看護師特許を取得ベルギー

Vol.8 No.2 2012
2012年2月号
Journal of Industry-Academia-Government Collaboration
http://sangakukan.jp/journal/
特集
福島 産業創造への扉
● 医療―産業連携による医薬品開発支援
● 最新アクチュエーター技術の医療用への応用を探る
● 飲食品の産学連携商品と県産農産物の安全性保証システムの研究開発
● 福島県における医療機器関連産業の集積
● 福島県ハイテクプラザ 県内ものづくり企業の復興を支援
企業主導・継続的な製品・用途開発
産学連携で生まれた調湿木炭「炭八」
―エアコン使用電力減少の効果を確認―
CONTENTS
● 巻頭言 技術信仰の終焉、あるいは復活?
瀬谷 俊雄 3
● 特集
福島 産業創造への扉
● 医療 ― 産業連携による医薬品開発支援
―「福島にひと・もの・企業を呼び込む」福島県立医科大の挑戦―
● 最新アクチュエーター技術の医療用への応用を探る
和栗 聡 4
髙橋 隆行 7
● 飲食品の産学連携商品と県産農産物の
安全性保証システムの研究開発
西川 和明・森本 進治・小沢 喜仁 9
● 福島県における医療機器関連産業の集積
仲井 康通 12
● 福島県ハイテクプラザ
県内ものづくり企業の復興を支援
池田 信也・鈴木 賢二 15
● 京都産業科学技術総合イノベーションセンター
研究開発、人材育成目指しバイオ計測設備を地域に開放
植田 充美・山本 佳宏 19
● 大学のシーズを「試作品」でアピール
―共同研究につなげる横浜国大の試み―
村富 洋一 22
● でんぷんによる新規糖質の工業生産化
遠矢 良太郎 25
● 産学連携で生まれた調湿木炭「炭八」
―エアコン使用電力減少の効果を確認―
北村 寿宏 27
● 厚物合板の研究開発戦略
渋沢 龍也・青木 謙治・杉本 健一・原田 寿郎 29
● 編集後記 31
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
●産学官連携ジャーナル
瀬谷 俊雄
(せや・としお)
福島県商工会議所連合会 会長
◆技術信仰の終焉、あるいは復活?
さて、3.11 発災以降、福島が重大な岐路に立たされている。
広く海外から見れば福島即日本である。換言すれば、福島は単に東北六県の1
つではない。史上空前の原発事故と、その風評被害、実害を考えると、まさに
FUKUSHIMA RISK IS JAPAN RISK,AND ALSO WORLD RISK.である。
現に時間の経過とともに運転停止となる原発群、日本全体では実に 54 基に達
する。この意味するところは豊富かつ低廉な電力供給の前提が崩されることであ
り、国内立地の産業、単に工業にとどまらず、農業、あらゆる分野に深刻な悪影
響を及ぼすという厳しい現実である。折りからの円高にも加速され、大手・中小
問わず、生産拠点の海外流出は火を見るよりも明らかではないか。
ところで今般の「想定外」の事故により、吾人は、直ちに巨大技術の集合体で
ある原子力発電、いわゆる、核の平和的利用に訣別すべきであろうか。
思い起こして頂きたいのは、人類史上空前のマグニチュード9の巨大地震と津
波に耐えて生き残った、福島第一の5、6号機、第二の1∼4号機、更には女川
の1∼3号機、東通の原発群の存在である。
これらの評価をどうすべきであろうか。試みに問う。原発を否定される論客の
方々。しからば、これからは日本としてエネルギー多消費型社会からの訣別まで
念頭におかれての論陣を張られるのだろうか。
理想論は常に無責任論に堕しがちである。日本がいわゆる経済大国として戦後
築いてきた豊かな社会、生産論分配論をも含め、国際的に相応の位置を保つため
には、今回の大事故を契機により安全な原発の再構築は不可避ではないか。
なるほど、安全神話は崩壊した。これからはリスクを勘案し、その利得とリス
クを共生させてゆくべきであろう。万一の事故を想定し、その被害を最小限にと
どめる工夫、警報伝達、避難も含め、安全神話ならぬ共生物語として再構築すべ
きであろう。
綺麗事の美辞麗句を連ねた復興計画の数々には食傷気味である。現実を直視し
よう。論難を惧れず言えば、エネルギーの根幹をどう立て直すか。世界は日本を
注視している。
去年、知事の名代として中国広東省の広州市にて、温家宝首相にお目に掛かっ
た折、立ち話ではあったが、首相曰く「われわれは日本を注視している。どのよ
うにこの原発事故被災から立ち直るかを」と。なるほど、中国は今後 50 基を越
える原子力発電所建設を進める由。その意図するところは、より安全な原発の在
り方について今般の事故収束を福島モデルとして考えよう、ということであろう。
表題に戻ろう。技術信仰の終焉? 否々そうではあるまい。プロメテウスの火
以降、人類は絶えざる技術進歩と、それに伴うリスクと共生してきたではないか。
共生を支えるものは人類の叡智である。されば復活に向けて手を携え進もうでは
ないか。
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
特集
福島 産業創造への扉
医療 産業連携による医薬品開発支援
「福島にひと・もの・企業を呼び込む」福島県立医科大の挑戦 和栗 聡
福島県立医科大学は、24 年度から医療−産業連携による大規模な研究プロジェクトに
取り組む。研究を臨床現場につなぎ、プロジェクト終了後は、その成果を事業化に結び
付けるのが狙いだ。産業創出などにより経済活動を活発にして雇用をつくり出す―産
学官連携プロジェクトに期待がかかっている。
(わぐり・さとし)
福島県立医科大学 トランスレー
ショナルリサーチセンター長
福島県立医科大学は、平成 19 年度より、経済産業省/独立行政法人新
エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「基礎研究から臨床研究
への橋渡し促進技術開発/遺伝子発現解析技術を活用した個別がん医療の
実現と抗がん剤開発の加速」プロジェクト(以下、TR プロジェクト)を、
一般社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム(JBIC)と協同で実施して
いる。本 TR プロジェクトは、これまでに2千人以上のがん患者の皆さま、
100 人以上の医師・看護師・検査技師・事務職員の皆さま、100 人以上
の参画企業社員の皆さま、さらに、NEDO バイオテクノロジー・医療技術
開発部および経済産業省製造産業局生物化学産業課の皆さまの絶大なるご
理解とご支援を賜り、平成 24 年3月末をもって無事終了の見込みである。
しかし平成 23 年3月 11 日に発生した東日本大震災と引き続く東京電
力福島第一原子力発電所の事故によって、
TR プロジェクト終了後の展開は大きく変
平成(年度)
年度第三次補正予算(生物化学産業課担当
化合物等を活用した生物
システム制御基盤技術開発
用を基軸とし、さらに対象とする疾患・解
NEDO
分 258 億円)を原資とする福島県の復興
事業として、現行体制と得られた成果の活
タンパク質機能解
析・活用
プロジェクト
遺伝子発現解析技術を活用
した個別がん医療の現実と
抗がん剤開発の加速
析方法論・参画企業業種を追加することに
28日間反復投与試験結
果と相関する遺伝子発
現データセットの開発
より、現行プロジェクトをはるかにしのぐ
1)。ここでは、TR プロジェクトおよび平
JST
規模に拡大・発展させることが決定した(図
地域産学官協同研究拠点整備事業
「ふくしま医療-産業リエゾン支援拠点」
(H23.7より本格始動)
成 24 年度から始まる福島県復興事業にお
ける「医療―産業連携による医薬品開発支
福島県震災復興における
タンパク質機能
解析プロジェクト
﹁医薬品開発支援事業﹂
貌することになる。経済産業省の平成 23
図1 関連プロジェクトの経緯と医薬品開発支援事業との関係
援事業」の概要とここに至るまでの経緯を
紹介する。
◆ TR プロジェクトの概要と変遷
本プロジェクトでは、福島県立医科大学附属病院および関連病院で採取
されるあらゆる種類のがん組織について、独自開発した遺伝子発現解析技
術を活用して、網羅的遺伝子発現情報を体系的に取得・解析している。ま
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
た、相当する臨床情報も合わせて集積し、両者を照合することにより次の
ような研究テーマを実施し、創薬支援を行ってきた。
①細胞株を用いた抗がん剤感受性遺伝子群の同定:参画製薬企業が開発中
の抗がん剤、および臨床で使用されている抗がん剤について、その感受性
を評価できる遺伝子群を細胞株レベルでの遺伝子発現解析と薬剤感受性試
験により同定する。
②臨床がんサンプルを用いた抗がん剤感受性遺伝子群の有効性予測:臨床
現場で得られるがんサンプルの遺伝子発現解析を行い、臨床情報と照合解
析することで、①で同定した遺伝子群の臨床における有効性を検討・推定
する。さらに、臨床がん組織由来の培養系を用いた感受性試験を行う。
③遺伝子発現情報の解析による創薬標的遺伝子等の同定:細胞株および臨
床がんサンプルの遺伝子発現情報を再解析し、同種がん内の多様性、個性
に対応する新規がんマーカー遺伝子および新規抗がん剤標的遺伝子を探
索・同定する。
本プロジェクトは、その最も重要な基本方針として、あらゆる機会を利
用して臨床現場の生の声と企業開発現場の生の声に真摯(しんし)に耳を
傾けることにより、それらの生の声の中に現場の真の「ニーズ」を見いだ
し、その「ニーズ」に沿った形で研究開発を行うこと、を打ち出してきた。
その流れの中で、参画製薬企業から、体系的に集積される臨床材料(がん
組織)とそれに付随する臨床情報をなんとか企業の開発現場で活用できる
ような体制を構築できないかという強い要望が寄せられた。
この要望に応えるべく、
「基礎から臨床へのトランスレーショナルリサー
チ」の概念を拡大し、医療機関と製造産業界を双方向に、まず臨床から企
業へという流れを先に作ることによって結合させるという他に例をみない
取り組みを実施した。そのような中、本プロジェクト遂行3年目に、文部
科学省平成 21 年度補正予算により独立行政法人科学技術振興機構(JST)
の事業として「ふくしま医療―産業リエゾン支援拠点」を整備する運びと
なった(図1)。この拠点では、TR プロジェクトにより同定される抗がん
剤標的遺伝子、担がん動物、移植がん組織そのもの、移植がん組織から加
工・創出される細胞材料等を国内製薬企業に広く開示・供給・共同研究で
きる体制・仕組みを作るとともに、地域企業を中心とした産業界と共同で
生体材料の加工・活用に関連する新規技術開発を目指すものであった。す
なわち、この拠点の活動方針は「福島からものと情報を外へ向けて発する」
という方向性を持っていた。
◆震災復興事業へ
しかしながら、人口および経済活動主体の流出が収まらない福島県に
あって、震災・原発事故復興事業の一環としての役割を果たすため、本拠
点および TR プロジェクトの成果の実用化を基盤とした次期事業の位置付
けとその目指す方向性は、「福島に外からひと・もの・企業を呼び込む」
という、全く逆のものへと大転換を余儀なくされた。今後は、臨床サンプ
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
ルと医療情報を医療関連産業が活用しやすい形へ変換し、それらを福島の
地において多数の参画企業が活用することによって新規雇用創出を図ると
ともに、産業創出を含めた経済活動の活発化へと波及させる。また、本事
業の推進を通して最終的には県民の健康の維持・増進へつなげることを目
指す。
したがって、平成 24 年度から始まる新プロジェクトは単なる研究開発
ではなく、明確に「事業」として位置付ける。復興事業終了後は「独立採
算」にて継続させることが強く求められているため、事業の成果を産業界
に活用いただき、その対価を発生させることによって将来的な経済的自立
を見据える。
具体的には、臨床サンプルおよびこれらを産業界で活用できるよう加工
した生体材料(新規細胞株・培養組織・担がん動物)を集積し、そこにこ
れまで集積してきた網羅的遺伝子発現解析情報に加えて、ゲノム塩基配列
情報・cDNA 解析情報・プロテオーム解析情報・ケミカルバイオロジー解
析情報(細胞培養系と実験動物系による化合物プロファイリング情報)を
取得して付加する(図2)。
すなわち、生体材料と解析情報(臨床情
報を含む)を体系化したカタログのような
診断薬企業
検査薬企業
試薬メーカー
臨床検査会社
医療機器会社
ものを作る。企業には活用したい材料を選
福島県内の
病院
択していただくとともに、福島に新規整備
評価や新規検査診断キットの検証等に使っ
研究受託企業
福島県
進出し、その材料を新規抗がん剤の感受性
経済産業省
される拠点のインキュベーション施設等に
福島県外の
病院
製薬企業
ていただく。さらに、将来的に本事業で創
連携拠点
出される検査方法・診断キット・診断薬を
10の基盤領域
コンパニオン検査・コンパニオン診断薬と
福島医大
して併せ持つ新規医薬品の治験をも福島で
実施できる体制を整備することも視野に入
れる。これにより非臨床・臨床のはざまを
(1) 細胞・組織集積加工分野
(2) ゲノム塩基配列解析分野
(3) cDNA解析分野
(4) 遺伝子発現解析分野
(5) タンパク質解析分野
(6) 動物実験分野
(7) 遺伝子機能解析分野
(8) 化合物解析分野
(9) インフォマティクス分野
(10) 臨床研究・治験分野
企業
コンソーシアム
図2 ふくしま医薬品開発支援事業の体制概要
埋め、基礎研究から治験までシームレスな
「企業による医薬品開発」の下支え的加速・支援を行う。
参画企業へのさまざまな成果開示を中心として実施してきた TR プロ
ジェクトの「医療現場と産業界を結ぶ行為」を通じて最終的に明らかになっ
てきたのは、「医療の世界」と「産業の世界」とでそれぞれが当たり前だ
と思って使っている情報認識の様式(いわば使用言語のようなもの)が全
く異なるということであった。両者が認識を共有して新たなものを生み出
すためには、まさに「異なる世界」間で使われている「異なる言語」間の
翻訳(トランスレーション)を行う体制(仕組み・システム)の構築とそ
こに従事する専門の人材の養成が必要であることを強調して TR プロジェ
クトの完遂と新規事業の始動に添えたい。
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
特集
福島 産業創造への扉
最新アクチュエーター技術の医療用への応用を探る
工業県福島。今後さらに拡大する市場として医療機器への関心が高く、産学官のさまざ
まな取り組みが行われている。福島大学副学長の髙橋隆行教授は、ロボットの要素技術
研究で大きな成果を挙げ、それを医療機器に活用する方策を探っている。髙橋副学長に
聞いた。
――先生の最先端のロボット技術研究を医療機器開発に結び付けようとさ
れているようですね。
髙橋 基本はゼロバックラッシュ(がたの無い)・小型・高出力・精密な
アクチュエーターです(図1)。バックラッシュ、いわゆる伝動部分に“遊
び”がほとんどないのが最大の特徴で、同時に小型、高出力などの要素も
髙橋 隆行
(たかはし・たかゆき)
福島大学 副学長(研究担当)
実現しているアクチュエーターは初めてです。
開発しているのは直径数ミリから 10 ミリメー
トル以下の伝動機構で、考えられる用途は多い
ですが、現時点では腹腔鏡手術への応用に焦点
を当てて研究開発を行っています(図2)。
――産業界では「ナノ」の領域の加工が一般化
しているのに、なぜ今、ゼロバックラッシュな
のですか。
髙橋 いい質問です。バックラッシュのない伝
動の技術はあり、例えば減速機を例に取ると
図1 ゼロバックラッシュ・小型・高出力・精密アクチュエーター
10 数ミリメートル程度の大きさであればハー
モニックドライブがデファクトスタンダードになっています
し、それよりも大きなサイズであれば選択肢は複数あります。
また、加工技術という観点で見ると、ミリメートルよりも小
さな領域では MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)
の世界があり、大きな領域では既にさまざまな手法が確立さ
れています。しかし、1∼10 ミリメートルの大きさのメカ
トロニクス機器――ミリサイズマシンと言います――は、ゼ
ロバックラッシュ空白の領域なのです。それを実現する適切
な方式がありませんでした。切削するにも最適な刃物が無い
図2 応用イメージ
し、材料も難しい。つまり、ミリサイズマシンでは基本的な
精密伝動技術が確立していなかったと言えます。そして、ミリサイズマシ
ンの領域の1つが医療機器です。
――先生はロボットハンドの研究をなさっていましたね。
髙橋 はい、遠隔医療への応用を考え、研究をしていました。開発してい
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
たロボットハンドは5本指ですが、それを1本にして進化させようという
のが現在の研究です。1本ですが、“関節”をつなげたような形です。そ
れぞれの“関節”は立体(3D)カム、減速機、モーター、角度センサー(レ
ゾルバ)で構成し、その“関節”を4つくらい接続し、先端にカメラや手
術用のデバイスをつけるというイメージです。新しい技術は3つあります。
第1は、立体カムの非並行軸伝動機構(入力軸と出力軸が非並行)です。
ゼロバックラッシュであり、大きな出力角度を実現しました(100[deg]
以上が可能)
。第2はクラウンギア減速機の並行軸伝動機構です。歯数分
の1の減速比を持ち、1段で入出力軸の回転方向の組み合わせを任意に選
ぶことができます。以上の第1、第2合わせて3つの特許を取得していま
す。第3の新技術は、極めて薄く、小型化に適している角度センサーです。
株式会社松尾製作所(本社:愛知県大府市)と共同で開発しました。
――新しい技術に対する産業界の期待も強いのではないですか。技術移転
はどうですか。
髙橋 機械的には基礎的な要素技術なので、医療用に限らず民生用機器、
産業機械、工作機械、航空宇宙産業など広い分野で利用が可能です。小型
モーターのアクチュエーターに限定しても、年間約 30 億円程度の市場に
なります。特許は国内の企業2社に既にライセンシングしています。その
他、国内の大手企業2社と秘密保持契約を結んで共同研究や技術評価を実
施しています。これらはいずれも医療分野ではなく、工作機械メーカーな
どです。また、ドイツの医療機器メーカー2社と秘密保持契約に入ってい
ます。
――先生は、医療用を当面のターゲットにしているわけですね。
髙橋 はい、1カ所の切開創から内視鏡や鉗子(かんし)などを挿入する
単孔式の腹腔鏡手術を想定して開発を進めています。単孔式だと、内視鏡
と鉗子などが干渉し合うことが多いのですが、動きの自由度を増すことに
よってその干渉を防ごうというものです。
――課題は何ですか。
髙橋 どれだけ強い力を出せるかが最大のポイントです。モーターの力が
まだ弱いです。ただしこの部分は、減速機の改良により解決する道も探っ
ています。現在の内視鏡手術では、メカニカルワイヤを使った器具が広く
使われていますが、このゼロバックラッシュのアクチュエーターはメカニ
カルワイヤを使わない方式です。現時点では、メカニカルワイヤのほうが
強い力は出ます。従って、当面は、従来の手術器具と補完し合うものにな
ると思います。医療機関(福島県立医科大学)と連携して新しい手術法の
研究も、並行して進めています。福島から新しい医療機器、医療技術が生
まれることを期待し、要素技術の開発に取り組んでいます。
(登坂 和洋:本誌編集長)
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
特集
福島 産業創造への扉
飲食品の産学連携商品と県産農産物の
安全性保証システムの研究開発
福島県の農産品生産額は工業製品等出荷額と並んで東北6県中1位である。東日本大震災に起因する東京電力福島第一
原子力発電所事故で放出された放射性物質による汚染と風評による県内農業の被害は甚大である。昨年4月、県内農業
者と流通業者から福島大学に「消費者に安全・安心な農産物をお届けするための保証システムを中立的な大学で研究開
発して欲しい」との要望があった。同学の研究推進機構本部が理工と経営の教員からなる研究プロジェクトを直ちに立
ち上げ、地域の要請に積極的に応えている。
福島県の「そば」や「もも」は生産量が全国2位にあるにもかかわらず知名度は低かった。旅行者をはじめ全国の皆さ
んに PR したいと企業から福島大学に相談があり、経営やデザインを専門とする教員・学生とのコラボレーションで、
ユニークな商品開発を行った。
農商工連携で国際級品質のそば焼酎を生み出す
そば焼酎「出逢い」は、農商工連携の成果として 2003 年に誕生したもので、
2009 年には国際的な食品審査機構であるモンドセレクション(ベルギー)にお
いて、日本産そばを 100%使用するそば焼酎として初の「最高金賞」を受賞し、
以来3年連続の「最高金賞」を達成した*1。
◆大学が連携をコーディネート
「福島県のそばの作付面積は北海道に次ぐ第2位であり、そばは県民に愛好さ
れる食品なのに、なぜそば焼酎がないのか。事業化できないものか」と、構想を
持ち出したのは、福島市内でそば屋「峰亀」を経営する斎藤武二社長で、2003
年夏、同社長より相談を受けた本学コーディネーターが当研究室に話を持ち込ん
できた。
「やるからにはいい焼酎をつくりましょう」と、早速、私が代表を務め
る産学官の交流組織「経営戦略研究会」の会員(当時 70 名)に呼び掛け、企業
や県庁などの、関心のある 10 名で「プロジェクト F21」を発足させた。
◆コンセプトは「県民に愛されるそば焼酎」
プロジェクトのメンバーたちは仕事が終わった夜に、メンバーの会社の会議室
に集まっては会議を重ねた。議論の中心はいかにマーケティングと生産を行うか
であり、
「営利目的ではなく、県民に愛される焼酎にすることを目指す」という
方針で、「県民を交えた販売方法」を検討した。そして、その年の 12 月には初の
7,000 本が完成した。当初の方針通りブランド名は県民に呼び掛けて公募したと
西川 和明
(にしかわ・かずあき)
福島大学 経済経営学類 教授
*1:モンドセレクションには
2005 年から出展し、その時は
銀賞で、翌年に出展した時は金
賞となったものの、その翌年の
2007 年は銀賞に逆戻りした。
そ れ で も あ き ら め ず に 2009
年度に4回目の挑戦を行い初め
て最高金賞を射止めた。
*2:2003 年 度 か ら 2011 年
度 ま で に 約 10 万 本 が 生 産 さ
れ、販売累計額は約1億3千万
円(2011 年度はほかの焼酎も
販売しているが、この数字はそ
ば焼酎のみ)となっている。
ころ、約 100 名近い方々からはがきが届き、選ばれたのが
「出逢い」であった。製品発表会も、広く呼び掛けて多く
の方々に集まってもらった。研究会「プロジェクトF21」
は株式会社となり、酒類販売許可も取得した。
原料のそばは会津坂下町の「若宮ばくさく」という農家
グループが生産したもの。二本松市の酒造会社が安達太良
山の伏流水を使って 25 度の焼酎に仕上げる。販売につい
ては株式会社プロジェクトF21 が行うが、福島市に本社の
ある酒類販売店が全面的に支援している。今では福島市内
の多くの飲食店や旅館・ホテルにも出回るようになった*2。 佐藤雄平福島県知事にモンドセレクション金賞受賞を報告
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
このように、農・商・工の有志が大学と連携したことでそば焼酎「出逢い」
は誕生し、生産・販売されている。昨年からは、二本松の麦を使用した麦焼酎、
会津のサツマイモを使用したいも焼酎も生産している。政府の進める米からの
転作に苦慮している農家にとって新しい作物の活用方法として期待されている。
学生とのコラボレーションで「ももりんサブレー」を商品化
生産量全国2位の“福島県の桃”を観光客にアピールしたいと福島市内の老舗
菓子店、有限会社ニューキムラヤが福島大学「芸術による地域創造研究所」(渡
邊晃一所長、熊田喜宣所員(名誉教授)、デザイン専攻学生4人)と味や食感な
どにも踏み込んだ共同研究を行い、新商品を開発した。
◆商品コンセプトも提案
きっかけは 2009 年 12 月に開催した「福島大学出前相談会」*3 にニューキムラ
ヤからパッケージデザインの相談が持ち込まれたこと。コーディネーターがデザ
イン専門の熊田所員に話をつなぎ、数度の打ち合わせを経て、福島市の産学連携
森本 進治
(もりもと・しんじ)
福島大学 研究推進機構本部
産学官連携コーディネーター
支援事業の支援を受けて、大学との共同研究が 2010 年7月に始まった。
教員の指導を受けた女子学生4人は、デザインだけでなく食べ方(=商品のコ
ンセプト)に関しても提案するようになった。この提案を同社が受け入れユニー
クな商品が誕生となった*4。商品は、福島市観光 PR キャラクター「ももりん」(ウ
*3:福島市産業交流プラザで
毎月1回開催。
サギ)の顔形をデザインしたサブレーに、桃でつくった瓶詰めコンフィチュール
*4:エリック・フォン・ヒッ
ペル著「民主化するイノベー
ションの時代」にある、リード・
ユーザー(消費者)イノベーショ
ンの食品事例と言える。
(南仏風ジャム)を添えたもの。パッケージデザインも福島大学生が行った。
◆参画したデザイン専攻学生に大きな自信
「ももりんサブレー」は、試作品が 2011 年1月末に完成、4月から福島市内
4店舗(JR 福島駅西口と東口の売店ほか)で販売が始められた *5。販売は好調で、
この4店舗では「ももりんサブレー」の販売が加わったことで総売上がそれぞれ
前年同期に比べ 20%ほど増加している。主な購買層は若い女性や子ども連れの
お母さん方で、リピーターも多い *6。
芸術系大学以外の大学のデザイン専攻学生は、自分のアイデアを具現化する機
会がないまま卒業することが多い。今回、地場の企業のパッケージデザインに参
画し短期間に商品化できたことから、学生には大きな自信となり抜群の教育効果
*5:3月初めの販売開始予定
であったが、東日本大地震の影
響で、1カ月遅れた。
*6:「ももりんサブレー販路開
拓事業
(2011 年 10 月∼2012
年9月)
」が、福島県産業振興
センターのふくしま産業応援
ファンド事業に採択され、県内
全域、大阪、東京などの有名デ
パート物産展(1週間)で販売
を行っている。
があった。学生たちは、それぞれ、教員、デザイナー、漫画家を目指して巣立っ
ていった。
【ニューキムラヤの話】
敷居が高いと思っていた大学との付き合いがきっかけで福島県ハイテクプ
ラザとの連携も始まり、今後は、これら機関の研究成果を活用し商品開発
のスピードアップを図りたい。学生との議論の中で、メーカーでは思い付
かない発想に触れることができ、自らの刺激になった。意識の高い消費者
とのコラボレーションの有用性、自社製品のデザインも人任せにするので
はなく、「モノづくり」から「コトづくり」まで含めたトータルデザイン
の必要性を痛感した。現在、新商品開発に向け、福島大学のサークル「くっ
倶楽部」との新たなコラボレーションに取り組んでいる。
ももりんサブレー
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
産官民学で「食の安全・信頼」を確保し、「農業の再生」を目指す
東日本大震災とこれによる福島第一原子力発電所事故により、これまで優位な
環境にあった福島県の農業 *7 は重大な危機に直面している。本学では東日本大震
災緊急特定課題研究プロジェクト「県産農産物の円滑な流通を確保するための安
全性保証システムの構築」を立ち上げ、産官民学の連携による「食の安全・信頼」
と「農業の再生」に取り組んでいる。
◆大震災および事故後における風評被害
事故後から現在まで、福島県内の一部農地の放射性物質含有量は高い状況にあ
り、農産物は食品衛生法の基準を超えるとその市町村から出荷停止の措置がとら
れる。農家ばかりでなく、スーパーにおいても自主的な計測活動を事故直後から
小沢 喜仁
(おざわ・よしひと)
福島大学
共生システム理工学類 教授
行うなど消費者の「食の安全・信頼」を保証するために大変な努力が重ねられて
いる。しかしながら、市民の安全性に対する誤解や認識不足、諸機関から提供さ
れる情報の不足や対策の遅れ、悲惨さばかりを強調する首都圏メディアの報道、
これに対抗する地方からの情報発信の量的不足や時間的遅れなどにより、風評の
影響を大きく受けている。
◆農産物の安全・信頼のための新たな保証システムの構築
*7:平成 21 年の農業の総生産
額は、約 2,450 億円で全国第
11 位、米が全体の4割弱を占
め る(948 億 円、5.3 %)。 サ
ヤ イ ン ゲ ン、 キ ュ ウ リ(115
億円、8.7%)やトマトなどの
野菜、モモやリンゴ、ナシなど
の果物(453 億円)。
本研究事業は大学、県(農林水産部の関連各課、県農業総合センター、農林事
務所)、果樹・稲・野菜などの農業生産者、スーパー経営流通企業、農業系企業
および首都圏消費者団体による「産官民学」の取り組みで、次の3つのステージ
を想定して研究を進めている。
1.緊急対応として、震災直後からこ
2.農家、県農業総合センターと連携
3.地域の自然と農家の英知に育まれ
れまで耕地 *8 土壌の放射線レベ
しながら、土壌の放射性物質の低
醸成された土壌を中心に据え、厳
ルの正確な分布計測、農産物の放
減・無放射能化対策と連動させた
しい放射線管理をもとにした営農
射線量管理を実施して、緊急対応
耕作法の工夫、農作物への移行係
と、先進的ポット栽培の可能性な
型流通モデルを構築した。
数の把握などを行い、放射性物質
ど施設型農業に関する未来型の栽
が 検 知 さ れ な い(ND レ ベ ル)、
培技術や経営管理などについても
安全性の高い農産物の生産モデル
総合的に調査し、次世代の人材育
を構築する。
成を行う。
これまでに、農作物や土壌の放射線レベル計測、流通における食の安全確保の
ためのシステムづくり、県内や首都圏における消費者の動向調査、研究成果をも
とにした「食の安全に関するフォーラム」開催などの成果が得られており、第2、
*8:面積:150,300ha(全国
に占める割合 3.3%)、本地面
積:143,900ha、 水 田 率:
70.2%、耕地率:10.9%
第3のステージに着手している。
農業は、地域の自然、水と土壌、そしてその地域に住む人たちの永年にわたる
英知により成り立つ地域産業の根幹であり、密接なサプライチェーンを形成する
ばかりでなく、地域文化を形成する源でもある。生産か
ら流通、小売りまで一貫して農産品の安全を保証し、積
極的な情報提供によって消費者に信頼を与えるシステム
を構築することが何よりも必要である。美味しく安全な
農産品を生産する技術と世界中で1番厳しい放射線管理
技術をもとに、福島県が誇る農産物の安全・信頼のため
の新しい保証システム(福島方式)を開発・構築するこ
とが、福島における「元気な農業」の復興の基盤をなす
と考えている。
フォーラムの様子
http://sangakukan.jp/journal/
11
産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
特集
福島 産業創造への扉
福島県における医療機器関連産業の集積
医療機器関連産業の集積を目指す福島県における産学官連携の在り方は「福島モデル」
と呼ばれる。地域のものづくり中小企業が医療機器分野に積極的に参入していること、
大学の研究者を含め徹底して事業化を目指していること、県庁が県立医科大学内に担当
部署を設置し、「医」と「産」や「学」と「産」の橋渡しをしていること―などの特
徴がある。県の役割は極めて大きい。
東日本大震災から約 11 カ月が経過いたしました。この間、全国の皆さ
まには、義援金や支援物資の提供、被災地でのボランティア活動、工業製
品をはじめとした福島県産品の購入など、あらゆる場面でさまざまな心温
仲井 康通
(なかい・やすみち)
福島県商工労働部 産業創出課
課長
まる御支援をいただき、深く感謝を申し上げます。
◆はじめに
本稿では、医療機器関連産業分野におけるこれまでの研究開発の状況と
ものづくり企業の新規参入への支援を中心に、産業集積に向けた当県の取
り組みをご紹介する。
◆東日本大震災までの取り組み
1.これまでの経過と現状
●当県における医療機器関連産業集積を目指した産業施策
福島県新長期総合計画「うつくしま 21」(平成 13 年度策定)において、
当分野に重点的に取り組むこととし、平成 14 年度に文部科学省から「都
市エリア産学官連携促進事業(一般型)
」の採択を受け、大学を中心とし
た医療機器の研究開発からスタートした。その後、「都市エリア産学官連
携促進事業(発展型)」、
「地域イノベーションクラスタープログラム(グロー
バル型)
」の採択を受け、産学官による医療機器の開発とその事業化に継
続的に取り組んできた。
また、平成 17 年度からは、研究成果の事業化を担うものづくり企業の
育成を目指して、「うつくしま次世代医療産業集積プロジェクト」を県単
独事業として併せて開始し、平成 21 年6月には、
「ふくしま次世代医療
産業集積クラスター」として、経済産業省から地域中核産学官連携拠点(全
国 10 カ所)の指定を受け、以下の4つの戦略に基づいて事業の展開を図っ
てきた。
・戦略1 県民・患者の視点に立ち医療ニーズを踏まえた研究開発
・戦略2 既存産業の高度化と地域経済の活性化
・戦略3 プロジェクトを担う人材育成
・戦略4 情報発信と世界展開
さらに、平成 22 年4月には、福島県立医科大学にふくしま医療−産業
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
リエゾン推進室を設置して、医療機器関連産業の振興を担当する県職員を
配置し、産学官がより緊密な連携を構築できる体制を整備した。
*1:平成 22 年薬事工業生産動
態統計年報(厚生労働省)
●当県医療機器関連産業の現状
オリンパスメディカルシステムズ株式会社の生産拠点など 40 を超える
医療機器製造業者が操業しており、医療機器生産金額が 911 億円で全国
*2:平成 20 年度工業統計調査
(経済産業省)
6位*1、医療用機械器具の部品等生産金額が 129 億円で全国第3位*2 であ
るなど、医療機器関連産業の集積が進んでいる(図1)。
2.産学官連携による研究開発
平成 14 年度から「都市エリア産学官連
携促進事業(一般型)」、平成 18 年度から
「同(発展型)」、平成 22 年度から「地域
イノベーションクラスタープログラム(グ
ローバル型)」を実施し、日本大学工学部、
福島県立医科大学、福島大学、会津大学と
県内ものづくり企業が連携し、日本大学工
学部尾股定夫教授が有し特徴ある「触覚(ハ
プティック)技術」を活用した各種医療機
器の開発等に取り組んできた。この基盤と
なる「触覚(ハプティック)技術」は、柔
図1 福島県における医療機器生産金額の推移
らかい物の硬さ(触り心地)を測定・評価
する方法で、世界 20 カ国で特許を取得している。
具体的開発品としては、肝硬変やしこりなどの硬さを検出し画像化する
乳腺腫瘍診断装置や次世代型の眼圧測定装置、培養組織のバイオクオリ
ティ評価システム(タクタイルマッピング顕微鏡)
、超小型・軽量でハプ
ティック機能を有する次世代ロボットハンド等を開発し、県内をはじめと
した企業群への技術移転を行った。その中でも、培
養組織のバイオクオリティ評価システム(タクタイ
ルマッピング顕微鏡)については、平成 21 年に日
刊工業新聞社のモノづくり連携大賞を受賞するとと
もに、欧州の大学等研究機関へ販売が開始されるな
どの成果を挙げている。
現在は、これまで培ってきた「触覚(ハプティッ
ク)技術」に「光技術」を組み合わせたバイタルサ
イン測定器等の「患者に優しく安全性を備えた先端
医 療 機 器 の 開 発」 に 着 手 し て い る と こ ろ で あ る
写真1 非侵襲バイタルサイン計測装置
(写真1)。
また、当県の産学官連携による研究開発の最大の特徴は、大手医療機器
会社で製造や薬事法に長年携わってきた優秀な人材を迎えて事業全体の進
捗管理をするほか、毎月のペースで事業化推進委員会を開催し、研究開発
品について、事業化の可能性の検討と、優先して解決すべき技術課題の抽
出などを行うことで、効率的な研究開発の実施と事業化に努めている。
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
3.ものづくり企業の育成
当分野の研究成果の事業化には、実際に製造を担
うものづくり企業の育成が重要であることから、県
内大学の研究成果やものづくり企業の技術を医療機
器メーカーにアピールし、取引を拡大するため、平
成 17 年度から医療機器分野の設計・製造技術展示
会「メディカルクリエーションふくしま」(写真2)
を6年連続で開催している。出展者数は、年を追う
ごとに増加し、全国規模の医療機器設計・製造展示
会に発展した。今年度は、2012 年2月 21 日、22
写真2 メディカルクリエーションふくしま 2010
日の2日間にわたり、福島県郡山市で開催を予定し
ている*3。
また、日本医療機器学会大会併設の「メディカルショージャパン」やド
*3:http://fuku-semi.jp/
mc2011/
イツで開催される世界最大の医療機器展示会「メディカ」に、県内の大学
やものづくり企業とともに福島県ブースを出展して、国内のみならず海外
においても取引の拡大に努めている。
さらに、ものづくり企業の新規参入の促進のため
に、産学官連携により関係法律の知識や、医療機器
のニーズ、取引方法などに関してセミナーを開催し、
座学だけでなく手術室や製造現場等の見学や、実際
に医療機器を分解してその構造や材料について知識
を深めるなど実習的な手法を用いることが特徴であ
る(写真3)。また、企業に対して個別相談を実施
することで、これまで、県内ものづくり企業 15 社
が医療機器製造業の許可取得に成功し、現在、医療
機器メーカーから開発試作や OEM 生産を受託でき
写真3 人材育成事業(機器分解実習)
るまでに成長した。
◆東日本大震災後の展開
平成 23 年6月に文部科学省、経済産業省、農林水産省から「ふくしま
医療産業集積クラスター」として地域イノベーション戦略推進地域(国際
競争力強化地域)の選定を受け、10 年後の医療機器生産金額 1,500 億円
を目指して施策を展開することとした。
また、平成 23 年 12 月に定めた復興計画において、世界をリードする
医療機器・医療ロボットの研究開発、製造拠点の集積を進めることとし、
重点的に施策を展開することとした。
今後は、東日本大震災復興特別区域法による規制緩和や税制の優遇、医
療福祉機器開発ファンド等を活用して、県内企業の新規参入促進や付加価
値額の向上、県外医療機器メーカーの当県誘致を促進することで、医療機
器関連産業の集積を図ることとしている。
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
特集
福島 産業創造への扉
福島県ハイテクプラザ
県内ものづくり企業の復興を支援
福島県では、東日本大震災と原発事故により産業活動は大きな影響を受けているが、県の公設試験研究機関の県ハイテ
クプラザは地域企業を支援するさまざまな取り組みを行っている。平成 17 年度から、地元企業の要望に基づいて、3
カ月程度で製品に直結するような技術を開発する事業を行っている。福島県の清酒は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞す
る数がいつも全国でトップクラス。理由の1つは、県による酵母の開発だ。ハイテクプラザは県内の蔵から集めた多く
の酵母を保存しており、津波で流された酒造会社はそれを生かして銘柄「磐城寿」の復活を目指している。
ものづくり復興支援事業
企業の要望に基づき公設試が短期間で技術開発
平成4年4月に開所した福島県ハイテクプラザは、独立していた福島、
会津若松、いわきの各工業試験場を統合・改組し、新たに郡山に中核セン
ターを設立、旧工業試験場を技術支援センターとして再編した、福島県の
工業分野の試験研究機関である。
池田 信也
(いけだ・しんや)
福島県ハイテクプラザ
企画連携部 産学連携科
専門研究員
開所から現在まで、県内企業の身近な技術支援機関として、技術相談・
移転、依頼試験および試験機器の開放、人材育成、技術開発の4本を柱に
活動を続けている。
ハイテクプラザに寄せられる多くの要望の中には、「アイデアはあるが
具体的な開発まで持って行ける人材がいない」「技術は持っているが、開
発している時間がない」などの理由から、個別企業を対象に短期間に製品
表1 成功事例一覧
No.
技術開発課題名
企業名
1
レジンコンクリートの特長を生かした
吉田工業株式会社
高付加価値プランターの開発
2
蜂蜜酒「ミード」における製造管理技
㈲峰の雪酒造場
術の開発
3
青ひび向け加飾クレヨンの開発
4
金属製品削り加工のバリ・かえり取り 株式会社ムラコシ
5
錐面部のキズ検査装置の開発
株式会社ムラコシ
6
ガラス強化方法の検討
株式会社吉城光科学
7
蓄光材を活用した宝飾品用芯線の開発 株式会社シンテック
8
NC 自動機での S45CF の切削加工
9
振動荷重を受ける溶接構造体の疲労強
アネスト岩田株式会社
度設計手法の確立
10
オリジナルストール用織物のまとわり
齋藤産業有限会社
つきの軽減
大堀相馬焼協同組合
長尾工業株式会社
担当部署
技術的課題
解決策・結果、成果
大型のプランターにはコンクリートが用いられ 保水機能を工夫することで、無給水で 50 日間育
ハイテクプラザ、
ているが、高強度で保水性の高いレジンコンクリ 成可能なプランターを開発した。また、季節や場
会津若松
ートを用いた、高機能なプランターを作りたい。 所を選ばないデザインのプランターを提案した。
蜂蜜を原料とした酒「ミード」を製造する際、蜂 発酵条件を最適化することで、目標のアルコール
蜜のみを原料とした場合、アルコール分が3%程 分 11%を達成したほか、蜂蜜本来の香味を有し
会津若松
度で発酵が停止してしまう。もっとアルコール分 た高品質なミードの製造方法を確立した。
が高くなる発酵法はないか。
相馬大堀焼の陶芸教室などでは、筆で下絵を描い「青ひび」という独特の青磁釉でも発色する、ク
ていたため、初心者には難しい。初心者にも簡単 レヨンを開発した。扱いやすいことなどから、一
会津若松
に下絵付けができるよう、下絵用クレヨンを開発 般の人にも簡単に多色の下絵付けが可能となっ
して欲しい。
た。
S20C(機械構造用炭素鋼鋼材)相当の材料のバ 電解複合加工でバリの除去を検討し、2工程、
いわき
リ取りについて、工数の減少と時間の短縮をはか 20 秒で処理が可能となった。
りたい。
自動車のブレーキ部品(月産 300 万個)錐面部 CCD カメラで撮影した部品錐面部に画像処理を
ハイテクプラザ のキズの検査を、目視から自動化したい。
行い、切削痕を除去し、容易にキズを検査できる
装置を開発した。
PDA 等のタッチパネルのガラスをより薄く高強 化学的な強化法の検討を行い、未処理の時と比較
会津若松
度にしたい。
して3∼4倍の強度を得る手法を開発した。
従来の宝飾品芯線の欠点であるメッキ剥がれ・メ 芯線に超高分子量ポリエチレンを用い、その芯線
ッキ色相不調、伸びによる形態劣化を改善した 表面に蓄光材微粒子を固定した。その結果、夜間
いわき
い。
でも芯線が光るため美的感覚にあふれた審美性
の高い宝飾品用芯線が作製できた。
NC 自動機による直径4mm の小径円筒型ワーク バニッシング加工の適用を検討し、試作工具を用
の旋削加工において、現状のバレル研磨による表 いた加工実験によって、表面粗さ Ra0.4μm から
ハイテクプラザ
面仕上げは不良率が高いという課題があり、改善 0.6μm 程度のサンプルが Ra0.2μm 以下になり、
表面粗さを改善することができた。
したい。
製造する溶接構造体に関して、信頼性向上のため CAE による応力解析、実機運転時の振動、ひず
の設計手法を確立したい。
み挙動の把握、溶接構造試験片の強度試験、振動
ハイテクプラザ
試験を実施し、
「局所ひずみ」に基づいた強度設
計手法を確立した。
オリジナルなストール用織物を開発したが、生地 酵素を使い、ウールの表面改質加工を行うこと
同士がまとわりつくという欠点があり、商品化が で、まとわりつきの軽減を図ることができた。
福島
困難となっている。まとわりつきを解決して欲し
い。
※表中担当部署について ハイテクプラザ=本所・郡山、福島=福島技術支援センター、会津若松=会津若松技術支援センター、いわき=いわき技術支援センター
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
に直結するような技術開発をハイテクプラザで行って欲し
いというものがあった。これまでにも共同研究や受託研究
などの制度はあったが、制度上の制約から「短期間で結果
が欲しい」という企業の要望に応えられるものではなかっ
た。
そこで、平成 17 年に「戦略的ものづくり技術移転推進
事業 ものづくり短期研究開発事業」という事業を新設し、
新たな技術開発事業をスタートさせた。アイデアを企業か
らいただき、聞き取り調査を経て研究計画や予算の作成を
写真1 プランターの設置イメージ
(CG)
ハイテクプラザの職員が行い、3カ月程度で結果を出す。
ハイテクプラザの職員は、いただいた要望に対して、経
験と知識を生かし、提案企業の協力を得ながら、ハイテク
プラザで所有している機器を最大限に活用することで研究
開発を成し遂げており、大規模予算に頼らない解決を可能
にしている。
震災後、この事業は「がんばれ福島!産業復興・復旧支
援事業」に再編され、「ものづくり復興支援事業 技術開
発事業」という名称で企業の災害からの復興・復旧に役立っ
ている。
写真2 原料蜂蜜(栃の木)・発酵中モロミ・ミー
ド製成酒(左から)
◆震災後、事業を再編
震災後は、県内企業の混乱や疲弊もあり、技術開発に関
する案件が出てくるか懸念されたが、7月に募集を開始し
たところ、心配をよそに震災前よりも要望が多く集まり、
県内企業の底力を認識したところである。現在、今年度の
予算枠 25 件に対して、1月 10 日現在、26 件の応募があ
り 24 件が承認され実施中である(不承認の2件は技術指
導等で対応済)。
震災前までに実施されたテーマの中で、実際に製品化さ
れたものや企業の収益に大きく貢献した事例を表1に示す。
写真3 作製したクレヨン(完成品)
◆デザイン担当部署と連携
概要を説明すると、まず、表1の No.1のレジンコンク
リートの特長を生かしたプランターの開発は、コンクリー
ト製の U 字溝や土管を作っている会社から持ち込まれた
提案で、駐車場の車止めや仕切りのための大型のプラン
ターの付加機能として、長期間水やりのいらない構造を考
案して欲しいとの申請内容であった。詳細な内容の確認の
ため提案企業を訪問してみると、大型のプランターの場合、
周囲の景観などに溶け込むデザインが必要であることな
ど、保水構造の開発だけでは要望に応えられないことが分
かり、デザインを担当する部署と連携して開発を進めるこ
写真4 絵付けをした作品
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
ととなった。 その結果、最初に給水してから 50 日間無
給水で植物が育成できる保水構造を持ち、コンクリート製
では困難な、曲率の小さな R 形状のプランターを提案す
ることができた(写真1)。
No.2の蜂蜜酒の製造管理技術の開発については、提案
企業が「農商工等連携事業計画」の認定を受けるなどして、
コンビニエンスストアのネット販売などでの売り上げが伸
びている(写真2)。No.3の加飾クレヨンの開発では、大
堀相馬焼協同組合の陶芸教室で、実際に使われていた(写
真3、4:組合事務局は原発事故のため避難し、ハイテク
写真5 錐面部のキズ検査装置
プラザに事務局を移設)。また、No.4のバリ取りの研究については、引き
続き企業への支援を続けていく中で、特許の出願に至っている。
全体として、表の事例からも、設計法の確立や、工程の改善(写真5)
などの提案も含まれており、県内企業からの要望が多岐にわたっているこ
とが分かっていただけると思う。
ハイテクプラザではこの事業を、今後も県内企業の復旧・復興のための
重要な事業として位置付け、引き続き事業を行っていく予定である。
清酒酵母開発と被災企業鈴木酒造店「磐城寿」の復活
◆全国新酒鑑評会 日本一を目指して!
鈴木 賢二
平成5年、全国新酒鑑評会において福島県の清酒が 13 点もの金賞を受
賞した。平成2年には1点も金賞を得ることができなかったのにである。
この快挙の要因の1つとなったのが、平成3年に県が開発した「うつく
(すずき・けんじ)
福島県ハイテクプラザ
会津若松技術支援センター
醸造・食品科 科長
しま夢酵母」である。当時、“YK35”でないと金賞を取るのは難しいと言
われていた。Y は酒米「山田錦」、K は酵母「きょうかい9号」、35 は「精
米歩合 35%」の意味である。その時代に、吟醸香の酢酸イソアミルを高
く生産し、さらに低生酸性である「うつくしま夢酵母」は、まさに画期的
な酵母であった。
ただし、何事にも完全ということはない。酒は大ざっぱに言えば、米と
水が原料である。この「うつくしま夢酵母」は香りは良いが、造るのは「きょ
うかい9号」よりも難しい。濃糖に弱いので、すなわち米が想定よりも溶
けてしまうと、後半になって発酵力が弱ってしまい、ひどい時は発酵が止っ
てしまうことさえある。
そこで、福島県酒造協同組合においては、夢酵母委員会を立ち上げ、酒
質審査を行い、認定された酒以外は夢酵母清酒としての販売をできなくす
るという措置を取った。この「うつくしま夢酵母」の純米吟醸酒は当時の
吟醸ブームに乗り、好調な販売実績となった。
現在は、平成 12 年に開発された福島県初の酒造好適米「夢の香」を原
料にして仕込んだ酒造りを奨励しており、毎年、県の春の鑑評会で「夢々
の部」が開催され、「うつくしま夢酵母」使用清酒のさらなる技術研さん
が図られている。
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
しかし、この間、鑑評会出品用大吟醸酒の酵母が、これまでよりはるか
に香りの高いものが主流となり、各県で、これらの高香気性酵母の開発が
盛んとなった。日本醸造協会からも「きょうかい 1601」酵母、近年では
「きょうかい 1801」酵母が開発され、香りの主流も従来の酢酸イソアミ
ル系からカプロン酸エチル系へと変化した。このことに伴い、福島県にお
いてもカプロン酸エチル系の酵母開発を試み、平成 21 年に「うつくしま
煌酵母」を開発した。この酵母は、香りが高、中、低の3種類あり、従来
の高香気性の酵母よりも発酵力が強く、醪(もろみ)管理が比較的容易な
のが特徴である。
この「うつくしま煌酵母」の登場もさることながら、これまで「うつく
しま夢酵母」で培ってきた技術が実を結び、福島県は、平成 18 年の全国
新酒鑑評会において金賞受賞数全国1位の栄誉に輝いた。その後も上位に
位置し、平成 22 年の鑑評会においては再度全国1位となった。その後も
常に上位の成績を誇り、昨年は、東日本大震災による被災があったにもか
かわらず、全国2位の金賞数を獲得すること
ができた。
◆『磐城寿』∼大震災からの復活∼
しかし、何よりも悲惨だったのは、この震
災により造りができなくなってしまった蔵が
あることだ。その1つが「磐城寿」醸造元、
株式会社鈴木酒造店である。本県双葉郡浪江
町にある同社は恐らく日本で1番太平洋に近
い蔵で「海の男酒」と呼ばれていたが、10
メートルを超す大津波に蔵も主家も酒造道具
もその全てが流されてしまった。
写真6 震災前に預かっていた酵母(鈴木専務(右)と筆者)
震災前の1月にたまたまだが、杜氏兼専務の鈴木大介氏か
ら電話で「ウチの山廃酒母の香りが極めて良い。良い蔵付酵
母がいるかもしれないから預かって欲しい」との連絡を受け
た。さっそく氏から山廃酒母4点が送られ、それをマイナス
80℃の超低温冷凍庫に保管した(写真6)。
被災後、氏にその旨を話すと、どうも忘れていたようで、
「蔵の一部が残っていた!」と本当に喜んでくれた。さっそ
く酵母の分離作業を行い、6月には県内の蔵で復興の酒造り
を行うこととなった。せっかくなので、まだ、中途段階では
あったが、分離した酵母も加えることにした。ひと月後には
良酒が完成、復興のシンボルとなった(写真7)。
その後、鈴木酒造店は、山形県酒造組合からの仲介もあり、
山形県にてこの冬から造りを再開した。まだ、酵母の分離は
途中段階、さらに選定を行う予定である。
「酒の母」「磐城寿」の酒質を生み出す酵母をいつか見いだ
し、本当の意味での「磐城寿」の復活を目指したい。
写真7 2011 年7月に出荷した復興の酒
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
京都産業科学技術総合イノベーションセンター
研究開発、人材育成目指しバイオ計測設備を地域に開放
昨年夏に設立された京都産業科学技術総合イノベーションセンター(KISTIC)は産学
連携、新たな技術開発を目指すプラットフォーム。バイオ計測プロジェクトでは、大学、
公設試験研究機関、大企業だけでなく、中小企業、ベンチャー、学校教育や地域活動に
も設備を開放して計測技術の研究開発と人材育成の拠点づくりを目指している。
共著
◆京都産業科学技術総合イノベーションセンター(KISTIC)の
設立
2011 年7月、京都リサーチパーク地区(写真1)に、産学官の連携を
促し、新たなイノベーションを創造する技術基盤プラットフォーム「京都
産業科学技術総合イノベーションセンター(Kyoto Industrial Science and
Technology Innovation Center:KISTIC)*1」が誕生した。京都を拠点に活
植田 充美
(うえだ・みつよし)
京都大学大学院 農学研究科
教授
躍するものづくり企業や研究者の交流・連携・新たな技術開発を目指すプ
ロジェクトの「場」であり、文部科学省が進める地域産学官共同研究拠点
整備事業(科学技術振興機構の事業)の一環で京都市のサポートを得て実
現した。現在、2つのプロジェクト――平尾プロジェクト(代表:京都大
学大学院工学研究科平尾一之教授)とバイオ計測プロジェクト(代表:京
都大学大学院農学研究科植田充美教授)*2――が入居している。この両プ
ロジェクトでは、主に、地域へのサイエンスの還元を目指して、施設設備
山本 佳宏
の開放を行っている。
(やまもと・よしひろ)
京都市産業技術研究所 加工技術
グループ バイオチーム 主席研
究員
◆バイオ計測センター(KIST-BIC)の設立意義
生体は、遺伝子(ゲノム)、タンパク質(プロテオーム)、代謝物(メタ
ボローム)という複合要素(オミックス)からなる。高度分析装置などを
集中的に導入し*3(写真2)、技術と知識を1カ所に集約することで、こ
のオミックス計測・解析技術によるデジタル表示は多くの生体活動に可視
*1:http://www.krp.co.jp/
kistic/
*2:http://www.krp.co.jp/
kistic/bio_project.html
化を導入できるようになる。大学、公設試験研究機
関、企業だけでなく、中小企業、ベンチャー、学校
教育や地域活動も含む一般にも開放してバイオ計測
の認知を広め、計測技術の研究開発と人材育成の拠
点づくりを目指すものである。伝統の匠(たくみ)
の技を革新的なデジタル技術で伝承するシステムを
作れば、地域産業の活性化「ものづくり」の拠点化
に直結する。これによって目指すのは新しい「バイ
オ計測」技術のモデル都市、すなわち世界に類を見
ないサイエンスを社会に還元した、安心できる格差
のないデジタル社会。実現すれば京都市はこうした
理想のデジタル社会を築くことを実践した世界の範
写真1 京都リサーチパークの外観
http://sangakukan.jp/journal/
19
産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
となる都市となる。
*3:http://www.krp.co.jp/
kistic/bio_project_list.html
◆京都および未来社会への貢献
今回の東日本大震災は、失われつつある「安全
と安心」という信頼を取り戻すためには、測定指
標を明示しその分析結果を隠すことなく客観的に
提示し説明することが必須であることを痛感させ
た。今、世界では生体分子の網羅的デジタル定量
解析研究やそれに伴う多くの解析装置と技術の飛
躍的発展により、多くの安全に関わることを安心
できるデジタル数値で表示することが可能になっ
てきている。これは、まさに、安全と安心を可視
化することにほかならない。
真に、感度が高く、安いコストで、定量的で、
かつ再現性の良い、オンサイト、すなわち現場で
即時検査が可能になれば、安全性の保障は飛躍的
に向上し、一般の人の安心度も非常にアップする
はずである。これまでもすでに現場レベルで使用
可能な測定は存在してきたが、それを上回る計測
を可能にしつつある新しいコンセプトである「バ
イオ計測」の開発と実践適用への事例への関心が
さらなる安全・安心を醸し出していくものと信じ
ている。「バイオ計測」 は、現在、その萌芽期に
あり、活用できそうな技術が幾つか見られる。
例えば、これまで DNA 配列解析にはゲル電気
泳動を用いたキャピラリーアレーDNA シーケン
サーが用いられてきたが、メガあるいはギガオー
写真2 バイオ計測センター内の各種機器および機器講習会
の様子
ダーのサンプルの処理の必要な試料の配列解析に適した方法として段階的
な相補鎖合成を用い、化学発光を利用したパイロシーケンシング法が開発
され、次世代 DNA 配列解析装置として世の中に出現してきた。これらの
基盤の上にマイクロファブリケーション技術を取り入れ、微細反応セルあ
るいは細胞アレーの効率よい計測技術が進展するとともに、生体の生命・
生物機能全体をモニターするライフサーベイヤーとも言うべきシステムの
構築が進んでいる。この進展により、細胞に含まれる種々の分子の組成な
どを組織の平均値としてではなく、個別の細胞に含まれる分子群全てを個
別の細胞ごとにデジタル的にカウントして全体組成を解析する手法の開発
が可能になってきた。いわば、アナログ的平均値としての理解から個々の
細胞内の分子動態を網羅的に解析することが可能となってきた。例えば、
物理、化学、生物など幅広い分野の知識と技術を結集して、可視化できる
プローブや細胞ごとに識別網羅解析できる基盤や要素などの化学物質合成
の技術、生体組織を構成する個々の細胞はどのように情報を交換し応答反
応しているのか解明するための基礎解析系、細胞の中で働いている個々の
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
生体分子を一網打尽に検出したり、機能を同定する網羅的機能解析基盤技
術の開発、およびそれらの網羅的多数変量を一括して鳥瞰(ちょうかん)
できるシステムソフトの開発などが展開してきている。これは、生体の基
本となる細胞機能の解明にとどまらず、臨床診断、病因解明、動植物育種、
工業微生物育種等、応用分野にも強く直結する重要要素技術となることが
期待される。多くの生体内の分子群の分離定量分析には、アカデミックで
よく扱う単純なピュアな均一サンプルの分析とは全く異なった複雑な粗混
合系からの目的物の分析が、実社会では、その最終目的である。それによ
り、時空間を加味した真の安全と安心の理解につながっていくものと考え
られる。
デジタル定量解析による「バイオ計測」における材料やシステムの開発
には、産学官の英知を突き合わせることのできる拠点となる場が必要であ
る。今回、自治体が「バイオシティ構想」をスローガンに地域活性化に「バ
イオ計測」拠点を設立し、新しいボトムアップとトップダウンの混交した
モデル拠点「京都産業科学技術総合イノベーションセンター(KISTIC)」
の形成により、まさに、市民目線での安全・安心の信頼拠点の基盤を固め
る取り組みとなってきている。
また、「デジタル計測」の大きな利点は再現性があることと誰でも活用
できるということである。これが世の中に浸透すれば、例えば、患者は自
宅のベッドの上で簡単に健康計測ができ、携帯電話などでホストコン
ピューターに送信すれば身体の詳細なデータを知ることができる。患者を
管理するのではなく、見守ることができ、介護の現場も変わることになる。
高齢化が著しい日本において、京都市はこういった拠点事業のモデル都市
に名乗りを上げ、地元の機器メーカーと連携して取り組むことによって、
大きな社会貢献を果たすことになる。
関西にはゲノム創薬の研究が進む大阪と、再生医療の先進都市・神戸が
ある。「バイオ計測」の拠点となる京都を入れた3
都市で関西バイオトライアングル(図1)を形成す
ることができ、世界に類を見ない画期的なクラス
ターが誕生することになる。
最後に、サイエンスを社会に還元していくことに
よって、一般の人も簡単に「バイオ計測」ができ、
データを共有できて安心できる格差のないデジタル
社会を築くことが、われわれの目標である。「バイ
オ計測」の実用化を契機に、伝統の匠の技の伝承、
食の安全・安心の確保、環境保全と健康増進への道
しるべ、青少年の文化・科学への憧れへと若者の意
識改革や理科離れの歯止めにもなるものと信じてい
図1 関西バイオトライアングルの形成
る。
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
大学のシーズを「試作品」でアピール
共同研究につなげる横浜国大の試み さまざまな展示会で大学のシーズを紹介しても、企業の関係者にあまり関心を持っても
らえない。どんな製品に活用できるのかイメージがつかめないためだ。そこで、大学が
試作を支援した。
横浜国立大学は平成 22 年度から、学内で応募し選ばれた技術シーズにつ
いて、「製品」に近いレベルの試作品の開発を支援する取り組み(名称は「プ
ロトタイピング推進事業」
)を行っている。企業に「大学の知」を「具体的な
モノ」として理解してもらい、共同研究に結び付けるのが狙いだ。22 年度は、
神奈川県内の公的産業支援機関の協力を得て、開発力と関心を持つ企業に大
学から発注し、研究者と支援機関コーディネーターが協力して試作を3件実
施した。
村富 洋一
(むらとみ・よういち)
横浜国立大学 産学連携推進本部
共同研究推進センター 教授
◆本事業が生まれた背景
プロトタイピング推進事業の誕生には以下のような背景がある。
1.企業が、そのシーズの有効性や発展性を理解していないことが多い。
大学の研究者から「私の技術に対して企業の反応が悪い。製品に使えば売
れると思うけど…」との声を聞くことがある。企業の技術者が、そのシーズ
を使って実際に製品化する際の困難さを見抜いているケースもあるが、多く
は、その技術を使った製品のイメージをつかめないことだろう。試作品づく
りの過程で、致命的な問題点が見いだされたとしても研究者にとっては有意
義なことだと思われる。
2.大学のシーズ発信手段として、動作が確認できるモノの訴求力を重視
したい。
各種展示会に出展する場合、パネルだけの展示が多い。実際に研究室に展
示できそうなモノがあっても、実験等の都合や動作が不安定であることなど
を理由に展示を見合わせることが多い。
3.神奈川県内の公的産業支援機関(以下、支援機関)から、地域企業の
活性化のために大学からの実験装置など開発要素がある製品の発注は
ないかと相談された。
◆目的と運営方法
共同研究推進センターが主管となり、以下の手順で実施した。
⑴学内公募を行う。また、産学連携コーディネーター(以下、CD)が、製品イメー
ジと有効なシーズを持つ研究者に個別に声を掛けて応募を促す。
⑵共同研究推進センターの審査委員会で審査。原資(総額 300 万円程度)と
実現コストの関係によるが応募案件はできるだけ採択する方針とする。
⑶採択した案件については、担当の CD を配置する。
⑷支援機関(22 年度は、公益財団法人神奈川産業振興センターと公益財団法
人川崎市産業振興財団)に声を掛けて案件ごとに試作開発に応じてくれる
企業を数社推薦していただく。
⑸各案件ごとに CD が、支援機関と企業への説明会を開催し、試作品への意
図と概略イメージを提示し、企業が試作提案を行えるように調整する。
⑹複数の企業より試作品の見積もりと仕様を提示してもらい、研究者と CD
とで協議して、試作委託企業を決定し発注するとともに、知財の扱い等を
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
明記した守秘義務契約を締結する。
⑺以後 CD が中心となり支援機関の CD とも連携して、試作品の完成までのマ
ネジメントを行う。
⑻完成後には展示会に試作品を展示し、
その結果を受けて次の戦略を協議する。
◆平成 22 年度の試作品の結果と現状
平成 22 年度に手掛けた以下の3試作品は全て「テクノトランスファーin
かわさき 2011」に出展した。マスメディアにも取り上げられ、問い合わせ
や参考になる意見が多く寄せられた。全て現在も共同開発を継続している。
3件とも展示後、自治体助成等を申請し、内2件が採択された。
①高 Tj をもつパワー半導体デバイスのプロトタイプ実装接合品(図1)
電気自動車等の電力制御に
不可欠なインバータの心臓部
であるパワー半導体実装モ
ジュールは、大電力・高温環
境での使用となるため、信頼
性確保の設計と評価が極めて
重要な課題である。于 強准教
授は、電気・構造・熱シミュレー
ションによる設計・解析と信
頼性評価が専門。パワー半導
体の主流であるが入手が困難
(a)従来構造との比較
(b)試作したパワーモジュール
な SiC 半導体を模擬した Si 半
図1 高 Tj をもつパワー半導体デバイスのプロトタイプ実装接合品
導体を用いて信頼性評価用モ
ジュールの試作をマイクロモジュールテクノロジー株式会社に委託をした。
*1:材料メーカーがパワーモ
ジュールの材料選定基準や耐久
これは小型・高耐熱性を有し、放熱性に優れた実装構造を採用するとともに、
信頼性に関する相対的な評価情
同社の強みであるフリップチップ実装方式の採用により、生産性の向上と小
報が得られにくいことに対応
し、会員企業が提供する材料を
型薄型化を実現するものである。
用いてパワーモジュールの試作
現在は、試作品の高温信頼性評価結果を踏まえ、財団法人神奈川科学技術
を行い、関連各種実装材料の評
価プラットホームの構築を目的
アカデミーが管理団体として、委託企業と神奈川県のグリーン IT 活用産業振
とした自前のプロジェクトであ
る(平 成 23 年 度 か ら 期 間 2
興事業のプロジェクトに申請し採択され、本命と言うべき高出力 SiC 半導体
年)。横浜国立大学大学院工学
を用いたパワーモジュール開発を同様の方式にて展開している。
研究院高橋昭雄教授をリーダー
に于 強准教授他の教員と神奈
また、大学発のプロトタイピングを行う事業形態は、KAMOME-PJ(Kana川県産業技術センターの参画で
*1
gawa Advanced Module for Material Evaluation Project) の発足につながった。
試作・評価を行う。よこはま高
度実装技術コンソーシアムが事
②小型過熱水蒸気調理器(図2)
務局で会員企業(現在 21 社)
過熱水蒸気(100℃以上の高温水蒸気)は、殺菌、乾燥、調理、洗浄など
は年会費 90 万円を支払うこと
で成果の報告を受ける。
多様な分野への応用から関心が持たれている。調理の分野では、脱脂・脱塩
など多様な効果があるため、家庭用のオーブンレンジに応用され市販されて
いる。しかし、過熱水蒸気を生成するには、ボイラーと過熱器が必要となる
ため、装置が大きく高温蒸気の発生に時間がかかるなどの欠点があった。
(a)基本構造と原理図
(b)試作した小型過熱水蒸気調理器
図2 試作開発した小型過熱水蒸気調理器
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
奥山邦人教授は、多孔質体に水を含ませて、熱容量が非常に小さい表面の
メニスカス部分の近傍にヒータを当てることで瞬時に水を蒸発させる技術を
開発した。毛管力により自動的に水が供給される多孔質とヒータのみの簡単
な構造で、ヒータのオンオフでオンデマンドに過熱水蒸気の発生と停止を制
御できる特徴がある。これを家庭用調理器に利用すれば小型・安価で使いや
すい装置が提供できると考え、市販されているレンジタイプではなくテーブ
ルでも使えるシンプル構造の装置試作を業務用厨房機器等が専門のタイジ株
式会社に委託した。
展示会を契機に、調理器具以外の用途の共同研究の成約も生まれた。
③介護用移乗支援機器(写真1)
ベッドから車いす、あるいは車いすからベッドへの移乗を支援する
機器は既に幾つか販売されているが、多くは大型であり電動で時間が
かかるなど欠点があり、あまり普及していない。施設では、介護者が
直接、移乗支援を行っているが、長期間実施していると腰部に負担が
生じ、退職する人も少なくない。従って、介護者および被介護者とも
に移乗時に負担の少ない機器の開発が望まれている。
高田一教授は、人間工学や福祉機器についての研究から、動力を使
わずにてこの原理を利用して、介護者が力を使わずに素早く移乗を可
能にする構造を考案し、実証検討を目指していた。そこで、実際に人
(a)実際の移乗支援の検討風景
を移乗できる装置の試作を福祉機器や精密機械器具を開発している有
限会社岩手電機製作所に委託した。介護者が「だっこ」する感覚で行
うので、利用者との親近感が持てる「だっこ君」という愛称も生まれた。
実際の試作品を使用すると幾つかの問題点も見つかり、展示会では、
実際に車いすに乗った見学者から貴重な意見を聞くことができた。こ
れらの問題点を解決すべく、企業が川崎市福祉製品開発支援補助金事
業に応募し採択され、現在も共同開発が継続している。
◆本事業の意義と今後の展開について
本事業を実施するに当たり、大学のシーズをもとに世の中に全くな
い新産業を創出できるのではないかという期待があった。しかし、実
施した3案件は、どちらかというと改良製品の分類に属し、既存の製
品の性能や機能を向上させることを意図したものとなった。
一方で、委託した企業全てが、現在も本学の研究者とつながりを持
ち、継続して開発に取り組んでいる点では、本事業の共同研究推進の (b)試作した介護用移乗支援機器
目的は達成した。しかも、結果的には投入した資金を上回る資金が大 写真1 試作した介護用移乗支援機器
(腰にやさしく、頼れる移乗機器
学に入ることになり、財務的にも成功であった。地域企業と地道に改
「だっこ君」)
良製品を生み出して行くことも現実的な路線であると考える。
さらに、アイデア出しやプロジェクト管理を行い、試作品としてまとめあ
げる CD の役割は、研究者と企業の橋渡し以上の存在として重要で、苦労は
多いが産業界への貢献度も大きい。試作を通して新たな知財が生まれる可能
性が高く、最終的には権利化まで展開することで個々の事業の完了としたい。
また、支援機関が企業推薦から広報、助成金情報の提供などを通じて、産
学公の人・モノ・金・情報の双方向循環を促し、相互の信頼関係構築への貢
献は見逃せない。
なお、今回の試作品はハードウエアの最終製品を目指したものであったが、
今後は、大学で開発したが生産性が悪いために企業に成果有体物として供与
できない装置や材料、基本的なアルゴリズムは大学で開発したがマンマシン
インターフェースなど周辺ソフトを充実させないと効果が実証できないプロ
グラムなどにも、費用が許す限りこの事業を広げたいと考えている。
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
でんぷんによる新規糖質の工業生産化
サツマ芋は青果として食べるほか、でんぷん、芋焼酎、加工食品の原料として活用され
ている。そのでんぷんも酸や酵素によって分解され、各種食品の原料になる。鹿児島大
学と地元の日本澱粉工業株式会社は、でんぷんを海藻の酵素で分解してできる新規糖質
の工業的生産技術を開発、同社が販売している。さまざまな外部資金を活用し、約 10
年かけて事業化を実現した。
◆はじめに
でんぷんを海藻の酵素で分解してできる新規糖質 1,5- アンヒドロフル
クトース(1,5-AF)の工業的生産技術を開発。この糖は、抗菌性、抗酸
化性、高いメイラード反応性を有し、機能性食品の糖質として、麺類や果
物加工品に使用されている。
遠矢 良太郎
(とおや・りょうたろう)
鹿児島大学 産学官連携推進機構
産学官連携コーディネーター
◆連携の背景
鹿児島県のサツマ芋の生産量は全国1位で、全国の年間生産量 100 万
トンの4割を占めている。サツマ芋は、でんぷんや芋焼酎、加工食品の原
料として、また青果用として用いられている。でんぷんは、セルロースに
並ぶバイオマス資源であり、毎年生産される貴重なリサイクル資源であり、
酸および酵素的に分解することにより、水あめ、粉あめ、ブドウ糖、異性
化糖等各種食品の原料として広く利用されている。
地域基幹産業であるサツマ芋でんぷんの用途を拡大するために、鹿児島
県と地域企業である日本澱粉工業株式会社は、でんぷんの高度利用と付加
価値の高い製品開発を目指していた。
鹿児島大学農学部はサツマ芋研究で多くの研究実績と高い研究レベルを
有し、平成9∼11 年度旧科学技術庁の地域先導研究に採択され、サツマ
芋でんぷんから大きな潜在機能を持つ新しい糖質を製造する基礎研究を進
めた。
日本澱粉工業は、研究社員(吉永一浩氏と藤末真実氏)を研究生として
同大学に派遣して、新規糖質の研究に取り組んだ。
新規糖質である 1,5-AF(図1)は、海藻
オゴノリ、哺乳類の肝臓やキノコ類などに存
在することが報告されており、日本澱粉工業
は大学との研究に平成9年度から参画して、
地域先導研究、平成 14∼16 年度都市エリア
産学官連携促進事業、平成 17∼18 年度地域
新生コンソーシアム研究開発事業に取り組ん
だ。1,5-AF は、微生物には生育の抑制を、
ヒトには健康に資する生理機能を持つ理想的
な物質で、抗菌性、抗酸化性、高いメイラー
ド反応性など多様な機能を有することを見い
だした。一連の研究を通して、サツマ芋やト
図1 新規糖質 1,5-AF
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
ウモロコシ由来のでんぷんから 1,5-AF を工業的に生産する方法を確立す
ることができ、実用化を可能にした。また、この研究を通して、企業の研
究生1人が博士号を取得した。
◆コア技術
1,5-AF は新規な糖質であり、世界のどこにおいてもいまだ市販されて
いなかった。地域先導研究を手始めに、この糖質の機能解析を進め、ヒト
血小板凝集を抑制する効果や抗蝕性が見いだされ、健康を増進する機能を
持つことを明らかにした。また、いくつかの病原性の微生物に対してはそ
の増殖抑制効果を見いだした。1,5-AF の製造については、酵素(グルカ
ンリアーゼ)を有する海藻オゴノリを選別し、それをでんぷんに作用させ
ることによって 1,5-AF を製造する方法を見いだし、パイロットスケール
では、純度 40%の標品を、スモールスケールでは 98.5%以上の高純度の
標品を調製する方法を確立した。
そ の 後、1,5-AF の 工 業 的 生 産 方 法 に つ い て 検 討 し、 含 有 量 40 %、
85%、および 95%の製品を製造する条件を見いだした。噴霧乾燥や凍結
乾燥による粉末化も可能となった。
1,5-AF は、リノール酸の酸化に対して強い抗酸化活性を示した。また、
主にグラム陽性菌、中でも乳酸菌に対して弱い抗菌作用を示した。従って、
種々の食品の品質向上剤としての広い用途が期待される。ビタミン C よ
り高い高酸化活性を有することで、食品のおいしさに貢献できる。
1,5-AF の安全性について、地域新生コンソーシアム研究開発事業「安心・
安全の抗菌素材の開発」 のテーマで取り組んだ。被検動物としてカニクイ
ザルを用い、食品に利用される場合に予想される 1,5-AF の摂取量の数十
倍に値する高容量、91 日間にも及ぶ長期間の連続経口投与での安全性試
験を実施した。その結果、1,5-AF 投与による異常な所見は全く認められ
なかった。以上の結果から 1,5-AF は高機能性で、食品成分から生まれる
安心・安全な抗菌剤であることを確認した。
◆開発した製品
日本澱粉工業は世界で初めて 1,5-AF を主成分とする製品
を量産化した。平成 19 年には 1,5-AF を含有する水飴を商
品名 「アンヒドロース」(写真1)として販売を開始した。
「アンヒドロース」は、まろやかな甘味と苦味を持ち、抗
酸化性や高い保湿性を有し、現在は中華麺や果物加工品の色
調安定、食品の味質や風味向上の目的で利用されている。
◆展望
サツマ芋でんぷんは、地域の基幹産業であり、地域の期待
写真1 販売商品「アンヒドロース」
が大きく、県庁や財団法人かごしま産業支援センターの支援
が得やすかった。鹿児島大学の産学官連携推進機構の建物内には、かごし
ま産業支援センター産学官連携課と株式会社鹿児島 TLO が入居し、大学
と密接に連携した活動を行っている。研究成果を事業化するためには生産
体制・市場開拓・販売体制・資金調達等、企業にとって多くの課題があっ
たが、事業を成功させるとの企業の強い思いと地域の支援の下、約 10 年
間にわたり忍耐強く事業を継続して課題を乗り越えられたことが成功につ
ながった。
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
産学連携で生まれた調湿木炭「炭八」
エアコン使用電力減少の効果を確認 住宅の天井や床下に木炭を敷設して、家の中の湿度を調節できないか――こんなアイデ
アから地元企業が島根大学と連携して開発した調湿木炭について、事業化後も大学と共
同でその利用方法などについて調査を続けてきた結果、大きな省エネ効果があることが
分かった。新しい産学連携の在り方である。
◆はじめに
住宅や住環境の改善につながるようにと 10 年近く前から島根大学と地
北村 寿宏
元企業・出雲土建株式会社が共同で開発を進めてきた調湿木炭「炭八」に、 (きたむら・としひろ)
調湿効果以外にもさまざまな効果があることが分かってきている。その中 島根大学 産学連携センター 教授
関西・中四国支
で、調湿木炭を天井や床下に敷設することにより、エアコンの節電効果が /産学連携学会
部代表
期待できることが明らかになり注目を浴びている。
◆開発のきっかけから商品化まで
調湿木炭「炭八」*1 が生まれた大きなきっかけは産学官連携である。島
根県出雲市にある土木建設業を主な事業とする出雲土建が、島根大学や島
根県などと連携して開発に取り組み事業化に至った。
出雲土建は平成 12 年ごろ、建設業の先細りを見通し、不要な木材を木
炭としてリサイクルする事業を新規に立ち上げることを決めた。木炭を調
湿材として利用するため、調湿性能に優れた木炭の製造技術の確立、木炭
の性能評価、さらには木炭を調湿材として利用したときの効果の検証が必
要となり、大学や公的機関の研究所と連携してこれを進め、調湿木炭「炭
八」の開発に成功した。
当初は住宅の床下調湿材として「炭八」を製造販売したが、ユーザーか
らのアンケート結果に基づき、室内用の調湿木炭とその利用方法について
の開発を進めた。室内用の調湿木炭「炭八」の効果を調査し、室内の温湿
度の変化が穏やかになること、カビやダニの数が減少すること、アトピー
性皮膚炎や小児ぜんそくが改善されること、階上からの音が軽減されるこ
と等を明らかにするとともに、効果をもたらすメカニズムの解明を進めた。
一連の開発においては幅広い分野の専門家を必要としたが、産学官連携を
効果的に活用し解決した。島根大学では総合理工学部、医学部、産学連携
センターに在席する6名の教員が共同研究を実施した。
これらの研究成果を元に、平成 16 年に調湿木炭「炭八」を天井や床下
に入れた賃貸マンション「炭の家」の提案を行い、現在までの8年間に島
根県出雲市を中心に施工している。受注額は約 45 億円に上り出雲土建の
新たな事業に成長している。
*1:「炭八」ホームページ
http://www.sumi8.jp/
◆調湿木炭「炭八」の省エネ効果の実証
このような開発を続ける中で、調湿木炭「炭八」を住宅の天井裏や床下
に敷設することでエアコンの電力使用量を大幅に削減できることを明らか
にした。これも、ユーザーが「炭の家に暮らしてからは、夏場にこれまで
のアパートよりも涼しく感じる。エアコンをあまり使わなくなった」とい
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
う声を聞いたのがきっかけである。
出雲土建は島根大学と共同研究を行い、島根県出
雲市内のマンションを利用して ①床下と天井に炭
八を敷設した部屋(写真1)と ②全く敷設しない
通常の部屋とを設けて、それぞれエアコンを 20℃
に設定し冷房状態で連続運転させその消費電力を比
較した(測定は 2011 年6月に実施)。
写真2に示すように、部屋を閉め切ってエアコン
を連続運転し、外気と室内の気温と湿度、エアコン
の消費電力を所定の時間ごとに測定し記録した。エ
アコンの消費電力の経時変化を図1に示した。この
図に示すように、エアコンの消費電力は、測定した
全期間において木炭を敷設した部屋の方が通常の部屋よりも低
く推移していることが分かる。エアコンの消費電力量は、木炭
を敷設した部屋では敷設しなかった部屋に比べ、測定した期間
の日ごとの平均で約 24%少なく、天井や床に木炭を敷設する
ことによりエアコンの消費電力が節電でき省エネに貢献できる
ことが分かった。これは、調湿木炭「炭八」の断熱・蓄熱効果
が大きな要因と推測されているが、現在、その原因について解
明を進めている。
写真1 天井用の調湿木炭「炭八」
◆事業の展開には継続的な連携が必要
出雲土建は一連の事業を行うにあたり、木炭の製造を行う新
会社、出雲カーボン株式会社を設立し連携しながら進めている。
両社の事業は、床下用調湿木炭「炭八」の製造・販売、天井用
調湿木炭「炭八」の製造、賃貸用マンション「炭の家」の受注・
施工と展開していった。特に、開発した木炭を活用した賃貸用
マンションの提案という出雲土建の本業である建設業に展開し
たところが大きなポイントであろう。中小企業が事業の多角化
写真2 エアコンの消費電力の測定風景
を目指すに当たって、新規事業を単独で軌道に乗せ
ることも重要であるが、全体を成長させるために新
規事業と本業との連携を行うことも大きな選択肢で
あることが示された。
この事例では、10 年を超えて継続的に大学など
との共同研究を実施し、製品や用途の開発を続けて
いる。このように継続的に産学官連携を実施し、実
用化に結び付けて行くためには、企業側が主体的に
行動し、学側をリードしていくことが有効であった
と考えられる。この事例は、企業側のニーズを明確
にし、その解決と製品の性能や効果の検証を学側で
進めていくことが、産学官連携が有効に機能する1
図1 エアコンの消費電力の推移
つのパターンであることを実証している。
(木炭を敷設した部屋と敷設しなかった部屋の比較)
大学側では、地元産業の活性化への貢献や共同研
究の成果が多くの論文や学会発表につながっただけ
でなく、研究とは異なる開発に携わることができ、研究分野の広がりのきっ
かけとなるなどいろいろな面でメリットがあった。
今後もこの調湿木炭「炭八」の開発が産学官連携で続き、新たな展開が
生まれることを期待している。
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
厚物合板の研究開発戦略
建築物の構造用合板の市場で、厚さ 24 ミリ以上の製品(厚物合板)の生産量が急速に
増えている。利用方法等の研究が進んだことが背景だ。戦後、大量に植林したスギを合
板の材料に使用することができるようになった。
共著
渋沢 龍也
(しぶさわ・たつや)
独立行政法人森林総合研究所
厚物構造用合板研究グループ
◆はじめに
合板(ごうはん)とは、丸太をかつらむきした単板(たんぱん)の繊維方
向を互いに直交させて積層・接着した板状の材料であり(図1)、建築用途や
家具等に広く使用されている。特に建築物の構造耐力上主要な部分に使用さ
れるものを構造用合板と呼ぶ。これまで一般には厚さ 12 ミリの製品が使用
されることが多かったが、森林総合研究所(以下、森林総研)は、東京合板
工業組合・東北合板工業組合、秋田県立大学木材高度加工研究所と共同で、
厚さ 24 ミリ以上の合板(厚物合板)によって木造住宅の性能向上、国産針
葉樹材の需要拡大に資するための一連の技術開発を行った。この研究開発の
成果により、厚物合板を直接床はりに接合することで床根太を省略する工法
が急速に普及し(図2)、これと並行して厚物合板の市場が急拡大している。
青木 謙治
(あおき・けんじ)
独立行政法人森林総合研究所
厚物構造用合板研究グループ
杉本 健一
(すぎもと・けんいち)
独立行政法人森林総合研究所
厚物構造用合板研究グループ
原田 寿郎
(はらだ・としろう)
独立行政法人森林総合研究所
厚物構造用合板研究グループ
◆産学官連携の特徴
著者らのグループが行った一連の技術開発は以下のようなものである。
1.森林総研と東京合板工業組合・東北合板工業組合は連携
して、厚物合板の製造技術・断面性能算定法を開発し、
国産針葉樹材を用いた厚物合板を実用化した。従来、合
板の材料となる樹木は、輸入材(丸太)
、特にラワンな
どに代表される南洋材が中心であった。戦後、大量に植
林されたスギなどの針葉樹材は合板には使用されてこな
かった。
2.床下地材に、厚さ 24 ミリ以上の厚物合板の高い強度性
能を活用することで床根太を不要とし、木造住宅の施工
の合理化・工期の短縮を可能とした。同工法は床の面内
剛性を高め、鉛直荷重に対するたわみを減少させる効果
がある。
図1 原料単板と合板
3.さらに秋田県立大学木材高度加工研究所と連携し、厚物
合板を用いた耐震・耐火性能の高い工法の提案、各種実
験データの整備、国土交通大臣認定の取得により、木造
住宅の性能向上に寄与した。
4.得られた成果を技術的資料に取りまとめた。一般社会へ
の普及促進に努め、国産材の需要拡大に大きく貢献した。
間伐などで出てくる国産針葉樹材を合板に使用するよう
になった意義が大きい。
厚物合板の研究開発に連携した機関は、静岡大学、岩手県
林業技術センター、宮城県林業試験場、株式会社一条工務店、
三井ホーム株式会社、株式会社ポラス暮し科学研究所、独立
図2 構造用合板の施工例
http://sangakukan.jp/journal/
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
行政法人建築研究所、熊本県林業研究指導所、島根県産業技術センターである。
これらの連携体制の確立により、厚物合板の強度性能データベースが作成可
能となった。
厚物合板の製造・利用技術については特許等の知的所有権として専有せず、
厚物合板の生産を希望する各地域の合板メーカーに開示することで、わが国
全体の利益となるよう配慮している。
◆研究開発の背景と要素技術
厚物合板の急速な普及の背景には、技術的資料が充実していることが挙げ
られる。当初は同工法を採用した建築物の確認申請時には技術的資料の提出
が不可欠であったが、現在では、施工実績の増加に伴い、住宅金融公庫の工
事仕様書に火打ち梁を省略する場合の施工方法として採用されるに至ってい
る。厚物合板に関する技術開発の進捗を時系列で述べると以下の通りである。
・1990 年代、業界では、優良な南洋材の枯渇問題に対応するため、針葉樹
材を用いた合板を試作した。しかし、十分な性能が得られず、厚物化を模
索したが、単純に単板の数や厚さを増加しても強度性能は向上せず問題と
なっていた。
・1999 年、森林総研は業界からの要請を受け、当時の製品実態を多量の実
大実験により数値化し、原料単板の樹種と断面構成から製品性能をシミュ
レーションする手法を開発した。
・2000 年、シミュレーションに基づく製法でプロトタイプ品が完成。JAS 規
格への適合性など、性能検証を繰り返し、翌年国産材を用いた厚物合板の
製品開発に成功した。
・2003 年、釘接合性能や集中荷重抵抗性試験等により床構面の性能を実証し、
床根太を省略した合理的施工方法を確立した。住宅金融公庫の仕様書に採
用される。
・2006 年、床構面で 45 分準耐火構造の認定を取得した。
・2008 年、壁構面における耐震性能について、倍率 5.0(建築基準法上の最
高値)の国土交通大臣認定を取得した。
・2009 年、さらなる需要量拡大を目指し、枠組壁工法(ツーバイフォー)
住宅へ対応する技術を開発した。
・2010 年、工業的に生産されている厚物合板全種類の強度性能データベー
スを作成した。バリアフリー仕様の床構面、屋根構面への利用方法を開発
した。
これらの成果を技術的資料として出版・公開し、厚物合板の利用技術を普
及啓蒙(けいもう)している。
厚物合板の製法・製品に関する特許は1件のみであるが、利
用方法については、国土交通大臣認定(建築基準法で要求され
る安全性能の確認・認証制度)を耐震性能7件、耐火性能8件、
合計 15 件取得している。
◆産業への貢献
生産直後の 2001 年には約9万立方メートルであった生産量
が、2010 年には約 55 万立方メートルと大きく増加しており、
2010 年までの累積総生産実績は 350 万立方メートル(2001
年∼2010 年累計)にのぼっている(図3)。特筆すべき点とし
て、スギ・アカマツ・カラマツ等の国産針葉樹材の使用量が挙
げられる。2010 年には、厚物合板全体の 85.2%が国産材を使
用(国産材原木使用量 160 万立方メートル)し、国産材の需要
拡大に大きく寄与している。
図3 厚物合板生産量と国産材使用率
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産学官連携ジャーナル Vol.8 No.2 2012
明確な課題設定と
共通認識が必要
★東日本大震災以降、産学官連携の内容が大きく変わった感があります。特に「学」
が保有している知見、技術のポテンシャルを積極的に被災地の復旧・復興に役立
てようとする機運が高まりました。外部資金獲得ではなくて、国や地域の課題解
決が主目的になってきたように見受けられます。限られた資源と時間の中では明
確な課題設定と取り組む人たちの共通認識が優れた成果につながります。今月号
は福島関連特集ですが、産学官連携の成果が復興に寄与し、イノベーション創出
(編集委員長・高橋 富男)
につながることを期待したいです。
★社内の風通しがよく若い社員らが伸び伸びと働いている企業は、社長の命令の
下に事を運ぶ企業より底力がある。中小企業の場合、ワンマン社長が多いのでな
かなか理想通りには行かない。良くも悪くも局所戦闘を指揮する社長の知恵、胆
力、気力を含む全人格が企業経営を形作っている。しかし、若手の声や社内の異
論にも耳を傾け、時に、社長が自らの言説を顧みるくらいの懐の深さが、長い目
で見て、企業を強くするのではないだろうか。間もなく大震災から1年が経つ。
事故を起こした原発を含め多くの課題が残る。研究の世界や産学官連携の場面は
もとより、広く国民と意見を交わし意思疎通を図ることが、地域の活性化や安全
(編集委員・間野 純一)
性をより高めるために必要だろう。
大学の真価問
われる復興
安全な社会は
意思疎通から
★東日本大震災からもうすぐ1年。津波・原発事故被災者の悲しみは癒えず、怒
りは鎮まらないが、それでも皆、除染など山積している課題に立ち向かっている。
新年度は復興に向けた多くの大型産学官連携プロジェクトが展開される。従来と
は異なる姿勢が求められる。研究開発の成果を出し、それを企業が事業化して世
の中に送り出し、被災地復興に寄与する――ここまで到達して初めて「成功」と
されるからだ。科学技術、大学の真価が問われる場面でもある。原発用ロボット
を開発するなら、防衛省や消防庁へ配置し、操作を日常的に訓練し、緊急時に投
入できる運用体制を整備することが不可欠と、小誌 2011 年8月号で小 栄次先
生が主張したことを、日本経団連も言っている。
(編集長・登坂 和洋)
2012年2月15日発行
編集・発行:
独立行政法人 科学技術振興機構(JST)
イノベーション推進本部 産学連携展開部
産学連携担当
PRINT
ISSN 2186−2621
ONLINE ISSN 1880−4128
編集責任者:
高橋 富男 東北大学 高度イノベーション博士
産学官連携ジャーナル(月刊)
2012年2月号
Copyright ©2005 JST. All Rights Reserved.
人財育成センター
シニアエキスパート
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問合せ先:
JST産学連携担当 菊地、登坂
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