植物たちの懸命な暮らしぶり 平成 20 年 10 月 16 日 森林インストラクター 遠坂 弘 1 花のつくり 2 植物の雌雄 (1) 単性花 おしべしかない花。めしべしかない花。(両方あるも一方しか機能しない花)。 例 キュウリ、カボチャなど。 (2) 両性花 一つの花に機能するおしべとめしべがあるもの。 例 サクラ、バラ、スミレなど。 a 自家不和合性 自分の花粉では受精できぬように花粉管が伸びない生理的な仕組みをもつ。 例 ハッサク、ブンタン、リンゴ、ナシ、ウメなど。 b 自家和合性 自分の花粉で受精できる。しかしできるだけ自家受精を避けるため、おしべが熟す時期 とめしべが熟す時期をずらしたり、葯と柱頭が離れているなど他家受粉を促すような 仕組みが見られることが多く次善の策として自家受精を行う。 めしべ先熟・・・・例 ホオノキ (キンポウゲ、ウマノスズクサ、オオバコなど) おしべ先塾・・・・例 クサギ (ホタルブクロ、リンドウ、キキョウなど) (3) 雑性花 ―― 同じ株に単性花と両性花をつける。 例 トチノキ (カキ、ヤツデ、など) (4) 雌雄別株 ―― 雄株に雄花、雌株に雌花の別居型。 例 カツラ (アオキ、クワ、ヤマモモ、ハナイカダ、モチノキなど) (註) 植物界で雌雄別株が少数派なのは植物は自ら動けず異性と交わるにも風や虫に 頼らねばならない。万一の場合に備えて同花受粉できる両性具備が進化したもの と考えられる。一方近親交配の弊害もある。自家受粉した種子の発芽率は他花受 粉の種子に比べ発芽率が低い事が多いし、発芽しても不適当なものの割合が多い。 そこで敢えて雌雄を分けたものと考えられる。 (5) 雌雄同株 ―― 同じ株に雌花と雄花の同居型。 例 フサザクラ (クリ、イヌシデ、コウゾ、アケビなど) (6) 途中で雌雄転換するもの。 例 ウラシマソウ、カラムシ 3 芽生えから種子の散布まで 芽生え→開花→受粉→受精→結実→種子散布→芽生え (1) 受精の仕組み (2) 受粉 ―― 花粉が被子植物ではめしべの柱頭に。裸子植物では胚珠の珠孔部に。 花粉を運ぶ花の仲人 ―― 風、水、虫、鳥など。なかでも 7 割が虫による。 風媒花・・・・裸子植物。 、 被子植物・単子葉(イネ科)。 被子植物双子葉合弁類のヨモギ、オオバコ。 虫媒花・・・・被子植物双子葉合弁類・離弁類のほとんど。 単子葉のほとんど。 (3) a 虫の誘い方のいろいろ 花粉で ―― 例 ホオノキ、チュウリップ 花粉には蛋白質などの栄養がある。ホオノキは原始的性質を残し、まだ蜜の発明に 至らず。花粉そのものを餌に虫を引き寄せる。花粉(蛋白質)をつくるためには窒素が 必要だが自然界には植物が吸収できる窒素は少ない。植物たちは大切な窒素を無駄 使いしないよう生産し易い蜜を出して花粉が食べられるのを守るようになったようだ。 b 蜜で ―― 例 ツリフネソウ c 香りで ―― 例 マムシグサ。虫をひきつけたり退散させたり。 d 環境で ―― 例 フクジュソウ。 花には蜜は無いが太陽に向かって花を回転させ 10℃に暖められた花に虫が集まる。 e 色で ―― 黄色はすべての虫に見える。黄色は花粉の色。 赤色は蝶や鳥には見えるがハチやアブには見えないが 紫外線の光をハチやアブは感じることができる。 花びらは紫外線を反射して蜜があることをハチやチョウに知らせる。 紫外線が見えない人間とは花の見え方がちがう。 f 確実に虫に花粉を渡す仕組み ――ノアザミ、キバナアキギリ、オオマツヨイグサ g 保険(両面作戦) ―― ツユクサ、タチツボスミレ。 植物のダイナミズム 森羅万象、生きとし生けるものにとって「生きる目的とは何か」。それは自然環境に適応し、より優 れた子孫を残そうと生存競争する懸命な生きざまとして具現されます。人類を例外として。 なかでも植物は美しい花で生殖作用を行い、果実を稔らせその中に種子を作り、種子を散らし、 種子はやがて芽生え再び花を咲かせます。これら繰り返しの過程の一つ一つが植物の生命力の 発現に他なりません。植物は自力で移動することが出来ないので風、動物、水の流れなど他の力 を利用して、生きる目的を達成しようと懸命に工夫する営みを見ることが出来ます。そのしたたか な生命力のダイナミズムは感動的ですらあります。今回はちょっとだけ、その片鱗を覗いてみまし ょう。 1 逆戻りの進化 「ヨモギ属」・・・・双子葉合弁花類 2 花の奥深く甘い蜜が 「ツリフネソウ」・・・・双子葉離弁 3 恩を仇で返す 「マムシグサ」・・・・単子葉 4 花粉をトコロテン式に 「ノアザミ(春)、ノハラアザミ(秋)」・・・・双子葉合弁 5 ペダルを踏ませて 「キバナアキギリ、ヒメオドリコソウ」・・・・双子葉合弁 6 一夜の花のいのち 「オオマツヨイグサ」・・・・双子葉離弁 7 両面作戦その1 花のいのちは短くとも 「ツユクサ」・・・・単子葉 8 両面作戦その2 蕾のままで実を結ぶ 「ホトケノザ」・・・・双子葉合弁 9 両面作戦その3 したたかなお姫様 「オオイヌノフグリ」・・・・双子葉合弁 10 業師 「タチツボスミレ」・・・・双子葉離弁 11 単為生殖で殖える 「セイヨウタンポポ」・・・・双子葉合弁 12 根粒菌と共生する 「レンゲソウ」・・・・双子葉離弁 13 毒で身を守る 「レンゲツツジ」・・・・双子葉合弁 14 たねの旅立ちその 1 踏まれてたねをばらまく 「オオバコ」・・・・双子葉合弁 15 たねの旅立ちその 2 綿毛のパラシュート 「ガマ」・・・・単子葉 16 たねの旅立ちその3 春を足早に 「カタクリ」・・・・単子葉 17 たねの旅立ちその4 まるでロケット発射台 「ゲンノショウコ」・・・・双子葉離弁 18 花粉をおみやげに 「ネジバナ」・・・・単子葉 19 寝る子は育つ 「クズ」・・・・双子葉離弁 20 蜜を持たぬ花「ホーノキ」・・・・双子葉離弁 21 たねの散り方。
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