企業・産業動向レポート = 2014年3月1日~31日の報道内容 = Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況 ①ヤマニシ・鈴木造船所関連 ◆造船所建設プロ船出/宮城・気仙沼の「みらい造船構想」 宮城県気仙沼市の造船会社などによる造船所建設プロ ジェクト「みらい造船構想」がいよいよ船出する。用地取得にめどがつき、海外船主との受注交渉も始めた。気仙沼のモ ノづくりを次世代につなぐ。《大きな一歩》「用地取得に見通しがついたことは、本当に大きな一歩だ」。気仙沼造船団地 協同組合の木戸浦健歓理事長(木戸浦造船専務)は、こう声を弾ませる。1月に気仙沼市役所で造船団地の整備方針を 漁業者や水産加工業者に示し、関係者から了承を得た。2016年11月の操業を目指す。東日本大震災の津波から復旧し、 新しい発想で造船所を一からつくり直す。現在、震災による地盤沈下で海岸線が約10㍍後退している。震災前は400総 ㌧級の船舶を陸に引き上げられたが、この半分の200総㌧級しか対応できない。また、湾を囲むように造船会社が点在 していたため、効率が悪かった。これらを改善する。投資総額は70億-90億円。国の補助金のほか、さまざまな方法で調 達する。《複合用途に対応》造船所の敷地面積は4万1,000平方㍍。専用の船台で船舶を造船所内に引き込む「シップリフ ト方式」を採用する。具体的には長さ80㍍、幅20㍍の船台で、船舶を海から地上に垂直に引き上げて引き込む。2台の建 造船台と9台の修繕船台、アルミ船・繊維強化プラスチック(FRP)船の船台を整備。海洋構造物などの複合用途に対応 できるようにする。協同組合は海外船主との受注交渉も始めた。アイスランドのタラ漁向け新造船6-8隻の受注を見込 む。「新造船所の最初の仕事にしたい」(木戸浦理事長)。また、次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の設置でも 溶接技術などを活用できる見込みだ。ただ、水産加工業の集積地に立地するため、粉塵などによる環境汚染を懸念す る声もある。このため3日に木戸浦理事長ら組合員15人が気仙沼市議会に出席し、「これまでのイメージを払拭し、世界 で最も環境に優しい造船所を建設する」などと理解を求めた。高度な排水処理設備などを導入し、環境配慮型の「グリ ーンシップヤード」を整備する計画だ。《夢描ける復興》東北運輸局海事振興部の佐々木雄司船舶産業振興官は「全国的 にも造船所をゼロから建設するケースはまれ。復旧に留まらず、その先の復興も見据えた構想だ」と評価する。木戸浦 理事長は「地元の若者が夢を描けるような造船業に復興させたい」と決意を新たにする。 ◆ヤマニシ、修繕事業再開、“協業”進め経営基盤強化/造船復興みらい基金を活用 日本財団は昨年、国土交通省と 復興庁からの総額約60億円の補助金により「造船復興みらい基金(造船業等復興支援事業費補助金)」を立ち上げた。 東日本大震災で被災した造船事業者などの経営基盤強化を目指すもので、具体的には事業の集約を想定。そのために 中小の造船事業者、造船関連事業者が設立した事業協同組合などの法人に対して補助金を交付する。補助率は総事業 費の3分の2以内で、補助金上限は80億円以内。原則2017年3月末までに完了する漁業関連船舶の建造、修繕のための 施設、設備などを整備する事業を対象とする。募集期間は15年3月末まで。2月に初の補助事業が決定した。宮城県石巻 市の「佐藤造船所・及川電機合同会社」向けで、補助金約2億5,000万円により工場棟2棟、天井クレーンなどを整備す る。被災前は異なる敷地で行われていた漁船の建造・修繕事業などを集約。共同仕入れによるコスト削減、共同作業に よる効率化、ノウハウの共有化を実現する。補助事業第1号に続き、複数の案件が計画される。2-3社による協業化の動 きが多い中、気仙沼では、木戸浦造船、吉田造船鉄工、小鯖造船鉄工所、ケーヤード、澤田造船所5社が造船関連事業者 も巻き込み大規模な事業集約計画(造船工業団地整備)を進めている。利用する設備は、通常の引き揚げ船台方式やド ック方式ではなく、エレベーターで船舶を進水・陸揚げするシップリフト方式(エレベーター方式)を採用する。沖縄県の 新糸満造船、千葉県のアイ・エス・ビーが採用するだけで、例が少ないものの、引き揚げ船台方式と比べ、船台がフラッ トになることで作業性が向上。さらに、船を覆っての塗装作業がしやすいなど環境にも配慮する。関係者が今後の計画 具体化に注目する。石巻市では、旧北上川の堤防整備計画で、移転を求められている河口付近の造船4社(鈴木造船 所、海洋技研、聖人堀鉄工所、玉木造船化工)が事業集約を目指す。石巻市では、事業費の3分の2を補助する造船復興 みらい基金の利用を前提に、事業者が負担する3分の1の部分の一部を補助する制度も検討。制度の活用を促し、早期 実現に期待を寄せる。南東北で大型商船を建造できる唯一の造船所ヤマニシ(石巻市)は12年2月、企業再生支援機構 の支援が決定。同11月に本社工場で震災後初の進水式を行って以降、建造業務を本格化させた。同11月にはさらに、修 繕用ドック設備復興のため東日本犬震災事業者再生支援機構、三菱商事復興支援財団の支援も決定。今年1月にはドラ イドックなどの修繕設備が復旧し、修繕事業を再開した。新造船事業と修繕事業による相乗効果発揮により、事業再生 計画実現を目指す。 ②三保造船所関連 ◆三保造船、更生手続き終了へ/4年前倒しで債務完済、復帰 漁船建造大手の三保造船(静岡市、三澤俊彦社長)は1 0日、会社更生計画での残債務を一括弁済して約70億円の債務を完済した。96年の更生法適用申請から18年。スポンサ - 1 - ーをつけずに再建を進めて、計画から4年半前倒しで完済し、今月中にも更生手続きを終える見通しとなった。静岡銀 行と清水銀行、静清信用金庫から協調融資を受けて、残債務17億円を一括弁済した。管財人の小倉博弁護士は「裁判所 から月内にも更生手続き終了の認可が下りる見通し。更生会社から復帰することで、今後は営業面や金融面、官公庁の 入札などで有利になる」と話した。三保造船は漁船不況の影響から1996年に会社更生法適用を申請し、事実上倒産。99 年に更生計画をスタートした。負債総額は125億円、更生債権は70億円で、この債務を20年分割で弁済する計画だった。 当初は元常石造船専務取締役の森谷智氏が事業管財人となって経営を担い、漁船の造船・修繕に集中して再建を進 め、2003年までに債務の約4割を占めた共益債権を完済。これを受けて04年には事実上の自主経営に復帰して、プロ パーの木嶋武郎氏が社長に就任した。その後は内航船建造に進出するなど事業を軌道に載せたほか、舵付二重反転式 ハイブリッド推進装置の共同開発や、シップ・オブ・ザ・イヤーの部門賞も受賞した国内最大級の海外まき網船“第二ふ じ丸”の建造など、新技術にも積極的に挑戦してきた。事業を継承するスポンサーがない中でも「船主や地元の漁業関 係者らの支援、そして従業員の頑張りがあってこそ」(小倉管財人)の順調な事業再建だったようだ。 ◎今治地域造船業 ◆今治の造船各社、進水式の見学/積極受け入れ 愛媛県今治市内に生産拠点を置く造船各社は、地場の造船産業 への理解を深めてもらう狙いで、建造船の進水式で外部の見学者を積極的に受け入れている。日本中小型造船工業会 や今治商工会議所、今治市などと連携し実施。4日には檜垣造船(今治市)でケミカルタンカーの進水式が開かれ、地元 の乃万小学校5年生約80人が見学した。進水式の見学会を主催する日本中小型造船工業会では、モノづくりや造船産 業を再認識してもらう見学会を、全国で年間約50回実施している。中でも今治造船、新来島どっくなどの造船所が集積 する今治市では、年間10回程度開いている。 ◎長崎県 ◆造船業・中小製造業を強化/長崎県14年度予算案 長崎県は造船業や中小製造業の強化などを盛り込んだ2014 年度当初予算案をまとめた。「ながさき海洋・環境産業雇用創造プロジェクト事業費」に7億5,107万円を計上した。高付 加価値船の受注拡大、海洋関連産業の拠点形成に向けて人材育成を行う。「元気なものづくり企業成長応援事業費」 は、1億9,212万円と前年度から増額。新たに「ものづくり競争力強化推進体制整備事業費」1,294万円も計上した。このほ か、離島での超小型電気自動車の実証フィールド形成や、県内企業の環境・新エネルギー分野への進出を促進する。一 般会計の総額は前年度比1.8%増の6,934億円。うち商工費は464億円で前年度比4.3%増加した。 ◆子会社3社を三菱重工が統合/来月から 三菱重工業は10日、トンネル掘削機などの機械や水門をはじめとする鉄 構装置の設計・製作を手がける子会社3社を4月1日付で統合させると発表した。調達コスト低減のほか、インフラ整備や 補修分野などで幅広く技術提案する体制を整える。建設や電力、製鉄など共通顧客の需要をより緻密に掘り起こす。三 菱重工メカトロシステムズ(神戸市、渡辺望社長)を存続会社に、三菱重工パーキング(横浜市)、三菱重工鉄構エンジニ アリング(広島市)の3社を統合する。新会社の従業員は約1,100人、売上高は単純合算で500億円。 ◆機械・鉄構装置、3子会社を再編/三菱重工 三菱重工業は10日、4月1日付で機械・鉄構装置事業の子会社3社を再 編すると発表した。機械装置や環境装置を扱う三菱重工メカトロシステムズ(神戸市兵庫区)を存続・承継会社とし、立 体駐車場を手がける三菱重工パーキング(横浜市中区)を吸収合併。さらに三菱重工鉄構エンジニアリング(広島市中 区)の鉄構装置事業を吸収する。統合により誕生する新会社の売上高規模は年間約500億円になる。新会社が取り扱う 製品は試験・検査装置などの機械装置、水処理や電気集じん機などの環境装置、立体駐車場、煙突や免震装置などの 鉄構装置。建設、電力、製鉄会社など、共通する顧客へのパッケージ提案を強化する。調達の共通化などによりコストを 削減する。新会社は三菱重工メカトロシステムズの商号を引き続き使用する。資本金10億円。発足時の社員は約1,100 人。本社を神戸市、主要事業拠点を横浜市のみなとみらい地区と金沢地区に置く。 ◆三菱重工、客船で特損600億円 《アイーダ向け2隻の工程遅れで巨額損失》三菱重工業は24日、2014年3月期連結 決算で客船事業における特別損失として約600億円を計上する見込みとなったと発表した。アイーダ・クルーズ向けに 建造中の客船2隻で、大幅な仕様・設計変更などで建造計画が乱れ、多額の損失が発生する見通しとなった。三菱重工 の船舶部門の新戦略の中で、客船事業は大きなカギを握っていた。今後の商談については「まず1番船を作り上げるこ とに集中し、今後については慎重に検討する」(鯨井洋-・交通・輸送ドメイン長)とし、客船の連続建造方針は不透明と なっている。アイーダ向けの12万5,000総㌧型客船2隻の建造で多額の工事損失発生が見込まれることが判明したた め、「客船事業関連損失引当金」に繰入れて特別損失として今期決算に計上することとした。金額は現在精査中だが、2 隻合計で600億円程度となる見通し。三菱は今回のアイーダ向け客船2隻では、過去の客船建造での実績を踏まえて、 「客船プロジェクト室」主導で必要な対策を迅速に実施するプロジェクト体制を構築して取り組んだほか、同船を、空気 - 2 - 潤滑システムなどの新技術を盛り込んだ「次世代型省エネ客船」の1番船=プロトタイプと位置づけ、その分、事前検討 などにも時間をかけて取り組んできた。だが、実際の建造が始まり作業が進捗することに伴い、プロトタイプの客船建 造の困難さが顕在化し、仕様の決定が遅れたほか、大幅な船主要求の変更などに伴う設計変更も加わったことで、結 果として設計作業が遅延。これが設計費の増加をもたらしたほか、その後の資材調達や建造工程などに悪影響を及ぼ し、コスト悪化に繋がったという。受注直後に発生した“コスタ・コンコルディア”の事故に伴う構造規則の変更で、設計が 遅れたことも影響した。「船舶部門の内部リソースでまかなえず、昨年11月-12月に特別体制で全社で人員リソースを投 入して工程回復を図ったが挽回するに至らず結果的にコストオーバーランが発生する見込みとなった」(野島龍彦常 務)。今後は顧客と求償でも交渉する予定。納期については「現状顧客と調整を行っている。リスクはあるが、われわれ も最大限努力する」(鯨井常務)としている。鯨井常務は今後の客船の受注案件については「1番船建造なしには次の商 談にも入れない。造り上げることに全力を挙げ、その過程で現状のスキームで良いのかどうか可能性を吟味する」とし たほか、長崎造船所の今後の運営について「復元していくためには従来の手だけではだめで、造船業が苦境にある中 で今後どうするかは大きな課題。LNG船などの需要は見込めるので事業機会をどう円滑な事業運営に結び付けていく かさまざまな観点で議論していく」とした。三菱重工の船舶部門は戦略転換を図っているが、「客船のコア事業化」はそ の中核を占める。2011年に、10年ぶりの客船としてカーニバル・グループからアイーダ向け客船2隻を受注し、同船の 「玉成」を合言葉に掲げて、2015年春と16年春の竣工に向けて取り組んできた。これとともに、事業化には後続案件の 受注も必須とし、カーニバルを中心に営業活動を進めていた。 ◆三菱重工が特損600億円 《客船事業、今期見通し》三菱重工業は24日、2014年3月期連結決算で客船事業におけ る2隻合計600億円の特別損失を計上する見通しだと発表した。大幅な設計変更などによって、コスト悪化が避けられ なくなった。円安などプラス要素もあり、現時点で全社業績予想は変更しない。今後、客船の後続案件受注や長崎造船 所運営について、見直していく方針だ。三菱重工は11年に欧州の客船会社アイーダ・クルーズから12万4,500総㌧の約3, 300人乗り大型客船2隻を受注したが、船体構造のルール変更などで設計・建造が遅れ、13年6月に1番船の建造に着手 した。ただ、膨大な部品で構成するホテル部分などの仕様高級化要請が強まり、船主との調整が難航。円安による輸入 部品のコスト増も重なり、資材費上昇リスクが強まった。船主にも求償する。15年3月の1番船引き渡しが遅れる可能性が ある。 ◆客船建造で特損600億円/三菱重工、業績予想は変えず 《設計遅れ資材調達費かさむ》三菱重工業は24日、2014 年3月期に客船事業で約600億円の特別損失を計上すると発表した。クルーズ客船最大手の米カーニバル社から受注 した大型客船2隻について、設計作業の遅れが響き、資材調達などの費用がかさんだ。14年3月期の業績予想は変更し なかった。2隻の大型客船は11年11月に米カーニバル社の欧州法人コスタ・グループ傘下のアイーダ・クルーズから受注 した。12万4,500総㌧の3,300人乗りで、1番船の建造に着手済み。だがホテル客室の仕様変更などで作業が大幅に遅 延。設計費だけでなく、資材調達の費用が膨らんだ。鯨井洋一取締役常務執行役員は記者会見で「契約上、顧客に請求 できる部分は請求していく」と語ったが、将来発生する損失見込み額も含めて引当金に一括計上する。14年3月期の業 績予想は据え置いた。連結純利益は前期比54%増の1,500億円を予想している。為替相場の円安に加え、三菱重工が6 5%を出資する「三菱日立パワーシステムズ」の好調が業績を下支えする。野島龍彦取締役常務執行役員は「純利益で 1,400億-1,500億円は達成しうる」と述べた。三菱重工は02年に建造中の大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」で火災事 故を起こし、客船受注を一時停止した経緯がある。10年ぶりの大型受注を軌道に乗せ、客船事業を収益の柱に育てる 方針だったが、建造する2隻以降の受注計画についてはいったん白紙になる可能性もある。 ◆三菱重工、客船事業で特損600億円 《長崎造船所「従来通りとはいかない」》三菱重工は24日、2014年3月期連結決 算で、客船事業の特別損失600億円を計上すると発表した。アイーダクルーズから受注し長崎造船所で建造中の大型 客船2隻(2015年3月、16年3月納期)が対象。三菱重工初となるプロトタイプ(1番船)の設計で、船主による仕様の高級 化をきっかけに資材調達・工期が遅れ、コストが大幅に悪化する見込みとなった。今後の客船事業、船舶・海洋事業につ いては「(長崎造船所は)今回の損失を踏まえ、いろんな手を打っていかなければならない。いままで通りでは難しい だろう」(鯨井洋一・取締役常務執行役員交通・輸送ドメイン長)「客船の後続船はすぐに(受注する)というわけにはいか ない」(同)とし、明言を避けた。三菱重工の野島龍彦取締役常務執行役員、鯨井常務、小口正範・社長室企画部長が同 日、東京の本社で記者会見した。船主による高級化要望を含む仕様変更を受け、,詰めの打ち合わせに時間がかかった。 加えて、この間に、欧州で客船の座礁事故が発生し、船体構造、水密隔壁の設置、非常用電源装置の設置など国際ルー ルに影響が及び、受注から1年は設計・建造作業に取り掛かることができなかったという。特損600億円の主な内訳は、 設計費、調達費(資材費)、工作費の悪化。仕様の高級化を引き金に、調達費が膨らんだのに加え、工期に遅れが発生し、 挽回のためのコストも膨れ上がった。仕様の差異については、アイーダ社に請求できるものは請求する。野島常務は特 損600億円について「(船主への)求償を織り込んだ」とした。設計変更の根底には、客室内の内装の壁や家具のグレー ドなどホテルパートについて、アイーダとの間で認識に齟齬があった。「当社にとって客船建造が10年ぶりということも 確かにあるが(10年前に引き渡した)『ダイヤモンドプリンセス』は3番船だった。今回の客船はプロトタイプ。しかもアイ ーダにとって最大船型。要求のエスカレーション化があった」(鯨井常務)客船事業、船舶・海洋事業の今後については 明言を避けながらも一方で今回の客船建造に従来の枠を超え、交通・輸送ドメインとして対応していることを鯨井常務 は強調。ドメイン全体でテコ入れを行う可能性に含みを持たせた。 - 3 - ◆新規分野のリスクが顕在化 《三菱重工の客船赤字、国内造船業で事業再検証も》三菱重工業が建造中の客船 2隻で600億円の特別損失を計上することになったが、三菱重工のみならず、日本の造船業全体にも少なからぬ影響を 与えそうだ。造船各社が手掛けている高付加価値船への挑戦として、三菱の客船プロジェクトは先行例。短期間での急 激な戦略転換や新規事業への進出に伴うリスクは他社も抱えているが、これが今回は-気に顕在化した格好だ。三菱 のケースで明らかになった、仕様・設計変更に伴う工程の乱れなどに起因する損失は、過去に国内外の造船所でよく見 られた例。これから本格化する他社の大型プロジェクトでも、事業採算やリスク管理の再検証などが進むことになりそ うだ。昨報のとおり、三菱重工が客船建造で600億円の損失を発生する見込みになった。損失の原因としているのが、 仕様決定の遅れや設計変更に伴う設計段階での工程遅れだ。客船の部品点数は1,200万点に達する。ホテルパートや レジャー部門、空調などではもともと膨大な作業量が必要だが、今回は船主要求による大幅な設計変更が頻発。次世 代省エネ客船という特殊性や、船主アイーダにとってのシリーズ1番船という要因も加わり、詳細仕様の確定やメーカ ーの選定に時間を要し、仕様決定の遅れなどを招いた。これが出図の遅れや後戻り作業で設計全休の遅延につなが り、設計費増加だけでなく資材調達や建造工程に悪影響を及ぼし、全体のコストアップにつながった。1番船の客船なら ではの特殊な事情もあった。だが、新規船での造船所と発注者の間の仕様の認識齟齬と、それに伴う設計遅れと調達 費・建造工数の増加、工程挽回のための追加費用は、造船業が赤字工事に陥る例としては、類型的な姿となる。事前に リスク評価を十分に行っていたが、それでも想定外の事態が頻出したようだ。問題は、こうしたトラブルが三菱だけの 問題にとどまるかどうかという点だ。日本造船業にとって、今回の造船不況では最初に打った手は、省エネ・推進性能 を高めた船を開発・建造するという「エコシップ戦略」だった。もともと日本が得意としていた分野に競争のルールを引 き寄せるという戦略でもあり、一定の成果を上げつつある。一方、このエコシップ戦略に続く“第2の戦略”として各社が 打ち出しているのは、三菱の客船のような新規分野への進出だ。海洋開発市場への進出をはじめ、これまで手掛けて いなかった高付加価値船への参入、あるいは海外生産など、各社は必ずしも得意としていない新領域への挑戦を進め ている。当然、事業採算面での大きなリスクが伴う。三菱の例を受けて、今後は各社で採算性の再検証などが進むこと が予想される。国内造船所は当面の不況対策でなく、韓国や中国との大競争に打ち勝つための「理想」の姿を早足に 追い求めてきた。だが、実際のプロジェクトが始まるフェーズに移り、リスクの顕在化などさまざまな現実に直面しよう としている。新たな産業に生まれ変わるための「産みの苦しみ」となるか。《「仕様決定遅れの影響が甚大」 〈三菱重工、 客船特別損失の会見詳報〉》三菱重工業が24日夕方に開催した記者会見では、客船事業の赤字の背景などについて の現状での認識を説明した。野島龍彦常務と鯨井洋一常務(交通・輸送ドメイン長)が質疑に答えた。会見での一間一答 は次のとおり。〈損失額について〉ー600億円という損失の根拠は。「実情を踏まえ、最も合理的なコスト見積もりを実 施した。設計費は変更や後戻りなどで工数が上がった。工費は工程乱れにより工数が増加した。調達費は、顧客とのや りとりの中で予算範囲に収まらず追加費用が出て巨額の数字になった。仕様の高級化による資材費高騰が大きく、仕 様決定の遅れによりバーゲニングで優位に立てない要因もあった」〈原因について〉ー設計遅延などの背景は。「顧 客との仕様確定に非常に時間を要した。ホテル部分やレジャー部分の仕様で、例えば内装の壁の種類や家具のグレー ドなど受注時に双方の認識の齟齬があり、確定に時間を要した。顧客も1番船なので当初設定した仕様から変更を求め た。例えば機器や位置、船主指定品の変更などでインパクトがあった。また最初の1年は設計・製造に取り掛かれなかっ た。仕様打ち合わせに時間を要したほか、外的要因として受注直後に“コスタ・コンコルデイア”の座礁事故があり、客船 に適用されるルールとして水密隔壁の設置や非常用電源装置の変更など船体構造に関する変更があり、設計が1年間 伸びた。さまざまな要因で前に進めず、製造で挽回しようとしたが、変更のインパクトが大きかった」ー10年間のブラン クは影響したか。「前回との差異は、むしろ今回は1番船だったという点だ。前回は3番船で仕様が固まっていたところ からのスタートだった」ー船主との仕様調整に齟齬が発生した理由は。「顧客にとっても8年ぶりの新造船で、最大船型 でもあり、手探りで仕様を作り上げていく中で要求条件のエスカレーションがあった。われわれが受注時に想定した仕 様との差異が出てきた」ー3次元設計MATESの採用やアジア調達などの手段もとっていたが。「そもそもMATESを動か す前段のプロセスである仕様決定が遅れた。極東調達プランも、客先の仕様要求の高級化でわれわれが最適調達と考 えていたメーカーに発注ができなかった」ー顧客に非はないか。「微妙な問題で、慎重に検討しなければいけないが、 そう言える余地のあるものは求償も考えて展開する」ーこういう事態を想定した契約になっていなかったか。「事細か にエビデンスをつけながら膨大な請求作業を行っている。顧客との関係があるため詳細には言えないが、契約の範囲 内で適正な求償という観点で論理的に折衝する〈今後について〉ー納期は遅れるのか「顧客と調整を行っている。リ スクをなくすべく調整しており、われわれも最大限努力する」ー客船は商船部門の柱だが、今後の受注活動は。「現時 点では1-2番船を造り上げることに集中する。それなしには次の商談にも入れない。造り上げることに全力を挙げ、現状 のスキームのままで良いのか過程の中でさまざまな可能性を吟味しながら検討したい。今後については慎重に検討を 重ねる。広いレンジで事業の方向性も見ながら考えていきたい」ー長崎は年1隻の客船連続建造がコア方針だったが。 「後続船は、こういう状態で受注計画を話せる段階ではない。長崎造船所は、今後いろいろ手を打っていかないといけ ない。復元には従来の手だけでは難しい。造船業が苦境にある中で今後どうするかは大きな課題。LNG船などの需要は 今後見込めるので事業機会をどのように円滑な事業運営に結び付けるかさまざまな観点で議論する」「ドメイン制に 変わった後に問題が顕在化した。従来なら船舶の事業本部のリソースで問題解決にあたったが、今回はプロジェクトマ ネジメントに熟達したメンバーをドメイン内外から投入するなど、ドメインという枠の中で手を打っている。従来の船の中 - 4 - だけでできなかった新しい手を長崎造船所に織り込み、船の事業を新たな形で捉え直したい」 Ⅱ.国内造船・造機関係の動向 ◆1月の造船統計、竣工34隻 国土交通省がまとめた2014年1月の造船主要53工場の鋼船建造実績は、起工23隻・1 04万2,000総㌧、竣工34隻・133万6,000総㌧、竣工船価は1,395億円だった。昨年12月の実績と比較して、竣工隻数は16 隻、竣工船価は640億円それぞれ増加した。竣工船のうち、国内船の竣工実績は合計2隻、2,000総㌧だった。内訳は一 般油送船1隻、その他船舶1隻だった。輸出船32隻は貨物船が29隻(一般貨物船14隻、鉱石専用船1隻、ばら積み船9隻、 鉱石兼ばら積み船4隻、セメント船用船1隻)、油送船が2隻(化学薬品船)、その他船舶1隻だった。パナマやシンガポー ル、リベリア、サウジアラビア、マーシャル諸島、インドネシア、バハマ向けに竣工した。鋼船修繕実績は108隻で、工事金 額は47億円だった。 ◆2月受注12倍の198万総㌧、年度実績リーマン後最高に/船舶輸組まとめ 日本船舶輸出組合が17日発表した2月の 輸出船契約(受注)実績は、198万総㌧(94万CGT=標準貨物船換算㌧)と前年同月の12倍(CGTベースで11倍)だった。 内定していた案件が出てきたことなどもあり、2013年度の単月実績で最高を記録。13年4月-14年2月の累計はすでに1, 461万総㌧に達し、13年度はリーマン・ショック以降、年度実績として過去最高となる。2月の契約隻数は前年同月比42隻 増の47隻。このうち海外船主向けの純輸出船は20隻だった。47隻の船種別内訳は、ハンディサイズバルカー8隻▽ハン ディマックスバルカー19隻▽パナマックスバルカー14隻▽ポストパナマックスバルカー1隻▽ケープサイズバルカー2隻 ▽石炭運搬船1隻▽鉄鉱石運搬船1隻▽LNG(液化天然ガス)船1隻ーとなっている。契約方法は全て現金払いで、㌧数ベ ースの契約形態内訳(シェア)は円建て10%、円・外貨ミックス16%、外貨建て75%商社契約が40%だった。納期別内訳 は14年度25%▽15年度23%▽16年度22%▽17年度29%。輸出船竣工量を示す2月の通関実績は119万総㌧(51万CGT) と5%増(CGTベースで12%増)。通関隻数は3隻増の25隻だった。2月末の輸出船手持ち工事量は643隻、2,742万総㌧ (1,286万CGT)。前年同月末の542隻、2,455万総㌧(1,106万CGT)を上回った。 ◆輸出船契約 2月11倍197万総㌧/JSEAまとめ 日本船舶輸出組合(JSEA)が17日発表した2月の輸出船(一般鋼船) 契約実績は、前年同月比11・8倍の197万5,170総㌧となり、6カ月連続でプラスとなった。前年の2月に大きく落ち込んだ 反動で大幅増を記録。単月ベースの契約高としては2013年度の中で最高額になった。隻数は47隻。内訳はバラ積み運 搬船がハンディ型8隻、ハンディマックス型19隻、パナマックス型14隻、ボストパナマックス型1隻、ケープサイズ2隻、石炭 運搬船1隻、鉄鉱石運搬船1隻。油送船が液化天然ガス(LNG)船1隻だった。納期別では14年度が25・4%、15年度が23・4 %、16年度が21・9%、117年度が29・3%。通関実績は25隻、119万1,523総㌧。2月末の手持ち工事量は643隻、2,741万6,27 0総㌧となった。 ◆2月の受注量、13年度最多 《輸組統計、前年同月11.8倍の198万総㌧》日本船舶輸出組合(輸組)が17日発表した 2月の輸出船契約実績は47隻・198万総㌧で、総㌧べ-スで前年同月の11.8倍となった。ハンディマックスを中心とした バルカーの契約が多く、月単位の受注量としては今年度最多を記録。リーマン・ショック以降では、2013年3月の49隻・27 2万総㌧に次ぐ2番目の高水準だった。契約船の内訳はバルカー46隻(ハンディ8隻、ハンディマックス19隻、パナマック ス14隻、ポストパナマックス1隻、ケープサイズ2隻、石炭運搬船1隻、鉄鉱石運搬船1隻)、LNG船1隻。47隻のうち純輸出船 は20隻だった。契約態様は、㌧数ベースで円建て契約10%、円・外貨ミックス16%、外貨建て75%だった。現金払い契約 は100%、商社契約が40%。納期別では2014年度もの25%、15年度もの23%、16年度もの22%、17年度もの29%だっ た。竣工量に相当する通関実績は、前年同月比5%増の25隻・119万総㌧だった。 ◆手持ち工事量、2,742万総㌧に増加 日本船舶輸出組合がまとめた今年2月末時点の手持ち工事量は643隻・2,742 万総㌧(1,286万CGT)で、1月末から3%増加した。竣工量の減少などで手持ち工事は4カ月連続で増加している。納期別 の内訳は、2013年度引渡分38隻・176万総㌧、14年度引渡分291隻・1,252万総㌧、15年度引渡分204隻・803万総㌧、16年 度引渡分87隻・417万総㌧、17年度以降引渡分23隻・93万総㌧だった。 ◎日本造船工業会 ◆造工会長、新造船受注増も、3つの改革継続 日本造船工業会の佃和夫会長は18日の定例会見で、国内造船所の 新造船受注が増えたことについて触れつつ、「厳しい船価が続くことを予感させる」と事業環境が依然厳しい点を指 摘した。今後の取り組みでは「マーケット拡大、技術開発、企業の合従連衡を含めた体質強化の3つの改革を続けていか - 5 - なければいけない」と語った。個会長は船腹需給について、世界の船腹量を約10億総㌧とし、それに対して世界の経済 成長率と代替需要を合わせた年間6,000万総㌧が船の需要となると説明。一方で「昨年の世界の受注量は約1億総㌧。 単純に考えて年間6,000万総㌧以上は造ってはいけない。これをなかなか守ることができない。われわれは中国、韓国 と2つの国を相手に今後も苦しい競争をしていかないといけないということを(造工メンバー間で)確認した」と語っ た。安倍晋三政権については「エネルギー政策の積み残しがある。これをどうやるか不透明。積極的にやらないといけ ない」と述べたほか、「もう一つは規制緩和。造船関連では労働力の流動性を高める政策が大事」と説明した。ロシア、 ウクライナ情勢に関する国内造船への影響に関しては「特に直接影響があるとは聞いていないとしたものの、「日本は 輸出に経済の基盤を置く国であり、世界のどこで紛争が起きても大変なマイナスになる。何とか早く解決してほしい」 との見方を示した。パナマ運河庁(ACP)と同運河拡張工事を請け負う建設会社のコンソーシアム「GUPC」は現地時間14 日、両者が拡張工事の資金確保や建設継続で合意したと発表した。両者は2015年末までに拡張工事を完成させるMOU (覚書)も締結した。建設予算超過分の負担をめぐって紛糾していたパナマ運河拡張工事だが、両者の合意により再び 拡張完了に向けて動き出した。 ◆大量発注で船腹供給過剰を危惧 《造船工業会・佃会長、「改革の必要性変わらず」》日本造船工業会の佃和夫会長 は18日に定例会見を開催した。日本造船業の好調な受注で「体質強化の時間的猶予が得られた」とする一方、世界的に 新造船発注が昨年1億総㌧も積み上がったことで、船腹需給のバランス化が遅れる可能性があるとの危惧を示した。こ のため、新市場への拡大や、技術開発、合従連衡などを進める必要性は変わらないとの認識を示した。佃会長の発言要 旨は次のとおり。<新造船市況について>Δ昨年の日本の受注は約1,400万総㌧で、前年の1.6倍。2014年問題もクリア し、受注残は2-3年分ある。構造改革、体質強化を行う時間的余裕が得られた。Δ大変な状態に変わりはない。昨年の世 界の受注量は1億総㌧。本来需要は年5,000-6,000万㌧程度だ。年1億総㌧もの竣工が続いたことで船腹過剰になり、 少しずつ竣工量を減らして昨年は6,000万㌧程度になり、ようやく落ち着いたと思ったが、またこれほどの受注があっ た。韓国や中国が前年の3倍もの受注を取った。発注しているのは、底値を狙ったファンド系も多く、実需での発注とは 思えない。船価は相変わらず低迷しており、厳しい船価が続く予感もある。マーケット拡大、新技術開発、合従連衡も含 めた体質強化という3つの改革を進めていく必要があることに変わりはない。Δ1億総㌧もの大量発注があったが、実 際には竣工時期をずらしていくようであれば、市況安定化への望みもある。<体質強化・業界再編について>Δ中国と 韓国は競争力を増すため恣意的に(業界の)整理を進めているのではないか。中国は昨年、造船業の整理方針を明確 に出しており、今後の脅威になり得る。韓国もウォン危機時に整理が進み、体質強化が日本より進んでいる。日本が頑張 ってどこまで続けられるか危惧を持っている。Δ“アベノミクス’’第3の矢として税制改革を積極的に進めてもらってい る一方、エネルギー政策は積み残しになっており、規制緩和としては労働力の流動性を高めるような政策も今後重要 になる。Δ体質強化の1つの手段として合従連衡があることは業界での共通認識。だが、どういう形で体質強化を図る かは個々の会社の戦略だ。受注がとれたからもう体質強化は必要ない、と思っているような会社はない。船価の高い ものをいかに日本全体で最も効率良く造っていくか、一層強力に進める必要がある。<春闘・就職について>Δ今年の 春闘で総合重機5社では2年で2,000円の賃金改善という回答が出ている。久しぶりのベースアップで、喜ばしいこと。 また、産業全体として就職戦線に明るさが戻ってきている。日本経済全体の底上げになっていけばよいと思う。 ①新造船 ◆新造船価、バルカー・タンカーとも横ばい 新造船価相場がバルカー、タンカーともに横ばいで推移している。先週は 大・中型船でじり高となったものの、新造発注そのものが落ち着いてきたのを反映し、船価相場も足元は強含みながら 横ばいに転じた。バルカーの足元の新造船価レベルは、ケープサイズが5,600万㌦(船型18万重量㌧型)、パナマックス は2,930万㌦(船型7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,750万㌦(船型6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,3 50万㌦(船型3万5,000重量㌧型)といずれも前週比横ばい。新造船マーケットでの引き合いは、ハンディマックス以下 の船型で昨年、発注が大量に積み上がったのを反映し、「振るわない」状況となっている模様。ただし、ここへきて仏穀 物大手ルイ・ドレファスがハンディサイズバルカー4隻を新造発注。新造船価の上げ幅も直近の底値となった2012年末~1 3年初めと比ベ250万㌦にとどまり、再び値ごろ感に注目が集まる可能性が出てきた。タンカーの足元の新造船価レベ ルは、VLCCが9,850万㌦(船型32万重量㌧型)、スエズマックスは6,400万㌦(船型15万7,000重量㌧型)、アフラマックス は5,400万㌦(船型11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,730万㌦(船型5 万1,000重量㌧型)。いずれも横ばいながら強含み基調となっている。ガス船の新造船価レベルも足元は横ばい。VLGC (大型LPG(液化石油ガス)船)は7,700万㌦(船型8万2,000立方㍍型)、LNG(液化天然ガス)船は1億9,900万㌦(船型16 万立方㍍型)となっている。 ②中古船価 ◆中古船価、VL続騰 新造転売9,700万㌦ 中古船マーケットで、VLCC(大型原油タンカー)の中古船価が続騰してい る。足元の新造リセール(転売)価格は直近のレベルに比べ200万㌦高の9,700万㌦をつけている。バルカーの中古船価 は強含み横ばい基調が支配的な中、ケープサイズの船齢10年物、15年物がそれぞれ100万㌦高となっている。タンカ - 6 - ーの足元の中古船価相場は、VLCCが新造リセールで200万㌦上昇したのに加え、船齢5年物も7,200万㌦と200万㌦高 となった。船齢10年物は4,700万㌦と100万㌦高。中古船価は、海運市況の先行指標。VLCCの運賃市況は、新造船の竣工 圧力低下により2014年は改善するとみられており、中古船価上昇はその予測を裏付ける形になる。新造発注残の減少 により注目されるもう一つの船型であるアフラマックスの足元の中古船価レベルは、新造リセール4,700万㌦、船齢5年 物3,700万㌦、船齢10年物2,300万㌦と横ばいで推移している。バルカーの足元の中古船価相場は、ケープサイズが新 造リセール6,000万㌦、船齢5年物4,800万㌦とそれぞれ横ばい。船齢10年物は3,400万㌦、船齢15年物は2,000万㌦と それぞれ100万㌦上昇した。パナマックスは、新造リセールが3,300万㌦、船齢5年物は2,700万㌦、船齢10年物は2,200 万㌦と横ばい。ハンディマックスは、新造リセールが3,200万㌦、船齢5年物は2,700万㌦とそれぞれ横ばい。船齢10年物 は2,050万㌦と50万㌦高となった。ハンディサイズは、新造リセール2,550万㌦、船齢5年物2,100万㌦、船齢10年物1,600 万㌦、船齢15年物1,100万㌦といずれも横ばいで推移している。 ◆IHI・日揮、経営主導 追加取得/ブラジル造船株1/3 IHIや日揮などがブラジル造船最大手のアトランチコスル造船 会社(EAS、ペルナンブコ州)の株式を追加取得し、日本側合計で全体の3分の1を握ったことが明らかになった。これま でEASに出資する特定目的会社(SPC)を通じた持ち株比率は3社合計で約25%だった。ブラジルの大手ゼネコン2社と 並ぶ筆頭株主としてEASの経営を主導し、主要取引先であるブラジル国営石油会社「ベトロブラス」との関係を強化。成 長著しい海洋資源市場に本格参入する。日本企業が連携してブラジルの造船業を支援する動きが加速する。関係筋に よると、2月上旬にEASが実施した第三者割当増資をIHIと同社グループのジャパンマリンユナイテッド(JMU)、日揮の日 本側3社のSPCが引き受けた。増資後、日本側3社の出資比率は合計でブラジルのゼネコン大手のカマルゴ・コヘアグル ープ、同ケイロス・ガルボングループと並び、EASの筆頭株主となった。IHIとJMUからEASには計60人程度を送り込み、技 術、経営の両面で全面的なバックアップ体制体制を敷いている。IHI、日揮、JMUの3杜は2013年にEASへの資本参加を目 的にSPCを設立。同SPCが総額2億100万レアルの第三者割当増資を引き受け、IHIはEASを持分法適用関連会社とした。S PCの出資比率はIHI60.448%、日揮24.627%、JMU14.925%。2回目の増資後も出資比率は変えていない模様だ。EASは ベトロブラス向けに石油資源開発用のドリルシップ7隻、タンカー20隻超の豊富な受注残を抱え、浮体式海洋石油・ガス 生産貯蔵積出設備(FPSO)建造事業への参画も予定している。手持ち工事は19年頃まで抱える。昨年12月には日本勢の 出資後初めて大型タンカーを完成し、納期通りに引き渡した。EASは14年にスエズマックス型タンカー2隻の引き渡しを計 画。15年以降は建造ペースを上げる。同社業績は13年に営業損益がトントン、当期損益は赤字の見込み。14年に営業損 益、当期損益とも黒字化する見込み。ブラジルではベトロブラスの海洋資源開発に伴う旺盛な設備投資を背景として 海洋構造物やタンカーなどの需要が急増。三菱重工業や川崎重工業が現地造船所に資本参加したほか、三井造船子会 社の三井海洋開発などがFPSOを受注している。IHIは過去、現地造船所を運営していた経緯があり、ブラジル造船業と のつながりが深い。 ◆造船この1カ月<上> 《日本造船、エコ戦略の「次」、新領域への挑戦が相次いで具体化》日本造船所がリーマン・シ ョック後に真っ先に手を付けた「エコシップ戦略」は、ひとまず成果を上げた。ただこれは、省エネ技術という得意分野 での成果。これに続いて、必ずしも得意としていない新領域への挑戦が始まろうとしている。今年からは、造船各社で 新規プロジェクトがいよいよ具体化し、建造などが始まる。採算を含めて大きなチャレンジとなるが、エコシップの次の ステージに進むことが、勝ち残りには避けて通れない道となる。《JMU、悲願のLNG船進出》司会 日本の造船所で大型 のプロジェクトがいくつか決まったね。ー まずは、JMU(ジャパンマリンユナイテッド)のLNG船だ。昨年内定していた東京 ガス向けのLNG船2隻で、このほど受注が正式に決まった。ー 統合したJMUとしては、日本の造船大手としてLNG船は絶 対必要な製品メニューだった。大型船型で実績をつくって道をつけるため、今回の商談には必注で挑んだと思う。ー でも、統合前にJMUがLNG船再進出の考えを公表したときに、本当に受注できると予想していた人は競合ヤードにはあ まりいなかっただろう。ー うん。それに、SPBタンクがLNG船に復帰するという可能性もあまりないと思われていた。SP Bの技術上のメリットは誰もが知っていたけれど、コストの高さがネックであることも知られていたから、海洋での採用は 可能性があっても、LNG船では今の大競争時代には厳しいとみられていた。- ただ、JMUが本気で受注できそうだぞと いう雰囲気は昨年の夏ごろから聞こえてきていたね。ー SPBのLNG船は24年ぶりだ。東ガスといえば、LNG船にSPBタン クを初めて採用したユーザーでもあるから、復帰ということになる。ー 久しぶりのLNG船受注ということで、営業も設 計も相当苦労したと聞いている。実際の建造が始まれば、採算も含めて、いろいろ課題も出てくるだろう。大変なのは これからだ。ー ただ、JMUの津はこれでLNG船の建造ヤードとしての道を歩み始める。IHI愛知工場も、ようやくSPBの生 産ラインが稼働するから、意義は大きい。ー もう1つの、JMUにとって久しぶりの受注となる自動車船は、有明で建造す るそうだ。デッキを並べる敷地を考えれば、広大な有明は建造に適している。一 川崎汽船向けの自動車船は環境技術 を盛り込んだパイロット的なエコシップになる。LNG船と建造時期がちょうど重なるから、設計も現場も大変だろうね。 ー JMUはブラジル造船所への支援もあるし、コンテナ船や海洋など大型プロジェクトは他にも控えているようだから、 これからは相当負荷がかかる。ー この挑戦を乗り越えて、いよいよJMUという会社の力が見えてくるのだと思う。《川 重の海洋プロジェクト》司会 もう1つ具体化したのが、川崎重工のオフショア船だ。- ノルウェーのアイランド・オフショ - 7 - ア向けにオフショア作業船を受注した。作業船といっても掘削能力のある特殊船で、海洋の世界では「ゲーム・チェンジ ャー」ともいわれる画期的な新鋭船だそうだ。一 川重はこれでついに、海洋への第一歩を踏み出した。一昨年末に「G OOD」戦略を掲げたけれど、海洋の「0」がなくて「GOD」になっていた。失注で悔しい思いをしたこともあったようだけれ ど、これで全てのピースがそろった。ー カンパニー名に「海洋」を掲げたのは、それよりも前、2010年秋の本体復帰のと きだから、3年半越しでようやく進出を果たしたといえる。- ただブラジルの合弁造船所で建造するドリルシップでは、 詳細設計も含めて川重が全面的に技術サポートをしているから、既に海洋市場での経験は積み始めている。ー ドリル シップのブロックは坂出で一部手掛けるが、これは今年から建造が始まる。ブラジル工場のドリルシップ1番船の納期は2 016年7月で、神戸でのオフショア作業船は2017年3月というから、大型プロジェクトが続くね。- ハイエンドな作業船の 分野は、韓国大手も苦戦していると聞く。川重もまた、採算も含めて大変だろうね。一 韓国では、度重なる仕様変更や 建造のやり直しなどもあって、納期・採算ともトラブル続きの案件もあるようだ。図面供与ならではの苦労も大きいよう だし、一筋縄ではいかないね。ー 川重は神戸工場でのLPG船建造の方針も掲げたし、LNG燃料船や液体水素運搬船、ジ ェットフォイルなどのプロジェクトもある。高付加価値の方向に一気に進んでいるが、やはり大きく生まれ変わるような 印象を受けるね。《エコ戦略の次のステージヘ》司会 高付加価値という点では、三菱重工の客船はどうなったろうか。 ー 受注済みの2隻については、長崎造船所での建造が今年からいよいよ佳境に入る。1番船は来年春の竣工予定だか ら、もう残り1年になったね。ー 残り1年といえば、今治造船の川崎汽船向け1万4,000TEU型も、1番船は来年春の竣工 だ。国内初の1万TEU超メガコンテナ船の建造プロジェクトになるけれど、旧幸陽船渠から広島工場へと組織が変わった 中で取り組むことになる。ー こうして見ると、日本では新規プロジェクトがいくつも始まっているね。海外展開もそう だ。ー 「エコシップ戦略」に続く“第2の矢”を放った造船所が、具体的なプロジェクトに結びついているということだろ う。日本の造船所の勝ち残り策が、エコシップの次のステージに移ったということではないかな。ー ただ、邦船社の発 注が止まっている中で昨年日本の造船所があれほど海外船主から受注できたのは、やはり「エコシップ戦略」の成果だ ったのではないかと改めて思う。もちろん、海外からの日本建造船への評価は、長年の地道な船造りの結果でもあるけ れど、この5年間のエコシップ戦略の1つの到達点といっても良いかもしれないね。- うん。日本の造船所がリーマン・ ショック後にとった最初の戦略は得意船型の省エネ化だったわけだけれど、昨年からはエコシップの1番船の竣工も始 まっているし、大量受注もあったし、ここが1つの節目なのかもしれない。一 船価面では開発努力がまだ報われていな いような気もするけれど…。とはいえ、エコシップの重要性がなくなるわけではない。ー それは当たり前だ。ただエコ シップ戦略は、日本がもともと得意としていた分野に競争のルールを引き寄せるという図式だった。一方で、今始まっ ている新領域への挑戦は、むしろ得意ではない市場へのチャレンジだ。一 無謀な挑戦という意見もあるけれど、皆が 得意分野だけに集中していては産業が縮小傾向になってしまう。こうやって事業領域を広げようとする企業がない と、日本の造船業は活性化しない。そういう点では応援したい。ー これまで新市場への進出を図ったプロジェクトが工 程混乱や赤字決算などをもたらしたことは何度もあった。過去の経験がどう生かされるだろうか。ー それに、新事業 への挑戦でいま先行している韓国からも、学ぶことはあるかもしれないね。彼らも海洋をはじめとしていろいろ苦労を しているようだ。ー 韓国はドックなどの設備のキャパシティというより、エンジニアリングのキャパシティの拡大に力を 入れるようになった感じがするね。オフショアは、設計の工数が商船の10倍という世界だからということもあるだろう。 ー うん。日本も設計や現場のキャパシティをどうするかという点は大きな課題だろう。海外との設計協力とか、そうい う点もまた考え直す必要があるのだろう。 ◆造船この1カ月<下> 《バルカ一新造商談が引き続き堅調、高値成約も、ケミカル船ヤード受注急回復》年明け以降 の新造船マーケットでは、海外勢によるケープサイズやウルトラマックスを中心としたバルカーの新造発注が引き続き 活発だ。日本国内の造船所の多くが16年の船台をほぼ埋めたことから、中国造船所がやや短納期で受注している。新 造船価は、じり高で推移しており、日本建造の高仕様船で相場を上回る成約も出ている。また、国内のケミカル船主力 の造船所が、昨夏以降受注を重ね、一定の手持ちエ事を確保した。造船所の焦点は17-18年といった先物に移りつつあ る。《バルカ一発注続く》司会 昨年の新造船マーケットは大量受注に沸いたが、今年はどのようなスタートを切ったか。 昨年の傾向を踏まえつつ、年明け以降の状況を振り返っていこう。ー 年明け以降もバルカーの新造発注は高水準で推 移している。昨年同様にケープサイズやハンディマックスが特に目立ったね。年初にスコルピオ・バルカーズがケープサ イズ20隻、カムサマックス2隻を発注したのをはじめ、今年も海外勢が発注に動いている。ただ、中国の旧正月明けの動 きはそれほど活発ではないようだ。ー IHS(旧ロイド)統計速報値によると、昨年の世界の新造船受注量は1億総㌧を突 破し、2007年に次ぐ史上2番目の水準だったことが明らかになった。今年はさすがにこれほどの受注量にはならないだ ろうが、1-2月だけ見れば、昨年を上回る発注だった。ー 昨年は秋以降に中国造船所がウルトラマックスやケープサイ ズを中心としたバルカーを大量に受注していたからね。昨年後半の余韻がまだ続いている印象だ。ー 今年に入ってか ら日本の造船所への発注もあったが、やはり中国造船所への発注が中心だったな。ケープは上海外高橋造船や揚子江 船業、ハンディマックスは中船澄西船舶修造や金陵船廠などの受注が目立った。ハンディマックスはほとんどが6万重量 ㌧超のウルトラマックスだった。ー ハンディマックス級を建造していた中国の造船所がウルトラマックス型にも参入した ことでウルトラマックスの受注隻数が拡大した。中国造船所はCSSC傘下の設計会社、上海船舶研究技術院(SDARI)が開 発した6万4,000重量㌧型の図面を各社が広く活用していることから、ほとんどが64型で統一されている。ー 表面化し た中国造船所の受注状況を見ると、やはり納期は期近なものが多い。海外船主を中心にまだまだ発注する意欲がある - 8 - ようだが、納期の近いものを志向している。日本の造船所の船台は16年がほぼ埋まっていることから、期近の納期で安 く発注できるならば中国造船所でも良い、という船社の思惑から受注が増加しているのかもしれない。ー 日本国内の 造船所の多くは既に16年の船台を埋めつつある。当面の手持ち工事を確保しており、鋼材価格の上昇懸念などもある ことから、焦って受注に動く必要はない。このため、投機色の強いプレイヤーからの受注は、敬遠する傾向にある。船台 繰りや船価動向を見定めながら、伝統的なオペや船主など優良取引先からの受注に注力していく方針のようだ。ー 現 代重工や大宇造船海洋といった韓国造船所も今年に入り、VLCCや大型LPG船(VLGC)を相次いで受注している。VLCC やVLGCも昨年後半の発注の勢いが継続しているね。ー VLGCの受注隻数は今年になって表面化したものだけでも、オ プション分や内定を含めると40隻に達している。VLGCは韓国造船所だけでなく中国の江南造船も受注したことが表面 化している。いくらシェールガス関連の有望投資先とはいえ、やはりここまで発注残が膨らんでしまうと、マーケットの 先行きに不安を感じるな。ー VLCCやVLGCの発注者を見ると、投資ファンドや投機的なプレイヤーが中心で、伝統的に タンカーを運航してきた船社はいない。日本の造船所はあえて受注を見送っている面もあるのだろう。ー 近年、日本 の石油会社の用船期間が短くなり、インダストリアルキャリアを除く邦船社がなかなか発注に動けない状況が続いてい る。国内造船所としてはもどかしい状況だが、やはり待ちの姿勢を崩していないようだ。一定隻数のリプレース需要は 今後出てくる見通しだ。《船価はじり高》司会 昨年の大量受注で造船所が手持ち工事を確保したので、焦点は採算改 善に移っているが、船価の動向はどうか。ー 上昇の足取りは重いものの、船価水準はじり高で推移している。日本ある いは韓国の造船所を基準にすると、現在の船価水準は、18万重量㌧級のケープで5,700万-5,900万㌦、6万重量㌧級で 3,000万-3,100万㌦、VLCCが9,700万-9,800万㌦くらい。ケープで6,000万㌦、VLCCで1億㌦はまだ突破できていない が、昨年の同時期と比較すれば、水準としてはかなり上がっている。ー 日本の造船所が高値で受注するケースも増え ているね。台湾のウイズダム・マリンや硫酸カリウム製造最大手セソダからハンディサイズやカムサマックスを高値で受 注している。高仕様ということもあるが、省エネや環境性能などへの高まりを受けて、“ジャパンプレミアム’’が再評価 されているという声も大きい。値動きの鈍かったハンディサイズも、日本建造船は2,500万-2,600万㌦で成約されてい る。ー 中国造船所の成約水準も緩やかではあるものの上昇してきた。64型バルカーも2,800万㌦前後を付けている成 約もある。ー VLGCでも大宇造船が1隻当たり8,000万㌦程度で最大12隻を受注している。昨年の相場が7,000万㌦台半 ばだったことから、仕様の違いなどはあるにせよ上昇トレンドになっているのかもしれないね。ー 逆に上がっていない のがLNG船だろう。関係者の話を総合すると、昨年からほぼ横ばい、あるいは若干下がったという。船価という点では、 他の船種のマーケットとは独立しているとも言える。ただ、今後シェールガス絡みの案件が活発化してくることで、船価 も徐々に上がっていくのではと思う。ー 既に日本向けシェールガス関連の商談の第1弾が決まった。JMU(ジャパンマリ ンユナイテッド)が東京ガス向けのLNG船2隻を正式に受注した。今後もキャメロンやフリーポートなど注目の大型商談が 今年の前半に行われる。造船では、三菱重工/今治造船/川崎重工/三井造船の4社連合などが商談に参加してい る。《ケミカル船の受注急回復》司会 日本国内の話題としてはケミカル船主力の造船所が受注を重ねていたことが明 らかになった。ー 昨年以降、北日本造船、臼杵造船、福岡造船などケミカル船を主力とするヤードが海外オペ向けを中 心にステンレス船の受注を重ねた。主要各社は線表を2016年前半から2017年末まで伸ばしている。一時は深刻な手持 ち工事不足が懸念されていたケミカル船ヤードだが、手持ちを確保した格好だ。ー ケミカル船を中心に建造している ヤードはLPG船やバルカー、内航船を受注するなど、ケミカル船の需要が戻るまで手持ち工事不足を補うなど苦労が 続いていた。好況期にはケミカル船の連続建造体制を敷いていたから、他の船種を建造するのには相当な負担もあっ たと思う。ー あれほど需要の不振が続いていたにもかかわらず、状況が変わった背景には何があったのだろうか。ー 発注者、造船所ともケミカル船はリーマン・ショック以降、造船所が提示する船価と船社の用船料をベースにした船価に 大きな乖離が生じて身動きの取れない状況が続いていた。それが昨夏以降、船価の底打ち感や発注残の減少などを 背景にケミカル船の引き合いが急激に増加したようだ。長期化していた超円高の是正や燃費性能に優れたエコシップ 需要の高まりも日本の造船所の受注を後押ししたのだろう。造船所も従来船から大幅に燃料消費量を改善した新船型 を市場に投入した。ー 発注の多かった1万9,000重量㌧前後の船型であれば、ステンレス仕様のケミカル船は日本の造 船所にアドバンテージがある。近年は中国などでも建造されているが、やはり品質面での日本の優位性はまだ歴然と している。今後3万重量㌧超の大型船が主流となるのかどうかがケミカル船ヤードにとっては大きな分岐点になりそう だ。ー ケミカル船の引き合いは現在も多いようだね。ー 本格回復には今しばらく時間がかかりそうだが、徐々にケミ カル船の運賃や用船市況も上昇しできている。ケミカル船ヤードの焦点は先物に移りつつある。採算を見極めながら営 業をかけていくのだろう。新ドックが昨年11月に稼働した北日本造船をはじめ徐々に操業水準を上げている。ー ただ、1 7-18年といった先物の商談は鋼材やステンレス価格の上昇に対する警戒感が広がる中で難しい面もある。ー ケミカル 船ヤードを取り巻く環境はひとまず底を脱した。受注のタイミングや操業体制、主流船型の見極めなど、今後の受注戦 略を練る展開になってきている。 ◆輸出船手持ち増加/海洋関連、日本勢が受注も [デスク]さて、輸出船契約実績では好調が続いているようだね。 [A]堅調です。日本船舶輸出組合の輸出船契約実績では、1月単月の受注量が143万総㌧(66万CGT=標準貨物船換算 ㌧)で、前年同月比2.7倍(CGTベースで3倍)に膨らみました。2013年(1-12月)も、1,462万総㌧(684万CGT)で、前年比8 0%増(CGTベースで81%増)となりました。リーマン・ショック以降の暦年実績で過去最高です。[B]1月末の手持ち工事 量は、621隻、2,664万総㌧(1,243万CGT)となり、前年1月末の570隻、2,607万総㌧(1,166万CGT)を上回りました。手持ち - 9 - 工事量が前年同月末実績比プラスとなったのは、2006年2月以来です。[C]受注のニュースも増えてきました。船舶輸 組の実績では、船種としてバルカーが引き続き中心ですが、LNG(液化天然ガス)船などガス船や、原油、石油製品(プロ ダクト)、石油化学製品(ケミカル)などを積み荷とするタンカーなども出てきました。[デスク]日本勢が巻き返しを目指 す海洋(オフショア)関連の動きはどうか。[A]今年に入り、川崎重工業がオフショア作業船を受注しました。オフショア関 連で、川崎重工はこれまで半潜水型のセミサブリグや、オフショア船と同系の海洋調査船複数隻を建造した実績があ りますが、オフショア作業船の受注は今回が初です。ノルウェーのアイランド・オフショア向けです。受注額は明らかにさ れていませんが、数百億円規模とみられます。昨年には、出資しているブラジル造船からドリルシップ(掘削船)の船体 部も受注しており、今後の動きに期待したいです。[B]2月には日揮が、マレーシア国営石油公社ベトロナスからFLNG(LN G用のFPSO(洋上浮体式石油・ガス生産・貯蔵・積み出し設備〉)を受注したことを発表しました。日本勢の受注と言いた いところですが、コンソーシアム(共同事業体)によるもので、船体などは韓国のサムスン重工業が建造します。日揮が 担当するのは液化装置です。さらに千代田化工建設も、グループ会社が韓国の現代重工業などとのコンソーシアムで、 インドネシア向けのFPU(洋上ガス処理設備)を受注しました。[C]日本で船体を造るなど、日本の造船所の仕事につな がる受注が出ることを期待したい。三井海洋開発(MODEC)が開発したFLNGなど、今後新たな動きも出そうです。 ◆ブラジルで日本流管理/IHIなど、造船所に技術者 IHIや三菱重工業が相次いで、出資先のブラジルの造船所の生産 体制を強化する。日本の技術者を増員し、日本流の管理手法で生産効率を高める。ブラジルでは海底油田開発に伴い 資源開発船の建造需要が増えており、納期や品質の徹底で受注拡大につなげる考え。IHIは日揮やジャパンマリンユナ イテッド(東京・港)と共同出資するアトランチコスル造船所に派遣している日本人管理者を約3倍の20人に増やした。労 務や調達、工程管理などに精通した人材を増やし、納期やコスト意識などを現地従業員に植え付ける。2014年度中に日 本流の生産体制を築き、15年度から新造するタンカーでは納期を日本と同じ1年にする。納期や品質の順守で受注活動 を有利に進める考え。三菱重工も今治造船や三菱商事などと共同出資するエコビックス・エンジェピックスに今年度中 に10人強の技術者らを派遣する。造船所の設備は充実しているが、工程順守など生産管理の水準が低いため、加工技 術や管理ノウハウを伝授する。来年度にはさらに10人強の派遣も検討する。 Ⅲ.各国造船業の動向 ◆マネーの熱、船舶投資の”性” 《新造船発注》世界の新造船発注が再び活発化してきた。2013年の発注ブームを受 け、新造船価は昨年来、じり高傾向にあるとはいえ、上げ足は鈍く、依然として値ごろ感があるのに加え、燃費性能に優 れた最新鋭船に切り替えたいシップオーナーのニーズが強いことが背景にあるようだ。投機的な発注がけん引した昨 年とは異なり、国内外ともに伝統的なプレーヤーによる仕込みが目立ってきた。新造発注は、13年に2,000隻を突破し て前年比倍増となり、3年ぶりの高水準となった。14年に入り、1月に表面化した発注隻数は200隻を突破し、13年以来4 度目の単月200隻を記録したものの、2月に入り失速、オフショア船を中心に170隻程度にとどまった。この間、昨年のマ ーケットの主役だった投機筋は鳴りを潜める。明らかにマ一ケットは踊り場に差し掛かったように映った。3月に入り、新 造発注は再び単月200隻突破をうかがう勢いとなっている。カーゴの裏付けを持つ日本のオペレーター、ドイツのコン テナ船の船主など伝統的なプレーヤーが発注するケースが目立ってきた。加えて、中国の発注が依然として続いてい る。船台の空いている造船所救済という国策的な色合いの濃い中国船社による発注に加え、短納期が出る新興造船所 の船台を狙い、海外船主の発注が再び活発化している。新造船価はじり高傾向とはいえ、中国造船受注の新造船は、マ ーケットレベル・マイナス10%が船価の相場となる。その場合、船種・船型によっては、直近の底値となった12年-13年初 めとほぼ同等の船価レベルで新造船を発注することができる。実際に竣工してきた際の性能はいざ知らず、一応は燃 費性能が従来比2割は改善される触れ込み。デリバリー後にうたい文句通りの性能を発揮しない場合については、オー ナーサイドは建造契約の中でしっかり補償を求めているだろう。世界屈指のフリートを擁し、日本の荷主を中心とするカ ーゴの裏付けを持つ邦船オペレーター各社は、リプレース(代替)建造需要だけでもなまなかな数ではない。海外のオ ーナーは投機に敏いタイプ、邦船と同様にカーゴをベースとした長期安定を志向する堅いタイプがある。今年に入って からの新造発注は、堅いタイプが中心となっている。そんなマーケットを眺めながら思わざるを得ないのは、オーナー によっては耐用年数が短くて15年、長ければ30年にも及ぶ船舶への投資の宿命のようなものである。昨年来の新造発 注ブームは、船舶投資に賭けるマネーの熱といったものをまざまざと見せつけるとともに、船舶の寿命30年を踏まえ た”30年の計”とも言うべき船舶投資の避けがたい”性”のようなものを感じさせずにはおかない。 ◆新造船発注 再び活発/3月200隻突破の公算 《海外船主、短納期船台掘り起こし》世界の新造発注が再び活発に なってきた。本紙集計で、3月の発注隻数は200隻を突破する公算。邦船オペレーターの間に新造整備を再開するケー スが増えてきたのに加え、海外船主が中国の新興造船所を中心に2015-16年の短納期船台を積極的に掘り起こしてい る。新造船価はじり高基調が続いているものの、世界の造船設備の供給過剰を背景に上げ足は鈍く、燃費性能に優れ た最新鋭船に対し、国内外の船主は依然として値ごろ感があると判断している模様だ。3月の新造発注隻数は25日現 在、本紙集計で191隻(新規発注のオプションを含む。昨年発注された新造船のオプション行使は含まない)。単月で200 - 10 - 隻を突破すれば、14年では1月に続き2度目。13年から続く発注ブーム局面では5度目となる。昨年の新造発注は、底値 買いを狙った投機筋がけん引した。今年1月にかけては、そうした投機筋によるオプション行使などもあり、昨年来の流 れを継いだが、投機筋の発注一巡の色彩が濃くなるのに従い、2月の新造船マーケットは静かになった。2月の新造発注 は178隻と一定程度のボリュームとなったものの、オフショア船の発注が中心。3月に入り、バルカー、タンカー、コンテナ 船、ガス船と幅広い船種で新造発注が再び活発になっている。バルカーは6万重量㌧クラスのウルトラマックス、タンカ ーはLR(ロングレンジ)1型プロダクト(石油製品)船の発注に勢いがある。年末年始に盛り上がったVLCC(大型原油タン カー)の発注は今月は表面化していない。投機筋は鳴りを潜めた半面、伝統的な海外のプレーヤーが中国の新興造船 所の船台を中心に、15-16年の短納期船台を掘り起こしているのが3月の新造船マーケットの特徴。新造船価はじり高傾 向が続いているものの、足元の新造船価レベルは、18万重量㌧型ケープサイズバルカーのケースで5,650万㌧と08年 秋のリーマン・ショック後に暴落した水準とほぼ同じ。ハンディサイズに至っては、直近の底値となった12年と比べ、250 万㌦高の2,350万㌦(船型3万5,000重量㌧型)にとどまっている。「国内外の船主の間には、船価妙味に加え、長期的な 観点から、燃費性能に優れた最新鋭船に切り替えなければ競争力を維持できないとの認識がある」(市場関係者)との 見方が根強い。 ◆3年後までに建造能力1,200万重量㌧/上海市、江蘇省に次ぐ抑制目標 中国上海市政府は、3年後までに市全体の 新造船建造能力を計1,200万重量㌧程度に抑える。同市が8日付で公布した「『生産能力過剰矛盾の解決に関する国務 院指導意見』(国発〔2013〕41号)の市政府貫徹」で明らかにした。江蘇省に続く造船の生産能力抑制目標で、浙江省政 府も同様の目標を策定中のもよう。国務院は昨年10月、「生産能力過剰矛盾の解決に関する指導意見」を公布した。鉄 鋼、セメント、電解アルミ、板ガラスとともに造船業を生産能力過剰産業とし、再編を含む産業の再構成を実施するとし た。造船業には能力抑制目標の数値は定められなかったものの「5年以内」という期間は設定された。上海市政府は今 回、同意見に基づいた市の方針を公表した格好だ。2017年までに生産能力を造船1,200万重量㌧のほか、鉄鋼2,000万 ㌧に抑えるなどとした。生産能力過剰産業に対しては製品の競争力などに応じて金融支援で差別化を図り、再構成に つなげる。ただし各産業とも現状の建造能力が示されていないため、能力の削減幅は明らかでない。先立って江蘇省 政府は1月、今後5年間で新造船建造能力を計1,000万重量㌧程度減らして同2,500万重量㌧程度に抑えるとし、全土で 初めて数値目標を示していた。また現地報道によると、浙江省省発展改革委員会は7日、関係各局を集めて造船の生産 能力抑制に関する会議を開き、同省としての方案を審議したようだ。中国船舶工業行業協会(CANSI)のまとめによる と、2012年の地域別造船竣工量は首位が江蘇省2,309万4,000重量㌧、2位が上海市1,042万4,000重量㌧、3位が浙江 省1,032万3,000重量㌧となっている。 ◆中国造船、新造受注が大幅増 《CANSl統計、1-2月は1,800万重量㌧》中国船舶工業協会(CANSI)によると、今年12月の中国の新造船受注量は1,808万重量㌧で、前年同期比3.6倍に増加した。単月に換算すると、900万重量㌧となり、 高水準を維持している。年明け以降もハンディマックスやケープサイズなどバルカーを中心に受注を重ねた中国造船 所の姿勢が、統計にも表れた。受注は好調だったが、1-2月の竣工量は前年同期比27%減の414万重量㌧に落ち込ん だ。操業のスローダウンが鮮明に表れた。受注量の拡大と操業の低下を受けて、2月末時点の手持ち工事量は1億4,493 重量㌧となり、1年前と比べて36%増加した。このうち重点観測企業54社の受注量は前年同期比3.3倍の1,789万重量 ㌧、竣工量は26%減の399万重量㌧、手持ち工事量は42%増の1億3,990万重量㌧だった。それぞれ全体の98%、96%、 97%を占めている。船舶関連の重点観測企業87社の1-2月の完成工業総生産額は501億元(8,250億円)で前年同期比 9%増加した。そのうち造船は242億元(3,985億円)で8%増加、舶用は42億元(692億円)で8%増加、修繕が17億元(28 0億円)で6%増加した。また、主要事業収入は308億元(5,072億円)で11%増加し、利潤総額は2.2倍の4億8,000万元(7 9億円)となり、前年同期と比べて収支も改善している。 ◆現代とサムスンは大幅増 《韓国造船大手の1-2月受注実績》韓国造船大手が今年に入ってからも受注を重ねてい る。今年1-2月に現代重工業が新造船33隻・26億8,000万㌦、サムスン重工業がFLNG1基を含む6隻・20億5,000万㌦を受 注した。それぞれ受注金額ベースで前年同期比2.9倍、7割増となっている。大宇造船海洋は14隻・14億2,000万㌦を受 注したものの、受注金額は前年同期を下回った。それぞれ年間受注目標の1割前後を受注したことになる。現代重工が 受注した新造船の内訳は、LPG船20隻、タンカー6隻、コンテナ船4隻、バルカー3隻だった。海洋部門の1-2月の受注高は 4億7,000万㌦と前年同期を下回った。一般商船の受注高が好調だったこともあり、他部門も含めた会社全体の1-2月 の受注高は前年同期比27%増の43億㌦となり、好調なスタートを切った。サムスン重工はコンテナ船5隻、LNG-FPSO(F LNG)1基を受注した。1月に1万4,400TEU型コンテナ船5隻を受注したほか、2月にマレーシア国営石油ベトロナス向けのF LNGの建造プロジェクトを受注するなど1件当たりの金額が大きい案件を受注している。大宇造船はLPG船8隻、タンカー 4隻、LNG船2隻を受注した。一般商船の受注は好調だったが、海洋構造物などオフショア関連の受注はなかった。前年 同期は一般商船の受注がなかったものの、海洋構造物など金額の大きいオフショア関連の受注があったため、受注金 - 11 - 額は前年を大きく下回った。韓国造船大手3社は、今年は好調だった昨年の実績をさらに上回る受注目標を掲げてい る。海洋関発に用いる洋上設備(オフショア)など一般商船以外の受注を拡大するとともに、LNG船などの高付加価値船 で受注金額の上積みを図っていく方針。 ◆韓国造船大手、研究体制を強化 《研究所新設し人員増強、投資額も拡大》韓国造船大手が研究開発の体制を強化 している。開発投資の金額を増やすほか、新たに研究所を建設して組織などを再編し、人員を増強する動きが相次いで いる。エンジニアリング能力が必要な海洋開発(オフショア)部門の強化に備えるとともに、造船事業でも技術力強化で 差別化を図る。現代重工は今年初めに、オフショアの詳細設計を担当するソウル市内の海洋エンジニアリングセンター を移転した。人員増強に備えるのが目的で、現在100人規模の人員を、2016年末までに600人規模に増やす計画だ。ま た今年初めには、グループの現代尾浦造船、現代三湖重工と共同で、設計子会社「現代E&T」も設立した。グループ3 社の造船・オフショア事業を中心に設計や検査業務を担う会社で、同社の設計技術者と検査員を2018年までに2,000人 体制にまで拡大する計画だ。サムスン重工は現在、ソウル近郊の城南市板橋に研究開発センターを建設している。今年 秋に完成した後は、巨済市や大田市大徳に分散している研究機能を移転する計画。首都圏での大規模研究拠点の設置 により、人材確保などを容易にする狙いがあるようだ。大宇造船海洋も、ソウル市内の産業団地「麻谷(マゴク)地区」に 研究所の建設を決定した。同社にとって初の試験水槽も備える大型研究所となる予定で、2017年に完成した後は、ソウ ル本社と巨済の造船所などに分散していた船舶や海洋構造物の研究部門を集約する。各社は研究投資額も今年増額 する見通しだ。現地紙によると、現代重工は今年の研究開発投資額を昨年の2,500億ウォン台から3,000億ウォン台に拡 大する予定。研究開発費としては、大宇造船海洋が今年は前年の2,900億ウォンから今年は6,400億ウォンへと大幅に拡 大する予定。サムスン重工は今期は売上高の1%を研究開発費充てる方針を決めて、昨年の1,400億ウォンから1,500億 円規模に拡大する見通しだ。 Ⅳ.造船・造機以外の産業動向 ◎外航海運 ◆主要4航路平均が大幅反落 《ケープ市況、期間用船料は高値推持》ケープサイズ・バルカーのスポット用船市況 は、英ボルチック・エクスチェンジ主要4航路平均用船料の12日付が前日比4,602㌦安い日建て2万472㌦となり、大幅に 反落した。同用船料の下げ幅は今年最大で、FFA(海運先物)レートの下落をきっかけに調整局面に入った。ただ、1年前後 の期間用船料は高値を維持しており、今年のケープサイズ市況は堅調という市場の見方は依然変わっていない。航路 別のスポット用船料の足元の気配値は、太平洋ラウンドが約1万9,000㌦、大西洋ラウンドが約2万1,000㌦、大西洋/太平 洋間のクロストレードが約4万㌦で、主要航路が軒並み反落した。期間用船マーケットは、スポット用船料の先高観から依 然活発。13日のマーケットレポートによると、クラシックマリタイムが2011年竣工の19万9,418重量㌧型を日建て3万5,000 ㌦で10-14カ月用船し、1年物用船料の今年の最高値を更新した。また、ドイツの電力・エネルギー大手RWEが14年竣工の1 8万重量㌧型を日建て2万8,000㌦で56-60カ月用船しており、需要家が中期用船で船腹を押さえる動きも出てきてい る。 ◆タンカー運賃3割下落/スポット 中国の原油需要一服で 大型原油タンカーのスポット(随時契約)運賃が下落して いる。運賃の動きを示すワールドスケール(WS、基準運賃=100)は中東-東アジア間で41・5。この1カ月間で34%低下 し、5カ月ぶりの低水準となった。日本の製油所で春に修理に入るところが多いうえ、「中国の実需の伸びが予想を下 回っている」(国内海運大手)ことも影響している。《5カ月ぷりの低水準に》中国の景気減速で石油製品の需要は伸び悩 んでいる。現地の原油在庫は高水準となったとみられる。「3月に入り中国の輸入量は減少に転じる可能性が高い」(英 金融大手バークレイズ)との見方が多い。1-2月に中東から東アジアに原油を運んだタンカーには、中東に戻って次の輸 送を待っているものが多い。日本の製油所も4-6月に定期修理に入るところが多いため「現地で待機したままの船が 増えている」(国内海運)という。WSは2012年夏以降は30-40台で推移したが13年10月から上昇。1月下旬に週間平均で 64・1と1年8カ月ぶりの高水準となった。中国の1-2月の輸入量は日量630万バレル程度と前年同期に比べ1割増加して いたことも、2月までのタンカー運賃を下支えした。リーマン・ショック前に発注された大型タンカーの完成が一服したこ とが背景。13年中の世界の大型タンカーの完成数は45隻で前年に比べて4隻減少した。14年は27隻と大幅に減る見通 しだ。当面のスポット運賃は弱含みで推移する可能性が高いものの、大きく下がるとの見方は少ない。「16年までは海 運各社の輸送能力が大きく積み上がることはない」(商船三井油送船部)とみられ、運賃が下支えされるとの観測が広 がる。ただ、米国などでシェールガスの利用が広がっている影響もあり、長期的には世界全体の原油輸送量の増加ピッ チが鈍る可能性もある。日本郵船の予測によると12-22年の原油の海上輸送量の伸び率は、世界で年平均0・4%と微増 にとどまる見通しだ。 ◎内航船、内航海運 ◆13年度共有建造38隻/鉄道・運輸機構 《18日時点 過去5年で最多》建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機 構)は18日、東京都内で共有建造支援セミナーを開いた。同機構はセミナーで2013年度の共有建造実績について、同 - 12 - 日までに38隻の建造内定を出したと公表。13年度の共有建造は輸送需要の増加、船舶の代替需要の高まりなどを背景 に過去5年間で最も多い実績となった。13年度の建造実績(内定)の内訳は貨物船28隻(前年度比4隻増)、旅客船10隻 (同2隻増)。復興需要増に伴うセメント船の新造の動きが継続していることに加え、RORO船、長距離フェリーの建造が 相次いでいることで、貨物船、旅客船とも前年度を上回る水準となった。内航貨物船の内訳は油送船9隻(前年度比7隻 減)、貨物船(プッシャー・バージ含む)7隻(同2隻増)、ケミカル船4隻(同全増)、セメント船4隻(同1隻増)、RORO船(自動 車専用船含む)3隻(同全増)、特殊タンク船1隻(同全増)。油送船は前年度よりも建造隻数が減った一方、貨物船やセメ ント船では実績を伸ばした。前年度に実績がなかったケミカル船や特殊タンク船、RORO船の建造もあった。内航貨物船 の船型別の内訳は749総㌧超型15隻、499総㌧型6隻、749総㌧型4隻、499総㌧未満型3隻で、大型船の建造が目立つ。 建造需要の活発化で鉄道・運輸機構の船舶共有建造での分担額は527億円と03年の同機構発足以降最高水準となっ た。特に一隻の建造費用が大きい大型フェリーが共有建造されることもあり、旅客船向けの分担額が大きく伸びた。セ ミナーではこのほか、鉄道・運輸機構が「エネルギー使用合理化事業者支援事業」、日本財団が「共有船向け日本財団 造船関係事業資金融資制度」、交通エコロジー・モビリティ財団が「海上交通バリアフリー施設整備助成制度」、国土交 通省海事局が「14年度内航関係税制改正要望の結果概要」について、それぞれ講演した。 ◆3月期解撤交付金申請、20日まで受け付け/内航総連 日本内航海運組合総連合会は、20日までを募集期間に組 合員(内航事業者)からの3月期解撤交付金交付(引き当て資格の買い上げ)申請を受け付けている。2013年度の交付 金申請は暫定措置事業規程に基づき、過去3回(13年5、9、11月)の募集期間を設けたが、これまでのところ申請はゼロ で推移している。3月期の解撤交付金申請の受け付けは13年度第4回買い上げ募集として今月1-20日を応募期間に実 施している。今年度も前年度と同様に年4回受け付ける。解撤交付金単価は1対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方㍍、 曳船・馬力など)当たり一般貨物船3万6,000円、油送船1万8,500円、IMO船(特殊油送船)9,250円、曳船3,600円などと 設定している。 ◆13年度の建造認定/3年連続で100隻超 日本内航海運組合総連合会は先週の理事会で、1月期の船舶建造(改造・ 転用含む)募集で受け付けた組合員(内航事業者)からの申請24隻・5万7,00対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方㍍、曳 船・馬力など)を全船認定した。内航総連の建造認定は暫定措置事業規程に基づいて実施。今回の認定船を加えた201 3年度の建造認定隻数は計116隻に達し、11年度以降3年連続で100隻を超える水準となった。13年度の建造申請での認 定隻数は、11月期を除いて20隻を上回る水準で推移。5月期は08年5月期以来、5年ぶりに30隻超の認定となった。今年 度は年度前半に油送船の応募が増え、5月期と7月期は5,000-6,000立方㍍型などの大型船の応募が目立った。その 後、大型船建造は一巡したが、年度後半は中・小型船の建造申請が続いた。貨物船では、大型RORO船などの応募が相 次いだ。主力船型の499総㌧の申請の動きは年間を通して鈍かったが、ここにきて応募が活発になってきた。1月期の認 定船の船種別内訳は一般貨物船12隻・1万9,400重量㌧油送船7隻・1万2,040立方㍍、石灰石専用船2隻・1万重量㌧(プッ シャーとバージ)、コンテナ船1隻・1,780重量㌧、炭酸カルシウム船1隻・3,500重量㌧曳船1隻・4,000馬力となっている。 ◆解撒交付金申請 《13年度は過去最少1隻》日本内航海運組合総連合会(内航総連)がまとめた2014年3月期の解 撒交付金交付(引き当て資格の買い上げ)の受け付け結果によると、組合員からの申請は一般貨物船1隻・1,529重量㌧ となった。交付金額は概算で5,500万円。13年度の他の申請期では応募がなかったため今年度の申請船は1隻にとどま り、年間を通じた申請隻数は同制度がスタートした1998年度以降で過去最少となった。13年度の解撒交付金申請は暫 定事業規程に基づいて、5、9、11月、14年3月に募集期間を設け組合員(内航事業者)から受け付け開始。今年度最終と なった3月期交付金申請は1-20日の応募期間に行われた。今年度は応募が低調に推移。5、9、11月に行われた募集では 申請船が1隻もなく、「13年度はがゼロに終わるのではないか」(内航関係者)とみられていた。申請が減っているのは、 買い上げ対象船自体が減少しているほか足元の堅調な輸送需要を背景に船腹需給が逼迫しているため申請を行わず に、船を持ち続ける船主が多くなっていることが理由に挙げられる。申請の減少は11年度以降顕著になった。10年度に1 6隻・3万3,00対象㌧の応募があったが、11年度が4隻・9,000対象㌧12年度が6隻・1万100対象㌦と低調で、13年度には1 隻まで減少した。14年度も交付金対象船の減少と輸送需要の高まりが見込まるため、応募が少なくなりそうだ。 ◆14年度の暫定事業建造5回交付金4回 《15年度まで現行制度継続》日本内航海運組合総連合会は2014年度の暫 定措置事業制度について、13年度と同様に船舶建造(改造、転用含む)申請を年5回、解撒交付金交付(引き当て資格の 買い上げ)申請を年4回それぞれ組合員(内航事業者)から受け付ける。15年度は現行制度を継続。16年度からは建造納 付金制度を中心とした新たな暫定事業の枠組みがスタートする。内航総連は14年度の申請要領をまとめ、各組合員に 周知した。14年度の受け付けは、前年度と同様に建造納付金申請を5、7、9、11、15年1月に実施。解撒交付金申請を5、9、1 1、15年3月に受付期間を設け。いずれも受付月の1-20日が募集期間となる。15年度も同様の予定。1対象㌧(貨物船・重 量㌧、油送船・立方㍍、曳船・馬力など)当たりの14年度の単価は、一般貨物船6万1,000円、油送船4万500円、曳船6,100 円。解撒交付金単価は一般貨物船3万1,000円、油送船1万6.500円、曳船3,100円と設定する。交付金の申請対象となる 船舶は、暫定措置規程により船齢15年以下のものに限られる。納付とも前年度に比べ一般貨物船で5,000円、油送船で 2,000円引き下げられる。16年度以降の暫定業の枠組み(建造納付金単価額など)は昨年12月に国土交通相を認可を得 たことで決定。15年度で解撒交付金制度が終了し、16年度以降は環境要件などで3グループに分類されるなどした新 たな建造納付金制度がスタート。 - 13 - ◆成長前のクロマグロ/漁獲量50%削減 《日本近海、乱獲防ぐ、水産庁、15年以降》水産庁は日本周辺の漁場での未 成熟な小型クロマグロの漁獲量を、2015年以降、基準に比べ50%削減する方針を固めた。10日に開く国の広域漁業調 整委員会で漁業関係者に説明する。未成魚は「メジ」「ヨコワ」など安価なマグロとして流通。スーパーの刺し身などが 値上がりする可能性もあるが、成長前の乱獲で親魚が減っており、資源保護を優先する。削減対象は30㌔㌘未満の未 成魚。昨年9月に開かれた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の小委員会は、14年の加盟国・地域の漁獲量を、基準 となる02-04年の平均値から15%減らすことを決めた。太平洋クロマグロの親魚の資源量はおよそ2万6千㌧と推定さ れ、過去最低値に近づいている。しかし、最新の調査では基準比15-25%の漁獲量削減を続けても、10年先に3万㌧程度 にしか回復しない見込みで、削減率を50%にした場合は7万㌧台に増える可能性も出てくるという。消費量が圧倒的に 多い日本が思い切った削減目標を提示し、韓国など主要な国・地域にも同調を促す。水産庁は近く資源管理の検討会 を発足、効果的な漁獲量制限策を話し合い、9月に開くWCPFCの小委員会までに規制案を決め各国に示す。 ◆クロマグロ幼魚「漁獲半分に」/水産庁提案へ国際規制目指す すしネタで人気の太平洋クロマグロの資源量を守る ため、水産庁は10日、幼魚(0-3歳)の漁獲量を2002-04年の平均値から半減させる国際規制の導入を目指すと、発表し た。国際機関「中西部太平洋まぐろ類委員会」(WCPFC)に、15年から10年ほどはこの水準を維持する規制方針を提案す る。WCPFCは今年、平均値から15%減らす規制を導入したばかりだが、水産庁は資源の回復には半減させる必要がある と判断した。日本海などを含む広義の中西部太平洋の幼魚の漁獲量は、日本漁船分は02-04年平均が8,015㌧だった ため、日本の半減目標は約4,000㌧になる。12年は94年以降もっとも少ない3,815㌧だったため、目標を下回っている。 ただ、漁獲量は年によってばらつきがあり、11年は半減目標を上回る9,127㌧だった。水産庁は、地中海や南半球など中 西部太平洋以外でとれる同等のマグロも多いため、消費者への影響は少ないと見ている。水産庁は半減実現の具体 策を、国内の漁業関係者と話し合って6月をめどに決める。10日に都内で開かれた漁業関係者を集めた会議でも、特に 反対の声は出なかったという。国際提案は9月にする方針だが、「反対しそうなのは韓国くらい」(担当者)とみている。 各国による幼魚の乱獲は親魚の減少を招いており、12年の資源量は推定約2万6,300㌧。84年に記録した過去最低の約 1万9,000㌧近くまで落ち込んでいる。 ◆クロマグロなど、漁船・漁協ごとに漁獲上限 《水産省が導入検討》水産庁は24日、クロマグロなど資源の減少が深 刻な魚種を対象に、漁船や漁協ごとに漁獲上限を設ける「個別漁獲枠(IQ)」導入の検討を始めた。IQは海外の先進国で 広く導入されている資源管理手法で、資源保護のほか、漁業者の経営改善にもつながっている。同日、水産行政関係者 や水産経済学者らが参加する「資源管理のあり方検討会」の初会合で検討を始めた。6月まで5回の会合で方向性を決 め、2015年度にも実施する。日本は現在、サンマやサバ、イワシなど7魚種を対象に年間に漁獲できる総量(TAC)を設 定している。この手法では漁が早い者勝ちになるため、水揚げ集中による鮮度の低下に加え、悪天候でも出漁する漁 業者が増えるなど安全面での問題も生じている。個別漁獲枠の場合、水揚げ集中による魚価の下落も防ぎやすく、漁 業者の採算も改善しやすいクロマグロのほか、スケソウダラやトラフグなど資源状況が悪い他の魚種でもIQを含めた 新しい管理手法を検討する。 ◆推定鉄骨需要量約48・4万㌧ 《18カ月連続で前年上回る》国土交通省の1月の建築着工統計調査報告によると、全 着工床面積は前年同月比16・7%増(前月比4・6%減)の1,205万平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が同29・3%増 (同7・1%増)の466万3,000平方㍍、SRC造は同67・9%増(同64・4%増)の36万平方㍍。全床面積中のS造、SRC造の比率 は41・7.%、推定される鉄骨需要量は約48万4,000㌧の水準(前年同月は約37万㌧、※表2)と18カ月連続で前年を上回 った。 ◆工作機械受注、5ヵ月連続増/2月 輸出回復進む 日本工作機械工業会(東京・港)が11日発表した2月の工作機械 受注額(速報値)は、前年同月比26%増の1,019億1,800万円と5カ月連続で前年同月を上回った。堅調な国内向けに加 え、スマートフォン(スマホ)向けなどの低迷が続いていた輸出の回復が一段と進んできた。全体の7割弱を占める輸出 は26%増の674億7,300万円だった。北米は自動車向けなどで高い水準の需要が続き、欧州も緩やかに回復している。 需要低迷が続いていた中国は「一部でスマホ関連が戻りだした」(ツガミ)。国内向けは26%増の344億4,500万円。自 動車業界を中心に中小企業にも設備投資意欲が戻りつつある。 ◆工作機械受注、2月 《5ヵ月連続増の1,019億円》日本工作機械工業会(日工会)が11日発表した2月の工作機械受 注実績(速報値)は1,019億1,800万円で、前年同月比26・0%増と5カ月連続のプラスになった。好不調の目安となる1,00 0億円の大台を6カ月連続で上回った。前年の2月から受注が上昇局面に入ったこともあり、伸び率はやや鈍化したが、 回復傾向が続いた。内需は344億4,500万円で、同26・0%増と8カ月連続のプラス。外需は674億7,300万円で、同26・0 %増と4カ月連続のプラスになった。外需比率は同横ばいの66・2%だった。前月比は受注総額が1・4%増、内需が0・4% 増、外需が同1・9%増と、いずれもわずかながらプラスを確保した。2月は営業日数の少なさに加え、主要需要国の中国 - 14 - で春節休暇があり、例年受注が伸び悩む傾向にある。そうした中でも外需は、カナダの航空機関連やメキシコの自動車 関連でスポット受注があった1月の実績を上回った。内需も、一部ユーザーで「新ものづくり補助金」の申請・採択待ちの 傾向がみられたが、プラスを確保。事務局は「緩やかな回復傾向が持続している」と指摘する。日工会は2014年通年の 受注目標を1兆3,000億円に設定しており、月平均1,080億円強を確保する必要がある。2月までの累計は2,024億円と、 目標のラインに届いていないが、「季節要因を考えると滑り出しとしては悪くない」(日工会事務局)。多くの企業が決 算期を迎える3月は例年受注が増える傾向にあり、目標の水準にどこまで近づけるかが焦点となる。 ◆工作機械8社受注/2月32%増407億円 《本社まとめ 6カ月連続プラス》日刊工業新聞社がまとめた工作機械主要 8社の2月の工作機械受注実績は、前年同月比32・1%増の407億6,500万円と、6カ月連続のプラスになった。前年の水 準が低かったこともあり、内・外需ともに3割前後増えた。ただ、前月比でみると内需は8・9%減と、3カ月連続のマイナ ス。消費増税前の駆け込みや「ものづくり補助金」関連の案件がほぼ出尽くし、受注に一服感がみられた。内需は前年 同月比では27・3%増の142億7,100万円となり、7カ月連続のプラス。外需は同34・9%増の264億9,400万円で6カ月連 続のプラスとなった。外需比率は同1・3ポイント増の65・0%だった。内需について、オークマは「中小企業向けを中心と した消費増税や補助金絡みの案件は一段落したが、自動車関連や大手・中堅向けは高水準で横ばいが続いている」と 指摘。牧野フライス製作所は「航空機関連の引き合いが引き続き活発」と説明する。外需は北米や欧州向けが引き続き 堅調に推移した。DMG森精機はドイツで開いたプライベート展もプラスに寄与した。東芝機械は北米の産業機械関連や、 インドネシアの鉄鋼関連の受注を獲得し、大幅増となった。 ◆2月、5カ月連続増 《エ作機械受注額》日本工作機械工業会(東京・港)が18日発表した2月の工作機械の受注額は 前年同月比26・1%増の1,019億8,400万円だった。前年同月を5カ月連続で上回った。自動車が好調な国内向けに加え、 輸出も回復傾向が顕著になってきた。 ◆工作機械受注、2月26%増1,019億円 《日工会まとめ、5カ月連続プラス》日本工作機械工業会(日工会)が18日発表 した2月の工作機械受注実績(確報値)は、前年同月比26・1%増の1,019億8,400万円と5カ月連続でプラスになった。政 府の補助金関連の受注や消費増税前の駆け込み需要が一段落し、内需は前月比0・9%減と一服感がみられた。外需は 中国の「電気・精密機械」関連でスポット受注があり、前月比、前年同月比ともにプラスとなった。受注総額は好不調の目 安となる1,000億円の水準を6カ月連続で上回った。内需は340億100万円で前年同月比24・4%増。外需は679億8,300 万円で前年同月比27・0%増、前月比2・6%増だった。外需のうち中国向けは前年同月比71・9計%増の180億4,100万円。 特に「電気・精密機械」は同14・7倍の109億7,000万円となり、15カ月ぶりに100億円を上回った。欧州では英国とイタリア 向けが、ともに2008年9月以来の20億円超えとなった。会員調査によると4-16月期の受注見通しDI(「増加」と答えた割 合から「減少」と答えた割合を引いた値)は22・9となり、1-3月期と比べて11・5ポイント増えた。日工会の牧野二郎副会長 (牧野フライス製作所社長)は「新年度予算に関する足元の引き合いが大手を中心に活発であることも、会員各社が先 行きをポジティブにみている背景にある」と指摘した。 ◆非製造業受注6・5倍 《環境装置1月、電力向け好調》日本産業機械工業会が11日発表した2014年1月の環境装置 受注実績は、前年同月比26%増の258億8,000万円で2カ月連続で前年同月を上回った。官公需は減少したものの、民 需のうち非製造業が同6・5倍の101億1,300万円と大幅に伸び、全体を押し上げた。民需は同3倍の130億8,100万円。内 訳は製造業が食品、その他向け事業系廃棄物処理装置などが増加し同4・7%増の29億6,800万円、非製造業が電力向 け排煙脱硫装置、排煙脱硝装置、産業廃水処理装置などが好調だった。一方官公需は汚泥処理装置が低迷し、同17・5 %減の123億7,100万円。外需は排煙脱硝装置が減少し、同63%減の4億2,800万円だった。装置別では、大気汚染防止 装置が同3・5倍の89億2,100万円、水質汚濁防止装置が同24・7%減の99億3,900万円。ゴミ処理装置同46・2%増の68 億6,300万円。 ◆産機受注、1月1%減3,450億円 日本産業機械工業会(産機工)が11日発表した1月の産業機械受注額は、前年同月 比1・3%減の3,450億1,300万円と、4カ月連続のマイナスとなった。内需はポイラ・原動機などが伸び、同82・9%増の2,4 84億7,200万円と3カ月ぶりのプラス。一方、外需は同54・8%減の965億4,100万円と、4カ月連続のマイナスとなった。 内需のうち製造業向けは同45・6%増の721億4,600万円で、8カ月連続のプラスとなった。非製造業向けは同3・1倍の1,2 40億5,300万円となり、2カ月ぶりのプラス。官公需向けは同21・0%増の284億2,000万円で2カ月連続のプラスとなっ た。主要約70社の輸出契約高は同57・5%減の876億2,600万円となり、4カ月連続のマイナスとなった。プラントは2件。 地域別構成比はアジア72・8%、アフリカ6・0%、北米5・8%、欧州5・6%、中東3・4%、南米3・0%だった。 ◆環境装置受注額、1月26%増える 日本産業機械工業会(東京・港)が11日発表した1月の環境装置受注額は前年同 月比26%増の258億8,000万円だった。2カ月連続で前年実績を上回った。電力会社など非製造業からの受注が同6.5 倍の101億1,300万円と大きく伸びた。火力発電向けに排ガスから有害物質を取り除く大気汚染防止装置の受注が大き く伸びた。製造業も食品向け廃棄物処理装置や機械向けの産業廃水処理装置などが伸び、受注額は4.7%増となった。 - 15 - ◆外需落ち込み1月1.3%減/産業機械受注額 日本産業機械工業会(東京・港)が11日発表した1月の産業機械受注額 は前年同月比1.3%減の3,450億円だった。前年にアジアで化学機械の大型案件があった外需が、54.8%減の965億円 と落ち込んだ。内需は82.9%増の2,484億円だった。 ◆白物家電14年度の国内/出荷額8.6%減予想 日本電機工業会(JEMA)は14日、2014年度の白物家電の国内出荷額 が13年度実績見込み比8.6%減の2兆1,204億円になる見通しだと発表した。消費増税をにらんだ駆け込み需要の反動 で、上期を中心に出荷額が減ると見込んだ。平年並みの天候を前提としており、ルームエアコンは同13.9%減の6,217億 円と猛暑だった13年度実績見込みに比べ大きく減る。冷蔵庫は10.9%減の3,988億円、洗濯機は4.7%減の2,778億円と 見込む。同日発表した白物家電の13年度の出荷見込み額は、12年度実績比4.7%増の2兆3,204億円。 ◎乗用車 ◆1月 国内生産、軽4輪、初の17万台超え 《新車・駆け込み需要奏功》日本自動車工業会(自工会)がまとめた1月の 生産・輸出実績は軽4輪車の国内生産が1966年の統計開始以来、単月として初めて17万台を超え過去最高を記録した。 4輪車全体では同14・5%増の86万803台となり、5カ月連続で前年同月を上回った。新車投入効果や消費増税前の駆け 込み需要が全体を押し上げた。4輪車全体の輸出は同4・9%減の32万6,696台で、2カ月連続で前年同月を下回った。軽 4輪車の国内生産は同33%増の17万2,201台。トラックやバスも堅調に推移。バスは同14・7%増の1万2,552台で、1月単 月として過去最高となった。4輪車の地域別輸出台数はアジアが同5・7%減の3万4,416台で、4カ月ぶりに前年同月実 績を下回った。中でもタイは同69・7%減の2,021台で、自動車購入優遇策の終了による反動減や政情不安の影響で需 要が減少。一方、中国は同94・9%増の1万670台と堅調に推移した。北米は2カ月連続で前年同月実績を下回った。2輪 車の国内生産は同16・3%増の5万7,096台で5カ月連続で前年同月実績を上回った。輸出は同12・5%増の4万2,198台 で4カ月連続で前年同月を上回った。 ◆新車販売18%増、2月「軽」単月で過去最高 日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国自動車協会連合会(全軽 協)が3日発表した2014年2月の新車販売台数は、前年同月比18・4%増の56万5,170台となった。新車投入効果や消費 増税前の駆け込み需要が全体を押し上げた。軽自動車の販売台数は同23・8%増の22万8,994台。8カ月連続で前年同 月実績を上回り、2月単月として過去最高を記録した。全軽協は3月が前年並みの水準で推移すれば13年度の販売台数 は220万台を超え、06年度に記録した「過去最高の203万台を超えるのは確実」との見通しを示した。登録車は同15% 増の33万6,176台で、6カ月連続で前年同月実績を上回った。車種別では乗用車が同14・7%増の30万7台。うち普通乗 用車が同27・9%増の16万326台となった。ホンダはリコール問題でハイブリッド車(HV)2車種の出荷を停止した影響な どにより、同39・2%増と1月の同2・4倍と比べ伸び率が鈍化した。大雪の影響について自販連と全軽協は顧客が販売店 に足を運べないなど「受注活動に影響が出た」と述べた。 ◆車8社の世界生産、2月 《中国好調、5.6%増215万台》乗用車メーカー8社が27日に発表した2014年2月の生産・ 販売・輸出実績によると、8社合計の世界生産は前年同月・比5・6%増の215万1,395台だった。トヨタ自動車や日産自動 車、ホンダを含む5社が前年同月実績を上回り、ホンダは2月単月として、ダイハツ工業はすべての月を通じて過去最高 となった。国内生産は消費増税前の駆け込み需要や新車販売効果があった一方、2月の大雪による操業停止の影響で 台数が伸び悩むメーカーもあった。世界生産は中国などで販売が順調に伸び、世界生産台数を押し上げた。トヨタは大 雪の影響で4工場が停止し、当初の計画と比べ輸出を含め約1万1,000台の生産遅れが発生した。残業対応などにより 約2,000台分を取り戻したが、4月以降に約9,000台を持ち越す見込み。輸出の減少もあり国内生産は前年同月実績を6 カ月ぶりに下回った。日産は2工場で操業を停止したが、休日出勤により27日時点で遅れ分を挽回した。ホンダも大雪 で約2,700台の遅れが発生。リコール問題でハイブリッド車(HV)2車種の出荷を停止した影響で約1,700台の遅れが出 た。3月末までに遅れを取り戻すことは難しく、4月以降も挽回操業を継続する。海外生産ではトヨタが中南米、米州、ア ジアで増加し6カ月連続で前年同月実績を上回った。日産は新型「ローグ」の純増などが寄与した米国のほか、メキシコ や英国で2月単月として過去最高を記録。ホンダは中国専用車「クライダー」が好調に推移するなど中国生産が増加 し、海外生産が2月単月として過去最高となった。 ◆鉄鋼輸出9・7%減/1月、鋼材輸入に勢い 日本鉄鋼連盟がまとめた1月の鉄鋼輸出実績は前年同月比9・7%減の33 0万3,800㌧で5カ月連続のマイナスとなった。一方、普通鋼鋼材の輸入量は同43・7%増の48万7,000㌧で3カ月連続 のプラス。1998年3月(49万3,000㌧)以来の高水準となった。輸出の品種別は冷延広幅帯鋼が同1・5%増で8カ月ぶり にプラスとなる一方、熱延広幅帯鋼が同5・7%減で3カ月連続、亜鉛メッキ鋼板が同2・4%減で9カ月連続、厚板が同30・ 7%減で12カ月連続のマイナスとなった。最大の仕向け先の韓国向けが同10・0%減となり、タイ向けも同4・7%減だっ た。中国向けは同7・1%増。輸入は熱延広幅帯鋼が同11・2%増、冷延広幅帯鋼が同75・4%増、亜鉛メッキ鋼板が同49・8 - 16 - %増と伸長した。 ◆1月、建設用鋼材受注2年ぶりの減少 日本鉄鋼連盟が6日発表した1月の普通鋼鋼材の用途別受注高は建設用が 前年同月比2・2%減の98万9,000㌧となり24カ月ぶりにマイナスとなった。鉄連では「需要の一服感か、人手や資材不 足による建設着工の遅れの影響なのか、動向を見ていく必要がある」としている。輸出の減少もあり全体でも同2・8% 減の585万㌧で8カ月ぶりマイナスだった。製造業用は同11・4%増の170万2,000㌧と6カ月連続プラス。産業機械用は 同12・9%増で10カ月連続、電気機械用は同18・5%増で4カ月連続、自動車用は同8・4%増で7カ月連続、船舶用は同24・ 3%増で4カ月連続でプラスとなり軒並み伸長した。輸出は内需が好調なことに加え、アジアの需給緩和を背景に同15・ 8%減で4カ月連続のマイナス。 ◆2月粗鋼生産、1.4%増844万㌧/建設向け好調 日本鉄鋼連盟が19日発表した2月の粗鋼生産量は前年同月比1・4 %増の844万㌧となり6カ月連続のプラスだった。マンションやショッピングモールといった建設関連向けの供給が好調 を持続し、自動車向けでは消費増税前の駆け込み需要も後押しした。13年4月-14年2月累計は1億177万4,000㌧。内需 を中心に需要環境も堅調で13年度は3期ぶりに1億1,000万㌧超となることが確実となった。2月の粗鋼は稼働日数の関 係から前月比では10・2%減となり、12カ月ぶりに900万㌧割れとなった。1日当たりの粗鋼も30万1,400㌧で同0・6%減 だった。炉別では高炉系の転炉鋼が前年同月比0・6%増の641万3,000㌧で6カ月連続、電炉鋼が同4・1%増の202万8,0 00㌧で7カ月連続のそれぞれプラスだった。品種別では建設向けの条鋼類が同5・4%増の164万4,000㌧で12カ月連 続、製造業向けの鋼板類が同2・7%増の436万9,000㌧で6カ月連続のプラス。条鋼類の主要品種ではH形鋼が同14・1% 増の36万㌧で21カ月連続、小形棒鋼が同0・1%増の74万4,000㌧で7カ月連続のそれぞれプラス。鋼板類では最大のウ エートを占める広幅帯鋼が同3・3%増の349万1,000㌧、自動車向けの亜鉛メッキ鋼板が同1・7%増の96万4,000㌧でと もに6カ月連続のプラス。造船向けが多い厚板も同1・9%増の82万5,000㌧で2カ月連続のプラス。建設機械など産業機 械向けが多い特殊鋼熱間圧延鋼材が同8・0%増の159万6,000㌧と6カ月連続のプラスだった。 ◆2月の粗鋼生産、6カ月連続増/鉄鋼連盟 日本鉄鋼連盟が19日発表した2月の粗鋼生産量は前年同月比1・4%増の 844万㌧と、6カ月連続でプラスとなった。建設、自動車向けなどの需要の伸びが継続し、鋼材などを運ぶ内航船の荷況 を押し上げている。鉄鋼連盟の生産概況によると、2013年4月-14年2月累計の粗鋼生産量は1億177万㌧で前年同期比4 %増。13年度全体では1億1,000万㌧を超えるペースで推移している。2月は鋼種別で普通鋼が前年同月比0・5%増の65 3万7,000㌧、特殊鋼が4・7%増の190万3,000㌧。普通鋼は6カ月連続、特殊鋼は8カ月連続で増加している。鋼材や石灰 石などの副原料を輸送する内航船は昨秋以降、荷動きが活発化。公共事業の増加に加え、4月の消費増税前の自動車 などの駆け込み需要で鋼材ニーズが高まり、内航鋼材船の需給が逼迫している。 ◆世界粗鋼生産 中国が高水準/2月0・6%増 世界鉄鋼協会がまとめた2月の世界(65カ国・地域)粗鋼生産量は前 年は同月比0・6%増の1億2,499万㌧で18カ月連続の前年プラスだった。中国の生産が高水準で、2月としては過去最高 を更新した。最大の生産国である中国は同0・4%増の6,207万6,000㌧で18カ月連続のプラス。インフラ関連需要が伸び ており、2月の過去最高を更新した。6,000万㌧超は14カ月連続。韓国も同6・2%増で3カ月連続のプラスだった。欧州は 同4・7%増で7カ月連続プラスとなり底入れ感が強まった。ブラジルも同1・2%増。一方、米国は大寒波の影響で同1・7% 減となったほか、ロシアが同3・1%減、インドが同3・2%減と景気低迷を反映した。 以 - 17 - 上
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