シネマ探索 世界への旅

JSA日 本科学者会議愛知支 部1997.10.20発
行
愛 知 教 育 大 学 分 会 ニ ュ ー スNo、107
代 表:永 冶(ヨ ー ロ ッパ 文 化)事 務 局:菅 沼(生 命 科 学)
1997年6月
シ
ネ
一
イ
列会 要 旨
マ
課
索
世
界
へ
硯 代 の映 画 ヒ蓉 生 の 劇 心
同 際 丈 化 コー ス
の
旅
一・
永 冶 日広離
この例 会 につ いて は当初 「
現 代 の 映 画 と学 生 の 関 心 」 と い う題 目 を設 定 し 、 皆 様 へ の
ご案 内 に も そ の よ う に記 さ れ て い ます 。 数 年 来 私 は 担 当す る 講 義 や 演 習 の 教 材 と し て 多 く
の 映 画 を 組 み 入 れ ・ こ ラ した 風 変 わ りな 教 育 方 法 に関 心 を寄 せ た り・ 疑 問 を示 され る 方 々
もお られ ま す 。 しか し、 私 の 試 行 的 な 授 業 に 関 して 具 体 的 な 有 様 をや や 詳 し く叙 述 し た こ
と も あ り、(D本
日 は 標 題 の よ う に テ ー マ を限 定 し 、 多 少 異 な っ た 角 度 か ら 自分 の 模 索 や
体 験 を お 話 し した い と思 い ます 。
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も と も と私 は 主 と し て フ ラ ンス 近 代 思 想 を学 ん で き た 者 で 、 映 像 ・映 画 に つ い て 専 門 的
な 教 育 や 訓 練 を 受 け た こ とは 、 ま っ た く あ りま せ ん 。 た だ し、 映 画 の 黄 金 時 代 と言 わ れ る
1950年
代 に少 年 期 ・青 年 期 を 過 した 世 代 と して 、 映 画 館 へ 通 う こ とは 文 学 書 を読 む の
と 同 じ く、主 要 な 楽 しみ の ひ と つ で あ り、人 生 と世 界 に 眼 を 開 く大 切 な 窓 で も あ り ま した 。
私 が や や 意 識 的 ・継 続 的 に 映 画 を 観 る よ う にな っ た の は 、1979年
か ら1年 間 文 部 省
在 外 研 究 員 と して パ リで 暮 ら した と きか らで あ りま す 。 ソ ル ボ ン ヌ を 中 心 とす る カ ル テ ィ
エ ・ラ タ ン は 、2キ ロ平 方 ほ ど の狭 い地 区 で す が 、90以
上 の映画館 が存在 します。 ち ょ
う どそ の 時 期 は ヴ ェ トナ ム 戦 争後 ア メ リカ で 口火 を 切 っ た ニ ュー シ ネ マ が 、 他 の 欧 米 諸 国
に お い て も興 隆 し、 な が く停 滞 して い た 映 画 制 作 が 新 た な 隆 盛 を 迎 え た と きで した 。 ア メ
リ カ市 民 生 活 の 哀 歓 を伝 え るrク
レイ マ ー ・ク レイ マ ー 』 やrマ
現 代 史 を 独 自 の観 点 か ら浮 彫 に したrブ
タ リア 農 村 の 民 衆 を 描 い たr木
リ キ の 太 鼓 』 とrマ
ンハ ッ タ ン』、 ドイ ツ の
リ ア ・ブ ラ ウ ンの 結 婚 』、 イ
靴 の 樹 』 とrエ ボ リ』、 そ し て 壮 大 な 規 模 や 劇 的 な 構 成 で
魅 了 す る フ ラ ン ス 映 画rモ リエ ー ル 』、rド ン ・ジ ョヴ ァ ンニ 』、r華 麗 な る 女 銀 行 家 』、 等
々 。 ソ ル ボ ン ヌ 周 辺 の サ ン ・ミ ッ シ ェル や 国 際 大 学 都 市 に 比 較 的 近 い モ ンパ ル ナ ス で 、 私
は これ らの 新 作 に い ち 早 く接 し 、 フ ラ ン コ独 裁 へ の 抵 抗 を 刻 印 した ス ペ イ ン映 画 や 東 欧 民
族 の苦 難 を綴 る ハ ンガ リー 映 画 を さ らに 場 末 の映 画 館 で 観 た こ と もあ り ます 。
こ う した 作 品 の 相 当 数 を 各 々40分
程 度 に 抜 粋 して 、 現 在 で も私 は授 業 に 組 み 入 れ て い
ま す 。 た と え ば 、rク レイ マ ー ・ク レイ マ ー 』 は 家 庭 の 崩 壊 と子 ど もの 養 育 に つ い て 考 え
る た め に 、rモ リエ ー ル 』 は フ ラ ン ス 絶 対 王 政 に お け る 民 衆 の 悲 惨 を 理 解 さ せ る た め に 、
例 年 の 教 材 とな り ま した 。 ドイ ツ の 戦 後 史 を 背 景 と し、 重 厚 で 深 刻 な 内 容 のrマ
リア ・ブ
ラ ウ ン の 結 婚 』 は か な り躊 躇 し ま した が 、 一 昨 年 よ り4年 生 の 専 門 科 目rヨ ー ロ ッパ 現 代
思 想 』 の な か で 紹 介 し、 学 生 か ら予 想 以 上 の 反 応 を 得 ま した 。 しか し、 ジ ョゼ フ ・ロ ー ジ
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監 督 に よ るrド
ン ・ジ ョヴ ァ ンニ 』 の よ う1こ・ 躰
で は 特 別 な 企 画 と して 公 開 され た だ け
で 、 い ま だ テ レ ビ放 映 も ビ デ オ化 も な さ れ な い作 品 も あ り ま す ・
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1989年
フ ラ ン ス革 命200年
を記 念 す る 国 際 研 究 集 会 に 出 席 し た 私 は 、 は か らず も
オ ルセー 美術館 「
映 画 の 誕 生 」展 示 室 で リ ュ ミエ ー ル 社 制 作 の シネ マ トグ ラ フ 上 映 に接 し ・
初 期 映 画 史 の 研 究 に 手 を 染 め る こ と とな りま した 。 こ の 年 に 日本 で も衛 星 放 送 が 本 格 的 に
開 始 され 、
3000円
台 の 市 販 ビデ オ の 増 加 と あ い ま っ て 、 家 庭 や 学 校 で 映 画 を視 聴 す る 条 件 に著 し
い 変 化 が 生 じま し た。 お り し も私 は 教 員 養 成 課 程 か ら新 設 の 総 合 科 学 ・国 際 文 化 コ ー ス に
移 籍 し 、 これ ま で とは 異 な る学 生 の 気 質 や 関 心 に しば しば 困 惑 す る 状 態 に あ っ た の で す ・
翌 年 の 春 担 当す る 「ヨー ロ ッパ 比 較 文 化 論 」 第1回 に初 め て の 映 画 教 材 と して デ ヴ ィ ッ ド
・リー ン監 督 『
旅 情 』 を 抜 粋 ・上 映 し、 以 後 多 くの 講 義 や 演 習 で こ う した 試 行 を続 け て い
ます 。
そ の 後 学 術 的 な 催 しや 研 究 資 料 の 収 集 の た め 東 京 や 海 外 へ 出 張す る た び に 、努 め て 当 地
の 映 画 館 や フ ィ ル ム ・フ ェ ス テ ィヴ ァル に 足 を 運 ぶ よ う に な りま した 。 た とえ ば 、 植 民 地
解 放 運 動 を描 い た 力作 『イ ン ドシ ナ 』 は 、1991年
封 切 り直 後 に シ ャ ンゼ リゼ 大 通 りの
壮 麗 な ジ ョー ジ五 世 館 で 接 し ま し た 。 ロ ン ドン に滞 在 した と き は1992年
別 を 批 判 す るrパ
には、 入種差
ワー ・オ ブ ・ワ ン 』 を イ ギ リス 最 古 の 映 画 館 エ ンパ イ ア 劇 場 で ・ ま た ア
イ ル ラ ン ド移 民 を 主 入 公 とす る 『遙 か な る大 地 へ 』 を 外 国 人 労 働 者 の 多 い イ ー ス トエ ン ド
の 一 角 で 、 さ まざ まな 肌 色 の 観 衆 の 熱 気 に 包 ま れ て 凝 視 し ま した 。 そ の 翌 年 に 陳 凱 歌 監 督
のrさ
らば わ が愛
覇 王 別 姫 』 に い ち 早 く触 れ た の は 、 カ ン ヌ 映 画 祭 グ ラ ン プ リ受 賞 に沸
く 上 海 の 大光 明 電 影 院 に お いて で す 。
これ らの フ ィル ム は の ち に 日本 で も公 開 さ れ た り、 ビデ オ化 され て お り、作 品 自体 を知
る た め に わ ざ わ ざ 外 国 に 出 か け る必 要 は 勿 論 あ りま せ ん 。 しか し、 旅 先 出 会 っ た フ ィ ル ム
の 各 々 に は 、そ の 時 点 に お け る 己 れ の 自 分 状 態 や 周 囲 の 情 景 も 付 着 して 、 特 別 の 印 象 や 愛
着 を 感 ず る の で す 。 また 、rイ ン ドシナ 』 やrパ
ワ ー ・オ ブ ・ワ ン』 の よ う に 日本 で あ ま
り評 価 され な い作 品 に つ い て も 、 自信 を も っ て 語 っ た り、 人 々 に推 奨 で き ます 。 な か で も
rイ ン ドシナ 』 は 毎 年3年 生 の 講 義rヨ ー ロ ッ パ 思 想 特 論 』 の な か に 組 み 入 れ 、受 講 生 が
も っ と も共 感 す る 教 材 の ひ と つ と な っ て い ま す 。
しか し、 言 うま で も な く海 外 で 映 画 探 索 を行 う 固 有 の 目的 は 、 日本 で 視 聴 す る 便 宜 の な
い 作 品 を把 握 す る こ と に あ り ます 。 た と え ば パ リ=ム フ タ ー ル 街 の エ ペ ・ ド ・ボ ア 館 で企
画 さ れ た エ ジ プ ト映 画 フ ェス テ ィ ヴ ァル や ロ ン ドン=ピ カ デ リー 広 場 周 辺 の地 下 室 で 催 さ
れ た ラ テ ン ・ア メ リカ映 画 フ ェス テ ィ ヴ ァル は 、 意 外 に も チ ュ ニ ジ ア と シ ンガ ポ ー ル で 楽
し め た イ ン ドの ミ ュー ジ カ ル 映画 数 本 と と も に 、 欧 米 の 映 画 に偏 重 した 自 分 の 視 野 を 著 し
く拡 げ て くれ ま した 。 これ ら は フ ェ ス テ ィヴ ァル と い っ て も 、 単 一 の 映 画 館 で あ る 種 の作
品 を集 め た 興 行 に す ぎず 、滞 在 の 期 間 に 偶 々 重 な っ た も の で あ り ます 。 し か し・ ム フ タ ー
ル 街 の 場 合 に は モ ノク ロ時 代 の古 典 的 な エ ジ プ ト映 画 が2ヵ
月 に わ た っ て 約20本
上映 さ
れ ま した 。 こ の よ うな 企 画 を 日本 の 学 生 た ち と一 緒 に享 受 が で きな い の を 残 念 に 思 い 、 エ
ジ プ トや イ ン ドや 中 南 米 の ユ ニ ー ク で 魅 力 的 な 映 画 が 日本 に 多 数 輸 入 され る 日 を私 は 待 ち
望 ん で い ます 。
一2一
第95回
例会
「キ ャ ン パ ス に お け る
セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラ ス メ ン ト」
現状か ら考える
大学 におけ るい くつか の 取 り組 み
話 題提 供 者:見 崎
恵子
氏(ヨ ー ロ ツパ文化選 修)
山根
真理
氏(家 政 学教 室)
日時:11月19日(水)午
場 所:ヨ
後5時
ー ロ ツパ 文 化 演 習 室(第
から
二 総 合 科 学 棟1F)
どな た で も 来 聴 歓 迎
「ア カ ・バ ラ(ア カ デ ミ ック ・ハ ラ ス メ ン ト)」 と い う言 葉 を ご 存 じ
で し ょ う か 。 セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラ ス メ ン トは 、 私 た ち 大 学 人 に と って
も 身 近 な 問 題 に な って き て い ま す 。 セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラ ス メ ン トの 正
し い 理 解 が 必 要 だ と思 い ま す 。 講 演 の 後 に 、 ケ ー キ を 囲 ん だ 懇 談 会 も
予 定 し て お り ま す 。 ど な た で も 、 是 非 ご 参 加 くだ さ い 。
主催:日 本科学者会議愛知教育大学分会
あたりまえの会