第3章 野 生 動 物

第3章
第1節
野
生
動
物
野生動物の現状
県内の野生動物の生息状況については、 昭和 40 年代以降になって観察記録の蓄積や生息調査が行
われるようになった。
本県では、 県土の約 3 分の 1 を鳥獣保護区その他の狩猟等規制区域に設定して野生鳥獣の保護を図っ
ているが、 その生息状況については不明な点も多い。
なお、 カモシカ、 オオサンショウウオ (ともに国指定特別天然記念物) をはじめ、 23 件の天然記
念物が指定され、 環境省の自然環境保全基礎調査による貴重な昆虫類 (指標昆虫・特定昆虫類) 105
種が指定されている。 また奈良県版レッドデータブック脊椎動物編においては、 本県で生息が確認さ
れている 434 種のうち、 158 種が希少性を観点に認定したカテゴリーに位置づけられている。
第1
獣
類
本県では、 サル、 ツキノワグマ、 カモシカ、 イノシシ、 ニホンジカ、 タヌキ、 ムササビ、 キツネ、
ヤマネ等の哺乳類が確認されており、 ヤマネ、 ツキノワグマ、 カモシカは吉野郡等の森林地域に生息
し、 カモシカについてはその生息域が広がりつつある。 サル、 ニホンジカは、 吉野郡及び宇陀郡を中
心に生息しており、 ニホンジカについては個体数が増加することによりその生息域がひろがりつつあ
る。 その他、 イノシシ、 タヌキ、 キツネ等は県下の広い範囲に生息している。
また、 奈良公園一帯には、 「奈良のシカ」 (国指定天然記念物) が生息している。
その他、 平成 17 年度の狩猟登録者 (1,755 件) によって捕獲された主な狩猟獣は、 シカ、 イノシ
シ、 ノウサギ、 タヌキ等となっている。
第2
鳥
類
本県で現在までに確認された野鳥は、 留鳥 64 種、 夏鳥 40 種、 冬鳥 61 種及び 4 亜種、 旅鳥 27 種、
その他 37 種となっている。
昭和 46 年度から実施しているガンカモ科鳥類の生息調査では、 ガンカモ科鳥類の生息数は増加傾
向で平成 3 年度には 1 万羽を超え、 平成 13 年度から平成 17 年度の 5 ヶ年間は 18,000∼20,000 羽で
推移している。 平成 17 年度のガンカモ科鳥類の生息数は 15 種類・19,387 羽で、 その 90 %以上はマ
ガモ (5,649 羽)、 コガモ (5,729 羽)、 オシドリ (2,620 羽)、 カルガモ (1,812 羽)、 ヒドリガモ (1,492
羽)、 ハシビロガモ (1,293 羽) の 6 種類で占められていた。 生息地は王寺町大和川 (1,502 羽)、 十
津川村二津野ダム (1,474 羽)、 大和郡山市佐保川 (838 羽)、 奈良市水上池 (782 羽)、 広陵町・河合
町上池 (763 羽) など県内各地の古墳、 ため池、 ダム湖、 河川の調査を行った 118ヵ所のうち 100 ヵ
所であった。
また、 平成 17 年度の狩猟登録者 (1,755 件) によって捕獲された主な狩猟鳥は、 オスキジ、 オス
ヤマドリ、 コジュケイ、 カモ類、 キジバト、 スズメ類、 カラス類、 ヒヨドリ等となっている。
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野
生
動
物
第3
その他の生物
昆虫類は、 若草山一帯や県南東部の山岳地帯などに数多く生息しており、 全国的にも珍しい種も多
くみられる。
その他、 河川・水辺には、 数多くの水生生物やイワナなどの淡水魚類が生息している。
第2節
野生動物の保護対策
野生鳥獣については、 「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」 (以下 「鳥獣保護法」 という。)
に基づく鳥獣保護事業計画を策定して、 保護を図っている。 中でも、 野生鳥獣の保護の重要な拠点と
なる鳥獣保護区は、 第 9 次鳥獣保護事業計画 (平成 14 年度∼平成 18 年度) に基づいて既設保護区の
内容充実を図るとともに、 必要と認められる地域については設定期間を更新した。 その結果、 第 9 次
現在における鳥獣保護区は 23ヶ所、 39,763 ha (県土の 10.8 %) である。
鳥獣保護法に基づく狩猟等規制区域の区分は、 表 2−3−1 のとおりである。
県では、 野生動物の保護のため、 各種の調査を実施して、 生息状況の把握に努めている。 また、 野
生生物保護モデル校の指定、 野鳥観察会の開催、 愛鳥週間行事等により野生動物保護活動の啓発を図っ
ている。
なお、 これらの保護対策の実施によって野生動物の保護が図られているが、 一面では農林業に被害
を与える野生動物の増加も避けられず、 対策を講じている。
本県の代表的な産業である農林業との調整を図りながら、 野生動物の生息環境としての森林を保全
するとともに、 都市部や集落地の貴重な生息環境である公園緑地や社寺林などの整備・保全が重要な
課題となっている。
表 2−3−1
鳥獣保護のための規制区域の区分
区
鳥
分
概
要
区
鳥獣の保護繁殖を図る地区であり、 国又は都道府県が、 区域内の土
地又は立木竹に鳥獣の生育や繁殖に必要な営巣、 給水、 給餌等の施
設を設けることができる。
特 別 保 護 地 区
鳥獣保護区のうち、 鳥獣の生育や繁殖を図るため、 特に保護が必要
な地区であり、 保護繁殖に影響を与えるような水面埋立、 立木竹伐
採、 工作物設置等の行為に許可制を採っている。
獣
保
休
護
猟
区
一定の地域において、 狩猟鳥獣が減少し、 その増加を図るために、
3 年以内の期間を定めて設定される区域。
銃
猟
禁
止
区
域
危険予防等のため、 銃猟を禁止する区域。
銃
猟
制
限
区
域
危険予防等のため、 知事の承認がなければ銃猟ができない区域。
鉛 散 弾 規 制 地 域
水鳥の中毒事故を防止するため、 鉛散弾による狩猟を規制した地域。
その他の鳥獣捕獲禁止区域
公道・自然公園法第 14 条 1 項の特別保護地区・都市公園・原生自
然環境保全地域・社寺境内・墓地は、 自然環境の保全・危険予防・
社会秩序の維持などの観点から捕獲等は一般的に禁止される。
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