琉球大学医学部附属病院における輸血後鉄過剰症の現状

琉球大学医学部附属病院における輸血後鉄過剰症の現状
又吉
1)
拓 1),宮城
保浩 1),山城
剛 1), 山根
誠久 1) 2)
琉球大学医学部附属病院輸血部,2) 同 大学院医学研究科先進検査医学講座
「はじめに」
血液疾患の患者では慢性造血不全のために赤血球輸血が長期間行われること
が多く、そのため輸血後鉄過剰症を合併しやすい。過剰な鉄は全身臓器に沈着
し、肝機能障害、心筋障害、造血障害を生じると考えられている。診療ガイド
では 1)総赤血球輸血量 20 単位以上、2)血清フェリチン値 500 ng/ml 以上の 2
項目に該当する場合を輸血後鉄過剰症と診断するとされている。
今回、琉球大学医学部附属病院において、輸血後鉄過剰症の実態の把握と鉄
キレート療法の実施状況について調査を行ったので報告する。
「対象」
2010 年 1 月~2012 年 12 月 31 日までの期間に総赤血球輸血量が 20 単位を超
える全患者を調査対象とした。
「結果」
臨床背景と血清フェリチン、鉄キレート療法実施状況について、カルテ記録
に基づき調査、解析を行った。調査期間で赤血球製剤が輸血された患者数は
1,608 例で、うち対象症例は 221 例であった。頻回輸血により輸血後鉄過剰症
をきたす可能性のある血液疾患および小児は 46 例(20.8%)であり、疾患別で
は、白血病 19 例、骨髄異型性症候群 4 例、再生不良性貧血 2 例であった。血清
フェリチンを測定していた患者は 44 名で実施率 96%であり、その値は全例
500ng/ml 以上にあった。鉄過剰症の治療開始基準である赤血球輸血 40 単位以
上、血清フェリチン値 1,000ng/ml 以上を満たす患者は 22 例であり、18 例に対
して鉄キレート療法が実施されていた。いずれの症例も治療開始時期は血清フ
ェリチン値が 500ng/ml 以上であった。
「考察・まとめ」
血液疾患と小児で 20 単位以上の赤血球輸血を実施し、血清フェリチンを測定
していない 2 例を除いて、全例が輸血後鉄過剰症の診断を満たすものであった。
頻回輸血が行われる症例では鉄過剰症の早期診断のため、血清フェリチンの測
定が重要であると確認できた。
当院での頻回輸血患者における血清フェリチンの検査実施率は 96%と高いが、
鉄キレート療法などの治療適応である症例でありながら、実施されていない症
例もあり、担当医が輸血後鉄過剰症を想定していない可能性も示唆された。今
後輸血部において、各症例毎の総赤血球輸血量を把握し、必要な症例に関して
は担当医へ連絡して、血清フェリチンの測定を促し、輸血後鉄過剰症を早期に
診断し、治療が開始できるように対策が必要であると考えられた。