新世代のサンビスタ マックス・セッチインタビュー セッチインタビュー セッチ

新世代の
新世代のサンビスタ マックス・
マックス・セッチインタビュー
~ニューアルバム『
ニューアルバム『O QUE SE PASSOU』
PASSOU』を語る~
はじめに
以前拙稿「大阪ブルーノートを偲んで」の中で名ドラマーウィルソン・ダス・ネヴィス
との、そしてその後のブラジル旅行とオルケストラ・インペリアルのメンバーたちとの出
会い等を拙文ながら紹介させていただいた。振り返ってみると、自分にとってそれはすこ
ぶる貴重な体験であったと心から思う。
本稿では、ウィルソンを介して知り合い、今も親交を結んでいるもとオルケストラ・イ
ンペリアルのメンバーマックス・セッチについて紹介させていただきたい。
マックスは現在31歳、トランペットを演奏しながら歌手としても活動する多才なミュ
ージシャンである。私が彼と
出会ったのは、2004年に
ウィルソンに会いに渡伯し
た際の、リオのカネカゥンの
楽屋でであった。(詳しくは
拙稿「大阪ブルーノートを偲
んで」を参照のこと)以後、
彼との友情は現在にいたる
まで続いている。先日彼より
最近リリースしたというセ
カンドアルバムが送られて
きた。スペシャルゲストにウィルソン・ダス・ネヴィスを迎えた本アルバムは、マックス
の歌が全面的におし出されたすばらしいサンバアルバムとなっている。ウィルソンも全面
的にドラムを叩いており、百戦錬磨の経験を聴くものに強く印象づける。味のあるマック
スの声と、彼の敬愛するウィルソンの声とのデユエットもすばらしい。
今回そんな目下波に乗っているマックスにメールでインタビューを行ったので、ここに
披露したい。
Q1.ニューアルバム『O QUE SE PASSOU』について教えてください。
私のニューアルバム『O QUE SE PASSOU』をみなさんに紹介できることは大変光栄な
ことです。このCDはリハーサルなどを一切せずに、六時間を費やして一度に制作された
シンプルな作品です。収録曲は私がブラ
ジル、ヨーロッパ、アメリカ、そしてま
たブラジルとツアーを行っていた時に作
曲しました。このCDには、クラウジオ・
アンドラージ、アレフェレイラ、マルロ
ン・セッチ、マエストロのシドニー・サ
ントスが参加しているのに加えて、メス
トレウィルソン・ダス・ネヴィスがドラ
ムを演奏し、共に歌い、作曲までしてく
れるなど多くのすばらしいミュージシャ
ンが参加してくれました。
≪新作『O QUE SE PASSOU』≫
Q2.このCDはあなたにとって二枚目のリーダーアルバムですが、一枚目はインター
ネットにおけるダウンロードのみの配信となったのでしょうか?
私のファーストアルバム『Parabens ao vento』は、2007年に無料ダウンロードで一
般に公開されました。当時の世界の音楽事情では、インターネットを通じてCDがどのよ
うに配信されるのかが極めて曖昧でした。また、
新人アーティストに投資する多国籍企業は不
安定で、みなが口をそろえてCDはもう終わり
で 商 業的に 成功 させるのは不 可能 だと 言 って
いました。私は今ではその当時の予測は間違っ
ていたと思っています。CDはなくならずに今
存
上
を購入したり、ダウンロードして曲が手に入れ
られるなど多様性を呈しています。私は、それ
は聴衆たちがCDだけではなく、レコードやコ
ンサートにも 価値 を 見 出している結 果 だと思
も 在していますし、インターネット でCD
っています。
≪ソロデビュー作『Parabens ao vento』≫
Q3.本作品には偉大なミュージシャンウィルソン・ダス・ネヴィスが特別参加してい
ます。どのようにして彼が参加することになったのですか?
6
全ては200 年にオルケストラ・インペリアルのファーストアルバムのために Era
緒
始
ョ
bom を一 に作曲した時に まりました。私たちはそのオルケストラのシ ーで共に歌っ
ていました。
驚 べ
私たち二人には特別な共通点があることが
わかりました。そしてポルトガルでのツア
彼との共演を通して、 く きことに
ーの際、バスの中で Era bom を作曲し、バ
海辺で完成させました。ウィ
ルソンは不思議なメロディーを生み出す作
曲家です。彼のパートナーになると全て作
詞を担当することになります。彼は私に1
2曲入りのカセットテープをくれました。
始めは、Na dividia に詞をのせ、彼が気に入ってくれたので別の曲を作り、Bella case まで
共同作業を行いました。Bella case は私が初めて作詞をして彼がその後メロディーを置いた
曲で、その形式で私たちは5曲を完成させました。そして準備されていた別の曲も全て完
成させました。作った曲はあるエンジニアの下で声とギターで音をとり、ウィルソンに聴
いてもらうために送りました。彼はそれを気に入り、彼が歌う曲を選び録音する日を決め
ました。当初、彼はドラムを演奏するつもりはありませんでした。録音当日、予定してい
たドラマーから急遽都合が悪くなったという電話がありました。私はウィルソンに録音延
期をお願いする電話をすると、驚くことに“録音を延期する必要はない。わしがドラムを
叩き、その後に声を吹き込もう!”と言ってくれたのです。そして同日に全ての曲を録音
し、その後ウィルソンが声を吹き込んでくれたのです。
イーアのある
Q4.偉大なウィルソンは最高のミュージシャン、そしてブラジル屈指のドラマーであり歌手として
も知られています。あなたにとってウィルソンとはどのような存在ですか?
類まれなる感性を持つミュージシャンです。私たちは驚
くべきことに様々な共通点を感じます。それを言葉で表現するのは容易なことではありま
せん。私たちの魂は実際のところ同年齢と言えるでしょう。私はオルケストラ・インペリ
アルで共に活動した7年間、ウィルソンの家に頻繁に足を運びました。ウィルソンは気取
らない謙虚な性格で、信仰心が強く寛大な心の持ち主であると私は感じています。彼が偉
大なミュージシャンとして多くの者から敬意を払われるのは、その気取らない彼の謙虚な
人柄によると言えるでしょう。このCDを録音した時に、彼の持つ存在感でそこにいた者
全てが今までに感じたこともない緊張感のもとで演奏をしました。リハーサルもなく、知
らない音楽にもかかわらず、誰もやり直す必要はありませんでした。アルバム『O QUE SE
PASSOU』は我々の魂の結晶であり、正に生のライブのようなCDとなりました。
ウィルソン・ダス・ネヴィスは
代表するドラマー、ウィルソン(歌手エルザ・ソアレスとともに)≫
≪ブラジルを
Q5.あなたにとってオルケストラ・インペリアルとはどんな存在ですか?
残念ながら私は2008年にオルケストラ・インペリアルを脱退しました。私にとって
オルケストラは一種の音楽の大学であり、憩いの場でもありました。私たちは忘れること
のできない時間を共有しました。オル
ケストラのメンバーとして、ツアーで
土、ヨーロッパ、アメリカ
を知るチャンスを得ました。また、セ
ウ・ジョルジ(オルケストラの創立者
の一人)
、エルザ・ソアレス、ジョアン・
ドナート、カエターノ・ヴェローゾ、
エジ・モッタ、アンドレアス・キセー
ル(セパルトゥーラ)
、ジャルズ・マカ
ブラジル全
レー、ルイス・メロジーア、ネイ・マ
グロッソ、マルセロ・カメロ、レ
オ・グランデルマン、マルシオ・モンターホス、ベッチ・カルヴァーリョ、マリーザ・モ
ンチ、マルチナリア、サンドラ・ジ・サー、クリッシー・ハインド(プレテンダース)な
どはオルケストラのショーに出演してくれ、共に演奏させてもらったミュージシャンたち
です。他にも数えきれないくらい多くのミュージシャンと共演する機会を得ました。私は
彼らと共に学び、この時期に出会った様々な音楽と共に成長することができました。私が
オルケストラを脱退したのは私自身の音楽を演奏作曲し、そして歌いたいという強い思い
ット
からでした。
生の中で決断すべき瞬間が来ていたのだと思っています。そして私は、
外に出ることを選びました。私のキャリアの中でゼロからの新しい出発でした。
私にとって人
Q6.あなたに影響を与えたミュージシャンは?
影響を与えたミュージシャンは間違いなくウィルソン・ダス・ネヴィスです。
他にも大きな影響を受けたミュージシャンとしては、チ
ャールズ・アズナバー、ホベルト・カルロス、ジョアン・
ジルベルト、チェット・ベーカー、ベッチ・カルバーリ
ョ、トン・ジョビン、アリ・バホーゾ、ベゼーハ・ダ・
シルバ、ジョアン・ドナートがいます。マルセロ・カメ
ロは新世代の作曲家で日々影響を受けています。私たち
はますます精力的に曲作りを行っています。
私に最も
≪トランペットを演奏するマックス≫
Q7.カリオカのあなたにとってリオ・デ・ジャネイロは?またサンバとは?
土、そして世界中から影響を受けている町です。街はすばらしい面も
ありますし、一方で恥ずべき深刻な問題や逆に誇りに思わせられるような、すばらしい面
も持ち合せています。カリオカは人なつっこい性格で、冷えたビールを飲むのが好きでマ
ラカナンスタジアムでフラメンゴを応援しています。
サンバは私が作るのが最も好きな音楽の一部で、サンバを演奏すると心が安らぎます。
私の音楽の 学校 はカ
リオはブラジル全
ーニヴァルで、12歳
の時にカーニヴァル
のダンスパーティー
でプロとして演奏を
始めました。現在私は
31歳ですので音楽
家 としては1 9 年の
キャリアがあります。
私はあら ゆ るジャン
好きです。賛美歌、サウンドトラック、ロック、サルサ、ジャズ、
ポップなどのリズムすべてが大好きです。別のアーティストのCDをプロデュースするこ
ルの音楽を作ることが
好きです。今後さらにいろいろなことにチャレンジしていきたいと考えています。私
はもともとサンビスタになるつもりはありませんでした。私自身今そうであるのか、また
いつかそうなれるのかどうかもわかりません。今言えることは、私の心の中に存在するサ
とも
ンバが歌いたがっているということです。
Q8.日本のファンへ一言お願いします。
感激しています。なぜなら私自身も
日本のファンだからです。日本のスタイルや日本の美学が好きです。日本人は私がすばら
しいと思う面を持っています。日本人の笑顔は疑いもなく世界で最も魅力的なものでしょ
日本に私のファンがいてくださることを知りとても
う。
機
実
願
(2009年6月10日インタビュー)
私のCDを日本でリリースする 会と日本 際に歌えることを ってやみません。
9 月 わ
≪200 年7 に行 れた SESC サンパウロでのライブ≫
※なお、マックス・セッチの新作『O QUE SE PASSOU』は、月刊ラティーナや
名古屋のサンバタウンでも取扱いされているのでご興味のおありの方はぜひと
も問い合わせをしてみてください。
http://www.latina.co.jp/(月刊ラティーナ)
http://sambatown.jp/(サンバタウン)