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ピクテ・マーケット・マンスリー 2015年12月発行
先進国
Pictet Market Monthly
2015年11月発行の欧州・米国市場ニュース
ユーロ圏の主要経済指標
11月の欧米市場ニュース
タイトル
頁
ユーロ圏銀行融資:9月は特殊要因で落ち込み
欧
州
米
国
指標名
前回値
市場
予想
公表値
次回発表
予定日
次回
予想
失業率(%)
15年9月
10.9
11.0
10.8
12月1日
10.8
小売売上高
(前月比,%)
15年9月
0.0
0.2
-0.1
12月3日
0.2
実質GDP
(前期比,%)
15年9月
0.4
0.4
0.3
12月8日
--
鉱工業生産
(前月比,%)
15年9月
-0.4
-0.1
-0.3
12月14日
--
消費者物価指数(前
年同月比,%)
15年10月
-0.1
0.0
0.1
12月16日
--
製造業購買担当者
景気指数(PMI)
15年11月
52.3
52.8
52.8
12月16日
--
サービス業購買担
当者景気指数(PMI)
15年11月
54.1
54.6
54.6
12月16日
--
2
7-9 月期ユーロ圏GDP成長率:内需主導の緩やかな
回復
4
ユーロ圏景況感調査:内需が経済をけん引
6
10月のユーロ圏マネーサプライ統計:銀行融資は大
幅増加
8
米国の賃金動向と金融政策:タカ派色を強めた
FOMC声明文
10
米国小売売上高: 10月のコア売上高は期待外れ
13
米国の主要経済指標
欧 欧米の企業収益動向:7-9 月期は低調、2016年は改 15
米 善を予想
指標名
※2015年12月1日時点(日本時間)の発表データと予想
※予想はブルームバーグ集計市場予想
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
ピクテ投信投資顧問株式会社
時点
時点
前回値
市場
予想
公表値
次回発表
予定日
次回
予想
ISM製造業景況指数 15年10月
50.2
50.0
50.1
12月2日
50.5
ISM非製造業景況指
15年10月
数
56.9
56.5
59.1
12月4日
58.0
失業率(%)
15年10月
5.1
5.0
5.0
12月4日
5.0
非農業部門雇用者
数(前月比,千人)
15年10月
137.0
185.0
271.0
12月4日
200.0
小売売上高
(前月比,%)
15年10月
0.0
0.3
0.1
12月11日
0.3
消費者物価指数
(前月比,%)
15年10月
-0.2
0.2
0.2
12月15日
--
実質GDP
(前期比,%,年率)
15年9月
3.9
2.1
2.1
12月22日
--
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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Pictet Market Monthly
先進国
2015年11月2日発行ニュース
ユーロ圏銀行融資:9月は特殊要因で落ち込み
2015年9月のユーロ圏M3(広義のマネーサプライ指標)ならびに非金融企業向け銀行融資は、期待外れの数値と
なりました。特殊要因が影響したものと思われます。今後は、中小企業向け融資に的を絞った長期性資金供給オ
ペ(TLTRO)や12月に予想される欧州中央銀行(ECB)の追加緩和を支えに、改善が続くと見ています。
2015年9月のユーロ圏銀行融資は、
特殊要因を背景に低調
図表1:ユーロ圏 非金融向け銀行融資の
推移
(月次、期間: 2009年1月~2015年9月)
欧州中央銀行(ECB)が発表した2015年9月のユーロ圏
M3 (広義のマネーサプライ指標)ならびに銀行貸出統
計は、同行が10月20日に発表した7-9月期の「銀行貸
出調査(BLS)」の良好な内容とは相容れない、期待外
れの数値となりました。もっとも、信用統計は月次の振
れが大きいことから、来月以降は改善に転じ、先行して
改善したBLS等との幅を縮める公算が高いと考えます
(図表1参照)。
2015年9月のユーロ圏M3の伸び率は前年同月比+4.9%
と、8月から変わりませんでした。一方、9月のM1(狭義
のマネーサプライ指標)の伸び率は、翌日物預金の伸
び(420億ユーロ)を背景に、前年同月比+11.7%と8月の
数値を僅かながら上回りました。
予想外だったのは、9月の非金融企業向け銀行融資が
前月比150億ユーロと大幅に減少し、月次ベースでは
2014年2月以来、最大の落ち込みを記録したことです。
これまで融資に含まれていた、売却あるいは証券化さ
れた融資ならびに簿外の融資を除いた数値が発表さ
れたことに加え、(後述の通り、会計基準を変更した)
オランダの非金融企業向け銀行融資の大幅な減少が
ユーロ圏全体の数値を押し下げるという特殊要因が反
映された結果の一時的な現象だと思われます。一方、
9月の家計向け銀行融資は、前月比90億ユーロの増
加と過去半年の平均水準を維持し、企業向け融資に
比べて底堅さが際立ちました。
9月のユーロ圏M3は、欧州中央銀行(ECB)には不満
の残る数字となりましたが、域内の信用停滞を示唆す
るものとは思われません。中小企業向け融資に的を
絞った長期性資金供給オペ(TLTRO)と、12月にも予想
されるECBの追加緩和を支えに、今後、拡大に転じる
ことが予想されます。信用サイクルの転換は、2016年
のGDP(域内総生産)成長率予想を左右する重要な要
因です。
%
250
200 月額、億ユーロ
証券価調整後
150
非金融向け銀行融資、左軸
50
信用需要予想、右軸
40
100
30
50
20
0
10
-50
0
-100
-10
-150
-20
-200
-30
-250
-40
09年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
16年
※BLS、非金融向け融資は、2四半期先行
出所:ECB、ピクテグループ
融資流入額のフローの3ヵ月移動平均を見ると、家計
向け融資が好調なトレンドを維持する一方で、良好な
環境にありながら、非金融企業向け融資が増加基調を
維持しかねていることが確認されます。
9月の信用の収縮は、M3の伸び率がECBが参照とする
値である4.5%を上回る環境下、非金融企業向け銀行融
資の伸びを鈍化 (9月は前年同月比+0.1%、 8月は同
+0.4%)させる結果となりました。
もっとも、9月の数値が外れ値であって、トレンドの反転
を示唆するものではないとの見方は、国別の銀行融資
統計からも確認されます。非金融企業向け銀行融資が
大幅に減少したのはオランダのみで、月間140億ユー
ロもの減少は2014年後半に導入された会計基準の変
更に起因するものである可能性が高いからです。非金
融企業向け融資は、ドイツ、ベルギー、ギリシャ、ポル
トガル、アイルランドでも、僅かながら減少しました。
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Pictet Market Monthly
先進国
これに対し、イタリアでは230億ユーロ、スペインでは
170億ユーロの増加となり、良好な基調が示唆されまし
た。
信用サイクルは、域内経済の先行き
を占う重要指標
ユーロ圏の景気回復局面で、信用循環が従来以上に
大きな影響を及ぼすものと考えられる理由として、以下
の要因があげられます。
先ず、過去の信用サイクルでは、実質M1が実質GDP
成長率に1年程度先行し、狭義のマネーサプライが景
気先行指標となってきたことです。ECBは、「マネーの
量の変化は、民間セクターの資産ポートフォリオや金
融資産ならびに実物資産の利回りの変化をもたらし、
ひいては、実質消費を決める要因となる」と説明してい
ます。2015年9月の実質M1は前年同月比+13.5% と安
定推移しており、実質GDP成長率が3%を上回る伸びを
実現する可能性を示唆しています。実質M1は過去2回
の景気拡大局面では実質GDP成長率を過大評価して
いるものの、ピクテの予想には上方修正の必要が出て
くるかもしれません。
次に、ユーロ圏のように銀行融資への依存度の強い
経済においては、「信用の応答関数」(非金融企業向け
民間融資の純増額に対する名目GDP比率に対する変
化(%))は、内需の伸びとの強い関係を示唆してきまし
た。銀行のバランスシートは、監督当局の規制の影響
を大きく受けますが、2014年に行われた銀行資産査定
に向けた債務の圧縮が終了したことは、信用の伸びが
再び増加する可能性を示唆しています。また、9月の数
字は期待外れとなったものの、7-9月期の「信用の応
答関数」は前年同期比+1.77%に改善しています。企業
信頼感やBLS等の好調な景気先行指標は、ECBの追
加緩和を支えに、一段の「信用の応答関数」を示唆す
るものと考えます。
最後に挙げられるのは、2014年6月に導入され、2016
年6月まで、四半期毎に実施される中小企業向け融資
に的を絞った長期性資金供給オペ(TLTRO)等のECB
の施策が奏功し、ユーロ圏の信用循環が自律的な改
善を見せていることです。(リファイナンス金利での)
ECBからの借入を増やすに連れて、(住宅ローンを除
く)家計向け融資ならびに非金融企業向け民間融資を
増やす銀行は増加の一途です。
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もっとも、TLTROの融資条件(民間向けの実際の融資
が、過去の融資状況に基づいてECBが設定した融資
想定額を達成すること)を遵守できなかった銀行には、
(現行の規則が変更されない限り)、2016年9月、ECB
にTLTROの全額を返却することが義務付けられていま
す。2015年9月のTLTROに対する需要は事前予想に
届かなかったものの、総額は4,000億ユーロに達してお
り、ECBのバランスシートの拡大に大きく貢献していま
す。このような基調は、理論上、ECBからの借入を更に
増やすことが可能なスペイン、イタリア、フランスの民
間各行を中心に、今後も続くことが予想されます。
ECBは、ユーロ圏の信用拡大が続き、内需の改善に貢
献する状況が続くことに自信を示しています、また、民
間各行が新規融資の供与や資産の購入を通じたバラ
ンスシートの拡大を計画していることから、ECBは、同
行の金融政策が実体経済の改善に寄与していること
に自信を持ってよいと考えます。更に、信用コストは、
企業の資本市場における資金調達ならびに、家計向
け・企業向け(大企業向け、中小企業向け)銀行融資
の双方で低下基調です。このような状況は、すべて、
流動性の拡大が実体経済に波及していることを確認す
るものであり、したがって、12月のECBの追加緩和を正
当化するものと考えます。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
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Pictet Market Monthly
先進国
2015年11月17日発行ニュース
7-9月期ユーロ圏GDP成長率:内需主導の緩やかな回復
2015年7-9月期のユーロ圏実質GDP成長率は前期比+0.3%となり、市場予想に届きませんでした。堅調な内需を背
景に、域内経済の緩やかな回復が予想される一方、新興国経済の低迷等に起因する下振れリスクも残ります。12
月3日のECB政策理事会では、量的緩和の期間延長等の追加緩和策が決定されるものと見ています。
2015年7-9月期のユーロ圏GDP成長率
は市場予想に及ばず
欧州連合統計局(ユーロスタット)が発表した2015年79月期のユーロ圏実質GDP(域内総生産)成長率(速
報 値 ) は 前 期 比 +0.3% ( 年 率 +1.2% 、 前 年 同 期 比
+1.6%)と市場予想の同+0.4%を下回り、4-6月期(同
+0.4%)から小幅の減速となりました(図表1参照)。
GDP構成項目の詳細は未だ発表されていませんが、
中核国の国別GDP統計からは、前期に続き、民間消
費がGDPをけん引したことが示唆されます。民間在庫
の寄与度は、4-6月期のマイナス(-0.5%)からプラスに
転じたもようです。一方、独・仏両国の純輸出は、おそ
らく、輸入の大幅な伸びが一因となって、マイナスの寄
与となりました。
域内の景気拡大のペースは、堅調な内需をけん引役
に、徐々に勢いを増していくものと予想されます。引き
続き底堅い民間消費に加え、与信の伸びに支えられた
設備投資が、2016年を通じて総需要を支えるものと見
込まれます。ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)、欧
州委員会景気調査、Ifo企業景況感指数など直近の景
況感調査は、サービス・セクターの堅調な回復を示唆し
ています。製造業関連の指標は未だ強弱交錯ですが、
PMIの輸出受注サブ指数やIfoの期待指数等の景気先
行指数は、年末に向けての製造業セクターの回復を示
唆しています。一方、ユーロ圏の輸出先の50%弱を占
める新興国経済の需要低迷は、下振れリスクを伴いま
す。
ドイツ経済は伸びが鈍化
ドイツの7-9月期実質GDP(国内総生産)成長率は、前
期比+0.3%と市場予想に並んだものの、4-6月期の同
+0.4%を僅かに下回りました。
図表1:ユーロ圏実質GDP成長率の推移
四半期、期間: 1999年1-3月期~2015年7-9月期
6 %
4
2
0
前期比、年率
-2
-4
前年同期比
-6
-8
-10
-12
99年
01年
03年
05年
07年
09年
11年
13年
15年
出所:ピクテグループ
ドイツ連邦統計局は支出項目の詳細を未だ発表してい
ませんが、同局のプレスリリースや各種の月次指標は、
民間消費の寄与度が最も大きかったことを示唆してい
ます。一方、輸入の伸びが輸出の伸びを大きく上回っ
たことから、純輸出はマイナスの寄与となりました。ま
た、設備投資が4-6月期(前期比-0.4%)に続き、小幅
ながら減少したことは、予想外でした。
もっとも、ドイツ経済の先行きは、7-9月期の伸び悩み
にもかかわらず、明るいと見ています。良好な労働市
場と資金調達環境が、内需を支えることが予想されま
す。また、移民の大量流入を受けた追加の公共投資も
国内経済を刺激すると見ています。一方、新興国経済
の低迷とフォルクスワーゲンの排ガス試験不正の余波
が、製造業セクターならびに輸出に及ぶ可能性は否め
ません。
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Pictet Market Monthly
先進国
図表2:ユーロ圏の国別実質GDP成長率の推移
フランス経済は勢いが加速
四半期、期間: 2008年1-3月期~2015年7-9月期
フランスの7-9月期実質GDP成長率は、市場予想通り
前期比+0.3%となりました。GDPの構成項目では、民
間消費が同+0.3%(4-6月期は同0%)と好調だった他、
設備投資も同+0.1% とプラス成長に転じました。金融
を除く企業の投資が同+0.7%と4-6月期から0.2%改善
したことに加え、家計の投資も同-0.5%とマイナス幅が
0.6%縮小し、(在庫を除く)内需の拡大に弾みが付きま
した。一方、輸出が同-0.6%と、4-6月期の同+1.9%か
ら大幅に減少する一方で、輸入は同+1.7%と、4-6月
期の同+0.5%から大幅に増加したことから、純輸出は
マイナスの寄与となりました。
105
2008年1-3月期=100として指数化
ドイツ
オランダ
イタリア、オランダ、ポルトガルは低調でした。イタリア
の7-9月期実質GDP成長率は前期比+0.2%に留まり、
市場予想の同+0.3%に届きませんでした。もっとも、3
四半期連続のプラス成長となり、国内経済が回復の途
上にあることが確認されました。
オランダの7-9月期実質GDP成長率は前期比+0.1%と、
市場予想の同+0.4%を下回りました。また、ポルトガル
の7-9月期実質GDP成長率は、同+0.4%と見ていた市
場予想に反して同+0%に留まり、4-6月期(速報値の同
+0.1%から同+0.5%に上方修正)からの減速が際立ち
ました。(内閣が総辞職に追い込まれたことから)政局
を巡る不透明感が、消費と投資の先行きに及ぼす影
響が懸念されますが、これが経済全体に及ぶリスクは
低いと考えます。
スペインは堅調さを維持、ギリシャは
予想を上回る
スペイン国立統計局が10月30日に発表したスペイン
の7-9月期実質GDP成長率は前期比+0.8%(前年同
期比+3.4%)となり、1-3月期の同+0.9%、4-6月期の同
+1.0%には届かなかったものの、堅調さを維持しました。
2016年の四半期GDPは、若干の減速が予想され、前
年同期比ベースでは天井を付ける可能性もありますが、
2015年同様、他国を上回る成長が期待されます。一
方、カタルーニャ州の独立問題や、12月20日の総選挙
を巡る不透明感は残ります。
スペイン
95
イタリア
ポルトガル
90
08年
イタリア、オランダ、ポルトガルは低調
フランス
100
09年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
出所:ピクテグループ
ギリシャ経済は、縮小幅が予想を下回りました。7-9月
期実質GDP成長率は前期比-0.5%となり、市場予想の
同-1.0%を上回りました。一方、4-6月期改定値は、速
報値を0.5%下回る同+0.4%に下方修正されました。
ユーロ圏経済の見通しは変わらず
2015年7-9月期のユーロ圏実質GDP成長率は、ほぼ
市場予想通りの数値となりました。したがって、欧州中
央銀行(ECB)の経済活動評価に変更はないものと考
えます。新興国経済の低迷や米連邦準備制度理事会
(FRB)の利上げ開始やその後の金融の引き締めによ
る混乱が顕在化したとしても、ECBは、堅調な内需が
これを相殺するとの見方を強めるものと考えます。とは
いえ、ユーロ圏のGDP成長率は、リスク均衡を上向か
せるほど力強いわけではありません。また、ECBが最
重要視する物価の安定については、資源価格の下落
等が原因となり、下押し圧力が支配的です。
ECBは、2015年12月3日の政策理事会で、追加緩和
を発表することが予想されますが、新しい施策には、量
的金融緩和の延長や、場合によっては中銀預金金利
の引き下げが含まれるものと見ています。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
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2015年11月25日発行ニュース
ユーロ圏景況感調査:内需が経済をけん引
2015年11月のユーロ圏購買担当者景気指数(総合指数、PMI)は、前月ならびに市場予想の双方を上回り、4年ぶ
りの水準を回復しました。製造業PMI、サービス業PMIともに上昇しました。ドイツPMIが内需をけん引役に好調だっ
た一方で、フランスPMIには同時多発テロの影響が及びました。独、仏以外の周縁国も堅調でした。
ユーロ圏経済は内需主導の回復続く
2015年11月発表の各種景況感調査は、内需がユーロ
圏経済をけん引する状況に変わりがないことを示唆す
るものとなりました。 ドイツ購買担当者景気指数(PMI)
やIfo企業景況感指数(Ifo)等、ドイツの指標が予想を
上回った一方で、フランスPMIや国立統計経済研究所
(INSEE)景況感指数等、フランスの指標が前月を下
回ったのは、パリ同時多発テロを受けた企業景況感の
悪化が反映されたためと思われます。
2015年11月のユーロ圏PMI:4年ぶ
りの高水準を回復
2015年11月のユーロ圏購買担当者景気指数(総合指
数、PMI)速報値は54.4となり、前月の53.9から変わら
ずと見ていた市場予想を上回りました。製造業PMIは
前月比+0.5ポイントの52.8、サービス業PMIは同+0.5
ポイントの54.6と、両セクターが揃って総合指数の上昇
に寄与し、2011年5月以来の水準となりました(図表1
参照)。また、サービス・セクターの雇用の伸びが、
2010年11月以来の高水準に達したことも注目されま
す。もっとも、企業の新規採用が増加に転じる一方で、
生産価格指数がマイナスの領域に留まり、投入価格指
数は僅かながら低下する等、デフレ圧力が払拭されな
いことには留意が必要です。
11月のPMIは(仮に12月が11月の好調を保つとすれ
ば)、10-12月期のユーロ圏実質GDP(域内総生産)成
長率が前期比では+0.5%程度となることを示唆してい
ます。もっとも、足元数ヵ月のPMIがその他の経済指標
以上に楽観的な内容だったことには注意が必要です。
好調な内需が緩やかな景気回復をけん引する一方、
外需は幾分の下振れリスクを伴うことが予想されます。
図表1:ユーロ圏実質GDP成長率とPMIの推移
四半期、期間:1999年1-3月期~2015年7-9月期
2
%
62
PMI総合指数(右軸)
57
1
52
0
47
GDP成長率
(前期比、左軸)
-1
42
-2
37
-3
99年
32
01年
03年
05年
07年
09年
11年
13年
15年
出所:ピクテグループ
ドイツ経済:内需がけん引
11月のドイツPMIは、前月比+0.7ポイントの54.9となり、
市場予想の54.0を上回りました。また、11月のIfoが
109と10月の108.2を上回り、前月から変わらずと見て
いた市場予想を上回りました。現況指数(前月比+0.7
ポイントの113.4)、期待指数(同+0.8ポイントの104.7)
ともに好調で、後者は、3ヵ月連続の上昇となりました。
内需がドイツ国内経済をけん引する状況は変わりませ
ん。サービス・セクターが目立って改善したことは、Ifo、
ドイツPMI両指数から確認されますが、Ifoサービス・セ
クターの現況指数が過去最高水準を回復したことは特
に注目されます。
Ifo製造業指数は3年連続、ドイツ製造業PMIは2ヵ月連
続の低下の後、いずれも上昇に転じています。また、
両指数のサブ指数のうち、PMIの製造業新規受注指
<次ページに続きます>
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先進国
数、Ifoの製造業期待指数等、景気先行指数の改善が
目立ちました。
ドイツPMI、Ifo両指数は、内需をけん引役に、国内経
済が堅調に推移する状況を示唆しています。新興国経
済の減速やフォルクスワーゲンの排ガス試験不正の
余波等、下振れリスクは残るものの、上述の通り、経
済の先行きを示唆する指数が改善したことは明るい材
料です。
フランス経済:パリ同時多発テロを受け
サービス・セクターが低調
好調なドイツに対し、フランスの景況感指数は、前月か
ら低下しました。2015年11月のフランスPMIは前月比
-1.3ポイントの51.3となり、市場予想の52.5に届きませ
んでした。サービス業PMIが51.3となり、10月の52.7、
市場予想の52.5を下回ったことが響きました。当調査
は11月12日から20日にかけて実施されたことから、
(PMI発表元の)マークイットは、「13日のパリ同時多発
テロがサービス業PMIを下押した」とコメントしています。
一方、製造業PMIは前月比小幅の上昇となり、INSEE
景況感調査の内容とは相容れない結果となりました。
11 月 の フ ラ ン ス の 景 況 感 指 数 は 、 10-12 月 期 実 質
GDP成長率が、7-9月期の前期比+0.3%同様の緩や
かな成長を維持することを示唆しています。
周縁国経済:PMIの伸びが加速
ユーロ圏周縁国のPMI速報値は発表されませんが、
マークイットは、「独仏以外のユーロ圏各国では、経済
成長の勢いが加速しており、11月のPMIは2008年の
欧州危機以来、2番目の高い伸びを示した」とコメントし
ています。
欧州中央銀行(ECB):追加緩和見送り
の公算は低い
2015年11月のユーロ圏PMIやドイツIfo等、直近の景
況感調査が予想を上回ったとはいえ、欧州中央銀行
(ECB)が12月3日の政策理事会で金融緩和の拡大を
見送る公算は低いと考えます。
ドラギECB総裁は、20日のフランクフルトでの講演で
従来以上にハト派的な発言をしています。また、10月
の政策理事会終了後の会見では、「景気回復の勢い
が弱く、インフレ率が目標を下回る現状にECBは満足
していない」ことを強調しています。したがって、12月3
日の政策理事会で、量的緩和の6ヵ月延長や中銀預金
金利の引き下げが決定されるだろうとの見方は変わり
ません。同時に、より積極的な追加緩和策が発表され
る可能性も否めないと考えます。
ピクテ投信投資顧問株式会社
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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Pictet Market Monthly
先進国
2015年11月27日発行ニュース
10月のユーロ圏マネーサプライ統計:銀行融資は大幅増加
2015年10月のユーロ圏M3と非金融企業向け銀行融資はともに前月から大きく改善しました。非金融企業向け民間
融資の伸びのGDPに対する比率を表すクレジットの応答関数も高位で推移しています。欧州中央銀行(ECB)の追
加緩和が発表されれば、域内経済回復の勢いは更に勢いを増すものと見ています。
2015年10月のユーロ圏銀行融資は
予想通りの大幅増加
ひと月前に発表された2015年9月のユーロ圏非金融
企業向け銀行融資は、予想外の大幅な減少となりまし
たが、ピクテでは、オランダの会計基準に起因する一
時的な落ち込みであるとの判断から、10月の回復を予
想していました(2015年11月2日発行のピクテ・マー
ケット・フラッシュ「ユーロ圏銀行融資:9月は特殊要因
で落ち込み」をご参照ください)。果たして、11月26日
発表の10月の非金融企業向け銀行融資は、予想通り
の大幅な反発となりました。欧州中央銀行(ECB)発表
の銀行貸出調査(BLS)等の指標は既に改善基調を示
していることから、信用サイクルの拡大局面は、今後も
継続するものと予想されます。
このような状況は、10月のマネーサプライ統計に端的
に示されています。2015年10月のユーロ圏M3(広義
のマネーサプライ指標)の伸び率は前年同月比+5.3%
と前月の同+4.9%を上回り、現在の信用サイクルの最
高水準に迫っています。10月のM1(狭義のマネーサプ
ライ指標)の伸び率も同+11.8%と、9月の数値を僅か
に上回りました。また、10月の実質M1の伸び率は同
+14% 程 度 と 堅 調 に 推 移 し て お り 、 実 質 M1 が 実 質
GDP成長率に1年程度先行するという過去の経験則
が変わらなければ、GDP成長率の上方修正が必要と
なるかもしれません。
一方、ユーロ圏金融機関(MFI)のバランスシートの資
産の部を見ると、民間セクターへの融資流入額(ネット
の融資)が広い範囲で大幅な伸びを示しており、10月
の「クレジットの応答関数(非金融企業向け民間融資
の純増額のGDPに対する比率)」も前年同月比+3%超
に達しています。 好調なクレジットの応答関数 は、(前
期比+0.5%程度と予想される)2015年10-12月期の
GDP成長率と相容れるものであり、ユーロ圏購買担当
者景気指数(PMI)やドイツIfo企業景況感指数(Ifo)等、
直近の景況感調査の内容とも一致します。
図表1:ユーロ圏 非金融企業向け銀行融資の推移
月次、期間: 2009年1月~2015年10月
250
200
月額、億ユーロ
証券価調整後
50
%
40
予想信用需要(四半期、右軸)
150
30
100
20
50
10
0
0
-50
-10
-100
-20
-150
-30
-200
-250
09年
非金融企業向け銀行融資(左軸)
10年
11年
12年
13年
14年
15年
-40
16年
※予想信用需要はBLS、2四半期先行
出所:ピクテグループ
2015、2016両年のGDP成長率予想は、ECBが12月3
日の政策理事会で積極的な追加緩和策を決める可能
性が高いこともあり、上方修正の可能性もあります。
2015年10月のユーロ圏M3は、控えめに見ても、先行
きを期待させるものとなりました。金融機関を除く民間
セクター向け融資は広い範囲で増加しており、家計向
け融資は(足元数ヵ月の平均を小幅に上回る)前月比
+90億ユーロ超と好調なトレンドを維持しています。ま
た、非金融企業向け銀行融資は、同+190億ユーロと9
月改定値(同-90億ユーロの減少)から大きく改善しま
した(家計向け融資、非金融企業向け銀行融資は、い
ずれも売却あるいは証券化された融資を除いた数値)
(図表1参照)。非金融企業向け銀行融資の伸びは、融
資の定義変更以降の統計では、2011年7月以来の大
幅な伸びとなっています。
<次ページに続きます>
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Pictet Market Monthly
先進国
2015年10月の国別非金融企業向け融資(NFC)は、
オランダが前月比+98億ユーロ、フランスが同+91億
ユーロ、スペインが同+32億ユーロ、ドイツが同+19億
ユーロとなりました。オランダが最も大きな伸びを示し
たのは、9月(同-146億ユーロ)の反動だと思われます。
オランダを除いたNFCは、ユーロ圏の信用サイクルの
際立った改善基調を示唆しています。もっとも、イタリア
のNFCは前月比-62億ユーロと9月の同+25億ユーロ
から減少に転じました。同国の銀行制度が抱える構造
的な問題が一因であると思われますが、政府は対応
策を実行に移し始めています。
これら国別の数値をクレジットの応答関数に加えて求
められる指標は、2015、2016両年のGDP成長率予想
の上方修正の必要性を示唆するものとなります。銀行
融資の伸びが足元2ヵ月のペースで続くと仮定すると、
10-12 月 期 の ク レ ジ ッ ト の 応 答 関 数 は 前 年 同 期 比
+3.1%と足元の景気拡大局面の最高水準に達するこ
とが予想されますが、これは2.5-3.0%の伸びを見せる
域内内需の拡大と矛盾しない数値です。
加えて、10月の実質M1の伸び率が同+14%程度と堅
調さを維持したことは、域内の銀行資産が拡大基調に
あることを裏づけていると考えられます。
ECBは、10月のマネーサプライならびに銀行融資統計
の内容に安堵したものと思われますが、一方で、依然
としてインフレ期待が弱いことを懸念しています。ECB
は10月の政策理事会以降、追加の金融緩和を事実上
公約しており、12月3日の政策理事会後の会見では包
括的な追加緩和策の発表が予想されています。中銀
預金金利の0.1%の引き下げや量的緩和の6ヵ月延長
に加えて、その他の施策が発表される可能性もあり得
ると考えます。ECBの追加緩和は、マネーならびに金
融の状況の一段の緩和を通じて域内の経済成長の上
振れにつながる公算が高いと見ています。
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2015年11月6日発行ニュース
米国の賃金動向と金融政策:タカ派色を強めたFOMC声明文
米国の2015年7-9月期の雇用コスト指数は、市場予想通り小幅の上昇に留まりました。また、9月のPCEデフレー
ターも低位に留まっていますが、10月28日発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文は予想外にタカ派的な
内容となりました。
米国のインフレ指標は低位で推移
米国の2015年7-9月期の雇用コスト指数(ECI)は小幅
の上昇 に留 まり、 9月の米個人消費 支出価格指 数
(PCEデフレーター)も前年同月比+1.3%と低位に留ま
りました。10月28日発表の米連邦公開市場委員会
(FOMC)声明文は予想外にタカ派的な内容となりまし
たが、これらの指標を勘案すると、米連邦準備制度理
事会(FRB)は最初の利上げを2016年3月まで先送り
する可能性もあると考えます。
雇用コスト指数は、米国の賃金・給与動向を示す最も
信頼できる指標とされ、四半期毎に発表されます。
FOMCの声明文は、利上げは「経済指標次第」との文
言を残しつつ、予想以上にタカ派色を強めたものとなり
ましたが、インフレ見通しを巡る不透明感は払しょくさ
れておらず、9月の平均時給も予想を下回っています。
このような状況で発表された7~9月期の雇用コスト指
数が示唆する内容は極めて重要です(図表1参照)。
7-9月期の賃金上昇率は、伸びが鈍化
米国の2015年7-9月期の雇用コスト指数(ECI)は、前
期比+0.6%(年率+2.3%)と市場予想とほぼ変わらず、
4-6月期の同+0.2%は上回ったものの、前年同期比
ベースでは、4-6月期の+2.0%を若干下回る+1.9%に
留まりました。当指数は、短期間で見ると上下に大きく
振れる可能性があること、また、2015年上期の賃金上
昇率が実際に変動の大きい展開となったことには留意
が必要です。もっとも、年初来のECIは前年同期比
+2.1%に留まっており、2013年平均の+1.9%、2014年
平均の+2.1%と殆ど変わりません。足元の賃金上昇の
ペースは明らかに過去の水準を下回っており、インフレ
率の押上げ要因となる状況は見込まれません。
図表1:米国の平均時給と雇用コスト指数の推移
期間:2003年1月~2015年9月
%
細線:平均時給(非管理職)
太線:平均時給(全従業員)
(いずれも前年同月比)
4.0
3.5
3.0
2.5
雇用コスト指数
(前年同期比)
2.0
1.5
1.0
03年
05年
07年
09年
11年
13年
15年
出所:ピクテグループ
今後、賃金の伸びが加速するかどうかの分析は、容易
ではありません。実質GDP(国内総生産)成長率は相
対的に緩やかで、需給ギャップが目立って縮小した様
子はありません。また、直近発表された、賃金動向を
示唆する大方の指標についても、極めて緩慢な伸びが
続いています。一方、失業率は、急速に低下しており、
労働市場の情勢を示す大半の指標が顕著な改善を示
しています。「労働市場の緩み」の程度については議
論が分かれるものの、緩みが急速に縮小し、米国経済
が完全雇用の状況に近付きつつあることについては、
否定のしようがありません。したがって、将来のいずれ
かの時点では、失業率の低下がインフレ率を上昇させ
ることが予想されます(次ページ図表2参照)。もっとも、
今後数四半期の賃金の伸びは、緩やかな水準に留ま
ると考えます。
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先進国
個人消費支出(PCE)デフレーターも
低位で推移
2015年9月の消費者物価指数(CPI)が発表されてか
ら2週間以上が経過しますが(2015年10月20日付のピ
クテ・マーケット・フラッシュ「米国消費者物価指数:コア
指数は当面安定推移の予想」をご参照下さい)、米国
のインフレ動向の判断には個人消費支出価格指数
(PCEデフレーター)の方が適切だと考えます。FRBが
注視する指標であること、また、年初来、PCEデフレー
ターとCPIとの乖離幅が大きく広がっているからです
(図表3参照)。
(食品とエネルギーを除いた)9月のコアPCEデフレー
ターは、市場予想通り、前月比+0.1%となりました。ま
た、前年同月比では+1.3%と8月から変わりませんでし
たが、今後6-9ヵ月程度、安定推移した後は緩やかに
上昇し、2016年末までに+1.6-1.7%を付けるものと考
えます。
図表2:米国の失業率とインフレ率の格差の推移
期間:1988年1月~2015年9月
%
4.4
%
-1.5
雇用コスト指数(前年同期比、左軸)
4.0
-0.5
3.6
0.5
3.2
1.5
2.8
2.4
2.5
細線:失業率とインフレ率の格差
太線:失業率(U6)とインフレ率の格差
(いずれも月次、6ヵ月先行、右軸、逆目盛)
2.0
1.6
3.5
1.2
4.5
0.8
88年
92年
96年
00年
04年
08年
12年
16年
出所:ピクテグループ
図表3:米国のコアCPIとPCEデフレーターの推移
月次、前年同月比、期間:2003年1月~2015年9月
予想外にタカ派的な内容となった
10月のFOMC声明文
コアCPI
%
2015年10月28日発表のFOMC声明文は、予想以上
にタカ派的な内容のものとなりました。もっとも、国内経
済についての文言の変更は予想の範囲内に留まりま
した。FOMCは、消費と投資について従来以上に楽観
的な見方を示した一方で、「雇用の伸びのペースが鈍
化し、失業率が横ばい」となったことを認めています。
一方、FRBが市場を驚かせたのは、9月の声明文から
二つの文言が削除されたことです。一つは、「最近の世
界経済と国際金融市場の動向は(米国の)経済活動を
幾分抑制するものであり、目先のインフレに一段の下
押し圧力を加える可能性がある」との警告的な文言が
削除されたことであり、もう一つは、「政策金利の目標
レンジをどのくらいの期間維持するかは、雇用と物価
の進展を見極める」との文言を削除して、「次回の会合
で利上げが適切かどうか、雇用と物価の進展を見極め
る」との文言に置き換えたことです。
市場では、文言の修正がタカ派色を強めたと受け止め
られました。FRBが市場のストレスと世界経済の動向
に対する懸念を弱め、次回の会合で、雇用と物価の進
展を見極めると明記したことで、今後のいずれの会合
においても利上げが決定される可能性があることが示
されたからです。とはいえ、ピクテでは、文言の修正が、
12月の会合での利上げがあり得ることを市場に伝える
PCEデフレーターのFRB長期目標
2.5
2.0
1.5
1.0
コアPCEデフレーター
0.5
03年
05年
07年
09年
11年
13年
15年
出所:ピクテグループ
ための「実験」に過ぎなかったのではないかと考えます。
そうだとしたら、実験は、少なくともある程度の効果をあ
げたと言えそうです。市場に織り込まれた12月の利上
げの確率が、声明文発表前の33%から発表後は50%
近くにまで上昇しているからです。
もっとも、タカ派的な声明文が、FRBの景気認識に変
化があったことを示唆するとは限りません。重要なのは、
FOMCが注視する大方の指標が、9月のFOMC開催
時の状況から殆ど改善していないことです。9月発表の
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Pictet Market Monthly
先進国
8月の雇用統計は予想外の低調な内容となり、7-9月
期実質GDP成長率等、その後発表された大方の指標
も、せいぜい強弱交錯といった状況です。ドルの実効
為替レート(貿易加重レート)や長期金利の水準も、9
月のFOMC開催時の水準に留まっており、コアPCEデ
フレーターや7-9月期の賃金上昇率についても同様で
す。FOMCが利上げを見送った理由は、インフレ率、市
場のインフレ期待ともに、長期にわたって低位に留まっ
ていることです。9月下旬の講演で、イエレンFRB議長
は、インフレ期待が上昇しないことを強調しています。
残念ながら、インフレ期待には、9月半ば以降、改善の
兆しが見られませんし、実際に、インフレ期待を測る指
標は低下基調です。10月のミシガン大学消費者マイン
ド指数からは、消費者の5-10年先のインフレ期待が一
段と低下したことが確認されますが、3ヵ月移動平均は、
長期のインフレ期待が史上最低水準を付けたことを示
しています(図表4参照)。
もっとも、上述の状況が、今後数週間のうちに一変しな
いともかぎりません。重要なのは11月ならびに12月上
旬発表の雇用統計ですが、インフレ指標や世界経済
の進展、ドルの動向、世界の金融情勢からも目が離せ
ません。FOMCは「経済指標重視」の姿勢を変えてお
らず、今後の指標が明らかな改善基調を示すならば
12月利上げの可能性は十分あります。FOMCのタカ派
的な声明文を受けて市場に織り込まれた12月の利上
げの確率も上昇していますが、FOMCは「リスク管理」
を優先し、2016年3月以降に利上げを先送りする可能
性もあると考えます。
図表4:米国のインフレ期待(5-10年)の推移
月次、期間:1994年1月~2015年9月
%
3.4
細線:月次データ
太線:3ヵ月移動平均
3.2
3.0
2.8
2.6
2.4
94年
97年
00年
03年
06年
09年
12年
15年
※ミシガン大学消費者マインド指数インフレ期待(5-10年)、3ヵ月移動
平均の最終データは直近2ヵ月の平均
出所:ピクテグループ
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
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2015年11月17日発行ニュース
米国小売売上高: 10月のコア売上高は期待外れ
2015年10月の米国の小売売上高は、名目売上、コア売上ともに予想に届きませんでした。もっとも、単月の数値は
振れが大きく、大幅な下方修正も珍しくありません。また、10月の雇用統計は、事前予想を大きく上回る好調な内
容でした。したがって、個人消費は 10-12月期以降、2016年を通じて、堅調に推移するものと考えます。
2015年10月の名目小売売上高は、予想
に届かず
米国の2015年10月の小売売上高統計は、失望を誘う
内容となりましたが、個人消費は、2015年10-12月期、
2016年を通じて、底堅く推移するものと見ています。
米国の10月の名目小売売上高は、前月比+0.1%と市場
予想の同+0.3%に届きませんでした(図表1参照)。ガソ
リ ン ス タ ン ド 売 上 が 前 月 比 -0.9% 、 自 動 車 売 上 が 同
-0.5%と、いずれも低調だったことが響きました。後者に
ついては、既に発表されていた10月の自動車販売台
数が前月比+0.5%と10年ぶりの高水準を回復していた
ことから、想定外の数値となりました。一方、建設資材
及び園芸関連売上は同+0.9%と、3ヵ月ぶりにプラスに
転じました。
コア小売売上高もまだら模様
小売売上高から最も変動の大きい項目を除いたコア小
売売上高(GDPの個人消費支出の算出に使われる数
値)も予想に反して好調とは言えない内容でした。10月
のコア小売売上高は、前月比+0.2% と市場予想の同
+0.4%を下回りました。一方、9月改定値は、速報値の
同-0.1%から同+0.1%に上方修正されました。とはいえ、
10月のコア小売売上高は、7-9月期比、年率+2.2%に留
まり、7-9月期の前期比、年率+4.7%(速報値の同+4.2%
から上方修正)を大きく下回ります。
10月の小売売上高は、7-9月期比の個人消費が、従来
予想の前期比、年率+3.2%から僅かながら上方修正さ
れ得ることを示唆しています。一方、10-12月期につい
ては、伸びの鈍化が見込まれます。もっとも、小売売上
高統計は、名目ベースで測定され、単月の数値は振れ
が大きく、したがって、大幅な修正も珍しくないことには、
留意が必要です。
図表1:米国のコア小売売上高と個人消費の推移
( 3ヵ月移動平均、年率、期間:2007年1月~2015年10月)
%
12
%
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
コア小売売上高(左軸)
8
4
0
-4
-8
実質個人消費(右軸)
-12
-16
-20
07年
08年
09年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
出所:ピクテグループ
更に、コア小売売上高は、個人消費の25%を占めるに
過ぎず、直近1年半についていうと、個人消費の伸びを
占う数値とはいえません(図表1参照)。したがって、10
月の小売売上高が低調だったというだけで、10-12月
期の個人消費を過度に悲観する必要はないと考えま
す。
消費の先行きは良好
ここ数週間、ガソリン価格の下落が目立っています。季
節的には、ガソリン価格が下落しても不思議がないと
はいえ、季節調整後の10-12月期のガソリン価格は、
前期比、年率-8.0%程度の下落が見込まれます。
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先進国
このような予測が正しいとすると、10-12月期の可処分
所得は、前期比、年率+0.9%程度押し上げられることと
なりそうです。月初に発表された10月の雇用統計では、
非農業部門雇用者数と時間当たり賃金が大きく反発し
ました。したがって、10-12月期の個人消費については
楽観的に見ており、前期比、年率+3.0%程度と、7-9月
期の同+3.2%を若干下回る水準を維持するものと考え
ます。
2016年の米国経済についても堅調な展開を予想して
います。雇用は順調に拡大し、賃金も緩やかな伸びが
続くと考えます。更に、家計資産の拡大を背景に、住宅
価格の上昇が顕著です。与信の基準は緩和されてお
り、消費者心理も高水準で推移しています。したがって、
年間を通して底堅い消費の伸びが期待されます。もっ
とも、2015年とは異なって、ガソリン価格の下落が実質
所得を大きく押し上げる状況が継続するとは思われま
せん。したがって、2016年の実質所得の伸び率が、
2015年の水準を維持する公算は低いと考えます。
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2015年11月20日発行ニュース
欧米の企業収益動向:7-9月期は低調、2016年は改善を予想
米国ならびに欧州企業の2015年7-9月期決算がほぼ出揃いました。今期の決算が期待外れに終わった一因は、
資源価格の大幅下落の影響が大きかったことですが、今後の一段の下げの公算は低いと考えます。したがって、
2016年の利益成長については、欧・米企業ともに安定推移を見ています。
米国:2015年7-9月期決算は期待外れ
S&P500種株価指数(S&P500)の採用企業の約9割
が、2015年7-9月期決算の発表を終えました。売上高
予想を上回った決算が42%、純利益予想を上回った決
算が53%となり、引き続き、企業のコスト管理強化の効
果が示唆されます。もっとも、売上高や利益の数値が、
一見、良好に見えても、売上や利益の伸び率は低位に
留まります。決算内容が事前予想を上回る「ポジティ
ブ・サプライズ」で見ると、増収率サプライズ(平均)が
0.7%、増益率サプライズ(平均)が0.8%に留まり、決し
て強い数値とは言えません。また、金融を除いたベー
スでは、増収率サプライズ(平均)が0.2%、増益率サプ
ラ イ ズ ( 平 均 ) が 1.3% と 僅 か に 改 善 す る も の の 、
S&P500採用企業全体の収益動向に対する金融セク
ターの寄与度は、過去数四半期と比べて大きく低下し
たことが確認されます。投資銀行部門の予想を大きく
下回る業績を受け、金融セクターの7-9月期決算が、
経常収益(売上)、一株利益(EPS)ともに期待外れに
終わったからです。資源価格下落の影響が大きく及ん
だ素材セクターのEPSは、事前予想を11%下回りまし
た。一方、エネルギー・セクターは予想外の好決算とな
り、売上、利益ともに25%のポジティブ・サプライズとな
りました。もっとも、2015年、2016年の通年EPS成長
率の低下には歯止めが掛かりませんでした。S&P500
の足元のEPS予想は、2015年が前年比+0.4%、2016
年が同+7.8%に留まり、年初時点での予想(2015年が
同+11.1%、2016年が同+10.7%)を下回ります。今後
の利益成長は、失望を誘うものとなりそうですが、一方、
米国企業の卓越したコスト管理が奏功し、利益率は
15%前後と過去最高水準に迫っています。
欧州:2015年7-9月期決算は、悪化
基調が鮮明
欧州企業の2015年7-9月期決算は、事前予想を大きく
下回り、売上高予想を上回った決算、純利益予想を上
回った決算ともに、決算全体の45%を下回りました。
ピクテ投信投資顧問株式会社
また、ポジティブ・サプライズも、増収率サプライズ(平
均)が0.6%、増益率サプライズ(平均)が-0.6%と低調
でした。一方、金融を除いた増収率サプライズ(平均)
は-1.3%、増益率サプライズ(平均)は-1.0%となり、米
国の場合とは異なって、金融セクターがプラスに寄与し
ました。市場環境の悪化を背景に投資銀行部門が減
益となる一方で、ユーロ圏の信用の拡大や貸倒引当
金の減少を受けて好調となった商業銀行部門が、これ
を相殺しました。また、融資の拡大を背景に増収率サ
プライズが18%となった一方で、融資の利鞘の縮小を
受け、増益率サプライズ(純利益)は1.1%に留まりまし
た。素材セクターは、米国と同様、資源価格の下落が
響き、売上高が3%、利益が57%と、いずれも事前予想
を下回りました。石油・ガス・セクターは、増収率サプラ
イズが+4.3%とプラスを維持する一方、EPSは予想を
8.3%下回り、増益率サプライズとはなりませんでした。
ユーロ圏経済の回復、エネルギー価格の下落、失業
率の低下、ユーロ安(対米ドルでは14%の下落)等、欧
州企業を取り巻く環境が改善されたことを考えると、期
待外れの感は否めません。また、年初来の利益率が
+11%に留まり、環境の改善を生かし切れていないこと
も懸念されます。米国の場合と同様、通年の利益成長
率 予 想 は 、 2015 年 が 前 年 比 +4.4% 、 2016 年 が 同
+7.6%となっています。
欧米企業の2016年の収益動向展望
上述の通り、2015年の企業業績は、2014年までの業
績と同様、満足のいくものとは言えません。また、年初
の市場予想が楽観的過ぎ、四半期決算のたびに下方
修正が行われています。
2014年のEPS成長率予想は、米国企業については
2.9%、欧州企業については10.1%の下方修正が行わ
れました。S&P500採用企業の場合は、2015年予想が
年初時点の予想から6.6%、2016年予想が同じく4.1%、
既に下方修正されています。一方、欧州企業の場合も
<次ページに続きます>
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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ご参考資料
Pictet Market Monthly
先進国
2015年予想については5.3%、2016年予想について
は3.8%の下方修正が行われています。利益予想が3
年連続で下方修正されていることを考えると、2016年
についても多くは望めそうにない気がする一方、ピクテ
では、企業を取り巻く環境が安定感を増していくものと
見ています。石油・ガス、素材の両セクターが米国企業
全体に及ぼす影響が極めて大きいからです(図表1参
照)。両セクターの下方修正が米国企業全体の下方修
正に占める比率は、2015年については75%、2016年
については60%に達しています。また、欧州企業の場
合は、株価指数に占める素材セクターの比率が相対
的に高いことから、同セクターの下方修正が企業業績
全般に及ぼす影響も米国の場合を上回ります。
原油ならびに素材価格は、2014年6月以降、大幅に下
落しています。この間、北海ブレント価格は62%下落し
ており、エネルギー・サービス企業を含む石油セクター
全般に大きな影響を及ぼしました。また、ブルームバー
グ工業用金属サブ指数も、同時期に36%低下していま
す。一方、過去2年間の業績不振は、一握りのセクター
に集中しています。ですから、資源価格が同程度の大
幅下落を見ない限り、2016年に同じような状況が繰り
返される公算は低いと考えます。とはいえ、原油価格
が足元の水準から更に50%程度下落し、企業業績に
この2年と同程度の影響を及ぼすようなマクロ環境の
極端な悪化が実現する可能性がないとは言い切れま
せん。工業用金属価格は、2011年の高値から既に
57%下落し、2009年2月の安値を僅かに6%上回る水
準で推移しています。したがって、2016年の企業業績
を取り巻く環境は、これまでよりも安定性を増し、下方
修正の少ないものとなることが見込まれます。ピクテで
は、市場のコンセンサス予想と並ぶ7%程度の利益成
長を予想しています。
2015年4-6月期以降、主要株価指数が大きく低下した
ことから、市場のバリュエーション(投資価値)も低下し、
8月の調整局面では、長期平均に近い水準で底を打ち
ました。足元の株価収益率(PER)は、S&P500が16.7
倍、ユーロストックス600株価指数が15.2倍となってい
ます。後者は割高に見えますが、指数のセクター構成
比率を調整したベースでは、前者にほぼ並びます。
もっとも、2016年中に、バリュエーション水準が上昇す
る公算は低いと考えます。米連邦準備制度理事会
(FRB)の利上げが見込まれることに加え、グローバル
経済の成長についても、確信が持てないためです。し
たがって、株式市場の名目リターンも、企業の利益成
長と同程度に留まるものと見ています。
一方、配当利回りについては、米国の場合が2%、欧
州の場合が3.5%に達すると見ています。また、自社株
買いがここ数年と同じようなペースで行われたとすると、
米国の場合は2%、欧州の場合には0.15%の追加リ
ターンが期待されそうです。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
図表1:セクター別 2015年企業利益予想の修正幅
2015年11月5日時点
米国
欧州
旅行・レジャー
不動産
自動車・自動車部品
電気通信
ヘルスケア
公益
銀行
小売
保険
情報技術
メディア
食品
家庭用品
金融サービス
化学
資本財・サービス
建設資材
石油・ガス
素材
-60%
金融サービス
旅行・レジャー
メディア
保険
家庭用品
ヘルスケア
不動産
情報技術
食品・飲料
公益
自動車・自動車部品
化学
銀行
電気通信
資本財・サービス
小売
建設資材
石油・ガス
素材
-40%
-20%
0%
20%
-40%
-20%
0%
20%
出所:ピクテグループ
ピクテ投信投資顧問株式会社
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