第4回ダイアログ Bar 高松!~地域の未来を語る対話の場~ 日時:2013/02/17 場所:高松市市民活動センター ゲスト:一般社団法人ドゥーラ協会 代表理事 丑田 香澄(うしだ かすみ)氏 オープニング 越田 第4回目のダイアログバーのテーマは「生活」 ~社会で担う子育てです。これが 4 回目ということなので、残すところあとわずかと思 うと、名残惜しい心持になりますね。それでは、恒例のチェックインから始めたいと思い ます。チェックインが初めての方はいらっしゃいますか。ご存知の方が多いようですので、 もし、ご存じでない方がいらっしゃったら周りの方が教えてあげてください。 それでは、丑田さんに自己紹介をしていただきたいと思います。 一般社団法人ドゥーラ協会の丑田と申します。今回のダイアログバーにお呼び頂いたご 縁で、これが人生で初めての四国入りです。今回のご縁は西村さんという場作りの第一人 者に紹介していただいてここへ来ました。ダイアログというのは即座に何かが生まれると いうのではく、家に帰って、ふと化学反応がおこるようなものだと感じています。私自身、 最近ダイアログというものに出会ったのですが、そのような化学反応を経験しています。 さて、これからドゥーラについてお話したいと思います。 ドゥーラという言葉を初めてお聞きになる方も多いと 思われますが、ドゥーラは地域の中での子育てを行って いく団体です。私自身は1児の母で、今日は朝、東京から 飛行機で参りました。今は、東北で被災されたお母さんの 支援などもやっています。 ドゥーラの活動は助産師とお母さんとの協力の中で生まれたものです。助産師さんが普段 活動されている中で、実際に赤ちゃんを取り上げるのですが、その後はなかなか赤ちゃん にもお母さんにも合わない。しかし、数ヶ月か後に、お母さんに出会うと疲れて痩せてし まって苦しんでいるという状況や悩みを抱えられている。このような現状に対して、何か 助産師としてできないのかという思いから出てきたものです。 私自身、出産については実際に経験するまで、イメージが湧きにくいものという漠然と したものにすぎなかったのですが、いざ自分が経験すると、本当は知らなかっただけでは ないのかなとも思いました。 出産と聞くと産後鬱などが最近増加しているといわれています。中にはご主人の方が頑 張りすぎて鬱になってしまうという方までいらっしゃるようです。私自身も妊娠・出産に 際して仕事を辞めたのですが、これは私や東京だけの問題ではなく、多くの方が抱えられ ている問題ではないかとも感じました。こどもが大きくなるまでは、私は育児だけしかや ることができないのかと考えるとモヤモヤした気持ちもありました。 キーワード:出産後 出産後っていわばブラックボックスよねという声も知人から聞こえてきました。仕事も辞 めて、育児に取り組むというのはよい方向にも悪い方向にもなりうると思います。しかし どちらの方向になるのかは分からないという意味からです。出産後というのは、あらゆる ことが変わりますよね。からだの面からいうと妊娠前の状態に戻るまで、6~8週間程度か かるし、妊娠に際して女性ホルモンの働きなどで心理的にも不安定になります。生活の面 でも、家族が増えるし、昼夜に関わらず授乳必要になるし、気軽に家から出ることも連れ 出すこともできないという状況になります。 今は、里帰り出産というのも減っていて、退院してすぐに 1人という状況になってしまう。昔からの近隣からの助け があって、地域の中での子育て支援が今は薄れています。 産褥期というのが産後1ヶ月間は安静にしておいた方が いい期間があるにもかかわらずです。このような背景には、 一つに高齢出産であるために両親が年老いているので、 なかなか面倒を見られないということ。また、里帰りを すると、旦那さんと離ればれで子育てをするのではなく自分たちでやりたいというお母さ ん方もいらっしゃるという原因があります。 このような状況が「孤育て」という言葉で新聞をにぎわしています。そして、このよう な状況が産後鬱の増加などに繋がっています。今では旦那さんの産後鬱なども増えている みたいです。そのようなときに、私たちの活動として、産後ドゥーラがあります。語源は ギリシア語で、ほかの女性を助けるという意味から転じて、母親を支えるという意味です。 赤ちゃんを支えるのが、ベビーシッターだとすれば、ドゥーラは母親を支えるという役割 の人だということです。けれどもそんな専門知識などは必要なく、母親に対して見守って、 「赤ちゃんは泣くのが仕事だからね」といったような言葉がけをしてあげる。私自身の体 験ですが、このような言葉がけだけでも、 「ああ、赤ちゃんの仕事か。元気ならいっか」と いったように気持ちが軽くなります。 産後ドゥーラの役割としては、これは私たちの活動におけるミッションでもありますが、 母親にも愛情をということで母親のサポートです。他の産後ケアのサービスとの違いとし ては、お母さんにどのような声がけができるのかということに重点を置いていて、お母さ んのお話を聴くためのコーチングの講座なども取り入れています。大人としての聞き役は お母さんの支えになる面が多いです。 この活動は、始めてまだ1年なので、一期は12名の初代認定ドゥーラとして東京近辺 で活動しています。2期目は30名ほど、3期目は100名ほどの志望者がいて、母親を 助けたいという思いを持たれた方が、こんなにも多くいらっしゃることを心強く感じてい ます。そして、このような活動が点と点を繋げて線になっていくのだと感じています。今 は医療機関との連携も模索しています。 子育てに関しては、するかしないかは選択の自由ですが、出産の段階になる前から知っ ておいていいものだと感じています。今では、就職後10年くらいバリバリ働いてから出 産を考えている女子学生もいるようなので、事前に知っておくことの重要性をより感じて います。 そして、ドゥーラが女性の新たな雇用促進になるという可能性も考えています。 ドゥーラ協会のミッションとしては、 「母親もすくすく育つ世の中に。 」というものです。 子どもはすくすく育つと言われますが、それと一緒にお母さんも育っていかなければなら ないと思います。そこにドゥーラが貢献できればと思っています。 また、個人としては、皆がワクワク生きる社会、そしてみんながワイワイ生きる社会に なることです。私自身も大学生の時などは、困った時などでも周囲に助けを求めるのでは なく、自分ひとりで解決しようとしていたブルーな時期もありました。しかし、私が出産 を通して出会った、かっこいいなと感じる女性などは、子育てをとても楽しんでいるよう な方でした。 また、今の日本では、多くの方が自死によって命を 落としています。この現状は、戦争している国よりも、 自死で死んでいる人数の方が多いかもしれないとまで 言われています。このような方々のうち、すべてが 産後鬱のせいだと言いませんが少しでもドゥーラの 活動を通して社会によい影響を与えることができればと 考えます。 子育てをしているお母さんの中には、 「私はあなたを産んだから仕事辞めてしまったのよ。 だからあなたはいい大学に入って、良い会社に入るように頑張るのよ」といったように、 お母さんにとって子育てがすべてのようになっていると、子どもは、 「よい大学」や「よい 会社」に入らなければならないと強いプレッシャーを感じてしまいます。だからこそ、い ろいろな大人との触れ合いの中でお母さんも子どもも学んでいくこと、そして大人自身が ワクワクしながら生きていくことの大切さを感じています。今日は子育てというテーマで すが、子育てがすべてではなく、そこから人と人とのつながりや楽しさについて考えるこ とが出来たらいいなと思っています。 越田 私自身は、子育てを終えてしまった身なので、今聞くと 「ああ、そんなこともあったな」といった懐かしい気持ち になっています。しかし出産後は、自分の子どもを持った 途端に、社会的な弱者になったような気分を抱いたことを 思い出しました。子どもを持つことは、弱みを持つことな のかなと感じることもあります。これは良い悪いではなく て、社会の許容量といったものが見えてくるのではないか と思うことです。私の時は、周りに手伝ってくれる人も多くいたのですが、今ではそのよ うなつながりを持ちにくいのかなと思います。 学生なんかを見ていると、親に助けを求めない、人に迷惑をかけないということをすごく 意識している学生が多いと感じます。それを意識しすぎることで、周囲と繋がりにくくな っているのではないかと思います。 丑田 そうですね。出産というのは、ある意味で人にうまく甘えるということができるよいき っかけになると思います。そのようなこと知ることは豊かですよね。何でも自分ひとりで やっていくのではなくて。いい意味で周囲に頼ることができればいいですよね。 ですから、ドゥーラに頼れていることをきっかけに、もっと多くの人に頼ることができれ ば繋がりも増えるのではないでしょうか。出産といったように価値観が変わる時に、人に 頼ってみるのはいいよということですね。 また、社会全体で子育てしにくくなっているのは、本当にその通りだと思います。最近 では、公園でこどもの遊び声がうるさいということで行政にはたらきかけ、この公園で声 を立てない頭立て看板がたってしまうというようなこともあります。 興味深いのはこのあとで、記者が訴えた近隣の年配の方々に「この公園では、最近子ど もの声がうるさかったのですか」というインタビューをしてみると、 「以前から子どもの遊 び声はしていたが、昔は知り合いの親や子どもだからうるさいとは感じなかった。しかし、 今はどこの子か知らないからうるさいと感じる」というものだったようです。 このことからも、つながりの意味を感じますよね。 参加者 どの様な人がドゥーラのようなつながりを求めているのでしょうか 丑田 2人目の子どもを出産されたお母さんで、1人目が大変だったからという方や、中には 旦那さんからの要望もあります。妻がとてもつらそうなだが、自分は働き方を変えられな いのでお願いしたいということです。これは、今の日本の社会の課題でもありますよね。 ヨーロッパなどでは、子どもが生まれた共働きの夫婦に対して、どちらにも育児休暇を与 える制度を持っている国もあります。 しかし、ドゥーラは旦那さんを決してないがしろにするのではなく、旦那さんを含めて どのような支えができるのかということを考えています。3か月ほどしか、ドゥーラが関 わっている期間はないので、このことは大切にしています。 参加者 地域に頼める人がいるということが本当に大切ですよね。私の場合は、旦那があまり地 域の事などを知らない、具体的にはどこへ買い物に行けばいいのかなどですが、そのよう な事情を知らないと、ドゥーラがお母さんを支えることはできないですよね。 丑田 それは、そうですね。ドゥーラになることで自分自身 が負担に感じてしまってはいけないですよね。また、 どのような事情があり、どのようなことに困っている のかというのは人によっても様々だと思います。 少し話は変わりますが、3人目のお子さんが生まれた お母さんが、どうしても里帰りをできない事情があり、その時旦那さんと協力の在り方を 考えたそうです。そうやって子育てをしていく中で、お父さんは自分自身が生後間もない 子どもの子育てをして、とても感動していたそうです。 越田 そうですね。家族にとって、第一子の誕生が一つの大きなターニングポイントになりま すね。第一子というのは、それまでの夫婦の縁というは異なって、簡単に切る事の出来な いものを二人で育てていくという責任や、自分以外に守るものができるということですね。 参加者 私自身も現在子育てをしているのですが、第一子の誕生を機に、はじめて旦那さんとの 生活観の違いを感じています。そのような違いが見つかった時には、お互いが納得できる まで話し合うことの必要性を感じています。 丑田 本当にそうですね。やはりそのようなときには、対話 といったように何度もの話し合いを重ることが重要に なってきますよね。よくあるのが、お母さんは産後で イライラしているし、悩みがあるのに、旦那さんは 会社の付き合いと言いながら飲んで帰って来る。 その時には、直接口で言うのではなく冷蔵庫の戸を バンッって閉めたりなんて…。 (会場笑い) また、例えば、お母さんが仕事をしたいといい、お父さんが妻には家にいてほしいとい うとすると、そこには決定的な価値観の違いがあるわけですよね。それが理由で離婚しか けるような夫婦もいます。そのような夫婦の方で、きちんと話し合いを重ね、相手理解し ようと努めた結果、離婚しないで済んだという方もいらっしゃいます。 参加者 最近は、芸能人の方が出産しているのを、週刊誌などが「かっこいいライフスタイル」 といったように取材されているのを見て、私自身も出産をそのように感じていました。し かし実際に生んでみると、そうではなかったと感じることもあります。私は、両親が近く に住んでいるので、産後もそれほど困ることもなく、社会的弱者というよりは以前よりも 強くなったような気がしています。これは、都市と地域といったような違いがあるのでは ないかと思います。幼稚園でも転勤の多いお母さんなんかは大変そうにされています。 丑田 そうですね。まずどこにも行き場所がないというような方はいらっしゃると思います。 ドゥーラに来ていただくためにも多少のお金が必要となるので、利用できる方が限られて くると思いますよね。芸能人の方なんかが取り上げられている雑誌でも、日本では産後が 大変なので、韓国の産後施設へ行ってくるなんてありますが、そのようなことをできる方 はほんの一部の方ですよね。出産に限らずですが、知ることと繋がることは、やはり大切 だと思います。 参加者 最近、参加したワークショップで、 「みんながワクワク知る必要なのはあるのか」という ことについて考えたのですが、その中で必ずしもその必要はないのではという意見もあり、 その中で私も、ワクワクするばかりではなく、つらい時もあっていいと思える楽になるの ではないかと思います。 丑田 それは、深いですね。そのことについて最近私も考える機会もあります。生きていたり、 子育てをしていると、清濁あるものですからね。 越田 私は、ワクワクすることというのは、目指すようなものではないのだろうと思っていま す。恩師の言葉ではあるのですが、成熟した社会というのはどのようなものかというと、 行政だけに頼るのではなく、行政ができないことに対して、一つの選択肢としての民間の 取り組みが増えていけばいいのではと思います。 丑田 私の友人にも、初産でしかも双子でというお母さんがいるのですが、どちらの両親にも 頼ることができず、絶望的な気持ちで妊娠生活を送っている、それこそ産後鬱のような状 態になっていました。 実は、20年前にオランダが今の日本のような閉塞感漂っていた時がありますが、その 時に国が大きな取組行い、多様な価値観、選択肢を認めるような政策を行いました。その 結果、様々な面での国民の満足感が上がったという話もあったようです。ワクワク生きる ということについて、私個人としては、 「みんなが生きたいように生きられればいい」とい うことだと思っています。 プロアクションカフェ 1「もし、自分が子育て支援を受けるなら、どんな支援を受けたいか」 将来、子育て支援を職業として選びたいと考え ており、子育てする母親にとって身近な存在は旦那 であるはずなのに、現状ではなかなかできない家庭も 増えています。その中で、パートナーに頼れない状況 から、子育て支援が必要とされ、夫婦間の絆の修復 などを支援することが重要だと感じています。 2「夫婦の在り方」 これまで、自身の体験にはなるが、夫婦間でのコミュ二-ションがほとんどありません でした。しかし世の中では、価値観や働き方の多様性が増えてきて、多様な価値観、時に は違うものでも、それらを認めながら、パートナーを誉めるなども必要なのではないかと 思いました。 また、子どもというのは、子どもを産んでも自分だけのものではなく、地域の財産であ るという考え方がありますよね。私は、アフリカのコミュニティのダイアログなどを通し て決定することを学んだことがあり、そちらの方が日本よりも進んでいるのではないかと も感じました。 3「価値観の違いのすり合わせ」 私は、今まで親の敷いたレールに従ってきて、そこに違和感をいだいています。しかし、 自身が出産してみると親のレールに感謝できることもあります。親子や夫婦にも必ず価値 観の違いがあり、そこでダイアログなどが必要となってくると思いました。余談ですが、 15 年ほど連れ添って、やっと夫婦が丸くなったということもあります。やはり、忍耐とい うのも必要なのではないでしょうか。 4「男性が子育を育てられる社会とは」 私自身は、男性として仕事をするというよりも、主夫として家事をやってみたいと考え ています。しかし現状から考えるとやはり難しいような気もしています。やはり、自分が どうしていくかを選べる社会であってほしいと思います。 5「母親として生きながら働くことについて」 母親として生きながら働くには企業の協力が欠かせないと思います。企業としては、労 働者に決まった時間で働いてほしいと考えているでしょう。しかし、その人に求めている 素質や能力を限定すれば、より融通のきく生き方ができるのではないでしょうか。そして、 保育園や幼稚園などの預かり時間も融通がきけばいいと感じます。 このような背景には、母親としての苦労がなかなか理解されないことがあるのではない でしょうか。母親になったことで、これまでの夢はどうなるのだろうかと不安に感じてい る方も多いと思います。それらを支えるためには、どのような仕組みが必要なのかを、今 後も考えていきたいです。 6「子育ての際に地域に望むこと」 災害時などには地域の協力が必要となるが、学校がなくなるなどが原因でコミュニティ の崩壊が進んでいます。今は、便利な世の中になっており、子育てにもその便利さを求め てしまうと、トラブルの原因になるんではないでしょうか。このような現状に「親育て」 の必要性があると考えました。海外の子育てプログラムなども勉強して積極的に取り入れ ていけばいいと思います。 クロージング 越田 今回も皆様のおかげで、良い対話の場となったと思います。子育てについては、やはり 地域の協力のもとに行うことが望ましいのではないかと感じています。次回、ダイアログ バーは最終回となりますので、ぜひお越しください。それでは閉会にしたいと思います。 ありがとうございました。
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