視察地域別テーマと視察先概要 サン・ディエゴおよびロサンゼルス南東部とその周辺 <視察テーマ> ■ ピーター・カルソープデザインの歩行者に優しい郊外型街づくり事例調査 ■ ニュー・アーバニズムを意識した郊外型住宅地において HOAによる管理の実情および景観デザインを調査 ■ 都市型住宅開発事例調査 ■ ニュー・アーバニズムの対極にあるといわれるエッジ・シティーの実例調査 ロサンゼルスから南東へオレンジ郡、サン・ディエゴにかけての約200キロのこのエリ アは、主にアッパー・ミドルの人々のための良好な住宅地開発が盛んに行われてきた。 各住宅地は、それぞれのデザイン・コードの下、統一性のある美しい街並みを形成し、 おのおののコミュニティーが持つHOA(管理組合)の積極的活動により、付加価値の創 生や資産価値の向上への活動が活発になされている。 今回サン・ディエゴエリアでは、ピーター・カルソープによるペディストリアン・フレンドリ ーな郊外型住宅地とともに都市型の住宅地を視察し、街づくりのトレンドを考察する。 一方ロサンゼルス郊外エリアでは、ニュー・アーバニズム思想を取り入れ販売好調な 郊外住宅地“ラデラ・ランチ”の視察と、いわゆる典型的エッジ・シティーとしてアッパー・ミ ドル層18万人が居住する“アーバイン”を訪ね、ウッドブリッジ・ビレッジなどテーマ・パー ク型と呼ばれるコンセプトを持つコミュニティーなどを、ニュー・アーバニズムとの対比を 中心テーマに視察する。 ※ 写真はイメージです。 <視察予定地> ☆ サン・エリホ・ヒルズ・ビレッジ・センター サン・ディエゴから北へ約55キロ、サン・マルコスの街の南西部に開発されたペディス トリアン・フレンドリーな郊外型ミクスト・ユース住宅開発地。 2,200戸に及ぶ戸建住宅、コンドミニアム、タウンホームに現在約6,500人が居住 する。 とりわけピーター・カルソープ事務所によりデザインされた“ビレッジ・センター地区”は、 中心部で交差する2本の幹線道路を一方通行路2本ずつに井桁状に大きく分離すること により、自然な人の流れを妨げないようにし、その中心部には公園やグリーンベルトを配 置して、歩行者優先のこのコミュニティーのコンセプトを端的に表現している。 このプロジェクトは、2002年度のNAHB(全米住宅建設業者協会)の「マスター・プラ ンド・コミュニティー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。 ☆ ソレイユ・コート サン・ディエゴのダウンタウンの北東部の歴史的地区に、ケリー・マークハムアーキテ クチャー&プランニング社によりデザインされ、CNU(ニュー・アーバニズム会議)にも登 録された都市型複合住宅。 丘陵地区に3階建てのロ-ハウス2棟より構成され、1階は店舗あるいはオフィスとし て利用できるいわゆるリブ/ワークスタイルで、「パリのお洒落な小路に建つ住宅」をデ ザイン・コンセプトとしている。 ☆ ラデラ・ランチ ロサンゼルスのダウンタウンから南西郊外へ車で1時間ほどのサンタ・アナ山地の丘陵 地帯に広がるラデラ・ランチは、2000年夏よりの第1期販売開始以来、完売続出の人気 の住宅地。 ウィリアム・リヨン・ホームズ社はじめ20のホーム・ビルダーがニュー・アーバニズムの思 想を取り入れたコンパクトでウォーカブルな街づくりを実践している。 アイ・ストップ・ツリーや季節の花咲くコミュニティー・ゲート、紫の花が美しいジャカランダ が街に好印象を与えるラデラ・ランチでは、比較的高密度な街並みの視察とともにHOA (管理組合)を訪ね、コミュニティー・マネージメントのあり方を中心にインタビュー予定。 ☆ アーバイン ロサンゼルスの南東約60キロに位置する米国を代表するエッジ・シティー。 人口約18万、開発面積約260平方メートルのこの大規模開発は、アーバイン・カンパ ニーにより1959年より建設が始まり、1971年には市制を施行するに至る。 職・住・遊一体型の複合開発で、代表的な住宅地である“ウッドブリッジ・ビレッジ”(戸 建て3,000、集合6,000戸)をはじめ、各住宅プロジェクトが環境に配慮され、かつそ れぞれがテーマ性を持って開発されていることから、テーマ・パーク型コミュニティーとの 評価も受ける。 全米でも最も犯罪発生率が低いアーバインでは、ニュー・アーバニズムとエッジ・シティ ーの相違性などを中心に視察する。 シアトルとその周辺 <視察テーマ> ■ シアトル市が主導するサスティナブルでアフォーダブルな住宅供給事情 ■ 開発された住宅地を更に再開発する事例調査 ■ 古きよき街並み、市民が憧れるコミュニティーを見る ■ サスティナビリティーの見地から、高く評価される新興住宅地の実例を調査 ■ 都市型住宅と再開発事情調査 米国北西部、ワシントン州シアトルとその周辺は、ボーイング、マイクロソフ トなどの米国を代表する大企業とハイテク関係企業が数多く立地し、アッパ ー・ミドル層の人口の割合が多い地域。 深い緑と水に囲まれた美しい街シアトルとその近郊には、“ノースウェスト・ ランディング”、“イサクア・ハイランド”といったピーター・カルソープデザイン のコミュニティー開発事例もあり、ニュー・アーバニズムへの関心も高い地域 といえる。 また日系企業の進出も多いことから、早くからUDC社(東急電鉄系)や住 友林業などの日本の住宅メーカーも進出している。 ここではアフォーダビリティーをキーワードに加え、シアトル市住宅局の供 給による代表的な郊外型住宅地と、1940年代に開発された住宅地を、更 に再開発した事例、古きよき時代の人々が憧れる街並み事例などを中心に 調査する。 ※ 写真はイメージです。 <視察予定地> ☆ ニュー・ホーリー シアトルの中心部から南へおよそ5キロの位置に、シアトル市住宅局により再開発され たアフォーダブル・ハウジング。1940年代に主に軍需産業従事者のための住宅地とし て開発された歴史を持ち、その後1995年から公社によりニュー・アーバニズム思想を取 り入れて新たな住宅地の開発を始動した。 戸建住宅を中心としたこの再開発には、約3億4千万ドルが投じられ、現在はほぼ完 成に至っている。低所得者層から高所得者層までが同じコミュニティーに住むというコン セプトで、全米建設界の数々のアワードを得ている。 2009年にはシアトル・ダウンタウンからのLRT(低床型路面電車)が開通し、自家用 車を持たない人々の交通の便も大幅に向上した。 ☆ レーニア・ビスタ ニュー・ホーリーに隣接して、シアトル市住宅局により開発されているアフォーダブル・ ハウジング。こちらへはおよそ2億4千万ドルが投じられ、完成時には戸建住宅を中心に 900世帯が入居する予定。 およそ5街区程度ごとに公園やポケット・パークなどが配すことで、住民同士のふれあ いや語らいの場所を提供し、街路はカーブを多用することで車の速度の低速化を促すな ど、ニュー・アーバニズムを実践するコミュニティー開発事例。 こちらもシアトル・ダウンタウンおよび空港へ公共交通機関(LRT)で結ばれている。 ☆ ハイ・ポイント シアトル市住宅局により、2004年より5億5千万ドルを投じて開発中の同局が展開す る開発面積200エーカーの大規模プロジェクト。 シアトル・ダウンタウンの南西部郊外に、2012年の完成時には、低所得者層から高 所得者層までさまざまな階層の住民1,700世帯が入居予定。 またこのプロジェクトの特徴として、建材からテクノロジー、デザインに至るまでサステ ィナブルさを追及しており、シアトルエリアでは唯一「ビルト・グリ-ン」に認定されている。 コミュニティー内では、1940年代に建てられた住宅を数多く移築している点もこのプ ロジェクトの特徴のひとつといえる。 2007年度のULI(アメリカ都市計画協会)グローバル・アワード・オブ・エクセレンス受 賞をはじめ、2007年度PCBCコンファレンス(環太平洋住宅産業者会議)ゴールド・ナゲ ットなどさまざまな賞を受けた。 ☆ クィーン・アン・ヒル シアトルのダウンタウンの北部には、クィーン・アン・ヒルと呼ばれる瀟洒な住宅街が広 がる。アメリカン・ポーチを持つバンガロー・スタイルやビクトリアン・スタイルなどの築50 ~100年クラスの家々が建ち並び、シアトルッ子の憧れの住宅地となっている。 また坂下地区には、ロアー・クィーン・アンと呼ばれる商業地区が広がり、カフェやレス トランなどは住民のくつろぎの場としての「サード・プレイス」を提供している。 ここでは人々に愛され続ける住宅地のデザイン、コンセプト・メイキングなどを学ぶ。 同行コーディネイター 佐々木宏幸氏 神戸芸術工科大学デザイン学部環境・建築デザイン学科 准教授 博士(芸術工学) 合同会社FTS Urban Design社代表。 2011年4月より明治大学理工学部建築学科准教授就任予定。 一級建築士。宅地建物取引主任者。米国公認都市計画士(AICP)。 横浜市出身。東京大学工学部建築学科卒業。 カリフォルニア大学バークレー校大学院都市地域計画学科修士課程修了。 (株)フジタ勤務を経て、ピーター・カルソープ事務所へ駐在し、数々のニュー・アーバニズ ム思想によるプロジェクトに係わった後、在サン・フランシスコのアーバン・デザイン会社、 Freedman Tung and Bottomley(2007年に Freedman Tung + Sasaki に社名変更) 入社。 2005年7月より同社の共同代表を務める。 2008年4月より現職。 2008年8月、FTS Urban Design 日本事務所設立、主宰。 2010年度の本財団主催視察団にてコーディネイターを担当し、その深い造詣と行動力 で団員はじめ関係者の高い評価を得る。 2000年および2003年には、現地コーディネイターとして財団主催の視察団へ参加。 アメリカにおいて「住民参加型まちづくり」「ダウンタウン活性化」などを専門に手がけた後、 現在は「戦略的アーバン・デザインによる都市の再構築」を中心に活動。
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