糖尿病患者指導パンフレット平成24年版pdf

糖尿病読本
知多市民病院糖尿病教室連絡会
知 多 市 薬 剤師 会
( 平 成 24 年 6 月 版 )
目
次
ページ
Ⅰ はじめに
3
Ⅱ 糖尿病とは
3
Ⅲ 合併症について
9
Ⅳ 治療の目標
14
Ⅴ 治療について
16
1 食事療法
16
2 運動療法
22
3 薬物療法
28
Ⅵ 検査と血糖自己測定
42
Ⅶ 日常生活の注意点
46
Ⅷ 災害時の対策
51
Ⅸ 体調を崩した時の注意点
53
Ⅹ おわりに
53
2
Ⅰ はじめに
糖尿病は 50 年ほど前はめずらしい病気でしたが、自動車の普及による運動不足や、機械化
によるデスクワーク、豊かな食生活による過食などが原因で増え続けています。現在わが国
の糖尿病患者さんは約 890 万人、予備軍も含めると 2210 万人にもなり、これは成人の 5 人
に 1 人にあたります。糖尿病が怖いのは、放置しておくことにより、網膜症・腎症・末梢神
経障害といった糖尿病に独特な合併症や、現在わが国の三大死因にもなっている心臓病・脳
卒中などの合併症がおきてくるからです。しかし、糖尿病を良好にコントロールしていれば、
合併症を予防したり、合併症の進行を防いだりすることができます。
このパンフレットを参考にされ、糖尿病についての正しい知識を身につけ糖尿病を良好に
コントロールして、健常な人と同じように末永く快適な人生を送ってください。
Ⅱ 糖尿病とは
図 1,2,3
体に取り入れられた食物(炭水化物)は、腸で吸収されてブドウ糖となり肝臓に運ばれま
す。肝臓に運ばれたブドウ糖は、膵臓から分泌されるホルモンの一種であるインスリンの働
きにより、グリコーゲンという物質に変えられ、肝臓、一部筋肉内に貯蔵されます。また、
吸収されたブドウ糖は、全身に運ばれ、インスリンの働きによりエネルギーの基として活用
されます。そのため、食後に血糖値は高くなりますが、インスリンが分泌され充分に働くた
め、血糖値は下がります。
糖尿病とは、
「膵臓から分泌されるインスリンの作用が十分でないためブドウ糖が有効に使
われずに血糖値が普通より高くなっている状態」をいいます。糖尿病の原因にはインスリン
の分泌が少なくなる「インスリン分泌不全」と、インスリンが分泌されても筋肉や肝臓・脂
肪細胞などで正常に働かなくなる「インスリン抵抗性」があります。過食、肥満、運動不足、
ストレスなどが誘因となって発症し、高血糖や尿糖が、きっかけで発見されます。初期には
無症状のこともありますが、病気が進展すると徐々に、疲れやすい、尿の量が増える、口が
渇くなどの症状があらわれます。
健康診断や集団検診で糖尿病を指摘された方や、糖尿病の症状に思いあたる方は、早目に
最寄りの医療機関を受診して、糖尿病あるいはその病状の診断を受け、医師の指導による適
3
切な治療に取り組むことが必要です。
図 1 インスリンの働き
インスリンの仕 事
インスリン(ホルモン)の主な仕事は
1. 細胞内への糖のとりこみ
2. グリコーゲン(ブドウ糖のかたまり)の合成促進
3. 脂肪細胞の中へ取り込んだ糖を中性脂肪にかえる
食
物
蛋白質
牛乳
米・酒
炭水化物
肉・魚
大豆
脂肪
果物
菓子
肉
魚
油
細胞への
とりこみ方
小
腸
アミノ酸
ブドウ糖
脂肪
インスリン
ブドウ糖
門脈
リンパ管を通って
アミノ酸
ブドウ糖
中性脂肪
インスリンレセプター
肝
臓
インスリンで
インスリンで
(蛋白質)
インスリンで
グリコーゲン
100g
脂肪
脂肪を運ぶ舟づくり
もインスリン
細胞内にブドウ糖が
とりこまれる
血
液
インスリンで
細
胞
グリコーゲン
250g
筋肉細胞
インスリンで
インスリンで
エネルギー
中性脂肪
として
一般細胞
脂肪細胞
4
全血液中の
ブドウ糖量は
約5g程度
図 2 インスリンの働き
図 3 インスリンの作用不足のしくみ
5
1.糖尿病の病型分類
糖尿病が起こるメカニズムは①インスリン分泌不全、②インスリン抵抗性があり、これら
のうち一方、あるいは両方が生じると糖尿病になります。
①インスリン分泌不全:血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌量が少ない
②インスリン抵抗性:分泌されたインスリンがよく働かない
糖尿病は、原因により 4 つのタイプに分類されます。
1)1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)
膵臓でインスリンがまったく作られなくなったため発症するタイプです。遺伝や免疫反応
などが原因になって、青少年に突然発症することが多く、生涯毎日インスリン注射しなけれ
ばなりません。現在、わが国の糖尿病患者全体の 1~3%くらいを占めています。
2)2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)
インスリンは作られていますが、インスリンの働きが悪いタイプです。生れつきインスリ
ンが不足しやすい素質に、過食、肥満、加齢、運動不足、ストレスなどの誘因が加わり、中
年以降に多く発症します。わが国では最も多く、糖尿病患者全体の 95%以上を占めています。
経過は患者さんによって大きく異なり、食事療法と運動療法だけで血
糖コントロールができる場合から、内服薬が必要な場合やインスリン
注射をしなければならない場合までさまざまです。
3)その他の特定の機序、疾患による糖尿病
遺伝因子として遺伝子異常によるものや、膵炎や膵臓の腫瘍などの膵臓の疾患、肝炎など
の肝臓の疾患、バセドウ病や巨人症等の内分泌疾患などにより、二次的におこってくる糖尿
病です。これらのもとの疾患を治すことで、糖尿病も良くなります
4)妊娠糖尿病
「妊娠をきっかけに発病した糖尿病」あるいは「妊娠前から発症して
いても妊娠をきっかけに初めて発見された糖尿病」をいいます。
6
2.糖尿病の症状
糖尿病の初期には無症状のことが多いですが、高血糖が続くと次のような症状が出てきま
す。
尿量が増える
疲れやすい
1)疲れやすい
2)尿の量が増える
3)のどが渇く
4)やせる
のどが渇く:多飲
5)やたらに食欲がある
6)目が疲れやすい、見にくい
7)手足がしびれる、感覚が鈍い
8)化膿しやすい
足がしびれる
やたらに食欲がある
3.糖尿病の診断
表1 図4
1)血糖値
健康な人の空腹時の血糖は、70~110 ㎎/㎗です。食後 30~60 分ぐらいで血糖は最も
高くなります。糖尿病の状態が悪いほど空腹時の血糖は高くなり、食後 120 分以上たっても、
正常値にもどりにくくなります。
表 1 糖尿病の診断基準
血糖値(㎎/㎗)
空腹時値
126 以上
糖尿病型
そして、または
2 時間値
200 以上
空腹時値
110 未満
正常型
そして
2 時間値
境界型
140 未満
糖尿病型にも正常型にも属さないもの
7
2)経口ブドウ糖負荷試験
ブドウ糖を飲んで、時間をおって採血し、血糖、インスリンの分泌量を調べる検査です。
糖尿病の診断基準となります。
図 4 空腹時血糖値およびブドウ糖負荷試験による判定区分
㎎/㎗
空
腹
時 126
血
糖 110
値
糖尿病型
境界型
正常型
負荷後2時間血糖値
200
140
㎎/㎗
3)グリコヘモグロビン(HbA1C)
グリコヘモグロビンは、血液中の赤血球に含まれているヘモグロビ
ン(赤い色素を持った蛋白質)と血糖(グルコース)が結合したもの
です。高血糖が持続すると血液中の割合が増えるため、グリコヘモグ
ロビン(糖がついたヘモグロビン÷ヘモグロビン全体)は上がります。
グリコヘモグロビンは、赤血球の寿命(約 120 日)が尽きるまで分
解されないので、検査が行われる 1~2 ケ月前の糖尿病のコントロー
ル状態を反映します。
4)その他
この他にもフルクトサミン、グリコアルブミン、1.5AG などの検査があります。
糖尿病の診断基準(2010.7.1~)(下記の条件を満たすと、糖尿病と診断されます)
① 早朝空腹時血糖値
126 ㎎/dl 以上
② ブドウ糖負荷試験 2 時間値 200 ㎎/dl 以上
③ 随時血糖値
200 ㎎/dl 以上
④ HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)(NGSP)6.5%以上
8
どれか1つでも該当すると・・・
Ⅲ 合併症について
糖尿病
図6
糖尿病を長い間治療しないで放置したり、充分な治療をしないと、様々な他の病気を誘発
することになります。これを合併症といいます。合併症は知らず知らずに、全身に忍び寄っ
病
てきて、最後は、失明、足の切断、脳卒中、心筋梗塞など、命にかかわることも、まれでは
ありません。しかし、血糖を良好にコントロールしていれば、合併症の予防は可能であり、
合併症がすでに現れている場合は、進行を抑えることができます。ですから、糖尿病に対す
る正しい知識を身につけ、実践、継続することにより、血糖のコントロールを良好にして、
合併症の早期発見、早期治療をすることが重要です。
1.血管障害合併症
1)細い血管がつまるもの(糖尿病に独特なもの)
(1)糖尿病網膜症
図5
目の網膜の血管がもろくなり、破れて出血して、目が見えにく
くなります。糖尿病の発病から 10 年で 50%、20 年で 100%
の人が発症すると言われています。初期には自覚症状がなく、そ
のまま放っておくと失明することもあります。
現在、糖尿病網膜症の人の 20%以上が、失明しており、成人になってからの失明の原因の
第 1 位になっています。
早期発見で視力障害を防ぐためには、少なくとも年に一度は定期的な眼科の検査を受けて、
合併症の有無をチェックすることが大切です。また、糖尿病網膜症と診断された場合には、
網膜症の程度によって 1~2 ヶ月に一度、あるいは 3~6 ヶ月に一度は病状の進行をチェッ
クすることが大切です。
図5 糖尿病網膜症の病期分類と進展様式
9
(2)糖尿病腎症
高血糖が続くと、腎臓の細い血管に障害をきたし、
尿にタンパクが出たり、むくみ、高血圧などの症状
がでてきます。そのまま放っておくと、腎臓の働き
がさらに悪くなって、慢性腎不全となり、血液透析
や腹膜透析が必要となります。
糖尿病腎症は 10 年以上の長い期間をかけて進
行し、初期には何の自覚症状もないので定期的な尿
中アルブミンの検査が重要です。
現在、糖尿病腎症は、透析導入になる原因の第 1
位であり、40%以上を占めています。
(3)糖尿病神経症
高血糖により、神経を覆っている細胞が膨張し、神経を圧迫することで起こります。末梢
の神経に起こりやすく、両手、両足がしびれたり、感覚が鈍くなります。また、内臓の神経
の障害により下痢や便秘、起立性低血圧、排尿障害、インポテンツ、発汗の異常など様々な
症状が出現します。
2)太い血管がつまるもの(動脈硬化)
(1)狭心症、心筋梗塞
心臓へ栄養や酸素を送る動脈(冠状動脈)の内腔が狭くなっ
たりつまったりするために起こります。
狭心症や心筋梗塞が起こると胸が締めつけられるような激し
い痛みが起こりますが、糖尿病の患者さんでは、はっきりとし
た症状が現れず、たまたま検査した心電図で発見されることが
あります。
(2)脳卒中
脳の動脈がつまる脳梗塞と、血管が破れて出血する脳出血があり、糖尿病の患者さんに多
いのは脳梗塞で発作が起こると手足に麻痺が起こったり、急に言葉が出なくなったり、もの
10
が二重にみえたり、意識を失って倒れたりします。
(3)足の動脈硬化と壊疽(えそ)
足の血管に動脈硬化
が起こると、歩いている
うちに足やふくらはぎ
が痛くなり、しばらく休
むとまた歩けるという
特有な症状が出ること
があります。これを「間
欠性跛行」(かんけつせ
いはこう)と呼び、運動
ができなくなり、生活の
範囲も制限されるよう
になります。
さらに進行すると足先から血管が詰まり、足の一部が腐り、ひどくなると切断しなければ
なりません。
2.その他の合併症
1)感染症
図7
肺炎、肺結核、膀胱炎、陰部真菌感染症、足白癬症(水虫)など
では高血糖が細菌を繁殖しやすくします。
2)皮膚病変
血行障害のため、下肢に褐色のしみができたり、高脂血症により、
目の周りや肘に脂肪腫ができます。
3)白内障
代謝異常により、目のレンズが白く濁ります。
4)歯周病
口の中は食物により細菌が繁殖しやすく、歯肉に炎症を起こ
します。
11
図6
糖尿病の合併症
糖尿病網膜症
細小血管障害
(三大合併症)
糖尿病に独特なもの
糖尿病腎症
糖尿病神経症
血管障害合併症
狭心症・心筋梗塞
大中血管障害
(動脈硬化症)
糖尿病に独特でないもの
その他の合併症
感染症
皮膚病変
白内障
歯周病
12
脳卒中
壊疽
図7 糖尿病の合併症(感染症)
13
14
Ⅳ
治療の目標
糖尿病治療の目標は、血糖を良好にコントロールして糖尿病によって起こる合併症を予防
したり進行を遅らせたりすることです。それによって糖尿病でない人と同じ生活を送ること
ができます。
糖尿病は自己管理の病気と言われています。つまり、糖尿病の治療で一番大事な食事療法
や運動療法を日々続けて病気の将来を決めるのは、あなた自身だということです。自分の病
気の状態を把握し、良好にコントロールしていきましょう。
1 .血 糖
表2
血糖のコントロールは、空腹時血糖値 109 ㎎/㎗以下、食後 2 時間血糖値 139 ㎎/㎗以下、
グリコヘモグロビン 5.7%以下の
の「優」、あるいは、空腹時血糖値 139 ㎎/㎗以下、食後 2
時間血糖値 179 ㎎/㎗以下、グリコヘモグロビン 6.4%以下の
の「良」を目指すようにします。
妊娠の場合は「
「優」を目指します。
表2 血糖コントロールの基準
項目
空腹時血糖値
食後 2 時間血糖値
グリコヘモグロビン(
(HbA1C)
(㎎/㎗)
(㎎/㎗)
(NGSP)(%)
優
80~109
80~139
~6.1
良
110~129
140~179
6.2~6.8
130~159
180~219
判定
可
不可
160~
220~
不十分
6.9~7.3
不
7.4~8.3
良
8.4~
2 .体 重
身長別による理想的な体重を標準体重と言います。標準体重の-10%から+10%までが
正常とされており、-10%より体重が少ないと「やせ」、+10%より体重が多いと「肥満」
とされています。肥満の人ではインスリンの働きが低下しますので、糖尿病の人は、標準体
重の-10%から+10%までを維持することが大切です。
標準体重(㎏)=22× 身長(m)× 身長(m)
BMI
=
体重(㎏)÷ 身長(m)÷ 身長(m)
(*BMIは肥満度の指標として用いられます)
15
3.体内脂肪率
肥満とは、正確には体の中の脂肪の割合が多い状態を言います。最近では、簡単に脂肪の
割合(体内脂肪率)が測定できるようになり、男性では 10~24%まで、女性では 16~29%
までが正常とされています。体重の項でも述べたように、糖尿病の人は脂肪の割合を減らす
ことが大切です。
なお、体内脂肪計は、内科外来、健診指導室、4 階病棟、5 階病棟にありますので御利用
ください。
4.血圧コントロールの目標
糖尿病の患者さんでは、血圧は 130/80mmHg 未満が目標です。
糖尿病腎症の患者さんでは、さらに低く血圧をコントロールする必要
があり、125/75mmHg を目標とします。
高血圧改善のための生活習慣
5.血清脂質コントロールの目標
総コレステロール
200 ㎎/㎗未満
LDL コレステロール
120 ㎎/㎗未満
HDL コレステロール
40 ㎎/㎗以上
中性脂肪
150 ㎎/㎗未満
を目標とします。
16
Ⅴ 治療について
一般に病気の治療というと、内服薬を飲んだり、注射をしたりする
ことと、思われる方が多いでしょう。しかし、糖尿病の治療は違いま
す。糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法です。従って、糖尿
病の人は、まず、食事療法と運動療法をきちんと実践することが必要
です。食事療法と運動療法で良いコントロールが得られない時のみ、
必要最少限の血糖降下剤やインスリン注射の薬物療法を行うことに
なります。
なお、糖尿病患者全体の 95%以上を占めている 2 型糖尿病(インスリン非依存型)では、
食事療法と運動療法をきちんと実施することで、血糖のコントロールが良好になる人が大部
分です。
1 食事療法
食事療法とは、糖尿病を治す特別な食事をとることではなく、合併症の発症予防、進展防
止のために『
『食べ過ぎず、偏食せずに、毎日規則正しい食事を長く続ける』ことです。言い
換えれば、糖尿病の食事療法とは、糖尿病を良好にコントロールし、健康で長生きするため
のものです。
1.食事療法の原則
1)適正なエネルギー量をとる
適正な摂取エネルギー量とは、標準体重を保ちながら日常の生活に必要な量の食事をし、
食べ過ぎや不足をしない食事のことです。1日の食事量(摂取エネルギー量)は、患者さん
の年齢、性別、身長、体重、生活活動量などによって個々に異なりますので、主治医から指
示されます。
2)バランスよく栄養をとる
健康を保つためには、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素および
食物繊維、水分などが不足したり、かたよったりしない栄養のバランスのよい食事をとるこ
とが必要です。食品の中に、食べていけない食品はほとんどありません。また、糖尿病に良
い食品もありません。食品を各々適正な量を食べることが大切です。
17
3)毎日規則正しい食事をする
食事療法は、運動療法と並んで糖尿病治療の基本です。従って、食事療法を中断するとコ
ントロール不良に陥りますので、長く続けることが大切です。
2.1日に何をどれくらい食べたら良いか
1)食品 80 キロカロリーガイドブックの利用
食品 80 キロカロリーガイドブックは、実物大もしくは、縮小写真で約 700 種類の食品を
80kcal=1 単位で掲載し、各栄養素ごとに 4 つの群に分類されています。
1 群 牛乳、乳製品、卵
栄養を完全にする食品群。良質なたんぱく質、カルシウム、ビタミン
などをバランス良く含む
2 群 魚介類、肉類、豆・豆製品
体や筋肉、血液などをつくる食品群。おもに良質たんぱく質源。
3 群 野菜、芋類、果物
体の働きを円滑にする食品群。ビタミン、ミネラル、食物繊維を含む
4 群 穀類、砂糖、油脂、その他嗜好品
力や体温となるエネルギー源の食品群。糖質、脂質、たんぱく質を含む。
主治医から指示された 1 日の摂取エネルギー量(単位数)をもとに各群にバランス良く配
分しましょう。
2)計量
計量用器具(計量カップ、スプーン、はかりなど)を使って、正確に重量を計
ることが基本です。何回もはかって料理していると目安量がわかるようになりま
す。ただし目安量は続けていくうちに狂ってくることがありますので、最低でも
1 月に 1 回はひとつひとつの食品をはかり、確認をする必要があります。
18
3)献立の基本
表3 4
副菜
野菜・海草・きのこ
砂糖
油
主食
主菜
ごはん・パン・めん
卵・肉・魚・豆製品
・
毎食、主食、主菜、副菜を取り入れることです。家族と別の献立では長続きしませんので、
同じ献立で適正な量をとるようにしてください。糖尿病食は健康食ですので、家族にとって
も必要なことです。
4)食事記録
いろいろな食品をバランス良く等分に組み立て正確に実施、継続するためには、摂取した
食事を記録し、患者さん自身が確認することが大切です。
5)間食
表5
血糖のコントロール不良となる最も大きな原因のひとつです。特に和菓子、洋菓子、ジュ
ースなど砂糖を多く含む食品はひかえることが大切です。例えば、まんじゅうは1個 2~3
単位、砂糖が 10g以上含まれています。果物(1 単位/日)、牛乳(1.5 単位/日)を利用
しましょう。
6)飲酒
表6
お酒も間食と同様血糖のコントロール不良となる原因の
ひとつです。アルコールは 1g 当たり 7kcal もエネルギーが
あり、併せて肴などによりカロリーオーバーしてしまいます。
禁酒が原則です。
19
表 3 主な宴席料理の単位数
1 単位=80kcal
料理名
材料・分量
単位数
刺身盛り合わせ
まぐろ3、ぶり2、いか2、大根
1.9
海老の塩焼き
車海老(大)
茹でかに
ズワイガニ
1尾
半分
0.5
1.0
うなぎのかば焼き
3切
3.0
厚焼き卵
1切
1.2
天ぷら盛り合わせ
海老1、白身魚1、いか1、南瓜など
3.2
エビフライ
大正海老3、タルタルソース
3.8
とり唐揚げ
3切
3.4
ステーキ
サーロイン
150g
6.3
茶碗蒸し
海老1、鶏肉1切、銀杏、かまぼこなど
1.3
にぎり寿司
半人前
2.5
アイスクリーム
100g
2.2
★焼き魚、煮魚、酢の物、煮物、鍋料理(しゃぶしゃぶ、魚すき)
などは普段の家庭での食事に準じ、判断して下さい。
20
表 4 外食料理の単位数と単位配分
1)めん類
(単位)
総単位
1群
2群
3群
4群
ざるそば
3.6
-
-
-
3.6
きつねうどん
4.8
-
0.6
0.1
4.1
月見うどん
5.2
1.0
0.1
0.1
4.0
ラーメン
5.5
-
0.6
0.3
4.6
総単位
1群
2群
3群
4群
チャーハン
9.4
1.0
1.0
0.1
7.3
ギョウザ
5.3
-
1.3
0.1
3.9
マーボー豆腐定食
8.1
-
2.5
0.1
5.5
酢豚定食
11.4
-
3.3
0.3
7.8
総単位
1群
2群
3群
4群
カレーライス
9.4
-
1.8
0.3
7.3
サラダ
0.4
-
-
0.4
(1.0)
ハンバーグ定食
8.9
0.2
2.5
0.2
6.0
エビフライ定食
12.4
0.2
1.0
0.6
10.6
総単位
1群
2群
3群
4群
カツどん
10.5
1.2
3.3
0.2
5.8
にぎりずし
6.5
0.4
1.2
0.1
4.8
仕出し弁当
7.6
-
1.2
0.8
5.6
焼き魚定食
6.0
-
1.9
0.3
3.8
2)中華料理
3)洋風料理
4)和風料理
★店により内容、量に差がありますので、平均的な単位数を示しました。
21
表 5 菓子類単位数・砂糖含有量
単位
食 品 名
(重 量)
砂糖
食 品 名
(重 量)
単位数
砂糖
数
くりまんじゅう
( 56g)
2.1
25g
ミルクチョコレート
( 70g)
4.9
25g
どらやき
( 83g)
2.9
25g
シュークリーム
( 70g)
2.1
8g
ようかん
( 70g)
2.6
27g
プリン
(140g)
2.5
15g
カステラ
( 48g)
1.8
18g
アイスクリーム
(120g)
3.3
20g
串だんご
( 70g)
1.8
5g
ドーナツ
(100g)
4.8
7g
たい焼き
(100g)
2.6
25g
ショートケーキ
( 95g)
3.1
15g
豆大福
( 80g)
2.6
23g
チーズケーキ
(105g)
5.1
15g
あんぱん
(100g)
3.4
29g
デニッシュパン
(120g)
5.0
20g
缶コーヒー
(190g)
0.8
14g
乳酸菌飲料
( 65g)
0.6
12g
コーラ炭酸飲料
(350g)
1.7
34g
スポーツドリンク
(340g)
1.2
23g
★ 間食としては、果物(1 単位/日)、牛乳・乳製品(1.5 単位/日)を
利用するように心がけましょう。
表 6 主なアルコール飲料の 2 単位数
ビール
ウィスキー
ワイン
400ml
中ビン1本
発泡酒
360ml
約1缶
70ml
ダブル1杯
日本酒
150ml
1 合弱
220ml
グラス2杯
焼酎
110ml
お湯割り 2 杯
★ 糖尿病の方は、原則として禁酒です。
先生の許可がでた方は 1 日 2 単位が適量です。
22
2 運動療法
1.運動不足・過食
糖尿病は、生活習慣病と言われています。近年、糖尿病が急増
した背景を見ると第一に肥満が挙げられます。肥満は、運動不足
と過食が生み出した病的状態です。
食事と運動は、組み合わせることで糖尿病の治療効果は大幅に向上します。また、運動療法
は糖尿病以外の生活習慣病の予防・治療や健康維持増進にも役立ちます。
2.運動の効果
1)血糖値が正常化する
運動中に血液中の糖(血糖)や筋肉、肝臓に貯蔵されている糖をエネルギー源として使う
ため血糖値が下がります。さらに、運動後は使った糖を再貯蔵する必要があり、血糖が再び
筋肉や肝臓に取り込まれるため血糖値が低めに維持されます。
2)インスリンの効き目がよくなる
定期的に運動することでインスリンの効き目がよくなります。いいかえると血糖値が下が
りやすい(上がりにくい)身体に変化するのです。
3)肥満が解消される
肥満とは「体内に過剰に脂肪が蓄積された状態」のことです。有酸
素運動によって脂肪が燃焼されるために体脂肪率が低下します。
4)高血圧症、高脂血症の改善に有効
有酸素運動を継続していると善玉コレステロール(HDL)の増加、悪玉コレステロール
(LDL)の減少、血圧の正常化がみられるようになり、虚血性心疾患や脳血管疾患の予防に
もなります。
5)筋力、骨強度の維持増強になる
6)心肺機能を良くする
7)運動能力が向上する
23
8)ストレスが解消される
3.メディカルチェック
運動療法を始める前には必ず医師のメディカルチェックを受けてください。
運動は、良いことばかりでなく、やり方によっては逆効果になる場合があります。運動を
始める前には、医師のメディカルチェックを受けて、隠れた合併症はないか、運動で注意す
る事はないかを主治医に詳しくチェックしてもらうことが大切です。
運動療法を禁止あるいは制限した方がよい場合
① 糖尿病のコントロールが極端に悪い場合
② 増殖網膜症による新鮮な眼底出血がある場合
③ 重症の心臓、肝臓、腎臓の合併症がある場合
④ 骨・関節疾患がある場合
⑤ かぜをひいているときなどの体調不良な場合
4.運動の種類と消費エネルギー
表7
体を移動して行なう「有
有酸素運動」と体を静止したまま筋肉だけ動かして行なう「無
無酸素
運動」があり、それぞれ異なった効果が得られます。
「有
有酸素運動」は、酸素の供給にみあった強度の運動で、慢性に持続する事によりインス
リンの感受性が増大します。歩く・走る・跳び上がるなど体を移動させて行う運動です。こ
の運動によって心臓や肺の働きが盛んになり、血液の循環が良くなります。体力が増進し、
エネルギーの消費も激しいので、減量や肥満防止にもなります。
表 7 1 単位(80kcal)分の運動量と食事摂取量
運動の種類
時間(分)
食事の種類
量(g)
ウォーキング(速歩)
25 分
ごはん(半膳)
ジョギング(強い)
10 分
りんご(1/2 個)
ラジオ体操
30 分
あじ(1 匹)
掃除(掃除機)
50 分
絹とうふ(1/3 丁)
食事準備
55 分
卵(1 個)
50g
油(大さじ 1 杯)
10g
平泳ぎ
軽い散歩
片付け
8分
24
50g
150g
60g
150g
「無
無酸素運動」は、おもりや抵抗負荷に対して動作を行う運動で、有効に実施すれば筋力、
筋持久力を増強し、柔軟性を高め、体構成を改良しインスリン感受性を高める効果も期待で
きます。ストレッチ体操や・腕立てふせなど体を静止したまま筋肉だけを動かす運動です。
運動で消費するカロリーは大きくないため、運動をしたからといって食事量を増やすのは
よくありません。ただし、運動の消費カロリーが少ないからといってがっかりする必要はあ
りません。運動の効果は消費カロリーを増やすことよりもむしろインスリン感受性の改善、
心肺機能の向上、体脂肪の燃焼、筋力アップといったものの方が大きいのです。
5.運動の強度
丁度良い運動量は少し汗ばむ程度と言われています。運動の強
さが自分に適しているかを知る方法として脈拍測定があります。
50 歳未満では、1 分間 100~120 拍以内、50 歳以降は 1 分間
100 拍以内にとどめます。しかし不整脈などのために脈拍数を指
標に出来ないときは、
「楽である」または「ややきつい」といった
体感を目安にします。
「きつい」と感じるときは強すぎる運動です。
6.運動の時間
1)歩行運動では、1 回 15 分~30 分、1 日 2 回
1 日の合計は、60 分が理想です。15 分以上続けて行うと血糖値が下が
るだけでなく脂質の燃焼率も高くなるのでおすすめです。ただし、長時間
の運動を 10 分程度の短時間の運動で数回に分けてもカロリーの消費面で
は同等です。ライフスタイルに合わせて運動時間を決めましょう。
2)運動は、食後に行いましょう
図8
(1)効果の面
血糖値は食後に高くなります。血糖値が上がりはじめる食後 30~60 分後から開始するこ
とで食後過血糖を抑制することができます。
(2)安全性の面
薬物療法中は、空腹時に運動することで低血糖の危険性が増します。食後の時間帯は低血
糖の危険性が少ないため比較的安全です。
25
図8 食後に運動をした際の血糖値の変動
運動なし
食事
運動
血糖値
食後に運動
7.運動の量
表8
1 日の運動量として、歩行は約1万歩、消費エネルギーとしては、
160~240 kcal(3 単位)程度が適当です。運動は、日常生活の中に
組み入れ、できれば毎日おこなうことが望ましいです。少なくとも 1 週
間に 3 日以上の頻度で実施することが効果的です。
8.運動の選び方のポイント
運動を継続するためには、「い
いつでも・どこでも・一人でも」でき、体力的にも・時間的に
も無理をせずにできる運動を選び日常生活のなかに取り入れましょう。
1)人気の運動
1位
速歩
2位
散歩
3位
体操
その他 自転車・ジョギング・水泳・ゴルフ・なわとびなどと
なっています。
1~3 位の運動はどれも 20~30 分で 1 単位 80 kcal 消費します。
26
表8 運動交換表
1 単位=80 kcal
運動の強さ
内容
1 単位の所要時間
軽い散歩
軽い運動
軽い体操
30 分
家事一般・草むしり
ウォーキング(速歩)
やや強い運動
25 分
自転車(平地)
ゴルフ
15 分
階段のぼり・雑巾がけ
ジョギング(強い)・縄跳び
強い運動
自転車(坂道)
テニス・スキー・スケート
10 分
バレーボール・ダンス
激しい運動
水泳(クロール)
5分
バスケットボール
2)日常生活の中で工夫して運動を行いましょう
運動の効果を引き出すためには、毎日規則正しく行うことが必要です。
自分の生活の中で習慣的に行える時間を選んでみましょう。
また、身近な日常生活の中で体を動かす機会をできるだけ増すようにし
ましょう。例えば、エスカレーターやエレベーターを使わず、階段を使っ
たり買い物に車を使う方は、自転車や、歩きに変えてみましょう。
9.運動の効果判定
運動の効果判定は、自覚症状とメディカルチェックの両方で判定します。自覚症状では、
体調が良くなったり、動く事が楽になったという感覚が持てるときは、運動療法の効果が出
ていると見て良いでしょう。そういう場合には血糖値や体重にも何らかの変化が出てくるで
しょう。カロリーカウンター(万歩計)を利用するのも良いでしょう。1 日の運動量を評価
できると共に、目標もできて楽しく続けることができるでしょう。逆に疲労感が残ったり、
きつさを感じたり膝や足の一時的な筋肉の痛みなどがある場合は、不適切な部分があるはず
ですから、運動の内容を再検討してください。運動のやりすぎや合併症を知らずに運動を続
けていて、病気を悪化させる事がないように、月に 1 度は主治医のチェックを受け、効果の
27
判定とアドバイスを欠かさずに受けましょう。
10.その他の注意事項
1)準備体操・整理体操をしましょう
2)運動に適した、服装と、靴を選びましょう
3)汗をかいたら、体を拭き、水分補給をしましょう。
4)運動時は、糖尿病カード、糖尿病手帳を持参しましょう。
5)薬物療法を行っている方は、低血糖時の対応のため、ブドウ糖やあめなどの糖分を含む
食品を必ず持参しましょう。
6)運動は、楽しく行いましょう。
運動療法を継続して、
糖尿病と上手につきあっていきましょう
28
3 薬物療法
1.なぜ薬が必要となるのか
糖尿病の治療は食事療法、運動療法が基本です。それでも良いコントロールが得られない
時に、最少限の内服薬やインスリン注射の薬物療法が必要となります。糖尿病の病型によっ
て用いる薬が違います。1 型の方は、インスリンが体内で作られず、インスリンの不足が著
しいので、インスリンを外から補給する必要があり、インスリン注射薬が絶対必要です。1
日 3~4 回のインスリン注射が治療の基本となります。一方、2 型の方は、食事療法と運動
療法をしっかり実施しても良好な血糖コントロールが得られない場合に内服薬が処方され、
さらに、内服薬が効かなくなった場合にインスリン注射による治療が開始されます。内服薬
やインスリン注射で治療することを薬物療法といいます。
2.糖尿病の薬を使うときの注意点
糖尿病の薬は、本当に使用する必要があってはじめて使用するものです。また、薬を使用
しているから食事はいくら食べてもよいと誤解してはいけません。血糖を下げる薬ですから、
薬の量や飲み方を間違えないよう注意が必要です。必ず、決められた薬の種類、決められた
量を、決められた時刻に使用してください。時刻を変えたり中止したりしてはいけません。
自分勝手に調節すると、コントロールの乱れや低血糖の原因となるので、主治医の指示を守
りましょう。
3.糖尿病の薬の種類
表9 10
糖尿病の薬には、スルヒニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬、インクレチン関連薬、
インスリン抵抗性改善薬、ビグアナイド系薬、α‐グルコシダーゼ阻害薬、インスリン注射
薬があります。
29
表9 内服薬一覧表
薬品名
規格
用法
用量
作用時間
スルホニル尿素剤(インスリン分泌促進薬)
グリミクロン錠
40 ㎎
1~2 回 40~120 ㎎
6~24 時間
ダオニール錠
2.5 ㎎
1~2 回 1.25~7.5 ㎎
12~24 時間
アマリール錠
0.5・1・3 ㎎ 1~2 回 0.5~4 ㎎
6~12 時間
速効型インスリン分泌促進薬
スターシス錠
90 ㎎
3回
270 ㎎
3 時間
グルファスト錠
10 ㎎
3回
30 ㎎
3 時間
インクレチン関連薬(DPP-Ⅳ阻害薬)(インスリン分泌促進薬)
エクア錠
50 ㎎
2回
50~100 ㎎
12~24 時間
グラクティブ錠
50 ㎎
1回
25~100 ㎎
24 時間
ネシーナ錠
25 ㎎
1回
25 ㎎
24 時間
15 ㎎・30 ㎎ 1回
30 ㎎
20 時間
インスリン抵抗性改善剤
アクトス錠
ビグアナイド剤
メトグルコ錠
250 ㎎
2~3 回 250~2250 ㎎
6~14 時間
グルコバイ錠
100 ㎎
3回
150~300 ㎎
2~3 時間
ベイスン OD 錠
0.3 ㎎
3回
0.6~0.9 ㎎
2~3 時間
セイブル錠
50 ㎎
3回
150~225 ㎎
1~3 時間
1回
1錠
24 時間
α-グルコシダーゼ阻害剤
配合剤
リオベル配合錠LD
30
1)経口血糖降下薬
(1)スルフォニル尿素薬(インスリン分泌
促進薬)
アマリール・グリミクロン・ダオニール
① 作用について
膵臓を刺激して、膵臓の中に蓄えられている
インスリンを分泌させることによって血糖を下
げます。
② のみ方について
主治医の指示通りに飲むことが大切です。通常、食前に飲みます。食前に飲む指示がでて
いても、もし飲み忘れたときは、食後 30 分ぐらいまでに飲んでください。それ以上時間
が過ぎていた場合は、飲まないでください。次の指示からきちんと飲んでください。決し
て一度に 2 回分の量を飲んではいけません。低血糖を起こす危険が高くなります。
③副作用について
低血糖をおこすことがありますので注意しましょう。その他に、胃腸障害、食欲不振、嘔
吐、発疹などがまれにでることがあります。副作用らしき症状が出たら、すぐに主治医に相
談してください。
④他の薬との飲み合わせについて
他の薬をいっしょに飲んだ場合、インスリン分泌促進薬の作用を強めたり、弱めたりする
ことがあります。他の薬を飲む場合は、主治医に相談しましょう。
(2)速効型インスリン分泌促進薬
スターシス・グルファスト
①作用について
服用後、速やかに膵臓に働いてインス
リンを分泌し、食後の高血糖を改善し、約 3 時間で効果が消失する薬です。
②飲み方について
食事の直ぐ前(食前 10 分以内)に飲みます。食事を始めた後に飲み忘れに気づいたら、
その分の薬は飲まないようにしてください。
③副作用について
低血糖をおこすことがありますので注意しましょう。
31
(3)インクレチン関連薬(DPP-Ⅳ阻害薬)
(インスリン分泌促進薬)
エクア・グラクティブ・ネシーナ
①作用について
服用後、消化管ホルモンであるインクレチンに
働き、そのインクレチンが膵臓に働いてインスリン
を分泌させることにより血糖をさげます。
②飲み方について
1日1回、主治医の指示通りに飲むことが大切です。通常、食前に飲みます。食前に飲む
指示がでていても、もし飲み忘れたときは、食後 30 分ぐらいまでに飲んでください。
③副作用について
低血糖をおこすことがありますので注意しましょう。
(4)インスリン抵抗性改善薬
アクトス
① 用について
肝臓や筋肉などの体の個々の器官で低
下したインスリンの作用する機能を改善し、
インスリン本来の作用で血糖を下げる薬です。インスリンを分泌させる力はありません。肥
満の方に効果的ですが、運動の代わりにはなりません。
③ のみ方について
食後あるいは食前に飲みます。もし飲み忘れたときは、食後 30 分ぐらいまでに飲んでく
ださい。それ以上時間が過ぎていた場合は、飲まないでください。次の指示からきちんと飲
んでください。決して一度に 2 回分の量を飲んではいけません。低血糖を起こす危険が高く
なります。
③副作用について
他の糖尿病の薬と併用した場合に、低血糖をおこすことがありますので注意しましょう。
その他に、吐き気、嘔吐、浮腫、肝機能障害、体重増加などがまれにでることがあります。
副作用らしき症状が出たら、すぐに主治医に相談してください。
32
(5)ビグアナイド系薬
メトグルコ
① 作用について
肝臓の糖を作る働きを抑えると同時に、筋
肉などでの糖の利用を促して血糖を下げる働きがあります。
②飲み方について
食後に飲みます。もし飲み忘れたときは、次の指示からきちんと飲んでください。決して
一度に 2 回分の量を飲んではいけません。
③副作用について
吐き気、嘔吐、腹痛、乳酸アシドーシスなどがまれにでることがあります。副作用らしき
症状が出たら、すぐに主治医に相談してください。
発熱時、下痢など脱水の恐れがあるときは休薬してください。
ヨード造影剤使用の際は、2日前から休薬してください。
強い倦怠感、吐き気、下痢、筋肉痛などの症状が現れたら、薬を中止し、
主治医に連絡してください。
アルコール摂取により、副作用が出やすくなります。飲酒は控えてください。
(6)α-グルコシダーゼ阻害薬
グルコバイ・セイブル・ベイスンOD
①作用について
食べ物の中に含まれている糖質の消化吸収を
遅くして、食後の急激な血糖上昇を抑えたり、
日内変動幅を小さくし血糖をコントロールします。
②飲み方について
食事の直ぐ前(食直前)に飲みます。もし飲み忘れたときは、食事中に飲んでください。
食後あるいは空腹時に飲んでも効果はありません。消化薬は飲まないようにしてください。
③副作用について
腹部膨満感、放屁、下痢、軟便などがでることがあります。しかし、この症状は飲み続け
るうちに減っていきます。他の糖尿病の薬と併用した場合に、低血糖をおこすことがありま
す。もし低血糖が起こったら 10~15gのブドウ糖をとってください。他の糖(砂糖など)では、低血
糖が回復しません。
33
(7)配合剤
リオベル配合錠LD
①作用について
アクトスとネシーナの両方の成分が
配合されているお薬で、両方の作用がありま
す。
②飲み方について③副作用については両方の項目を参考にしてください。
2)注射薬
(1)インクレチン関連薬(GLP-1)
(インスリン分泌促進薬)
ビクトーザ・バイエッタ
① 作用について
消化管ホルモンであるインクレチンで、
膵臓に働いてインスリンを分泌させることにより血糖をさげます。
②投与方法について
1日1回(ビクトーザ)、1日2回(バイエッタ)、主治医の指示通りに注射します。
③副作用について
低血糖をおこすことがありますので注意しましょう。
(2)インスリン注射薬
①どんな時にインスリン注射薬を使うのか
インスリン療法は、1 型糖尿病や 2 型糖尿病で飲み薬ではうまく
血糖コントロールできない人に用いられます。また、普段は、飲み薬
や食事療法のみでコントロールされている人でも、重い病気にかかった場合は一時的に用い
られることがあります。この場合は、病気が回復すれば再び元の治療に戻ることができます。
インスリン療法の適応
・1型糖尿病
・2型糖尿病で飲み薬で血糖のコントロールが不十分な場合
・肝・腎疾患の合併糖尿病
・感染症の合併、手術時、外傷時、高カロリー輸液施行時
34
・糖尿病の妊婦
・糖尿病昏睡
②インスリン注射薬とは
インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、タンパク質の原料であるアミノ酸ででき
ているため、内服すると胃で消化されて効果が期待できません。そのため注射薬しかありま
せん。現在使用されているインスリン注射薬は、遺伝子工学により作られており、あなた自
身のインスリンと同じ構造の安全なものです。
② インスリン注射薬の種類と特徴
表10
インスリン注射薬の種類は、作用の発現時間と持続時間により分類します。どの型のイン
スリン注射薬をどのように使うかは、個々の患者さんの病状によって主治医が決定します。
①超速効型
アピドラ・ノボラピッド・ヒューマログ
作用発現時間は注射後約 15 分で、持続
時間は約 3~5 時間です。外観は無色透明です。
②速効型
ノボリン R・ヒューマリン R
作用発現時間は注射後約 30 分~1 時間で、持続
時間は約 5~7 時間です。外観は無色透明です。
③中間型
ノボリン N
作用発現時間は注射後約 1~3 時間半で、持続時間は
約 12~24 時間です。外観は懸濁しています。
④持効型
レベミル・ランタス
作用発現時間は注射後約 1 時間で、持続時間は
約24時間です。外観は無色透明です。
35
⑤混合型
イノレット 30R・ノボリン 30R
ノボラピッド 30 ミックス・ノボラピッド70 ミックス
ヒューマログミックス25・ヒューマログミックス 50
速効型と中間型を混合したもので、作用発現時間は注射後約 30 分~1 時間で、持続時間
は約 18~24 時間です。外観は白色に懸濁しています。
④注射器の種類
使い捨て注射器には、シリンジ型とペン型(注射液と一体)、キッチンタイマー型(注射液
と一体)があります。手の大きさ、握力、脳梗塞などによる麻痺の有無によっては、注射器
が使いにくいと感じる場合があります。その際は、使いやすい注射器へ変更できる場合があ
りますので、一度、医師・薬剤師にご相談ください。
⑤注射薬の保管について
予備のインスリンの注射液は、2~8℃(冷蔵庫の卵入れ等)に遮光して保存します。冷蔵
庫に入れなかった場合、30℃未満であれば 1 ヶ月ぐらいは有効ですが、次の 3 大注意は必
ず守ってください。
3 大注意
使用中の注射薬は
冷蔵庫に入れない
☆凍らせない
☆直射日光を避ける
☆高温を避ける
使用中のインスリン注射薬は、絶対に冷蔵庫
に入れないでください。故障の原因となります。
36
高温・直射日光は
避ける
表10 インスリン注射薬一覧表
薬品名
作用時間
1ml
中
の単位
外観
最大
発現
注射器
持続
(時間) (時間)
超速効型
ヒューマログ
100
15 分
ノボラピッド
100
15 分
アピドラ
100
15 分
0.5
~
ペン型キット
3~5
透明
3~5
透明
3~5
透明
1~3
5~7
透明
シリンジ
1~3
8
透明
ペン型キット
1.5
1~3
0.5
~
1.5
シリンジ
ペン型キット
ペン型キット
シリンジ
速効型
30 分 ~
ヒューマリン R
100
ノボリン R
100
30 分
100
1.5 時間 4~12
24
白濁
ペン型キット
レベミル
100
1 時間
24
透明
ペン型キット
ランタス
100
24
透明
1時間
中間型
ノボリン N
持効型
1~2
時間
ペン型キット
シリンジ
混合型
ノボラピッド 30 ミックス
100
15 分
1~4
24
白濁
ペン型キット
ノボラピッド 70 ミックス
100
15 分
1~4
24
白濁
ペン型キット
ノボリン 30R
100
30 分
2~8
24
白濁
ペン型キット
イノレット 30R
100
30 分
2~8
24
白濁
キッチンタイマー
ヒューマログミックス 25
100
15 分
1~6
24
白濁
ペン型キット
ヒューマログミックス 50
100
15 分
1~4
24
白濁
ペン型キット
37
⑥注射する時刻と部位について
原則として、超速効型インスリン注
①上腕の外即部
射液は食事の 15 分前に注射します。
場合によっては食直後に注射すること
もあります。食前の注射が難しい場合
②お腹
③お尻
は、医師にご相談ください。
その他のインスリン注射液は食事の
④太もも上半分の
外側
30 分前に注射します。インスリン注射
液の種類によって寝る前に注射する場
注射毎に2~3cm ずつ
注射部位をずらしていく
合もあります。
インスリンは効果を持続させる必要があるため皮下に注射します。部位としては、おなか
(腹壁)が最も適しており、それ以外に上腕、太もも、おしりがよいとされています。イン
スリンの吸収速度が違いますので、同じ部位に注射してください。また、同じ場所に繰り返
し何度も注射していると皮膚が盛り上がったり、へこんだりします。そのため、注射する場
所を同じ部位の中で毎回指 2~3 本ずらして注射します。
⑦副作用について
低血糖症状、アレルギー(じんましん、かゆみ)がまれにでることがあります。副作用ら
しき症状が出たら、すぐに主治医に相談してください。
⑧注意事項
1)食事時間
注射薬の作用が効果的に働くように朝食・昼食・夕食の時間を決めて、規則正しく守って
ください。
2)食事がとれなかったり、食事の量が少ない時
下痢、嘔吐や食欲不振などのために食事量が減ったら、インスリンの量を減らす時があり
ます。また、発熱した時は、一般にインスリンの量は余分に必要となります。このような時
には、主治医に相談してください。
3)激しい運動をした時
インスリン療法の人が、いつもより激しい運動をした時は、食べ物を補給して低血糖を予
防してください。
38
4)外出や旅行の時
「今日は注射はお休み」というわけにはいきません。常にインスリン
と注射針を忘れないようにしましょう。特に旅行では食べ過ぎて血糖
コントロールが乱れがちになりますので注意しましょう。
飛行機や観光バスに乗る際の注意として、インスリンは手荷物とし
て持ち込んでください。凍結することがあります。
5)インスリン注射をする前に確認しましょう
使用する注射液は使用期限内であるか確認しましょう。
(使用期限は注射液の外箱や容器に記載してあります。例:2012.1⇒
2012 年 1 月)
使用するインスリン注射液の種類と使用量を確認しましょう。
凍結はしていないか、血液の混入はないかの確認を毎回してください。
空打ちにより、液が出るかどうか、針がきちんと装着されたかどうかの確認を毎回してく
ださい。
使用期限表示の例
6)使用済みの針
使用済みの針は、医療用廃棄物となります。家庭用ごみとして不燃物ご
み収集日に出さないでください。危なくないように蓋のできる空き瓶、空
き缶か硬めのプラスチックの容器などに入れて病院(中央処置室)に持参
してください。また、外キャップをはめた状態で廃棄してください。再使
用は避けてください。
薬剤師会の薬局でも、針を回収できる薬局があります。薬局薬剤師にご相談ください。
また、使用済みの注射器は一般廃棄物です。各自治体の分類に従って家庭ごみとして廃棄
して下さい。
39
インスリン用注射針
血糖測定用針
血糖測定用チップ
医療用廃棄物
針を外した使用済みの注射器
一般廃棄物
7)白色に懸濁している注射液を使用する場合
白色に懸濁している注射液を使用する場合は、インスリン注射器を 5~6 回ゆっくりと転
がすようにまわし、インスリンを均一に混和してから使用してください。
4.薬物療法時の注意点
1)糖尿病昏睡(高血糖昏睡)
(1)どんな時に
①暴飲暴食をする
②非常に疲れる
③風邪をひいたり、吐き気や下痢をしている
④インスリン注射や経口血糖降下薬を勝手に止める
(2)症状
前ぶれの症状としては、のどの渇き、多尿、腹痛、吐き気、だるさなどがありますが、最
終的に意識がなくなり昏睡状態となります。とくに軽い意識障害が出た場合は、手遅れにな
らないうちに病院を受診しましょう。
40
2)低血糖昏睡
(1)どんな時に
①インスリン注射や経口血糖降下薬の量が多すぎる
②食事を摂らない
③食事の時間が遅れる
④激しい運動をする
⑤空腹時に運動をする
④ ルコールを飲む
(2)症状
表11
前ぶれの症状として、強い空腹感、手や指のふるえ、冷や汗、動悸、吐き気、頭痛などが
ありますが、意識がなくなった場合は、すぐに病院を受診しなければなりません。
表11 血糖値と低血糖症状
血糖値(㎎/㎗)
症
状
50
空腹感、吐き気、あくび、頭痛、めまい
40
ふるえ、動悸、冷や汗、顔面蒼白
30
異常行動、けいれん、昏睡
(3)対応策
①その場ですぐに砂糖や糖分のあるジュースなど甘いものを飲んでください。
②15~20 分で症状が治まってきますので安静にして休んでください。
③その後、糖質の食べ物を摂ってください。
④症状が治まらない時は、すぐ病院へ受診し、主治医の指示を受けてください。
⑤低血糖予防のために、常に砂糖(ペットシュガー)やジュースなどを持ち歩くことも大
切です。
⑥飴などを持ち歩いている方が見られますが、使用する場合は、なるべく細かく噛み砕い
て飲み込んでください。舐めていては低血糖からの回復が遅れます。
⑦低血糖対応のブドウ糖は、病院またはかかりつけ薬局で無料で提供しています。必要な方は
お申し出ください。
41
ブドウ糖(粉末)
ブドウ糖(固形)
1 袋あたり10g
1 袋あたり5g
(4)注意点
①指示された量と飲む時刻、注射する時刻を守りましょう。
②食事の量と時刻を守りましょう。食事が摂れない時は薬を飲むのを控えましょう。
③薬を飲んだり、注射をしたら必ず食事を摂りましょう。
④運動は食後にしましょう。
⑤下痢をしたり、風邪をひいたりして体調の悪い時は、主治医に連絡し指示を受けましょ
う。
糖尿病昏睡や低血糖昏睡などの不測の事態に備えて、医師から対応・対策をよく聞いてお
くとともに、常に糖尿病患者手帳などを身につけておきましょう。また、このような事態に
なったら、すぐに主治医に連絡し、指示を受けましょう。
42
Ⅵ 検査と血糖自己測定
1.糖尿病に必要な検査
1)尿糖検査
(1)糖尿病の疑いがあるかどうかを調べる検査です。
(2)尿糖が陽性(+)の場合、糖尿病である可能性が高いといえます。しかし、尿糖が陽
性(+)でも糖尿病でない場合もあります。一方、尿糖が陰性(-)だからといって
糖尿病でないとは言えません。
(3)ビタミン C が尿中にあると偽陰性(みせかけの(-))を示すので、検査を受ける前は、
ビタミン C が含まれる薬の服用を一時控えます。
2)血糖検査
(1)血液中のブドウ糖の量を検査します。
(2)血糖値は食事と関係があり、食事によって一旦上がった後また下ってきます。
(3)検査当日の朝食を抜いて空腹の状態で採血し、血糖値を測る検査を「
「空 腹時血糖検査 」
といいます。1
126 ㎎/㎗以上ある場合、糖尿病の可能性が考えられます。
(4)食事からの時間をきめないで血糖値を測る検査を「
「随時血糖検査」といいます。2
200 ㎎
/㎗以上ある場合、糖尿病の可能性が考えられます
3)ブドウ糖負荷試験
食後の血糖値の変化を調べるために、一種のシミュレーションとして行われる検査です。
(1)ブドウ糖を飲む前、飲んでから 30 分おきに採血をして、
血糖、インスリンの分泌量を調べる検査です。
(2)2 時間後の血糖値が、1
140 ㎎/㎗未満を正常型、200 ㎎/㎗以上を糖尿病型、その間
を境界型といいます。
4)ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c(NGSP))
(1)ヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)
は、血液中の赤血球中に含まれている
ヘモグロビン(赤い色素を持った蛋白
質)とブドウ糖が結合したもので、検
査が行われる過去 1~2 ヶ月の血糖値
の平均値を反映します。
43
(2)血糖値が高いとヘモグロビン(HbA1c)の量も増えます。つまり血糖が高ければ高
いほど、またブドウ糖にさらされる時間が長ければ長いほど、それに比例してヘモグ
ロビン(HbA1c)も増加することになります。
ちょうど「砂糖漬けの果物」を連想するとわかりやすいかもしれません。砂糖水が濃
ければ濃いほど、また砂糖水につかっている時間が長ければ長いほど、糖と結合する
割合が高くなるのです。
2.血糖自己測定
患者さん自身が指先から採血して、血糖を測定するもので、食前、食後を中心に 1 日何回
か測るのが普通です。血糖自己測定は糖尿病のコントロールのために大変役立つものです。
血糖自己測定を行うことにより、患者さん自身血糖を正常に保とうとする意欲が旺盛となり、
同時に日常生活における自己管理がより正しく行われるようになります。目的には以下のも
のがあります。
1)食事療法が適正かの確認
2)運動療法の効果が上がっているかの確認
3)著しい高血糖や低血糖がないかの確認
4)インスリンや血糖降下薬の量はちょうどいいかの確認
理想的な実施回数は、例えば、毎日の早朝空腹時、月1~2 回の食前、食後 2 時間および
就寝前、低血糖などの異常を感じたときです。
インスリン注射をしている方は、保険適用となり、病院から機器をお貸しいたしますので
主治医にご相談ください。
血糖値は刻一刻と変化しています。
自分で測って変化を知りましょう。
グリコヘモグロビン(HbA1c)は
医療用廃棄物(使用済チップと針)
血糖値に比べ変化は大きくありません。
病院で測った結果をメモして長期的な
血糖コントロールの指標にしましょう。
穿刺針の廃棄は、インスリン注射針と同様に医療用廃棄物となります。家庭用ごみとして
不燃物ごみ収集日に出さないでください。蓋のできる空き瓶、空き缶か硬めのプラスチック
の容器などに入れて病院(中央処置室)に持参してください。
44
血糖自己測定に必要な物品
タイプ1
タイプ2
メディセーフフィット
グルコカード G+メーター
タイプ3
血糖値を
測る機械
(本体)
ワンタッチウルトラビュー
血液を
付ける
チップ
(消耗品)
メディセーフ
フィットチップ
G センサー
LFS クイックセンサー
ジェントレット
ワンタッチペン
血液を
採取する
ために使う
穿刺具
メディセーフ
ファインタッチ
穿刺具に
付ける針
(消耗品)
メディセーフ針
(ファインタッチ専用)
ワンタッチペン
ジェントレット針
ランセット
消毒用の
アルコール
綿
スワブパッド
45
など
血糖値の測り方
タイプ1
タイプ2
メディセーフフィット
グルコカード G+メーター
タイプ3
チップを
本体に
付ける
血液を
採取する
ために
針を刺す
血液を出す
チップに
血液を
付ける
(吸わせる)
測定結果を
見る
46
ワンタッチウルトラビュー
Ⅶ 日常生活の注意点
糖尿病になると体の抵抗力が落ち、虫歯や歯槽膿漏になりやすく、末梢の循環不全などに
より特に足の異常が起こりやすくなります。日頃から歯や足の手入れをかかさないようにし
ましょう。
1.体を清潔に保ちましょう
糖尿病になると体の抵抗力が落ち、虫歯や歯槽膿漏になりやすく、末梢の循環不全などに
より特に足の異常が起こりやすくなります。日頃から歯や足の手入れをかかさないようにし
ましょう。
1)歯
糖尿病がもたらす高血糖は、体中の細い血管にダメージを与えますが、
それは歯茎においても同じです。血行不良がおきて、歯肉への栄養供給
や修復機能が低下します。また、糖尿病の進行により白血球の機能が低下すると、歯周病に
対する歯肉の防御機能も低下して、歯周病が悪化しやすくなります。その他にも唾液の減少、
口の中の糖分の増加などが原因とされています。
歯周病とは、歯肉及び歯を支える周囲の組織に起こる病気です。歯肉にだけ炎症がある歯
歯
肉炎と、さらに進んで、歯を支えている歯槽骨にまで及んだ歯
歯周炎があります。
症状として、歯肉が赤く腫れる、出血する、口臭、口の中がねばつく、歯がグラグラする、
歯と歯肉の間に隙間(歯周ポケット)ができる、膿が出る、歯槽骨の吸収などがあります。
虫歯や歯周病で苦しまないためにも、規則正しい食生活を維持するとともに、歯をよく磨き、
つねに口の中を清潔に保つことが必要です。
①食べたらその都度歯を磨きましょう
物を食べたらその都度なるべく早く歯を磨き、歯垢がこびりつかないようにし、口の中を
常に清潔にしておくことが大切です。
②必ず歯ブラシで磨きましょう
歯垢の除去には歯ブラシが一番効果的です。液体歯磨きでうが
いをするだけでなく、歯ブラシで磨き残しがないように丁寧に磨
きましょう。
47
③歯の間を磨きましょう
歯垢が溜まりやすいのは、歯と歯の間の隙間や、歯と歯肉の間です。歯ブラシの毛先をし
っかりとあて、力を入れずに小さく振動させます。
④鏡で確認しながら磨きましょう
慣れるまでは鏡を見て磨きましょう。1 日に 1 回は歯間ブラシや糸ようじを使って、細部
に溜まった歯垢を除去します。
⑤歯ブラシは小さめのものを選びましょう
大きすぎると口の中で操作しづらいので、毛の部分が小さめのものを選びましょう。
⑥歯磨き剤に惑わされないようにしましょう
歯磨き剤を使うと、よく磨けていなくても清涼感が得られ、磨けた気がします。歯の変色
を防止する効果がありますが、使い過ぎると歯が削れたり、歯肉を痛めます。
⑦かかりつけの歯科医を決めましょう
かかりつけの歯科医を決め、定期的な歯科検診を受けましょう。治療
はもちろんですが、予防に重点をおくことが大切です。また、虫歯や歯
周病は、食事やストレス、喫煙などの生活習慣と密接に関わりあってい
ます。虫歯や歯周病を予防するためにも、生活習慣を見直しましょう。
定期的に歯科を受診した歯のチェックをしてください。年に 1~2 回は歯石の除去をして
もらいましょう。
2)足
糖尿病合併症の一つである糖尿病足病変の発症は年々
増加しています。足潰瘍・壊疽は突然発症するわけでは
なく、糖尿病神経障害や血管障害をベースとして、外傷、
感染などをきっかけに進行します。
血糖コントロールが悪いことで感染や創傷の治癒を遅
くらせてしまいます。進行すると足の切断が避けられな
ケガやヤケドに
気付きにくい
ケガが治り
にくい。壊疽
感染症にかかりやす
く、化膿しやすい
い場合があります。重症にならないための予防が必要です。
糖尿病足病変の防止には 1 日 1 回素足を観察し、異常があれば直ちに受診するようにしま
しょう。
48
①足を観察しましょう
足を観察しましょう、少しでも異常に気づいたら医師に相
談しましょう。
傷ややけどに気づかず、重症になることがあります。タコ、
魚の目、靴擦れ、皮膚の乾燥、足の変形、白癬(水虫)はな
いか足を見る習慣をつけましょう。
皮膚の異常がある場合は、主治医に相談し、皮膚科を受診し治療しましょう。
②足を清潔にしましょう
入浴前は手で湯かげんを確かめ、足の裏や指の間まで石鹸でやさしく洗いましょう。入浴
後は、柔らかいタオルで足の指の間までていねいに拭きます。入浴できない日も足を洗いま
しょう。また皮膚が乾燥しているときは、クリームを塗っておきましょう。
③やけどに注意しましょう
神経障害により、温度に対して感覚が鈍くなるため、やけどを起こしやすくなります。
④足の動脈硬化の進行を予防しましょう
タバコ、高血圧、高脂血症などは足の動脈硬化を進行させる原因になります。禁煙、食事
療法を守り生活習慣の改善が足病変の予防に重要です。
誤って傷を作らないように、
爪切りでなく、
なるべくやすりで削る
⑤爪の手入れをしましょう
深爪しないように注意しましょう。できるだけまっす
ほぼ直線になるように
深爪に注意
ぐ切り、爪の角がくい込まないようにしましょう。
⑥靴下をはきましょう
素足は禁物です。足の保護のために、足にあった靴下をはきましょう。夏は汗で足がふや
けないように、適宜とりかえましょう。
足の甲が圧迫されない
⑦靴選びは慎重に行いましょう
外界からのけがを受けやすいため足を保護するために靴
を履きましょう。靴ずれ、魚の目、足の変形などが足の潰瘍
や壊疽の原因になります。靴を選ぶときは、足が大きくなる
サイズが合ったもの
爪先が当たらないもの
ヒールの高くないもの
夕方に合わせ、足にフィットするか十分注意し慎重に選びましょう。
49
⑧けがの処置について
糖尿病の方は化膿しやすいため、小さな傷でも重症になることがあります。
けがをしたら消毒をし、医師に診てもらいましょう。
2.病気になったらはやめに受診しましょう
病気にかかると食事ができなかったり、水分がとれなかったりして脱水になり血糖の値が
大きく変動しコントロールが悪くなることがあります。糖尿病で薬物治療中の方は、勝手に
中止せず主治医に相談し指示を受けましょう。
早めに受診して適切な治療を受けましょう。
3.季節ごとの注意事項
1)夏期
①汗をかきやすい季節なので肌着、靴下は吸湿性の良い綿のものにしましょう。
②出かける時は、できるだけ日中を避け、日中出かける時は、帽子・日
傘などで日よけをしましょう。
③クーラー使用時は室温 28℃程度とし、外との温度差が 5℃以上にな
らない様心掛けて下さい。
④汗をかいた後は、水分補給を必ずしましょう。
2)冬期
①寒い季節の外出は、風邪をひかないように注意して下さい。
・防寒に十分注意してマスク、手袋を使用しましょう。
②乾燥しやすい季節なので皮膚のあかぎれ・ひび割れ・しもやけにならないように注意して
ください。
・水仕事をする時は、ビニール手袋を使用しましょう。
・血行を良くするようマッサージしましょう。
・保湿剤(クリーム)を塗りこまめに手入れしましょう。
③房器具を使用する時は、火傷をしないように気をつけましょう。
・アンカ・湯たんぽ・携帯用カイロなど直接肌に触れるものは、
使用しないようにしましょう。
使用する場合は、肌に触れないように注意し足から 10cm 以上離して使用しましょう。
50
4.旅行について
血糖のコントロールがよければ主治医に相談し許可をもらい出かけましょう。きちんと準
備し上手に旅行をしましょう。
1)糖尿病手帳を持ち歩きましょう。
糖尿病手帳、健康保険証を忘れずに身につけておきましょう。住所、
氏名、緊急連絡先を記入しておきましょう。
2)低血糖の予防のために食品を用意しましょう。
食事時間が遅れることがありますのでクラッカー、ビスケット、チーズなどすぐ食べられ
る食品を用意しましょう。
低血糖に備えて砂糖はいつもより多めに持って行きましょう。
3)指示書をもらいましょう。
海外へいく場合は、必要なら医師の指示書を書いても
らいましょう。
また時差に合わせた薬の調整をしてもらいましょう。
「私は糖尿病です」と外国語で書かれたカード
5.定期検診について
定期的な外来受診をし、糖尿病のコントロール状態をチェックしてもらいましょう。
内科は月に 1 回、
眼科の眼底検査は半年に一度を目安とし眼科の医師の指示に従いましょう。
定期外受診について
予約外で受診する時
平日午前は、再診手続き後内科外来で対応
平日午後・休日・夜間は、救急外来で対応
51
Ⅷ 災害時の対策
災害はいつ起こるかわかりません。いざという時に困らないために、普段から備えておき
ましょう。
1.日頃の準備編
1)非常持ち出し袋を作っておきましょう。
一人 10~15kg までとし、直ぐ持ち出すことができる場所に起きましょう。
(非常持ち出し袋の内容)
水・食料・タオル・懐中電灯・電池・ラジオ・お金
薬剤提供用紙または糖尿病手帳
応急手当セット
低血糖予防になるもの(砂糖・ブドウ糖)
2)食料は保存できるものを準備しましょう。
乾パン・クラッカー・野菜ジュース・レトルト食品・缶詰など。使用期限に注意しましょ
う。
3)飲料水の準備をしましょう。
ペットボトルの水・ポリタンクなどを準備しましょう。自動車内に準備しておくと便利で
す。
4)飲み薬は予備を持つようにし、家族にも保管場所を覚えていてもらいましょう。
5)糖尿病手帳はいつも身につけておきましょう。
ケガなどで他の医療機関にかかる際や薬を持ち出せなかった場合にも役立ちます。
6)災害時は一般の電話がかかりにくくなります非常時の家族間・医療機関への連絡方法を
知っておきましょう。
災害用伝言ダイヤル:局番なし「171」
7)冬場には防寒着も準備しておくと良いでしょう。
52
2.災害時編
救助が来るまで 3 日間は乗り切りましょう。
1)もしも薬や注射を持ち出せなかったら早めにかかりつけ医へ連絡します。それが駄目な
ら近医や調剤薬局へ行きましょう。
2)食事がいつになるか、何が食べられるか分からない状況ではインスリンは食後に打ちまし
ょう。
内服薬は種類によって異なるので普段からどの様に対処したらよいか医師に確認してお
きましょう。
飲んだかどうか定かでない時は飲まないほうが安全です。
3)食事は不規則になること、またバランスが乱れる事が予測されます。特に避難所では糖
質中心、また塩分も多くなります。普段の摂取カロリーを考えながら選びましょう。
4)避難所での生活が続くと生活のリズムが乱れがちになります。できるだけ普段の生活を
意識して過ごしましょう。軽い体操や、散歩も気分転換になります。
5)トイレの回数などの心配から水分を控えがちになりますが意識して水分(水、白湯、お
茶)を取りましょう。
6)感染防止のためうがい手洗い、必要時マスクの着用を心掛けましょう。
7)困ったことがあったら一人で考え込まず周囲の人に相談しましょう
地震
火災
53
水害
Ⅸ 体調をくずした時(シックディ)の注意点
1.体調をくずした日は、運動を休みましょう。
2.食欲がない時は、おかゆやめん類、くだものなどの食べやすいもの
を、何回かに分けて少しずつ食べましょう。
3.発熱、下痢、などがある時は、おかゆ、お茶、スープ、果汁などで水分補給をし、脱水
にならないように心掛けましょう。一日 1,000ml の水分をとるのが目安です。
4.発熱、嘔吐などの症状がひどく、続く時には、早目に受診しましょう。
5.血糖降下剤やインスリンを使用している人は、勝手に中止せず主治医に連絡して指示を
受けましょう。できれば日頃から調子が悪い時の薬の飲み方、使い方を主治医と話し合
っておくと良いでしょう。
Ⅹ おわりに
糖尿病について理解を深めていただけたでしょうか。
糖尿病は、食事、運動について医師の適切な指示を守り、規則正しい生活を心掛け、血糖
値を正常にコントロールすれば、健康人と同様な楽しい社会生活を営むことができるのです。
皆さんは、今回、充分に糖尿病の知識を身に付けられました。今後はあなた自身の強い意
志と努力、また、家族の協力を得て、実践、継続をして血糖を良好にコントロールし、合併
症を予防、または、合併症の進行を抑えて、糖尿病でない人と同じように、末永く快適な人
生を送ってください。
連 絡先
知多市新知字永井 2 番地の 1
知多市民病院
0562-55-1155
54