『福島県立大野病院事件に関連する表彰の取り扱いについて』

2008 年 12 月 20 日
福島県警察本部長殿
『福島県立大野病院事件に関連する表彰の取り扱いについて』
2006 年 4 月、福島県警は大野病院事件の捜査・逮捕にあたった富岡警察署に対して福島県
警本部長賞を与え表彰しました。私は福島県警の掲示板を通じてその基準について問い合わ
せをし、それに対して「対象となる部署の功労を総合的に判断して行っている」という回答
をいただきました。この大野病院事件は 2008 年 8 月に無罪として確定しましたが、今回改め
てこの表彰の取り扱いについてお聞きしたいと思います。
2006 年 2 月 18 日、業務上過失致死と医師法に定める異状死の届出義務違反の疑いで福島
県警は産科医師を逮捕しました。逮捕直後より、業務上過失致死罪に問われるような案件で
はなく、そもそも過失さえないのではないか、逮捕して身柄拘束する正当性がないのではな
いかと大きな問題となり、各団体から抗議行動が起こりました。こうした中で 3 月 10 日に起
訴されましたが、
福島地検の片岡康夫次席検事(当時)は
「罪証隠滅のおそれ」
「遺体やビデオ、
心電図が残されておらず、関係者の供述が不可欠な状況で、身柄を確保した上で話を聴く必
要があった」
「海外を含めて逃亡のおそれがあった」
「手術中、
(癒着した胎盤が)手ではがれ
なかった時点で子宮摘出に移行すべきだった」とコメントしたと報道されております。この
事件は医療界にとどまらず、新聞・週刊誌でもたびたび取り上げられ、国会でも以下のよう
に委員会や本会議で取り上げられるなど大きく注目されました。
櫻井 充議員 参議院予算委員会(2006/3/13)
西島英利議員 参議院厚労委員会(2006/3/14)
仙谷由人議員 衆議院厚労委員会(2006/3/17)
小池 晃議員 参議院厚労委員会(2006/3/22)
枝野幸男議員 衆議院法務委員会(2006/3/31)
仙谷由人議員・山井和則議員 衆議院本会議(2006/4/6)
2006/3/17 の仙石議員の質問では「この今度の、どちらが事件になるのかわかりませんが、
つまり、検察庁が、あるいは警察、検察が起こした事件というふうに将来なるのではないか
と私は思っておるんであります。
」とまで言及されております。
こうした中で、4 月 14 日、まだ有罪かどうかも確定していない大野病院事件の捜査・逮捕
にあたった富岡警察署に対して、
福島県警は福島県警本部長賞を与え表彰しています(当時の
本部長は綿貫茂氏)。
これに対して、私は福島県警のホームページの掲示板を通して、福島県警に問い合わせを
しました。なぜなら、同時に表彰されている他の事件は「強盗」
「婦女暴行」
「放火」
「詐欺」
などの明らかな故意犯であり、まだ公判さえはじまっていない大野病院事件逮捕への表彰は
異常であり不適切であると考えられたからです。
以下がその問い合わせと福島県警からの回答です。
(投稿番号 : 4851 投稿日 : 2006/04/17 00:41:00)
……………………………………………………………………………………
件名:県警の表彰の基準はなんですか?
3/14 に行われた警察署長会議で、重大事件を解決した警察署への表彰につい
ての記事を読みました。そこでは県立大野病院の医師を逮捕した富岡署が県警本
部長賞を受賞したとありました。
今回の逮捕に対しては、全国的に論議を呼んでおりマスコミや国会でもたびた
び取り上げられております。まだ評価も定まっていない事件であり、国会でのあ
る議員の答弁によれば、
「医師が起こした事件でなく、検察警察が起こした事件」
ではないかとさえ言われています。
こうした事件をあえて表彰する真意を教えて下さい。
(注:文中の日付は 4/14 の誤り)
これに対して 2006 年 5 月 17 日に監察課長から回答は以下のようなものでした。
……………………………………………………………………………………
件名:
「県警の表彰の基準はなんですか?」についてお答えします。
福島県警察の表彰につきましては、
「福島県警察の表彰に関する訓令」に基づ
き、事件の重大性、捜査の困難性等、対象となる部署の功労を総合的に判断して
行っているところでありますので、ご理解をお願いいたします。
この回答に対して再度質問しましたが、回答はありませんでした。
(投稿番号 : 4921 投稿日 : 2006/05/21 02:36:47)
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件名 :総合的に判断した根拠を教えて下さい
(省略)
こうして「対象となる部署の功労を総合的に判断して」表彰された大野病院事件ですが、
2008 年 8 月 20 日に無罪判決が下され、検察は控訴を断念し無罪が確定しました。
医療では何か問題があれば、それがミスでなかったとしても、次に繰り返さないよう検証
し今後に活かすのが常です。たとえよい結果であっても、何か改善点がないか検討し反省し
ます。それが医学の発展を支えています。
福島県警は今回の捜査・逮捕からはじまる一連のできごとの中でどんな教訓を得て何を反
省したのでしょうか。多くの医療関係者は、そもそも本件は刑事事件になるような案件では
なかったと考えていますが、その中でも、捜査に協力的であった被疑者を逮捕し身柄拘束し
たことと、社会問題化し事件かどうかさえ論争になる中であえて表彰を行ったことの2点に
ついては、到底理解できず、福島県警の完全な過ちであったと考えています。
この大きな誤りが、逮捕された医師の人生を大きく動かし、ご遺族の生活にも多大な影響
を与えたと思います。そして医療現場にも取り返しの付かない悪影響を与えたのです。
福島県警は表彰の撤回と、大野病院事件関係者への名誉回復について全力で行うべきでは
ないでしょうか。更に社会問題となるほどの不当逮捕事件を引き起こした原因を究明して下
さい。警察や検察の責任者を罰するためではなく、今後同様のことが起こらないよう再発防
止のために真摯に反省すべきです。そしてその詳細を我々に公表すべきだと思います。
2006 年 4 月、県警の掲示板で質問し回答をいただいた者として、事件が終結した上でのご
回答を再度お願いしたいと思い質問させていただきました。
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金澤信彦
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