レンタル市場 7 月度レポート

K INEMA JUNPO R ESEARCH
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7 月度レポート
『借りぐらしのアリエッティ』が堂々の首位。
トップ 10 中に最新作はわずか 3 作品
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【ランキング上位作品】
今月、レンタルランキングで首位を獲得したのは『借りぐらしのアリエッティ(147.3 回)』。
リリースが 6 月 17 日だったため、集計期間が半月弱に限られた前月は惜しくも 2 位に留まったが、
フル集計となった今月は順当にトップに立った。続く 2 位は、7 月 6 日リリースの『ナルニア国物
語/第 3 章:アスラン王と魔法の島(120.6 回)』。前作まで、配給、DVD リリースともウォルト・
ディズニー社が担っていたが、今作はいずれも 20 世紀フォックス社に。前作と比べると、興行収
入は 30 億円と増減がないが、レンタルランキングでは前作の最高順位である 6 位を大きく上回っ
た。同時期にリリースされた対抗タイトルが違うので単純な比較はできないが、20 世紀フォッ
クス社にとっては好結果といえるだろう。3 位に食い込んだのは 6 月 24 日リリースの『SPACE
BATTLESHIP ヤマト(114.9 回)
』
。2010 年末に公開された、興行収入 40 億円を超える超大作
だが、レンタル店への導入単価が高めに設定される東宝作品のため店頭に並ぶ枚数が少なくなり
がち。その分、新作期間の貸出数が伸びにくいのだが、そうした不利ををはねのけ見事にトップ
3 入りを果たした。
※カッコ内、1 店あたりレンタル回転数
【トップ 10 中の最新作は、わずか 3 作品】
前述したランキング上位 3 作品のうち、2 作品が前月リリース作品だが、4 位以下も 6 月以前に
リリースされた作品が目立ち、ベスト 10 中、7 月リリースの最新作はわずか 3 タイトルだった。
2010 年の 7 月度も同様で、ベスト 10 のうち、最新作は 4 タイトルにすぎない。因みに 2009 年
は 7 タイトル、2008 年は 8 タイトルが最新作なので、ランキング上位に当月リリース作品があま
り入らなくなったのは、最近 2 年間の傾向と捉えることができる。このように書くと、大作映画
のリリースが少なくなったように思えるが、そうではなく、実は、海外 TV ドラマの低調が要因に
なっている。
2009 年 7 月度には『24 − TWENTY FOUR −シーズンⅦ』の vol.1 〜 3 の 3 作品が、2008 年
7 月度には『プリズン・ブレイク シーズンⅢ』の vol.1 〜 5 の 5 作品が、それぞれトップ 10 入りを
果たしており、その分、前月までにリリースされた映画作品が押し出されていた。しかし最近の 2
年間、この時期に強力な TV ドラマ作品がリリースされておらず、年間を通して見ても、2010 年
は『24 −TWENTY FOUR− ファイナル・シーズン』がトップ10入りしただけで、他のTVシリー
ズは 15 〜 20 位前後に留まる。ランキング上位の常連だった『24 − TWENTY FOUR −』をはじ
め、
『プリズン・ブレイク』
『LOST』
『HEROES /ヒーローズ』といった超人気シリーズはいずれ
も終了しており、また、後継といえる強力なシリーズが現れていないことを考えると、今後のラ
ンキングも、前月以前のリリース作品が上位に入る傾向は続くと思われる。
【上場各社とローカルチェーン、専業店と複合店に格差】
続いて市況だが、上場各社の売上前年比を見てみると、トップカルチャー 106.5%、シチエ
104.2%、三洋堂書店 101%。ゲオは、レンタルのみの実績は公開していないが「レンタル部門
が好調に推移」と発表。TSUTAYA は 7 月 22 日に上場廃止したためデータが公開されなくなった
が、前年実績を上回り好調という。一方で、他のローカルチェーン各社は前年比 95%前後が多い
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が、競合状況の厳しいエリアでは 90%を割っているところも珍しくない。平均すれば 93 〜 94%
といったところだろう。上場各社とは明確な開きがあるといえる。また、書籍複合店の実績がレ
ンタル専業店に比べて高いという差もあるようだ。
上場各社とローカルチェーンとの格差については後述するとして、まず、書籍複合店が比較的
好調である理由だが、ここにはアダルトの需要低迷が大きく関係している。書籍複合店が、レン
タル専業店に比べて高い前年比をマークするようになってきたのは、ここ 2 〜 3 年のことだが、
それに先駆けて数年前から、若年層のアダルト離れが著しくなっていた。その原因はともかく、
アダルトは高売上かつ高粗利の商材であり、需要の低迷はレンタル店の経営にとって大きな問題
となる。しかし実は、その問題はレンタル専業店には本当に深刻であっても、書籍複合店にとっ
てはそれほどでもない。
「文化を担う」といった意識の強い書店経営者がアダルトを敬遠しがちな
のに加えて、ファミリー客の多い書店は大きなアダルトコーナーを持ちにくい、ということもある。
そうした事情から、元々アダルトに抵抗がなく、大きくコーナー展開していたチェーンを除けば、
一般的に書籍複合系のレンタル店はアダルトのシェアが低い。つまり、書籍複合店は低迷するア
ダルト需要の影響を受けにくいため、専業店に比べてダウン幅を抑えることができるのだ。
さらに近年、書籍複合店の中には、これまで敬遠していて結果的に弱点となっていたアダルト
を徐々に強化するチェーンが増えてきた。レンタル料金を 100 円、50 円まで下げる低価格戦略
の蔓延によって体力を削がれたうえに、長引く経済不況に追い討ちをかけられているのが、現在
のレンタル市場の姿であるだけに、緩やかな方向転換を志向する企業が現れてくるのは自然と
考えてよい。そして、そうした企業の筆頭に挙げられるのが TSUTAYA だ。TSUTAYA は、ア
ダルト作品のジャケットデザインに独自の制限を設けており、過激なデザインのジャケットは、
TSUTAYA 専用で作り直すほどアダルトには慎重な企業だが、数年前から積極的な在庫補強と売
場拡大を進めている。アダルトの需要が減少しているとはいっても、これまで注力していなかっ
たジャンルだけに、補強すれば売場のパワーは増す。弱点を克服した TSUTAYA の売上が伸長し
ているのは当然といえば当然だ。
そして、上場企業として数字を紹介したトップカルチャーは、「蔦屋書店」の屋号を持つ
TSUTAYA の有力 FC で、典型的な書籍複合店。また、三洋堂書店は、その名の通り書店を母体
とする複合店。ゲオやシチエは必ずしも書籍複合店とは言えないが、上場を目指す段階から、ア
ダルトへの取組みには慎重さが要求されていた。こうしたチェーンが巧みにアダルトを強化し、
好成績を残しているのが昨今の市況といえる。書籍複合店がレンタル専業店に比べて優位にある
のと、上場各社とローカルチェーンとの間に明らかな格差が生まれる理由には大きな共通点があ
ると言えるのだ。
※ランキング及びレンタル回転数は、ビデオ・インサイダー・ジャパン調べ
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