ロボット支援手術 「ダヴィンチ」導入について

ロボット支援手術
「ダヴィンチ」導入について
和歌山県立医科大学泌尿器科
原 勲
ロボット支援手術とは?
 ロボットが勝手に手術を行ってくれるわけではありません
 あくまでも作動させるのは術者です
 腹腔鏡手術の発展した手術方法です
 腹腔鏡手術は2次元の視野で鉗子を用いて手術を行うもの
ですが難易度が高く術者の経験と技倆が問われます
 ロボット支援手術システムでは3次元の視野でより自由度
の高い特殊な鉗子を用いるためより精細で巧緻な手術操
作が可能です
従来の腹腔鏡手術
 腹腔内に数本のポートを挿入
する
 腹腔内を炭酸ガスで膨らませ、
専用の内視鏡を挿入して腹腔
内をモニターに映し出す
 専用の鉗子(電気メスや把持
鉗子、洗浄、吸引管、持針器)
を用いて手術を行う
 従来の開腹手術に比べ出血が
少なく術後の回復が早いのが
特徴
ダヴィンチサージカルシステム
Patient Cart
Surgeon Console
Vision Cart
ダヴィンチの特徴

システム特徴:
 高解像度3D画像:拡大した立体
画像での手術
 EndoWristインストゥルメント:従来
の鉗子ではなしえなかった複雑な
操作が可能
 自然な操作感(Intuitive Motion):
術者に負担をかけない姿勢での
操作が可能なため長時間の手術
でも疲れにくい
海外での薬事承認の状況
ヨーロッパ
1999年1月
CEマーク取得
米国FDA
2000年7月
2001年3月
2001年5月
2002年11月
2004年7月
2005年3月
2005年4月
2005年5月
2009年12月
一般消化器外科
胸部外科
根治的前立腺摘除術
心内手術(僧帽弁形成術、心房中隔欠損症修復術)
冠動脈バイパス術
泌尿器科
婦人科
小児外科
耳鼻咽喉科(経口アプローチ)
本邦での承認状況
 2009年11月18日:薬事承認の取得
 2010年3月:販売開始
 2012年4月:泌尿器科領域の前立腺全摘除術に関して保険
術式として収載 開腹手術(41万円)に内視鏡手術用支援
機器加算(54万円)を合算した95万2800円と定められた
 2012年6月現在、本邦では約40台のダヴィンチが稼働して
いる 近畿圏では、京都大学、神戸大学、徳洲会病院、神
戸医療機器開発センターに設置されているのみ
ダヴィンチ導入によるメリット
 ダヴィンチは通常の内視鏡手術(低侵襲手術)と比較して
 通常の内視鏡器具類に比べ2軸自由度が追加されたこ
とによりまるで人間の手首のような(人間の手首以上の)
動きが体腔内で可能になる
 術者の手の動きは3段階で縮小されロボット(専用器具
類)に伝達される上、手振れが伝わらない仕組みになっ
ているため、繊細で正確な施術が可能になる
 術者は拡大された立体画像で解剖同定が可能になり、また安
定した術野(カメラのぶれが全くない!)での手術が可能になる
 繊細で正確な操作が可能になることにより、優れた治療
成績、また周辺臓器損傷のなどのリスクが軽減される
本学にダヴィンチを導入する意義
 本学の目標とする癌治療の充実、および先進医療の導入
の概念にかなっている
 保険収載となっている前立腺全摘除術に関して、当院では
5年前から腹腔鏡下前立腺全摘除術を積極的に導入し、実
績を積んでいるためロボット支援手術に抵抗なく導入する
ことが可能である
 近畿圏は5台目の導入であり県民に対する高度先進医療
のアピールになる
 今後他領域での術式の導入に関し先進的に取り組める
世界における臨床使用実績
 累計114万例を超える症
例数
 2011年実績
 前立腺摘出術:約113,000
例
 子宮摘出術:約146,000例
 良性:約107,000例
 悪性:約39,000例
その他
28%
子宮摘出術
40%
前立腺摘出術
32%
米国における前立腺全摘除術の
術式別年次推移
予測
100
90
2008年 第4四半期
開腹手術
の割合
dVP % of Market Share
80
普
及
率
70
60
50
40
30
20
実績
10
0
Quarterly
Time Period
四半期毎推移
ロボット支援手術の適応領域
および代表術式
 適応領域および代表術式
 泌尿器科:前立腺全摘除術、膀胱全摘除術、腎
部分切除術
 婦人科:子宮摘出術(良性、悪性)
 消化器外科:胃切除術、直腸低位前方切除術
 胸部外科(心臓外科を除く):肺葉切除術
ダヴィンチの購入から運用まで
1. オンライントレーニング:Webでの受講
2. オンサイトトレーニング:施設へのシステム納入後、実際に
機器を使用してシステムのトレーニングを行う
3. オフサイトトレーニング:実験動物を用いたトレーニング
4. 症例見学:国内他施設への手術見学
5. シミュレーション:実際の症例を想定したシミュレーション
発注から納品まで約2ヶ月、納品から実際の手術まで約2ヶ月
合計約4ヶ月が必要
今後の予定
 多領域の外科系医師、看護師、臨床工学士によるダヴィン
チチームの立ち上げ
 収納する手術室、電源容量、保管場所等ハード面での受
け入れ体制の整備
 ダヴィンチに付随する機材(気腹装置、録画装置)の選定
 ダヴィンチ消耗品(ラパロ用鉗子、カメラトロッカー)の選定
 オンサイト、オフサイトトレーニングと症例見学
 症例の選定
Take home message
 ロボット支援手術は海外では既に確立された術式として多
くの実績を誇っています
 このたび前立腺全摘除術が保険収載となったことで今後は
同術式が前立腺癌に対する標準的な術式となる可能性が
極めて高いです
 高度先進医療の象徴であるダヴィンチを近畿圏でも他施設
に先駆けて導入できたことは和歌山県民にとって大きな福
音となることは間違いありません
 今後は設置から導入に向けて全力をあげて取り組んでま
いります