『資本論』読書会(2013 年 11 月)の案内 『資本論』読書会(2013 年 11 月

『資本論』読書会(2013 年 11 月)の案内
2013/11/19
K.S.
朝晩の冷え込みの厳しさ、アルプスおろしの風の冷たさに冬到来が近いことを感じるこの頃です。
お互い、風邪など引かぬよう気をつけて、年末までの一カ月余を乗り切りましょう。
10 月読書会は、“常連”の 3 人の参加により、『賃金・価格及び利潤』の第 6-7 章を Yg さんのレジュメと
レポートをもとにじっくり検討しました。「価値」とは何か、その実体は?価値と価格の関係は?など、『資
本論』第 1 巻冒頭の価値論で明らかにされた内容が簡潔且つ多面的に論じられていて、興味深いものでした。
また、労働と労働力の違い、労働力の価値はどのように規定されるかも明らかにされました。Yg さんのレジ
ュメは大変緻密な内容で、分かりやすくまとめられていました。マルクスの見解と同一労働同一賃金のスロ
ーガンとの関係、高齢者介護費と労働力の価値既定など、重要な討論も行われました(討論内容は裏面参照)。3
人だけの参加ではもったいないほどです。
11 月の読書会は、第 4 木曜日の 28 日に開催します。剰余価値がどのように生まれるか、剰余価値と利潤の
関係は?という第 1 巻の中心的内容が簡潔にまとめられています。多くの皆さんの参加を期待しています(下
記案内参照)。
なお、年会費(郵送会員:2000 円、メール会員:1000 円)は、常連の方々には納付していただきましたが、
参加する意思はあるが、仕事の都合などでなかなか参加できないという方は、一度メールまたは tel などでご
連絡ください。
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『資本論』読書会(2013 年 11 月)のご案内
(
『資本論』にいずれ復帰する予定なので、読書会の名称は継続します)
□日時:11 月 28 日(木)、19:00-21:00
□会場:安曇野市豊科交流学習センター「きぼう」、学習室 5
□検討範囲:
『賃金・価格および利潤』
(岩波文庫)の第 8 章~第 11 章(文庫版で 14 頁ほど)
(テキストは、岩波文庫版を使用していますが、他の出版社のものでもかまいません)
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10 月読書会の討論内容
主な討論点は、2 点でした。
(1)賃金制度の基礎上で「賃金の平等」を求めるのは「謬見」であり「きちがいじみた願望」だというマ
ルクスの見解と「同一労働同一賃金」の要求との関係について(第 7 章)
マルクスは言います――「賃金制度の基礎のうえでは、労働力の価値は、他の各商品の価値と同じように
決定される。相異なる種類の労働力は相異なるを有するのだから、・・・それらの労働力は労働市場で相異な
る価格を付せられるに違いない。賃金制度の基礎のうえで平等な報酬または公正な報酬をさえ要求すること
は、奴隷制度の基礎のうえで自由を要求するのと同じである」(岩波文庫、73 頁)。
この見解は、理論上、否定すべくもありません。一方、同一労働同一賃金論は、歴史的には男女同一労働
同一賃金の要求として出てきたものです。同じ労働に従事しながら、パート女性の賃金が(正社員)男性の
賃金の半分程度にしかならないのは不当であるという当然の主張です。これは男女の賃金差別撤廃の要求と
して――現代では正規と非正規の賃金差別撤廃の要求としても――積極的な意義をもっていると言えるでし
ょう。
ただ、労働者はその要求にとどまっていてはならないとマルクスは言うのではないでしょうか。何故なら、
その要求は「賃金制度の基礎のうえでの」要求だからです。労働者はそれにとどまらず賃金制度そのものの
撤廃を目指し、そうした根本的な闘いと同一労働同一賃金要求を結びつけて闘う必要があるというのが正し
い結論ではないでしょうか。マルクスの見解も上記破線部分に重点があると考えられます。
(2)高齢者介護費は労働力の価値規定に入るか(第 7 章)
高齢者を抱える労働者家庭では、介護費は賃金の一部をそれに充当することになる以上、介護費がかさ
めば労働力の生産および再生産は困難になるのですから、介護費も労働力の価値概念に入ると言えるでしょ
う。
しかし、これは事情が違えば異なるでしょう。例えば、社会保障が充実し、高齢者の介護は公的施設が担
うという制度が普及していれば――その介護内容が十全であるかどうかはさておき――、高齢者介護は労働
者個人の負担ではなくなり、その場合には介護費が労働力の価値の一部であるとは言えないことになります。
欧米では子供は結婚すれば独立し、高齢者は介護が必要になれば施設に入所するのが普通というところが多
いようです(介護の充実度では北欧は高いが、その他の国では高くないなど差はあるにしても)。ただ、その
場合でも、十全な介護は賃金制度の基礎上ではおそらく不可能でしょう。何故なら、介護施設が民間経営で
黒字を出すことが至上命令だったり、介護労働者が低賃金で使い捨てられる状況では十分な介護など望むべ
くもないからです。未来の共同社会では、
「労働不能者」(乳幼児や出産前の女性、障害者、高齢者など)は
社会全体によって――十分な配慮と敬意を持って――扶養され、その費用は社会が生み出した富の中から最
初に控除されます。介護従事者も労働に応じた所得を保証されるのであり、そうして初めて介護も十分な内
容を伴ったものとなるでしょう。
(K.S 記)
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