インドネシアにおける コネクティビティの改善に向けて:

インドネシアにおける
コネクティビティの改善に向けて:
より良いインフラ、より良い規制、より良い調整への課題
ヘンリー・サンディー(Henry Sandee)
世界銀行シニア貿易スペシャリスト
【AEPR 第 11 巻 2 号掲載論文の抄訳】
Improving Connectivity in Indonesia: The Challenges of Better Infrastructure, Better
Regulations, and Better Coordination
(インドネシアにおけるコネクティビティの改善に向けて:より良いインフラ、より良い規制、より良い
調整への課題)
コネクティビティ(連結性)は非常に重要だ。まず、コネクティビティは発展の遅れた地域を大きな市
場に結び付ける。家計はより低く安定した価格でモノやサービスにアクセスすることが可能になり、その
結果、貧困が減る。第 2 に、コネクティビティは生産や輸出をより多様にし、付加価値の高い商品をより
競争力が強い商品に育てることを可能にする。問題は、インドネシアにおいては貧しい地域や輸出業者に
コネクティビティを供与できていないことである。
異論のあるところかもしれないが、資源ブーム時期、インドネシアにおいてコネクティビティはそこま
で決定的な問題でなかった。というのも、その時期、資源は発送のコストや時間をあまり気にする必要も
なかったからだ。だがその後、世界は変わった。インドネシアはそれまでのように資源に依存できなくな
り、製造業や製品輸出を再建しなければならない。そのためにも、世界的な製造業のネットワークに参加
するための必須条件となる、洗練されて時間をきちんと守る物流システムが必要だ。
インドネシアに特有の課題
インドネシアは地理的に特徴があり、コネクティビティに関する特有の課題も生じる。島により発展に
は大きな差がある。主な経済活動はジャワ島に集中しており、バリ島やスマトラ島、スラウェシ島やカリ
マンタンは人口や経済活動の拠点がより少ない。このような事情を考慮すると、コネクティビティの課題
は次のように 3 分野にわけると分析しやすい。
まず島内コネクティビティ(intra-island connectivity)で、それぞれの島の中の経済的なつながりに
関するものだ。人口の密集するジャワ島とより人口密度が低いインドネシア東部の地域では、課題も異な
る。ジャワにおいては、輸送業者はジャカルタとスラバヤ地域の工業拠点間の輸送をいかに予定された時
間に沿って実行できるかという課題に直面している。
インドネシア東部の事情は全く異なる。混雑ではなく、インフラ未整備整が、輸送コストを引き上げた
無断複製、無断転載を禁じます
http://www.jcer.or.jp/
り、そもそも配達ができない状況を作り出している。いわゆるヒンターランド(後背地)から地域の港へ
の物資の輸送コストは決定的に重要だ。地方の地域と港湾を結び付け、同時に情報通信技術(ICT)のシ
ステムで物資の保管場所などを管理できるようにすれば、貿易は大いに恩恵を受ける。
次に、島と島の間のコネクティビティ(inter-island connectivity)も大きな課題だ。島と島の間の輸
送の主要手段である船舶航行の運賃の高さと信頼性の低さが、コネクティビティを制約している。その結
果、国の周辺部にある島々では、適切で安定した価格で物を調達することができない。
海上輸送は、予想できない出来事の発生や長い待ち時間によるコスト上昇の影響を受ける。また、帰路
便の問題も大きい。国の東部地域から戻る多くの船は 90%の空きスペースとなっている。目的地で荷物を
受け取る所有者は、荷物の追跡ができなく、それがゆえに多大な在庫を持つことを強いられる。それが輸
送コスト全体を引き上げている。
国際的なコネクティビティ(international connectivity)は、インドネシア産の商品が競争力を持った
価格で海外市場に入っていくことを可能にする。同時に、国内の製造業者や消費者が海外からの材料や製
品を適切価格で入手することを可能にする。資源の輸出と違い、工業製品の輸出にとって重要なのは、国
際的な物流コストだけでなはない。配達の予測可能性も決定的に重要だ。
政府はこれまでに多くのコネクティビティの戦略や青写真を示してきたが、多くはうまく行っていない。
実施に必要な財政的な裏づけを欠いたなどの理由による。国家計画局や調整省は必要な行動を取るのに十
分な政治的な力を持っていない。
コネクティビティ改善が進まない理由
ハード面のインフラ:
インドネシアのハードなインフラへの投資水準は低く、これが様々な問題を引
き起こしている。輸送分野でのインフラ投資は回復してきたが、民間部門の参加は低調だ。
規制:
物流業界は急速に高まっている顧客の要望に応えようと努めているが、規制が細分化されてい
たり融通性を欠いていたりするため広範なサービスを提供できていない。トラック輸送と電子商取引(e
コマース)サービスを同時に行いたいと希望する輸送業者は、2 つの省庁から 3 つの免許を得なければな
らなく、しかもすべてを 1 年ごとに更新する必要がある。政府のコネクティビティ戦略は複数分野にまた
がる免許の導入を求めているが、進捗は遅い。
政策の実行:
ハード面のインフラはソフト面のインフラが伴って初めてうまく行く。しかしながら、
ソフト面でのインフラの実施は極めて低調だ。例えば、ジャカルタの新しいコンテナ港のオペレーターに
なる事業者たちは、いまだにタイムリーにコンテナを発送するためのソフト面でのインフラを導入する方
法を調整中だ。17 あまりの関係機関との調整が必要なためだ。
政府内部での調整
無断複製、無断転載を禁じます
4 番目の問題は、政府の省庁間の調整だ。コネクティビティ戦略や物流の青写真に
http://www.jcer.or.jp/
関する規程はあるが、物事の核心となり議論を生むような分野については明確になっていない。
より良いコネクティビティに向けた新戦略
インドネシアは製造業や高付加価値製品の輸出に再び光を当てている。コネクティビティに関してはよ
り首尾一貫とした戦略が必要だ。物流は成長のために欠かせない要素であり、資源ブームの時期より重要
性は一段と増している。必要な決定をし、タイムリーな実施を可能にする強固なガバナンス体制の導入が
決定的に重要だ。
一つの方法は、高いレベルの物流特別委員会を設置し、ここで対応を調整し、優先度が高いコネクティ
ビティに関する事業を遂行するというやり方だ。実施する事業は経済を再生し、成長エンジンである製品
輸出に光を当てるものとなる。最近の一連の規制緩和策は、許認可と規制を整理する第一歩だ。しかし、
多くの省庁はこれら改革に反対し、実施の前に様々な法や規制制度の見直しが必要と主張している。同時
に、より効率性の高い外国製品の流入に反対する声も根強い。どちらの動きも、高いレベルの特別委員会
で規制緩和策を実施していく必要性を示している。インドネシアがもしインフラに対しより多くの投資を
期待し、規制緩和を実現したいのであれば、強いガバナンスの仕組みの導入が重要だ。
サンディー氏は現地の写真を使って説明した。
無断複製、無断転載を禁じます
http://www.jcer.or.jp/