することがあ
した。
3-1-3 1'型
子L食
地下水を扱 う給水用銅管あるいは使用時以外は水温
が下がる一過式の給湯用銅管に欧米で言われている I
0。
型孔食に類似 した腐食を経験する。
特徴 は孔食部の
上に塩基性炭酸鋼 (Cu2(OH)2C03)の 緑色 の盛 り上
が りを生成 し、孔食内部 に軟 らかい亜酸化銅 (Cu20)
及び塩化第一銅 (CuCl)を 含み、 また子L食の間口が
広 いことである。この孔食は地下水中の遊離炭酸 と軟
質銅管内表面に生成 した炭素質皮膜 (カーボ ン皮膜)
との相乗作用 よって発生することが明 らかにされた゛。
に
DIこ
第 2図
示すように遊離炭酸が15ppm以 上で、銅管
のカーボ ン皮膜が残留C量 で5mg/m2以 上で発生 し易
い。
3-1-2 孔
食 (局部腐食)
わが国で経験する銅管 の孔食は大 きく分類すると I
型孔食 と Ⅱ型7L食 に分類 される力ヽ この子L食の分類
は欧州 での経験等に基 づ くものである°卜(9tわ が国で
経験 される孔食は欧州の定説 と異なる使用環境等で発
生 した り、 また、近年新 たに確認 された子し
食 もある。
16 配 管技術 2004.5.
● 岐阜地区漏洩発生有
△ 岐阜地区漏洩発生無
0
1
足する数値であって も、清掃状況等 によっては 「
青
水」力注 じることもある。
0
2
し、浴槽やタオルに付着 したものである。また、銅イ
オン溶出量が水道水の水質基準 lppm以 下を十分に満
0
3
膜が生成するpHの 下限値は6.5であ り、これよりpH
が低 くなるとこれ らの化合物の溶解度が高 くなり、銅
の水中への溶出量が多 くなって、 いわゆる 「
青水」問
°X4ゝ
題が生 じる
「
青水」 は水 自体が銅イオ ンにより着
色 した ものではな く、溶出 した銅 イオ ンが石鹸や空気
中の炭酸 ガスと反応 して銅石鹸や塩基性炭酸銅 を形成
Ю
量 も小 さくなる。 ところが淡水中で銅 に安定な酸化皮
日oB 饉べ響製
[
3-1-1 銅
イオ ンの溶出 (青わ
一般に、銅管 の内面には亜酸化銅
lCu20)`酸化銅
(CuO)、 塩基性炭酸銅 (Cu2(OH)2C03)や オル ト珪
酸銅 (Cu2Si04×H20)等 の安定な皮膜が生成する。
これに伴 い腐食速度が低下 し、水中への銅イオン溶出
¶ρ
饉o
o
○ 全国漏洩発生
管
0
5
3-1 '同
0
6
る。以下に柄料 と腐食現象別 に代表的な腐食について
述べ る。
pH
第 2図 I'型 孔食発生有無 と地下水のPhお よび遊離炭酸の関係
3-1-4 1''型
子L食
開放型蓄熱槽式システムで使用 される空調用銅管に
生 じた腐食 のほとんどは、冷温水を鋼管内に循環させ
るエアハ ン ドリングユニ ットやファンコイルユニ ッ ト
銅管内面に生 じる孔食である。使用 される冷温水 には
防錆剤無添加の場合、防錆剤添加の場合が ある力ヽ い
ずれにも孔食が生 じている。
(1)防 錆剤無添加
孔食 の特徴 は地下水で生 じる孔食 と類似 し、孔食部
の上に塩基 性炭酸銅 lCu2 0H)2C03)` まれに塩基性
・
〈
助
淡水中における銅および銅合金の耐食性・
硫酸銅 (Cu4S04(OH)6)か らなる緑色の盛 り上が り
を生成 し、孔食内部に柔 らかい亜酸化銅 (Cu20)を
含む。そして、銅管内表面 には鉄系の腐食生成物 と推
定 される黄土色のスケー ルが堆積 していることが多
い。水質的には、補給水 となる上水 と比較す るとpH
が 8∼ 9と 高 く、Mア ルカ リ度 も100前後か ら数100
ppmと 高 い。 また蒸発残留物が多 い傾向にあ り、水
中には鉄系 の腐食生成物 と推定 される微粒子 (以後、
水中微粒子 と記す)が 含まれている。 この孔食は銅管
内表面のカーボ ン皮膜 と水中微粒子の相乗作用 によっ
゛
て発生することが明 らかにされた 。
(2)防 錆剤添加有
孔食 の特徴 は管内面スケー ルが斑点状に形成 され
ている箇所 にお いてその下部 に孔食がみ られ、緑青
色 のカサブタ部分 は非 品質 の場合が多 い。稀 にX線
ウ ン ドレス型孔食
3-1-6 マ
近年、集合住宅あ るいは戸建住宅 の一過式給水 ・
給湯用銅管でマウン ドレス型孔食による漏水事故 を全
2。
食 の一例を
国で多 く経験す るようになっている 。子し
写真 1に 示す。 この子L食の形態 はその名の通 り、 Ⅱ
型孔食のような顕著な腐食生成物 の盛 り上が り、 いわ
ゆる塩基性硫酸銅 (Cu4S04(OH)6)あ るい は塩基性
マ ウ ン ドカヽまとんど見 ら
炭酸銅 (Cu2(OH)2C03)の
れない。そして、7L食部を除く表面は「型子L食では亜
酸化銅 (Cu20)`酸化銅 (Cuo)、 オル トケイ酸鋼
nH20)な どの皮膜が生成するのに対 し、マ
(CuSi04・
ウンドレス型子し
食では水 ガラス状の非品質スケールと
亜酸化銅が生成 している。また、水ガラス状の非品質
スケールからはSiが検出される。その発生水質を第 3
図に示す ようにSi02濃度が20ppm以 上と高濃度の場
回折で りん酸亜鉛、塩基性炭酸銅 あるい は塩基性硫
酸銅が検出され る。 内部のスケー ルは非品質である
が、EDX分 析 によ りP、 Zn、 Caが 、特 にPが 明瞭
に見 られる。孔食部の形態は間回の広 い ものである。
水質的 には添加 された防錆剤 に関す る詳細 (化学物
質名、投入 。管理基準等)は 不明であるが、硫酸亜
鉛 (ZnSo4)` ベ ンゾ トリアゾー ル (BTA)が 複合
添加 されているホスホ ン酸系防錆剤 で孔食が生 じる
こと、環境 によっては孔食が抑制 されること も示 さ
。
3∼
。
れて い る。
。 また、 この他 モ リブデ ン酸系防錆剤
等 で も孔食 を経験 して いる。孔食の発生は防錆剤単
独 の影響 によるのではな く、防錆剤の添加条件 と水
質 との関係 で生 じるもの と考えるべ きである。
3-1-5 Ⅱ
型子L食
わが国で従来から経験 されてきた腐食で、強帝1循環
式給湯用銅管 に生 じやすい。孔食部の上に塩基性硫酸
銅 (Cu4S04(OH)6)の 盛 り上が りを生成 し、子L食内
部 に亜酸化銅及 び塩化銅が詰 まってお り、I型 孔食
に比 べ て 間口が狭 いの が特徴 で あ る。 この孔食 は
。
い
HC03に 対 しS042-が多 い水 の中で発生 しやす く 、
管 内流速が低流速 ほど進行 しやす い。 Ⅱ型孔食の場
食発生 の臨界電位 (150mV vs SCE)が 存在
合 も子し
は
'、
し 残留塩素が銅管の電位を貴 にして臨界電位を越
9。
。
そ して、S042/
えさせる ことが報告 されている
HC03 比 と残留塩素の複合効果について検討がなさ
れ、S042-/Hc03 比 が高 く、残留塩素が高 い と孔食
。
ゆ
が発生 しやす いことが実験 により確認 されている 。
以上のような水質上 の特徴 lS042-/HcO「 比、残留
塩素濃度)、及 び電位 の上昇 と孔食発生の関係は、実
°
際 のシステムにおいて も確認されている 。
写真 1 マ ウンドレス型孔食の内面状況と断面状況
● 北海道道南マウンドレス型孔食発生
O北 海道道南マウンドレス型孔食発生なし
◆ 最近全 国で経験したマヤ
シンドレス型
孔食事例
0全 国 Ⅱ型孔食
ヽ
・
・・ ・
●
0●
01234
S042-/HcoJ
第 3図 マ ウンドレス型孔食発生水質
"
●
・
(4)
淡水中における銅および銅合金の耐食性・
の
合 に発生 し易 く 、更にS042-/Hc03比
(マッ トソ
ン比)が 大 きい場合 にその進行が速 い。
同一地域の同一水系 で使用 された孔食発生有無銅
管の調査がおこなわれた。孔食発生無銅管は給水配管
に鋼管或 いは亜鉛 メッキ鋼管が使用 されていたもので
あ り、赤錆発生によリマ ウン ドレス型孔食の発生が抑
市1されていた。そして、マ ウン ドレス型孔食の発生頻
度 は特に新興住宅街 に多 くt近 年、給水配管に塩 ビラ
イエング鋼管等の錆の発生 し難 い配管材が使用 されだ
ω∼.0。
したこととも関係 しているとも言われている
ま
た、発生メカニズムについてはSi02と 2価 の金属イオ
ンとの反応特性 も関係 しているの。
にわたって良好な成績を全国で収めている。
更 に、最近樹脂管 を使用 した一 過式給水 ・給湯配
管 システム (ヘッダーエ法)と 同様な配管 システムを
開発 (商品名 :水 ・湯 。P)し た。 このシステムの特
徴は配管 に内面Sn被 覆銅管の製造技術 を応用 した低
価格で青水を防止 した銅管を採用 し、接合にワンタッ
チ式の火無 し継手を開発 し、施工を容易にしたことで
ある。
5.銅 合金
5-1 淡 水中で使用 される各銅合金の耐食性
5-1-l Cu― Zn系 合金
食 (局部腐食)
ホテル、病院、集合住宅などで採用 されている強制
循環式給湯用銅管において、潰食による漏洩事故が経
鋼に亜鉛を45%ま で添加 した合金は丹銅、黄銅 と知
られ 大気中、淡水中、海水中などで用 い られる。そ
の耐食性 はZn合 有量 の増大 につれて増す力ヽ それと
験 される。銅管の表面上の保護皮膜が物理的作用を受
けて継続的に除去されると、その部分 に潰食が発生す
併行 して脱亜鉛腐食 と応力腐食割 れの感受性が高 くな
る (亜鉛量が 15∼ 20%以 上)。
る。腐食面 に腐食生成物 はみられず、馬蹄形の腐食形
脱亜 鉛腐食は合金構成元素の銅 と亜鉛の うち亜鉛の
み失われ、 多孔質q脆 弱な銅 のみが残 る脱成分腐食で
ある。海水中や高温 の淡水中で生 じやすい。 この腐食
3-1-7 潰
態を示 し、水の下流側に向かって深 く侵食 されるのが
特徴 である。その発生部位の多 くは強制循環式配管の
還管のエルボ継手或 いはチーズ継手を接合 した部位で
の
水流方向 に対 し、下流側 の銅管部である 。銅管の潰
食現象には物理的な要因 と化学的な要因が影響す る。
機械的な要因 としては流速、管の曲り、流路の断面形
状変化 などがある。すなわち、流速が過大 になった
り、水流 の乱れが激 しくなるほ ど潰食が発生 しやす
い。化学的な要因としてはpH、 炭酸成分お よび陰イ
オ ンなどがあ り、中で もpHが 重要である。そ して、
温度の上昇ならびにpHの 低下が潰食 の発生を助長 し
∼
つ
ている。多くの研究者により実験が試みらだ eD、こ
れら結果と事例などから潰食抑制の設計指針 として管
゛
内流速1.5m/s以下が示 された 。 しか しながら、実使
用環境下では、管内流速 1.5m/s以 下であっても潰食
が発生 している。 その後の著者 らの研 究で強制循環 シ
ステムの特性上、密閉型貯湯槽の溶存酸素が過飽和 と
なるため、 この過飽和溶存酸素が管径変化等 によって
気泡化 して、皮膜剥離作用を促進さす物理的作用が潰
.0。
食発生 の主 因であることが明 らかにされた
4.内 面 Sn被 覆銅 管 と配管 システムの開発
上述 したように建築用配管 として使用 される銅管 の
淡水中における腐食問題 を解決すべ く、銅管内面に厚
さ1∼ 2μmの 純Snを 被覆 し、銅管の耐食 陛を向上 さ
せた給水 ・給湯用内面 Sn被 覆銅管 (商品名 :STC銅
の
管)を 1993年 に実用化 した 。 この銅管は10年 以上
18 配 管技術 2∞ 4.5.
はα tt 黄
β銅ではβ相に選択的に生 じる傾向がある。α
黄銅 の脱亜鉛腐食は、As、 Sb、 Pの いずれかを0.02%
°
以上添加すればほぼ完全に抑制 される 。また、1%程
度のSnの 添加 も有効であ る。 このような合金例 とし
ては、淡水用熱交換器管 として用 い られるAs入 リア
ドミラルティ黄銅 (Cu-29%Zn-1%Sn‐ Cl.04%As)力,知
られている。また、バ ルプや弁棒用材料 として、As、
P、Snな どを含む黄銅 も開発 されている。なお、 これ
ら添加元素の効果 はβ相に対 して有効 でない。
゛
応力腐食割れ感受性 はZn量 の増加 とともに増 し 、
30∼ 40%の Znを 含む合金に事例が多 い。割れ経路は
粒界 と粒内の場合がある。腐食媒 としてはア ンモニ
ア、アミン、高温高圧 の水および水蒸気、溶融金属な
どが知 られている。内部応力を有する黄銅 を放置すれ
ば応力腐食割れを生ず ることがあ り、 この現象 は時期
割れ として知 られる。対策 としては300℃ 前後におい
て応力除去焼 きなましを行 うことが有効である。
5-1-2 Cu―
Ni系 合金
主に海水用熱交換器管 に使用 されて い る合金 で、
Ni10∼ 30%、 FeO.5∼2%、 Mnを 1%ほ ど含んでいる。
Ni量 の増加 とともにアルカリに対する耐食性が増 し、
合金元素 として添加 されるFe量 により耐エロー ジョ
ン ・コロージョン性が向上 してアルミニウム黄銅を上
回る。 また、他 の銅合金 と異なリアンモニア耐食性 を
有 しかつ耐応力腐食割れ性に優 れる。 しか し、Hバ を
淡水中における鋼および銅合金の耐食性 (5)
含む環境、例え│力号染海水中では激 しく腐食す る。ま
た、管壁温度の高 い熱交換器 の伝熱管 として用 いる
と、局部的に脱 ニ ッケル腐食が生 じることがある。こ
の現象 は熱点腐食 とよばれ、汚染海水中で生 じやす
い。
5-1-3 Cu―
Sn系 合金
Snを 5∼ 15%を 含む合金は青鋼 として知 られ その
耐食性 はSn含 有量 に依存す る。 この合金 は特に耐エ
ロー ジョンコロージョン性に優 オ
ヽ 海水中な どで用 い
られる。ポ ンプ翼 として用い られるりん青銅、バ ルブ
や軸受 として用い られる青銅鋳物 (砲金)な どが知 ら
れる。青銅は応力腐食割 れを生 じにくく、また脱合金
腐食 も生 じない。
合金の腐食事例
淡水 を扱 う環境 で使 用 される銅合金 の多 くはバ ル
ブ、給水栓用等の黄銅 な らびに青銅鋳物であ る。 ま
5-2 銅
写真 2 多 管式熱交換器に生 じた応力腐食割れ
た、銅合金管は数は少ないが多管式熱交換器に用 い ら
れることもある。使用される銅合金 としては黄銅が多
く、主な腐食は脱亜鉛現象 と応力腐食割れである。
ルブ、給水栓類
5-2-1 バ
脱 亜鉛腐食は見かけ上合金中の亜鉛成分が優先的
に溶解 し、銅成分が母材に残存する脱成分腐食の一種
である。亜鉛成分が10%以 下の黄銅では脱亜鉛腐食は
起 こらないカミ 淡水環境下で使用 される黄鋼材料は亜
鉛含有量 が30∼ 40%の 範囲の ものが大部分である。
一
脱亜鉛腐食形態は大別すると、ほぼ均 に合金内部ヘ
浸食 してい く層状型 と局部的に浸食 してい く栓状型が
。
'。
ある
水質的 にはpH、 硬度 および重炭酸塩濃度が
低 いほど、また塩化物イオン濃度、遊離炭酸濃度およ
び温度が高 い水質 ほど脱亜鉛腐食を起 こしやすい。
わが国は軟水であり、硬水であるヨーロッパ諸国に
比べ脱亜鉛腐食 をお こ しやす い為、亜鉛を5%し か含
まない青銅鋳物 GIS H5111、 BC6)力 縦 来 よ り用 い
られてきている。 この他、脱亜鉛対策黄鋼材料 の開発
が進め られ、Sn、 Ni等 を少量添加 した黄銅がある。
また、 ヨーロッパでは水質改善 により、本腐食問題を
克服 した例 もある。
みることができる。冷却水 に淡水を使用する小型多管
式熱交換器では、アルミニウム黄銅管の使用 を避け、
良好な使用成績 を収めている りん脱酸銅管が推奨され
る。また、大型の熱交換器の場合 には、ア ドミラルテ
ィー黄銅管或 いはキュプロニ ッケル管 の使用が適当で
ある。
6.お わ りに
ここでは淡水中における銅および銅合金の耐食性に
ついて紹介 した。淡水中では使用 とともに酸化銅、亜
酸化銅 、塩基性炭酸銅な どの安定 な皮膜が形成 され、
その大部分 は何 ら問題な く古 くか ら使用 されて きた。
しかし、使用環境、設備あるいは加工などによっては
。
腐食問題も生 じることがある。金属材料 の選定 使用
にあた つては、使用環境 の十分な調査をす ると同時
に、その使用方法 も十分に検討す ることも重要 と考え
る。
<参 考文献>
金の基礎 と工業技術,P276
(1)日 本伸銅協会編 :銅 お よび9pl合
(1994)
管式熱交換器
多管式熱交換器の冷却水 として海水 の使用が多 いわ
が国では、管材料にアルミニウム黄銅管が多用 されて
いる。 しかし、淡水 の場合、 アルミユウム黄銅 の腐食
ヽSTヽ1 : Metals Handbook,p473
(2) ノ
一
0 山 田 豊 ・伊藤順 ・渥美哲郎 ・永田公二 :伸銅技術研究会誌,
は孔食形態になり易 く、孔食底部に応力集中を生 じて
応力腐食割れの危険性を伴 うようになる。写真 2に 代
(6)H S Campbell:BNF Miscellaneous Publication,No 574
5-2-2 多
表的な事例 を示す。特に、管長が5m前 後以下の管束
組立時の応力が集中 し易 い小型熱交換器 に事例を多 く
34, 107 (1995)
に)田 中礼次 ・西尾正浩 :住 友軽金属技報,13,141(1972)
(5)山 内重徳 ・佐藤史朗 :防 食技術,30,469(1981)
(1972)
(7)V F Lucey:BNF Research Report,No A1838(1972)
Galvanic and
(8)F」 CornWell,GM√ildsrnith&P T Cilbert i“
4 STP‐
576, 155(1972)
Pitting Corrosion",ASTヽ
配管技術 2004.5.19
・
(6)
淡水中における銅および銅合金の耐食性・
(9)Eヽ lattsson:Br Corrs J,3,246(1968)
0 0 浜 元隆夫 ・渥美哲郎 ・河野浩三 : 仲 銅技術研究会誌, 2 9 , 1 0 1
(1990)
0 」 山田 豊 ・河野浩三 ・鈴木 忍 ・渥美哲郎 : 材 料 と環境 , 4 8 ,
647 (1999)
02 山 田 豊 ・森 明 久 ・畑中隆― ・渥美哲郎 ・中尾信之 :材 料 と
環境,47,723(1998)
ω 山 田 豊 ・世利修美 ・田頭孝介 ・永田公二 :材 料 と環境 ,42,
558 (1993)
0り 山 田 豊 ・世利修美 ・田頭孝介
(1993)
⑮ 山 田 豊 ・世利修美 ・田頭孝介
・永田公二 :表面技術,44,753
資料,p17(1999)
の 例 えば,北 海道建設新聞, 4月 25日掲載 (211110)
26 山 田 豊 ・河野浩三 ・渥美哲郎 :伸 釦技術研究会誌,36,154
(1997)
の 山 内重徳 ・佐藤史朗 :防 食技術,30,469(1981)
128 ヽI F Obrecht:Corrosion,18,189 (1962)
の L Knutsson,E.ヽ4attsson&B.E Ramberg:Brit Corros.」.,
7,208 (1972)
⑩ 佐 藤史郎 ・永 田公二 ・下野 三樹雄 : 伸 銅技術研究会誌, 1 9 ,
51(1)
01)HirOshi Yamamoto and Hiroshi Kunieda:Proceeding of the
・永田公二 :表面技術,44,172
(1993)
00 山 田 豊 ・世利修美 。田頭孝介 ・永田公二 :表面技術,44,353
(1993)
O η 浜 元隆夫 ・熊谷正樹 。河野浩三 ・山内重徳 : 住 友軽金属技報,
28, 16 (1987)
0 ' 馬 場晴雄 ・小玉俊明 ・藤井哲雄 ・久松敬弘 ・石川百合子 : 防 食
ttaV, 30, 113 (1981)
09 馬 場晴雄 ・小玉俊明 ・藤井哲雄 ・久松敬弘 :防食技術,30,161
(1981)
の 笠 原晃明 。小向 茂 :防食技術,36,492(1987)
クリ 荒 川昌伸 ・鈴木弘明 ・山田 豊 .谷 正 一,世 利修美 :北 海道
応用地学合同研究会論文集,No7,95(1996)
の 山 田 豊 ・渥美哲郎 :材料 と環境,46,134(1997)
の 山 田 豊 ・境 昌 宏,世 利修美 :第 51回全国水道研究発表会講
演集,p426,日 本水道協会 (2000)
│1 室 蘭工業大学地域共同研究開発センター :第 2回 技術開発講演会
lnternational Symposium on Corrosion of Copper and Copper
Alloy in Bulding,Tokyo,146 (1982)
0 日 本銅センター建築配管用銅管腐食対策技術委員会 :「建築配管
用鋼管腐食対策指針」(1987)
0 ヽ V Lynes:Proc,ASTヽ
1,41,859 (1941)
ω D HIThompson and A W.Tracy:Trans AIME,185,110
(1949)
0 , 日 本伸銅協会編 : 仲銅品データブック, P 1 4 3 ( 1 9 9 7 )
山田 豊
住友軽金属工業榊 研 究開発セツター 第 四部
主任研究員
〒45卜8670 名 古屋市港区千早3-1-12
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複写許諾手続の詳細 についてはJ1lSにお問い合わせ下 さい。
日本工業出版株式会社
株式会社 日本著作出,板
権管理 システム
20
酉
己
支
管ま
a貯 2004.5.
・
〈1)
海水通水下の銅合金の生物腐食・
海水通水下 の銅合金 の生物
<銅 の腐食原因調査手法 は鉄 とは全 く異 なる
厳け
H0402‐08
CLS
0385‐9894/04/Y500′言拿文/」
特集 :銅腐食》
《
「
銅屋」に!>
閉関西テクノカンパニー 川 辺 允 志
Atsushi Kawabe
1. は じめに
海水通水下の銅合金の腐食原因調査は、「
餅屋 は餅
屋」の喩えどおり、「
銅屋」に実物、実物がなければ
色が良 く再現された写真を見せるだけで、その場で腐
食の内の2/3は 原因が判明し、再発防止のための的
断面状 況
腐食
確な対策も即時に樹てられる。 しかし、今まで 「
原因不明」だったのにと、
屋」に調べてもらっても 「
お客様が狐につままれたようであれば、お客様を納得
させるために分析をしてデータを付けざるをえないの
である。ここでは 「
鉄
銅屋」の腐食原因調査手法を 「
屋」等のそれと対比 し、銅の腐食原因の確定はいかに
銅屋」以外の専
簡単か示す (頭の混乱を避けるため 「
門家の考え方 とそれに関連 した説明はイタリックで示
すので、要点のみを知 りたい方は飛ばして下さい)。
2.海 水中の生物
海水中の生物は、その成体が肉眼で見えるかどうか
によって大別される(1ゝ
海水中の生物 ―
E[像
着生物
fittI]li「
II倉 1場
微生物 はtそ の繁殖に海水中の酸素が必要か どうか
によって大別される。
の
淋中
蟻―
E多
「
菫
」
修
磯
聯
[霞
[irII願
ここではまず大型付着生物 が直接係わる腐食 を述
べ、次に微生物が関与する腐食について述べ る。
3.海 水通水下 の銅 、銅合金 の耐食性
銅は大型付着生物防止に木造船 に貼 られていたが、
耐海水性 に劣 り、例 えば直径 10cmの 銅 (りん脱酸銅、
IS H3300 C1220)管は034m/s、 9カ 月で写真 1に 示
」
X100
"、
034m/s、
写真 1 海 水通水下 の銅の腐食
約 9カ 月で24mm局
部腐 食 した
°
す ように2.4mm局 部腐食す る ので、銅 そのものでは
なく耐海水性鋼合 金を用 いることになる。
それらの内で、アルミ黄銅が最 も安価で、耐海水 性
も良 く、通水初期は0.02mm程 度腐食す る力ヽ 生物皮
膜が付着す ると、それが防食皮膜 となり、それ以降は
殆 ど腐食 しなくなる。生物皮膜 の生成を防いでいる場
合や、塩素、過酸化水素のような酸化剤 でマンガン皮
膜が形成されるような場合等 には鉄皮膜育成によって
0.01mm/y程 度の腐食 に抑制できる。
お金持ちは銅 にニ ッケルをlo%、 30%加 えたキユプ
ロニ ッケルを使用 しているケース も見 られる力ヽ その
3ゝ
高価格に値す る程の ことはなしヾ
実機の確 発を 模凝 した浸漬試験において材料を研
磨するのと実機 を模擬 したことにならない。銅合金 で
こ″料の麦面鯉 %ヒ銅皮膜カミ
│ま
形成 されてお
製造時′
支罰
酉己籠
雪ま
ほ 2004.5. 21
海水通水下の銅合金の生物腐食・(2)
初期防食皮膜の動きをするので 研磨
ク、タ リ 浸 1責
の
すると腐食速度はlθ倍以上大 きくなる 。それ茂銅合
金の試験では製造のままの管を用 いる。
4.大 型付着生物 による工ロー ジョンー
コロ ン ョン
海水使用銅合金管の穿孔 の原因としては写真 2に 示
の下流で発
すように管内に停滞 した異物 (デブリス)(・
ー
ー
ー
生する剪断力に基 くエロ ジョン コロ ジョンが最
(6t
も多 く、全体の半数以上を占めている
ら潰食 と呼ばれてお り'ヽ したがって渥美は本腐食を
「
固形物閉塞による局部潰食」 と呼んでいる.0。
大型付着生物が管内で停滞するに至るには次の二つ
の経路がある。
① 管 内流速が低下 したときに、流入海水中の着生
期幼生が管内表面に到達 し、探索 後、接着剤に
て付着、変態 し成長 したもか 。
。流入海水中には、
例 えばフジツボの場合500コ/m3に も及ぶ着生
。
a、
期幼生が存在 してお り 管内表面に到達 しても、
水流 による剪断力で本流中へ と剥離させ られてし
3に
まうが、第 1図 。
示す流速以下に低下すると、
剪断力 に耐えて付着する ことができるよ うにな
る。そして一旦接着剤で付着後は流速が元に復 し
ても剥離されず1り
、成長し続け写真3に示すよう
になる。
矢 印 は腐 食 を示す
∽
日]製颯ミ斗市滞
雪︲
一流水方向
1
20
50
100
500
1000
管内径 [mm]
第 1 図 大型付着生物の付着を1カ年防止するための設計流速・。
内径がlm以 上のケースに対 しては直線を外延 して求める
酸洗後
ことがで きる。
断面状況
__05mm
写真 2 フ ジツボ付着部 ド流でのエロージヨンーコロージョン。 フジ
ツボ付着直下の汚染水腐食。失印はエロージョンーコロージ
ョンによる穿孔を示す。酸洗後、フジツボ底盤跡にリング状
の腐食がみられる。右方にはリングとさらにリング内に放射
状の腐食がみられる。
このエロージョンーコロージョンは一般には 「
デポ
ジット・アタック」 と言われている("力
ヽ それは文献 ・
に由来するためであるカミ 本来のデポジット・アタッ
いわゅるデポジット・アタック」
ク国ではないため、「
というのが望 ましい。
エロージョンーコロージョンは銅合金管では古 くか
22
酉
支翻
己
籠
獣才
貯 2oo4 5
写真 3 復 水器管で付着成長したフジツボ (真中の管)と
管入口端に引っかかったフジツボ等の異物
・
〈3)
海水通水下の銅合金の生物腐食・
② 熱 交換器 よりも上流で付着成長 した大型付着生
物が何 らかの原因で脱落 し、流水 とともに銅合金
管に流入 し、管内を通過中、付着生物 の向 きが
変 って管内に引っかかつてしまう。
0。
は
本腐食は佐藤 らによって詳 しく検討されている
アルミニウム黄銅管 は異物が占める面積 が管断面積
同
の 3割 までの場合 には耐えられる 。
鉄注入 を実施 して良好な防食皮膜を育成すると管断
国
面積 の半分 を占める異物にも耐え られるようになる 。
異物が存在 している限 り本腐食 は急速に進行 し、ア
ルミユウム黄銅管が約 380時 間で穿子しに至った例 も報
。
0。
告 されている
ある学会のエロージヨンーコロージョンの議 会で
ー
腐食 の大家 に 「エロージヨン コロージョンを月分け
るヽ法 ′
まあるでしょう力ヽP」 との質問が でた力ヽ その
よ腐食原因調査 も専
ガ 梶 歎 窮 しん 蜀 間をしたの′
嫌気性微生物である硫酸塩還元細菌であ り、それは海
水 の硫酸 イオ ンを呼吸に利用 し、そのためいお うイオ
ンが生 じ、そのいおうイオ ンが銅合金を腐食するので
ある。
清浄海水中 にも硫酸塩還元細菌 はlMPN/mL未 満飢
。
つ
餓状態 で存在 してお り 、硫酸塩還元紹菌が海水 に月
'き
つかったとい う ヽで腐食 1罷 酷 するん 履 多 泄 6月
ω
られる カミ 海水に硫酸塩還元紹菌 ではな く、 いお う
い。
までき/4・
ゞ腐食 と直結′
イオ ンカ滋 しなけれ′
この腐食 は肉眼観察か時には拡大鏡です ぐに識別で
きるケースが多 い。それは腐食形態が写真 4.0に示す
°
ように粒界腐食 であ り 、脱亜鉛 してい るため、腐食
部 は銅色を呈 していることが多 く、さらに腐食生成物
が硫化銅 のため黒色を呈 しているからである。肉眼観
察で判定出来ない時 には腐食部の組織 の粒界腐食写真
と付着物 の硫化物含有量 との二つだけで決定で きる。
用にしている会社の若手であった。本腐食は水流によ
る剪断力により管内表面の保護皮膜力縁1離させ られる
ことに起因するため、腐食部 には腐食生成物 も残留す
ることができないので、進行中の腐食は金属光沢を示
すので 日で見ればす ぐに識別できる。 しか し停滞異物
については管を掃除後や渦流探傷後 (過流探傷前に掃
除 をす るのが通例だ力ヽ 磁石に引 っ付かない水酸化鉄
付着物を何故除去 しなければならないのか ?)に 抜管
される事が多 いため、犯人が現場に残っている事 は希
粒界腐食である
腐食深 さ045mm
である。それをいい事にして、安易 に本腐食 とされる
ま下記の 7章 盤
を誤認 している
事カラ いカミ 最近 ′
の力沼 」“″。
エロージョンーコロージョンは、まず異物閉塞等 に
よ り局部的に高流速が生 じ (例えば8m/sと 言 うよう
3)、
な。 それにもとず く高剪断力で防食皮膜がエロージ
ョンされて金属地肌が露出 し、 コロージョンが発生す
卿
写真 4 汚 染水腐食
るのである。
ここで分″すべ き′
ま 働杉影勾 であるカミ 元素分析
で全 いお う心ヽを求めてことたれ クとしているの6月
受けられるカミ 海水には多量の硫酸イオ ンカ湯 ク、付
の下ではな く、 両 依 明 性 し、海水 で,ま
銅合金はすき
レ
ま
しな
イ)。
ま腐旬 発生
ま必 ず罐 イオ ンが含まれるのα 全 いお うか
着雄 ′
かねば 「
稲 物 」 とはいえなレも
ら硫酸イオ ンを差 しグ′
この腐食だ と決 めるのに 4ベ ー ジを要 し、PS分
こ浸
″、自湘 雛 婆 碓 の経時変化、硫4ヒ水素含有水 ′
ー
で
土泥含有水
島 劾 葬 林 “ 効 ソ ド施 曲線、俸底
m、
鉄屋」 もお ク
材 食 を濃淡電池によるとする │「
異物 の下のスキマ菊食と勘違 い したのであ ろ う 俣 物
腐食原因調査は再発防止のために実施す るのである
か ら、いわゆるデポジットアタックと分かつただけで
は駄 日で、異物が何 かを確定ない しは推定 し、それら
の異物 の流入防止策を策定 しない限 り腐食原因調査は
完結 したとはいえない。
5.硫 酸塩還元細菌 の 関与 す る銅合金 の腐 食
微生物 の内、海水中の銅合金の腐食に関与す るのは
ヽ
要の
の自然腐食 電位の経時変イ
ヒを求めているカミ ル 」
“
い
い
る
t
レち
務確υコJ触 れて な タ
なおカソー ド反応は海水中では酸素の還元であるた
め、第 2図のに示す ように酸素力ヽまとんどなければ腐
の
食度はきわめて低い 。
支
己
管ま
a肝 2004.5
酉
23
海水通水 下の銅合金の生物腐食¨《
4)
/
/
700
/
600
国] ●嗣
[
胃0日]酬颯終
/
/
500
/
/
400
/
/
/弓
300
/´
/
/
′
200
100
/´
//
/`イ
ン 年1■ン
ダ
電流 [10g]
アノー ド反応
a 好 気性
2 C u + 3 H 2 0 + C l → C u 2 ( O H ) 3 C I + 3 H+十
4e
cゅ
s+た
L弊骨
農
応
2Cu+y→
C
02・
2H20+4e →
40H
0
25
50
溶存酸素飽和度 [ % ]
第 3図 好 気性環境 と嫌気性環境 における
アルミ黄銅の腐食反応模式図い
-3%NaCl l日
C-3%NaCl l製
旦間
を 一――▲ FeS 10g/L+FeC13 2g/L in 3%NaCl l日
″ ―――△ FeS 10g/L+FeC13 23/L in 3%NaCl l週
間
―――
― ―
‐ Na2S 200ppm+FeC13 100ppm in 3%NaCl l日
――夕 Na2S 200ppm+FeC13 100ppm in 3%NaCl l】
― ―
ト ーー ■ 硫酸塩還元細菌培地 10%in 3%NaCl l日
□一―一 g硫 酸塩還元細菌培地 10%in 3%NaCl l週 間
ユ間
第 2図 ア ルミ黄銅の汚染水腐食に及ぼす溶存酸素の影響・
C02 6流 通系
の
第 3図 はこの腐食 の分極曲線 を好気性環境での腐
食 と対比 させた模式図であり、陽分極 曲線 と陰分極曲
線 との交点が腐食電流であるカミ 腐食電流は好気性環
境での腐食 よ りも大 きくなる事を示 している (横軸は
対数であることに留意)。腐食電流が大 きくなるのは
陽分極 曲線が下方へ移動するからである。即ちこの腐
食反応の電位はレスノーブルである。 ところガミ め
含有条件下での険 創 醜 協 材 求め、ゎ なし条件下よ
クる酸素 の"が
1ヽへ きい図 ″を示 して
「
溶存醸 還元反応 活性がきわめて高 くなっている…
これ らか ら、3us起 因 の溶存酸素還元 反応 溜 聟 伏
″畔
き起 こ した」 としているグカ現 られ
傷 をグ′
る。 なム その図 0邸
なι条件下の酸素 の腰界タ
散電流出 “r2/yに 相当する力ヽ そんな,こ
腐食 するの
なら美罵金属 とはな クえ式 実際の 権 勒 %の コ//1θ
以 下であ り、酸素の限界拡散 電流が銅合金の腐食 を律
速 しているのではなレも
24
酉
己
管ま
支翻
貯 2004 5
この 秘 邁 慨 鍔 彰 暁 これ ″ %箇 所 働 密 ,ま
齢
していな くてもり の電位はわ a27程 度 ノープル になっ
ていることん あ 。 これ`ま
腐食反応 勧 姥 滋 れ てい
るの でな く、管表面 に日着 している反応生成物の
Ca_ASの電位を測定 してしまうためである“
ち こD腐 食
在 乳 崚 実機試験片ヵ溺 磨材 よ ク約 a“ yノ ープン
レで
あっても κ が は 塑 け る溶存酸素還元反応 活性 の
増大感 ずく電位貴化ゴ0と ′
まいえずε口
β の電位を〃
定 しているのである。
内層 局的 劫 議 落 在 し、外 目にα メ ヵ済を してい
ても腐食 の発 していない妨 ″ %。 従っζ 議 層
にCuメ の存在 を確認 しだ り らといって腐食原因lt‐
直
結するわけにはぃかない。
このタイプの腐食は 「
汚染水腐食」 とか 「
硫化物に
よる汚染水腐食」 と呼ばれ、1958年以来、東京、名
古屋、大阪の河口域で猛威 を振い、o.6mm/y以 上の
腐食を生げD、浅草の観音さんまで腐食したと言われ
たカミ APブ ロンズの開発によって1964年には解決さ
れてしまい、そのためメカニズムについては最後のと
ころ迄解明されなかった。 その後EPRIか ら1987年に
つ
火力発電所のω、1988年に原子力発電所 の。
MICの レ
ー
ポ トが出た力ヽ その中身の殆 どはこの タイプの腐食
で、MICと い う新 しい衣に着替えたものにすぎなかっ
た。
汚染水とはどういう水かを、清浄水 と対比して第 1
。
プ に示す。
・
《"
海水通水下の銅合金の生物腐食・
"フ
“
"
第 1表 清 浄海水 と汚染水、 汚染度
清浄海水
項目
COD
[ppm]
DO
[ / / ]
NH4
[ / / ]
SRB
65-75
4以 下
4以 上
2 p p m 差 引 いた もの l p p m に つ き1 5 を かける
4以 上 (普通 5∼ 7)
4以 下
痕跡 (005以 下)
2以 上
検出不能
検出される場合あり
4以 下の ものにつきlppm減 少するごとに2を かける
lppmに つ き2を かける
01DOmに つ き5をかける
1∼ 10コ/mL(M PN)
多し
混合度により異なる
[%]
Cr
汚染度算出法
汚染水
75∼ 85
pH
汚染度が10以下の場合 は清浄海水 に近い。
汚染度が 10前後の場合は軽い汚染を受けている。
汚染度が10∼20の場合は汚染水。
汚染度が20以_Lの場合 は激 しく汚染されている。
く、例えば伊勢湾 の底泥には 6月 、9月 ともに103∼
の
104cellS/g程
度 の硫酸塩還元細菌が現存 してい る た
めである。夏季底層水の酸素が減少す ると内湾などで
はその期間のみイオウイオ ンカ`
検出される。その例 を
②
第 4図 に示す。大阪湾でも第 5図 に示す ように夏季
α
%⇒
広範囲にわたって底層水 の酸素が減少 し 汚染水腐
食 も発生 している。
第 2 表 汚 染水の分類
"
L 他 家汚染水
汚染水
卸鶴% 0“ 釦 狛 Ю O“ 飩“ ∝m0
で発生 している。最近では浚渫 に伴 うことが多 い。 こ
れは海底土には多量のイオウイオ ンを含むケースが多
ヽ
喘 日\︲
国。 ︻
ム “日\ 牒 饉 樺 像 ¨
あ
︲
この腐食 は海水中にイオウイオンが検出されたら必
ず発生するといって も過言ではない。
イオウイオ ンは、取水 に含まれているケースと取水
には含 まれていないカミ エ場内で自家製産す るケース
.0(第 2表
とがある
).0。前者の うちの継続的汚染水は
では見
られなくなった力
ヽ 一時汚染 は国内の各所
国内
[日]
第 4図 工 業臨海地帯 の内湾 にお ける夏季 の
一時汚染水 ∽
ジツボ付着 直下 の銅合金 の汚染 水腐食
銅合金管の管内流速が低下 したときに付着 したフジ
6.フ
水
{]竺
穏霧見奈
2.自
家
汚
染
水{1:':[棄
奈
後者 は大型付着生物の繁殖 している水路に水を停滞
させていた りすれば大型付着生物などが腐敗 して発生
。
の
す る。渥美 は 2日 以上の停滞 は推奨出来ないとして
いる。
予 め良好な鉄皮膜を形成 してお くと、いお うイオ ン
が流入 しても相当期間この腐食 を防 ぐことが出来る。
階 に汚染 海水環済 では、 …海洋生物などの付着 な
ど,こ
起因するデポ ジット ・アタックなどのエ ロー ジョ
の
ン ・コロー ジョンを受ける場合がある。
ゴ としている
カミ 蒔染 海ガCでは付着生物 の着生期幼生 も存在 せガ
海洋生物 の付着 も生 じない。
ツボはやがて死亡する。死亡 した時に、蓋 をしたま
ま、身肉部を閉 じこめていると、写真 2に 示 したよう
にフジツボ付着部 の輪郭に沿 って輸状 に粒界腐食 し、
輪状以外にもフジツボ底盤下で放射状あるいは中心部
の
で点状に粒界腐食 を生 じているケース もみられる 。
本腐食は筆者 らによる再現実験によってメカニズム
が解明されるとともに、海水中では銅合金にスキマ腐
0。
。
食が発生 しないことも確認 された
殻内の海水中の溶存酸素 によって身肉部の好気性分
解が次ポ のように生 じる。
(CH20)106 1NH3)16H3P04+13802→
106C02+122H20+16HN03+H3P04
…
・
(1)
蓋 を した ままであるため、新 しい海水 は入 って こな
いの で殻 内 の 海水 中 の溶存酸素 が消 費 し尽 くされ る
と、次 には 1)式で生成 した硝 酸 イオ ンの酸素 による好
支綱
酉己籠
彗ま
ほ 2004 5. 25
海水通水下の銅合金の生物腐食・(6)
´
①´
② ´´
夢
_瀬
③
200188
甲﹄¨日]鵬饉 樟像
雷﹄¨日]鵬饉やヽ
④ ⑤ ⑥ ⑦ ③ ⑨ ⑩
①
②
③
④
調査地点
⑤ ⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
調査地点
"。
第 5図 大 阪湾における夏季の溶存酸素。
気性分解が始 まる。
(CH20)1“ lNH3)16H3P04+84 8HN03→
106C02+42.4N2+148.4H20+16NH3+H3P04
¨
°
(2)
硝酸 イオンの酸素カツ肖費 し尽 されると、硫酸塩還元
細菌 の繁殖 に よって次式 の腐敗が発生 し、 イオウイオ
ンが生 じる。
(CH20)106(NH3)16H3P04+53S04み→
・
106C02+53S2+16NH3+106H20+H3P04 …
(3)
の
こ う して生 じたイオウイオ ンが第 6図 に示 す周殻
と底盤 との 間のかみ合せ部 の隙間か ら流 出 してフジツ
ボの輪郭 に沿 って輪状 に粒 界腐食 を発生 させ る。
第 6図 に示すように底盤は二層の板が隔壁によって
つながった構造を示すカミ 中心部の幼生が最初に付着
した部分や、放射状に一層構造の部分がみられ、それ
らの部分から金属面ヘイオウイオンが浸透 していって
粒界腐食を発生させる。
本腐食反応のうちのカソー ド反応は第 3図 に示す よ
うにフジツボ外側の銅合金管表面であり、そこには酸
素を含んだ新鮮な水が流れているため律速 とはならな
26 配 管技術 2∞ 4.5.
第 6図 フ ジツボの周殻 と底盤のかみ合わせ状態因
υヽ
。
他方アノー ド反応は身肉部を栄養源 とす るため有限
であ り、本腐食 によって穿孔に至ることはなく、せい
ぜい0.4mm止 りである。
このタイプの腐食 はヒドロ虫類や石灰質を持つ大型
付着生物の直下でも発生 してぃる。
海水通水下の銅合金の生物腐食 《7 )
7.フ ジツボ付着直下 での汚染水腐食部 の
工口 ン ョンー コロー ンヨン
6章 で述べた腐食部 において、フジツボの底盤が掃
除等 によって除去 されると、汚染水腐食部が直接流水
に暴露されることになり、腐食部は凹部を成 している
ため、流水 は凹部内で渦を作 り、剪断力が大 きくな
り、腐食生成物を剥 ぎ取 ってしまい、金属面が露出す
る力ヽ 金属面はアルミニウム黄銅な ら脱亜鉛 した銅そ
の ものであり、銅は前述のように大 きな腐食速度を示
すので、露出した脱亜鉛部で急速に腐食が進行 し、さ
らに凹部が深 くなると剪断力がさらに大 きくなり、腐
食はさらに加速され穿孔 に至る。本穿孔 も4章 の腐食
8.フ ジツボ付着直下 での汚染水腐食部 の
汚染水腐食
フジツボ付着直下での汚染水腐食 だけでは前述のと
お り穿孔 には至 らない力ヽ 底盤が脱離 した後夏季汚染
水が来襲すると、その汚染水 によって穿孔に至 った例
があ り、 この場合 スポンジボー ル洗浄 を実施 してお
り、非腐食部に硫化物 の付着 は見 られなかったが、凹
状 の腐食部 にはスポンジボール洗浄効果が及ばず腐食
生成物 の硫化亜鉛が付着 していた。
9.マ ンガン皮膜 が関与 する
と同 じ腐食形態を示すカミ 腐食孔 の周囲に 6章 の腐食
の痕跡を残 しているため、4章 の腐食 との識別は可能
、 工 口 ン ヨン コ ロ ン ヨン
マ ンガン皮膜 が関与す るエ ロー ジ ヨンーコロー ジ ヨ
(°
ン のマ ンガ ンの酸化 に、酸化剤が な くて もマ ンガ ン
である (写真 5)。
酸化細菌が働 いて いる可能性 が 濃厚 である。
10.好 気性細菌 と銅合 金
好気性細菌や好気性微生物によっては海水中の銅合
金の腐食電位は貴化せず、逆 にこれらによる生物皮膜
°
は久松 の pasdvauon沈 殿状態 として銅合金 の腐食
ω
を抑制 して くれる 事になる。
銅合金表面 日 ま酸化物皮膜 力形 成 され …不動態に
「
まなく、孤合金
夕 略 J的ので′
あって…沈殿皮膜 とも呼′
'る
月
まない。電位測定 ,こ
重 点をお いた″
′
蒻 Ⅷ 態 に′
内面酸洗浄後
ま腐食 による電位のグ と
られるカミ 海水申の釘合金に′
腐 食孔 の
周 りに粒
界腐 食が
み られ る
が殆 どな いこ とが特徴 で電位測定 は意味が な い。
ヒしていると、かつ て汚染水腐食 力場 っ
ω2y程 度貴イ
ま電位のみの漬1定は
たとわかるか ガ それ故 島暖劃 ′
せ式 分極抵抗の演1定を重視 し、る りは つて防餃
顔 を評価する亀 なお腐食 雪流は防食皮膜内のイオ ン
の
の拡散 によること力潮 告 されている 。
同上円内拡大 × 5
内面
外面
研 磨 の ま ま X10
内面
腐食孔 はなめ
らかで エ ロー
ン ヨン ーコロ
ー ジ ョンの特
徴 を示 してい
る
エ ッチ ング後 X100
写真 5 フ ジツボ付着直下で の汚染水腐食部 の
エ ロー ジ ョンーコロー ジ ョン
11.お わりに
海水通水下の銅合金の腐食はすべて出尽 くしたとさ
れており、実際に発生した腐食については、原因を明
確 にすることが可能で、 したがって対策もすぐに見付
かる力ヽ そのためには過去に経験 した事例の蓄積 とモ
5違わずに適用できる
デルコンデンサーでの知見 をF・
銅屋」を見つけることであ
Art(実 践知)を 有する 「
る。
電気
屋」とか 「
ナ
銅屋」 とかは、「
化ι
鉄屋」とか 「
「
屋」とかと同じ調子で使用 したに過ぎない。
<参 考文献 >
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報堂 (1991)
支利
ほ 2004.5. 27
酉己籠
讐才
・
海水通水下の銅合金の生物腐食・
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ω ヽ4icrObial COrrosiOn in Fossil‐
Fired Power Plants,EPRI CS‐
5495 (1987)
t3, Sourcebook fOr ⅣI,crobiologically ln■
uenced Corrosion in
Nuclear Power Plants EPRI(1988)
【
筆者紹介】
川辺允志 (昭和 8年 12月24日生 ・和歌山県出身)
欄 関西 テクノカンパニー
〒590‐
0105 大 阪府堺市竹城台
3-10-3
TEL :09o_71005090
FAX:072‐ "3-0841
(主なる業務歴及 び資格)
1956年 関西電力入社 、火力発 電
化学 を担 当。1986年栗 田工業入社。
1988年 栗 ロエ ンジニ ア リング入社。
電気化学会海生生物汚損対策懇談会主査、事務局長を
歴任。
工学博士、技術士 (衛生工学)。
(主なる執筆〉
「
復水器 ―理論 と実際 ―」、「
防食 と防汚の両立を目指 し
て」
、他。
株 式会社 関西 テ クノカンパ ニ ー
(代表者名〉 川 辺宣子
(本社住所〉
〒590‐
0105 大 阪府堺市竹城台3-10‐
3
TEL:072_297‐
0963 FAX:072-293_0841
(主要取引先〉
栗田エ ンジニアリング、 四 国総合研究所
(事業内容及び会社近況〉
海水環境 における銅合金の腐食原因調査おょび対策の立
案、モデルコンデ ンサーによる試験の企画、実施、評価。
熱交換器の汚れの調査 と対策の立案。
大型付着生物対策の立案、対策技術の評価試験。
細菌の調査、対策技術の評価識
――― ● 優 良技術 図書案内
● バ
イ プ ラ イ ン 立 国 の す す め
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28
酉己籠
雪l支綱に 20o4.5
づ くり大計 ―
(1)
東シベ リアのコビクタ天然ガス ・パイプラインの口中韓によるFS・・
H0402‐
05
〔解
説 〕
東 シベ リアの コビクタ天然 ガス0パイプラインの
口中韓 によるFS
エネルギー・ジャーナリスト 越 後屋 佐 助
Sasuke Echigoya
1. は じめに
東 シベ リアのコビクテインスコイエ ・ガス コンデ ン
セー ト・フイール ド 〔
以後 ・コビクタと呼ぶ〕から中
国 。韓国への天然ガス ・パイプライ ンの国際企業化調
査 (IFS)が 予定を大幅に遅れて、2003年 11月にや
っと口中韓間で完了 した。東 シベ リアか らの石油や天
然 ガス ・パ イプライ ン ・プロジェク トが脚光を浴びつ
つある、今、特にそのルー ト選定は地政学的、生態学
的見地からも大 きな注 目を集めている。
有識者達 は、本 プ ロジェク トに関する政府間合意
は、それほど簡単 な事ではない と主張 してお り、ま
た、生態学的な配慮から、 ロシア政府は既に、幾つか
のパ イプライ ン案 の うち、 コビクタ 。フイール ドから
第 1図 イ ルクーツク経済研究所の輸出パ イプライン ・ルー ト案
計画された天然ガス ・パ イプラインとほぼ同 じルー ト
を走る、2つ の石油パ イプライ ン ・プロジェク トを却
下 したと後ろ向 きの報道 も伝 えられている。 さらに、
世界最大の ロシアの天然 ガス企業 ・Gazpromは 、 こ
れまで この コビクタ 。パ イプライ ンに反対 してきたと
言う事実 もある。本稿はコビクタ 。フィール ドからナ
商業交渉に移行 し、3カ 国政府か らのプロジエク ト実
施承認 の取得 に移るものと予想 される。このIFS報 告
書完成式では、各国は、ガス販売 。購買の事前確認書
およびさらなる協力に関す るプロ トコールに調印 して
ホ トカおよび大慶 までの天然 ガス輸出の技術的可能に
ついて、最近完成 したばか りの口中韓 のIFSか ら概要
を報告するものである (第 1図 )。
いる。
2.コ ビクタ 。フィール ド開発 のプ レー ヤ ー達
イルクーツクに本社 を持つコビクタ開発 ライセ ンス
保 有企 業 の ル シ ア石油 、 中国石 油 天然気 総公 司
(CNPC)お よび韓国ガス公社 (KOGAS)は 、モスク
ワで、イルクーツク地域の コビクタ ・ガス コンデ ンセ
ー ト ・フィール ドの開発 と中国お よび韓国までの天然
ガス ・パ イプライ ンの建設に関す る国際企業化調査
(IFS)完 成 の調印式 を2003年 11月 に行 った。 この
IFS報 告書 によると、本プロジェクトは、技術的にも、
経済的にも可能となっている。次の段階では、各国が
IFSの 実行お よびその最終的承認 は、 これまでルシ
ア石油が コビクタ 。フィール ドの ライセンスを保有 し、
その後本 プロジェク トにBPが 参加 してか らの 6年 間
を通 じて10年以上 もペ ンデイングとなっていた。BP
が 株式 の半分 を有 してい るTNK‐BPは 、今 や、 ロシ
ア石油 の60%以 上の株式 を保有するまでにな ってい
る。事前 FSは 、 中国のCNPCと ロシアのSidancoが
1996年 3月 に完成 してい る。1999年 2月 に、 ルシア
石油 とCNPCは 、FSの 共同実施 の合意書 に調印 し、
KOGASは ヽ2000年 H月 にこのグループに参加 した。
IFSは 、2002年上半期に完了する予定であった力ヽ そ
の ドラフト作成作業 は、中国の引 き取 り量問題での立
場が不明確 であったことから遅延 してきた。
配管技術 2∞ 45.29
│
│
・
(2)
東シベ リアのコビクタ天然ガス ・パイプラインの口中韓によるF S ・
TNK(Tymen Oil)の
本 プロジェク トヘ の参加 に
引 き続 き、中国 との交渉 とFSの 推進が弾み とな り、
本 プロジェク トは、実現 に向けてのホームス トレッチ
ると、 コビクタ 。フィール ドの開発費 と中国および韓
国までの天 然 ガス ・パ イプライ ンの建設費は、合計
に入ったと考えられている。 しか し、その後、 ロシア
の誇 る天然 ガス独 占企業 ・Gazpromが コビクタ ・プ
170億 ドルに達するものである。 これよ り先にプロジ
ェク ト関係国は、そのプロジェク ト ・コス トを100億
ドル∼ 120億 ドル と見倣 していた。これまでに、夫 々
ロジェク トヘの関心表明 をし、そして中国と韓国が再
伐 コビクタ 。ガスの買取価格 に関 しての再交渉で粘
口頭ではある力ヽ 口中韓は、異なるプロジェク ト ・コ
ス トを発表 してきた。TNK―BPの ガス開発部門 ・副社
り腰 を示 し、決着がつかないままの調印式 となった経
緯がある。今回のIFSの 完成は、 コビクタ ・プロジェ
ク トヘ の 参加 の た め の、 よ り詳細 な検 討機会 を
長のAlastair Fergason氏は、投下資本金は150億 ド
ル と見積 もり、KOGASの 代表であるPek Mun Sok
氏は、180億 ドルに達すると語 っている。
IFSで の検討結果によると、中国とロシアの天然ガ
Gazpromに 与えるものであ り、そ してそれはプロジェ
ク トの参加者 にとって、東シベ リアでの天然 ガス ・パ
イプライン建設のルー トと手順に関する相互理解 を得
るためにプラスになるものと思われる。 しか し、ガス
価格に関す る交渉決裂が このまま継続すれ:よ 本 プロ
ジェクトの完成 は2013年 まで遅延するものと考えられ
ている。
第 2図 はロシアの天然 ガス資源 とそのプレーヤー達
ス消費量 は、予想 よりずっと低 い ものと分析されてい
る。これより先、 ルシア石油は、中国に年間245億 m3
のガスを販売する計画を立てた力ヽ 現在では、年間最
大天然 ガス消費量は、200億 m3と 修正 されている。 ロ
シアでの コビクタ 。ガスの最大消費量は、60億 m3と
を示 した。
想定 されているが、IFSに よれ│よ この数字は年間40
億m3を 超えることはない と下方修正されている。
口中韓 は、IFSで コビクタ 。フィール ドの埋 蔵量を
3.コ ビクタ 。フ ィール ドの埋 蔵量評価
IFSに より提起 された重要な課題は、プ ロジェク
ト ・コス トの高騰 である。 ロシア当局の記者発表に よ
よ り正確 に規定 したとしている力ヽ それより先 に埋蔵
量 に関す る ロシア国家委員会では、2003年 6月 に、
コビクタ 。フィール ドの天然ガス埋 蔵量を 2兆 1,300
億 m3と 発表 している。 ルシア石油 に雇われた米国の
To West Siberia
Deposits
Yakitsk
■● │
中
△
Exisung gas pipelines
Gas deposits
Vladivostok
第 2図 ロ シアの天然ガス資源 とその主要プレーヤー達
3)
東 シベ リアのコビクタ天然ガス ・パイプラインの口中韓によるF S ・〈
石油 コンサルタン トであるRyder Scott氏 もまたIFS
と並行 して、 コビクタ 。フイール ドの埋蔵量を評価 し
ている。 ルシア石油の副社長のPaul」effery氏は、こ
れまで発表された天然 ガス埋蔵量の評価 と量での大 き
な相違はないと見ている力ヽ 独立系 の批評家は、可採
埋 蔵量 の規模 は、発 表された数字 の半分の 1兆 m3と
分析 している (第 3図 )。
4.プ
ロジェク ト実現 の前提 となる生産分与法
(PSA)
PSAに 向けた 口中韓 での計画 もまた、変化 してい
る。 ロシアの最近のPSA法 の修正か ら、 ルシア石油
の幹部は、 コビクタ ・プロジェク トに関するPSA合 意
が結果的に不可能 となったと述べ てい る。IFSで は、
PSA法 が本プロジェク トにとって最 も好ましい もので
あると述べている力ヽ そのためのいかなる方策 もプロ
ジェク ト実行計画で規定されていない と指摘 されてい
る。CNPCの 代表のZhang Xin氏 がIFSの プレゼ ンテ
ー ションで、“
我 々は操業 に関す る税法やPSA法 を調
査 した。PSA法 は、本プロジェク トにとって好 ましい
ものであ り、逆に言え:よ それ無 しではプロジェク ト
"と
の実行は不可能 と思われる
語 っている。
韓国側 による、 ビョンタ ック市にLNGプ ラ ン トを
建設 し、そこからコビクタ ・ガスを日本や台湾へ再輸
出するとい う計画 は、 このIFSで は、全 く反映 されな
かった。事実、LNGプ ラン トをウラジオス トツクに建
設するとい う腹案 を持 つ Gazpromと 、それが ロシア
にとってより付加価値 を生み出すという理由からその
案を好 ましく思うロシア政府 との双方にとつて不本意
な結末 となるので、 この計画 を語るのは色 々な意味で
時期早尚であろう。一方、KOGASの 国際 プロジェク
ト事業部長のMyeong―Nam氏 は、韓国でのガス液化
のアイデアは、 これまでは、経済陛が成 り立たないと
考えられていると語 った。
5.天 然 ガス価格交渉 の決裂
IFSを 見る と、 ロシア領Jが、本 プロジエク トが直面
す る重要な問題 を解決することが出来なかったことが
分かる。その第一の問題 は、輸出ガス価格 の合意であ
る。IFS報 告書 では、価格 フォー ミュラは同意 された
ものの、実際上、中国が購入 しようとしている価格 と
ルシア石油が合意出来 るガス販売価格 には大 きな差が
あると記されている。 ルシア石油によるコビクタ 。ガ
スの販売価格 は、$5/MMBTUで
あり、CNPCが 購入
る金
るために
は
合意出来
額
す
$2.40/MMBTUで ある
と考えられている。韓国も、提示 されたガス価格 に反
対 している。中国におけるロシア通商代表部のSergei
“
Tsyplakov氏 によると、 ガス供給 とその コス ト問題
は、交渉の最 もホットな議題であ り、中国人は、 ロシ
アのガスを市場価格で買 うことを望んで い ない。ま
Structure of gas resOurces in East ttberia and Far East as of 01 01 2002.bln m3:
Sakha Republic
ELrenky
Yakuua)
Autonomous District
〈
■ A+B+Cl □
C2 圏
C3+Dl+D2
lrkutsk Oblast
elf
Other (without
Sakhalin洸
Taymyr Autonomous
District)
Source:Gazprom
第3図 東 シベリアの天然ガス輸出ポテンシャル
配管技術 2004.5.31
4)
〈
東 シベリアのコビクタ天然ガス ・パイプラインの口中韓によるF S ・・
た、ガス価格問題は、Gazpromも 参画 してい る、中
国の西気東輸 ガス ・パ イプラインについても依然交渉
"と
中の問題 と同 じものである
指摘 している。
これよ り先、 口中韓は、2003年 2月 に価格 は調整
されるとものと考えていた力ヽ 各国の意見が異なった
ために、その価格問題 はIFSの ス コープ外 とす ること
る地域ヘ シフ トし始めていると見る向きも多い (第1
表)。
第 1 表 口 中韓によるF S 内のパイプライン言
者元
パ ラメター
圧力 [MPa
ヾイプロ径 [mm]
が決定 された。
Fergason氏 によると、契約書中のガス価格に関す
給者が購入者 の条件 を受け入れて始めてなされ もの
"と
だ
語 っている。
ロシアの もう1つ注 目を集めている先行プロジェク
トの 日本へ天然ガスを供給するサハ リンー Iプ ロジェ
ク トの遅延は、中国内でのガス価格交渉で中国にさら
に強い立場 を取 らせているとGazprom関 係者は語 つ
ている。サハ リンーIの遅延に嫌気 をさしつつあ るプ
ロジェク ト ・オペ レー ターのExxon MObilは 、益 々、
その関心を中国市場 とルシア石油が販売 を計画 してい
Cazpromは 、 コビクタ ・ガス中に合有 されるヘ リウ
ムは、完全に生産可能であるとし、 ルシア石油 と意見
を異にしている。 ルシア石油 は、Gazpromの 計画 の
進捗 を遅 らせるよう努力 をしている力ヽ その後持たれ
た幾つかの会談で も両者はなお同プロジェク ト開発 の
共通基盤を見出せないでいる。 第 4図 に、 ルシア石油
の 想 定天然 ガス 輸 出 ル ー トを、 そ して 第 5図 に
Gazpromの 想定するルー トを示 した。
︷ ・
■﹂ 一
●一
ご
釧i″
∼
_等
.1ユ
算―
l
Exisung gas pipelines
hbLNGRmt
WI:黒
第 4図 ル シア石油の想定する天然ガス輸出ルー ト
32 配 管技術 2∞ 4.5.
939
2× 20MW
に関す る見通 しが相違す る、ルシア石油 とGazprom
の関係 で ある。Gazpromは 、 ロシア東部 の消費者 と
ガス輸出用 の主要 ガス源 となるのはコビクタ 。フィー
ル ドよ りもサハ 共和国のヤクー チ ャと考えて いる。
●
Д
24× 25//11ヽ41V
6.虎 視l鬼々 と狙 うGazprom
2番 目の未解決の問題 は、 ロシア東部でのガス開発
YakutSk
岬
韓国
X70(UOま たはスパ イラル鋼管)
AP1 5L‐
ラインパイプ
d Far East:
G a s T r a n s p o r t a t i o n S y s t e mi boefr iEaa satn〔
RUSIA Petroleum Sllareholder's concept
響
中国
1420///1016//813
コンプ レッサ ー 基 地 48× 16MIV
る条項は、 これから6ケ 月以内に作成 される予定であ
る。韓国の貿易産業エネルギー省 。天然ガス部門の副
“
大臣のLu Sung Vo氏 はヽ ガス価格 と中国 と韓国ヘ
の天然 ガス ・パ イプライ ン ・ルー トに関する意見不一
致により、 コビクタか らのガス輸入 は、IFSに 記述 さ
れた2008年 か ら2013年 に遅延 され る可能性が強い。
2010年 まで中国は、恐 らく、東シベ リアからの天然 ガ
スの輸入 ニーズを持たないだろうし、ガス購入 は、供
ロシア
設計流量
│ │
‐
5)
〈
東シベ リアのコビクタ天然ガス ・パイプライ ンの口中韓によるFS・・
Cas Transportation System of East Siberia and Far East:
Gazprom's concept
h
1戚
象
ご
To vrest$bria
Deposits
Planned gas
A
Ⅵ
s
e
n
i
¨
︲
e
p
i
p
爾▲
Existing gas
Cas deposits
Japan
畿
To Tokyo
LNC Plant
第 5図 Gazpromの
想定する天然ガス輸出ルー ト
り、それは同時にこのプロジェク トが直面する問題を
良 く理解 させることにも繋が ると見 られている。以前
に、Gazpromの 幹部 は、IFSが完 了 しなければ同プロ
ジェク トに参加す る意思を表明 しないと語 っている。
しか しGazpromは 、 まず、東 シベ リアとヤクーチ
ャでのガス輸送お よび生産プロジェク トに関する残 り
の 評価 を完 了 し、 さ らに また 、 ヤ ク ー チ ャ の
Chayandinskoyeフ イール ドとコビクタ 。フイール ド
に隣接する鉱区のライセンス取得 を トライするものと
思われる。このような作業を通 じ、結局は、 ロシアの
第 2の 国家 と呼ばれるGazpromが 本プロジェク トに
関 しても、最善の立場を維持す る方策を確立す るもの
と考え られている。
第 6図 コ ビクタ ・ガス田から中国、韓国への
天然ガス ・パイプライン ・ルー ト図
第 6図 は、 このIFSで 発表された コビクタ天然 ガス
輸出パ イプライ ン ・ルー ト案である。
IFSの 完成 は、Gazpromに とって、このプロジェク
トヘ の参加 を促進する色 々な機会を提供す ることにな
フ.プ ロ ジェク ト実現 までの長 い道
IFSの 完成は、正にコビクタ ・プロジェク トの実行
に向けた最初の通過点 と言える。 ルシア石油は、今、
そのプロジェク トがGazpromの 提案 よりも好 ましい
ことを証明 し、 ガス供給に関す る政府保証を速やかに
得 る必要が あ る。Tsyplakov氏 が指摘 しているよう
に、Angarsk∼ 大慶石油パ イプライ ンの実現 のため
に、中国側は天然 ガス ・パイプライ ンでの全面的な保
・
障 を要求 しつつある。 コビクタ プロジェク トの代替
案 となる東シベ リアか らのガス輸送方法 の検討力ヽ ま
だ始 まっていないことを考えると、IFSの 中で示 され
配管技術 2∞ 4.5.33
東 シベ リアの コビクタ天然ガス ・パイプラインの口中韓によるF S ・〈6 )
た実施条件は、楽観的過 ぎると考えられている。それ
は、特に、 コビクタ ・プロジェク ト実施が遅れれば遅
分岐ステー ションがこのルー トに沿って設置 される予
れるほどGazpromに とっては好都合 とな り、それは
Chayandinskoyeフ イール ドのライセ ンス取得 に続 き、
ルシア石油 と同じ市場へ輸出す るためのガスを左右 さ
地上サテライ ト通信基地とともに光ファイバー通信
システムとSCADAシ ステムカシヾイプライン ・ルー ト
に沿 って設置される予定である。 口中韓の作業チーム
せることが出来ることになる。
しか しTNK―BPの 関係者は、 この問題 は解決出来
るだろうと楽観視 している。
“
今後、大 きな困難が待 ち構 えてい ようが、それは
解決出来るだろう。TNK―BPお よびこのような複雑な
プロジェク トを実施 した多 くの経験 を有する我 々西側
パ ー トナーで あるBPは 、その成功 を信 じ、そ して共
は、 そのIFS報 告書で、パ イプラインはアジア最長 と
なり、世界でも最長の部類になると述べている。
これ まで、 口中韓は北朝鮮を通 るルー トを技術的お
にこのプロジェク トを成功 させ、実 り多 きものとする
"と
ことが出来ると期待 している
TNK―BPの 生産操
業お よび技術総括取締役 のViktor Vekselberg氏が
IFSの プレゼンテー ションの席で語 っている。
8.lFSの
定である。
よび経済的に不適当と認識 してきたカミ このルー ト問
題の最終結論は、 口中韓の政府により決定されるとし
ている。
8-3 天
然ガス市場
口中韓の市場評価に関するIFS報 告によると、 この
コビクタ 。ガスは、最大消費量 は2012年 に40億 m3を
記録すると想定 され、イルクー ック地方、チ タ地方、
そしてブリヤー ト共和国といったロシアの地域に2006
年 ∼ 2008年 に供給開始するものとなっている。発電
用 のガスは、27億 m3、 石油化学向けに 6億 m3、 暖房
結果概要
然ガス田
1987年にイルクーック地域で発見 された コビクタ 。
ガス コンデ ンセー ト ・フィール ドは、イルクー ツク市
用に 5億 m3、 その他産業用に 2億 m3、 そして 1億 m3
が民生用に消費 される予定である。本 プロジェク トの
対象 となるエネルギー市場 の伸 びは、年率 2.5∼3.5%
の北東の9,000km2の地域をカバー し、バイカル湖の西
となると想定されている。
中国北東部は、 コビクタ 。ガス を2008年 か ら受け
8-1 天
方 100kmに 位置 し、海抜 380mか ら1,503mにある極
端な大陸性気候の鉱 区である。
地震探査 クルーは、同フイール ドで2,5%kmの 探査
を行 い、48箇 所 の井戸 を掘削 している。貯蔵層 は、
地下3,000mに存在する6,000億年以前の先 カンブリア
紀地層にある。井戸 の平均流量は、35万 ∼ 50万 m3/
日である。ガス埋 蔵量 は、2兆 m3(TcM)で
、推定
入れる予定 で、その最大供給量は、120億 m3と 想定
されてい る。中国北部 は、 コビクタ 。ガス を2013年
から受け入 れる予定で、最大供給量は、80億 m3と な
っている。消費は、都市部 に集中 し、発電用に49億
m3、 産業用に36億 m3、 化学用 に31億 m3の 合計83億
m3と なっている。
IFSで は、天然 ガスは、長期間にわたって使用 され、
究極可採埋蔵量は、1兆 m3で ぁる。
同フィール ドは、3鉱 区に分かれている。同フィー
ル ドの開発計画は、段階的生産が求められてお り、中
央 フィール ド地帯は、4∼ 7区 か らなっている。平均
利用者から歓迎されるもの と指摘 している。経済成長
と人口増加から、これらの地域 では、将来 の大 きな需
深度3,000mの400∼ 500井が掘削され 7∼ 9基 の総
合 ガス処理 プラントが設置される予定である。
8-2 輸
出パイプライン
ロ中韓により提案 されたパ イプライ ン ・ルー トは、
バ イカル湖の南端 に沿 つて、イルクー ックを経由 し、
始する予定で、最大供給量 はlCXlttm3でぁる。IFSに
よると、韓国のガス需要予測か ら、 このコビクタ 。ガ
スの段階的開発による受入 と、 さらにLNG輸 入によ
満州里、大慶、ハ ルビン、藩陽、大連を通過 し、韓国
へ いたるルー トで、延長は、4,887kmで ある。 コビク
タ∼満州里区間のパ イプライン延長は、1,943kmで 、
満州∼藩陽間は、1,427km、藩陽∼北京間が649km、
そして黄海を横断する大連∼ ピョンタック間が 536km
である。
20基 の コンプレッサー ・ステー ションと12箇所 の
34 配 管技術 20114.5.
要 の伸 びに繋がるものと考えられる。
韓国は、 コビクタ ・ガスを2008年 に受け入れを開
る市場を前提 としている。 日標市場は、発電部門、産
業用である。競合燃料は、重油 と石炭 としている。
IFSは 、 ロシアと中国の市場 は、今既にコビクタ ・
ガスを受け入れる準備が出来てお り、韓国は、2008年
までに受け入れ準備が完了すると強調 している。口中
韓 は、 日標市場 は、ガス ・パイプライ ンの建設後 9年
にその最大消費量に達 し、ガス利用を促進す る国内法
によりさらに活気付けられると見込んでいる。
「
・
7)
〈
東シベリアのコビクタ天然ガス・パイプラインの口中韓によるFS・
2003年 11月 14日に調印された暫定 ガス取引合意書
によると、30年 間にわたつて中国へ 6,000億m3の ガス
を供給 し、韓国へ 最 大 3,000億m3の ガスを供給す る
締結 を推奨 して い る。 このスキー ムによると、資金調
達 を国際機 関や コマ ー シャル銀 行 を含 むプ ロ ジェク
ト ・フ ァイナ ンスで想定 して い る。IFSは 、税制 スキ
こと力将己されている。その供給 の特殊条件 と契約締結
ー ム は、安定 した ものが不 可欠で、 プ ロジェク トの実
は、商業上の交渉締結に続 き、政府当局により実施さ
れる予定である。 ロシアか ら中国へ のガス輸出地点
は、 ロシアと中国国境 の満州里 とされている。最終的
援 の拡大が望 まれ るとして いる。
に、ここでのガス価格が規定 され
譲 される予定である。
ガスの所有権が委
ロジェク ト推進組織
IFSで は、 口中韓 での機能毎に分離 されたプロジェ
8-4 プ
行可能性 を内外 にPRす るために も国際投 資 と政府支
8-5 今 後のスケジュール
2004年 の第一 四半期中に、 口中韓 は、IFS内 容 の
政府承認 を得 る予定で、詳細 エ ンジエ アリングと設
計、 ガス取引合意作業、政府間合意、 ファイナンス ・
ク ト推進組織案 として、 ロシアの生産企業、 口中韓 で
の輸送企業 とマーケッテイング企業 を設立すべ きであ
スキームの設定に取 り組む予定である。 口中韓は、 こ
れ ら全 ての課題を2005年第二 四半期 の中旬 までに解
決する予定である。その後、パイプラインの建設 と開
ると提案 している。
IFSで は、本 プロジェク トの円滑推進 のために、
発用井戸 の掘削が実施 され、2008年第二 四半期中に
完了す る予定である。
FSA、 企業間長期 ガス取引、そ して政府間合意書 の
螂
紗
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S
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・
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●. . . . . . . . . .
Sakhalin OIshore
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n c e s m e a s u r e d o n t h e b a s e m a p f0 o 1 / 1 , 0 0 0 , ∞
・
第 7 図 サ ハ リン∼ロシア∼北朝鮮∼韓国∼北九州天然ガス パイプライン構想
ー
エコ
エ
アンド ネルギ 社)
( 2 0 0 3 年1 月、
配管技術 2PX14 5.35
│
(8)
東 シベ リアの コビクタ天然ガス ・パイプラインの口中韓によるF S ・・
9。 おわ りに
2003年 11月に完了 した 口中韓による コビクタ天然
ガス ・フイール ドの開発 とそれに続 く輸出パ イプライ
ンの建設に関す るIFSの 概要を紹介 した。
本プロジェク トが実際に着工 されるまでには、まだ
幾つかの解決されねばならない問題があるカミ Vヽ
ずれ
にせよ、1ヒ
東アジア ・パ イプライン 。ネ ッ トワーク実
一
現の第 歩 として、是非、早急な着工を願 うものであ
る。
翻 ってわが 国を見る と、ExxOnMobilと 日本 の
Sodecoや石油資源開狗掬を中心 に調査検討を継続 し
てい るサハ リンー Iプ ロジェク トの 日本へ の天然 ガ
ス ・パ イプラインの実現性 も疑わしい と言う専門家 も
出てきた。 日本のあるコンサルタン トは、 日本にパ イ
プライ ンを持って くるよ りも、中国、韓国へ まず輸出
すべ きと国内外で講演 を行ってい る (第 7図 参照)。
サハ リンからの天然ガス ・パイプライ ンの早期着工を
世界は、 日本 の実力拝見と、秘かに注 目している。温
暖化 ガス排出削減 と輸入エネルギー比率の低減を錦の
御旗にした原発 中心 の電力業界の発想 も次第に迫力が
無 くな りつつ ある。また、20"年 ∼ 2030年 頃か ら世
界が突入す ると考えられる水素時代へ のスムースな移
行のために、熱心 にその対応を検討 している企業 もあ
れ:よ 天然ガスのパ イプライ ン導入な どは、経済停滞
による電力需要の下落から、今、全 く関心がないと豪
語す る関係者 もいる。クリー ン ・エネルギーによる持
続可能社会へ時代 は大 きく移行 しつつある現在、産官
や既得権益に固執 しない、 日本の真 のエネルギー問題
の舵取 り役が待望 される。
(2004年1月 )
【
筆者紹介】
越後屋佐助
エネルギー ・ジャーナリス ト
あ招たのむ意見 狸お固かせください
ふだん思 っていること、感 じていること、または情報交換等 あ なたのご意見なんでも結構ですので当社へお寄
せ ください。
◎内容
●本誌への意見
●情報の呼掛け、困っていること
●経験者から若い人への注文、逆 に上司への提言
●売 りたい、買いたい、譲る、貸 して下 さい
●テクノ俳句 テ クノ川柳 短 歌、写真 (特に技術に関わりな くとも結構です)
◎掲載料
●無料…尚、掲載採用文 には薄謝進呈致 します。
◎署名原稿 または匿名希望 も受付けます。
●執筆文字数 は200字前後 として下 さい。
パ ソコン、ワープロ等で作成 し、テキス トファイルにてお送 り下 さい。
◎締切
●毎月末 日です。順次掲載 を致 します。
man又 は、FAX・ 郵送で本誌編集部宛お寄せ下 さい。
◎住所、TELな どご記入の上、c―
■問合わせ先/日 本工業出版 齢 編 集部まで
〒113-8610 東京都文京区本駒込6-3-26 TEL:03-3944 1181 FAX:03‐ 3944‐
6826
`
c―
mail : infoonikkO―
pb cO.jp
36 配 管技術 20045
・
ガス事業法改IEと今後の課題・
《1)
H0402‐06
0385‐9894/04/Y500論
〔解
tl」CtS
説〕
ガス事業法改正 と今後 の課題
慶應義塾大学 井 手 秀 樹
Hideki lde
1. は じめに
ガス事業 は電気事業 と同様、これまでの制度改正に
よ り、小売の部分自由化等 を通 じ、一定の効率化 の成
果 がみ られた。2000年 の制度改正時の 3年 後 の見直
し条項、及 び2002年 6月 に成立、施行 されたエネル
ギー政策基本法では、供給 システム改革による 「
安定
供給 の確保」、「
市場原理 の活
環境 へ の適合」及び 「
いる
めることが
。これらの
用」を進
基本方針 となって
下でのガスの供給に関す る需要家選択肢 の拡大を図る
ため、資源エネルギー庁電力 ・ガス事業部長の私的研
ガス市場整備基本問題研究会」 の報告を
究会である 「
受けて、2002年 9月 に都市熱エネルギー部会がスター
トし、翌2003年 1月 に 「
今後 の望 ましいガス事業制
度の骨格 について」をと りまとめ、パ ブリックコメン
トの内容を踏まえて最終案がまとめられた。
骨格は以下の点である。
① 効 率的なガス供給 イ ンフラとその有効利用の
促進
② ガ スの需要家の選択肢 の拡大
③ 公 正な市場制度の整備 と制度の適正な運用
以上がわが国における本格的な天然 ガス市場形成のた
めのガス事業制度改革の基本視点である。 これ までの
改正が経営の 自主性 の尊重 と行政の関与の必要最小限
化 に重点を置いて きたのに対 し、ネットワー ク規制 の
強化なa必 要な部分については規制が強化 されたこ
とや、エネルギー間競合が強まるなか、エネルギー市
場 の公正な競争環境 の整備 を行政 の役割 として明確に
した点カツ主目される。
織 ・制度設計等小委員会 の下に設置 された託送制度
ワーキ ング ・グループ、適正取ワ│ワーキ ング ・グルー
プで議論 された。その議論 を踏 まえて、昨年 12月 に
は小委員会で、報告書 「
今後の望 ましいガス事業制度
の詳細設計 について」が取 りま とめ られた。以下で
は、改正ガス事業法 の内容 と詳細設計 の 内容を紹介
し、併せて主な争点を紹介 してお こう。
改正 ガス事業法の基本的視点は、エネルギーセキュ
リテイに優 れ、環境負荷の低 い天然ガス利用の拡大
(天然 ガスシフ ト)、効率的なガス供給体制の実現 (高
コス ト構造の是正)で あり、主な内容 は、以下の通 り
である。
ガス利用者の選択肢 の一層の拡大〕の観点から、
〔
① 現 在、年間契約 ガス使用量 loo万 m3以 上 とな
っている小売 自由化 の範囲 を50万 m3以 上の需要
家 まで拡大する。2007年 度か らは10万 m3以 上に
拡大。10万 m3未 満 の家庭用 。小規模業務用需要
段階的拡大 の検
家 までの 自由化範囲の拡大は、「
ー
エ
証等 を行 いつつ、他 の ネルギ 分野における自
由化 の進展状況等にも留意 しつつ、時期を逸する
ことな く結論を得 る」 ことになっている (第 1図
参照)。
② ガ ス市場 の活性化を図 るために、 これまで許可
制であった大口供給を、変更命令付 きの届出制に
移行す る。
③ 卸 供給用ガスの託送供給を義務化すると共に、
卸供給に係る規制について現行の届出制を廃止す
る。
〔
効率 的なガス供給基盤 の整備 とその有効利用 の促
2.改 正 の 内容
昨年 6月 国会で改正 ガス事業法 が成立 し、本年 4
月 1日 から施行 される。 これに伴 う政省令等 の改正 の
議論力ヽ 昨年 7月 から都市熱エネルギー部会の下部組
進〕の観点から、
④ 導 管網の整備促進 (適切なインセンテイブの付
与)。導管網の効率的な整備 とそのネットワーク
化を図るため、導管建設を円滑にするための環境
配管技術 2∞ 4.5.37
。
ガス事業法改正 と今後の課題・
(2)
販売量
比率
量算
熱換
契約年間
使用量
件数
主な需要家の例
現在
100万 m3
40%
46p47
大規模工場、製造業、
大規模商業施設、大学病院
2004年度
50万 m3
44
23,023
大規模病院、シティホ
テル、化学 ・金属工業等
2007年度
10万m3
時期未定
4,605
5.663
1万m3
42.168
家庭用
18,753,412
病院、 ビジネスホテル、
中小] 1 場、ビル、外食産業、
物販店
* 件 数は需要家
戸数上位l o 社計
第 1図 ガ ス自由化範囲拡大スケジュール
整備を行う。
⑤ わ が国の導管網が十分に整備されていないこと
から、一般ガス事業者以外の者が設置する導管網
3.ガ ス事業制度 の詳 細設計
以上の ような法改正によって新たに導入された措置
について、一般 ガス事業者等 の事業実態や経営規模等
を活用 してガス取引を活性化させるため、国産天
然ガス事業者や電気事業者などガス供給用の導管
を勘案 した実効性ある仕組みを整備することが必要 と
なる。その具体的な内容や運用方針を可能な限 り具体
的にかつ明確にしてい くことは、需要家利益あるいは
を保有または運営する事業者を、新たに 「
ガス導
管事業者」 として位置付ける。ガス導管事業を営
もうとするときは事前の届出を必要とする。
⑥ 託 送供給義務 を現在の指定一般 ガス事業者
(東京 ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの 4
社)か らすべての一般 ガス事業者へ拡大。 またガ
ス導管事業者 も一定の基準を満たす者については
託送供給義務 を課す。託送約款作成対象事 業者
の範囲も拡大する。
⑦ 導 管ネットヮーク部門の公平性 ・透明性につい
て市場参加者の信頼を確保 し、導管ネットワーク
部 門が供給信頼度 の維持に不可欠な調整機能を
確保 し得 るよ う、導管ネ ットヮー ク部門につい
て、アクセス情報等の 目的外利用の禁止、他部門
との内部補助 を防止するための会計分離及 びその
公表を義務付ける。
ガス市場に参画する者の予見可能性を確保す る上にお
いても、また法運用の適正性や効率性 を担保する意味
でも極めて重要である。そこで、前述のように、制度
設計等小委員会で検 討 を重ね、報告書案 「
今後 の望
ましいガス事業制度 の詳細設計について」に対するパ
ブリックコメントを受けて、報告書が取 りまとめられ
た。詳細設計に関する主な検討事項は、以下の通 りで
ある。
(1)託 送供給料金に係る算定方法
(2)託 送供給等に関する会計整理等の方法
(3)託 送供給にかかる禁止行為等の具体的な内容
に)新 規導管建設に関す る利益阻害性判断基準
(5)簡 易 ガス事業 の 一 般 ガス事業へ の転換等 に
関する許可基準
これ らの審議結果を受けて、その内容は政省令や通
達等で担保 されることになる。具体的な内容を紹介 し
38 配 管技術 2004.5.
F
ガス事業法改正と今後の課題 ・
〈3)
ておこう。
① 「託送供給業務及び これに関連す る業務 に関す
る会 計整理等」 について、一般 ガス事業者 ・ガ
ス導管事業者 は原則 として、大口部門別収支 と
同様、託送業務部門の会計 を別立てで計算 し、
収支計算書等 を作成す る。また作成 したすべての
資料 は公表す ることを原則 とす る。
② 託 送供給料金 に対す る行政の対応 として、行政
による立入検査の実施等、監視 を強化 し、料金算
定時 の事業報酬額 と託送供給関連業務利益 との
乖離が、3年 程度にわた り継続的に発生 している
場合、かつ翌年 度 の託送供給料金の再計算を行
わない合理的な理由が存在 しない場合 は、監視 の
結果を踏まえて、託送料金が不適切 と認められる
ときは、変更命令 を発動する。
、つ まり既存の一般 ガ
③ 「託送料金の内外無差別」
ス事業者、 ガス 導管事業者 が 自 ら行 う大 口供
給 ・卸供給 の場合 と、新規参入者 に提示す る託
送料金 ・条件 が同 じでなければならないとい う点
に関して、 これを担保するために、
(a)す べての大回需要 ・卸需要について、個 々の
託送相当料金額の明細 を月 ごとに整理 した書類
を社内に備え置 く。紛争等が生 じ、行政による
調査が行なわれる場合には速やかにこれらの書
類 を提出する。
③ 需 要家 の了解が得 られた場合、新規参入者
の求 めに応 じて個別大口需要 の託送料金、需
要実績等 を速やかに提供す ることが望 ましい。
④ 託 送供給に係る禁止行為を具体的に定める。 こ
の内容はガス事業法 22条 4及 び 「ガスの適正取
引に関す るガイ ドライ ン」 の中でも記述 される。
具体的には、託送供給業務に関 して知 り得 た供給
条件、使用者の需要実績等 の情報を、他 のガス供
給事業者 に対抗するため自社 の営業活動等 のため
に利用又は提供することを禁止する 「
情報の目的
つい
ガス
て、特定の
の
。託送業務に
外利用 禁止」
供給事業者に対 し、不当に優先的な取 り扱 いをす
る、 もしくは利益 を与えるなどの行為を禁止す る
(差別的な取 り扱 いの禁止)。
⑤ 一 般 ガス事業者 の供給区域内の顧客に対 して新
一
規参入者である 「ガス導管事業者」力ヽ 般 ガス
事業者の導管を利用する (託送)か 、 ガス導管事
業者が 自 ら導管 を敷設す るか、言 い換 えれば、
「
新規 の導管設置 による利益阻害性判断基準」 に
ついては、第 1表 のように、一般 ガス事業者 によ
LNG基
る本支管等延伸 が必要な場合、および 「
イプライ
地の近傍」については、新規参入者カシ`
ンを自由に敷設 で きる (第 2図 参照)。ただ し、
第 1表 の判断基準 は施行後 3年 をめどに検証する
こととなっている。
第 1表 新 規の導管設置による利益阻害性判断基準
一般 ガス事業者供給区域内の顧客に対 し、新規参入者はどのような
方法でガスを供給 できるか
一般ガス事業者 による本支管等
の延伸、増強が必要か否か
既存本支管等の延仲、
増強が必要なし
新規参入者の選択肢
一般 ガス事業者の導管を利用
(=託 送)
増 強が必要
延伸が必要
LNG基 地近傍
(公道 ・河川 ・港湾等の地形に
よつて区切 られた地域内)
パ イプライ ン敷設可
新規導管建設
不可地域需要家
新規導管建設
不可地域
需要家
新規参入者のL N G 基 地
第 2図 LNG基
地近傍の導管建設
配管技術 2004.5.39
4)
ガス事業法改正 と今後の課題・く
⑥ そ の他、託送供給に係る正当な拒否理由の明確
化、託送供給可能量などに関する情報開示、パイ
プライン投資のインセンティブを確保するための
特例措置として、5年 の時限措置として、「
託送
。
。
供給約款の作成 届出 公表義務の猶予」ある
(a)ガ ス供給が行われて い ない原則大字単位 の
地区
(b)当 該地区に具体的な普及見通 しがない
(C)当 該地区に中 。低圧導管が敷設 されていない
いは 「
託送供給に係る事業報酬率の高めの設定」
を選択。
⑦ 簡 易 ガス事業者が顧客に天然ガスを供給できる
とい う 「
天然ガスマル簡」は、2003年 2月 の都
、すな
中間とりまとめ」
市熱エネルギ_部 会の 「
わち
(a)簡 易 ガス事業の原料選択を拡大 し、天然 ガ
ス利用を可能にするハ この場合、事業規模 に
係 らず、現行一般 ガス事業者 として整理する。
③ 未 普及供給区域、未普及供給地点に係る現
行の運用の見直し
という結論を受けて、簡易ガス事業者は、一般 ガ
ス事業の開始許可を受ければ天然ガス供給が可能
になる。
この 「
天然ガスマル簡」により、既存の一般 ガ
ス事業者の供給区域内であって も、新たに一般 ガ
ス事業を開始す ることができるようになる。今回
の詳細設計で、既存一般 ガス事業者の区域内での
新規一般 ガス事業の許可基準については、第 2表
のように策定された。
また簡易ガス事業が一般 ガス事業 として新 たに
許可を受ける場合 には、簡易 ガス事業の料金算定
の基礎 となる原価 を一部採用することも可能 とな
った。
③ 上 記 の許可基準 と並 行 して、未普及区域等 の
見直 しを2004年 4月 末までに行 う。見直 しの対
象 としては、
(d)周 辺を普及地域に囲まれた地区
でないこと。
4.今 後 のガス事業改革 の課題
2003年 1月 に取 りまとめられた前述 の報告書 「
今
後の望 ましいガス事業制度の骨格について」はあ くま
で制度改革の方向性を示 した過渡的なものであり、最
終到達点ではない。 これまで法改正の内容、詳細設計
について概略を述べ た力ヽ 最後に今後 のガス事業改革
の課題について、い くつか述 べ ておこう。
第 1に 、 ガス 自由化 の範囲は、2007年 に年間契約
ガス使用量 10万 m3以 上 まで自由化範囲は拡大 される
力ヽ 10万 m3未 満 の 自由化拡大に向けての検討時期 と
内容が次のステップとなる。その検討の中でLPガ ス
制度改革 の方向性 も当然、含 まれることになる。家庭
用や小規模業務用については、現段階では2010年 前
後まで制度上の変化はない と考えられる。家庭用 自由
化は当面なくなったことで地方 ガス会社を含め、緊張
感が緩んだことは確かだろう。 しか し、電力の自由化
やそれに伴 う分散型電源を活用 した小規模なエネルギ
ー供給事業者 の電力小売市場での拡大、あるいはオー
ル電化攻勢、加えて諸外国におけるガス家庭用 自由化
などの影響 によ り、ガス自由化範囲の拡大のスピー ド
は早 まると予想 される。また、電力 ・ガス事業 とも選
択約款制度 (割引料金 メニュー)を 充実 。強化を図る
と考えられ、LP、 石油 を含め、エ ネルギー間の競争
は一層、激 しくなるだろう。
第 2に 、今回の法改正で 「ガス導管事業」が法的に
第 2表 簡 易 ガス事業の一般 ガス事業転換へ の許可基準 (簡易ガス事業の一般ガス事業への転換 を許可するか否力う
想定されるケース
既存 マル簡が自らの需要家に
天然ガスを供給する場合
既存一般ガス事業者の供給区域内の
新規需要家に、天然ガスを供給する場合
行政の対応
既存一般ガス事業者の供給区域内
既存 一般ガス事業者の供給区域外
原則許可
(新たに設定 しようとする供給区域内に既存一
般 ガス事業者が現に供給 している需要家ある
いは供給が確実な需要家が含 まれるなどの場
合を除く)
許可
(供給区域外の新規一般ガス事業者の
開始許可と同じ)
新たに策定する参入基準を満たせば許可
●現行ガス事業法 5条 に適合
●既存事業者の確実な需要等が含 まれない
●既存事業者の直着需要家等が含まれないこと
●料金が既存事業者よりも安いこと等、設定された供給区域及び
その周辺需要家の利益を阻害 しないこと
既存一般ガス事業者の需要家の切 り替え
不許可
・
〈5)
ガス事業法改正と今後の課題・
設できる範囲の検討が課題 となる。
第 4に 、託送料金の内外無差別を確保す ることが、
位置付け られた ことで、 ガス導管事業者 の構造分離、
いわゆるアンバ ン ドリングにつ ながるのではないかと
い う懸念が指摘 されている。 この点に関 して、ガス発
生から販売までの一貫 した供給体制の もの もとで、供
新規参入を促進す る上で重要である。 この点 に関 し
て、「ガス会社 のネットワー ク利用料金 と参入事業者
の料金 とが差別的ではないか」 とい う新規参入者か ら
給区域内の需要 に応 じた供給義務 を全 うすることが重
一
要 と考 えられてお り、 ガス導管事業の創設は現行 般
ガス事業者のアンバ ン ドリングにつ ながるものではな
い。 しか し、今後、グローバル化 した経済を背景 とし
てエネルギー分野に対する国際的な規告1緩和要請が一
の指摘 がある。 こうした批半Uに対 して、公平性 をtll度
一
的に担保す る必要がある。今回の詳細設計で、 般 ガ
ス事業者が個 々の需要の託送相当料金額 の明細を準備
し、必要な場合には行政にこれ らの書類 を提供す るな
層強まると予想 される。
加 えて、 ガス事業法 22条 4の 託送供給 に係 る禁止
行為、あ るいは現在予定 されて いる独 占禁上法 の改
どの措置がとられている。
しか し、 こ う した措置では託送供給料 金 の非差別
性、あるいは導管部門収入から販売部門への内部相互
不可欠施設」を
正、具体的にはパ イプラインとい う 「
る
ヽ
保有、運営す 事業者力 新規参入者 に対 して参入阻
補助 とい う疑間 は払拭できない。電気事業 との整合l■
を踏まえ、 ガス会社が需要家への請求書または領収書
一
に託送相当利用額 を記載す るの も事態を改善す る つ
止行為を行 った場合、独 占禁止法違反として、排除措
置 をとることが改正案に盛 り込まれ ようとしている。
の方法 だと考える。
最後に、 ここ数年 の 自由化進展につれて、都市 ガス
事業の電力市場への参入、電力会社 のガス事業への参
入が激 しくなってきている。家庭用 コジェネ、燃料電
ー
池などの技術開発 の進展等、エネルギ 関係企業の競
争が激化す ると予想 される。 ガス事業者 としても、エ
不可欠施設の所有者の競争制限行為が度重なるようで
あれiム 構造分離 とい う措置 も残 されている。
また、 ガスのLNG基 地については、不可欠施設で
はないと考え られているが、LNGの 卸供給、小売段
階での競争を制限する目的で、新規参入者 の基地への
ネルギー市場全体 を視野に入れた総合力を高めてい く
ことが重要である。その実現 のためには、 コス ト削減
や技術開発等 さまざまな分野でのガス事業者間の連携
アクセスを拒絶 した場合、提供拒絶が不当な取引拒絶
に該当するため独 占禁止法違反 とされるおそれがあ
る。
強化 により競争力 を強化することにとどまらず、電気
や熱をも対象 としたマルチユーテイリテイとしてのサ
ー ビスやエンジニアリングカを含 む総合的な営業力強
第 3に 、今回の法改正では需要家利益 の保護やガス
既存導管
事業者 による導管網整備 の促進 の観点から 「
の効率的な運営 を損なわない」 との考え方に立ち、制
度設計がされた。 しか し、前述 の利益阻害性基準 につ
いては、当然のことなが ら、一般 ガス事業者 による恣
化 に取 り組む必要がある。
意的な運用がされないよう、基準 の運用 の透明性を高
めることが重要である。またLNG基 地近傍へ の新規
導管建設 は限定的に認めているカミ 3年 後の検証にお
いて改めて、既存 LNG基 地近傍 での新規導管建設の
可能性 を含めて、託送供給料金 の適正性や託送制度
井手 秀樹
慶應義塾大学 商 学部 教 授
1545
〒108-8345 東京都港区三田2‐
TEL:035427-1265
の公正な運用状況、託送供給 の熱量や物性に係る受け
入れ条件 の検討などを踏まえ、新規参入者が導管を建
―一一 ● 優 良技 術 図書 案 内
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坐
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・
エバ ラ流動 床 ガス化溶融 システム・
〈1 )
H0402-12
9894770″
0385‐
γ500/論文ノ
」CLS
″仕T
々田月
説 〕
エバ ラ流動床 ガス化溶融 システム
<稼 働実績 とその評価 >
爛荏原製作所 加 藤 涼 一
Ryoichi KatO
1.安 定稼動実 績 の積 み上 げ
21世 紀 に入 り、 日本国内のごみ処理方式は大 きな
転換期を迎えた。次世代技術 と称 されるガス化溶融 シ
ステムの台頭 である。2003年 春 には全 国各地で多数
廃棄物を部分燃焼ガス化 させ、ごみの持つ熱量を利用
して次工程 の旋回溶融炉での高温化を図 り、ダイオキ
シン等を分解すると同時に灰分を自己熱溶融す るもの
である。構造図 (略称TIFG)を 第 1図 に示す。
のガス化溶融施設が試運転 の時期を迎えた。 ごみ処理
技術 は多分に経験工学的 なところがあ り、竣工 に向け
多大 な追加投資を余儀な くされたケース もある。稼働
溶解炉 バ ー ナ
を始めたガス化溶融施設の真価が問われるのは、安全
性 と年間を通 しての安定稼働である。
荏原では、約30年 の実績 と国内外合わせて170基以
上の納入実績を積み上げた旋回流型流動床焼却炉 の技
術 をベースに流動床 ガス化溶融 システムを開発 した。
ガス化
また、荏原流動床 ガス化溶融 システムの 1号 機 として
平成 12年か ら稼働 を始めた民 間施設 での さまざまな
問題点を解析し、改良を重ねて、 自治体向けの一般可
燃 ごみ処理施設用に展開を図 って きた。
酒田地区クリー ン組合が自治体向け 1号 機であ り、
既 に試運転か ら3年 を越 えて安定稼働 を継続 してお
り、酒田地区のごみ処理行政 の基幹施設 となってい
る。その後次 々に稼働を始めた 4施 設 (川口市、宇部
第 1図 エ バラ流動床ガス化溶融炉構造図
市、中濃地域行政事務組合、南信州広域連合)に お
いて も、地域の特性に合わせた試みを取 り入れ、各施
荏原ガス化溶融炉 の受注実績を第 1表 に示す。現在
産業廃棄物用に 3施 設 (炉数 4基 )、一般廃棄物用は
設 とも順調な立ち上が りをし、平成 15年 度上期の実
績 はそれぞれ定格の処理を達成 している。試運転の最
終 ステージである流山市 の施設 も本誌がお手元に届 く
頃には運用開始 となっている。
6施 設 (炉数 15基 )が 稼動中である。 また、平成 15
年 2月 にはマレー シア国から世界最大規模の都市 ごみ
流動床 ガス化溶融 システム (処理能力 1,500t/日 )を
2.エ バ ラ流 動床 ガス化 溶融 システム
流動床炉は炉下から吹 き込む空気の量を絞 り込むこ
とにより、流動 媒体 (砂)内 での燃焼 度合 い を抑制
し、 ガス化を促す ことができる。この原理を利用 した
ものが流動床ガス化炉である。荏原の方式は、実績豊
富な旋回流型流動床焼却炉 をガス化炉 として改良 し、
42 配 管技術 2Clk14 5.
受注 し、現在詳細設計 の段階にある。
3.ガ ス化 溶融 シス テムの言
平価
15年 以上の長期に亘 り、ごみ行政 を安定か つ経済
的に行うためには、選択 した処理方式が、どの様 な性
能を発揮 し、どれだけ運転維持管理費用を必要とする
かは、採用した 自治体にとって最も関心の高 い項 目で
ある。本項 では当社納入施設での各種データから、安
エバ ラ流動床ガス化溶融 システム…(2)
第 1表 エ バ ラ流動床ガス化溶融 システム納入実績表
客先名
青森RER∽ 殿
ASR・ 下水汚泥
450t//日
上越 地域 広域行政組合殿
廃 プラ ・し尿汚泥
157t//日
日鉱三日市リサイクルは澱
酒田地区クリー ン組合殿
廃プラ ・銅滓
一般廃棄物 。し尿汚泥
中濃地域広域行政事務組合殿
一般廃棄物 ・他所灰
一般廃棄物 。し尿汚泥
一般廃棄物 ・埋立焼却残澄
南信州広域連合殿
一 般廃 棄物
流山市殿
マレーシア政府殿
一般廃棄物 ・し尿汚泥
一般廃棄物
川口市殿
宇部市殿
(225t//日
竣二年月
2000年 3月
発電規模
処理量
処理物
× 2炉 )
V
17,800kヽ
2 0 0 0 年3 月
2001年 6月
63t/日
196t//日
420t//日
(98t//日×2カつ
(140t//日
X3炉
)
X3炉 )
168t//日 (56t//日 X3″ つ
198t/日 (66t/日
93t//日
207t//日
(465tノ /日 × 2炉 )
(69t//日
× 3炉 )
151111t/日 (31Xlt/日 × 5灯⊃
l.990kW
2002年 3月
12000kヽV
2002年 11月
4,000kM「
21X12年11月
1 980kW
2 0 0 3 年3 月
3月
211113年
780kヽハ
「
3,000kヽ
V
2 0 0 4 年2 月
非開示
非開示
全性 ・
安定隆に視点を絞 って評価を行ってみる。
3-1 安 飢
火を扱 う施設であることから、システムの安
全 性には特段の配慮を払わねばならない。各方
式 とも二重二重 の安全装置 を組み込み、万全
を期 している。設備全体 の コス ト上昇要因では
あ るが、削ることの 出来ない重要な機能 であ
る。流動床 ガス化方式 はこの点で秀でたシステ
ムである。他方式がさまざまな安全装置を具備
せねばならないのに対 し、まった くと言ってよ
しヽ
ほa新 たな安全装置 を必要 としない。その
\
Z
日
醐
還
《
劇
翠
ぼ
殺
総
蜆
ハ
鷺
部分燃焼 ガス化』 にある。流動床焼
原点 は、『
却炉 はもともと炉床 における燃焼原理力ヽ 部分
ガス化燃焼である。外部から取 り込む燃焼用空
気をさらに絞 り込んでい くと、 自然にガス化へ と移行
す る。逆にガス化炉 に外部から空気力ヽ局れ込めlよ 従
来 の流動床焼却炉へ と移行す るのである。 したがっ
ガスの
て、外部 との遮断を目的 としたシ‐ルや不活l■
ー
い
パ ジなどもまった く必要 としな 。
次に、炉内の可燃物保有量の違 いが挙げられる。流
動床 ガス化炉 は処理対象 ごみを少量連続投入すること
か ら、炉内には極僅 かな量 のごみが滞留す るのみで、
部分 ガス化燃焼を継続す る。都市 ガスなどでは地震対
ー
策 として各家庭の ガスメ タに自動遮断弁 を設けて、
燃料 となるガス を自動的に遮断す るが、流動床 ガス化
炉 の原理 はこの考え方 と同 じである。地震時 には燃料
9:55
10:10
10:25
1040
10:55
第 2図 非 常停止時の炉内酸素濃度の推移
う。第 2図 に酒田地区での非常停止試験時の炉内酸
の挙動 を示 した。給 じん停止とともに炉内の酸
素7il度
素濃度は速やかに上昇 し、数分後には外気の酸素濃度
と同等 となっていること力洋1る。
3-2 安
定性
安定操業 は、その地域のごみ処理行政の根幹をなす
ものである。年次点検整備 のように予定 された停止は
対応が可能であるが、突発的な停止は行政 に多大 な迷
惑を掛けることとなる。処理対象 ごみを如何に合理的
ー ー
に全量処理できるシステムを構築するかがメ カ と
となるごみの供給を自動的に停止する。その後、炉床
の砂 の持つ保有熱 と後段 の溶融炉 の熱およびごみ供給
しての責務 である。
ー
平成 14年 4月 か ら操業す る酒田地区クリ ン組合
を初めとし、その後次 々に操業を始めた川口市、宇部
市、中濃 地域広域行政組合、南信州広域連合 といず
装置か らの漏 れ込み空気 によって、数分内に炉内に残
ったわずかなごみも燃焼 し尽 くしてしまう。
このように、地震 の多 い我が国においては、本質的
れも受け入 れ ごみの全量処理を達成 している。
安定操業 を示す指標 として、1炉 当た りの連続操業
日数が挙げ られる力ヽ ごみ量 との関係で、長期連続運
に安全に停止す る方式は、 どの様な高度な人的安全策
を講 じたシステムよりも安全性 に優 れているといえよ
転の機会 は少ない。ちなみに、酒田では104日、宇部
では101日 のデー タがある。
支
己
ほ 2004 5. 43
酉
管ま
綱
エバラ流動床ガス化溶融システム・〈助
4.各 地 の稼働状況
自治体向けのエバ ラ流動床式 ガス化溶融 システム
は、各施設でそれぞれ特長を有 している力ヽ ここでは
その一端を紹介する。今後 の計画の参考 となれば幸 い
である。
4-1 酒
田地区クリーン組合
る。特 に破砕機は給 じん装置 と直結 しているために、
ごみの供給が途絶えた場合、後段 の溶融炉温度の低下
を招 き、助燃を使用す るケースが生 じている。構造や
材質等の変更により改善を図っている。
4-3 宇
部市
当社 の都市 ごみガス化溶融 システムの 1号 機であ
る。初期において破砕機 の破損や空気予熱器の灰付着
当施設の前処理工程 は破砕機をオフライン化 し、 い
かなる状況下で も安定 したごみの供給が可能になり、
酸素富化装置 との相乗効果により安定 した連続操業が
トラブルに見舞 われた もの、 これ らの問題点 を克服
可能 となっている。搬入 ごみの量および質力滞十画時と
し、安定期に入っている。1年 目の点検を行った結果
では、維持補修費に影響す る度合 いの大 きい溶融炉耐
大 きくずれたことにより、施設全体 の稼働率が低 い点
が残念である。 また、エバ ラ流動床ガス化溶融システ
火物は、当初想定 よりも健全性が保たれてお り、今後
の維持補修費用低減に繋がるもの と評価 される。ま
た、 ランニングコス トの面でイ ンパ ク トの大 きい助燃
ムの運転制御が容 易であることを示す事例 として、当
施設は運転 シミュレー タを活用 した直営 での操業であ
油使用量は、溶融炉出津 口で時折使用する程度であ
り、運転 員の習熟度向上と相 まって、非常に安定 した
運転 を継続 している。104日 間の連続運転時のデー タ
を解析すると、立上げ下げ時 を除 く助燃油の使用量は
ごみ トン当た り1.12L、更には破 砕機 トラブル時の影
る。
4-4 中
濃地域広域行政事務組合
当施設は最終処分場に隣接して建設されており、掘
り起こしを行い、ガス化溶融炉で可燃ごみの燃焼熱を
響 を排除す ると、ごふ トン当た り0.42Lとなる。種火
の使用 も無 く、連続安定運転を実証 した。 自己熱溶融
利用 して溶融スラグ化をす ることによって、最終処分
場 の再生に寄与 している。掘 り起 こし残澄の混入率は
15%程 度であるカミ 助燃料を使用せず に安定 したスラ
グ化が達成 されている。収集可燃 ごみの発熱量にも左
を継続する上で、副資材等の化石燃料を極限まで削減
で きるエバ ラ流動床 ガス化溶融 システムは、LCAの
右 されるカミ 最終処分場の残余年数が逼迫 している自
治体にとっては一石二鳥の解決策 と考えられる。
観点から優 れているばか りでな く、維持補修費や運転
経費の低減により、LCCの 観点からも高 く評価 される
第 3図 に当施設で採用 した最終処分場内での掘 り起
こ しごみ処理 システムフローを示す。
ものと期待 している。なお、 当施設は発電付都市ごみ
流動床 ガス化溶融 システムの安定稼動実績により"02
4-5 南
信州広域連合
施設規模 100t/日 未満で外 部へ の熱供給を行 うと
共に発電を行 い、消費電力料金の軽減を図るといった
特長 を持 つ小規模サ ーマル リサイクル施設 の例であ
る。外部へ熱供給を行 いなが ら常時500kW程 度 (定
格780kW)の 発電を行ってい る。 また、低質 ごみ対
年ウェステック大賞プラン ト部門賞を受賞 した。
4-2 川
口市
当施設では新たな取組みとして、高効率発送電、他
所灰受入混合溶融に取 り組 んだ。従来の焼却炉 +灰
溶融炉では焼却廃熱回収による発生電力を灰溶融炉が
消費 し、外部供給可能な余剰電力が少ない点が欠点で
あった力ヽ エバ ラ流動床ガス化溶融 システムは送電端
策に脱水機を採用 している施設でもある。小規模施設
は相対的にラ ンニ ング コス トが割高 となる傾向にあ
効率 の高いことが特長である。当施設は洗煙設備等 の
高度排 ガス処理設備 を装備 しているにもかかわ らず、
基準質 ごみ相当で定格処理時、4,000∼5,000kWの 逆
る。
送電 (併設の リサイクルプラザ送電を含む)を 行 って
いる。送電端効率は約 10%を 超えてお り、同規模の施
る。今後はLCCの 観点か らも更なる工夫が必要であ
5.エ バ ラ流 動床 ガス化溶融 シス テムの 今後
都市 ごみ旋回流型流動床焼却炉 のパイオニアとして
約30年 の実績 の上に開発 ・改良を重ねて きたエバ ラ
設と比較 し高い送電端効率である。また、施設の安定
性 。高効率送電を達成させる上での新たな取組みとし
て酸素富化装置の採用がある。 このように施設のパ フ
ォーマンスは非常に高 い もの となった力ヽ 全てが順風
流動床ガス化溶融システムは、前処理 システムの合理
化へ 向けての取組みを始めている。現在稼動中の施設
満帆 とはいかない。後か ら取 り組 んだ酸素富化装置か
て来た。 しか しなが ら、経済的合理性 の観点か らは、
機器 の種類や設置台数 は少ないほど維持管理費用は軽
らの騒音や前処理破砕機 の安定稼動に問題を抱えてい
44 配 管技術 2004.5.
において も、前処理破砕機の位置や設置基数、破砕後
のごみピッ ト形状なaさ まざまなパ ター ンを提供 し
・
4)
エバラ流動床ガス化溶融システム・
〈
蔵│││=舞
1最終延蒼場││:整
│
渋 都市 ごみ
シ ョベ ルア ー ム部
・
響量
有価金属
豊
スラ グ
第 3図 掘 り起こし処理 システムフロー
減される。今後 は、よリシンプルでより操作性 の優 れ
た施設の提供 に注力 してい く考えである。
小型施設に対してもLCCの 考え方を取り入れ、顧客
のニーズに合うシステムを供給していく。
また、ガス化溶融炉の大型化に向けては、当社は既
に 1炉 当たり225t/dの稼働実績を有し、さらにはマ
レー シア国向けに 1炉 300t/dの詳細設計 を開始 して
いる。スケールアップに対する技術的課題 は解決済み
であ り、大型炉 の市場 へ積極的に参入 してい く考えで
ある。
自燃 。自溶融 を目指す流動床 ガス化溶融 システムに
とって、受け入れごみの平均発熱量は計画 を大 きく左
右す る因子である。特 に、小型炉においては炉壁か ら
の放熱 ロスなどによ り、助燃を必要 とす る結果 となる
場合 も発生す る。今後 の課題 として、 中小都市向けの
ヽ
`
ヽ ′
製品パンフレッ ト
cD R°
加藤涼 一
欄荏原製作所 環 境 プラント事業統括
エンジニアリング室 部 長
〒108-8480 東京都港区港南 1-6-27
6082
5461‐
TEL:035461-6206 FAX:03‐
Ⅳlail i [email protected]
E―
(主なる業務歴及び資格〉
技術士 (衛生工学部門)
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´
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峠
U Ю α 0 8031∞ ⑩ 団 5
保温 材 とステ ンレス応 力腐 食割れモデ ル試験 …(1)
16
H0402‐
0385・
9 894/04/Y500/論
CLS
X/」
″牛T
四
カ
ロ
月
説 〕
保温材 とステンレス応力腐食害Jれモデル試験
<保 温材 とステンレス腐食の因果関係の検証 と要因、メカニズム解明 >
sP 鈴 木
帥」
修
Osamu Suzuki
小浦 孝 次
K o 画i K o u r a
1. は じめに
これまで、金属配管腐食 と保温材料 との因果関係は
はっきりせず、発生要因としては、
① 保 温材 に合有する可溶性塩素量
② 漏 水お よび雨 水 による塩素イオ ンの浸入
③ そ れ以外 の要因
があげられる。
ステ ンレス配管に使用する保温材の使用可否の判断
1992に 記載 されてい
基準は、一般的にASTMC79■
る、「
保温材の水溶性成分 (塩素イオ ンとナ トリウム
+け い酸イオン)に 対するステンレス鋼 の使用許容劇
(第 1図 )力 漱 用されている。
しかし、現実的には、使用許容域内に入っている保
温材 を使用 した場合においてもステンレスの腐食割れ
事故が報告 されてお り、保温材 の選定とステンレス腐
食 との明確な因果関係が解明できていないのが現状で
ある。
今回、保温材 とステ ンレス腐食 との因果関係を明ら
かにするために、応力腐食割 れのモデル試験を実施 し
たので報告する。
2.検 討手順
試験 は、以下の 3ス テップにより行 った。
871 1995
〔
第 2ス テッカ
結露水 を想 定 し、各種保温材 を用 いた応力腐食割
れ試験ASTM C 692 2000
〔
第 3 ステ ッカ
漏水 による塩素イオン混入を想定 した各種保温材 を
用 いた応力腐食割 れ試験
46 配 管技術 2004.5.
(1)各 種保温材
① RW:ロ ックウール 保 温筒 CIS A 9504)
② GW:グ ラスウール 保 ,盈
筒 OIA A 9504)
③ PUF:硬 質ウレタンフォーム 保 温筒3号
OS A 9511)ス テンレス未対応品
④ EPS:ビ ーズ法ポリスチレンフォーム
保温筒3号 OIS A 9511)
(2)ス テンレス鋼板
:SUS304 厚
さ1.5mm
鋭敏化熱処理 :649℃ × 3時 間
アルゴンガス雰囲気
材 質
表面研磨 :研 磨 #80
4.結 果
4-1 各
種保温材 に含 まれる水溶性成分
各種保温材 に含 まれる、水溶性成分 (塩素イオ ン、
ナ トリウム、けい酸イオ ン)の 濃度分析を実施 した
(第1詢 。
分析法 :ASTM C 871_1995に 準拠、 ただ し溶出
温度はEPSの 耐熱温度を考慮 し、60℃ と
した。
第 l表 保 湿材の溶出試験結果
溶出条件
n
m
にi
0
2
〔
第 1ス テッカ
各種保温材 に含 まれる、水溶陛成分 (塩素イオンと
ナ トリウム +け い酸イオン)の 濃度分析 ASTM C
3.試 験体
保温材
RW
[単位 i mg/L]
Cl
Na
<10
<5
1,200
GW
PUF
<10
EPS
く10
80,
1.200
7
<10
く 5
<10
第 1表 の結果 をASTM C 871_1995記 載 の使用許
容域の図にプロットしたものを第 1図 に示す。
60℃ での溶出内容は、各材質 ともに塩素 イオ ン濃
度が20ppm以 下 と低 い値 となってお り使用す る上で
「
保温材 とステンレス応力腐食割れモデル試験…(2)
ナ トリウム+け い酸イオ ン [mg/L]
第 1図 保 温材 の成分 (塩素イオンとナ トリウム+け い酸イオン)
に対するステンレス鋼の使用許容域
腐食 の危険性 は低 いと考えられ る。PUF、 EPSに お
いてはナ トリウムとけい酸イオ ン濃度が低 く、第 1図
の使用許容域を外 れることとなった。
4-2 結
露水 を想定 した各種保温材 を用 いた
応力腐食割 れ試験
結露水により水が供給 される場合、結露水にはほと
んどイオンカ落 在 しない と考え られることか ら、脱イ
オ ン水 を用 い 各種保 温材 の応 力腐 食割 れ試験 を
ASTM C 692 2000に 準拠 し実施 した (第2図 、写真
1)。
実験条件 は、70℃ に加熱 したパ イプ上にU次 型の
鋭敏化熱処理 したSUS304試 験片をセットし、曲面に
各種保温材 を接触 させ、保温材 と試験片 の界面に脱イ
オン水を滴下 し 1250mL/day)、9日 間後 の さびの発
生状況 と顕微鏡観察により応力腐食割れの発生有無を
確認 した。
第 2表 に示す ように、全てのサ ンプルで さび、応力
腐食割れのいずれも発生 しなかった。つ まり、保温材
中の可溶性塩素成分が20ppm以 下の保温材 を使用 し
た場合は、ステ ンレス応力腐食割 れを発生 させる可能
性 は少ないと考え られる。
写真 1 ス テンレス応力腐食割れ試験状況
第 2表 応 力腐食割れ試験結果 (滴下水 :脱 イオン水)
さび
応力腐食割 れ
GW
○
○
RヽV
○
○
PUF
○
○
EPS
○
○
保温 材
注)× :発生、△ :微 量発生 ○ :発生 なし
4-3 漏
水 を想定 した応力腐食割れ試験
漏水 により水が供給される場合、水中には多 くのイ
オ ンが存在する と考えられることから、水道水の塩素
濃度許容値 (200ppm)を 想定 して実験を行 った。試
験条件 は、4-2節 と同様 であるが、滴下水 に塩素濃
0.33g/L)を用 いた。
度200pprnのNaC′ボ溶液 lNaё′
第 3表 に示す ように、GW、 RWに さびk応 力腐食
割れが発生 した (写真 2)。 PUFは 、さびが若千見 ら
れたが応力腐食割れ は見 られなか った。EPSは 、 さ
第 2図 ス テンレス応力腐食割れ試験 外 略図
a応
力腐食割 れ共に見 られなかった。
配管技術 2004.5 47
保湿材とステンレス応力腐食割れモデル試験・(3)
第3表 応 力腐食割れ試験結果 (滴下水 :塩素濃度200ppm水 溶液)
保温材
さび
応力腐食割れ
GヽV
RW
PUF
△
○
EPS
○
○
注)× :発生、△ :微量発生 ○ :発生なし
食因子成分濃度が濃縮 され ステ ンレス腐食が発生 し
応力腐食割れに進展するためであると考えられる。 こ
の現象 は、繊維系保温材であるRW、 GWに 顕著に発
生 し、PUF、 EPSの ような水蒸気 を透過 しに くい発
泡プラスチック系保温材 を使用 した場合は、 ステ ンレ
ス表面での水分蒸発を防ぎ、腐食因子成分の濃縮が起
こ りにくく、応力腐食割れの可能性 を少な くできると
考えられる。第 4表 に各種保温材 の透湿係数を示す。
第 4表 各 種保温材の透湿係数
透湿係数
[ng/m2.s.Pa]
保温材
繊維系
発泡 プラスチ ック系
5,800
GW
RM「
PUF
EPS
ただし、発泡プラスチック系保温材 の使用に当たっ
ては、使用温度条件の検討が必要である。
今 回の応 力腐食割れ のモ デ ル試験 は、ASTM C
692_2000に 準拠 し、保温材 の71・
ullに防湿層を施 さず
に実施 した。よ り実情にあった腐食メカニズムの解明
には、現実の施工にあわせ保温材の外側 に防湿層を施
した検討がさらに必要であると考える。
6.お
わ りに
本試験はステンレス協会 との共同にて実施 したもの
であ り、 ご協力をいただいたステンレス協会関係者お
よび遅沢浩一郎氏、金子 智氏に心 よ り感謝する次第
である。
今回の検討が倒属配管腐食問題解決の一助になれば
幸 いである。
写真 2 応 力腐食割れ 顕 微鏡写真
5.考 察
今回のモデル試験により、保温材 に可溶性塩素が20
ppm程 度含有 していてもステンレスの応力腐食割れ
は、発生 しに くいことが確認された。
一方、第 3ス テップの実験において、現場での配管
割れの原因として、外部からの塩素イオン等の腐食因
子成分の混入による可能性が高いことが示唆される。
発生メカニズムは、塩素イオン等の腐食因子成分の混
入 した漏水または雨水がステンレス表面で蒸発 し、腐
<参 考文献>
(1)「新版 建 築用ステンレス配管マニュアル」ステンレス協会 (1997
年)
(2)「断熱建材ハ ンドブック」断熱協議会編 (1994年 :養 賢堂)
鈴木 修 (昭和36年 4月 22日生 ・福島県出身)
帥 JSP EPSカ ンパニー 開 発部 開 発グループ 主 査
〒100-9005 東京都千代田区丸の内34-2 新 日石 ビル
TEL 1 03‐
6 2126371
FAX:o3-ω
1267"
小 浦孝 次
SP EPSカ ンパニー 開 発部 開 発グループ長
的」
〒lClll‐
OC105 東京都千代田区丸の内3-42 新 日石 ビル
TEL:03-6212‐
6371 FAX:03‐ 6212‐
6739
(会社紹介は■eymanル sf2参照)
48
酉
己
支
管ま
綱
庁 2004.5.
・
〈1)
電気化学 ノイズ法による腐食モニタリング・
H0402‐17
0385‐
9894/0″γ500′
論X/」CLS
翠
〔角
ヨ兇〕
電気化学 ノイズ法 による腐食 モニタリング
東洋エンジニアリング閉 岩 脇 大 仁
Hirohito lwawaki
川内陽志生
Yosho Kawauchi
1. は じめに
電気化学 ノイズ (Electrochemical Noise)と は、
腐食反応の進行に伴 い発生する微少な電気信号 (ノイ
ズ)で ある。電気化学 ノイズは、 これ まで腐食の基礎
研究を目的 とした実験室 レベルの測定技術 として主に
用 い られてきた。 しか し、近年の計測技術 の進歩によ
り、現場においても微少 な電気信号が計測できるよう
になり、雑信号 ノイズがある実機プラン トにおける腐
食 モニタリングセンサー としても適用できるようにな
った。
一方、昨今 のプロセスプラン トにおける保全形式の
変化に伴 い、設備管理で求められる腐食モニ タリング
の役割が変わりつつあり、既存 の腐食 モニ タリング技
術 と異なる特徴を持つ電気化学 ノイズ法カミ 新 しい設
備管理 に適用できる腐食モニタリング技術 として期待
が高まっている。
これら電気化学 ノイズ法による腐食 モニ タリング技
術 は、海外の石油 ・ガス開発設備 を中心に実績が出始
めてお り、既存 の腐食 モニタリング技術 と同様にプラ
ン ト市場 に普及 しつつある。
ここでは、電気化学 ノイズ法 による腐食モニ タリン
グの特徴 について紹介 し、本手法を活用 したプロセス
プラン トの新 しい設備管理手法について紹介する。
2.電 気化学 ノイズ法 とは
金属の腐食 (湿旬 は、第 1図 に示すように水溶液
のような環境 で鉄などの金属がイオン化 さオ
、 それに
伴 い発生する電子を消費する反応 (酸性では水素 イオ
ン、中性では溶存酸素 の還元反応ない が共に発生す
ることにより進行する材料の減肉もしくは劣化現象で
ある。従 って、腐食反応が発生す る際 には電子 の流れ
が生 じるため、 これら電子 の移動 に伴 う電流や電位 の
変化 が微少ではある力溌 生する。 これら微少な電位お
電流 の発生
電
流の発生
第 1図 腐 食による電気化学反応
よび電流 の変化が電気化学 ノイズである。
電気化学 ノイズは、1960年代 に発見され、その後、
1)を
目的に実
孔食や応力腐食割れな ど腐食形態 の研究
一
つ
いた
として利用 されて
。電気化
験室の計測手法 の
学 ノイズを用 いた腐食モニタリングには、電位 と電流
(力
の測定法 と解析法 により、 い くつかの方法 がある。
国内の研究では、2つ の電極間の電位 ノイズの原信号
(波形)を 解析す ることにより、例 えば応力腐食割 れ
やす きま腐食 の発生を監視す る手法の開発が進められ
ている力ヽ 市販 されている商品技術 としては、電位 ノ
イズおよび電流 ノイズの同時測定によって局部腐食F■
をモニ タリングする3極 法が普及 している。第 2図 に
3極 法による電気化学 ノイズ法 の測定原理の模式図 を
示す。
3極 法 による電気化学 ノイズ法では、モニタリング
対象機器 と同材料で作成 した 3つ の電極 センサーを流
体中に挿入 し、腐食 の電気化学反応で発生する電極 2
から電極 3へ の短絡電流 (電流 ノイズ)を 測定 し、 こ
れら短絡電流 の発生 による電極 2の 電位変化 (電位 ノ
イズ)を 電極 1と の比較によって測定す る。電気化学
ノイズの測定例を第 3図 に示す。全面腐食 のように安
定な腐食反応が進行 している状態 では、電流 ノイズと
一
電位 ノイズの標準偏差 の比 (ノイズ抵抗 :Rn)は
定 の値 となる力ヽ 局部腐食のように準安定 な腐食の過
電気化学 ノイズ法による腐食モニタリング…(2)
Rn=σ i/σ
v=(icorr*A)/B
/B)
LI=σ i/(icOrr*A)(=σ
、
ヮ
・・。
( 1 )
・
・
・
(2)
ここで
LI:局
部腐食 性指数 (Loc」iza■on lndex)
σi :ノ イズ電流 の標準偏差
σv:ノ イズ電位の標準偏差
Rn:ノ
イズ抵抗 161/6v)
icorr:腐 食電流 (全面腐食 速度に対応 す る電流)
A :電
電流 ノイズ
極の表面積
B :Stern‐ Geary定 数
(環境 の腐食 陛に依存す る定 数)
全面腐食 一 腐 食形態 の傾 向 →
0
。一
LI
→
局 部腐食
1
LIは 、上記数学的な計算手法 であるため、環境 の
全面腐食性 (icOrr)が小 さい場合に局部腐食 陛が低
くて も局部腐食 陛が大 きくなることが ある。例え│よ
淡水中のステ ンレス鋼 など全面腐食速度が小 さい場
電極 1
電極 2
電極 3
第 2図 電 気化学 ノイズ法の測定原理
合、局部腐食性が極端に大 きな値を示 す場合がある。
従 って、全面腐食性が低 い環境 でも適切な局部腐食 生
を算出できるように、センサーの電極面積など実績や
計装機器の雑信号を考慮 して補正す る場合がある。第
4図 (9は、冷却水系 の炭素鋼熱交を電気化学 ノイズ法
でモニ タリングした例である。冷却水の防食運転条件
の変更 したところ、全面腐食庄は低下 した力ヽ 逆に局
部腐食陛が増加 したことが分かる。炭素鋼製冷却水熱
交チ ュープの寿命 は、全 面腐食 による余寿命 でな く、
[mV]
0
Time[sec]1,024
孔食な どの局部腐食の有無で決まることが多い。電気
化学 ノイズ法による局部腐食モニ タリングにより、子L
食など局部腐食による熱交チューブの漏洩を、 いち早
く感知できる。
また、電気化学 ノイズ 法 は、先述の ノイズ 抵抗
(Rn)を 用 いて(1)式から全面腐食速度 も算出できる。
全面腐食速度 =B/Rn
Time[sec]1,024
第 3図 電 気化学 ノイズの測定例
渡反応 の状態 では、これら関係式が成立 し難 く、局部
サイ トにおける腐食反応 に対応 した電位や電流のスパ
イク信号が発生する。このような信号を数学的 に処理
することによ り局部腐食性 を評価するのが 3電 極法に
よる電気化学 ノイズ響 °である。
50
酉
己
支綱
け 2004.5.
管ま
・
・
・
(3)
B :Stern― Geary定 数
Rn:ノ イズ抵抗 (Rn=6i/σv)
ここで、B(Stern―Geary定 知 は、腐食速度を算
出する上で大 きく影響す るパ ラメー ターである力ヽ 一
般的な腐食モニタリング技術 では、25∼ 30[mV]で
デフォル ト設定され腐食速度に換算 してぃることが多
い力ヽ 対象 とす る設備の環境 を実験室で模擬 して実機
でのモニ タリング前にBを 予め測定 してお くことがあ
る。 しか し、Bは 環境条件などによ り変化す る。例え
│よ 百己
管 の化学洗浄中や気相 の凝縮水腐食環境 では、
・
3)
電気化学 ノイズ法 による腐食モニタリング・
〈
Inhibitor lnjection Resumed
‐
…‐
″̀Elヾ
_CR[mpy] ―
OctOber 15,2000
―― Localisaせon
1
09
08
“
07
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XoつoH 口o﹁ ●N﹁●o。ロ
艶 lo
国
02
01
10/04/00 10/07/00 10/10/0010/13/00 10/16/00 10/19/00 1022/00 10/25/00 10/28/00 10/31/00
0
第 4図 電 気化学ノイズ法による腐食モニタリングの例
Bは 30mV以 上 とな り、硫化鉄被膜など
被膜生成を伴 う腐食環境では25mV以 下
値 も同時に測定することにより、精度良
い腐食速度のデー タを提供す ることもで
きるようになっている。
このように電気化学 ノイズ法 は、信号
8 ︼。o ¨oロ
﹁ 0日 ]8 ●ヽ ●o一
となることもある。最近は、特殊 な測定
(41-Qを いてノイズデー タとともにB
用
法
の形態お よび大 きさを解析することによ
り、孔食などの局部腐食 に関する腐食情
報 を得 ることができ、比較的簡易な測定
法であ りなが ら、高精度に腐食性をモニ
タリングすることができる点が大 きな特
徴である。
3.電 気化学 ノイズ法 による
リアル タイム腐 食
モニ タ リング
電気化学 ノイズ法 は、腐食反応で生
ず る電気信号 を検出す るモ ニ タリング
手法 であるため、流体 の腐食性 を高精
度に応答性 よ く検 出で きる。主 な腐食
モ ニ タリング技術 の感度 と応答性 の 関
°
係 を第 5図 に示す。
例 えば、電気抵抗法は、腐食 によるセ
ンサーの減肉量を電気抵抗 の変化 として
1
10
10
1011
1011
1,0∞ 10,Ol10
Log Response Time[hOurs]
躙
Microcor
CdOn懸
轟 ER FSM iCou赫
轟 ヽ1
EN:電 気化学 ノイズ法
MicroCorr(Metal Sample社
) 、Ceion(CormOn社):高 感度電気抵抗法
LPR:分 極抵抗法
FSM:電 気的指紋照合法 (FSM:Field Signature Metllod)
Coupon i腐食 クーポ ン法
注記〕
〔
腐食クーポン法
試験片を設備内に一定期間挿入 して腐食速度を実測する手法
電気抵抗法 (ElectHcal Redstance:ER)
腐食 によるセ ンサーの重量減を電気抵抗 の変化 として測定する手法
zauon ReSstance:LPR)
分極抵抗法 (Linear Pda五
外部から電流を印加 して電気化学汲J定により腐食速度を求める方法 (2項 参照)。
腐食速度 を測定す る手法 であるが、腐食速 度を抵抗
の変化 として捉 えるため、ある程度のセンサ ーの減量
が必要である。従 って、センサ ーの形状 によっては、
第 5図 主 な腐食モニ タリング技術の応答性の比較
腐食速度を検出す るのに数十
・
。
時間を要する。近年、開発 された高感度電気抵抗法
、MicrocOrr:Metal Salnde
(図中CE10N:Cormon社
0.0254mm/y(lmpy)の
配管技術 2∞ 4.5.51
・
4)
電気化学 ノイズ法による腐食モニタリング・
〈
社)は、同程度の腐食速度を 1時 間以内で検出できる
が、電気抵抗法 の原理上、感度向上によリセンサー寿
に抑 えなが ら最適 な防食剤 を選定できるだけでなく、
防食剤注入量の最適化 にも貢献している。
命 が短 くなる傾向にあるため、長期連続運転の観点か
ら実機での適用には留意が必要 で ある。これに対 し、
電気化学 ノイズ法では、分極抵抗法 と同様 に0.001∼
0.01mm/yの 腐食速度 を測定 できる感度があるととも
に、理 論上、数秒で腐食速度 をモ ニ タリングできる応
答性 を持 つ6ま た、電気抵抗法では、腐食によるセン
サこの減肉量 を抵抗値 の変化 として測定するために温
4.電 気化学 ノイズ法 による
プロアクテ ィブな設備 管理
モ
腐食 ニタリングは、従来か らプラント機器 の健全
性評価や余寿命予測 のために実機で用 い られてきた。
近年、プラン ト長期連続運転による定修 中検査機会の
度補正が必要 となるが、電気化学 ノイズ法では、この
減少お よび保全 費削減 の動 きの中、腐食モニ タリング
を単なるプラン ト設備 の診断手法 としてではな く、故
ような補正 も必要 とせ ず、計測類 も簡易化 できる。第
∈ ガス
6図 り
は、
処理プラントにおける電気化学 ノイズ法
のモ ニタリングデータの例 である。ガス処理 プラントで
障に至る前の兆候を運転中に把握 し、腐食損傷 の徴候
を早期に検出 して漏洩などの異常を生 じさせないプロ
アクテイブな設備管理手法 のツール としての適用が試
は、同伴 される炭酸 ガスによる腐食対策として防食剤
を注入している。 2種 類 の防食剤 の効果を実機 の損
傷 リスクを最小限に抑 えて判断できる市販 の腐食 モニ
みられている。
このような設備管理手法 は、回転機を対象 とした設
タリング技術 として電気化学ノイズ法を検証した結果、
電気化学 ノイズ法 による腐食 モ ニタリングが各防食剤
注入時 の腐食性 を感度および応答性 よくモ ニタリング
されている。電気化学 ノイズ法 は、機器 の損傷 を最小
備ではいち早 く採用 されてお り、潤滑油成分や振動 を
リアルタイムでモニ タリングし、デー タを運転管理に
反映させて振動 に起因 した損傷を未然に防 ぐ設備管理
法が実施されている。 しかし、静止機器や配管 の腐食
損傷に関 しては、腐食 の発生機構が複雑であり、かつ
卜0日 ]8 ●∝ Oo場o﹄■oO Z口
[
多 くの要因が発生に関与 していることが多 いため、回
転機のようなプロアクティブな設備管理手法 のモデル
を構築す ることが難 しい。さらに、従来の腐食モニ タ
Inhibitor A
リングは、感度や応答 隆の観点から腐食 隆をリアルタ
イムに検知す ることが難 しかったことも、腐食損傷 を
対象 とした同設備管理法が検討 されていない一 因でも
ある。腐食の発生機構および発生要 因が明確な設備 で
あれlよ 感度 と応答性 に優 れた電気化学 ノイズ法によ
る腐食 モニ タリング技術 を用 いることによ り、第 7図
Date/Time
第 6図 電 気化学 ノイズ法の応答性
(防食剤変更による腐食速度の変化)
電気化学ノイズ法
測 定 デ ー タ記録 部
申
デー タ変換 ・通信部
検査 ・機器
更新計画へ の
反映
運転条件の最適化 ・
プ ロセス フロー
生産計画 の 反映
プラン ト静機器
〕こ
優
警
:を
難ぴ
Fよ
[i[番
言
ゝ靱
曾
還
多
第 7図 運 転改善による防食管理の例
52
酉己籠
支綱ほ 2004.5.
讐才
電気化学ノイズ法 による腐食モニタリング・〈→
に示すようなオンライン腐食モニタリングシステムを
腐食損傷 を対象 としたプロアクティブな設備管理手法
RCMSTMで は様 々な腐食センサーを適用可能である
が、腐食 セ ンサ ー に電気化学 ノイズ法を用 いた場合
に適用できると考えられる。
は、以下のメリットが出る。
5.電 気化学 ノイズ法 による
プラン ト設備 の遠隔腐食管理
上記のように既存する他の腐食モニタリング技術 に
ない感度 と応答性という特徴により、電気化学 ノイズ
法による腐食モニタリングは、腐食損傷を未然に防ぐ
“
"設
備管理のツールとしての適用が有
腐食 させない
望視されている。
め
一方、腐食 コス トにおける調査報告書。
によると
1997年の石油精製、石油化学、無機化学分野 におけ
る腐食 コス ト (腐食に依る補修費、既存設備 の腐食対
策費、新設設備 の腐食対策費)は 1兆 700億 円であ
る。その うち腐食 に依 る補修費用は580億 円である。
この様に腐食にかかわるコス トは大 きく、産業界では
腐食 コス トの削減 とよ り経済的な腐食の管理法が求め
られている
“
ここでは電気化学 ノイズ法 を用 いた 腐食 させ な
"設
い
備管理手法を用 いたプラン トの腐食 を遠隔で監
ー ビスについて紹介す る。第 8図 は東洋エン
るサ
視す
ジエアリング腕 の提案す るプラント遠隔腐食管理サー
① 電 気化学ノイズ法は測定感度が高 いため、腐食
の発生を早期に発見可能である。
② 電 気化学 ノイズ法では全面腐食のみならず局部
腐食性 も測定可能な為、プラン ト機器 ・配管の
余寿命 に最 も影響す る局部腐食性の測定、評価
と対策案の提示が可能である。
③ 電 気化学 ノイズ法は応答生が速い為、短時間で
防食対策の評価を行える。
従 って、電気化学 ノイズ法を利用 したRCMSTMで
は第 9図 に示すメリットが期待できる。
●オ ンライ ン ・リアルタイムの腐食 センサ ーで腐食を監視
する ことにより、人手に依 る非破壊検査業務の削減に貢
献。
●定期報告 により腐食 の事前対応が可能 とな り設備 の長寿
命化 に貢献。
●防食の専門家による防食方法の提示。
1.検
2.設
3.長
4.ラ
ビス (Remote Corroslon Management Ser宙
ce
ー
い
(RCMSTM))の サ ビス内容を示 して る。RCMSTM
は主に以下の 3つ のサー ビスか ら構成される。
① プ ラントの腐食を遠隔で計測する
② 計 測された腐食データの整理と評価
③ 腐 食データに異常があった場合に改善案を提示
電気化学 ノイズ法によリプラ
ント設備 の腐食環境を高感
度に■つ応答性良く測定
査費用の削減
備の長寿命化
期連続 ・安全操業の実現
イフサイクル コス トの削減
第 9図 RCMSTMに
6.お
よる効果
わ りに
最近注 目されている腐食モニ タリング技術である電
気化学 ノイズ法の特徴お よび電気化学ノイズ法による
新 しいプラン ト設備管理手法 について述べ た。電気化
学 ノイズ法 は、従来の腐食モニ タリングでは困難だつ
た局部腐食をモニタリングできる技術 として注 目され
ている。また、感度 と応答性 に優 れるとい う特徴 か
ら、腐食を未然に防 ぐ設備管理のツールとしても適用
.:躙
運転条件 の変動、設備
の異常で腐食性が増加
し、設備の安全性が低
下 した場合、改善策を
●
提示
‐
‐
1 1.=‐
│ ││‐
定期的に報告
測 定結果を評価し、
● 全面腐食速度の時系列デー タ
● 局部腐食発 生 リスクの時系列
ータ
デ
全面腐食、局部腐食リスクデー
タから設備健全性の判断結果
M)
第 8図 プ ラントの遠隔腐食監視サービス (RCMゞ
が期待 されてお り、これら設備管理手法の試みとして
遠隔腐食監視サー ビスの腐食モニ タリング技術 として
適用が試みられている。
電気化学 ノイズ法は、既存の腐食モニタリング技術
と異なるアプローチで実機の腐食モニタリング技術 と
して適用できるカミ 非破壊検査技術 のように実機の腐
食 陛を直接検出できないためにスケール堆積や偏流 な
猿 装置の局部条件 の影響を受ける腐食損傷 には適用
が難 しい。既存 の腐食モニ タリング技術にも言えるこ
配管技術 2004.5.53
電気化学 ノイズ法 による腐食 モ ニ タリング…( 6 )
とだ力ヽ 設備 の故障形態お よびその目的に応 じて最適
な腐食モニ タリング技術 を選定できる手法や防食管理
の体制作 リカヽ 電気化学 ノイズ法を含む腐食モニ タリ
ング技術の有効利用および市場普及に重要であると考
OO CormOn Ltd,Technical Bulletin
OつIntercOrr社技術資料
⑫ ① 防旬噺食協会,① 日本防錆技術協会,“わが国における腐食 コ
ス ド ,(2001)
(10 H InOue,Proc 121th Symposium,pl(201111)
041
える。
E C Fitch,Proactive Maintenance forヽ〔
echanical Systems
(1992)
<参 考文献 >
(1)W P Iverson,」
0)井
of Electrochemical Soc l(1968)
上,材 料 と環境,52,444(211113)
(3)D A Eden,NACE Corrosion/98,Paper No 386(1998)
(4) Prabharahara Rao,G and Mishra,A K f」
Electroanal
Chem.Vo1 77,p121‐ 125(1977)
(5)Rangarttan,SK,J Electroanal Chem&Interfacial Electro‐
chem,Vo1 62,p3141(1975)
岩脇 大仁
東洋エ ンジエアリング機 材 料技術グループ
〒275-0024 千葉県習志野市茜浜2-8‐
1
TEL:047454-1795 FAX:047454-1860
(6)Devay,J"and Meszaros L,Acta Chim Acad Sci Hungari‐
cae,Vol10Q Nol‐4,p■83202(1979)
(7)Devay」
and Meszaros,L"Acta Chim Acad Sci Hungaricae,
ヽ
′
o1104,No3,p311-316 (1980)
(8)MeSZarOs,L"Korrosion Figyelo,Vo121,No2,p,30(1981)
川 内陽志生
東洋エンジニアリング的 ビ ジネス開発 グループ
〒275‐
∞24 千 葉県習志野市茜浜2-8-1
TEL:047454-1175 FAX:047454‐
1163
(9)InterCorr社技術資料
環境 と産業 ・経 済 の共生 を追求す るテ ク ノ ロジー
●創刊年月日 : 1 9 9 2 年 ( 平成 4 年 ) 9 月 1 日
●発 行 日 : 毎 月 1 日発 行
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: 1,900円
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価
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無限と思われた地球資源と環境に対し、SOSが 発せられよう
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TEL03(394411181(代)FAX 03(3944)6826
http:ハ
vぃ
"nkko pb coip/ e‐
ma‖:mfO@nkkO pb COip
″
54 配 管技術 2∞ 4.5
0339448001
ベ
:XI:::lFナ
:││:l
i
大 阪 営 業 所 〒5 4 1 - 0 0 4 6 大
阪市中央区平野町1 - 6 - 8 - 7 0 5
TEL 06(6202)8218 FAX06(6202)8287
・
エ ミッシ ョン対応 バル ブ評価試験 の 国際規格 。
〈1)
H0402-13
0385‐9894/04/Y500壻 命t/」CLS
〔解 説 〕
エミッション対応 バル ブ評価試験 の国際
< i S 0 1 5 8 4 8 …1 及 び I S 0 1 5 8 4 8 - 2 最終案の紹介 と解説 >
脚キッッ 佐 藤
眺
Koh Satoh
村上 忠 博
Tadahiroヽ lurakanli
業用 バル ブ :
エ ミッション対応 の ための測定 、試験 、認
2.lS0 15848-1工
1.は じめに
1990年の米国連邦法Cにan Air Actの 大改訂を契
機 として起 こった工業用バルブか らの揮発性高度危険
空気汚染物質 の大気 中へ の 漏 出 (Fugitive emis―
siOn:以 下エ ミッションと呼ぶ)の 規争Jの強化力ヽ 地
球環境保護の見地から、エ ミッション対応バルブ試験
規格の制定の論議を呼び込んだことについては、既に
本誌 の通関523号 (1998年刊)及 び通巻547号 (1999
年刊)に て筆者が解説 している。523号では、米国に
於 け る法規制対応製品の 開発事例 と、設 計、試験、
認定規格化の動向 を紹介 し、547号 では、ISOに よる
試験認定規格原案 と、欧米の大手ユーザーの関連動向
について論 じた。規格案 は、バルブの タイプテス ト
1と、
(設計型式認定試験 )を 対象 とす るIS0 15848‐
バルブのプロダクションテス ト (出荷承認試験)を 内
2の二部構成 となってお り、 いず
容 とす るIS0 15848‐
ー
コン
ロ
ル
れ も、
ト
弁 と通常の流体封上開放制御弁
(以下 オンオフ弁 と呼ぶ)を 対象 としている。ISOの
技術委員会 TC-153/SClの 規格立案担当作業部会
WG10が 其の後打ち合わせを重ねた結果、本稿執筆中
の2004年 2月 現在、前者 は、メ ンバ ー国に よ りDIS
規格案 の賛否投票が本年 3月 末 日で締め切 られる予定
であ り、後者は、各国のコメント内容 の最終検討の段
階である。いずれにしても、米国を含む数力国を除 く
圧倒的多数のメンバー国が賛意 を表明 してお り、本規
格 の制定は時間の問題で、今後 の大 きな内容修正は無
い と判断される。 よって、その概要を紹介 して、読者
諸賢の参考に供 したい と考える。
easurement,test and qualiication
?主1)Industrial valves・ヽ〔
定手順 :其 の 1-タ イプテ ス トによる格付
注1)
認定 の手‖頁
ス トの一般的条件
2-1 テ
(1)供 試弁
製品の中か ら見本を無作為抽出 し、予めIS0 5208
他 の適用規格による社内テス トを済ましてお く。漏洩
の検知を妨げるような、事前の コーテイングなどの処
置は一切認められない。供試弁の内部より水分 を完全
に除去 し、社内テス ト後のステムシールの調整は、バ
ルブメーカーの指示 に従って行 い、テス トレポー トに
詳細を記録す る。バルブの作動装置は、 メーカーが選
定す る。
(2)テ ス ト流体 とテス ト温度
テス ト方法 によって、純度97%以 上のヘ リウムガス
とメタンガスのいずれかを選定するカミ テス ト開始後
の 変 更 は認 め られ な い 。 目標 とす る性 能 ク ラ ス
(Performance dass、詳細 は後述)に よって、室温に
て、又 は、室温 と指定温度 (後述)間 の段階的な昇
降後、バ ルブを開閉作動す る。バルブの温度は第 1図
に示す 3個 所 の部位で測定 して記録する力ヽ テス ト温
度 として評価 の対象 になるのは、テス ト流体 の流路 X
であり、ボデイ表面Yと パ ッキ ン室の外面Zで の測定
温度 は参考デー タである。イ ンシュレーションを施 し
た場合は、その内容を記録する。 いずれの温度 も安定
してから測定するカミ 特 にZに 於ける温度は、10分以
上の安定を要する。
〔
解説〕
当然 のことなが ら、高温テス トにメタンを流体 とし
て使用す る場合は、引火の リスクを避ける充分な処置
をとることが義務づ けられているカミ ユーザーによっ
:ClassincatiOn
p r o c e d u r e s f o r f u g i t i v e e m i sPsairotn sl‐
system and qualiication procedures for type testing of
v a l v e s ( 原文のまま)
ては(そ の危険性の完全 な回避のために、自社テス ト
配管技術 2∞ 4.5.55
・
エ ミッション対応バルブ評価試験の国際規格・
(a
第 1図 バ ルプの温度測定部位
X:テ ス ト流体の流路 (ボア内部)、Y:バ ルプボデイ表面、
Z:パ ッキン室外側
第 2図 バ キューム式グローバルテス トの概念図
1:バ キュームチェンバー、2:ヘ リウムテス ト圧力、
3:リ ークレー ト測定器
仕様書でメタンの使用を禁止す る規定を設けている場
注2)。
合 もある
(3)ス テムシール部か らの漏洩の測定
供試弁を半開にし、作動 しない状態で、対象部位全
体 をチェンバー内に密封 し、テス ト流体 の漏洩の全部
を捕捉 し測定するグローバルテス ト (Global method)
により、 リー クレー トを測定する。評価対象の数値
は、下記 に示す各封止 度 クラス (Tightness class)
のリークレー ト (ミリグラム/秒 )で ある
1.m・
封止度クラスA:106mg」
以下
スB:10・
mg」 ‰♂ 以下
封止度クラ
第 3図 バ キューム式グローバルテス トの装置例
1 :ヘ リウム供給源、 2:圧 力調整弁、3:バ
ルプ作動装置、
リウム、6:基 準較正 リークレー ト、
7 :安全弁、 8:供 試弁 のステムシール部、
9 :リ ー クレー ト測定器、10:テ ス トデー タ記録装置
4 :バ キューム、5:ヘ
封止度クラスC:10 2mgos・ .m・以下
(m:ス テムの円周 メー トル当た り)
測定方法には、バ キュー ム式 (Vacuum method)
とフラッシング式 (Flushing method)が あり、いず
れを選択 してもよい。前者では、チ ェンバーにバ キュ
ー ムポ ンプと測定器 を連結 して、直接、テス ト流体
(ヘリウムガスのみ)の 漏洩 を評価 す る (第 2図 、第
3図 )。具体的なテス ト手順 とテス ト機器については、
詳細が本規格案の付属書Allこ規定されている。
後者では、混合比の分っているフラッシュガス (空
気でも良い)を チ ェンバー内に送 り込んで、大気中に
放出される前に、テス ト流体 (ヘリウムガス又はメタ
ンガス)と の混合 ガスの濃度 を測定 し、 これをリーク
レー トに換算 して評価する (第4図 、第 5図 )。その
詳細 のテス ト手順 とテス ト機器 については、付属書
A2が 用意されている。
〔
解説〕
バキューム式は、測定結果が正確であるカミ チ ェン
バーの完全密封が条件であ り、 コス トがかさむ。フラ
?主2)Shell Global Solutions lnternational : MESC Additional
Requirement SPE77/312
56 配 管技術 2004.5
第 4図 フ ラッシング式グローバルテス トの概念図
1:フ ラッシュガス、 2:供 試弁のステム部、
3:フ ラッシュガスとテス ト流体 (漏洩分)の 混合 ガス、
4:フ ラッシングチェンバー、5:供 試弁のボディ部
ッシング式には、チ ェンバーの密封性がバ キューム式
程 は求 められないカミ テス ト時間、 フラッシユガスの
混合比決定の手間などが難点 と言われる注3)。
(4)ボ デイシール部からの漏洩の測定
ボデイシール部を大気中に開放 して、米国環境保護
注 3)Smon Leefe,BHR Croup Ltd i“
Valve stem leak■ghtness;
evaluation of rneasurement methods for qualiicaion and
ハ
rorld MagaJne,August,1999
QA tests",Valveヽ
・
エ ミッション対応バルブ評価試験の国際規格・
(3)
本卜な手法で、一般にスニ ッフイングテス ト (Sniffing
method)と して知 られる。供試弁周辺 の大気中に浮
遊す るヘ リウム又はメタン分子の濃度に影響 されぬよ
う、特 にテス ト配管全体 の シー ルに注意が必要 であ
2
る。テス ト手順 とテス ト機器 に関 しては、詳細が本規
3
1
4
6
C
第 5図 フ ラッシング式グローバルテス トの装置夕1
フラッシユガス供給源、2:圧 力調整弁、3:流 量調整弁、
フロー レー ト測定、5:フ ラッシングチェンバー、
漏洩 リークレー ト検知器、
フラツシユガスとテス ト流体 (漏洩分)の 混合 ガス (濃度)
4)の
測定手順によ り、テス ト
流体 (ヘリウム又はメタン)が 大気中に漏れ出 した瞬
間、 スペ ク トロメー ターの検知針 の先端 よ りこれを吸
庁令 EPA Method 21注
入 して、大気 中の濃度 (ppmv)を 測定す る (第 6
図、 第 7図 )。プラ ン ト現場 での作業 を前提 とした素
格案の付属書 Bに 規定 される。評価基準は、最大検知
濃度50ppmvで 、 この数値 を超えた供試弁は、 ステム
シール部からの漏洩の測定結果に関係なく、エ ミッシ
ョン対応バルブとしての認定が否定される。尚、供試
弁 のサイズカ河ヽさ過 ぎて、 ステムシール部 とボデイシ
ール部の個別の測定が難 しい場合 は、バルブ全体 をチ
ェンバー に密封 して上記 のグローバルテス トを行 い、
リークレー トで封止度クラスの評価 をする。
〔
解説〕
スニ ッフィングテス トの欠点 として指摘 されるのカミ
風、大気温度 などの環境条件 にテス ト結果が影響 され
易 いこと、測定器の検知針 の測定部位の接触 に細心 の
注意が求め られることなどで、ISOの 作業部会 で も、
スニ ッフィングテス トの採用 は終始議論の対象 となっ
た。今回、 ボデ イシー ル部 の テス トに採用 され たの
は、大型のバルブでは、/1Nilll定
部位 の外気 か らの完全
な遮断が不可能であり、グローバルテス トの採用 に無
較
理があること、及びt屋 内のテス ト環境 は管理力泄ヒ
的容易であることなどが考慮 された結果である。
第 6図 ス ニ ッフィングテス トの概念図
:供 試弁のステム部、 2:測 定器のリーク検知針
(5)テ ス ト機器
既に述べ たように、テス ト機器 の詳細 の条件 は、付
属書に規定されるカミ 規格案の本文 は、テス ト機器が
下記の一般的な条件 を満たすことを求めている。
︱
FL ﹁
出
第 7図 ス ニッフイングテス トの装置例 (ヘリウム使用の場合)
ヘリウムガス供給源、2:空 気抜 き、3:圧 力記録計、 4:リ ーク検知針、5:流 量計、 6:リ ーク波1定器、7:フ ローローターメーター
注 4)EPA Method 21:Determination of Volatile Organic
Compound Leaks
支a行 2004.5. 57
酉己籠
彗ま
エミッション対応バルプ評価試験の国際規格 ・
4)
《
ら P 助
① テ ス ト圧力を、指定圧力の±5%に保持する。
② 室 ,鼠 高,急 低温のいずれかで、オンオフ弁の
場合、500回 以上、 コン トロー ル弁 の場合、
20,000回
以上、バルブの連続開閉作動を行う (後
述 )。
③ 供 試弁の設定温度を±5 % に保持する。但
し、 ± 15℃ を超 えない こと。
④ テ ス ト時間、テス ト圧力、テス ト温度、テス ト
流体の漏洩、バ ルブの開閉所要時間、バルブの操
作力 (又は トルク)、ステムシールの所要負荷 な
どを正確 に測定す る。
(6)ス テムシールの調整
――――●●CCl
CC2
Ⅳ
第 8図 、第 9図 には、供試弁の連続開閉作動 (以
下、開閉サイクル)と 温度昇降 (以下、熱サイクル)
に つ い て の 条 件 が 規 定 され る。 耐 久 度 ク ラス
(Endurance dass)認 定 の前提 である。例えば、オ
ンオフ弁 の場合、クラス 1で は500回 の開閉サイクル
と2回 の熱サイクルのテス トで目標 とする封止度クラ
ス条件 を満たす ことが求 め られ、クラス 2以 上では、
それぞれ1,000回の開閉サイクルと 1回 の熱サイ クル
の追加が前提 となる。此処で万一 日標 とす る最大漏洩
量 を超えた場合 の救済処置が、ステムシールの調整、
即 ち増 し締めで、すべ てのクラスのテス トステージ毎
にそれぞれ 1回 の増 し締 めが許されている。このステ
ムシール調整は、テス ト弁の性能評価に極めて重要な
第 9図 コ ントロール弁の耐久度クラスとテス ト手順
T躊`:テ ス ト温度 (℃)、N:開 閉作動回数、P:テ ス ト温度
ι::ス テムシールの漏洩測定 (白四角)
ー
ち :ボ デイシ ルの漏洩測定 (黒四角)
CCl、 CC2、 CC3:コ ントロール弁の耐久度クラスの例
調整の効果が再テス トで立証されなかった場合、テス
トはこの時点で終了 し、当該供試弁のエ ミッション対
応バ ルブとしての認定、不認定が決まり、認定の場合
は、その性能 クラスの格付が決まる。テス トが供試弁
の機能的欠陥の発生で続行不能となった場合 も同様で
ある。また、 ステムシール調整のための最大締め付け
力 (又は トルク)は メーカーが予め決めてお く。尚、
第 8図 、第 9図 については、次項 で改めて触れる。
条件なので、例え│よ SSA-1、 SSA-2の ようにテス ト
レポー トに言
己録する。SSAは Stem Seal Adiustment
〔
解説〕
ステムシール部からの漏洩が発生 し易 いのが、配管
の省略表示であ り、数字は各 ステー ジでの調整回数
(0又 は 1)の 合計である。 このようなステムシール
温度が高温から常温に下がった時点であることは、プ
ラン ト現場 での経験、 シミュレー ションテス トの結果
などで良 く知 られている。シール周辺 の金属部品の膨
張 と収縮、 シール材 自体 の応力緩和な どがその原 因 と
助 P 助
されているカミ シールの増 し締めが漏洩の低減に有効
であることも同様 に知 られている。 よって、耐久度ク
ラスのステージ毎に、少なくとも1回 の熱サイクルを
iV
0
500
1,000
1,500
Ⅳ
2,000
3,500
C03
第 8図 オ ンオフ弁の耐久度クラスとテス トヨ順
ηe,:テス ト温度 (℃)、N:開 閉作動回数、P:テ ス ト圧カ
Ll:ス テムシールの漏洩測定 (白四角)
ら :ボデイシールの漏洩測定 (黒四角)
COl、 C02、 C03:オ ンオフ弁の耐久度クラスの例
58 配
管技 術 2CIC14.5.
行 って、′ジレブのステムシール性能の回復能力を評価
す ることが決められた。
2-2 テ
ス トの手l旧
2-2-1 供
3,000
試弁の取 り付け姿勢
テス ト現場 での配管方法はメーカーが指示す る。原
則 として、バルブを、水平配管に対 しステムが垂直に
なるように取 り付けるが、プラン ト現場での通常の取
り付け姿勢が これと異なる場合は、バ ルプの取 り付け
を、ステムが水平になるような姿勢で行 う。
〔
解説〕
これについては、作業部会で も異論があった。配管
エ ミッシヨン対応バルプ評価試験 の国際規格・(5)
設計又 は使用 目的によっては、現場 でバルブの垂直配
管、水平取 り付けの必要な場合がある力ヽ これをテス
ト設備 の水平配管 による評価に採用す ると、バ ルブの
設計によっては、ステムシールの正確なシール性評価
が妨げ られることがあるとして反論 もあった。然 し、
超低温弁の例が議論 され、 この方法 に落ち着 いた。バ
ルブの設計 と使用方法カミ
極めて多岐 に亘る現状 では、
メーカー とユーザーの現実的な解釈 と判断が必要な規
定であると考える。
ンオフ弁の性能 クラスの評価 (第8図 )
2-2-2 オ
、開閉サイクル500回 、
耐久度 クラス 1(C01)は
熱 サ イ クル 2回 (常温 を除 く)、耐久度 ク ラ ス 2
(C02)は 、重ねて開閉1,000回、熱サイクル 1回 、耐
久度クラス 3(C03)│ま 、更に開閉1,000回、熱サイ
クル 1回 のテス トを行い、 日標 とす る封止度を実証出
来 た時 に、当該 クラスに認定 される。同様 に して、
C04、 C05… と更に上の耐久度クラスヘ の挑戦が可
能である。メーカーの特別の指示 の無 い限 り、最低、
□ 目 標温度 での静止 テス ト
テス ト流体 を、適用規格に規定されるテス ト温度対
応の圧力に調整す る。圧力が安定 したところで、供試
弁 の温度を目標温度 (後述)に 設定 し安定 してか ら
ー
(±5%、 但 し±15℃以内)、 ステムシ ルのみの漏洩
を測定 し記録す る。COl、 CClの 場合は繰 り返す。
□ 目 標温度 での作動テス ト
目標温度、加圧状態で開閉サイクルを行い、 ステム
ー
シ ルからの漏洩のみを測定 し記録す る。C01、 C02
の場合 は繰 り返す。
国 室 温での中間静止テス ト
供試弁の温度を自然 な手段で室温 にもどし、安定 し
た ところでステムシー ルの漏洩 のみ を測定 し記録す
る。このテス トは、COl、 CClの 場合 のみ行い、高い
耐久度 クラスの認定テス トには適用 しない。
日 室 温での最終静止テス ト
供試弁の温度 を自然な手段 で室温にもどし、安定 し
たところで、ステムシール、ボデイシールの双方か ら
6バ ールの空気又は不活性 ガスを完全封上可能なハ ン
ドル操作力 (又は トルク)を 以ってオ ンオフ弁の開閉
の漏洩を測定 し記録す る6
日 テ ス ト終了後の見本検査
サイクルを行い、開時間、閉時間、休止時間を測定 し
記録す る。ただし、弁全開時の完全なバ ックシーテイ
ングは不要である。
ン トロール弁の性能クラスの評価
2-2-3 コ
テス ト終了後、供試弁 を分解 して目視検査 を行 い、
ー
己録 して参考
シ ル材 の腐食、その他の異常あれ│よ 言
に供する。
2-3 タ
イプテス トによるバル ブの
各性能クラスの認定
(第9図 )
クラス
1(CCl)は
耐久度
、開閉サイクル20,000
回、熱サイクル 2回 (常温 を除 く)、耐久度 クラス 2
(CC2)以 上は、重ねて40,000回ずつの開閉サイクル
止度クラスの認定
本規格案 は、封止度クラスの項 に特に備考欄 を設け
て、一般的に各封上度 クラスの前提 となると考え られ
と 1回 ずつの熱サイクルを行 う。 オ ンオフ弁 と同様、
テス ト弁 の性能次第では高い耐久度 クラスヘ の挑戦が
可能である。メーカーの特別の指示 の無い限 り、直線
るステムシールの材料、構造 についてのガイ ドを試み
運動 のステムの上下動 の速度は、毎秒、1乃 至 5ミ リ
メー トル、90度 回転 のステムの開閉移動度 は、毎秒、
1乃 至 5度 と規定されている。
2-2-4 漏
洩の測定の順序
再度、第 8図 、第 9図 を参照されたい。図中の数字
回 、□、□、□、□、回、 について順次説明す る。
□ 室 温での静止 テス ト
テスト流体を適用規格に指定される常温での最高使
2-3-1 封
ている。1「ち、
ー
① ベ ローズシールタイプ、又はそれと同等のシ
ー
ル性能を備えたステムシ ル構造 の90度 回転型
バルブカミ 封止度 クラスA認 定に適 していること
② ま た、クラスA認 定は、ヘ リウムによるバキユ
ーム式 テス トを前提 とすること
③ B認 定には、PTFE系 パ ッキン、又はエ ラス ト
マー系 シールが適 していること
用圧力まで昇圧 し、圧力 の安定を待って (±5%)、ステ
ムシールとボディシールからの漏洩 を波J定し記録す る。
④ C認 定には、膨張黒鉛系 のパ ッキ ンが適 してい
ること
などが付記 されている。尚、封上度クラスの略式表示
は、ヘ リウム使用 の場合、AH、 BH、 CHの 3クラス、
□ 室 温での作動テス ト
室,鼠 加圧状態で開閉サイクルの後、ステムシール
からの漏洩のみを測定、記録する。C01、 CClの 場合
は国 の静止テス トをはさんで、 これを繰 り返す。
メタン使用 の場合 は、BM、 CMの 2ク ラスとしてい
る。メタンを使用 の場合、 クラスA認 定が認 め られ
ないこ とが、此処で裏づ け られている。既 に述べ て
いるように、封上度クラス認定 は、ステムシー ルか
酉己管ま支a肝 2004.5. 59
・
エミッション対応バルブ評価試験の国際規格・
6)
〈
らの漏洩の測定結果 のみが前提 となっている。ボデ
イシー ルは、 単 一 の評価基準 を濃度 50ppmvと し、
この基準 を満足 しなければ、ステムシールのテス ト
結果に関係 な く、供試弁はエ ミッション対応 バ ルブ
としての認定 を一切否定 される仕組みである。
〔
解説〕
いる。
本規格案 の備考欄には、更に、 この50ppmvの 7it度
と各 クラスのリー クレー トとの間に換算その他 の相関
関係は全 く無 い旨、わざわざ断っている。流体 シール
関連、流体力学関連の学会、業界での国際的なコンセ
ンサスの確立 していない現状が反映されていて、ISO
の担当作業部会の苦労の程が想像 されるではあ りませ
んか。
2-3-2 耐
久度クラスの認定 (第8図 、第 9図 )
これ も既 に述べ られて い るが、オンオフ弁、 コン
トロー ル弁 の双方共、耐久度クラス 1(C01、 Ccl)
は、テス ト回 で始 まり、□、□、E41、と続 いて、国
をはさんで、□、回、□が繰 り返 され、国 で終了す
る。 それ以上のクラス認定の場合 は、□、E31、
日と
進んで、□で終了す る。
〔
解説〕
舞台裏の話であるカミ 作業部会での議論はオ ンオフ
弁の開閉回数で沸騰 した。例え│よ 最低 50Cl回の開閉
サイクルの条件は、グローブ弁 には苛酷過 ぎるカミ ボ
ール弁には甘過 ぎるのではないか、 自動弁 と
手動弁 に
い
い
はおか
同じ条件
し ではな か、などの批 判であ る。
さる大手ユ ーザーが、 この点を黙視出来ない として、
自社 のテス ト仕様で、弁種 を細か く分類 し、現実的な
2)。
作動条件設定の努力をしているのは注 目される注
2-3-3 温
度クラスの認定
作業部会で の錯綜 した論議の結果、使用温 度認定
の対象は、次の 5ク ラスに決まった。
-196℃
-4613
(t-196℃)と 赫
(t-46℃)と 表示
室温
(tRT)と 赫
200℃
(t200℃)と 表示
40013
(t400℃)と 表示
認定クラス ロ標 とす るテス ト温度 は、上記から選ぶ
のが原則であるが、バルプのシー ル材 の温度特性が多
様なので、それ以外 の温度 でのテス トも認められてい
る。テス ト温度が0℃ 以上なら、上記の一段下の温度
クラスに格イ
寸けられる。例え:よ 250℃でテス トの場
合の認定クラスはt200℃となる。0℃ 以下なら、一段
上の温度クラスに格付 け られる。例え:よ -80℃ での
テス トでの認定クラスはt-46℃である。各認定温度 ク
60
ラスのバルブ使用上の適用範囲は、当該温度 と室温 の
間の すべ ての温度 となってお り、 また室温 クラス
(tRT)は -29℃ よ り40℃迄を使用温度 とす る。但 し、
メーカー とユーザーの合意があれlよ 上記以外 の温度
クラスを設定出来るとい う現実的な選択肢が残 されて
酉
己管ま
支利
肝 2004.5.
2-3-4 認
定内容 の表示例
タイプテス トによ り認定された性能クラスは、 関連
文書、製品タグプレー トなどに、例え│よ 下記のよう
な省略記号によって識別表示 される。
〔
例〕
ISO FE BH=C01SSAl― t200℃‐
CL150‐IS015848‐1
1SO FE:ISO規 格により認定 された
エ ミッション対応バ ルブ
リウムテス トによる封止度 クラスB
ン
C01:オ
オフ弁 の耐久度クラス 1
(500回開閉サイクル ・2回 熱サイクル)
BH :ヘ
SSA‐1:テ ス ト中のステムシール調整回数 :一 回
t200℃:使用温度範囲は室温より2∞℃まで
CL150:圧 力温度定格 ASME Class 150
1S015848‐
1:適 用ISO規 格番号
2-3-5 未
試験バ ルブに対する認定の拡大適用
下記の条件を満足すれ│よ 本規格案による認定のた
めの評価テス トを受けていないバルブにも、エ ミッシ
ョン対応品としての性能クラスが拡大 して適用され
る。尚、バルブの手動操作機、自動操作機の使用、不
使用は拡大適用とは無関係である。
① ス テムシール、ボディシールの材料、設計、構
造が同じであること。
② シ ール装填の条件カミ シール部に対 して類似の
応力を発生せしめること。
③ ス テムの作動方式が同一であること。
④ シ ール性能に影響を与える部品の寸法許容差ク
ラス CS0 286)と 表面仕上げの仕様が同一であ
ること。
⑤ ス テム径が認定済み製品に対 して、50%か ら
200%の 範囲内にあること。
⑥ 圧 力温度定格が同等又はそれ以下であること。
⑦ 目 的とする温度クラスが室温と認定済み製品の
認定温度の範囲を超えないこと。
③ 目 的とする封止度クラスが同等又はそれ以下で
あること。
〔
解説〕
ここでは、本規格案原文にある 〔
same〕 を 「
同じ」
と、〔
similar〕
を「
類似」と、6dentical〕を 「
同一」
・
エミッシヨン対応バルプ評価試験の国際規格・
つ
く
と、 〔
equal〕を 「
同等」 と和訳 して紹介 しているが、
これらが どう違 うのか、定義が見当たらず、作業部会
の英国、米国の代表 に尋 ねても納得 の出来る回答は得
られなかった。特に上記 の①、②、④ に関 しては、実
一
際の規格 の運用上の問題が発生 しそうである。今 つ
3-3 ス
テ ム シール か らの漏 洩 の測 定
ー
半開の供試弁を加圧 し、ステムシ ルからの漏洩を
測定す る。其 の後、5回 開閉 し、再び半開にて漏洩を
測定す る。供試弁 の全数が下記の評価基準 を満たすこ
とが当該生産 ロットの合格 の条件である。
作業部会で議論が百出したのは、⑤のバルブの拡大適
用範囲であった。最終的には、例 え│よ AP1607の フ
ァイヤーテス トの拡大適用基準 に事実上近似の規定で
認定クラスA:測 定濃度 50ppmv以
認定クラスB:測 定ill度 100ppmv以
落ち着 いた。分か り易 い例を挙げれ│よ 筆者 の勤務先
で製造 しているAP1600準 拠 のゲこ 卜弁 の場合、 クラ
ス150で は呼び径6"(ス テム径 30mm)又 は8"(ス テ
〔
解説〕
ム径32mm)の バルブが合格すれ│よ 1"(ス テム径 16
mm)か
ら24"(ス テム径 58mm)ま での全サイズが
認定 される。同様に、 クラス300/600で も6"の合格
で24"までの全サイズが認定 されるし、 またクラス600
で合格すれlよ 無試験 でクラス150/300が 認定され
ることになる。ただし、 この場合、 ボディシールの構
造が同 じであることが条件 である。
3.IS0 15848-2工
業用 バル ブ :
エ ミッシ ョ ン対応 の ための測 定 、試験 、認
注5)
定手順 :其の 2-プ ロダクションテ ス ト
テス ト条件、テス ト調 順、認定内容の識別表示など
は、すべ て、上記 IS0 15848‐1の タイプテス トに関す
る規定が準用される。エ ミッション対応バ ルブの出荷
承認試験のための特別な条件 としては、下記が簡単に
規定されているのみである。
3-1 供
試弁
ロ
標準生産 ットの中から、バルブの種類、圧力温度
定格、呼 び径毎に3%(少 な くとも各 1台 )の 見本を
無作為で抽出し、予め、適用試験規格、ユーザー仕様
書 による社内テス トを済ませてお く。メーカー とユー
ザーが合意 した場合 は、3%以 外 の抽出率 で も構 わな
い。尚、プ ロ ダクシ ョンテス トの対象 となるのは、
IS0 15848-1に よるタイプテス トで設計型式 を認定 さ
れた製品のみである。
ス ト方法
3-2 テ
純度97%以 上のヘ リウムを使用 し、室温にて、ISO
15848-1の付属書 Bに 規定 されるスニ ッフィングテス
トにより、テス ト環境 での漏洩濃 度を測定 し評価す
る。テス ト圧力は 6バ ールである力ヽ メー カー とユー
ザーの合意あれ:よ 他 のテス ト圧力でもよい。
Measurement test
注 5)Industrial valves‐Fu」tive emissions‐
2 : Production
and qualification procedures Part
―
下
下
認定 クラスC:測 定濃度 1,000ppmv以 下
米国連邦法Clean Air Actでは、500ppmv以 下を
合法基準値 としているので、1,000ppmvの漏洩濃度を
エ ミッション対応バルブの出荷承認テス トの判定基準
とす るのは、矛盾 ではないか、 との意見が作業部会で
出されたカミ 米国では、メタンカヽ プラン ト現場 での
すべての流体 の漏洩濃度評価 の基準流体 として特定 さ
れてお り、スニ ッフイングテス トによるヘ リウムの漏
洩測定値力ヽ 通常 のテス ト条件 ではメタンの測定値 よ
りも高 いとい う事実 の検証資料 の提出な どもあって、
この数値 に落ち着 いた。
3-4 ボ
ディシールからの漏洩の測定
半開の供試弁を加圧 しボデイシールからの漏洩を測
定する。供試弁の全数が50ppmvの 評価基準を満 たす
ことカミ 当該生産 ロットの合格の条件である。
佐 藤 眺 (昭和 6年 6月 5日 生 。秋田県出身)
帥キッツ 総 務人事部 研 修担当部長
1
〒261‐
8577 千 葉市美浜区中瀬 110‐
2"Ю 121
TEL:043-299-1730 FAX:043‐
Mail:k‐satoh@kitzcojp
E―
主なる業務歴及び資格〉
〈
元開キッツ海外営業部長
1997年 以 降、ISO/TC153/SC1/WG10に
IS015848規 格等の立案作業 に参加 している。
よる
主なる執筆〉
〈
建築設備 と配管工事,523号 ,547号
村上 忠博 (昭和 18年 6月 27日 生 ・長野県出身)
帥キッツ バ ルブ事業部 技 術開発センター
主任技師
〒408-8515 山 梨県北巨摩郡長坂町長坂上条2040
204183
TEL:0551-204160 FAX:0551‐
Mail i t―
[email protected]
E‐
主なる業務歴及び資格〉
〈
1997年 以降、ISO/TC153/SC1/WG10に
IS015848規格案の作成作業に参加している。
よる
a c c e p t a n c e t e s t o f v a文
l vのまま
e s ( 原)
照)
(会
社紹介は■e y m a n & s r 2 参
配管技術 2004.5.61
・
配管設計入門 ・再入門講座②・
〈1)
H0402‐07
0385‐9894/0″ γ500′論 X/」CLS
連載講座 〕
酉己
釘設計入門 ・
催
再入門講座②
P E コ ンサ ルタン 卜
高橋
高 橋 利 彦
Toshihiko Takahashi
1.配 管設計者 の予備 知識
1-1 配 管部品の種類の名称 とその使用目的
石油、石油化学、一般化学、発電プラ ン ト等 の配
管図で用 い られている用語は第 1表 のとお りである。
なお第 2表 では部品の形状で説明 している力ヽ 実際
肉厚別、製造方法 (継目無、鍛造、溶接構造)別 、
及び適用規格別 GIS、ANSI、BS、etc.)による種
類がある。
個別部品の形状については別紙の図番 と照合 された
い 。
の種類は、更に材質別、圧力等級別SCH、 NO.及 び
第1表
部品名称
NO
l
フランジ
2
ベ ンド
3
エルポ
4
マイターベ ンド
FLANGE
BEND
ELBOW
テイー
MITER BEND
TEE
ワイ
7
Y
クロス
CROSS
レジューサ ー
REDUCER
キ ヤップ
CAP
カップ リング
1
Boss
プラグ
T形 した分岐継手の一つ。
Y形 した分岐継手の一つ。
十字形 した分岐継手の一つ。
配管の口径を絞る、拡大させる時に用いる。同心方 (Concent五
c)偏心形
二通りがある。
(Eccentric)の
小径配管の枝出し部の補強として用 い られる、差込溶接形 とねじ込み形が
ある。3000#、6000#がある。
カップリング と同 じで使 い手 によって呼 び名が異 なっているだ け
ね じ込み カップ リングの栓 として用 いる。
PLUG
アウ トレッ ト
海老曲げ管 といいパイプを刻んで作った大口径管のベンドとして用いられる。
45°
、90°がある。
配管端部の閉止に用いる。
COUPLING
ボス
用途 ・機能
機器、回転機等のノズルとの接続部、ライニング配管、二重管配管、運転中
のプラント内の増設、改造配管の接続等に用 いる。
SOFF、 SORF、 WNRF、 WNR」 、BLIND FLANGE、
125#、 150#、
300#、 600#、 1500#、 31100#等がある。
流体の流れの方向を変える為に用 いる。エルボとの使 い分けは無い。45°
90°、180°がある。
°
流体の流れの方向を変える為に用いる。45°、∞ 、180°がある。
ouTLET
配管の枝管の取 り出し部の補強のために用いる。オーレットとも言う。
4
ユニ オ ン
UNION
小径配管の接続継 ぎ手の一種。
5
ニ ップル
NIPPLE
短管の両端にねじ切 りしてあり小径管のねじ接続に用 いる。
鍛造で作 られたニップル。比較的径の大きい配管の圧力計の取 り付けノズル
として用いられる。
配管の枝出 し開口部の補強板
スェー ジニ ップル
17
SWAGE NIPPLE
ド
PAD
レインフォーシング プ レー ト REINFORCING PLATE
パ ッ
ドリップ リング
DRIP RING
スチーム トラップ
配管の技出し開口部の補強板でありPADと 意味は同 じ。
8の 字閉止板、管内の流体を完全に止める場合は閉止板 を使い流体を流す
場合は開口した側を差 し込んで用 いる。
通常ステンレス鋼管、ライニング配管等の端部に取 り付けルーズフランジと
対で用いる。
フランジとフランジの間に取 り付けるプリーダ取 り付けに用 いる。
STEAM TRAP
蒸気の凝縮水の排出設備。
スペ クタクルプライ ン ド
スタブエ ン ド
SPECTACLE BLIND
STUB END
(つづ く)
配管技術
2004 5.
│
・
2)
〈
配管設計入門 。再人間講座②・
第 1表 (つづ き)
ストレーナ
26
用途 ・機能
ー
流体中の異物を除去 してポンプ、 コンプレッサ 、計器等の保護のために
部品名称
NO
STRAINER
用いる。
ベローズ式エキスパンション BELLOWS TYPE
ジョイント
EXPANS10N JOINT
ベローズ式伸縮継手で配管の熱膨張量の吸収に用いる。
エ キスパ ンシ ョン フレー プ
うレープ、u形 の形状にして配管のフレキシビリテイをつけ熱膨張量の吸収を
させる為に用いる。たこベンドとも呼ばれる。
ボール ジ ョイント
EXPANS10N L00P
Ball Joint
フレキシブル ホ ース
FLEXIBLE HOSE
スタッ ド ボ ,レト
STUD BOLT
マシン ボ ル ト
MACHINE BOLT
ユ ー ボ,レト
ユーバンド
BOLT
U‐
Band
U‐
Saddle
サ ドル
フィックス ド バ ンド
ス タンシ ョン
Fixed Band
Stanchion
アジャス タブルサポ ー ト
AdJustable Support
スライデ イ ング シ ュー
SLIDINC SHOE
フイックス ド シ ュー
FIXED SHOE
ダミーサポ ー ト
DAMMY SUPPORT
スプリング ハ ンガー
SPRING HANGER
コンスタン トハ ンガー
CONSTANT HANGER
スプリング サ ポー ト
SPRING SUPPORT
プラケ ッ ト サ ポー ト
Bracket Support
ハンガータイプ サ ポー ト Hunger Type SuDOOrt
Cate Type Support
門形サポー ト
Catilever Support
片持ち梁サポー ト
レス トレイ ンサポー ト
スライデ イング ガ イ ド
Restralnt Support
Sliding Guide
一
配管の変位を吸収する継 ぎ手の つ
配管の振動やタンク接続配管の沈下に対する変位量の吸収等の目的で用いる。
一
総ねじ切 りされたボル トで 般に配管のフランジ締め付け用 として用いる。
一
頭付 きボル ト 配 管では 般的には使用 しない。
1と して用いる。
U字 形ボル トでパイプサポー ト上で簡易的固定り
U字 形ベル トでパイプサポー ト上で簡易的固定用 として用いる。
一
主に大口径パイプヘの局部応力を緩和する為 に用いるサポー トの 種
パ イプを固定す るバ ン ト
立て形サポー ト
サポー トの 高さを調整 で きるサポー ト
一
ー
ー
保温配管の保温 の保護のために取 り付けたサポ トの 種でサポ ト上で
スライド出来る。
一
ー
ー
保温配管の保温の保護のために取 り付けたサポ トの 種でサポ ト上で
固定する。
ー
垂直、水平の二通 りあるが、パイプは流体が流れるがサポ トには流体は
流れないのでダミー と呼ぶ。
スプリングで配管荷重を支持する軸方向変位が吸収出来 る。荷重を吊 り下
げ式に支持する。
スプリングで配管荷重を支持するX、 Z、 Y軸 方向変位が吸収出来る。
スプリングで配管荷重を支持する軸方向変位が吸収出来る。床、もしくは
グランド上に設置 して垂直方向の変位を吸収する。
プラケットサポー ト 片 持ち張 リサポー トより荷重の大 きい時に用いる。
吊 り形サポー ト
門形 した形状のサポー ト
片持ち梁形状 のサポー ト
配管の半径方向を拘束する為に用 いるサポー ト
タワー、 コ ラムの配管 のサポー トの一 つ 、図 を参照。
第2表
2 SOFF
1‐
1‐
3 SORF
14ヽ VNRF
Plate Flange
Slip On Flat Face Flange
Slip on Raised face Flange
k Rttsed Face
ヽ
Velding Nec・
1‐
5 WNR」
Welding Neck Ring Joint
1‐
6
1‐
7
1‐
8
Blind Flange(R」sed Face)
oint)RJ
Blind Flange(Ring」
Delta Ring Flange
1
-
1
RF
1´
9.
1‐
10
1 ‐1 1
Lense Rng Flange
Reducing Flange
Roose Flange
その他各種工業会別規格による形
状の異なったフランジがある。
(つづ く)
配管技術
2004.5. 63
・
配管設計人間 ・再入門講座②・
て
の
第 2表 (つづ き)
2‐
1 90°Bend(Elbow)Socket
2‐
245° Bend(Elbow)Socket
2‐
390° Long Bend(Elbow)
2-4 90°Short bend(Elbo、 v)
type
type
Butt Weld type
ButtヽVeld type
2‐
545° Lοng Bend(Elbow)
2‐
66° Short Bend(Elbow)
2‐
■ 180°Long Bend(〕
Butt Weld type
Butt Weld type
Butt Mreld type
Butt Weld type
合
bOw)
28180° Short Bend(Elbow)
妙
4‐
1ヽliter Bend(Twoヽ Veld)
4‐
2 N41iter Bend(Three Weld)
4‐
3ヽ liter Bend(Four Weld)
5-l Tee Socket type
52 Tee
5‐
3.Tee
54 Tee
61Y
Screwed type
61Y
ButtヽVeld type
Butt Wdd type(同 径)
7‐
l Cross
B u t t W e l d t y p e (径
異)
7‐
2 Cross
Socket type
Soctet type
l Concentric Reducer
8‐
Butt Weld type
Socket type
:
8‐
2 Concentric Reducer(1)
Butt Weld type
9‐
1.Cap
Screwed type
8 3 Concentric Reducer(1)
Butt Weld type
2 Cap
9‐
84 Eccentric Reducer(I)
ButtヽVeld type
9‐
3 Cap
Socket type
‐
圏
85 Eccent五 c Reducer(■
)
Butt Weld type
10‐
l Coupling(Boss)
ButtヽVeld type
Full coupling
D
(つづ く)
64 配 管技術 2004.5.
・
4)
〈
配管設計入Fり。再入門講座②・
第 2表 (つづ き)
10‐
2 Coupling (Boss)
Half coupling
12-2 Plug
Square head plug
13‐
3 0utlet
10‐
3 Coupling (BOss)
Screwed Half coupling
4 Coupling (Boss)
10‐
1 0utlet
13‐
12‐
3 Plug
Hex head plug
Round head plug
13‐
2.Outlet
Butt Weld type
Socket、veld type
15 Nipple
14 Union
12‐
l Plug
Screwed Full coupling
16 S、vage Nipple
Theaded type
17 Pad or Reinforcing Plate
19‐
l Spectacle Blind
Figure8 Bind Plate(RF)
20‐
l Stub end
RFフ ラ ンジ用
2 Drip Rng
21‐
R J フ ランジ用
2112 Stub end
R」フランジ用
22‐
l Steam Trap
Disc type
2 Spectacle Blind
19‐
Figure‐
8 Blind Plate(R」
)
21 l Drip Ring
RFフ ランジ用
22-2 Steam Trap
Float type
配管技術
2004.
「
配管設計入門 。再入門講由②…(5)
第2表 (つづ き)
22-3 Steam Trap
Bimetal type
23‐
3 Strainer
Bucket Type
24 1 Bellows Type ExpansiOn」
oint
Rod Type
244 Bellows Type Expansbn Joint
Universal Type
24マ Bellows Type Expansion Joint,
Cimbal Type
24‐
10 Bellows Type Expansion Joint
Pressure Balanced type
l Strainer
23‐
Y Type
4 Strainer
23・
Double Type
24‐
2 Bellows Type Expansion Joint
Ring Controlled
24‐
5 Bellows Type Expandon」 dnt
Flanged End Double Bellows
24 8 Bellows Type Expansion」
oint,
Hinged Type
23‐
2 Strainer
T Type
23‐
5 Str」ner
Temporary
24‐
3 Bello、
■
s Type Expandon」 oint
External Cover Type
21 6 Bello、
vs Type ExpanSon」oint
Beveled End Double Bellows Type
24 9 Bellows Type ExpanSon」
oint,
Free Type
24‐
1l Bellows Type Expansion Joint,
Packless
(つづ く)
66 配 管技術 2∞ 4.5.
・
6)
〈
講"② ・
配管設計入門 ・再入Fり
第 2表 (つづ き)
25‐
l Expansion Loop
2 Expansion Loop
25‐
25‐
l Expansion Loop
25‐
2 Expansion Loop
26 Bell Joint
2 7 Flexible Hose
28 Stud Bolt
29 Machine Bolt
30 U Bolt
31 U Band
32 Saddle
33 Fixed Band
34‐
3 Stanchion
4 Stanchion
34‐
国
34‐
l Stancl■on
2 Stanchion
34‐
34-5 Stanchion
筆者紹介】
【
高橋 利 彦
PEコ ンサルタント高橋 代表
〒2300074 横 浜市鶴見区北寺尾629-9
TEL:045-572-8307 FAX:045‐ 5723307
配 管技 術 2004.5. 67
│
配管装置のトラブルとその未然防止①…(1)
H0402-03
0385‐
γ500言
9894/0″
CLS
命文/」
〔連載講座 〕
配管装置のトラブルとその未然防止①
<失 敗 を繰 り返 さないために>
西野配管装置技術研究所 西 野 悠 司
Yuji Nishino
1. は じめに
技術 は人類 の誕生以来、遅速 の差 こそあれ、常に進
歩を続けている。
新 しい技術にツヒ
戦 して行 く場合、失敗をおかす確率
は高 くなる。なぜなら、それは実績で裏打ちされた技
術ではないか らである。新 しい技術は如何に慎重に事
を進めるにせ よ、人間は神ではないから、検討 し尽 く
した積 もりでも、未知 の部分が どこかに潜 んでいる可
能性を否定できない。新技術を採用する際、人はより
技 術 者 に とって、想像 力 と恐怖 心 は悲 濠1を避 け る最 良
の道具のひとつである。
」
この言葉は、技術者であれば、説明を加えなくて
も、なるほどと共感できるのではなかろうか。
もう一つの言葉は、スペイン生まれのアメリカの哲
学者、ジョージ ・サンタヤナ (1863∼1952)の 言葉
です。
過去を記憶 しないものは誤 りを繰 り返すよう運命
「
づけられている。
」
“
Those who cannot remember the past are
謙虚にな らなければならない力ヽ それで も失敗 を皆無
にはできない。
condemned to repeatit''
逆の見方をすれlよ 失敗によって技術は進歩 してい
るとも言える。失敗 の再発防止策カミ 貝口ち技術の進歩
この短 い言葉 は、技術 の世界 において トラブ ルを繰
り返 さない秘訣 を言 い尽 くして い るよ うに思 われ る。
となる。そして、失敗 のないところに、技術 の進歩は
ない と言ってもいいだろう。
トラブルの再発 防止 は、ト ラブル を記録す るところか
しか し、そ うは言っても、失敗の起 きる確率は最小
限にする必要があり、特に同 じトラブルを三度お こし
た り、ケア レスなミスを犯 した り、し てはならない。
この 「
配管装置の トラブルとその未然防止」 と題す
る連載講座 の前半部では、技術的な トラブルを防止す
る方法 として、ト ラブル防止ための ドキュメン トの様
式、ト ラブル と密接な関係 のある 「
実績技術からの変
ー
更点管馴 、デザイ ンレビュ とFMEA、 仮想演習な
どを取 り上げる。
そして後半部では、配管装置における代表的と思わ
れる トラブル事例 とその再発防止策を紹介す る。
2.ト ラブル に関 する名言
先ず、ト ラブルに関連 した儀言を二つ紹介する。
最初 は、米国の先進的な構造設計技術者である レ
フ ・ツェ トリン (1918∼1992)の 言葉 です。
「
私 はあらゆることに注意を払い、惨事 を思 い浮か
べ ようと務めている。私は、 いつ も恐怖に襲われる。
68 配 管技術 2CIC14 5
ら、始 まるのである。
3.ト ラブルによる損失 は技術料
トラブル、失敗 は顧客 に対する会社 の信用 を傷 つ
け、損害 ・復旧費が損益 を悪化 させるなaそ の時点
では、会社にとって損失であり、痛手である。
しかし、ト ラブルの真 の原因をつ きとめ、その トラ
ブルの経験 を活か して、再発防止 策を講 じ、それによ
り技術 を確実にワ ンス テップ上 げることがで きれば、
その トラブルは会社がその技術 のために払 った技術
料、教育費 ととることもで きる。そして、得 られた再
発防止策 と、 それを具現化 したチェックリス トや標
準、 マニュアル類は、技術料を払って得た会社の財産
とも言えよう (第 1図 )。
トラブルによる損失は、その トラブルを克復 し、そ
の周辺 の技術に トラブルを活か しきらなけれ│よ 技術
料や、教育費に転換できない。そのためには、
(1)ト ラブルを記録すること
トラブル再発防止の第 1歩 はそれを記録することに
・
2)
配管装置のトラブルとその未然防止①・
《
記録 の 際、必須 のデ ー タ と して、 日径 、 肉厚 、材
質、圧 力、温 度、系 統 、 配管 形状 /ル ー ト、流 速 、
トラブル : 会 社の損失
会社の信用 人 的 ・物的損害
対策 ・復旧費 納 期遅延
トラブル (事故)の スケ ッチ、 な どは記録 してお きた
い。 これ らデー タは後 に、類似 の トラブルが起 きた時
トラブル記録
教訓 とするため
ノウハ ウ化が必要
に、 どのような条件の時に類似の トラブルがお きるか
を分析す るのに役立つか らである。
トラブルの起 きる
条件は何か ?
(2)ト ラブルか ら再発防止の ノウハ ウを得 ること
その トラブル 自体に対す る対策 も重要だカミ ト ラブ
ルをその トラブルだけにとどめ、同類の トラブルを再
発させないことがなお一層重要である。当面 の トラブ
トラブルの起 き
ない条件は何か ?
再発防止策 :会 社の財産
チェックリスト ト ラブルチェックポイント
設計遵守事項 ト ラブル事例集
ニュアル
標準
マ
ルを処理 したあとも、起 きた トラブルの内容、原因を
充分分析 して、類似 トラブルの再発を如何にすれば防
止できるかのノウハ ウを引 き出 し、再発防止策を構築
第 1 図 ト ラブルを活かす
ある。小 さな トラブル も、ト ラブルにならなかったヒ
ヤリ、ハ ットの経験 さえも、再発 性のあるものは記録
注1)。
に留めるべ きである
まずは体裁 をあまり考えず、 とにか く記録す るこ
と。そして整理番号をとって保管すること。記録する
時、データは後のためにできるだけ詳 しく具体的に フ
ォームシー トに記載す る。ト ラブルを記録す るフォー
ムシー トの例 を第 2図 に示す。
1 トラブルの内●
t冨亀
晨
観
聯郡驀i冠
./“
●
E,ウ′
′
“
哺準 ,42●
準;′
■件4:S4P‐
′
N ′張た ,ャ 嶽
3″P●
几 ′ :θ・
′唸 体 脚
ト ラフルの「ロ
合、その再発防止策は見当違 いの ものになってしまう。
真 の原因が究明 され、再発防止策が確 立 された後
に、後世へ の教訓 として、起 きた トラブル を戒め と
し、再発防止のために作成 または改訂する ドキュメン
トとして、代表的な ものに次のようなものがある。
① ト ラブルチェックリス ト、ト ラブルチ ェックポ
イ ン トシー ト (第3図 )
② 設 計遵守事項
トラブル田鰊
2
することこそ重要である。その再発防止策を確かなも
のとす るためには、真 の原因を知 ることが不可欠であ
"
“
る。 原因は必ずある。真 の原因の徹底 的追求を。
もしも、真 の原因でない ものを、原因 と誤認 した場
く
:え
レ
こ:′jイ
9辮 lふ
総lra∫
③
④
⑤
⑥
標準
マニュアル
ト ラブル (事故、故障)事 例集 (第4図)
参 考用 :失敗知識データベース (科学技術振興
機構)
チエツクポイント・
シーK/) サ
トラブル ・
ンプル
.絣 齢 面 %
後 格ウ SaP‐
βに左攪ι
た.
47聴
ル̀
鳳議嵐詔:星
が笥f″
6 水 早農ロ
注 1)ハ インリッヒの法則 :1件 の重人事故の裏には29件のかす り
傷程度の軽災害があ り、更にその裏 にはケガではないものの
300件のヒヤリとした体験がある。
一 一一¨¨︺・
﹄
第 2図 ト ラブル記録
第 3図 ト ラブルチェックポイントシー ト
配管技術 2004.5.69
配管装置のトラブルとその未然防止①…(31
製品 トラブル事例
1.ト
ラブルの状 況
4.説明図/写 真 (1、2、3、5月 )
2.ト
ラブル調査結果
百文 は 一 図 (写真)に 如 かず
定 量的 に、図、写真 も
使 って ( 右側 に) 。
5.再発 防止 策
同 類 トラ ブ ル を起 こ さ な い
同類 トラブ ル再発 防止 には、
同類 の トラブ ル を起 こす 条件 を
明 らか にす る こ とが 最 も重 要。
ノ.ウハ ウを具体 的 に。
第 4図 ト ラブル事例集
トラブル事例集は、再発性 のあ る トラブル を選択
し、その トラブルの本質的なことをA3-枚 に要約 し、
記録 として残す と同時に、教育 。学習用に供す るもの
であ り、ト ラブル防止への心構えまでも伝えられるよ
うにしたい。
トラブル事例集に盛 り込むべ きこと :ト ラブル名
称、発生 日時、工事名、ト ラブルの状況 (図、写真)、
調査結果 (図、写真)、原因、再発防止策 (ワンポイ
ン トア ドバ イス、ノウハ ウ、知識化注2)、シナリオ注3)
なの 、参照資料なれ
トラブル事例集は教育用には良い形態だカミ チェッ
クリス ト風には作 られていないので、実務 で 日常業務
で使 うには不便 である。過去の トラブルが設計に反映
されているかは、トラブルチェックリス ト、トラブル
チ ェ ックポイ ン トで確認 されるべ きである。ト ラブル
チ ェ ックリス トは簡潔な帳票ではあるが、その反面、
記述が簡単に書かれるので、人によってその解釈が異
なって しまう場合 もあ り得 る。 トラブルチェックポイ
ン トシー トは、チェ ックリス トに、 もう少 しトラブル
内容を具体的にイメージできる図などを記載 し、チェ
ックすべ き対象をより明確に示 し、チェックすべ きポ
イ ン ト、対策の例などを記載 したものである。
注 2 ) 知識化 :事 例についての情報だけでは何 も伝わらない。知識に
して初めて伝達可能となる。
注 3) シナリオ :事 故の結果だけではわからない。事故に到る脈略を
知らなければ分からない (失敗学 畑 村洋太郎 よ り)。
70 配 管技術 2004.5.
失敗知識デー タベースは科学技術振興機構が2003
年 3月 から試験的にイ ンターネットで公 開しているも
ので、httpノ
/shippaijstgojp/で
見ることができる。
機械、化学、建築、など各分野の失敗事例、765件
を一定 のフォームシー トに纏めたものである。躙己
管」
で検索す ると129件の事例が出て くる。事例毎に、事
例概要、事象、経過、原因、対策、知識化、背景、
シナリオ、情報源などが記 されている。公 開された事
例 の多 さと、良 く整理 された情報は画期的な ものであ
るカミ 反面、原因と再発防止策が具体的かつ詳細 に語
られていない事例 も多 く、靴の裏か ら足裏を掻 いてい
るようなもどか しさを感 じてしまう。 しか し'情
報源に
記 されている、ホームベージなどを追いかけると、求
めてい るものが得 られることが多 い。事例 としては、
石油化学関係のものが多 い。
4.職 場風 土 を改革
前節に述べたことは、ト ラブル防止のための ドキュ
メン トによる、いわば制度の整備、改革である。 しか
し、制度が改善されて も、その制度が日常業務におい
て生かされなけれ│よ 効果は出ない。管理を強化 した
だけでは、制度 。システムの形骸化を招 いてしまう。
少 し古 い話 になるが、2003年 1月 に放送 された
NHK教 育テ レビETV2∞ 3「 日本人への提言 :失敗や
不祥事を次に生かす」において、失敗学 の畑村洋太郎
氏は次のように言 っている (多少表現が違っていると
ころがあるか も知れない)。
配管装置のトラブルとその未然防山①…(4)
「
失敗があると、チェックリス トを見直 し、更に項
目を追加 し、細分化 したチェックリス トを作 って、管
理者はそれで再発防止策ができたと思う。私はそうい
うところでは、また失敗を繰 り返すと思う。なぜな
ら、チェックする時、担当者は現物を見ずに、チェッ
クマークをペケペケペケペケペケとつけてしまうから
だ。
」
失敗や トラブルをした後、概ねチェラクリス トや標
再
準 を見直 しした り、作 り終えると、それを以って 「
発防止策終わ り」 としていないだろうか ?
だからと言 って、チェックリ
畑村教授 は続けて、「
ス トカV2に 立たないというのではない。再発防止にチ
ェックリス トは不可欠だ。大切なのは、管理者が担当
者 を現場に連れて行って、 どことどこをどうチェック
したのだと聞いてみることだ。その次からは、担当者
」
はまじめにチェックするだろう。
これは非常 に重要なことを言っている。チェックリ
ス トや標準という 「
制度」だけ作ってもだめで、その
風
職場を、それらを活か し、運用 してゆくような 「
土」に改革しなけれ:よ せっかく改善した制度は生き
てこないということである (第5図)。
活かされる失敗/無 駄 な失敗
実績ある設計
設計変更 ・変化部
●標準・
基準を守らない
。不注意 (計算ミス/
誤記/記 載漏れ)
●検討不足
後世 に伝 えられる知
1失 敗 の分 │
識として抽 出し、
残す
│か れ道 │ ことを怠った。
良 くない職場風土 :
●使わない
●形式的使用
技術的未知
後世に伝えられる知識
として抽 出し、残した。
:標 準、
チェックシート、
良い職場風土 :
0活 かして使 う
呼 んでチ ェ ック内容 に関す る対 話 をす るな ど、管理者
も担 当者 も日頃 よ り、 「トラブ ルに対す る注 意」 を喚
起 し、「トラブ ルに対する感度」 を高め続け る努力、
習慣が、最 も大事 と思われる。信頼で きる技術 は、
「
飽 くなき執念」 によって得 られると言っていた先輩
技術者がいた。
制度」 の問題、管理者の
チェ ックリス トや標準は 「
へ
風土」 の問題、 この両輪が
担当者 の指導、躾 は、「
改革 されて始めて再発防止策は効を奏する。
チ ェックリス トにマー クをペ ケペ ケペケペ ケペ ケと
安易 につけられない職場にしていかなければならない。
5.デ ザイ ンレビュー (設計審査)の 壺
トラブルを防止す る上で、デザインレビューは非常
デザイ ンレビュー」を簡略化
に有効な手段 である。「
した ミニDRと か、デザイ ンミーティングと呼ばれ る
ー
ものもそれなりの効用があるが、デザイ ンレビュ は
それらとは一線を画す るものであろう。
新 たに設計 した製品
デザイ ンレビューの 目的は 「
(或いはシステム)に 潜在 しているか もしれない、将
来 トラブル発生の要因 となる要素を事前に発見 し、取
り除 くこと」にある。
“ "と い べ
も う
デザインレビューの効果 を上げる 壺
きポイ ン トを私流に以下 に掲 げる (第6図 にその要約
したものを示す)。
デザイ ンレビューのポイント
1.参 加者 の経験 と視野の広 さが成果に決定的影響
→その製品 (システム)に 関連す る部門から、
経験豊かな人を招集
→ 開催通知が重要
2 . 過 去の トラブルの反映がなされているか、
事前 にチェックを済 ませてお く
( トラブルチェックリス トなどの活用) 。
3.実 績か らの変更点 ・変化点を洗 い出す
→変更点、変化点 のデメリッ ト評価 を行 う
4.検 証法 ・対策をレビュー会議 で決定する。
失敗を繰 り返す
第 6図 デ ザインレビューのポイント
無駄 な失敗
第 5 図 失 敗 と職場風土
設計業務 を例にとれ│ム 例え│よ 図面、書類 を通 じ
ての管理者 と担 当者 の対話が大事 である。 日常業務、
例えば管理者が図面 。書類 にサイ ンす る時、担当者を
そ の 1は 、デザイ ンレビュー会議に設計、品質保
証、調達、運転な どその製品 (システム)に 関連す る
各部門 より、経験豊かな人を召集す ることである。会
議 に参加 した人の経験 と分野 の広 さ力ヽ そのデザイン
レビューの成果 に決定的に影響する。
支翻
ほ 2004.5. 71
酉己籠
雪ま
・
5)
〈
配管装置のトラブルとその未然防止①・
デザイ ンレビューにそれら経験者 を召集す るために
は、デザインレビュー開催通知が重要な意味を持つ。
会議開催責任者はその製品に関係する部門は何処何処
で、キーパー ソンは誰 であるかを把握 している必要が
ある。会議開催に先立ち、充分なリー ドタイムを持っ
て、キーパースンとスケジュールの調整をはか り、会
議に出席 してもらう必要がある。
その 2は 、過去の トラブルの再発 を防止するため、
あっても、部分と部分の組み合わせが初めてであった
り、製品の設置された環境、例え│よ 温度がそれまで
の実績あるものと違っていた、ということもある。
実績ある設計 ・技術 とは、ある最短の期間、「トラ
ブル」
、または 「トラブルのソ
ヒ
候」がなかったものを
いう。最短期間がどの位の時間かと言えlよ 製品 (シ
ステム)に よって変わってこようカミ 使用 。運転期間
トラブルチ ェ ックリス トなどで、過去の トラブルの再
発防止策が施 されていることのチェックを事前に済ま
は1年以上で、製品の使用期間中に遭遇するであろう
諸 々の過渡的現象を一通 り経験 できる期 間が望まし
い。その期間に トラブルのなかった設計 ・技術は、
せておき、会議では、経験豊かな各分野の人の経験 と
失敗をその製品に活か し、反映させることである。
その 3は デザイ ンレビューでは、実績ある技術から
「
実地に検証された」ということがで き、それと同 じ
ものが作 られ、同じ使われ方をした時、ト ラブルの発
生する確率 は少ない。
の変更箇所に注 目する事である。
実績 のない設計 ・技術、即 ち新設計 ・新技術、或
いは、従来の実績ある設計 ・技術を部分的に変更 した
変更点に対 しては、その変更により生 じる 「
デメリ
ット」
、或いは、他の製品 ・システムの変更により影
響を受ける 「
副作用」を充分評価せねばならない。
前節で述べた如 く、「
何処に変更点があるか」を認
い
つ
ること
、或 は見 け出す ことが重要となるが、
識す
それを識別するのは、ある程度の経験 と洞察力を要す
る。
どのような要素が変更点になり得 るか、その例を第
1表に示す力ヽ その範囲は、設計、調達、製造、品質
保証、据付、運転、と、その製品 。システムに関係す
ところは、実地の運転 ・使用 により検証 されていない
ので、ト ラブルが出る可能性があ り、注意を払わねば
ならない。 このようなところは、変更点 (自力即ち自
部 門の意志による変更)、および変化点 (他力による
変更。例えlよ 他部門所掌の変更である力ヽ 自部門に
影響 のある可能性のある変更)、 と呼 ばれる (以後、
双方を 「
変更点」 の一語 で代表 させ る。 「
拡張部分」
と呼 ばれることもある)。
変更点管理は、その製品 (システム)の 実績からの
変更点を探 し出し、その変更点のデメリット評価 を徹
底的に行 うことである。変更点に気づ かないことが、
ままあり、変更点を探 し出す ことが最初の重要な関門
である。この時、デザイ ンレビューの出席者の経験が
なんと言 って も、 もの を言う。多 くの経験 を積み、仕
事 の修羅場を何度 も潜 ってきたベテランには、ト ラブ
"、
“
"(経
ルの匂 いを嗅 ぎつける “
嗅覚 或 いは ドタ感
験 を積むことにより得 られる感)の ようなものが備わ
っている。
抽 出 された変更点 に対 して は、過 去 の経験 を踏 ま
え、洞察力 を働 かせ、仮想演習 を行 って、 変更 によ り
どのような状況が起 こり得 るかを、充分検証する必要
がある。解析などでは、予測が難 しく、人知の及ばな
いところがありそうであれ│よ モデルテス トなり、モ
ックアップテス トを行って確認する。
6.設 計変更点 を徹底 的 にマー ク
起 きた トラブルを分析 してみると、ト ラブルの起 き
たところは実績を持たない変更点であることが非常に
多い。個々の部分をとれ│ム 実績がある設計 。技術で
72 配 管技術 2CX14 5
る全分野に及ぶ。変更点の要素は、製品 。システムに
より変わるので、その製品にはどんな変更点要素があ
るのか、リス トアップして、第 1表のようにしてお く
と良い。
少 し変えた設計 ・技術が 「
変更点」 として、十分な
評価 ・検証を必要とするの力、 或いは従来技術の範囲
内なのか迷 うところも出てくる。例えば規模の変更の
場合である。実績技術より、サイズなり、出力などが
大きくなったり、小さくなった場合 に、それが実績技
術の延長上、即ち実績技術の外挿範囲としてよいかど
うかが問題 となる。常識的には、実績技術の外挿範囲
とできるのは、 ±10%程 度ではないかと思われるが、
"を
これとても、それによって “
限界値
越えてしまう
場合 もありうるので、この判断には経験 と充分な検討
を必要とするだろう。
7.変 更点管理 にFMEAの 活用 (トヨタの場合)
FMEAは 、日本語に訳すと 「
故障モー ドと影響度
、つ まり考えられる故障モー ドを摘出して、そ
解析」
の影響を解析 し、設計的対策を行って、故障を未然に
防止する手法である。
トヨタでは特別に作 られたFMEAワ ークシー トを
・
〈
ω
配管装置のトラブルとその未然防止①・
第 1 表 変 更点有無チェックポイント
I . シ ステムレベル
(1)系
(2)構
(3)レ
(4)運
(5)解 析 ・評価方法
(6)試 験 ・試運転方法
(7)据 付 ・施工順序
(8)取 合 l■
l設との取合 い含む)
統 (P&ID)
成機器
イアウ ト(合配管ルー ト)
転 ・制御方法
Ⅱ.機 器 レベル
1.適 用規格
装材、メッキ材、ライニング材、潤滑材、焼付防止材など
│(3)塗
琺 間の電位差
(1)適 用法規、規格、基準
│(4)獣
ッキン、ガスケット
2.使 用条件
│(5)パ
(1)使 用流体 (種類、性状、圧力、温度、湿分、PH、 酸素濃度な 16.解 析 ・評価方法
ど)
│(1)解
析方法 (解析 コー ド、使用 ソフ ト)
│(2)評
価方法
(2)運 転条件 (起動停止回数、運転モー ドなど)
造 ・試験検査
17.製
“)環 境条件 (温度、湿度、屋内外、周辺機器)
│(1)製
法 (加工法、使用機械など)
に)配 置 (設置条件、取付姿勢)
順 (製造、検査)
(5)容 量、定格
│(2)手
)熱 処理方法
(6)耐 用年数
│ “
)溶 接方法 (施工法)
3.性 能
│ “
作加工寸法 (含む公差)
(1)機 械性能 (強度、速度、回転数、振動)
│(5)製
立寸法 (形状寸法、間隙、芯合せなど)
1 0 組
(2)熱 ・水力性能 (熱交換量、水頭、流量)
0)化 学性能 (反応速度)
│(つ
作 業条件 (作業性など)
)表 面処理方法 (仕上げ法、塗装法、メッキ法、ライニング法)
│ “
に)電 気性能 (特性、耐電圧、絶縁、過電圧)
4.構 造 ・形状 ・外観
浄 (方法、薬品、濃度、温度、時間など)
│(9)洗
験 。検査方法
1 00 試
(1)構 成要素 (型式、部品追加 ・削除、組合せ)
12)位 置 (取付位置 ・向き、姿勢)
包 ・輸送方法
l lll 梱
13)形 状、寸法、間隙、嵌め合い
経験 の大 きさ、重量、形状
l 121 未
付 ・保守
“)溶 接開先、形状
18.据
入 ・据付方法 と手順
│(1)搬
(0 表 面 (仕上げ、粗 さ、硬 さ)
(6)パ ッキ ン、 ガスケ ッ ト
作 業条件
l ②
5.材 料 ・材質
I C)保
(1)材 料 ・材質 (成分、機械的性質、熱処理なの
0)材 料 ・材質の組合せ
│(→
守 ・点検方法
)試 験 ・検査方法
洗 浄
│ に
デザインレビューにて
デザインレビュー までに
変更点抽出
変
テ
獣
護
蟹
量
尚
露翼魃
C
衝撃試験の実
施(低 高温)
) 衝 撃強度 の
群省 目結窒 滸
度
強
労
疲
A
甲
3
発生応力とPA′ 月
SNl・
R図より
推定
)限度見本で
作業者に徹底
)成形条件受ヌ
れ検査項目の
決定と徹底
型温度、
浸鷹、
射出圧、
射II速
度
1限
度見本で作業創:ほ
瘍
丙 9月
ウエルド発生 乙
最悪品で耐久 6
月
試験の実施
丙 9月
A
趙険中 (6月
冬了予定)
丙 9月
乙 4月
〕ガラス麟 態 率
の最適値の検討
疲労、
機的強度と
衝撃強度検・
l
ウエルド防止、
上の為3点
ゲート
を採用
の施
B
A
法
●ボス部R寸 法
甲
に05以上
月
図面指示
乙
月
供確
↑
*静 的強度の
安全率 >30
鶏譲
●ボス底部R寸法が
小さく応力集中で
亀裂発生
A
久施
耐実
後 の
化験
劣試
↑
施
実
積
見
。ボス外経 が4ヽさくス
プリング反力の繰 り
返しで亀 裂発生
0成形条件のばらつ
きによるボス底部に
発生したウエルド
から亀裂発生
理険中(6月
: 了予定)
料 LLC eic)
●スプリ
ングの衝筆│
より破損
。GFの充填率が高く、
繰り返しの負荷により、
ボス底部から疲労t験
が発生
)複合劣化耐久試8
‐
冷湿熱ヽ塩イ
ヒカ'
シュウム毯布 (J
抜き取り検査
(1回/月 )
熱劣化後耐ク
試験を実施
丙 9月
後の特性で算出
,付 着の可能性樅
剤の調査実施
A
樹脂の劣化により
労強度が低下し破
中
1燕&グ リース劣引
後耐久試験
た強度計算の実滸
安全率の算出
対応の結果
実施 した
活動
凝暉即照ヽ驚゛│
眩濠蒻灌鮮筵■
圏舅
:恭 螢1銀 ヽ■1
乙 6月
*熱 劣化、
吸湿
劣化を考慮し
て、
芳香族PA
を採用する
推奨す る対応 (DRBFMの 結果)
甲 3月
大
●樹脂のタイ
ヒにより薔
的強度力Ч
【下し破損
十
熱劣化 *グリース劣ll
*R針 イル、
燃料、
LL(
劣化 *吸湿劣化
行能
走不
1スプリングラック固定
ボス部の破損
轟華
彗
鶉翠鸞轟
営
鷺壌機
灘撻経棚躊鋼
︲初勿辮
勒
螂
嶼
樹脂
壺更 点と
機 樹
変更内容
諮擦
部位
推奨する対応策
更点評価
心配点はどんな場合 に生 じるか
第 7図 ト ヨタの変更点管理
配管技術 2004.5.73
配管装置のトラブルとその未然防止①…(つ
変更点評価 のツー ル として使 っている。 デザイ ンレビ
ュー に先立 ち、設計者 はワー クシー トを記入す る。 第
皆 さんのところで第 7図 を参考に して、FMEAワ
ークシー トを作成す る場合、扱っている製品 。システ
ムに対応 して、多少修正するところが出るかもしれな
ー クシー トを用 いて関係者 の間で活発な議論 を戦わ
し、一人では見つけられなかった心配点や、具体的な
い。
7図はその記入例である(ltデ
ザインレビューではワ
対応法を発見することがで きる。
更に、変更による心配点 とその原因 ごとに、設計の
対応法 と評価方法につ き、議論 して、デザインレビュ
ーの場 で決めてゆ く。デザイ ンレビューで指摘 され、
4)と
決定 された事項 は、 ワークシー トのDRBFM注
記
された欄に記入する。`
“
る語は トヨタが名づけ
注 4)ワ ークシー トに見 られる DRBFM"な
"の
“
ー
た 故障モ ドに基づ くデザインレビュー
略号である。
<参 考文献>
(1)「トヨタ式未然防止手法Gが J,吉 村達彦著,日 科技連出版社
筆者紹介】
【
西野悠 司
西野配管装置技術研究所
〒143-C1022 東
17‐
5
京都大田区東馬込2‐
TEL:03-3776‐
6691 FAX:0337766691
試験 ・検査 ・評価 ・診断 ・寿命予測の専門誌
と特色
我が国では特定の検査分野 において情報を提供す
る専門誌は存在するものの、破壊検査 と非破壊検査
を包含する検査の全分野 にわたつて情報を提供する
専門誌はな く、とくに検査の第一線で活躍する技術
者は、検査の実務で利用できる情報を渇望 している
のが現状です。
本誌 「
検査技術Jは 、検査から試験、評価、寿命
予測までを扱 い、関連規格の紹介等、幅広 い内容を
編集 し、これか らの検査技術の普及と発展をめざす
技術雑誌です。
Inspect:on Englneering
●創刊年月 日 :1996年 (平成8年)11月 1日
●発 行 日 :毎月1日発行
●発 行 部 数 : 1 8 , 0 0 0 部
116頁
●判型 ・総頁 : 8 5 判 ・
:2,000円
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(本体1,905円送料別)
●年間購続料 :12冊 19,000円(税・
送料込)
のお申 し込みは
◎日m工茉出版
本 社 〒113-8610東 京都文京区本駒込6-3-26日 本工業出版ビル
TEL03(3901181《 t) FAX.03(394416826
h t t p :輛晟
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p。b c O j p / e m a " : i n l o ‐
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74 配 管技術 20045.
339448001
大
-6-8-705
大 阪 営業所 〒5 4 1 - 0 0 4 6阪市中央区平野町1
TEL06(6202)8218 FAX06(6202)8287
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・
〈1 )
水資源と水需要・
H0402‐11
」CLS
0385‐98947104解500媚命文ノ
連載 :「
水間調 と配管技術②》
《
水資源 と水需要
本田 久 親
Hisachika Honda
前号 では水問題全般 について概説 し、次に、その中
で21世紀の最重要課題 として懸念 されてい る水紛争
について観てきた。本号 では、水資源 と水需要 につい
てレビューを行う。
3.水 資源 と水需要
3-1 水 の惑星
地球上には一体 どれほどの水が存在するのであろう
か?
太陽系 の惑星の中には火星の水 の存在な どの仮説 は
あるものの、常識的には地球が水の存在す る唯一 の天
体 であるとされてお り、全表面の70%以 上が水で覆 わ
れている。
その総量 としては、 ロシアのシクロマノフ博士 と彼
の国立水文学研究所 による推定値、約 14億 km3と ぃ
うのが現在一般的に採用 されている数値である。
この14億 km3と ぃ ぅ数値は巨大過 ぎてイメー ジし
難 いが、 よ く引合 いに出されるたとえで表現すれば、
地球 の山や海を完全 に平 らにな らせば、 この 14億
「
km3の 水 は地球を2,700mの 深 さで覆 う」 とい うこと
になる。
「
青 い惑星 (或いは水 の惑星)」 と称 されるゆえんで
ある。
ただしその うち大部分 (97.5%)は海水である。
海 の平均深 さは約3,700mで あ るが、陸地を埋めて
地球表面全体 にならしたとすると、 この2,700mの 水
深 の うち約 2,600mは 海水 の層 として存在することに
地球は水 の惑星」 とい う表現 よ
なる。 したがって、「
海水に覆われた惑星」 といった方が よ り適切
りは、「
であるかもしれない。
海水 は、海水淡水化等 を別 にしてこれを直接飲み水
や生活用水や農業用水 として利用す ることはできない
ので、通常水資源 とは見なされない。
水問題 の書物 にしばし:餌1用される、19世紀始めの
老水夫行」
イギリスの浪漫派詩人 ・コール リッジの 「
一
一
の 節がある。難破船の中に 人取 り残 された渇 きに
周囲何処 を見ても水 ばか
苦 しむ老水夫 のつぶや き、「
一
り。 しか し飲み水 は 滴 もな い 。 (Water,water,
は、言い得
every where,Nor any drop to drink.)」
て妙であろう。
海水以外 の淡水 の量は約3,500万km3(2.5%)に
過
ぎず、 これを同様 に地球全体 に広げた とす ると平均
70mの 深 さの層にしかならない。 しかもこの淡水 の う
ちの約 2,400万km3(約 70%)は 南極や北極 の氷や、
その他恒久的に閉 じ込めらた地下水であ り、 これは約
50mの 深 さの層に相当す る。そ してこの氷や恒久的な
地下水は、人間の生活圏から遠 く離れた ところに存在
するので、通常、水 資源 として利用 される ことはな
い。
人間カテJ用可能な淡水 は水循環系 の一部 になってい
るもの、即ち、地下水 河川水、湖沼水など比較的短
時間で循環す るもので、その量は約 1,100万km3(全
水量 の0.8%弱 )で ある。湖沼水 を同様 に地球表面全
体 にならす と僅か30cmあ まりの層に、その他大気中
の水蒸気を液体 の水に換算すると25mm、 ある時点の
瞬間に河川内に存在 している河川水の量は4mm分 の
層にしかならない。
これ ら全てを加 えたものが上記 の約 2,700m相 当の
(1卜
に
°
深 さになる な
勿論、氷河や地下水などの量を全て測定することは
現時点 では不可能 で あ り、 この分野 の世界的権威者
で、世界 の水資源量の調査を数十年にわたって続けて
いる前記シクロマノフ博士 自身も、 これはかなり不完
全 な仮定に基 づいてだされた推定値だと認めている
力ヽ ここでその正確 さを問題 とするほどのことはなか
ろう。
配管技術 2004.5.75
・
イ2)
水資源 と水需要・
第 1表 地 球上の水の状態
水の種類
00854
塩水計
13509554
Z
(淡水〉
河川水
湖水
沼地の水
地下水
上壌中の水
生物中の水
淡水計
000212
0000
0091
0007
00115
0001
1053
0760
00165
0001
0∞ 112
000008
10652
曖囃醐”鰤剛
氷計
合計
0769
138598
llX1 0
I A・Shiklomanov : Comprehensive assessment of the freshv′
ater resources of tlle world,
assessment of water resources and water availability in the world, Stockholm
E n v i r o n m e n t a l l n s t u t u t e ( 1 9 9 7 ) , ( 1 9 9 6び,
),及
国 土交通省, 平 成1 4 年版 「日本の水資源」
2002均
F
今後観測技術などの進展によって数値の精度が上が
り、更に正確な数値 が明 らかにされてい くであろ う。
水量 を超えて水利用 をしてしまう
と、水環境その ものがなくなって
しまうとい う最大の環境破壊が起
る。
古代都市文明 の滅亡 の歴史は
その教訓であ り、現在 生 じて い
る水危機 は、 まさにこの水循環
の変動増大が最大 の 問題 で ある
lb)。
とV ヽ
う
0769
大気中
淡水合計
資源の量は基本的には同 じままで
ある。
間が利用可能な水 は、循環周期
の短 い水資源賦存量であ り、その
2
0
氷〉
〈
永久凍結層地域の地 下氷
など
氷,可
大 しない。地球が誕生 して46億
年、水循環によって供給 される水
地球上の水 はその量を変えるこ
となく自然に循環 している力ヽ 人
6
0
0
0
1287
[%]
全淡水に対する割合
[%]
9
2
9
Q
1338000
全水量に対する割合
5
6
塩水〉
く
海水
地下水
湖水
水量
[100km3]
再補給の水がないとすれ│よ 現
在、世界中で年間約3,800km3の
水が取水されているとされている
ので、現在のペースで水を取水 し
て 行 くと、世界 中 の水資源 は
1000年で消滅 して しまうとい うことになってしまう。
しかしそうならないのは、水が自然の循環 システム
源としての水
しか しながら、我 々が現実的に利用できる淡水 は更
にその一部、つ まリー部の陸上の水 であり、 しか も主
によって継続的に補給 されている持続的に利用可能な
資源であるからである。
循環、つ まり消費、再生サイクルの補給は降水 によ
として降雨 として空から補給 される範囲の ものに限定
しる。
さオ
つ まり、淡水の うちの大部分を占める地下水 にして
ってなされる。
3-2 資
も、比較的利用 しやすい深度 の浅 い 100mぐ らい まで
の ものと、氷河に覆われていない陸地や地表面に近 い
地球上には年 間約49万 6千 km3の 降水 があるが、
8割 弱は地球表面積 の約 7割 を占めてい る海洋 に降
り、地上へ の降水 は約 11万 km3で ぁる。地球上に到
達 した降水の 6∼ 7割 は太陽エネルギーによって土壌
ものを合わせた約360万 km3程 度力滞り
用できる範囲で
々
あ り、これに我 力滞り
用 しやすい河川 ・湖沼などの水
表面や植物や海面から大気中に蒸発散 し、再び降水 と
して地球 に戻 る。
をカロえた、たかだか380万 km3程 度が現実的に利用可
能な地下水及び河川 ・湖沼水であるとい うのが現在の
X°
一般的な見解である“
。
水 の総量からすればよ 僅かの、 この地下水 と河川
したがって、残 りの 4万 km3余 りが人類が実際に 1
年間に最大利用可能な水資源賦存量 となる (世界水
フオーラムでは、このアクセス可能な全世界の水賦存
とに水需要の主要部分は依存できているわけで、その
理由は、水資源が石油や天然ガスなど多 くの天然資源
と本質的に異なった特徴、つ まり、循環型、持続的な
再生可能な資源であるとい う点 にある。
「
水循環」 とい う切 り口で水問題を考察する研究が
°
ある t
ここでの表現 を借 りれ│よ 地球 の 自然システムは拡
76 配 管技術 20045.
量 を年間約 4万 7千 km3と してぉ り、 日本は420km3
とされている)。
この 4万 km3を 単純に地球 の総人口60億 人で割れ
lよ 年間 1人 当 りがアクセス可能な水量は最大6,700
m3と ぃ ぅことになる。
しか しなが ら循環する水約 4万 km3の 約 2/3で あ
る約 2万 7千 km3は 洪水 として海に流出 し、更に人間
がアクセス不可能な無人地域で約 5千 km3ヵψ卜
出され
・
3)
く
水資源と水需要・
るので、容易に利用で きる水、即ち、降水により涵養
される現実的にアクセス可能な淡水は、循環する淡水
かつ唯一の原因力ヽ 地球温暖化だと主張する科学者 さ
えいるという。
の1/3か ら1/5の 8,300km3程度 と考えなければな
(7t
らないとされている
以上、賦存という観点から水資源 を眺めてきたが、
本稿は人間社会に便益をもたらす資源 としての水につ
いて記述 しているのであるから、必要な場所に、必要
中近東、アフリカ、中央 アジアなどの乾燥地域で千
ばつ被害が拡大 し、それが紛争の発生 と加速を生 じさ
せていることは先に記 した通 りである。
なときに、利用 しやす い形で人間が コン トロールで き
なけれ│よ 水資源 は存在 しない と同 じである。
2003年夏の異常気象 については記憶 に新 しい ところ
であろう。
ヨーロッパでは2002年にはエルベ川の大洪水で ドイ
ツの ドレスデ ンやチ ェコのプラハが大 きな被害を蒙っ
そ こで、本稿の主題である 「
水問題」における配管
技術 の役割を考えるに当っての前提 として、人 間が コ
ン トー ルできる有限の水資源 が枯渇 しつつある現状、
たカミ 2003年には ドナウ川やライ ン川の水位の低下で
河川航行 に支障がでている。 ヨー ロッパ各地 は記録的
な猛暑に見舞われ老人の死亡が相次 いだ。台湾でも観
及び水需要について、次に概観 してお く。
3-3 枯
渇化 の進 む水資源
測史上最高気温を記録 し、1ケ 月半以上雨が降らなか
った。中国でも南部での日照 りが続 く一方、中部では
(1)異 常気象 による水資源の枯渇化
近年 の人口爆発や、都市化や工業化 は 「
持続不可
豪雨 と洪水が多発 した。イン ドでも熱暑による死者が
約 1,400人に達 したか と思えば、一転 100年 来の多雨
能な開発」をもた らし、それは地球温暖化、大気汚
染、水質汚濁、砂漠化 と土壌侵食、熱帯雨林 の減少、
になった。わが国でも低温や日照不足に見舞われた。
これ らはいずれも水問題 に対 しては負 の影響 を与え
湿地の喪失などの環境汚染 を引 き起 こしている。
地球温暖化が及ぼす影響 として、氷河の融解や海水
の熱膨張 による海面の上昇、それによる標高の低 い島
ることになる。
嶼や低地の沿岸地方の高潮や浸水な どが懸念 されてい
るカミ 水問題に関わる問題 としては、地球全体 の蒸発
量 と降水量の増加がある。温暖化 による地球表面温度
の上昇力ヽ 水循環 の維持に必要な土壌水や地表水 の蒸
発を異常に加速 させ、本来土壌中に補充 されべ き水 の
補充が不足 し、地下水面 の低下をもたらす。
異常気象 もまた温室効果 ガスの蓄積 など人為的な原
因による地球温暖化が原因であるとする見方 もある。
20世 紀終盤か ら気温 は上 昇傾向 にあ り、今後は更
にこの傾 向はひどくなるとの予想である。
即ち、地球温暖化が千ばつ被害と豪雨災害を同時に
発生させるとい う一見無関係で、 いかにも相反す るよ
うな皮肉な状況をつ くりだしているという。
つ まり、地球 の中では降水量 と蒸発量が均衡 を保っ
ている力ヽ 地球温暖化が気候変動を増大させ、水 の循
環が破壊 された結果 として、昨今多発 している異常気
象が起 る。降水は局地的となって集中豪雨をもたらし
洪水を発生させる一方、降水量 の少ない乾燥地域にお
いては更に降水量が減少 し、異常高温や千ばつや渇水
が頻発 して乾燥化や砂漠化 を益 々進行 させ、 これがま
た水資源を減少 させることに もなる という可能性が指
摘 されている。 これらの現象 は互 いに連鎖 して生 じて
いるとい うのである。
これらから、世界の淡水不足 を生 じさせている最大
(2)地 下水の枯渇化
地下水位の低下 もまた過去半世紀来始まった比較的
新 しい問題である力ヽ 我 々の住む地球 にとってはボデ
ープローのように目に見え難 いが徐 々に気味悪 く迫っ
ている現象で、致命的なダメー ジを与えることになる
重大な危機の一つである。
わが国では河川水 の利用が中心である力ヽ 世界的に
は地下水 の利用比率 は非常に高い。
ギリシャ ・ローマ文明は湧水 (地下水)を 水源 とす
る水道 によって繁栄 し、現在でもローマ市内の至ると
ころに残 る 「ローマの泉」にその名残を止めている。
わが国で も古来飲料水 は地下湧水が主であったが、
近代水道の発達によリー時期忘れ去 られつつあったこ
の地下湧水カミ 最近の 「
名水 の里」 ブームの到来によ
り見なおされつつある。
現在 で も世界全体 では、全人口の約30%の 15∼ 20
億人が地下水源に依存 し、世界 の年間水使用量3,600
∼ 3,800km3(取 水量ベース,Shiklomanov,1995年 。
消費量ベースでは19%。 ちなみに全消費量は全取水量
の55%程 度)の うち 15%に 当る約 600km3は 、地下水
によってまかなわれていると推定されている。
歴史的に、農業用水には河川水が多 く利用 されてき
たカミ 専 ら地下水を用 いている地域 も多 く、特に1960
緑 の革命」 は極度な過剰揚水 をもた ら
年代 以降の 「
し、その結果地下水位 の低下と枯渇カミ 農業生産 に深
刻な影響 を与えている。
配管技術 2∞ 4.5.77
・
〈4 )
水資源 と水需要 ・
イ ン ドでは1951年 に400万 本 だった地下水井戸が
97年 には1,700万本 に増え、パキスタンでは1964年に
約 2万 5千 本だった井戸の数は93年 には約 36万本に
なった。バ ングラデイシユで も井戸掘 り合戦 の結果、
浅井戸の水を汲み尽 くし、深 い地下水層の砒素を汲み
揚 げるようになったため、砒素中毒が重大化 してお
り、 また、 ガンジス川上流 のイン ドでの取水 によ り、
中小河川の流量が減 り海水遡上による塩水化 も深刻化
している。中国では1961年か ら80年代半ばまでの間
に、灌漑用井戸の数が20倍 以上になった。アメ リカ
で も20世 紀後半の地下水汲 み上げブームで、オガ ラ
ラ帯水層か ら大量 の水が汲 み上げられた。北アフリカ
や中東でも同様である。
近代科学 の進歩により強力なポ ンプによる揚水が可
能 となったため、中国華北 の平原北部から中部、イ ン
ドの北西部 と南部、パキスタンの一部、中近東、アラ
ビア半島、北アフリカ、アメリカ 。ロ ッキー山脈東部
一帯など世界 の8割 以上の地域で、自然が地下水の涵
の商品化に対する反対 の立場 に立脚するもので、現在
の世界銀行 (WTO)に
よる水 の商品化 に対 して真 っ
向か ら立ち向かったものであるので、かな り刺激的な
表現が多 く、冷静に判読する必要があると思われる
力ヽ イン ドにおける深刻な地下水源の枯渇 の経緯や現
状が女史独特 の ドラステ イックな表現 で語 られてい
る。
この中で、イン ドにおいては、人口の増加による水
需要量急増が地下帯水層 の持続可能な産出量 の 2倍
にものぼってお り、この結果、大部分の地域で地下水
位が低下 し、何千 もの村 で井戸が千上がって しまい、
穀物生産量 は25%ほ ど減少するおそれがあるとい う。
このため現在すでに子供 の半数以上が栄養不足に苦 し
んでいるこの国で、飢えに関連する死亡者数が更に押
。
0。
し上げられることになると警告 している
(3)各 地の水資源の枯渇化
中国での水資源の枯渇化 も極めて深刻である。
中国の気象局に よると、黄河上流域では50年 間で
養を上回るペースで地下水が汲み揚げられる過剰揚水
が行われている。 この結果、農業用水 の多 くを地下水
平均気温が 1℃上が り、90年代の水 量は過去 30年 間
のそれに比べ 、2割 も少なくなったという。
に依存 している国では帯水層が枯渇するという危機的
な状態に至っている。
また人口の増加 とそれに伴 う都市の拡大による生活
用水 の増加、欧米や日本が数世代力■ナた工業化 。現代
化を、一世代 に凝縮 して達成 しようとするすさまじい
経済 ・産業 の急成長による工業用水の増加、及び灌 ・
lu
用水 の増加 などによって、水需要が大幅 に増大 した。
農業用水以上に飲料水使用量 に占める地下水の割
合は高 く、 ヨーロッパでは75%に 達 している。これに
は物理的な事情 だけではな く、歴史的なコレラ罹患率
の教訓か ら、伝統的に水道水源に地表水を敬遠 し、湧
水や地下水 に依存 しようとする傾向が強い とい う水道
に対する思想的背景 もあろう。
米国でも51%、 比較的に降雨量 の多 いアジア ・太平
洋地域や中南米でも約 30%程 度を占めている。
地下水位の低下については以前か ら指摘 されていた
カミ 1998年末 『
ワール ドウォッチ』の編集者力ヽ 世界
の主要な食料生産地のデー タを収集する過程で、中国
北東部、イ ン ド・バ ンジャブ地域、メキシヨシテイ周
辺、カリフォルニアのセ ン トラル ・バ レーなど多 くの
地域の異常な水位低下に気付 き、警告 したことからク
ローズアップされるようになった(m。
地球水政策に大 きな影響力を持っているワール ドウ
ォッチ研究所 のサ ン ドラ 。ポステル女史や、 レスタ
ー ・ブラウン氏の地球 自書や、環境問題な どで世界的
に活躍 しているイ ンドのヴァンダナ 。シヴァ女史な ど
多 くの識者が、それぞれの立場からこれを指摘 し、警
告を発 している。
上記ヴ ァンダナ ・シヴア女史の著書 『
ウォーター ・
ゥォーズ( 9 』
はもともと反グローバリゼーションや水
78 配 管技術 2004.5.
水使用 の増加により、中国北部では地下水を年間で
300億 m3も 過剰に汲み上げてお り、 これは帯水層の酒
養による持続可能な産出量をはるかに超えてお り、平
野 の広範囲にわたって地下水位が 1年 間に1∼ 1.5m
も低下 していることが明 らかになっている。
地下水位が下がると泉カツ回れ湖 は消滅 してい く。河
北省 にはかって1,052の湖があったが、その多 くが地
図から消えてしまい、今では83しか残 っていないとい
30年 間で1℃上が り、草原
う。青海省でも平均気鵬 ミ
が荒オ
仏 チ
‖や湿地が枯オ
ゝ 省内にある中国最大 の湖 。
青海湖 の水位が30年 間で2m以 上 も低下 し、大 きく縮
んで しまった。 この結果、1970年代始めから、黄河の
水が下流部 まで到達 しない、いわゆる 「
断流」が しば
しば発生 している。
1970年 代 か ら80年 代 にかけては累計 で 100日 前後
であった断流の発生力ヽ 1990年代になって累計約900
日と急増 し、1997年には年間226日 を記録 している。
中国の研究者の中には、 あと十数年 もすれ│よ 黄河
は出口を持 たない内陸河川、つ まり水溜 りの連なりに
なるかもしれない といった意見さえ出始めているとい
・
(5)
水資源と水需要・
ずつ、1秒 間に
う。 このため砂漠化が年間2,460km′
っ
実に78m2ず 拡大 し、深刻な状況を招 いている。
北京へ の接近 スピー ドは 1年 間に3.4kmづ つで、北
京郊外 70kmの 所 まで接近 し、 この状況が この まま進
将来北京を
行す ると、北京は30年 ほどで砂漠化 し、「
い
る
せざるを
との懸念
さえ起
さえ
りう 」
放棄
得な 事態
でている。これは半分冗談 に聞 こえるか もしれないカミ
約 10年 前、万里副総理か ら出た言葉であ り、遷都 の
可能性を口にする中国人は少なくない とい う。
同国の穀物の約 40%が 生産される華北平原では、黄
河 の流域で2025年 に予測 される水 の不足量 は、穀物
5,500万トンの生産に必要な水量にほぼ匹敵する。そ
して この 5,500万トンとい う数字 は、中国の現時点 に
おける年 間穀物消費量の14%に なる。
中国の水不足 による農業用水 の減少は、2015年 ご
ろまでには年間 2億 ton近 くの穀物を海外輸入に頼 ら
の時点で世界
ぎるを得ないようになり、 これは2CIC13年
中で国内消費を除いた国際間に流通 している穀物 の半
分以上を中国が飲ふ込んでしまうことを意味する。
2003年 3月 京都 で 開かれた世界水 フォー ラムで、
江恕誠 ・水利相 は中国の最近の水事情 について、水不
足 は年 間400億 m3(日 本 の水使用量 の約 40%)に 達
していること、農地の干ばつ被害が年間最大 で2,000
万 ha(日 本 の農地 の約 4倍 )に 達 していること、水
不足 の問題を抱 える都市は1983年には約 100都市であ
に、塩害をもたらす こととな り、水源 の汚染や枯渇を
導 くことになる。
アメリカ ・カリフォルニア州の国境か らメキシヨに
入るとす ぐ、 ロッキー山脈から2,000kmを 流れてきた
コロラ ド川の水が突然消えてしまう。灌漑用 のダムで
川がせ き止め られ、ダムの先は地図の上ではメキシコ
のカリフォルニア湾に流れ込む川が、水の流れていな
。
0。メキシヨ ・シティ
い 「
周辺
幻 の川」になっている
では地下水位が 50年 で20mも 下が ったため、広 い地
域にわたって地盤沈下が起 っている。あと10年でメキ
シヨ ・シティは完全 に干上がるか もしれない とい う専
門家 もいる。
中央 アジア、カザフスタンとウズベキスタンにまた
がる、かっては世界で 4番 目に大 きな内陸湖 (琵琶湖
の100倍 )で あったアラル海は、ホワイ ト ・ゴール ド
と称 された綿花栽培 を主 として、小麦栽培や放牧のた
めに、流入河川からの大量取水が行われた結果、 ここ
40年 の間に水表面積 の3/4が 失われ、塩分7i■
度が増
。
り
して 「
死の海」 と化 して しまった 。
中央 アジアで 2番 目のカザフスタンのバルハ シ湖
(世界 で15番 目)も 、中国側流入河川の取水 の急増に
より、アラル海 と同 じような危機に瀕 している。
のナイジェリア、 ニジェール、チャ
アフリカ中央音Ь
ド、カメルー ンの 4カ 国にまたがる、アフリカで 4番
目に大 きな湖であったチャ ド湖 も、 ここ40年 の間に、
った力ヽ 1990年には 3倍 の約 300都 市 に増え、現在で
は、全国660都市のうち華北地方を中心 とす る約 400
都市で水不足が既 に起 きていることを挙げ深刻 さを強
°
調 している 。
驚異的な発展 を遂 │六 今や世界で最 も存在感を増 し
つつある中国も、水不足がアキ レス腱 となるであろう
湖 の表面積が 2万 5千 km2か ら2千 km2と 1/10以
下に減少 した。この他、中国湖北省洞庭湖など世界中
の多 くの湖が同 じような運命をたどっている。
といわれてお り、「
中国の水問題 こそ冷戦時代 のソ連
地下水を使 い続けると、2040年 か、それよりもっと早
い時期 に地下水資源が枯渇すると予測されている。
中東 における水紛争 については先に詳 しく観 てきた
の軍事力に匹敵するほどの世界 の不安定要因である」
と警戒す る軍事専門家 もいる。
アメリカでは、世界の小麦供給地 である中西部の穀
倉地帯で、地下水 の過剰揚水に よ り地下水位が低下
し、灌漑耕作地の1/4で 、1年 に20cmか らlmの 地
盤沈下が生 じ、灌漑耕作地面積 の減少が生 じている。
1978年のピー ク時か ら10年 も経ず して灌漑面積 は20
%近 くも減少 し、2020年 までには40%以 上の農家が灌
漑農業を止めざるを得 な くなることが示唆 されてい
る。カリフォルニア州でも、年間地下水使用量 の15%
は過剰揚水であるとい う。
そして過乗1揚水 の灌漑の結末は、マーク ・ライスナ
°
ー氏が 『
砂漠 のキャデラック』 で指摘 しているよう
豊富な石油資源による繁栄を謳歌 しているサウジア
ラビアも、砂漠の国で降水には期待ができないことか
ら必然的に地下水に頼 らぎるを得ず、現在のペースで
力ヽ そもそもこの地域には水資源が乏 しい上に、人口
の増加によって水資源の枯渇化が急速 に進行 し、 これ
ら大半の諸国間で急速に水 を使 い果 たしつつあること
カミ 水 の争奪 を生 じさせているのである。
この地域の人口は2025年 には現在 よ りも15%増 加
して 3億 5千 万人になり、水 の需要は1975年 の 2倍
になると予測 されている。砂漠が国土の大半を占める
エ ジプ ト、シリア、イラク、 ヨルダン、イスラエルな
どでは、水資源の多 くを地下水 に依存している力ヽ こ
れが急速に枯渇 しつつあ り、人類 の生存 スバ ンでは補
充されることはない。補充には何百万年 もの時間が必
支a庁 2004.5. 79
箋ま
酉己籠
水資源 と水需要…(6)
要 とされている。 このため中東諸国の水資源 はこの先
20年 で大 きく低下する。
もはや自国内の帯水層があてにできないことか ら、
先に記 した ヨルダン川、ナイル川、チグリス ・ユーフ
前項に示 した様 に利用可能な年間水資源賦存量は4
万km3余 りであるので、以上 の数字 だけを見れば取水
量はアクセス可能な水量の10%程 度であ り問題ない よ
ラテス川の水系 に依存せ ざるを得な くなることとな
。
9。
り、紛争が発生 しているのである
イン ドは世界で最 も水不足 の著 しい国であるが、地
うに見える。
。 しか し、 これはあ くまで単純に世界平均の数字であ
り、宇宙船地球号の中に存在する淡水資源の量は一定
であ りなが らも、時間的 ・空間 (地域)的 な偏在性が
下水の過剰揚水が これに輪 をかけ、ガンジス川やイ ン
ダス川では乾期には海への流出はなくなり、穀物生産
著 しい とい う特徴 を有 してお り、それが問題を複雑に
しているのである。
の1/4を 失 う危機に直面 しているとい う。
地球全体では降水量 と蒸発量 が均衡 を保 っている
力ヽ 世界各地の気象条件は異なり、年 間降雨量 もイン
ドネシアのように2,600mmも ある国から、65mmし 力)
。
ない ようなエ ジプ トまで大差がある 。
。
3-4 水
需要
(1)逼 迫する水需要
一方、全世界 の
水需要 について も多 くの研究者 によ
る予測値が示 されている注1)。将来の予測値について
は当然のことなが らかな りの幅がある力ヽ ここでは世
界水 ヴイジ ョンで採用 されているロシアのシクロマ ノ
フ博士等 の推計を、1995年 と2025年 の取水量 と消費
量について示す と次の通 りである。
1995年 には取水量が3,800km3、消費量は2,100km3
であったが、2025年 には取水量は4,200km3、消費量
は2,3CXlkm3となる。
ここで取水量は水利用 の 目的で取水 した量であ り、
消費量は実際に利用 された量である。つ まり、取水量
と消費量 との差は、取水後消費 されるまでの間にいろ
んな形で失われた量である。
1995年 か ら2025年 の間の増加は、全体量 としては
約 10%で ある力ヽ 禾J用別の内訳では都市飲料水が圧倒
的に多 くなると推定されている。
注 1)水 使用量については、研究者によっていくつかの予測値が示さ
れてお り、また、予測をした時点で、それぞれい くらかの差異
がある。例えば、A・K・Biswasに よれば2000年 の予測値は
5,200km3/年 であるが (Water for Agricultural Develop‐
ment Water Resources Development 1993)、 ロシアのI・
A・Shiklomanovの 1995年のデータでは3,800km3/年 (取水
量ベース)(World Water Resources and Water Use Pre
sent Assessment and Outlook for 2025,1999)と
されてい
る。なおShiklomanOvの デー タも予測値は何度 も修正、更新
してお り1996年に発表 された数値 (Assessment of Water
Resources andヽVater Av」lability in theヽ
Vorld,1996 瀾
L,,
気象機関)で は、最近の予測値にい くらかの差異がある。この
他,2000年 以降の取水量 (km3/年 )推 定値 のい くつ かを
〔
実測値の年度〕と対比 して、推定値幅で示す と次の通 りであ
る。L'vovich 〔
1974〕(2000:6,300´V12,300)、Falkenmark
1974〕 (2015 : 7,800-11,000)、 Raskin 〔1998〕 (2050 :
〔
3,900∼6,000)。
全般的に過大な予測値 となっているが、これ
は、特に工業用水の原単位低下に注意を払わなからたことが大
きな原因であるとされている (森澤真輔編著 l地球資源の管理
技術Jコ ロナ社,21X13)。
80 配
管 技 術 2004.5.
局地的には年間11.5m以上の降雨量 を記録 したハ
ワイのワイアレアレ山がある一方、40年 間連続 でゼ
ロを記録 したとい う南米チ リのアリカ市 の ような と
ころや、 ペ ルーの リマの ように年間降雨量が 1lmm
のところ もある。アフリカ南部 のボツ ワナの年間降
水量 は、 日本 の約 15%の 250mmで あるが、1年 の う
ち 4日 間程度のみに集中 しそれ以外 には雨がないの
で、雨水 タ ンクには雨水泥棒 よけに鍵 をかけるとい
う。 このためか、ボッヮナの貨幣 プラ(Pula)及びテ
ーベ (Thebe)は 、それぞれ雨 (Rain Water)及 び
水
雨粒 (Rain Drop)という意味なのだという。
一般的に水資源の多 は、北米北
く
部、アジア東部、
南米東部に集中 してお り、水に恵まれない地域の方が
はるかに多 い。
具体的に国別に見てみると、最 も水 の豊かな国はア
マゾン川を有するブラジルで、地球上全ての水資源の
約 20%を 有 してお り、次いで旧ソ連邦各国を合わせた
約 10.6%、中国5.7%、カナダ5.6%と続 いている。特
に、カナダには世界 の淡水湖水量 の約 20∼ 25%が 眠
っているとされてお り、良質な淡水資源の宝庫であ
る。 中国 とカナダはほぼ同 じだけの水資源をもつが、
後述 のようにカナダが水 のサウジアラビアといわれる
のに対 し、中国は水不足 の最 も深刻 な国の一 つで あ
り、これは勿論人口の相違からである。
以上の水資源量の偏在 に加えて更に厄介なことは、
前述のように、近年大 きく問題化 している地球温暖化
が進めば海水面からの蒸発量が増大 し、一部の地域で
は降雨量が増 え洪水などの豪雨災害の危険が高 まる一
方、他の地域では降雨が減少 して干ばつや渇水の危険
が高 まるとい う現象が増大 していることがある。
そして降雨量増大は、 もともと降雨量の多い地域で
多発化 し、逆に降雨量の少ない乾燥 。半乾燥地域で降
7)
〈
水資源と水需要 ・
雨が更 に減少 してその被害を拡大 させるとい う極めて
相矛盾 した状況を発生 していることである。
これが前述の水不足 に起 因する水紛争や、それに伴
うテロの多発 を生 じさせているとの指摘 もある。
日本は全国平均で年間約 1,700mm程 度 と比較的水
には恵 まれている力ヽ それでも場所 により3,90rlmmも
と推 定 されて い る。
人口増による水需要が逼迫度を増す一方で、急激な
工 業化や都市化、及び農業生産の工業化 は水 の大量
消費を助長 し、淡水 の枯渇を生 じさせている。
更に、急激な工業化や都市化によって先に記 したよ
持続不可能な開
うな地球環境 の悪化 を引 き起 こす 「
あるところから900mm程 度のところまでの差がある。
しか し、だか らといって日本国民が水富裕国民であ
る わ け で は な い 。 人 口 1人 当 りの 年 間 降雨 量
発」力難 し進められたために、深刻な水環境汚染がも
たらされて、直接 ・間接的 に水 問題 に負の影響 を及ぼ
し、我 々の利用可能な水資源を相対的に減少させ、水
(5,114m3)は世界平均 (21,796m3)の1/4に 過 ぎな
い。カナダ (167,100m3)の1/8は ヨ
にしても、サ
炒卜
不足 に拍車をかけている。
バングラデシユの砒素被害やアメリカ西部の塩害な
ウ ジア ラ ビア (9,949m3)の 1/2で あ り、中国
14,958m3)とはほぼ同 じであるとい う事実 は驚 きであ
る注2)。
こ 地下水の汚染 については前述 したカミ 世界の水資
源王国として羨望の的となっているカナダの水の宝庫
五大湖 も、農薬や工場廃液による水質の汚染が進行 し
偏在性 は地域のみでな く期間的にも変動が激 しい。
水 は必要なときに必要な場所 に必要な質の量が確保
されなければならない。
てお り、良質な淡水資源の相対的な減少が深刻化 して
つ
いる。
。
・
‖や湖に流される 1リ ット
農 工業や家庭排水力ヽ可り
この水資源の偏在性 もさることなが ら、水危機 の根
底には、近年、毎年 8千 5百 万人ずつ増加 している人
ルのリト
水によって 8リ ットルの淡水カツ号染 され、現在
のこの汚染が人口増に比例 して進んだ場合、2050年
口爆発がある。現在約63億 の人口が2025年 には約87
までに世界 で 1万 8千 km3の 淡水 が使用不能にな り、
これは現在 の農業用水消費量 の約 9倍 の量になるとい
億人 (国連高位推計値、中位推計 では80億 人)と な
り、現在と同 じ量の有限の水を分かち合わなければな
らないことになる。
世界 の水使用量 は、1,o00km3/年 (1935年)に 達
す るのに、古代以来数千年間要 したが、その後2,000
km3/年
(1961年)と なるのに30年 間もかか らなか
った。
更 に3,000km3/年
間かかつていない。
(1978年)と なるのには、20年
う試算 もなされている。
これを、サンドラ ・ポステル女史は 『
水不足 が世界
の中で、「
を脅かす (Pillar Of Sand)』
資源 の枯渇 と
、そのパ イの分け前を
資源パ イの縮小』
劣化 による 『
人口の増加』
、切 り分けられたパ イ
更に小 さくす る 『
のうち、他者 よ りも大 きなものを手にするものがいる
とい う 『
不公平』の三つ の相互作用」 といつている
この
力ヽ
相互作用によって、水 の争奪が危険なマグマ
また、人類 の進歩の必然として一人当りの水 の消費
量は増加 し、全世界 の水消費量は20年 ごとに倍増 し
として滞在 して、時には紛争 とい う形で表面化す るこ
とになることは前述 した。
続けて いる。 これは人口増加率 の 2倍 近 い速度であ
る。
人類 は永 い間、有限の水 の恩恵にあずか って きた
カミ 近代に至 って生活や農業のためばか りでなく、人
ちなみに、世界銀行による世界人口統計に よると、
1人 当 りの水資源賦存量 の推移は1960年に 1万 3千
口の急増 と工業化や都市化 の進展によって需要が急速
に増大 し、供給を上回る事態になった。
m3で ぁったの力ヽ 人口増によって1990年には8,000m3
と38%も 減少 し、2000年には6800m3と 約半減、更 に
2025年 には5,000m3と約 40%の レベ ルにまで落ち込む
このままの状態が進むと、21世紀 の半 ばには利用可
一
能な水資源 は100%利 用 し尽 くされ、 部 の地域 で深
刻な水不足が発生 し、水資源を巡る争いが激化するこ
注 2)世 界水 フオーラムでは、水不足が生じる危険度を①高い、②
中、③低い、④危険なし、に分類 して、①の範疇に入る国を、
アジア諸国 :インド、バングラデシュ、パキスタン、アフガニ
スタン、イラン、イラク、ウズベキスタン、イエメン、アフリ
カ諸国 :エジプ ト、スーダン、リビア、モーリタニア、南米 :
ベルーとしている。アジア ・アフリカ地域では中レベルの危険
度に分類される国も多く、中国もそこに入る。
とになる。
.
ー
更にグロ バル化 の進展力ヽ 地域による格差拡大 に
拍車をかけているとい う批半Jがある力ヽ これについて
は 「
水 ビジネス」のところで後述す る。
水問題 は、この水の需給関係を考察 し、その解決策
を示す ことである。
ー
水不足 が もた らす水危機を世界水 フォ ラムでは、
配管技術 2004.5.81
・
〈8)
水資源 と水需要・
いろんな表現で指摘 し、警告 している 。
① 現 在すでにアジア、アフリカの途上国を中心と
。
"、
して 世界の31の国が切迫 した水問題に直面 し
てお り、12億人の人々が安全な飲料水を利用で
きていない。
② 水 が原因で年間500万人から1,000万人が死亡
してお り、子供たちは8秒 間に1人の割合で死亡
している。
③ 2025年 までには48ケ 国で水不足が深刻化 し、
水不足地域に住む人 口は30億 人に増加する。
④ 2025年 の人口80億 人のうち 3人 に 1人 が水不
足 の問題に直面す る。
⑤ 8億 人が 1日 2,000カロリー未満 の栄養 しかと
ることができない。
P・H・ グレイク氏は、「
人間が生存 じ得 る最低限の
生活用水 を 1人 1日 当 り50リ ッ トル程度であるとし
て、それを 『
人間の権利』 としてユ ネス コで採用すべ
注3)。
ちなみに50リ ットル
きである」 と主張 している
の生活用水 とは飲料用 5リ ッ トル、衛生設備用 20リ
ットル、浴用 15リ ッ トル、料理用 10リ ットルの合計
としているもので、我 々の常識か らすれば驚 くほどの
少量 である。
日本人の生活用水使用量 は 1人 1日 当 り322リ ット
レ (2000年)、配水経路 の漏水等 によ り失 われる分を
フ
含めて年間130m3程 度であ り、 これは米国に次 いで世
何 にふんだんに水を使
界第 2位 、われわれ日本人力畝口
っているかが明かである。ちなみに約50年 前にはこの
量は約半分であったカミ 生活水準の向上 と上下水道の
40億、1995年には58億 に達 し、2000年にはついに61
億 とな り、最近 の報道では63億 人に達 してい る。つ
まり50年 間で36億 人増加 したことになる。更に今後
50年 間で32億 人増え、2050年には約93億 人に達する
であろうと予測 されている (国連経済社会局、中位推
計。最新 の情報 では、エ イズの影響 を考慮 して2050
年 の予測を89億 人 と下方修正 してお り、2300年 に90
億人になり、以後横ばいとす る説 もある)。
そして現在のこの世界総人口の70%は 発展途上国に
居住 している。世界の先進国では出生率が低下傾向を
示 してお り、最近 10年 間 (1990∼2000年 )の 人口増
加率は年間約0.3%とかな り低 く、人口は横這 い又は
低下するとされている。これまでの人口増加 は、先進
工業国と発展途上国の両方で起 きていた力ヽ 今後の半
世紀における約 30億 人の人口増の大部分は、現在既
に人口過剰の状態 にあるアジア、アフリカなどの途上
世界で起 こると予測されている。
このような地域的に偏った人口の増加や都市な どへ
の人口集中カミ 水資源の新 たな偏在を更に引 き起 こす
こととなる。
中国は世界全人日の22%に 当る13億人とい う巨大
な人口を抱えている力ヽ 世界の水資源の6%弱 を保有
しているに過ぎない。1人 当りの水資源量は、国連の
統計によると、1997年の時点では世界153の国家と地
域の中で121番目の低位にある。今世紀半ばには16億
人に達 しようかという状況で、 しかも急速な近代化を
達成しようとしているため水不足は益 々深刻化 してい
る。
整備に伴 い倍増 している。
前項で見てきたように利用可能な水資源 には限 りが
一
あり、 方それを利用す る人口は増加 の一途をた どっ
イン ド東部やバ ングラデシュ西部 も人口増加が水不
足に拍車を力■ナている。
前述 した水紛争の危険度の高い中東 ・北アフリカ地
ているので水需要が逼迫 し、不足を生 じることは当然
の帰結であろう。
(2)人 口増加 と水 問題
世界の人口は1800年 には約 10億であったのが20世
域は、世界で最 も降水量が少なく基本的に水資源が少
ない地域であるとい う条件に加 えて、ここ数 10年の
紀に入 って急上昇 し、1900年 には16億、1950年 に25
億、以後第二次大戦後急 カーブで増加 し、1975年 に
“
注 3)P・ H・ グレイク The World's Water 1998‐ 1999"Island
Press,1999。 Gleikは この50リ ッ トル/人 ・日を、基本水必
要量 (BWR:Basic Requirement of Water)と
呼んでいる
(Basic water requirements for human activities,Water
lnternational,1996)。イラク人道復興のために派遣される自
衛隊の主要使命である飲料水の供給は、1日 、2万 人に対 し
て70∼ 80ton程 度と想定 しているとのことであるので、これは
3.5∼4リ ットル/日 ・人となり、Gleikの設定 した飲料水 5リ
ットルの70∼ 80%で ある。
82 配 管技術 2004.5.
間、人口の年間増加率が2∼ 3%を 続けている人口急
増地域である。 しかも都市への人口集中化 も著 しい。
ここでは人口比5%に 対 して水資源賦存量 は09%に 過
ぎない。
アフリカ ・サブサハ ラ地域 (サハ ラ砂漠以南)は ア
フリカ人口 8億 人のうち約 6億 人を占めているが人口
増加率は毎年3%程 度 と世界 で最 も高 く、世界的にも
最貧国地域であ り、水イ ンフラも極めて貧弱な状態で
ある。国連によれ│よ 人間 1人 当 りの最低限度給水量
50リ ットルをはるかに下回る20リ ッ トル以下の国は
33ヶ国あるが、そのうちの70%にあたる23ケ国がア
フリカにあり、22ケ国はサブサハラに属している注4)。
F
・
〈9)
水資源 と水需要・
地帯にあ り、その地域がほぼ水貧困地域 となる。
グローバルな水問題は即ち、南北問題であ り、人口
す る切迫感を切実 に感 じることもあまり無 い。
日本人 1人 当 りの水使用量は年間約700m3で 、そ
の内訳は生活用水に約 130m3(先 に、 日本人の生活用
水使用量 を 1人 1日 当 り322リ ットル =118m3/年 で
問題であるともいえよう。
一方、全世界 の水消費量 は人口増加をはるかに超え
あるとしたが、この差は配水経路で漏水等 により失 わ
れる量、つ まり取水量ベースと消費量ベースの差異で
るスピー ドで増加 しつづ けている。
あ る)、工業用水約 110m3、農業用水が約460m3で ぁ
る。
先進国では一般的に 1人 当 り年間 1,000m3が必要 と
一
されていることを考えれば、わが国の使用量は 見少
ないように見える。 しか し、実はこれは間違 いでわが
以上の今後人口急増が予想 されている発展途上国の
多 くは、世界 の陸地の約 1/3を 占める乾燥 ・半乾燥
世界的な人口の増加 は前述の通 りである力ヽ 水消費
量 は1900年 には500km3で ぁ ったのが、1995年 には
3,800km3に増カロしている。
つ まり、人口は20世紀前半の50年 間で約 1.6倍に増
え、後半の45年 間で2.3倍に増加 し、20世紀初頭から
の95年 間の単純平均 では約3.6倍に増加 している。 こ
れに対 し、水消費量 は1900年の約 500km3か ら1950
年 には約 1,300km3と なって50年 間で2.6倍に増 え、
1995年 には3,800km3となって後半の45年 間で2.9倍
に、20世紀初頭からの95年 間の単純平均では約 7.6倍
に増加 している。つ まるところ、ここ95年 間で、水 の
消費は人口増加 の約 2倍 の速度で増加 しているのであ
る。
ここに、需要 と供給能力のアンバ ランスが相対的に
々
益 拡大 し、水危機が一層深刻化す ることになる。
(3)わ が国は水輸入大国
グローノウレな水需給はさておき、わが国に限って観
た場合、 わが国には世界年間平均値の 2倍 近 い 1,700
∼ 1,800mmも の降水量があ り水不足 とは縁遠 い水 の
豊かな幸運な国であるという一般的な認識があり危機
湯水 のように金を使 う」 とい う表
感は希薄である。「
空気 と水 と安全 はタダ」 とい う皮肉った言葉
現や、「
にこれが象徴 されている。
また、国際河川がないため、これを巡る紛争 とは無
関係 であり、世界各地で発生 している国際河川を舞台
とした水紛争には無関心、無理解 となって水危機 に対
注 4)米 国 ・カリフォルニア州 。大平洋研究所のPH・ GOckに よれ
ば、最低限度給水量、1人 1日 当り50リ ットル以下 しか使用
できない国が国は55ケ国もあり、更に悲惨な30リ ットル以下
しか使用できない国が38ケ国、この うちアフリカが26ヶ 国、
アジアが8カ 国を占めている。最も悲惨な20リ ットル以下の国
は27ケ国、このうちアフリカが18ヶ国を占めている (上記注
00,1990年 時点)。国連による2000年時点の予測では、50リ
ットル以下の国は62ケ 国に及び、その人口は215億 人に達 し
国は大量の水 を海外 に依存 している。
グローバル化 の進んだ現在、モノは国境 を越えて大
量に移動 している。
わが国の食料 自給率 (供給熱量 自給率)は 2001年
現在約 40%で 、先進国の中でも際立 って低 い。 しかも
注5)。
ここ30年 間で約 20%も 低下を続けている
この数値が示す ように、膨大な農 ・畜産物 を輸入 し
ている。 これ ら輸入製品の生産に使われた水資源 を、
仮想
その製品の購入者が間接的に消費 したとみなす 「
水 (或いは間接水)」の概念力ヽ 1999年アリゾナ大学
の」・
A・ アラン教授により提唱されている。
この概念 は1990年代初 め頃、同教授 (当時 ロン ド
ン大学)が 中東諸国の実際の水使用量 を調査す る中で
考えついたとされている。
一
試算条件によってかな りの差はある力ヽ 般的にい
って、可食部 の重量比 で小麦や大豆は約 2,000倍、ト
ウモロコシで約 1,000倍、米に至 っては実に約5,000倍
もの水 が食料生産に使用 される。飼料穀物への水使用
ー
を考慮すると、鶏や豚で4,000∼5,000倍、エネルギ
効率 の悪い牛 の場合には約 2万 倍 もの水資源 の塊が使
注6)。
用 されたと考える必要があるとい うのである
7)に
注
よれlよ わが国の総
東大 の三宅氏などの試算
仮想水輸入量 は年間約 650億 m3で ぁる。 ただこの数
注 5 ) 農水省の統計によれば、わが国の2001年 の食料 自給率 は40%
で、飼料分 も含めると28%で しかない。OECD加 盟国の中で
は、30ケ 国中29位 となっている。つ まり60%の 食料 と共に、
これを生育させるための膨大な量の水を輸入していることにな
る。
ている。20リ ットル以下の国は33ケ 国あ り、そのうちの70%
に当る23ケ国がアフリカにあ り、22ヶ 国はサブサハ ラに属 し
一例と
ル
してGleikの示す値 (食料生産に必要な水量 ;リ ット /kg)
は次の通 りである。ポテ ト :500∼ 1,500、コムギ :900∼
ている (村上雅博著 「
水の世紀J日 本経済新聞社,2003)。 そ
して、これら20リ ットル以下の国におけるそれぞれの給水量の
2,000、ト ウモロコシ :1,000∼ 1,800、イネ :1,900∼ 5,000、
ダイズ :1,100∼ 2,000、ニ ワ トリ :3,500∼ 5,700、牛肉 :
数値 も、1990年時点と2000年時点では大幅に減少 していると
予測されている。
2001.Island Press,2000)
注 6 ) 耕作や生育の方法によって、この値 もかなり幅がある。
15,000∼7,000(P H Gleik:The world's water 2000∼
酉己宅
彗ま支翻に 2004.5. 83
水資源 と水需要…00
値は農 ・畜産物の水原単位 の推定量によってかな り異
なり、74億 m3な どの試算結果 もあるが、ここではそ
の正確な数値は大 して重要ではなく、年間の国内の水
使用量合計887億 m3(取 水量ベ ー ス)に ほぼ匹敵す
るオー ダーの水を輸入 しているとい う事実を認識する
こと力Ⅶ干要であろう。
ちなみに国内水使用量887億 m3の 内訳は、採取水
るものである。
1人 当 りにすると年 間約500ない し∞Om3の 水が輸
入 されて いるわけで、 国内の使用量 と合わせ ると約
1,200ない し1,300m3となり、先進 国のなかでも多 い方
に入る注8)。
先に引用 した世界水会議のウイリアム ・J・ コスグ
ローブ副会長の コメン トは、わが国の水問題に関する
源別では、河川水 が781億 m3、 地下水が 106億 m3で
あ り、利用内訳 では、農業用水 586億 m3、 生活用水
8。
164億 m3、 ェ業用水 137億 m3な どとなっている。
認識に対 して、この間の事情を象徴的に説明 している
つ まり、世界各地の大量の水カミ 毎 日、主食や惣菜
<参 考文献>
(1)E・C・ ビルー著,古 革秀子訳 『
水の 自然誌 (Fresh Water)Jヤ
丁
出書房新社,2001
に圧縮 された形でわが国の各家庭の食卓や レス トラン
に送 り込まれているということである。
ここで、工業製品の輸出入 に伴 う仮想水 フローは、
ー
デ タによ りい くらかの差はあるが、輸出14∼ 16億
m3/年 に対 し輸入 10∼ 13億 m3/年 で、農 ・畜産物
と比べ て桁違 いに少な く、輸出が輸入 を上回ってい
る。グローバル的には工業化による水不足が俎上にあ
げらな 往 々にして工業化その ものが悪者扱 いされる
最近の風潮 であるカミ 国内閉サイクルで考えた場合、
工業化が直接的な要因となっているのではなく、むし
ろ、工業化による食糧不足問題といった方が適切 であ
ろう。
いずれにしてもこの事実 は、差 し迫って水問題に直
面 していないかに見えるわが国も、グローバルな水需
給問題から避けて通ることはで きないことを示 してい
注 7)三 宅基文 ・沖 大 幹 ・虫明功臣 『日本を中心とした仮想水の
輸出入J水 文 ・水資源学会研究発表会要旨集,2002。或いは、
丹治 肇 『
仮想水を含んだ日本の水資源評価』第 6回水資源
に関するシンポジウム論文集,2002。
なお、沖助教授などのホームベージの最新版 12003年7月
修正版)に よれば、「
総合地球環境学研究所の沖大幹助教授
が、東京大学生産技術研究所のグループと試算した結果による
と、わが国の総仮想水輸入量は、z4億 m3/年 という値を提
出した時期もあったが、現在の最新算定値は640億m3/年 と
する」との修正がなされている。また第3回 世界水フォーラム
事務局資料によると、水の輸入相当量は439億mつとかなり少
ない数値力ψ卜成されている。これは農 ・畜産物 1ト ンの生産に
必要な水の量が、上記いくつかの数値より少なく想定されてい
ることによるものである。
注 8)「第 3回世界水フオーラムJの分科会で、「
仮想水の純輸入量が
多いのはスリランカ、日本、イタリアの順である」と発表され
ている。ちなみに輸出量の多い国はアメリカ、カナダ、オース
トラリアの順である。「もし仮に、この仮想水に課金されたら
どうなるか ?日本経済は大きなダメージを受けるであろう。膨
大な貿易赤字に悩むアメリカが、いつ口に出すかもしれない。
このことは、日本人全員が知っておくべ きことだろう」との忠
告もある (浜田和幸著 Fウォーター ・マネーー石油から水へ世
界覇権戦争J光 文社ベーパーバックス,21X13)。
84 配 管 技 術 2∞ 4.5.
ものである (前号参照)。
(2)平 澤猛雄 『
水の不思議発見』山海堂,1999,枢 根勇 『
水 の循環』
共立出版,1973,な ど
“)高 橋裕編 『
水のはなしⅡ』技報堂出版,1991
“)嘉 田由紀子編 『
水 をめぐる人と自然 一日本 と世界 の現場からJ有
斐閣選書,2003
(5)山 田國廣編 『
水 の循環 ―地球 ・都 市 ・生命 をつ なぐ “くらし革
"」
命 藤原書店,知 2
(6)フ ィリップ 。ボ ー ル著,荒 本文枝訳 『
H20 水 の伝記 (The
ニュー トンプレス,20011
Biography Of Water)』
(つ レ スター ・プラウン編著,エ コ ・フオーラム21世紀/日 本語版監
修 『ワー ル ドウォッチ研究所 ・地球 白書 2001‐
02』家の光協会,
2001
(8)マ ルク ・ド ・ヴィリエ著,鈴 木主税他訳 『
ウォー ターー世界水戦
争 (Water)J共 同通信社,21X12
(9)ヴ ァンダナ ・シヴァ著,神 尾賢二訳 『ウォー ター ・ウォーズ ー水
の私有化,汚 染そして利益 をめぐって (water Wars_P五 vauza_
jon,Polu」on,and Proft)」緑風出版,2003
10 レ スター ・プラウン編著,福 岡克也監訳 『ヮール ドウォッチ研究
所 地 球環境データブック,21X10‐
2 1Xll』
家の光協会,21X10
0D 朝 日新聞,2003年 6月 5日 『
水不足解消に使用権設定 ―中国の
アキレス腱』
121 マーク ・ライスナー著,片 岡夏実訳 『
砂漠のキャデラックーアメ
カの水資源開発 (Cadillac Dさ
Sert,The American West and its
DisappeaHng Water)』築地書館,1999
00 朝 日新聞,2001年 1月 18日 『
限 りある水での食料生産,環 境を
破壊 しない 「
かんがい」工夫を』
00 朝 日新聞,2003年 11月27日 『
アラル海,死 の海 に一流入水量激
減,40年 で面積 4分 の 1』 なれ
00 ジ ェフリー ・ロスフェダー著,占 草英子訳 『
水 をめ ぐる危険な
話 ―世界の水危機 と水戦略 (Every Drop fOr Sale)J河出書房新
1, 2002
オ
10 国 土交通省,平 成14年版 『日本の水資源J21X12年
0つ 若 山茂樹 『
世界の湖沼保全 ―琵琶湖からの旅 ―』実教出版,1995
0 国 土交通省 :平成13年度 日本の水資源,2001
本 田久親
T870-0875
ノく夕
)司
け早
5-20
宇'膚
イ
ヨ2‐
TEL:097-5434013 FAX:097-5434013
E―
ルlail:hOndahi@oc卜 netne」p
・
(1)
配管技術者のための米国参考書・
H0401-02
9894/04群500′
0385‐
CLS
論3υ」
〔コラム 〕
配管技術者 のための米国参考書
西野配管装置技術研究所 西 野 悠 司
Yuji Nishino
配管技術 2003年 10月号で米国の配管参考書 8冊 を
紹介 した。
今回新たに紹介する5冊 の本は、配管技術その もの
に関す る本 と、配管技術そのものではない力\ 中
冨広 い
知識を要求される配管技術者が知ってお くべ き周辺技
術 の本 として、米国で出版された代表的書籍 と考えら
れるものである。
今回の 5冊 はすべ てインターネットで購入 したもの
である。インターネットでの購入は本 の中身を見るこ
とができないので、本の選択が難 しいと思われるだろ
う力ヽ 小職力滞J用しているamazOn.comの 場合、売れ
筋 の本 については、 目次、本文の最初の数頁、索引、
併せて10頁前後を画面で見ることができるようになっ
ているので、その本がどのような本か大几見当をつけ
どこで買 って も定価 である力ヽ 米国ではこの表示価格
よ り安 く売 られて い ることもある。同 じamazon.cOm
で も新本の値段 が幾種類 もある ことがあ る (その仕組
み は よ く分 か らない)。一番 安 い値段 で注文 しようと
す ると、 「この地方 (日本)へ はこの価格 で は販売で
きません」 とい うメッセージが出ることもある。送料
は通常 の航空便 (特に急がない便)で 10米 ドル程度
で、注文か ら到着までに要する日数は短 い もので 1週
間、長いもので 3週 間余である。尚、送料 も販売会社
により、差があるようである。因みに、今回紹介す る
Instrument EngineerゞHandbook,Volume lは リス
ト価格 160US$で あ るが、筆者 が購入 した価格 は
135US$、運賃 10US$で あ り、注文から本を受け取る
られる。
までに25日を要 した。
“
“
ホームペー ジ上の Buy it now"、
Add tO cart"な
米国の本には定価が表示 されておらず、 リス ト価格
(表示価格)と い うものがあ る。 日本 では本の価格は
どをクリックすると、申込用 の画面が出て くるので、
注文は画面 の指示 (英文)に 従 って、名前、会社名、
初
書名 : Plastic Piping Handbook 版
Da宙d A Wil!oughby外
、5ol頁、McGraw―
HⅢ社、2002年発行、99 95US$
著
この書の特徴 は、この 1冊 にプラスチックパイプの配管設計、据付に携わる人に
必要な知識、ノウハウが、圧損、強度の評価方法を含め、一通 り入っていることで
ある。 プラスチック配管 だけに特化 したこのようなハ ン ドブックは日本にはまだな
い。い ままで、金属配管 に携わってきた人力ヽ 金属 とは異なるプラスチツクパ イプ
特有の性状 と設計 ・施工上の留意点を勉強する本 としても適している。500種以上
に及ぶ化学生成品 (流の に対する温度別 (20∼140℃)耐 久性を示すリス トは特
筆 に値するか もしれない。このリス トを含め、本書に掲載の主要な表は、米国
のハンドブックから借用したものであり、その他、他資料から引
George Fischer社
い
のが
用されたも
多 。本書は初版本であり、今後版を重ねるごとに、プラスチック
々の
の
配管 益
使用拡大 と相侯って、プラッシュアップされてい くことを期待 したい。
配管技術 2∞ 4.5.85
配管技術者のための米国参考書・〈2)
l y P i p i n g S y s t e m s H a n d b o2o版
k 第
書名 : F a c ‖
Michael Frankel著、McGraw―Hi!1社
干J、1,210頁 、2002年 干J、125US$
設備配管ハ ンドブック」である。即 ち、施設、ビル、住宅などに必要な
訳せば 「
さまざまな諸設備、たとえば、ろ過装置、下水 ・消火設備等の野外公共設備、液化
ガス貯蔵設備、屋内水周 り、蒸気 ・復水輸送設備、圧縮 ガス系統、真空系統などの
Piping Handbook」
配管 とスペ シヤルティを解説 している。同 じ社か ら出ている 「
がパイプの材料、強度、フィッテイング、弁など、樹 に例えれば幹の部分を扱 って
いるのに対 し、本書は幹から枝に分岐 したあと、即ち、上記諸設備への応用編 とい
うことができ、実務的な内容 となっている。配管工学研究協会が1955年に発行 した
配管ハン ドブック,第 4版 ,産 業図書枷は扱っている範囲が本書 とよく似ている。
書名 :Pump Handbook 第 3版
l」KarasJc著 、1,765頁、McGgraw―H‖社、2001年 発行、135US$
配管につ きものの機器 と言えばポンプであ り、配管設計者はポンプについてのあ
る程度の知識が要求される。本書 は 「
ポンプのことなら何でも来い」 と言った類の
本である。この第 3版 は第 2版 出版から以後 15年間の技術進歩を取 り入れた改訂版
である。ポ ンプ型式別の理論 と構造、ポンプ駆動方式、ポ ンプの用途など詳 しいハ
配管設計者に直接関係あ りそうなところを幾つか挙げてみると、渦巻ポ ンプの注水
軸封、最小流量制御、給水ポンプ降水管の過度現象、配管圧力損失 (ハーゼンウィ
リアムス、マニング、米国水力学会、クレー ン社の各計算式、データ)、ウオータハ
ンマ、ポ ンプ吸込管形状、等にかなり詳 しい説明があって、配管技術者 としても、
随時参考にしたい本である。
SI単位が併記 されている。尚、本書第 2版 の訳本が地人書館か ら1998年に発行
されている。
第
2版
書名 : Practical Stress Analysis in Engineering Design
Alexander Blakel彗
、690]署、1990`手干り
、95US$
本書が、一般の材料力学の教科書 と大いに異なる点は、実用に重 きを置 き、機械
と構造設計者のために、難 しい理論から入 らず、す ぐ設計に役立つ ように編纂 され
ていることである。本書のタイ トル冒頭のpracicalはそれを意味 している。本書の
対象 とする構造 ・形状は極めて具体的、かつ広範囲である。配管技術者から見て、
特に配管 に特科 された部分を抽出すれば、 アイバー、パイプフランジ (リブ補強フ
ランジ含む)、(配管用)ブ ラケット、管 と容器、の各強度、外圧強度、ボル トジョ
イ ン トの設計、ハ ンガー クランプ部の管 に生 じる応力、外力に よる枝管部強度、
等 々である。配管技術者の座右の書 として揃えて置いて損はないと思われる本であ
る。
86 配 管技術 2004.5.
「―
―
―
―
「
―
・
3)
〈
配管技術者のための米国参考書・
書名 :!nstrument Engineers'Handbook,Volume l:Process Measurement and
Analysis 第 4版
1,920頁、CRC PRESS社 刊、160US$(リ ス ト価格)
編者Bela G ttptak、
重 い荷物 ですよ」 と言って届けて くれた本である。本の大 きさも
郵便屋 さんが 「
通常の本 よリー 回 り大 きく、百科事典のような風格をしている。
本書 はInstrument Engineers'Handbook全 3巻 の内の第 1巻 で、プロセスに使
“
一
用する計器 と分析器の概要を紹介 した本である。本書の 大特徴は あらゆる種類
"と
の
言って良いほどの多種類の計器、分析器 を収め、その原理、特徴を、図、写
真をふんだんに使 って説明 したところにある。 この第 4版 だけでも50人 の専門家が
ー
執筆 してお り、 日本では余 り見かけないスケ ルの大 きな本である。頁の 6割 を計
器に、4割 を分析器に割 いている。例えば配管技術者に深 く関わ りのある流量計に
は250頁 を割いてお り、取 り上げている流量計の種類は29種 に及ぶ。そしてそれら
の各種類毎に、その冒頭に、使用可能な、圧力 ・温度、流体、流量、精度、 コス ト
などが簡潔に記されているのも便利である。
、第 3版 が1995年に発行 されて
尚、 このHandbookの 第 2巻 PrOcess Controlは
いる力ヽ 第 4版 は2005年 6月 まで、発行 の予定はないとのこと。
mailア ドレス、クレジットカー
住所、パ スワー ド、e―
male
ド番号、な どを1/Pし てゆ く。注文が済む とe―
以下のような条件で注文を受けた」 と
受信 トレイに 「
い う確認 のメールが入る (日本 のパ ソコンのセールと
同 じように、外 の本 との抱 き合わせセール もやってい
るので注意)。
2度 目からの注文 は、前記のデー タが全て記入済み
となって示 されるから、確認 とパスワー ドだけで、前
へ進めるので、至って簡便である。
b o o k s " と い うサ イ トの 中 の E n g i n e e r i n g b o o k s
(URLは http://ww".rbookshop.com/engineering/)
か ら拾 い出 したものである。 このサイ トはエンジエア
“l u i d
“
リ ン グ部 門 を、 c h e m i c a l e n g i n e e r i n g "f 、
vil
e c h a n i c a l e n g i n e e r i n g“
'c'i、
e n g i n e e r i n g '“
'm、
engineering'など約 180のジャンルに分け、各 ジヤン
ル毎に最大 350冊 の本を紹介 してお り、現在米国で手
に入れることのできる本の大部分が ここに紹介 されて
いると思わオ
ヽ 便利なサイ トである。
尚、 日本 のサイ トとしては、筆者 はオ1用したことが
な い が 、 日本版 ア マ ゾ ン (URLは http://www.
/465392/
amazon.co.ip/exeC/Obidos/tg/browse/―
工学、
7281970-1225908)や
ref=ctttab_gw_L3/249‐
医学分野 を専門に扱 うBookWire(URLは htt,〃
どがある。
shop.kwire.co.jp/e_bookwire/)な
ー
ンタ
の大部分は、最
で
た
し
ネット
本
小職がイ
購入
“
ー
初のステップとして、インタ ネットの Search for
筆者紹介】
【
西 野悠 司
西野配管装置技術研究所
175
〒143‐
0 022 東 京都大田区東馬込2‐
TEL i 03-3776-6691
FAX:03-3776-6691
・
広告製品 のカタ ログ 等 の 資料 は、本誌 の 「カタ ログ
資料請求用紙」 でご請求下 さい。
編集部 では、到着 した資料請求用紙 を1 0 日毎 に処理 し、広告 主へ お知 らせ します。
へ
い
広告主 よ り直接読者へ そ の資料 が送 られ ますが、お急 ぎの場合 は直接広告 主 ご連絡下 さ 。
配管技術 2004.5.87
H0402‐
23
0385‐
9894/0″γ500′
論X/」CLS
⑦ ♪娘の誕生日♪どこに
デー トにいこうかな♪
今日は娘の誕生日 (るん ♪)
あ一 どうやつてお祝い しようかな ? こ こ│よ
デー
トに誘 つてみるか │
焼き鳥というわけにもいかないだろうし、デー ト
に行 くな らしゃれた所かな。娘たちはいつたい何処
にデー トに行 くんだろう??
隣の席のやつに聞いても同 じ意見だ し、部下に聞
いてもコさ
ずか しい し…
そんな時に、強 ∼い見方のイ ンター ネ ッ ト。こん
な便利なものがあつたんですね。では調べ ていきま
しょう。
イ トを開いていますので、ズバ リ国家機密以外は何
でも探せると思 つて良いで しょう。
最近はインターネ ッ トでの通信販売が結構盛んに
なつています。捜 し物が出来るようになつたら、シ
∃ッピングに出かけてみてはいかがですか ?
●作家の都筑道夫さんはどんな本を出 してるの ?
●盆休み東名高速の渋滞情幸田よ?
●私の預金残高│よ?
●今週末安いゴルフ場は ?
●あの レス トランの電話番号 は ?
●この薬何に効くの ?
●プロ野球はどつちが勝 つたの ?
◆まずは用語を2つ 覚えましよう !
Web(ウ ェプ)サ イトJ
(1)「
“
"と
サイ ト
は、インター ネ ッ トでサー バー のあ
“
"は “
る場所の こと。 ウェブ
、Wo‖ d Wide Web"
“
の略で、組織とか団体とか言 う意味。だから、ウェ
"+“
"で “
ブ
サイ ト
、組織とか団体が運営 しているイ
"と
ー
ンタ ネ ッ トのこと
な ります。もちろん団体で
はなく個人 1人 がやっていることもあ ります。早い
話 が、インターネ ッ ト上の掲示板みたいなものだと
思 つていただければいいで しょう。
121「ホ ームベ ージ」
本当の意味はインター ネ ッ トに入 つたときに (パ
ソコンでインターネ ッ ト ・エ クスプロー ラを起動 し
た時に)最 初に表示されるペー ジのことです。 日本
ではインターネ ッ トが普及するにつれ、ウェブすべ
てをホームペー ジと呼ぶ傾向にな つてきています。
パソコン通の人たちが 「
Webサ イ ト」とか 「
ホ
ームページ」とか話していて、チンプンカンプンだ
つた方もこれで 「
なぁんだ、掲示板のことか」と半」
つてしまえばもう怖いことはありません、堂々とイ
ンターネットに入り込みましょう。
◆インターネットで何が探せるのか?
インターネ ッ トでは、色々な団体 ・組織 ・個人が、
情報公開、宣伝、商売、趣味を目的と して Webサ
88 配 管技術 20045.
◆どうやつて探し当てるか !
さてこれからが実践編です。実際にイ ンターネ ッ
ト ・エ クスプロー ラを起動 しながら試 してみま しょ
う。
色々な人が作つている Webサ イ ト│よ
、「
検索サー
ビス」を行 つている Webサ イ トに入 り込んで探す
のが一般的です。このサ ー ビスを利用することで、
インター ネ ッ ト上にある膨大な数の Webペ ー ジか
ら、目的の情報にすばやくアクtzスでき萩す。検索
するのに登録は必要有 りません tノ
、無料です、安心
して下さい。
●M S N 」 a p a n
●Y A H 0 0 」 a p a n
●G o o g l e
●Lycos」 apan
●nifty
では、YAH00の
検索サ ー ビス 使 つて、先程 の
“
あのレス トランの電話番号は ?"と いう設問や つて
みま しょう。まずインターネ ッ ト ・エ クスプロー ラ
ーを起動 して、YAH00を
ます (もし最初に
表示 t′
表示される画面が YAH00で なく、表示の しかたが
分からない時は、インター ネ ッ ト ・エ クスプロー ラ
ーのア ドレス (D)欄に http1//www yahoo.co ip/と
入力 しエンターキーを押 してみて下さい)。
2)
〈
⑫♪娘の誕生日♪どこにデートにいこうかな♪・
― を入れると探 してる言葉を絞 り込むことができま
“
"を
入力 して (“
す。検索欄に レス トランニ横 浜
='
はスペースの意味)、検索ボタンを押 してみましょう。
どうな りま したか ? 検 索 した結果は、280件
になりましたね (第 3図 )。
第1図
“
"と
レス トラン
言 う言葉
を入れて検索ボタンを押 してみましょう (第 1図 )。
それでは、検索の欄に
レス トランの言葉を含んでいる文章やタイ トルが
いくつも出てきましたね。
ここでサイ ト数を注目してください。検索 した結果
は 2,214件 にな りました (第 2図 )注)。
第3図
“
"と “
これで文章やタイ トル中に レス トラン
横
"と
いう言葉を含んだサイ トを絞 り込むことがで
浜
“
きま した。実はこのスペー スは and"の 意味で使
われ、単語 と単語の両方を含む文書を検索 します
(3つ 以上の単語も検索することもできます)。では
“
もうち ょつと絞つてみましょう。今度│よ 和食が食
“
"と
"と
べたい
します。 レス トラン_横 浜二和食
入
力 し検索ボタンを押すと、検索 した結果は、 11件
になりました (第4図 )。ほらね、サイ トがどんどん
第 2図
たくさんあ つてこの 中か ら行きたいレス トランを
探すのは大変ですね。
ここでポイン トなのがスペ ースキー │ス ペースキ
注)検 索件数は検索する時、または検索サイ トによつて上記の件数
と異なります。
第4図
⑫♪娘の誕生日♪どこにデー トにいこうかな♪ (3)
躙略頸1咆 鰊蒻鱚鱚鶴顧喘・
覇L..
幽鶉 鰈
絞り込めます ♪
“
今度は、横浜で食べたい、でも和食は一気分でも
"と
ないな
思 つた時どうしましょう ?
ー
スペ スではなく、ちょつと文字を変えれば探せ
“
“ "の
るんですよ。第 1図の 検索
横 にある 検索オ
"を
プシ∃ン
押 してみましょう。第 5図 の画面がで
てきます。
第6図
◆おまけ
瑯
J鮨 1
第5図
よくみるサイ トをいちいち検索 して表示するのは
大変ですよね。
インターネ ッ ト ・エ クスプロー ラー を起動させる
“
"と
いうのがあ
とタイ トルバー の所に お気に入 り
ります。ここに登録すれば次か ら簡単に表示するこ
とができますよ。
"に
“
忘れ
検索条件の欄にある エキスパー ト検索
ー
ー
の
ェックを
して検索キ
ワ
ド
し、そ
ずにチ
欄に
"と
“
レス トラン *横 浜#和 食
入力 して検索ボタンを
押 してみましょう。
“
“
ここで *"は andの 意味。 #"は
それで│よ
登録の仕方を見ていきましょう。
ここではYAH00を 登録 して'み
ます。ではインタ
ーネ ッ ト ・エ クスプロー ラー を起動させ、YAH00
“
を開いてみて下さい。タイ トルバー にある お気に
"を
入り
押 してみると、第 7図 の画面がでてきます。
あとに入力
“
した言葉を含まない意味です。このほかにも +"、
“
( )"等 た くさんあ ります。検索オプシ ∃ン画面
"を
“
クリックす
の、 エキスパー トの検索の使い方
、入力 した
るといろいろ書いてあ ります。それで│よ
結果をみて ください。第 6図 の状態で出てき ます。
この様に絞 り込んで気に入 つたお店の電話番号 を
getし て下さい。
いかがで しか ?言 葉と言葉の繋ぎにスペー スをい
“
れるだけでサイ トが絞ねるなんて驚きですよね。ス
"、“ “
ペー ス
#"、 *"等 文字を組み合わせて、娘の誕
生 日によい店を捜 してみて下さい ♪
検索 してみま したが、各々の
今 回は YAH00で
webサ イ トによつて探 し方が違いますので詳 しい内
容は検索オプション等を開いて見て下さいね。
このお気 に入 りのすぐ下の
“
"
お気に入 りの追カロ
をクリックしてみましょう。
そうすると、名前 と保管する場所 (フォルダ)を
90
酉己管ま
支冽
肝 2004.5
4)
〈
⑫♪娘の誕生日♪どこにデー トにいこうかな♪・
"で
“
名前 を作 り、
確認 、も しく│よ 新規 フォル ダ
“
"と
“
OK"を 押 します。その後、お気に入 りの追加
"の
“
・
お気に入 りの整理
下欄に名前が登録されます。
これで登録は完了です。簡単ですね。
“
“
"の
そねと、 お気に入 りの追加
下にある お気に
"は 一
、 度お気に入 りに登録 したものを名
入 り整理
前を変えたり、削除 したいと思つたときに使います。
“
"を
クリックしてみま
第 7図 の お気に入 りの整理
8図
のような画面がでてきま
しょう。そ うすると第
“
画面を開くと 4つ ボタンがあ ります。まずは 削
"か
"と “
ら説明 しますと、登録 した
除
名前の変更
“ "
サイ トを削除する場合は、サイ トを選んで 削除
を押 します。登録 したサイ トの名前を変更 したい場
“
"を
押 して名前
合は、サイ トを選んで 名前の変更
を書きかえます。
"と “
“
フオルダヘ
そ して、次│よ フォルダの作成
"で
す。
移動
"に
“
お気に入 り
登録 して便利になつたけど、たく
さん登録 して しまつてここから探すのが大変という
ことがあ ります。同 じ種類のサイ トを 1つ のフォル
す。
錮 Starbucks
Caopfafne e 」
毯 Yahod JAPAN
鐘 第22回世界ガス会議東京大会
由 PC
ォルダの リス トが出ますので移動先のフォルダを選
“
OK"を 押 します。同様に残 りのサイ トを移動
由 その他
び
」 メディア
Lコリンク
1歯海
押下
T
ダにまとめれば探すのも簡単ですね。そんなときこ
の機能を選べ ば便利ですよ。
"を
“
フォルダの作成
押すと第 8図 右欄の リス トの
"が
“
レ
ダ
しいフォリ
追加されます 。そのフ
最後に 新
レダには好きな名前を付けることができます。
ォリ
“
"を
押す と、フ
サイ トを選んで フォルダヘ 移動
すればす つきりしますね。
…
農
││1議
'な
0■J
お気に入 りの登録を知つてるとインター ネ ッ トも
快適につかえます ♪
(MM)
Windowsは
、米国 MiCrosoft社 の登録商標です。
1鞠
1轟
1版
1本
1日
│=1業
イ│ン
タ│■
│ネ
│う
1知
1撃
│
│■
ジ│,│お
,■│ホ
■141ヽ
当社 では、イ ンターネッ トのホームペ ージを運営 してお ります。
h t t p : / / w w w n i k k op―
b co.ip/
一
月刊技術誌 に加 え更 に広 く情報受発信 を行 い、明 日の技術 に貢献 してまい りたい と存 じますので、是非 度
アクセス していただ きます様お願 い 申し上げます。
また、合 わせてe m a i l による、当社刊行物へ のご意見 ご要望 もお待 ち してお ります。
m a l l : i n f o @ n i k k op ―
o‐
社)
b co jp(本
m a i l : i nnf@on―
i k k po b―. c o J p (本橋事
e―
日 務所)
日
本 工 業 出版 帥
イ ンターネ ッ ト係
TEL 03(3944)1181 FAX 03(3944)6826
配管技術 20045.91
株 式 会社 」S P
株式会社 キ ッツ
代表者〉 小林公雄
〈
本社住所〉 〒 261-8577 千
〈
10-1
葉市美浜区中瀬1‐
TEL:043-299-1730 FAX:013‐
299_0121
(資本金〉 21,200(百 万円)
(年 商 〉 連 結2,000(百万円)
(従業員数〉 連結3,3Clll名
(事業内容及び会社近況〉
流体制御機器の綜合 メーカー
代表者〉 原 田正昭
〈
本社住所〉
〈
〒1000∞5 東 京都千代田区丸の内3‐
4-2
新 日石ビルデ ング
TEL:03-ω 12‐
6 300 FAX:03‐ ω12‐
63∞
URL:http://www.cO JSp.cO.Jp
(資本金〉 7,960(百 万円)
(従業員数〉 666名
事業内容及び会社近況〉
〈
」SPは 発泡プラスチックの総合メーカーです。発泡 プラ
スチックとは、プラスチック樹脂を気泡生成 し安定化 した
もので、発泡する事で軽量化 ・緩衝性 ・断熱性 ・遮音性 な
ど多 くの特性が付加 されます。
建築設備の設計 ・施工専門誌
1
集方針と特色
編
●創刊年月 日 :1963年 (昭和38年 )11月1日
●発 行 日 :毎 月1日発行
●発 行 部 数 :24,000部
144頁
●判型 ・総頁 :B5判 ・
:2,000円
価
●定
(本体 1,905円送料別)
●年Fo5購
読料 :14冊 (増刊号2冊含)
24,000円(税・
送料込)
のお 申 し込みは
◎ 日Π工業出版
本 社 〒113-8610東 京都文京区本駒込6-3-26日 本工業出版ビル
394ど 18001
大 阪 営 業 所 〒5 4 1 - 0 0 4 6 大
阪市中央区平野町1 - 6 - 8 - 7 0 5
TEL 06(6202)8218 FAX 06(6202)8287
ベ
:翼
]:::
乳
lFナ
TEL 03(3944)1181(代) FAX 03(3944)6826
h t t , W W W n k k o p b c,。
p/e maLhfO@nkkO pb coip
92 配 管技術 2004.5.
│
本誌は、空気調和、給排水衛生、電気、特殊設備等の設
備技術の専門誌 として 35年 余の歴史 4Lもち、超高層 ビル
か ら、ホテル、病院、劇場、工場、ク リー ンル ームや研究
施設、一般商業 ビル、集合住宅、地域冷暖房を含む都市設
備、バイオや最近のイ ンテ リジェン トビル にいたるあ らゆ
る建築設備 について、そのシステムか ら材料、機器 ・施工、
運転 ・保守、設備更新 にいたる技術 について コス ト ・法規
など多角的かつ実務面か らと りあげ、ヨ
受備技術者に実際 に
役立つ雑誌を編集指針 としてお ります。
軋
ネオモルコシステム
「ネオモルコシステム」 は、戸建住宅やマンション用 の宅内給水 ・給湯 ステンレス配管 システムの従来工法、モルコジョ
イ ン トを進化 させた次世代 システム。最大の特長 は、容易に曲げ加工が出来るフレキ性 を備えたエデルフレックスパ イプ
の開発にある。接合 は、実績 のあるプ レス式 を採用 した6現 場 の状況により、分岐工法 とヘ ッダーエ法の選択が可能 (ヘ
ッダーエ法の邸別配送に関しても対応可能)。
■特長
① 狭 い箇所での施工性を向上させ、人件費削減に寄与
② 継 手材の使用数が減 り、材料 コス ト削減が可能
③ 現 場での品質管理が容易になり管理 コス ト低減を促す
④ 従 来工法 と混同される類似製品との明確な差別化
/ 問 い合わせ先 l a l ベネックス
TEL :03-3777‐ 1531
メータユニット
集合住宅パ イプシャフ ト用水道 メー タユニ ット。BMU-lU型 メー タユニ ット、RMU-1型 減圧弁付 メー タユニ ットの 2つ
があ り、価格はそれぞれ22,000円、32,800円 (税抜)。平成 16年 4月 より発売開始予定で、販売 目標は年間50,000個を目
指 している。
■特長
① 水 道 メー タ周 りに必要な止水栓、伸縮管、逆止弁、架台、減圧弁を一体化 (減圧弁付はRMU‐1型)。
② 回 転 自在 のエルボはワンタッチ固定式で縦 ・横配管 どちらにも簡単に接続 できる。
③ 水 道 メー タの接続 はハ ン ドル操作 による圧着式で工具は不要。
④ 軽 量化により施工が容易。
⑤ 流 れ方向は右流れ ・左流れどちら
でも自由に設定できる。
⑥ 止 水栓部には停水キャップの取付
が可能。
⑦ 東 京都水道局登録品。
BMU-lU型
/ 問 い合わせ先 閉 ベ ン
TEL :045-933-1860
酉己管ま
支冽
ほ 2004.5. 93
既設の配線 の用途が 100倍 以上 に広がる
計装信号多重化 ユニ ッ ト
既設 の4∼ 20mAな どの計装信号の配線 をそのまま時分割で使用 して、8点 のアナログを伝送す るユニ ット。伝送距離
が5km以 上 と非常に長 く、伝送できノイズに強いことが特長。
そのため使用す るケーブルの種類はどのような電線でも使用可能で、シール ドのない予備の電線などでも使用できる。工
事費が新たにケーブルを敷設するのに比較 して大幅に削減できる。
アナログユニッ トはパ ラレル接続で100台以上 (最大250台)の 増設ができるため、 コンビナー ト等 の広い地域に分散 し
た多 くのタンクの レベル、温度などの広域 な計測が 2本 の線で可能 とな り、新たなケーブル敷設工事な どをしなくても既
設配線 の多重化 により非常 にロー コス トで可能 となる。多点管理の場合は別売 りのRS232Cユ ニ ッ トでパ ソコンと接続す
ることで広域の一元管理システムが容易に構築できる。
/問 い合わせ先 豊 中計装lal
TEL :06-6336-1690
漏洩検査剤
スーパー トレーサー OL¨ 200‖
(超高濃度)
OL200 Ⅱ は、油圧機器、大型 タンク類、配管等の油漏れ箇所の早期発見のために用 いる漏洩検査
剤。
■特長
① 取 り扱いが簡単で微量な漏れも見逃すことなく、容易に見つけられる。
② 作 動機械、パ ッキン類への影響がない。
③ 少 量の添加で大きな効果が得 られる。
④ 油 圧設備の適切な管理が行える。
⑤ 省 エネルギーに役立ち、コス トダウンに結びつ く。
■使用方法
200Ⅱを
① 油 圧機器に使用 している作動油等の油に、01∼ Q2%の OL‐
添加 し、混合撹拌する。
② 機 械を運転 して、混合油が全体にいき渡るようにする。
③ 紫 外線照射灯で紫外線を照射 しながら、循環経路をたどる。
●漏洩箇所があれば、黄緑色の強い蛍光を発するので、修理等の適切
な処置が速やかにとれる。
●紫外線照射灯は、弊社携帯用紫外線灯スーパーライトD-10が便利。
スーパ ー ライ トD ‐
10
/問 い合わせ先 マ ークテックい
丁匡L. :03‐3777‐1852
94
酉己籠
彗1支引
に 2004.5.
エネルギー消費量の監視と機器の制御を同時に行える
lnf6Energy」
省エネ支援システム 「
InfoEnergy」は、従来の省エ ネ監視 システムが持つ消費電力量デー タ収集 ・監視機能に加 え、設備 ・機器単位 のデー
「
タ解析や省エネ対策 としての設備 ・機器の制御、対策後の効果の維持管理 まで、一連の省エネルギー活動の支援 を同一 シ
ステムで実現可能 とした もの。同社 の産業用 自律型 コン トローラをベースとするシステムで、省エ ネに必須な機能をすべ
てコン トローラ内で動作 させる。各種解析 ・監視画面についても、 コン トローラ内で生成 しWeb形 式で任意のパ ソコンヘ
配信する構造。 これにより既設のイントラネットの活用が可能 となり、専用線 の敷設 といった大掛か りな工事が不要 とな
る。
従来の製品は電カデータの収集が主であったが、同製品では、蒸気 ・ガス流量、外気温、圧力 といったアナログ信号や、
機器 の運転 ・停止、警報などのデジタル信号 ももあわせて収集 し、同時表示することができ、これ らのデー タか らエネル
ギー消費設備 ・機器 ごとの状況を解析、エ ネルギー消費の無駄の発見を支援す る。
コン トロー ラは、デー タ収集 ・保存 ・監視機能のほか制御機能 も持
っているため、スケジュールに則った設備 ・機器の運転 ・停止、デマ
ン ドコン トロールといった省エ ネ制御 も同一 システムで行 うことがで
きる。別途PLCな ど市1御システムを増設する必要 もない。
■市場
産業界全般
■用途
エ ネルギー消費の監視、デー タ解析か ら設備 ・機器 の制御 といった
省エネルギー監視制御
省エネ支援システム lnfoEnergy
/問 い合わせ先 横 河電機的 制御 システ ム海 外事業本部 OCSセ
ンター
TEL :0422.52-5661
あつという間に トラップ交換 Fl丁&FⅨ
JOINTRAO
同製品は、5分 以内で トラップを交換できる、画期的なモジュール ・トラップ。本体 (ジョイン ト部)と U型 トラップ
か ら成 り、ト ラツプはボル ト2本 で脱着できる。脱着時間が従来の10分の 1以 下なので、 メンテナンス予算 を大幅に削減
可能。性能 と信頼性 は、国内の製油所で1999年か ら実証済み。
■特長
① ト ラップをボル ト2本 で簡単脱着
② 放 熱 ロス極小 のコンパ ク ト設計
③ オ ールステンレス製の トラップ装着
ボル ト2本 で脱着自在 │
/ 問 い合わせ先 ス パイラックス ・サーコl a l
TttL :043-274‐4811
s arco.co.ip
URL:httpょ ヽ ww.spirax―
酉己管1支綱ほ 2004.5
95
■編集顧間
近藤 識
0発 電設備技術検査協会
池座 秀 夫
掲載 予定報 文
■小特集 :バ イオフィルム
0バ イオフイルムの概論 ・理論
0バ イオフィルムとは
黒川 明 夫
0バ イオフィルムの本態に迫るには
■編集委員長 (平成 16年 度)
千代田化工建設的
清水
■解説
O大 規側郵力発電十水素製造 十パイプライン輸送 システム
■本誌編集委員 (平成 16年 度)
日揮 い
東洋エンジニアリング的
三菱重工業い
石川島播磨重工業的
旭エ ンジニアリング的
lRINIPPOコ ーポレーション
高圧 ガス保安協会
インターバルブテクノロジーい
小笹 白弘之
春田 公 仁
高井 慎 吾
八十 芳 樹
木村 修 一
村瀬 徹
金重 正 規
宮田 弘
O電 気化学ノイズ測定の基礎
O鋳 鉄製バルブOEM化 の現状 と今後の展望
O海 洋構造物溶接材料
0設 備管理における3DCADモ デルの活用
0ご み炭化システムについて
■連載特集
O腐 食 診 嚇
0超 音波法による配管検査技術
O予 防 ・補修技術
■製品と技術
O要 求度の高いケミカルプラントに対応するP「FEガ スケット
O特 殊コーテイング材 セ ラミック ・カバーCC100
0ス テンレスねじの焼き付き防止TOMコ ー ト
■連載講座
O配 管設計入門講座③
O配 管装置の トラブルとその未然防止②
■連載
O「水問劉 と配管技術Э
Oデ ジタルカメラの活用術
■木誌企画委員 (平成 16年 度)
三菱化工機的
神鋼検査サービス的
出光石油化学憫
栗田エンジエアリング③
防衛大学校
住友金属テクノロジーい
本田 久 親
∽ 大和バルブ
三菱化学の
出光エンジエアリング的
俊晴
池田
大中
大野
川辺
勇
雅 夫
晋
允志
佐藤 紘 志
撻木 義 淳
松崎 茂
宮澤 正 純
四辻 美 年
●本誌 に掲載す る著作物 の複製権 翻 訳権 上 映権 譲 渡権 ・公衆送信権 (送
信可能化 権 を含 む)は 日本工業出版 株式会社 が保有 します。
●□□ <船日本著作出版権管理システム委託出版物>
〔
掲 載 予 定 報 文 は編 集 部 の都 合 で変 更 に なる事 が あ ります 。〕 本
乱丁、落丁本は、ご面倒です力Ⅵヽ
は
社 までご送付 ください。
送料小社負担にてお取替えいたします。
033815‐
誌の無断複写は新 1権法上での例外を除き禁じられています。複写される場合
、そのつど事前にい日本著作出版権管理システム (1=話033817‐5670、FAX
8199)の 許諾を得てください。
東京本社付近図〉
〈
編
集 酉己
管技術編集委員会
羹客 更 日本工業出版株式会社
大阪営業所
日本橋事務所
中国事務 所
販 売 専 用
振
替
〒1 1 3 - 8 6 1 0 東
26
京都文京区本駒込 6 3 ‐
TEL 03(3944)1181《 O FAX 03(3944)6826
TEL 06(6202)8218
FAX 06(6202)8287
TEL 03(3808)1021
FAX 03(3808)1023
TEL(FAX) (0591)7855622
TEL 03(3944)8∞ l FAX 03(3944)0389
00110-6‐
1 4874
httpブ
ル ww.五 kko―pb.cojp/
mttlinfoonikk。 ―
e―
pb.co.jp
定価2,000円 (本体 1,905円 )
年間購読料 。年 14冊 24,000円 (税込)
都営 三田線
│