レンタル市場 2 月度レポート

K INEMA JUNPO R ESEARCH
【
パ
ッ
ケ
ー
ジ
ソ
フ
ト
】
レンタル市場
2 月度レポート
< 2 0 1 2 年 3 月 1 3 日>
意外性よりも安心感?
フランチャイズムービーが上位を独占
I NSTITUTE
K INEMA JUNPO R ESEARCH
【 パ ッ ケ ー ジ ソ フ ト 】
I NSTITUTE
レンタル市場
2 月度レポート
【ランキング/上位 4 作品をフランチャイズムービーが独占】
2 月度のレンタルランキング 1 位は『ワイルド・スピード MEGA MAX』。前作に続いてオリジナ
ルメンバーのヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーが揃い踏み。興収 15 億円と、5 作目にし
てシリーズ最高の成績を収めた大ヒット作がレンタルランキングでも初の首位を獲得。ちなみに、
過去 4 作のレンタルランキングは、『ワイルド・スピード』7 位、『〜 X2』4 位、『〜 X3 TOKYO
DRIFT』4位、
『〜 MAX』4位と、これまでベスト3に入ったことがなかった。レンタル向きの作品で、
高回転が約束されたシリーズというイメージがあっただけにやや意外に感じられるが、それは、
今回の大ヒットで過去作の印象までよい方に変化したためかもしれない。2 位は『猿の惑星:創世
記(ジェネシス)』。興収 30 億円と『ワイルド・スピード〜』を凌ぐ超大作だが、発売が 2 月 22 日
と集計期間が短いため今月は一歩及ばなかった。前作の『PLANET OF THE APES/ 猿の惑星』
は同時期リリースの『ハムナプトラ』
『パールハーバー』などに阻まれ、最高順位は 2 位。次月、首
位奪取の可能性が高いだけに期待がかかる。3位に食い込んだのは『ファイナル・デッドブリッジ』。
人気ホラー『ファイナル・デスティネーション』シリーズの最新作で、興収は約 1.3 億円。過去の
シリーズでは 2010 年の『ファイナル・デッドサーキット』の 10 位が最高。見事にシリーズ最高
位を更新した。4 位の『トランス・フォーマー/ダークサイド・ムーン』も含めて、上位の 4 作品は
すべて前作があるフランチャイズムービーで、いずれも過去最高位をマークしている(『猿の惑星:
創世記(ジェネシス)』だけは、“ 見込み ” であり、リメイク後の過去作は 1 作だけなのでシリーズ
とは言いにくいが)。ランキングは作品そのものの強さのほか、同時期リリースの競合作品に左右
されるので一概には言えないが、ユーザーにとって「よく知っていて安心感のある」作品が上位を
占めたことは事実。
全国的にレンタル料金が下落している中、新作の料金は旧作ほど安価にはなっておらず、特に
ランキング上位に入る最新作の料金は高止まりしていると言ってよい。経済的な不安感の中、比
較的高額な最新作をレンタルするのに、意外性よりも安心感が望まれていると言う見方もできる
だろう。であれば、こうしたフランチャイズムービー以外の作品に必要なのは、安心して借りて
もらえるための作品情報の提供ということになる。各店の推薦作品の選択と店頭プロモーション
は重要性を増していると考えてよい。かつて横行した「ジャケットだけが良い」作品や、「出演時
間の短い」大物キャストが売り物の作品などは、“ 知っていて楽しめる ” ユーザーに、本当に「観て
後悔しない」作品はすべてのユーザーにと、区別して情報提供する店頭オペレーションが重要に
なるだろう。その分、オペレーションコストはかさむことになるだろうが…。
ランキングに戻ると、5 位には前月から 2 ランクダウンの『サンクタム』。6 位は初登場で、邦画
ではトップとなる『うさぎドロップ』
。宇仁田ゆみ原作の人気コミックを、『蟹工船』の SABU 監
督が映画化。ひょんなことから一緒に暮らすことになった 6 歳の少女と 27 歳・彼女なし独身サラ
リーマンとの共同生活を、芦田愛菜と松山ケンイチの共演で描いたハートウォーミング・ドラマだ。
その他、初登場の作品は 10 位の『探偵は BAR にいる』。宣伝は決して派手ではなかったが、堅実
な戦略で興収 12 億円を稼ぎだした作品。レンタルでもいいポジションをキープしている。続く
11位はワーナーが手掛けた韓国映画『アジョシ』。
『母なる証明』のウォンビン主演によるアクショ
ンで、
大方の店舗で「予想を上回る」高回転を続けている。12位には『コンテイジョン』。
『オーシャ
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ンズ 13』のスティーブン・ソダーバーグ監督がマット・デイモン、ジュード・ロウほか豪華キャス
ト共演で描くパニックスリラーで、興収は 3.5 億円だった。17 位には『キャプテン・アメリカ/ザ・
ファースト・アベンジャー』が、ランク外だが 21 位にも『鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星』が
初登場している。
【2 月度市況/今月も結果は競合状況次第】
まずは今月も上場各社の状況から、既存店ベースの売上前年比で見ていこう。ウェアハウスは
96.4%、三洋堂は 95%、トップカルチャーは 86.6%、ゲオは既存店合計で 86.2%と発表して
いる。この中で、トップカルチャーは「映像部門において単価改定」したことでマイナスを生じ
たとコメントしており、値下げによる売上ダウンが大きかったことが伺える。また、ゲオは今月
もレンタルについてのコメントはなく TV ゲームの「人気タイトルの発売が少なく、さらに前年は
3DS の発売月であったことが影響し」マイナスしたとコメントしている。その他、非上場の一般
店は 90%前後の実績というチェーンが多いが、前月レポートした「料金競争が激しい店舗の業績
は悪く、激しくない店舗は好調」という状況に変化はなく、競合状況が実績の違いに直結してい
る。このことは、2 月に相次いで発表された上場各社の四半期報告にも表れている。例えば三洋堂
は 2011 年 10 〜 12 月のレンタル実績に関して「DVD の貸出上限枚数アップによる利便性の向上
や、DVD の高回転商品の補充、韓流売場の拡大などが一定の効果をあげ」たとする一方で「話題
作の牽引も及ばず、また競合他社との低価格競争が継続していることもあり、厳しい状況」となっ
たと総括している。また、トップカルチャーは「レンタルは映像部門において単価の引き下げを
進めたことにより、売上高は減少いたしましたが、売上点数は既存店前年比で増加傾向」と総括
(2011 年 11 月〜 2012 年 1 月)
。これは「値下げして貸出枚数は増えたものの、値引による貸出
単価ダウンを補うほどではなく、結果的に売上が減少した」という意味であり、現在、多くのレ
ンタル店が陥っている苦境である。
一方、値下げをしても商品量を十分に増やすことができれば、貸出数が値下げ率を上回ること
が可能になる。こうした傾向にあるのが比較的堅調に推移しているウェアハウスだ。昨年 10 〜
12 月の四半期に関して「親会社である株式会社ゲオからの商品調達により仕入数増強が図れ DVD
レンタルが好調に推移」とまとめている。
こうした中、若干ではあるが客単価の上昇に成功しつつある店舗も見られるようになってきた。
そのひとつが、ライト層にターゲットを絞り、この層が主に利用する料金帯を値上げするという
策だ。ライト層は来店頻度が低く、一度にレンタルする枚数も少ないため、借りる側の値上げの
インパクトが薄い。同時にミドル、ヘビー層には “ セット割引 ” を充実させて、1 回あたりのレン
タル枚数を増す。たくさんの映画やテレビドラマを視聴する彼らにとっては 1 枚あたりのレンタ
ル単価が重要であり、むしろ、一度にたくさん借りて帰れるセット施策は大歓迎だ。「全品 50 円 !」
というような乱暴な料金施策には対抗しえないが、比較的料金競争が緩い地域であれば、こうし
た細かい料金改定は有効だろう。今後も、こうした打開策が出てくることに期待したい。
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