神奈川大学 理学部 情報科学科 2009 年度 学士論文 中田研究室 ホール効果測定装置の改良 ホール効果測定装置の改良と 改良と 新電子ビーム蒸着装置の立ち上げ 指導教員 中田穣治 教授 斎藤保直 非常勤講師 星野靖 特別助手 200604216 200604216 本杉 太郎 1.はじめに 当研究室では、ダイヤモンドにホットイオン注入して電気的に活性化し、半導体の電気伝導度を制 御する研究を行っている。ダイヤモンド半導体は、既存の Si 半導体などと比較して様々な優れた特 徴を持っている。その一つとして、高温での動作が可能である。そのためには高温でのダイヤモンド 基板の安定的電気測定が求められている。しかし、当研究室で使用しているダイヤモンド基板の電気 測定を行うホール効果測定装置は高温での電気測定時にいくつかの問題を抱えている。ホール効果測 定装置の問題点を明らかにし、改善を試みた。また、ホール効果測定には必要不可欠な電極を形成す るための新しい電子ビーム蒸着装置を立ち上げた。 2.ホール効果測定装置の改良 .ホール効果測定装置の改良 ホール効果とは、半導体に電流を流しているとき、電流に磁場を かけると、両者に直角な方向に起電力(ホール電場)が生じる現象 である。ホール効果測定装置(図 1)は半導体のホール電圧を測定 、キャリア密度、移動度 することで、キャリア型(n 型か、p 型か) などの測定を行うことができる。 図 1 ホール効果測定装置の全体図 2.1 現状の問題点 現状の問題点 ダイヤモンド基板はその温度依存性を調べるため に、室温~800℃まで加熱してホール効果測定を行う 必要がある。しかし、現状温度が 600~800 ℃におけ るダイヤモンドⅠb 基板の n 型判定などの電気測定が 行えていない。その原因の1つと考えられるのが高温 図 2 ホール効果測定装置のセラミックスホルダー での測定による(試料が取り付けられている)セラミ ックスホルダーの汚染である。また、800 ℃まで安定 して温度が上がらず途中でヒーターが焼き切れるな どの問題がある。 図3ホール効果測定装置の石英管とヒーター そのために以下の二つを目標に、ホール効果測定装置 の改良を試みた。 ① 高温での測定によるセラミックスホルダーに付着する汚染をなくす(図 2) ② 室温~800 ℃まで安定的に試料温度を上げられるようにする 2.2 問題点の改良 問題点の改良 ・金線を留める Ti ねじの汚染洗浄を簡易にするために、セラミックスねじに変えた。 ・石英管を二重管にすることで、ヒーターからの不純物拡散を防ぐ(図 3) 。 ・装置内部を金メッキすることで熱の反射を増やした。 2.3 結果と考察 結果と考察 以上の改良を行った結果、室温~800 ℃まで安定的に温度を上げられるように改善できた。また、 セラミックスホルダー全体に付着していた汚染も試料付近だけに限られるようになった(図 4) 。し かし、この減少した汚染だけでも電気測定の妨げになる。汚染の付着する前のセラミックスは測定不 能な程度に高抵抗であるが、セラミックスホルダーの汚染部分の抵抗を測定すると 20 MΩあった。 このセラミックスホルダーの汚染からの電流のリー クが電気測定時の問題となっている。更に汚れの根 本原因を探り、改善し、高温での測定でも汚染が付 着しないようにする必要がある。 図4セラミックスホルダーの汚染 3. 新電子ビーム蒸着装置の立ち上げ ホール効果測定装置で電気測定を行うには、ダイヤモンド基板の四隅に電極 を取り付ける必要がある。この電極はダイヤモンド/Ti(50 nm)/Pt(50 nm) /Au(300 nm)の膜厚をもつ三層構造である。ダイヤモンド基板の上にその電 極形成を行うために電子ビーム蒸着装置(図 5)を新しく立ち上げた。 3.1 電子ビーム蒸着装置 図 5 電子ビーム蒸着装置 電子ビーム蒸着装置は電子ビームを蒸着させる金属ターゲット(Ti、Pt、 Au)に照射し、加熱して蒸発させ試料に蒸着させる装置である。不純物の混 入しにくい膜をつくることができる。るつぼ下にある電子線フィラメントか ら熱電子を放出させ、磁界で曲げターゲットの中心に照射させる構造となっ ている。 3.2 電子ビーム蒸着装置の利点 図 6 電子ビーム源 今までの電極形成に使われていたマグネトロンスパッタ装置よりも超高真空(1.4×10-9 Torr)で の蒸着が可能である。高真空で蒸着することによって Ti の酸化を防ぐことができる。 4.まとめと今後の課題 ・電子ビーム蒸着装置に加熱機構を取り付け、ダイヤモンド基板を 550 ℃まで加熱して蒸着できる ようにし、ダイヤモンド/Ti(50 nm)/Pt(50 nm)/Au(300 nm)の三層電極構造の形成を行う。 ・三層電極を形成したダイヤモンド基板に対して、RBS 測定を行い電極構造が温度とともに、どの ような変化するのか検討する。また TiC 合金のオーミック(電圧と電流が比例関係にあるような接 合構造)性が十分取れているかホール効果測定によって確認する。 ・Ⅱa 基板へ高温で B イオン注入し、三層電極構造でホール効果測定を行い、世界中でいまだ成し遂 げられたことのない p 型半導体になっているかを確認することが目標である。
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