韓国系教会の日本における萌芽 ―日本人新来者に関する分析を中心に― 北海道大学大学院 李賢京 アフガニスタンで、韓国人宣教ボランティアグループのメンバーが拉致され、殺害 さ れ た 事 件 ( 以 下 、「 ア フ ガ ン 事 件 」) は 、 未 だ 記 憶 に 新 し い 。 こ の 事 件 に よ っ て 、 韓 国のキリスト教は、世界中の注目を集めることとなった。アフガン事件以降、韓国社 会全体はもちろんのこと、韓国のキリスト教内部においても海外宣教活動への批判や 反 論 が 生 じ 、海 外 宣 教 活 動 の 再 検 討 を 余 儀 な く さ れ て い る 。一 方 、近 年 と く に 聖 霊 派 ・ 福 音 派 と 分 類 さ れ る 韓 国 系 キ リ ス ト 教 教 会 (以 下 、「 韓 国 系 教 会 」)へ の 日 本 人 新 来 者 の 数 が 増 え つ つ あ る 。 そ の 背 景 に は 、 1990 年 代 後 半 か ら 韓 国 国 内 に お け る 信 徒 数 の 増 加 率の鈍化、教会同士の激しい競争、牧師の就職難という「韓国特有の状況」や、日国 内におけるキリスト教人口が少ない、そして「韓流」ブームといった「日本国内の状 況」がうまく絡み合った状況が存在する。 20 世 紀 末 の 日 本 に お け る 聖 霊 派 の 台 頭 は 、 世 界 的 な 聖 霊 運 動 の 高 揚 に 刺 激 さ れ 、 ア メ リ カ や 韓 国 の キ リ ス ト 教 の 働 き が 積 極 的 な 役 割 を 果 た し た [池 上 ,2006]。と り わ け 、 韓国系教会では聖霊体験を最も重視しているが、聖霊のバプテスマなどの体験は、日 本のキリスト教界のなかには深く定着していない。異言をともなう聖霊のバプテスマ を信奉する人々は、他教会から批判を受けたり、社会から異端視されたりすることも ある。結果、日本のキリスト教会に所属している信徒のなかには、無味乾燥な信仰生 活 か ら 生 き 生 き と し た 体 験 が 得 ら れ る 韓 国 系 教 会 へ 移 動 し て い る の で あ る 。ま た 、「 韓 流」ブームから生まれた韓国文化への関心により教会を訪れ、定期的に通う者も出て きたが、彼らは、自らを信者周辺ないしは教会周辺に限定している。これらの人々に 対して、韓国キリスト協会は、宗教性を排除して接近していく伝道方法を展開してい る。つまり、今後、日本における韓国系教会は、一方では聖霊体験という宗教性を前 面に売り出す伝道方法を、もう一方では宗教性を排除し、文化資源を上手く利用した 新たな伝導方法を通して、次第に日本人信徒を獲得していくと予想される。 本発表では近年、日本における韓国系教会(とくに聖霊派・福音派)に携わる‘日 本人新来者’に着目し、彼らを大きく二つのタイプに分類する。その上で、それぞれ のタイプに見合った新たな伝道を展開している韓国系教会の伝道戦略とその要因につ いて分析し、伝道方法の再編成による組織としての韓国系教会という視点から、教会 およびその周辺に加わる日本人信徒の教会組織における位置づけについて考察する。 < 文 献 > 池 上 良 正 , 2006,『 近 代 日 本 の 民 衆 キ リ ス ト 教 ― 初 期 ホ ー リ ネ ス の 宗 教 学 的 研 究 』 東 北 大 学 出 版 会 ./ 柳 東 植 , 1987,『 韓 国 の キ リ ス ト 教 』 東 京 大 学 出 版 会 .
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