[教材開発] 教科(家庭科)から発展する総合的な学習の時間の展開 合田 一美(旭川緑が丘小学校) Ⅰ はじめに 今年度の米国理解教育研究プロジェクトの研究テーマである「アメリカ人の生活の意見―昨日、今日、 明日―(北海道とアメリカの徹底比較)」を受け、個人研究テーマ「日本とアメリカの伝承遊びの徹底 比較からのアプローチ」を設定し、米国理解教育のための学習教材(家庭科から発展する総合的な学習 の時間で活用)を作成することにした。 したがって、今回の米国視察調査の目的は、アメリカの小学生(幼稚園児も含む)が知っている代表 的な伝承遊びの内容や遊び方を観察やビデオ・写真等で情報収集することにあった。特に、ビデオ教材 はとてもリアルかつインパクトがあり、書物では得られない生のアメリカの情報を子ども達に伝えるの に有効であるとともに学習の意欲づけにもつながると考えた。また、現地の教師や滞在中の日本人にア メリカの伝承遊びについてインタビューするなかで、情報を確かなものにしようとした。 なお、今回、伝承遊びを通して米国理解を進めようとした理由は以下の点である。すなわち、伝承遊 びは仮説として、①異文化理解のうえで、子どもにとり興味を持たせ、魅力的なものである。②世界の 伝承遊びには、よく観察してみると共通性があること。③伝承遊びは、言葉を介さなくても異なる国の 人々が交流しあえることがあげられる。更に、日本とアメリカの伝承遊びを子ども達に徹底的に比較検 討させることにより、文化的背景の異なる両国のなかにも“遊びの世界共通性”を見つけ出す目を育て るとともに小学生なりに伝承遊びを守り育ててきた両国の人々の思いを学んだり、自分たちのくらしや 人々とのつながりを見つめさせたりさせたい。と同時に、伝承遊びのルーツを調べていくなかで、文化 の世界的なつながりに気づかせていきたいと思っている。これは、比較教育の意義そのもので、子ども の多元的・複眼的な思考を育成するという比較教育の意義そのもので、国際理解教育のねらいとも一致 する。 Ⅱ 伝承遊びの文献調査 渡米前に文献や書物を通して、アメリカの伝承遊びの実態について調査した。これは、渡米中の調査 活動を価値的に行うためと、帰国後の授業実践で子ども達に資料提供できると考えたからである。 ここでは、文献調査の一部を紹介する。 下記の伝承遊び●は、ヨーロッパ、中南米、日本などから伝承され、米国民の間で遊ばれているもの である。 ●あやとり 世界各地にあやとり遊びがある。特にエスキモーやナバオ族のあやとりは有名である。彼らは、布 製の紐や皮ひもや動物の腱などを使ってあやとりをしている。 ●石けり 石けりは、基本的には石を蹴るという、単純な遊びである。単に石を蹴る遊びであるが、世界的には 歴史がある。古代ローマで行われていた記録もある。日本にも、明治時代末期以降にヨーロッパから伝 えられ、全国に広まったと考えられる。 ― 165 ― 教科から発展する総合的な学習 ●かくれんぼ 「隠れる」という行為は民族を越えて存在しているという調査報告もある。 ●こま 現在残っている最古のコマは、エジプトで発掘されたもので、紀元前1400年頃から2000年頃 のものということである。日本でも紀元900年頃から遊ばれていた記録がある。昭和の時代にはベー ゴマで遊んだ子どももいる。1995年頃には「すげゴマ」が流行している。アメリカにもブリキのこ まがある。 ●はねつき アメリカの北西海岸に住む、アメリカインディアンのさまざまな部族が行っている。ほとんどは子ど もの遊びで、女の子も男の子もやっている。 ●サイコロゲーム アメリカの先住民族のアラポホ族の子ども達が遊んでいた、運だめしのゲームである。サイコロの形 も日本の物とは違う。 ●ビンゴゲーム 日本でもパーティーなどでよく行っている。日本でも手作りのビンゴが流行っている。 ●DUCK AND GOOSE(アヒルとガチョウ) 鬼ごっこの一種である。この遊びは、ハンカチ落としと少し似ている。 ●POG(パォッグ) 日本の「めんこ」に似た遊びである。重ねためんこをひっくり返す。ニューヨークで流行っていた遊 びである。 ●フリーズ・タッグゲーム 日本の「氷鬼」に似た遊びである。 ●レッドライト・グリーンライト 「だるまさんがころんだ」と似ている。 ●MR、WOLF MR、WOLF!WHAT TIME IS IT NOW?(おおかみさんいまなんじ) カナダでも流行している遊びで、日本でもよく遊ばれている。 ●フルーツバスケット ●ミュージカルチェアー(椅子とりゲーム) ●人間知恵の輪 etc Ⅲ 単元の構想 1 家庭科プロジェクトの研究の流れ 旭川校・家庭科プロジェクトの研究の流れは、次の通りである。1年目は、教科(家庭科)から発展 する総合的な学習の時間の展開を研究した。また、総合的な学習の単元に、家庭科で学習した基礎基本 を関連させた展開を研究した。なお、研究の視点は両者とも消費者教育である。 2年目は、アメリカの食への関心を高める家庭科の単元構成を研究した。研究の視点は食文化である。 本年度は、過去2年間の研究の成果を汲みながら、家庭科から発展する「総合的な学習の時間」の展 開を研究することにした。 ― 166 ― 教材開発 2 単元名 総合的な学習の時間 「アメリカと日本の伝承遊び Let’s try!」 第6学年 3 実践予定単元のテーマ ○家庭科との関連を図り、日本と米国の伝承遊びを体験的に比較することにより、遊びの共通性 や相違点に気づくとともに、米国理解と日本(人)のよさを学び取ることができる。 ○米国の小学生が遊んでいる様子を撮影してきたVTRや写真等の教材を活用することにより、米国の 伝承遊びに興味・関心をもつとともに、日本と米国のよさを味わったり、伝承遊びを守り伝えてき た両国の人々の思いを学び取ったりしながら、自分たちのくらしや人々のつながりを見つめること ができる。 4 今日的な教育の動向 (1)家庭科教育の動向 日本家庭科教育学会では、「家庭科21世紀プラン」を提案している。これは、中央教育審議会 の答申にもある「生きる力」の育成を、家庭科という教科がどのような形で寄与できるかを考究し てきたものである。このなかでは、家庭科教育として生きる力をつけるために、「個人及び家族の 発達と生活の営みを総合的に捉えて、日々の生活活動の中で、主体的に判断して実践できる能力を 育み、明日の生活環境・文化を創ることができる資質・能力を育成する」を目標に掲げている。 次に、上記の目標を受けて、小学校段階では「生活を理解する能力」を柱として挙げている。そ して、この能力育成のために家庭科の内容領域を、「個人及び家族の発達と福祉」「生活資源と暮 らしの知識・技術」「消費生活の営みと生活環境・文化」「総合」の4つに構想している。 その意味からも、「地域の人々との交流」「暮らし」「家庭科からの総合化」という視点から学 習を展開していくことの今日的なニーズは高いのである。 (2)国際理解教育の動向 第15期中央教育審議会の第一次答申(平成8年)では、世界のグローバル化の流れの中、国際 理解教育の一層の充実を提案している。また、学習指導要領においても総合的な学習の時間の取り 組みの一つとして、「国際理解教育」が示されている。 ところで、従来の国際理解教育は、自国文化理解と他国文化理解という視点を中心に推進してき たが、現在では、「自己の確立」と「共に生きる」という視点からの実践が一般的である。 なお、この「共に生きる」=共生には、「国際」「福祉」「情報」「環境」「健康」「安全」「自 由」の観点が挙げられる。 5 単元について 「これからの家庭生活と社会」は、小学校6年生の家庭科の最後に学習する、テーマ「よりよ い生活をめざそう」にせまるための題材のひとつである。 ここでは、2年間の学習をふり返りながら、これからの自分の生活に必要な家庭の仕事、お年寄 りとのコニュニケーション、外国の文化理解、省エネ、福祉や情報化などの問題に積極的にかかわ り、工夫して解決しながらよりよい生活をめざすことを目標としている。また、このような学習を 通して、生きる力(共生)を身につけていけるように設定している。 そこで、本実践では外国の文化理解に視点をあて、筆者が米国で撮影したビデオや写真等の教材 ― 167 ― |Æ÷ÔåG JªÒÖ\ÔãÄé¥{ÿ¥{éR=ý=ûÕJÒÁãÃÚ â ±0éá¡ dÖéµÚVîæ]gn2ýÞÚÎãDJâôÚÕÎÒÚÔ dÖéµÚVîæÍBæÆÆ ãÄéVîãÕΧ»ÔÎãâVîéR>Hÿç[2 æÇàÊÎãÇâÈ dÖéµÚVîæ»ÔÃÇnÎãâD½ÚÜéÊÒÿqãéßåÇ×ßü ÎãÇâÈ ã ±0tÐ+ÔKÝà(.Õ h6éUÕåJG dMÐÐ6äýéçéO _pÁ ( . 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