平成17年12月号

平成 17 年 12 月号
N0.18
嶺南家畜保健衛生センター
TEL、FAX 0770(45)0190
平成 17 年も、いよいよ押し迫ってきました。国内で始めて BSE が確認されてから 4 年
余、米国での発生からちょうど 2 年となりますが、今年の畜産業界における話題は、昨年
に引き続いての米国・カナダ産牛肉の輸入停止、牛肉・子牛市場の続伸、BSE 国内対策の
見直し、米国・カナダ産牛肉の安全性評価、輸入再開等、BSE に振り回された感がありま
す。酪農家の皆さんにとっても大きな関心事であったことと存じます。このように国内の
畜産情勢が海外事情に大きく左右されるようになったことを考えると、農業分野における
グローバル化の進展を実感しますが、今後は、この様なことが当たり前の社会になると言
われています。多様化する消費者のニーズを的確につかむと同時に、一連の BSE 騒動で得
られた教訓を生かし、グローバルな視点で生産活動を行うことが重要となります。
米国とカナダ産牛肉の輸入が無かった 2 年の間に、国産に対する差別化が進みました。
食に対する国民の関心は、価格・量から質の方向に変化しています。今後も国内畜産物が
品質の面で存在感をどれだけ訴求できるかということが業界に携わる人間の基本姿勢とな
ってきます。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
<特集・
特集・若狭子牛の
若狭子牛の哺育・
哺育・育成作戦>
育成作戦>
過去の若狭子牛の哺育・育成作戦のなかで、3 ヵ月齢までの初期発育の重要性を指摘し、
スターターの品質、給与方法・量について触れてきました。今回は、良好な初期発育を確
保するための、代用乳(粉ミルク)の給与方法について、興味深い記事(兵庫県立農林水
産技術総合センター、福島護之氏)がありましたので私見を交えて紹介します。
● 但馬牛の
但馬牛の 1 ヶ月齢での
月齢での母乳摂取量
での母乳摂取量は
母乳摂取量は 5.3 リットル。
リットル。
但馬牛は、和牛のなかでは、小柄な系統の牛です。この但馬牛を生後、母子を分離せず
に、哺乳を母牛に依存させた自然哺乳により育てると、1 ヵ月齢では、日量 5.3 リットル
の母乳を摂取しています。これは、代用乳換算で 1 キロ弱の量に相当します。
● 乳用種子牛の
乳用種子牛の代用乳給与量は
代用乳給与量は 0.5 キロと
キロと
なっているが・・・
なっているが・・・。
・・・。
和牛に比べて、生時体重が大きい乳用種子
牛の哺育方法は、代用乳を 0.4~0.5 キロ/日と
し、不足分をスターターで摂取させる方法が
一般的です。この方法を超早期母子分離和牛
子牛に応用すると、体力的に初期のスタータ
ーの摂取が不十分となります。そして、初期
発育が遅れた子牛となってしまいます。
● 哺乳初期の
哺乳初期の発育の
発育の遅れは、
れは、離乳後も
離乳後も挽回されない
挽回されない。
されない。
上述の記事では、代用乳給与量と子牛の発育性について試験を行っていました。方法は、
日量 0.5 キロ給与区と 1 キロ給与区(いずれも、給与回数 2~3 回/日)について、60 日齢
での離乳時と離乳後 180 日齢での発育性を調査したものです。結果、子牛の体重と DG は、
離乳時点では、1 キロ給与区においてやや優れていた程度でしたが、離乳後は発育の差が
大きくなり、1 キロ給与区では、0.5 キロ給与区よりも、統計的に有意に大きくなったとい
うことです。
● 1 日の哺乳回数は
哺乳回数は 2~3 回が望ましい。
ましい。
10 日齢以上になれば、2~3 回で 1 日哺乳量を摂取でき
るとされています。
● 離乳時期の
離乳時期の決定は
決定は?
離乳時期の決定は、日齢ではなく、子牛の体重が 60 キロ
以上になったこと、スターター摂取量が 1 キロ/日以上にな
ったことで決めます。(自然哺乳で育てた但馬♂子牛の 2
ヶ月齢体重が 60 キロとなっています。)
=子牛哺乳の
子牛哺乳のポイント=
ポイント=
★ 生後 3 日間は、初乳を給与します。1 日あたりの給与量は、体重の 10%をめやすとし、
2~3 回に分けて給与します。体力がない子牛では、小分けにして、多回給与します。哺乳
用乳首は、市販の和牛子牛用を使用するのが良いでしょう。生後、体をよくマッサージし
て子牛を覚醒させ、自力で哺乳させることが初乳中の免疫を吸収する上で大切です。
★ 繁殖和牛から生まれた子牛では、3 日間自然哺乳させた後、母子を分離します。8 日齢
以降の分離では、子牛を人工乳首に慣らすのが難しくなることがあります。3~4 日かけて、
母乳から代用乳に切り替えます。
★ 哺乳初期から子牛が追加の代用乳を欲しがりますが、生後 10 日目までは 0.5 キロ/日に
制限します。その後、7 日間をかけて、1 キロ/日まで増量し、離乳開始までこの量を続け
ます。スターターも与えますが、体重が 60 キロになるまでは、代用乳で子牛をつくるとい
う感覚で飼育します。なお、代用乳の温湯での希釈は、袋に記載されていますが、6 倍希
釈というのが一般的です。給与のたびに、代用乳の濃さが変わることは、下痢の引き金と
なります。
★ 子牛の体重が 60 キロに達したら、2~3 日かけて、
離乳のために代用乳の量を 0.5 キロ/日・2 回まで減ら
します。子牛は、追加の代用乳を欲しがるので、給与
する量が減った分、哺乳バケツをゆすぐ感覚で温湯を
足してやります。1 週間様子を見て、スターターを 1
キロ/日以上安定して摂取すれば離乳可能です。それだ
け食べない時は、食べるようになるまで、0.5 キロ/日
・2 回の代用乳給与を続ける必要があります。水また
は温湯は、絶えず、確保しておきます。
★ 円滑に離乳を進めるためには、それまでに、子牛をスターターに十分に慣れさせておく
ことが大切です。
(所感)
~現在、和牛肉の供給は、需要量の 7 割程度と言われています。今月上旬には東京食肉
市場・和牛枝肉単価が、12 年ぶりの最高値を記録したと報じられました。そのような背景
から、11 月 25 日開催の北陸三県合同子牛市場は、強もちあいの展開となりました。出品
された方は、意気軒高といったところでしょう。しかし、今回出品された牛は、哺育期に
おける飼養管理技術の差が農家間で大きく、一部に初期発育が不足しているケースが気に
なりました。今の相場は、“米国産牛肉ストップ相場”と言われています。今後も、相場に
左右されない肥育農家のニーズに合った子牛をつくりましょう。~
<河合
隆一郎>