11月22日「王たるキリストの祭日」 − 教会の1年の

カトリック磐田教会報 2009年11月
11月22日「王たるキリストの祭日」
− 教会の1年の終わりと始まりの時を迎えて
市岡
第3号
之俊
『王たるキリストの祭日・・・1 年の教会の終わりと始まり』
「王たるキリストの祭日」の週をもって、教会の1年は終わります。通常の私たちのカレンダー
よりも、いつも約1ヶ月早く年の終わりを迎えるのです。そして次の週には、御子の誕生の期待を
もって、待降節を迎えます。新たな教会の1年がスタートするのです。王たるキリストの祭日に、
私たちは、世の終わりの時に訪れる救いの完成を黙想し、またそれに向かう教会の使命と時の流れ
の中で、また新たな1年にも生まれくる救いの恵みとご計画のしるしに期待をしつつ、感謝のうち
に待降節を迎えます。
『2教会、3教会に1司祭の時代の始まり』
この磐田、掛川教会への任命を私が頂いてから、2回目の教会カレンダーでの新しい年を迎える
ことになりました。磐田教会はバルビエ神父様、掛川教会はソビオン神父様と信徒の方々とともに
創立され、途中に掛川教会にはラネール神父様とともに、1教会に1司祭の恵みのうちに、歩んで
こられました。そして、本柳神父様の短い期間ではありましたが、両教会への主任司祭代行の時を
経て、昨年春より私が正式な任命を頂いて、2教会に1司祭の時代が始まりました。
最初は両教会のみなさまも、大変であったと思います。もちろん私も司祭として、戸惑いがあり
ました。何せ、信徒の方々にとっても司祭にとっても、2教会で1司祭という体制と体験は初めて
のことであったのですから…。横浜教区では、静岡県の範囲だけでもお隣りの鷺の宮、三方原教会
では高野神父様、焼津、島田教会では高橋神父様、富士、富士宮教会では岩間神父様、沼津、三島、
熱海教会ではソン神父様と、2教会、3教会において1司祭という体制がうまれ、神奈川県を始め
とする教区内の他県内の教会も同様の状況となってきています。それでも新しい司祭の召し出しに
は恵まれている横浜教区なのですが、もっと厳しい状況下にある教区も数多くあります。将来は、
横浜教区が他の教区を助けなければならない状況もくるでしょう。同時に昨今、多くの若手司祭が
この静岡県に任命されてきたことは、パリミッションの神父様方が、まだ若かりし頃、多くの困難
やご苦労を重ねながら、この静岡県の地にフランスの信徒の方々の多大な援助を頂きながら、教会
を建てられた頃を思い感謝し、そのご恩に報いていくことができるためにも、その神父様方に育て
られた私たち教会の邦人信徒、司祭たちが、今度は自分たちの教会を、自分たちの手で立てながら、
できれば他の教会、他の地域、国々への宣教にまで及んでいくことができるようにと、その準備の
時が始まったことを感じさせるものです。特に、この西部地区での教会の子どもたち、そして地区
レベルで始まろうとしている青年会は、教会のみなさま方の賜物でもあり、同時にこれからさらに、
先輩方のみなさまに励まされ、信仰の力と恵みの分かち合いを必要としていく宝でもあります。
『現在の磐田教会・掛川教会』
そのような中、教会のある方から、どのような経緯と方針をもって、これまでの1年間半を過ご
してきたのか、現在はどのような方向性をもって共同体が動いているのか、そしてこれからの展望
を分かち合ってくださいとの強いご要望を頂きました。ちょうど教会のカレンダーの、1年の計の
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時期にもあたり、また特にこの磐田、掛川教会においては、2教会で1司祭となった2008年の
春から、どれほどに多くの方々からのお祈りと支え、ご協力を頂いてくることができたのか、あら
ためて感謝のうちに振り返るよい機会ともなります。特に次のような委員会活動の軌跡のもとに、
両教会のみなさまが、直接的にも、間接的にも、その神さまからの恵みと働きに応答、ご協力して
くださったことがよくわかります。
[磐田教会]
① 新創設 −『典礼委員会』
・
『教会学校委員会』
・『広報委員会』(教会便りとホームページ)
『外国籍信徒委員会』
・『フィリピン共同体委員会』
『ブラジル共同体委員会』
② 再発足 −『財務委員会』
③ これからの創設予定(仮称)
『青少年委員会』(西部地区青年会、サマーキャンプなどのサポート)
・
(磐田教会の共同体の歴史、現在、将来のビジョン
『教会ビジョン委員会』
などを十分に見据えていく。将来に予想される大規模修繕などに対しても、
建物の建築などからではなく、その計画の是非についても、生きた共同体
のビジョンと成長、コンセンサスから出発、識別、判断できるようにする)
[掛川教会]
① 新創設 −『典礼委員会』
・
『教会学校委員会』
・『外国籍信徒委員会』
『フィリピン共同体委員会』
・
『ブラジル・ラテン共同体委員会』
② 再発足 −『建設委員会』(2008年8月より約1年の期間、掛川教会ビジョンの策定
を計画・実施する)
③ これからの創設予定(仮称)
『マリア会』(婦人会)
『青少年委員会』(西部地区青年会、サマーキャンプなどのサポート)
同時に、両教会では磐田聖マリア幼稚園、掛川聖マリア保育園との大切な一致と交わり、協力、
磐田教会では小さき花、レジオマリエ、テレジア会などの活動グループ、掛川教会では建設委員会
のみなさまが関わってくださった、教会ビジョンのための多くの黙想会や研修会などがあります。
また両教会において月に2、3回、水曜日の午後、晩、木曜日の午前にそれぞれ3回開かれている
キリスト教講座では、毎週、計50名ほどの方々が熱心に参加され、みなさまの信仰と分かち合い
を伺う度に、心からの感動を頂きます。
昨年春に磐田、掛川教会に任命を頂いてから、わたしはいつもみなさまのからの励ましとお祈り、
ご協力を頂きながら、それ以上にみなさまからの共同体への熱い思いと信仰、希望の力をつぶさに
感じてまいりました。それは、諸先輩の神父様方と信徒のみなさまが培ってこられた信仰の歴史で
あり、また賜物でもあります。また同時に、磐田、掛川教会が現在に直面し、将来の世代にむけて
準備していかなければならないこともあるでしょう。青少年の養成、そしてこの地域に住む、その
多くがカトリック信徒である外国籍の方々についても同様です。特に現在、日本のカトリック教会
の日曜学校や中高生会の何割かは、もうすでにどちらかが外国籍の親御さんをもつ家庭のお子さん
であるという事実があります。磐田教会、掛川教会も、まったくそのような現実におかれています。
カトリック司祭の役割も、昨今、今までの日本のカトリック教会にはなかった宣教、司牧の現実に
直面しています。同時に信徒のみなさまも、これまでにはなかった、新しい日本の教会の現実に、
直面しているのです。抽象的な説明とならないように、磐田、掛川教会において、私が司祭として
働かせて頂いている中で、特に具体的に新しい現実と感じていることについて、分かちあわせて頂
きたいと思います。
『2教会に8つの共同体』
現在の共同体の状況は磐田、掛川両教会に、実質的には8つの共同体が存在していることになり
ます。日本語を中心とした日本人を主とする両教会の2つの共同体のほかに、英語、タガログ語を
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中心としたフィリピン人を主とする共同体が計2つ、ポルトガル語を中心としたブラジル人を主と
する共同体が計3つ、そしてスペイン語を中心とした南米からの人々を主とする共同体が1つあり
ます。両教会にあるそれぞれの各国語の共同体は、独立した各国語委員会をもち、月に1回は必ず
委員会会合を開いています。そこでは各国語共同体の洗礼や初聖体、堅信の準備、キリスト教講座
や不況にあえぐ人々への生活支援などの活動の計画、識別、連絡などを、それぞれの各教会内だけ
で行っていくだけでなく、他の地区の教会、地域との関わりなどをも念頭に置きながら進められて
います。さらに磐田、掛川教会のそれぞれの小教区教会委員会への参加だけでは、時間も限られて
おり、十分な話し合いもできないので、それぞれの教会では、月に1回の外国籍信徒合同委員会も
持たれており、各国語共同体の協力、連絡、調整などが行われています。そこでは司祭だけでなく、
むしろ両教会の多くの日本人信徒の方々の協力と働きがあります。8つの共同体を司祭1人だけで
ケアすることは到底不可能なことであり、共同体の在り方としても、決して望ましいことではあり
ません。特に昨年秋からの、リーマンブラザースの破綻に端を発する世界経済不況の波を、もろに
受けたこの静岡西部地区ですが、その影響がもっとも深刻な外国籍の人々に対して、特にその大半
はカトリック信徒でもありますが、教会の方々が捧げられた献身的な支援活動には目を見張るもの
があります。磐田、掛川両教会における信徒のみなさまの、信徒使徒職としての信仰の力と行いの
発揮には大いに励まされ、心からの感謝を、いつもミサと日々のお祈りのうちにささげています。
『静岡聖母学園・聖母福祉会・静岡中西部地区フィリピン共同体』
横浜教区から私に対する正式な任命として、静岡県下カトリック幼稚園13ヶ園をもつ学校法人
である静岡聖母学園、同じくカトリック保育園7ヶ園と社会福祉施設1ヶ園をもつ福祉法人である
聖母福祉会における、それぞれの理事職の任を頂いています。これまでにもパリミッションの神父
様方によって、各教会と一体となった宣教の礎として築き上げられてきた各園も、今はこの2つの
学校、福祉法人のうちに、互いに助け合いながらその歩みを守っています。各教会も、各園と一体
となってともに歩んでいますが、静岡聖母学園理事長の梅村昌弘司教様、聖母福祉会理事長の静岡
教会主任司祭の林健久神父様を補佐しながら、教会側の理事としては特に、静岡県西部地区の各園、
各教会との関係を大切にしていくことが求められています。磐田、掛川の両教会のみなさまにも、
特に、磐田聖マリア幼稚園、掛川聖マリア保育園を、教会の大切な兄弟姉妹、宝物として見守り、
これからも共に支え合って歩んでいくことができますように、ご協力をお願いいたします。
そして今年度の7月からは新たに、静岡中部、西部地区におけるフィリピン人宣教司牧の責任者、
担当モデラトールとして、その任を司教様から頂くこととなりました。その範囲として、東は静清
地区にある蒲原、清水、静岡教会、志田・榛原地区の焼津、藤枝、島田教会、そして西はこの西部
地区の掛川、磐田、浜松教会のフィリピン共同体にまで及ぶ、広大な範囲のものとなっています。
教区からアシスタントとしての正式な任命を受けられた、静岡の天使の聖母宣教修道女会のフィリ
ピン人、シスター・シルビアがサポートをしてくださることになっています。浜松にあるスピノラ
修道女会のフィリピン人、シスター・ニルダからも協力を頂けることになっています。静岡県下の
スペイン語圏の方々のモデラトールは、清水、草薙教会のアルベルト神父様、アシスタントとして
浜松教会の山野内神父様、そしてブラジル人担当のモデラトールは、浜松教会のオズマール神父様
となっています。今後とも、磐田、掛川教会におけるブラジル、ラテン共同体へのご協力を頂ける
ことになっています。特に、キリスト教国である欧米とともに、カトリック国であるフィリピン、
ブラジル、ラテンの国々などの人々からも、私たち宣教国である日本の教会は、神学的にも、また
生活や社会、祈り、カテケジスの実践などにおいても進んでいるその先輩国の教会から、たくさん
の学べることがあります。同じ信仰をもつ兄弟姉妹として、また私たち教会の信仰の先輩としても、
それらの人々とともに学び、信仰を分かち合いつつ、お互いに歩んでいくことができますように、
みなさまのご協力とお祈りとをよろしくお願いいたします、
『小さな分かち合い』
このような中、私が日頃、個人的に感じている小さな十字架を、1つだけ、分かち合わせて頂き
たいと思います。みなさまの中にも、同様に感じていらっしゃる方も、おられるかもしれません。
やはり2つの教会に1人の司祭ということについてです…。休日も平日も、2つの教会の行き来と
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ともに、これまでにも述べましたような働きも求められています。磐田、掛川、西部地区の教会、
静岡県内の法人、フィリピン人担当の働き、横浜での担当など、車だけでの移動も、一週間に平均
300km位の走行となります。土曜日の朝だけは少なくとも、移動と活動に流されないように、
共同体のみなさまへの霊的な奉仕の要として、ミサの準備と説教のまとめなどの時間として、沈黙
の祈りの時間を守り、必ずキープするように努めています。しかしそれでも、午前中の半日は、朝
早くから一方のA教会において通常の1日分の用事や行事、ある時には共同体にとってももっとも
大切な冠婚葬祭の祈りと典礼、昼間は西部地区や静岡県内での会合や諸活動、病院訪問やお見舞い
などに、夕方には他方のB教会に帰ってからの通常の1日分の用事や行事、そして夜遅くになって
からの相談、結婚講座や各種講座、原稿書きや会合、講座への準備などは深夜にまでなってしまい
ます。しかし、それでも時間が足りないというような状況が休日、平日と続いてしまう場合が多く
あります。その日の前半は、A教会において1日分のさまざまな委員会や行事を半日で終えてくた
くたになっていますが、その日の後半はB教会に向かい、また新たに最初から、1日分の始まりと
いうことが多々あります。横浜の山手教会や菊名教会で働いていた時代以上に、責任と働き、仕事
量の大きさを感じます。これまでにも多くの教会でそうであったように、もし1つの教会に1人の
司祭のみが任命されている場合には、司祭も信徒の方々も一日中一緒にいるので、その働きが相互
に理解できます。午前中忙しく、みなが疲れていることが共同体でお互いにわかれば、
「みなさん、
このことはもう来週にしましょう」
、あるいは「神父さん、もう他の時、他の方法を考えましょう」
ということが言えるでしょう。しかし、2つの教会に1人だけの司祭が任命される場合、お互いの
時間と場所を共有、認識できることは半分となってしまいます。お互いに気がつかないでいると、
自然に、これまでの1つの教会の1日分の働きがあるとすると、2つの教会となってからも両方の
教会における1日の働きの量は変わらず、むしろ1日分を圧縮した形で休憩もとらず、実質的には
2日分の働きをしてしまうようなこともあります。司祭の側も気をつけてはいるのですが、やはり
共同体のみなさんのご理解とご協力のうちに、このような状態に陥ることが避けられているように
思います。
従来までは磐田教会、掛川教会も、日本人の共同体が主となっている中で、それぞれの教会に、
司祭も1人ずつの任命を頂いていましたが、現在は外国籍のカトリック信徒の数も爆発的に増え、
日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語の8つの共同体に1人の司祭となっています。この地区
でも外国籍信徒のもっとも多い浜松教会には、やはり日本、フィリピン、ブラジル、ラテンの4つ
の共同体がありますが、3人の司祭が常駐しています。私もできれば、助任の司祭をお願いしたい
ところであるのですが、司教様からは現在も最大限のバックアップを頂いていますし、浜松教会の
神父様方からもスペイン、ポルトガル語のミサのお手伝いを頂いていますので、それ以上のことを
望むことは難しいでしょう。私もまだ若手の司祭に属するとはいえ、2教会における8つの共同体
以外に、静岡県下や教区の他の仕事も加わってくることとなると、やはり体力的にも、精神的にも、
霊的にも、限界というものを感じ始めることになります。この春には、司教様から別の仕事のお話
を頂きましたが、これまでの事情をお話して、ご理解を頂くことができました。しかしそれ以上に、
もっと大切なこととして、相談、病人のケア、事故やお葬式などに対しては、いつでも十分に対応
ができるように、司祭としては余裕をもってきちんと準備ができているように、優先しておきたい
ことがあります。すべての家庭を回ってほしいというある方のご意見も頂きましたが、2つの教会
にいらっしゃる急病や病人の方々、相談を待っておられるご家庭への訪問、緊急を要す苦境にある
外国籍の信者さんなど、お尋ねする方々をまず優先させて頂くことに精一杯で、それを望んでも、
なかなかすぐには適わない状況にあります。体がもし2つあったなら・・・と思う瞬間です。一方、
磐田、掛川の2つの教会に赴任してからも、相談や告解に来られる方が多いということも、望まし
いこと、司祭としてもとても感謝なことであり、できる限り応えさせて頂きたいと思っています。
しかし、そのための十分な時間がとれなくなる時もあり、そのような時は、本当に心苦しく、みな
さまに対して申し訳思います。
現在、長野の御聖体の宣教クララ修道会の黙想の家で、梅村司教様を囲みながら、横浜教区司祭
の年の黙想が行われています。これまでの1年半を振り返りつつ、みなさまのためにお祈りをして
います。新たなみことばと祈りの力、これからの宣教と司牧のために必要なインスピレーション、
ビジョンを頂いています。また帰りましたら、みなさまにもこの恵みを分かち合いたいと思います。
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