ワンポイント・アドバイス 知っていますか?ケトーシス こうして余った脂肪からケトン体がどん 再開されるため、突然大量のエネルギー ケトーシスの多くは分娩直後から泌乳 最盛期に発生します。分娩すると泌乳が は(程度の差はあれ)同時に起こること 態になることから、ケトーシスと脂肪肝 肝臓に蓄積すると、いわゆる脂肪肝の状 どん作られて、ケトーシスになってしま の臭いを発する牛や、パサパサの便をし が必要となってきます。しかし、乾乳期 がほとんどです。 何でケトーシスになるのか? ている牛を見て、最初から「この牛、ケ には大きくなった子宮に押されて第一胃 牛が産後の食欲不振に陥って獣医師を 呼 ん だ 際、「 ケ ト 」 と い う 単 語 を 一 度 は トじゃないかなぁ」なんておっしゃる方 が小さくなっているため、分娩後にいき いった症状が現れますが、通常体温に変 に増えると、食欲の減退、乳量の低下と ン体が存在します。このケトン体が異常 質で、健康な牛でも血液中に少量のケト などが主に肝臓で代謝されて作られる物 の」とあります。ケトン体とは糖・脂質 教科書を見ると、ケトーシスは「体内 のケトン体が増加し臨床症状を伴ったも 肪の処理が下手なので、一度に大量の脂 ができません。また、牛の肝臓は元来脂 牛では、それらの物質を上手く作ること すが、エネルギーが不足している状態の 等)の材料として利用されるはずなので その後エネルギーとなる物質(ブドウ糖 に 入 り 代 謝 さ れ ま す。 健 康 な 牛 な ら ば、 解された脂肪は血流に乗って、一旦肝臓 終わりに うのです。ちなみに、この余った脂肪が も い ま す。 で は こ の「 ケ ト 」( 正 確 に は なりそれに見合うだけの餌を食べること 耳にされたことがあると思います。独特 ケ ト ー シ ス で す が )、 ど う い っ た 病 気 な は難しくなります。そうなると、牛はエ のか皆さんご存知でしょうか? 化はありません。歩く時にふらつく、興 肪が肝臓に流れ込むと処理が追いつかな ネルギーの不足を補うため、体に蓄えた 奮状態になる、大量によだれを流す、色々 くなってしまいます(太った牛がケトー ケトーシスってどんな状態? なものに噛み付く、といった神経症状が シ ス に な り や す い の は こ の た め で す )。 脂肪を分解して利用しようとします。分 見られることもあります。 要因があるなら、そちらの改善を優先さ 分娩後のエネルギー不足の状態は全て の牛に起こることですが、だからと言っ せます。予防のためには牛を太らせすぎ 質の良い餌を極力多く食べられる様工夫 て必ずケトーシスになる訳ではありませ 治療・予防のために 獣医師が行う治療としては、ブドウ糖 液の点滴が一般的ですが、脂肪肝が重度 すること(=エネルギーの摂取を増やす ん。純粋に餌のエネルギーが少ない場合 ないこと、乾乳期から泌乳初期にかけて でなければ、プロピレングリコールやグ こと)が重要です。 や酪酸発酵した餌を与えている場合にも リセリンの内服でも十分な効果が得られ ます。もし他に食欲を減退させる疾患・ 起こりますが、他の病気が原因で食欲が 低下すると、エネルギー不足の状態がよ り深刻になるため、ケトーシスの状態に 陥りやすくなります。実際ケトーシスと 診断する牛のほとんどが、低カルシウム 血症、後産停滞、第四胃変位等の病気を 伴 っ て い る よ う に 思 わ れ ま す。「 こ の 牛 ケトかもなぁ」と思った際には、他にど こか調子の悪いところが無いかよーく観 察してみると良いかも知れません。
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