企業・産業動向レポート = 2014年2月1日~28日の報道内容 = Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況 ①函館どつく関連 ◆4-12月に新造船39隻受注/名村造船、34型バルカー中心に 名村造船所は5日発表した2013年4-12月期連結業績 の中で、期中に函館どつく建造分も含めて新造船39隻を受注したことを明らかにした。4-9月時点では33隻受注してお り、10月-12月に6隻の受注を積み増した。34型バルカーを中心に、名村建造船24隻、函館どつく建造船15隻の計39隻を 受注した。新造船受注高は前年同期比4.3倍の884億円だった。12月末時点での新造船の受注残高は2,443億円で、約3 年分の手持ち工事量を確保した。また、契約未了の内定船が9隻ある。会社全体の4-9月期の連結売上高は前年同期比 3%増の898億円、経常利益は2.2倍の176億円だった。このうち新造船事業は、名村が6隻、函館が5隻の計11隻を竣工 し、売上高が2%増の737億円、営業利益が88%増の166億円と増収増益だった。修繕船事業も、売上高が40%増の61 億円、営業利益が10倍の3億4,200万円と増収増益だった。会社全体の通期業績は従来予想を据え置き、売上高が前期 比4%増の1,230億円、経常利益が24%増の180億円を見込む。 ②住友重機械関連 ◆タンカー2隻受注/住友重機械 住友重機械工業は2013年10-12月期に10万重量㌧級プロダクトタンカー2隻を受注 した。13年4-9月期にアフラマックスタンカー2隻を受注しており、13年12月末時点で当初受注見通しの年3隻を超えた。 受注残は5隻に膨らみ、15年10-12月期までの仕事量を確保した。円安による受注環境改善などで想定を上回る進捗と なったようだ。船舶部門の14年3月期の受注見通しは前回予想の190億円から250億円(前年度比約2倍)に上方修正し た。ただ、売上高は160億円、営業損益は35億円の赤字で据え置いた。住友重機械の船舶部門は受注低迷による操業不 足が懸念されていたが、今回の受注で一息ついた格好だ。 ◆船舶の受注高、年目標を6割超過/住友重機械、4-12月にアフラ4隻受注 住友重機械・船舶部門の2013年4-12月期 の連結受注高は、前年同期比4倍の241億円となった。31日に発表した決算の中で明らかにした。期初時点で今期の受 注高は150億円を見込んでいたが、既にアフラマックス型タンカー4隻を受注し、この年間見通しを6割上回った。住重は 昨年4-9月にアフラマックス・タンカー2隻を受注しており、本紙昨報(1月31日付)のとおり、12月末までにギリシャ船主か らアフラマックス型(LR II型)プロダクト船2隻を受注したことで、今期の新造船受注は計4隻になった。これにより、12月 末時点での受注残はアフラマックス・タンカー5隻(計29万1,000総㌧)となり、2015年度第3四半期(2015年末)までの手 持ち工事を確保。修繕も含めた受注残高は247億円となり、昨年3月末時点に比べて138億円増えた。これに伴い、通期 の受注高見通しは250億円に改めた。4-12月期の船舶部門の業績は、売上高が前年同期比62%減の104億円、営業損 益は22億円の赤字(前年同期は27億円の黒字)だった。新造船の引き渡しは、1隻減の1隻だった。通期では売上高が前 期比65%減の160億円、営業損益が35億円の赤字(前期は24億円の黒字)で従来予想を据え置いた。前提となる第4四 半期の為替レートは1㌦=100円。 ◆住重、舶舶部門営業赤字22億円/13年4-12月期 住友重機械工業が1月31日発表した2013年4-12月期連結決算 は、船舶事業の営業損益が22億円の赤字(前年同期は27億円の黒字)だった。操業スローダウンに伴う新造船建造隻数 の減少が主因。14年3月期通期の連結営業損益予想は35億円の赤字(前期は24億円の黒字)と従来予想を変更してい ない。船舶部門の13年4-12月期の連結売上高は、前年同期比62%減の104億円。新造船は1隻を引き渡し、1隻減少した。 連結受注高は前年同期比4倍の241億円。期初にアフラマックスタンカー2隻を受注したのに続き、昨年末にギリシャ船主 からLR(ロングレンジ)2型プロダクト(石油製品)タンカー2隻を受注した。通期の船舶事業の連結売上高は前期比65% 減の160億円と前回予想を変更していない。連結受注高は前期比2.5倍の250億円と従来予想の190億円から上方修正 した。LR2型2隻の新造船受注が主因。住重の全社ベースの13年4-12月期連結決算は、営業利益が前年同期比15%減の 186億円だった。売上高は微増の4,240億円。経常利益は10%減の188億円、前年同期にあった防衛装備品事業関連損 失50億円がなくなり、純利益は7.9%増の111億円となった。通期の連結業績は、売上高が前期比2.4%増の6,000億円、 営業利益は4%減の300億円、経常利益は16%減の260億円、純利益は2.4倍の140億円を見込み、従来予想を変更して いない。 ②いすゞ自動車関連 ◆いすゞ、営業益最高に 《4-12月47%増 復興で国内好調》いすゞ自動車が7日発表した2013年4-12月期の連結決算 は、営業利益が1,329億円と前年同期比47%増え、9カ月間では最高になった。東日本大震災の復興需要などで荷動き - 1 - が活発化したことでトラックの国内販売が伸びた。部材調達コストの削減など合理化の効果も出た。売上高は9%増の1 兆2,922億円。主力市場のタイで政府の購入補助制度の終了や政情不安の影響があり海外は7%減(32万730台)と振 るわなかった一方で、国内は好調。建設業界や物流業界向けを中心に4万8,086台と7%増えた。需要が減少したタイで は生産調整している。14年3月期通期は売上高が前期比10%増の1兆8,200億円、営業利益が38%増の1,800億円の予 想を据え置いた。最高益見通しだが、「(利益は)下振れる可能性もある」(片山正則取締役専務執行役員)という。 ◆営業益1,800億円据え置き/いすゞタイ不振、国内でカバー 《今期見通し》 いすゞ自動車は2014年3月期連結業績の 営業利益を前期比37・6%増の1,800億円とする見通しを据え置いた。主力のタイ市場でピックアップトラックやトラック の販売が減少しているが、「好調な国内事業と合理化の進展でカバーできる」(片山正則取締役専務執行役員)とい う。タイのピックアップトラック販売では政府による自動車購入優遇策終了に伴う反動減に見舞われており、トラック販売 も景気減速で減少。13年10-12月期に生産調整に踏み切った。さらに政局混乱が重なり「ショールームヘの客足が鈍っ ている。さらに単位億円、増減率%、下段14年販売が下がりそうだ」(同)という。こうしたタイ事業の落ち込みを、東日 本大震災の復興需要に支えられる国内事業や合理化の進展で穴埋めできると見ており、期初見通しの営業利益を据え 置いた。ただ、タイ事業の見通しは政局混乱が一時的なものであることが前提。タイを主力としているだけに混乱が長 引けば業績に響く可能性がある。 ③東北地協関連 ◆初の造船所復興支援を決定/国交省、石巻の造船所・電機会社共同利用 国土交通省海事局は東日本大震災で被 災した造船所の復興を支援する。漁船修繕を主体とする佐藤造船所と電機メーカーの及川電機が共同利用する船舶 建造・修繕設備の設置費用補助が第1号案件として決まった。総事業費の約3億8,000万円のうち2億5,000万円を補助 し、両社の従来の用地で年内にも設備を立ち上げる予定。10日発表した。被災した東北地方では国以外にも地方行政が 主導する復興支援計画など複数の計画が進められている。海事局が2013年度予算で創設した「造船業等復興支援事 業費補助金」制度に基づき、同制度の基金160億円から設備の整備費用を補助する。日本財団が公募し選定するスキー ムを取っており、昨年8月から申請受付を開始。今回初めて同スキームでの交付が決定した。復興支援は被災地の企業 が共同利用できる設備の整備を対象に実施する。今回は造船所と電機メーカーが共同利用する設備を補助する。及川 電機は船内の電機設備を手掛ける。補助は2社が新たに設立した合同会社を対象に実施する形をとっている。国交省と 地方行政は、できるだけ事業者の負担が小さくなるよう、造船所の復興を支援していく構えで、複数プロジェクトが計 画されている。気仙沼では造船所5社と関連事業者が、新たに造船施設を建設し、共同で事業を行うことを計画してお り、昨年4月に協同組合を設立。同計画では100億円規模の事業費を視野に入れている。 ◆日本財団、造船復興基金で初の補助 日本財団は10日、東日本大震災で被災した造船事業者などの経営基盤を 格付するために設置した「造船復興みらい基金(造船業等復興支援事業費補助金)」で、初の助成事業を決定したと発 表した。宮城県石巻市の「佐藤造船所・及川電機合同会社」に2億5,000万円を交付する。工場2棟や天井クレーンを天井 クレーンの整備に利用される。 ◆造船復興みらい基金、本格始動 東日本大震災で大きな被害を受けた造船業界の復興に向け、日本財団が国土交 通省と復興庁から総額160億円の「造船復興みらい基金」(造船業等復興支援事業費補助金)の設置法人に選ばれ、昨 年8月、補助金対象事業の公募を開始してから、この1月で半年を迎えた。事業は大震災の直撃で地盤沈下が激しい被 災地の造船業の集約化を進め経営基盤を強化するのが狙い。補助金申請に先立ち企業間の調整が必要となるため、 現時点の申請は昨年末の1件にとどまっているが、複数の地区で補助金を利用した復興プロジェクトが煮詰まりつつあ り、大震災発生から3年目を迎え、基金の活用も本格化するとみられる。東北地域には基幹産業である水産業のインフ ラとして漁船の建造や修繕を行う造船所が90近くあり、国交省によると、大震災では37造船所が被災し建屋や船台、ク レーンなど施設が大きな打撃を受けた。水産業を再生させるためにも造船業の復興は欠かせず、造船復興補助金が設 置され、大震災後、独自に青森、岩手、宮城、福島の造船関連事業者の再生支援プロジェクトに取り組んでいた日本財団 が基金設置法人に選ばれた。申請は2016年度末までに終了する事業を対象に、14年度末まで受け付けられる。学識者 や公認会計士ら5人で構成する審査委員会が審査し、認められると80億円を上限に事業費の3分の2が補助される。昨 年12月には会社の合同を計画している宮城県内の造船業者と関連業者から初の申請が出され、今月末にも審査委員 会が開催される予定だ。東北地域でも最も多くの漁船建造、修繕事業者が集中する宮城県気仙沼市。大震災で壊滅的 な被害を受け、国交省によると造船および関連業者計17社が新たに造船施設を建設、共同事業を行う再建策を検討中 で、国交省からも気仙沼市役所に職員を派遣し、事業の実現を目指している。岩手県大船渡市や大槌町、宮城県南三陸 町など被災各軸で同様の復興再建計画が検討されており、今後、順次、申請が行われる見通し。造船業と同様、壊滅的 な被害を受けた水産業が歩調を合わせ復興を目指すことになる。 ◎今治造船関連 ◆幸陽船渠、今治造船「広島工場」に/今月から、吸収合併で効率化 今治造船は2月1日付で子会社の幸陽船渠(広島 県三原市)を吸収合併し、「広島工場」として直轄工場化した。統合によって、経営資源の集約と組織・業務の運営効率 化を図る。幸陽船渠は、今治造船の既存3工場である今治工場、丸亀事業本部、西条工場と並ぶ広島工場として運営す - 2 - る形になった。設計などの体制については現時点では旧体制が維持されているが、今後、徐々に今治造船本体との統 合などを進めるもようだ。幸陽船渠の旧取締役らは今治造船の役員・執行役員などとして再任した。また、今治造船と 幸陽船渠がそれぞれ加盟していた日本造船工業会や日本船舶輸出組合などの各種団体では、加盟を今治造船に一本 化する。今治造船は1986年に幸陽船渠の経営権を取得して以降、これまで30年近くにわたり100%子会社として同社 を運営してきた。幸陽船渠での事業は徐々に新造船が主体となり、近年はメガコンテナ船やLNG船などの高付加価値 船の建造が中心となっている。売上規模や建造量も増え、グループ中核工場としての位置づけが強まっていた。直轄 工場として一体運営する形に切り替え、グループ統合によってリソースを集約し、企業体質の強化を図る。 ◎福岡造船関連 ◆福岡造船、ケミカル船1隻受注 《北欧船主がオプション行使》福岡造船は、ノルウェー船主ストリーム・タンカーズか らステンレス仕様の1万9,900重量㌧型ケミカル船1隻を追加受注した。ストリーム・タンカーズが24日発表した。2017年初 めに竣工予定。同船主向けの受注残は5隻になった。福岡造船は昨年9月、ストリーム・タンカーズからステンレス仕様の ケミカル船2隻プラス・オプション3隻を受注していた。今年1月にオプション2隻分が行使されており、残りの1隻分が今 回行使された。受注船の一部を下ノ江造船で建造する。受注した1万9,900重量㌧型ケミカル船は従来船に比べて燃費 性能を改善した省エネ船型。福岡造船が昨年市場に投入した新船型を採用している。福岡造船は2万重量㌧級のケミ カル船を主力製品としているが、リーマン・ショック後はケミカル船の需要低迷を受けてハンディサイズや内航タンカー などの船種に営業の主軸をシフトしていた。発注者のストリーム・タンカーズは、ノルウェーのケミカル船社utkilenと船舶 投資会社EGDシップホールディングなどが出資して設立した船舶保有会社。2008年に福岡造船で建造した1万9,900重 量㌧型ケミカル船“Stream Luna”、2010年に下ノ江造船で建造した1万9,700重量㌧型ケミカル船“StreamMia’’の計2隻 を保有している。utkilenグループとして5,000-1万9,000重量㌧級ケミカル船計22隻を運航しているが、ストリーム・タ ンカーズの運航する2隻を除いて中国もしくは欧州造船所の建造船となっている。 ◆三菱重工、欧州設計会社と協業/オデンセ系と船型共同開発、エンジ拡大 三菱重工業は5日、デンマークの船舶設 計会社オデンセ・マリタイム・テクノロジー社(OMT)と船舶エンジニアリング事業での協業で合意したと発表した。両社 共同でコンテナ船の船型開発などを行う。それぞれが持つライセンス事業を拡大するのが狙いで、三菱は成長事業に 位置付ける船舶エンジニアリングの拡大につなげる。2社の協業では主に、三菱が推進性能面の開発を担当し、船型の デザイン、モデル試験、省エネ装置の開発、プロペラの開発などを行う。OMTは三菱開発の船型に基づく概念設計、基本 設計を受け持つ。両社が経験豊富なコンテナ船のほか、バルカーや中小型液化ガス船の開発も行う計画。OMTはA・Pモ ラー/マースク傘下のオデンセ造船から2010年に分離・独立した船舶設計専業会社。オデンセ造船のコンテナ船をはじ めとした技術やノウハウをビジネス展開する権利を持つ。中国市場で高い評価を得ているバルカーのデザインも持っ ており、三菱の開発した船型や省エネ装置、プロペラを採用することで、より高い性能のデザインとすることを目指す。 三菱は他社に設計や技術を有償で提供するエンジニアリング事業を、船舶部門の成長戦略の1つに位置付けている。O MTとの協業を通じて海外への販路を拡大する狙いなどがある。 ◆三菱重工、エンジ事業で協業/デンマーク、オデンセMTと 三菱重工業は5日、デンマークの船舶設計会社オデンセ・ マリタイム・テクノロジー(OMT)と船舶エンジニアリング事業で協業することで合意したと発表した。造船分野での豊富 な蓄積を持つ両社が協業することにより、さまざまな船種のデザインをスピーディーに開発し、両社のライセンス事業 を拡大していくのが狙い。協業では主に、OMTが概念設計、基本設計、三菱重工が推進性能面の開発を担当し、船型の デザイン、モデル試験、省エネ装置やプロペラの開発などを実施する。両社が豊富な経験を持つコンテナ船をはじめ、 バルク船や中小型液化ガス運搬船の開発も手掛ける計画。OMTでは中国市場で高評価を得ているバルク船のデザイン も保有しており、これに三菱重工開発の船型や省エネ装置、プロペラを採用することで、より高い性能を持つデザイン を目指す。OMTは2010年に、造船会社であるオデンセ・スティール・シップヤード(OSS)から分離・独立した船舶設計専業 で、四半世紀にわたり培った技術・ノウハウをビジネス展開する権利を持つ。OSSは、世界有数の海運グループAPモラ ー・マースクの子会社で、同社へ供給するコンテナ船をはじめ、バルク船、RORO船、タンカーを建造した実績を豊富に持 っている。商船建造からは撤退している。 ◆三菱重工とデンマーク社、造船事業分野で協業 三菱重工業は5日、デンマークの船舶設計会社であるオデンセ・マ リタイムテクノロジー(OMT)と造船事業分野で協業すると発表した。両社で競争力のある船舶を開発し、2014年内の受 注を目指す。当面はバラ積み運搬船、コンテナ船を開発が主体となるが、中小型液化ガス運搬船も手がける計画だ。三 菱重工が船型デザインやモデル試験、プロペラ開発、省エネルギー装置開発などの推進部分を担当し、これに基づきO MTが概念設計や基本設計を行う。三菱重工は自社の商船建造を縮小し、図面供給などのエンジニアリング事業を国内 外で推進している。OMTは10年に造船会社のオデンセ・スティール・シップヤード(OSS)から分離・独立した船舶設計専業 会社。OSSは世界最大のコンテナ船オペレーターであるA.P.モラー・マークスの子会社。 ◆三菱重工、最高益/今3月期、火力の統合効果 三菱重工業は6日、2014年3月期の当期利益予想を上方修正し、従 - 3 - 来予想比500億円増の1,500億円(前期比54・1%増)と発表した。17年ぶりに過去最高を更新する。2月1日付で発足した 日立製作所との火力発電システム事業統合会社の効果を織り込んだ。売上高も同4・8%増の3兆3,000億円(同17・1% 増)に上方修正。営業、経常利益は据え置いた。当期利益には日立との火力事業統合に伴う持分変動利益1,000億円程 度を特別利益に計上する。一方、個別事業単位で「整理できていない部分があり、改善を急ぐ」(野島龍彦取締役常務 執行役員)ことから、事業構造改革費用500億円程度を特別損失で計上する。通期の前提各替レートは1㌦=95㌦(従来 予想95円)、1ユーロ=130円(同120円)。セグメント別では日立との火力統合効果により「エネルギー・環境」の受注高を 従来予想比700億円、売上高を500億円それぞれ積み増した。商船の期ずれや採算悪化の影響により「交通・輸送」の 受注、営業利益ともに下方修正した。19 ◆三菱重工、純利益最高に/今期17年ぶり、日立と火力統合で 三菱重工業は6日、2014年3月期の最終的なもうけを 示す連結純利益が前期比54%増の1,500億円になる見通しだと発表した。従来予想を500億円上回る。1997年3月期(1, 236億円)以来、17年ぶりに最高を更新する。日立製作所と火力発電システム事業を統合したのに伴う特別利益が押し 上げる。三菱重工が65%、日立が35%を出資する統合会社「三菱日立パワーシステムズ」が2月1日付で発足した。事業 価値を再評価し、会計上の利益が1,000億円発生する。一方、ほかの事業の構造改革にかかる費用を500億円積み増す ため、差し引き500億円が全体の押し上げ要因となる。本業のもうけを示す営業利益は、16%増の1,900億円で従来予 想を据え置いた。火力発電に使うガスタービンや自動車用の過給機(ターボチャージャー)が堅調だが、造船の採算が 悪化する。同日発表した13年4-12月期連結決算は、売上高が前年同期比15%増の2兆2,627億円、純利益が57%増の78 2億円だった。 ◆三菱重工・船舶、営業損69億円 《4-9月期、赤字額が拡大》三菱重工業が6日発表した2013年4-12月期の船舶・海 洋事業の連結営業損益は、69億円の赤字だった。前年同期は8億円の赤字で、赤字額が拡大した。三菱は昨年10月の事 業ドメイン制への移行による組織改正に伴い、決算セグメントを変更しており、従来の船舶・海洋事業セグメントとしての 決算状況は参考として開示した。船舶の4-12月期売上高は前年同期比22%減の1,398億円、受注高は2.5倍の1,261億 円だった。期中の商船の受注は4隻で、期末時点での商船の受注残は41隻になった。船舶・海洋としての通期での見通し は明らかにしていない。昨年11月公表時点では、売上高が前期比16%減の1,900億円、営業利益が65%減の40億円と予 想していた。 ◆三菱重工、委託生産に転換/低速ディーゼル、新造船の需要低迷 三菱重工業は船舶用で国産唯一の自社開発低 速ディーゼルエンジン「三菱-UE」の自社生産を打ち切ったことを明らかにした。1955年に開発し、神戸造船所(神戸市 兵庫区)で生産してきたが、新造船需要低迷などでビジネスモデルを転換。ライセンス供与先による製造や委託製造に 集中する。新たに韓国・現代重工業に新規開発エンジンのライセンス供与を決めたほか、IHIグループに大型エンジンの 製造を委託した。新規開発機種を絞って競争力を確保。数年内にUEの世界シェアを10%以上(現状5%以下)に引き上げ る。三菱重工は舶用機械・エンジン事業を分社し、13年10月に三菱重工舶用機械エンジン(長崎市)を発足した。「UE」エ ンジンは主力製品の一つであり、神戸造船所やライセンス供与先の神戸発動機、赤阪鐵工所などで製造している。リー マン・ショック後の新造船需要の低迷を受け、06年前後のピーク時に比べて生産規模は半分以下にまで落ち込んでい た。分社化は意思決定を迅速化し、UEの外販を強化する狙い。シリンダー口径600㍉㍍級までのエンジンを神戸発動機 などで生産。IHI子会社のディーゼルユナイテッド(DU)とは製造委託契約を結んでいる。海外では現代重工や中国の3造 船所、ベトナムの造船所などにそれぞれライセンス供与している。このほど燃費を従来機種比で最大2%高めた口径50 0㍉㍍のエンジン「UEC-LSHシリーズ」を新規開発した。この製造ライセンスを世界最大の舶用エンジンメーカーである 現代重工に供与することを決めた。また、大型外航船に搭載する口径800㍉㍍の大型エンジンをDUに製造委託したこ とを明らかにした。今後、中国でのライセンス事業も拡大する。2ストローク舶用低速ディーゼルエンジン業界は、欧州の 舶用機関メーカーであるバルチラやMANディーゼル&ターボが2大ライセンサー。三菱重工も同様のビジネスモデルに カジを切る。開発効率を高めるために事業の選択と集中を加速。今後はバラ積み運搬船向けなど需要が多いシリンダ ー口径600㍉㍍以下のエンジンをUEの開発主戦場とし、ライセンス供与先を開拓。陣営を拡大し、シェアを高める。 Ⅱ.国内造船・造機関係の動向 ◆12月の造船統計、竣工18隻 国土交通省がまとめた2013年12月の造船主要52工場の鋼船建造実績は、起工28隻 ・102万8,000総㌧、竣工18隻・77万5,000総㌧、竣工船価は755億円だった。11月の実績と比較して、竣工隻数は4隻、竣 工船価は223億円それぞれ減少した。竣工船のうち、国内船の竣工実績は合計5隻、17万5,000総㌧だった。内訳は貨物 船2隻(鉱石専用船、ばら積船)、貨客船1隻、一般油送船2隻だった。輸出船13隻は貨物船が13隻(一般貨物船3隻、ばら 積み船6隻、自動車専用船1隻、鉱石兼ばら積み船2隻、その他貨物船1隻)だった。パナマやマーシャル諸島、シンガポー ル、イギリス向けに竣工した。鋼船修繕実績は100隻で、工事金額は34億円だった。 ◆1月の受注量、143万総㌧ 《輸組統計、5カ月連続100万㌧超の高水準》日本船舶輸出組合(輸組)が17日発表した1 - 4 - 月の輸出船契約実績は26隻・143万総㌧で、総㌧ベースで前年同月の2.7倍となった。月単位の契約実績は5カ月連続 で100万総㌧を上回った。契約船の内訳はコンテナ船4隻、自動車運搬船2隻、バルカー15隻(ハンディ4隻、ハンディマッ クス9隻、パナマックス1隻、鉄鉱石運搬船1隻)、タンカー5隻(LPG船3隻、プロダクト船2隻)。26隻のうち純輸出船は14隻 だった。契約態様は、㌧数ベースで、円建て契約6%、円・外貨ミックス8%、外貨建て86%だった。現金払い契約は100 %、商社契約は27%。納期別では2014年度もの14%、15年度もの31%、16年度もの47%、17年度もの8%だった。竣工量 に相当する通関実績は、前年同月比36%減の30隻・120万総㌧だった。 ◆1月の輸出船契約、2.7倍143万460総㌧/JSEAまとめ 日本船舶輸出組合(JSEA)がまとめた2014年1月の輸出船 (一般鋼船)契約は前年同月比2.7倍の143万460総㌧となり、5カ月連続でプラスとなった。隻数は26隻。13年来の円高 是正を受けて、2014年の新造船受注はひとまず順調に滑り出した。内訳はコンテナ船4隻、自動車運搬船2隻、ハンディ 型バラ積み運搬船4隻、ハンディマックス型バラ積み船9隻、パナマックス型バラ積み船1隻、鉄鉱石運搬船1隻、液化石油 ガス(LPG)運搬船3隻、プロダクト油送船2隻。納期別では14年度が14.1%、15年度が31.3%、16年度が46.6%、17年度が 8.0%。一方、通関実績は30隻、120万2,410総㌧。1月末の手持ち工事量は621隻。2,663万6,510総㌧。 ◆1月受注2.7倍143万総㌧/手持ち工事量8年ぶり増 日本船舶輸出組合が17日発表した2014年1月の輪出船契約 (受注)実績は、143万総㌧(66万CGT=標準貨物船換算トン)で、前年同月比2.7倍(CGTベースで3倍)に膨らんだ。5カ月 連続で100万総㌧超となった。1月末の手持ち工事量(隻数、総トン数、CGT)が前年1月末実績と比べプラスに転じた。操 業抑制なども反映しているものの、手持ち工事量が前年同月末比でプラスとなったのは、06年2月以来約8年ぶり。14 年1月の契約隻数は前年同月実績と比べ16隻増の26隻で、このうち海外船主向けの純輸出船は14隻だった。26隻の船 種別内訳は、コンテナ船4隻▽自動車運搬船2隻▽ハンディサイズバルカー4隻▽ハンディマックスバルカー9隻▽パナ マックスバルカー1隻▽鉄鉱石運搬船1隻▽LPG(液化石油ガス)船3隻▽プロダクト船2隻-となっている。契約方法は全 て現金払いで、トン数ベースの契約形態内訳(シェア)は円建て6%、円・外貨ミックス8%、外資建て86%。商社契約が27 %だった。納期別内訳は、14年度14%▽15年度31%▽16年度47%▽17年度8%。輸出船竣工量を示す1月の通関実績は1 20万総㌧(55万CGT)で36%減(CGTベースで33%減)。通関隻数は11隻減の30隻だった。14年1月末の輸出船手持ち工 事量は621隻、2,664万総㌧(1,243万CGT)。前年同月末の570隻、2,607万総㌧(1,166万CGT)を上回った。 ◆手持ち工事量、2,664万総㌧ 《前年比を上回るのは5年ぶり》 日本船舶輸出組合がまとめた今年1月末時点の手持 ち工事量は621隻・2,664万総㌧(1,243万CGT)で、前月末からわずかに増加した。前年同月と比べると2%の増加となっ た。手持ち工事量が前年同月比を上回るのは、2009年1月末以来5年ぶり。納期別の内訳は2013年度引渡分60隻・274 万総㌧、14年度引渡分283隻・1,223万総㌧、15年度引渡分195隻・757万総㌧、16年度引渡分74隻・374万総㌧、17年度引 渡分9隻・36万総㌧だった。手持ち工事量は2008年9月の7,094万総㌧をピークに、リーマン・ショック以降、2012年まで毎 年1,000万総㌧規模で減少し、現在は造船ブームが始まる前の2002年ごろの水準となっている。 ◆13年引き合い、4年ぶりの高水準 《国内造船大手5社、4割増の111件》 国内造船大手5社に寄せられた2013年の輸出船引き合いは計111件で、過去最低を記録した2012年から約4割増加し、 4年ぶりに100件台を回復した。円高修正による受注環境の好転や底値需要の拡大で、2-5月、9-11月に引き合いが増加 し、この期間の1カ月の平均件数は10件台を推持した。バルカーの引き合いが前の年とほぼ同じ水準となる-方、タンカ ーやガス船が増加し、全体を底上げした。円高修正などを受けて採算性は改善しているが、船価は引き続き低迷してお り、価格動向が受注の焦点となっている。国内造船大手の輸出船引き合いは2011年、12年と2年連続で1991年の集計開 始以降、過去最低水準を記録したが、円高修正や船価の底入りを受けて、2013年の引き合いは12年から30件増加の111 件となった。前の年に比べて大幅に増加したものの、引き合いの水準は2008年の186件、2010年の147件と比べて大き な隔たりがあった。金融危機以降で過去最高を記録した成約量と比較すると、2013年に日本の造船会社に発注されて 新造船の多くが中小造船に発注された傾向が浮かび上がる。引き合いのあった船種にもその影響が表れている。日本 船舶輸出組合によると2013年に日本に発注された新造船の86%はバルカーで、受注隻数は前の年から2倍以上に増加 した。しかし、造船大手5社を対象としたバルカーの引き合いは前の年とほぼ同じ水準となった。その一方、タンカーや プロダクト船、ガス船の引き合いの占める比率が上昇しており、大手5社の脱バルク路線が鮮明となっている。なお、12 月の各社別の引き合い状況は次のとおり(カツコ内は前年同月実績、JMUは旧ユニバーサル造船とIHIMUの合計)。Δ三 菱重工ゼロ(2件)Δジャパンマリンユナイテッド4件(6件)Δ三井造船 ゼロ(1件)Δ川崎重工ゼロ(1件)Δ住友重機械2 件(3件)Δ合計6件(13件)【船種別内訳】Δコンテナ/貨物船:ゼロ(ゼロ)。Δバルカー:4件(前月5件)=ケープ2件、ス ープラ2件。Δタンカー:2件(前月4件)=アフラマックス1件、LRII型プロダクト船1件。Δガス船:ゼロ(前月4件)。Δ特殊船: ゼロ(前月ゼロ)。Δその他:ゼロ(前月ゼロ)。【造船所別内訳】Δ三菱重工:ゼロ。Δジャパンマリンユナイテッド:4件=ケ ープ2件、スープラ2件。地域は欧米2件、アジア2件。Δ三井造船:ゼロ。Δ川崎重工:ゼロ。Δ住友重機械:2件=アフラマッ クス1件、LRII型プロダクト船1件。地域は欧州2件。 ◆輸出船引き合い、1月は8件 《国内大手造船5社、タンカー増加》本紙集計による今年1月の国内造船大手5社の輸出 - 5 - 船引き合いは計8件だった。前年同月を上回ったものの、2カ月連続で1ケタ台となった。昨年堅調だったスープラマック スの引き合いがなかった一方、ケープサイズやタンカーの引き合いが増加した。1月の各社別の引き合い状況は次のと おり(カツコ内は前年同月実績)。Δ三菱重工 1件(ゼロ)Δジャパンマリンユナイテッド3件(2件)Δ三井造船 0件(ゼ ロ)Δ川崎重工 0件(ゼロ)Δ住友重機械 4件(2件)Δ合計 8件(4件)【船種別内訳】Δコンテナ/貨物船:ゼロ(前 月ゼロ)。Δバルカー:3件(前月4件)=ケープサイズ3件。Δタンカー:4件(前月2件)=アフラマックス2件、LRII型2件。Δ ガス船:1件(前月ゼロ)=LPG船1件。Δ特殊船:ゼロ (前月ゼロ)。Δその他:ゼロ(前月ゼロ)。【造船所別内訳】Δ三菱重 工:1件=L PG船1件、地域は不明1件。Δジャパンマリンユナイテッド:3件=ケープサイズ3件。地域は欧米2件、アジア1 件。Δ住友重機械:4件=アフラマックス2件、LRII型プロダクト船2件。地域は欧州3件、アジア1件。 ◆国内船舶、減益基調は変わらず 《円安・コスト減で改善も、不採算船響く》 国内造船所の4-12月期決算が出そろっ た。円安とコストダウンなどで想定よりも採算は改善しているようだが、低船価船の建造により前期比で減益という基 調に変化はない。通期では、増益を見込んでいるのは名村造船所1社のみで、4社が赤字決算を見込んでいる。受注高 は各社とも大きく伸びているが、これに伴い受注工事損失引当金の積み増しも発生しているようだ。総合重工4社の船 舶部門と、造船専業5社の、4-12月期業績と通期予想は別表のとおり。今期は、低船価船の建造が本格化していること もあり、国内造船所では採算が悪化する傾向にある。コスト削減活動や、為替が想定より円安で推移した影響で、収支 は想定よりも改善しているほか、円安に伴う受注工事損失引当金の戻入なども発生しているもよう。だが、減益の流れ を食い止めるほどには至っていない。通期業績の予想を開示している7社のうち、川崎重工業、住友重機械、佐世保重 工、内海造船の4社が通期での営業赤字を見込んでいる。川崎重工業は従来予想は収支均衡(営業利益ゼロ)だった が、20億円の赤字に下方修正した。前期比で減益を予想しているのは三井造船と名村造船、サノヤスホールディングス の3社。三井造船は営業利益予想を20億円上方修正したが、減益に変化はない。一方で、各社とも受注は好調だった。4 -12月期の受注高では、三菱重工が前年同期比で2.5倍、三井造船が2.4倍、住重が4倍、名村造船が2.8倍、サノヤスが 2.7倍と、2倍以上の増加を示した。一方、採算面では厳しい受注が続いていることもあり、これら受注で損失引当金を 積み増す造船所もあったようだ。 ◆造船大手5社船舶部門/JMU・三井造が営業黒字 《4-12月期、円高修正が下支え》造船大手5社の2013年4-12月期 連結決算が6日出そろい、船舶部門の営業損益は、円高修正に下支えされ、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が229億 円の黒字、三井造船が95億円の黒字となった。川崎重工はトントン、三菱重工は69億円の赤字、住友重機械工業は22億 円の赤字。三菱重工、川崎重工のガス船建造2社が引き続き低迷した。住重は極端な操業スローダウンが主因。世界金 融危機の影響で海運・造船が不況に突入し、新造船価暴落後に受注せざるを得なかった新造船の建造・引き渡しが続く ため、コスト削減が引き続き各社共通の最重要課題となる。営業利益トップはJMU。コスト改善効果、円高修正が主因。た だし、同社は新造船の大型商談で内定案件を複数抱えており、14年1-3月期にこれが正式契約に至れば、受注工事損失 を引き当てる必要がある。営業利益はその分、下振れする公算。13年1月1日に発足した同社は今期が初のフル決算とな る。三菱重工が6日発表した13年4-12月期連結決算は、船舶・海洋事業の営業損益が69億円の赤字(前年同期は8億円 の赤字)となった。売上高は前年同期比22%減の1,398億円。受注高は1,261億円と倍増。14年3月期通期の連結業績予 想は、交通・輸送ドメインとして開示した。営業利益は商船の採算悪化により前期比13%減の200億円、売上高は19%増 の5,000億円、受注高は24%減の5,900億円を見込む。船舶・海洋の従来の通期連結業績予想は、営業利益が65%減の 40億円、売上高は15%減の1,900億円、受注高は29%増の3,300億円。営業損益は従来予想と比べ、4-12月期で109億 円下振れした。三井造船は通期の連結営業利益予想を70億円と20億円上方修正した。一方で1-3月期の前提為替レー トは期初の1㌦=95円から変更していないため為替の円高修正が続けば上振れもあり得る。川重は通期連結営業損益 が20億円の赤字となる見通し。経常損益ベースでは、中国合弁造船のNACKS、DACKSの持ち分法投資利益により黒字に なるものとみられる。4-12月期の全社ベースの持ち分法投資利益は40億円。中国合弁2社からのリターンが大きな割合 を占めるものとみられる。13年の新造発注ブームにより、仕事確保の面では各社ともひと息ついた格好。ただし、為替 は円高修正とはいえ、新造船価レベルは依然として厳しく、新造船を契約すれば受注工事損失引当金を積む必要があ る。そのため、各社ともコスト削減が引き続き待ったなしとなっている。 ◆造船受注高、今期上振れ 《環境対応や円安追い風に》総合重機各社の造船事業が底入れしてきた。三井造船の20 14年3月期の受注高は前期比16%増の4,800億円と、従来予想を300億円上回る見通し。住友重機械工業も上振れす る。円安の追い風に加え、燃費性能の高い「エコシップ」が伸びており、来期の収益回復につながりそうだ。三井造船は 13年4-12月期、ばら積み船など計21隻を受注。前期1年間の9隻を既に上回る。世界的に環境規制が強まる中、欧州から 低燃費船の発注が増えている。住友重は今期の受注高が前期比2倍の250億円と、従来予想を60億円上回る。川崎重 工業は13%増の1,200億円を見込む。三菱重工業は3,000億円前後と前期に比べ17%増えるもよう。各社とも今期は低 採算の工事が残り営業赤字や減益を見込む。受注高の増加は、船価の回復や造船所の稼働率向上につながり来期業 績を押し上げる見通し。中韓勢との競争が厳しいだけに付加価値の高い船の受注を伸ばせるかが重要になる。 - 6 - ◆国内造船所、操業回復期へ/来年から本格化か、ヒト・モノ不足の懸念も 金融危機後の新造船需要低迷により減産 が続いていた日本の造船所で、工場の操業を戻す動きが本格化しそうだ。昨年の受注回復や、船価が上向いてきたこ とを背景に、専業造船所などが来年以降に操業を戻し始める見通し。造船所によって操業回復の判断には差があるも のの、日本全体で見れば、昨年-今年をボトムにして操業は上向くことになりそうだ。一方、今後のテーマが増産に移る にあたり「ヒト」と「モノ」の不足感が浮かび上がってくる可能性がある。造船所にとって大きなテーマである採算改善 を図るうえでは、不足に伴うコストアップが懸念されつつある。国内最大手の今治造船は、金融危機後は操業をピーク 比で10%程度落とし、建造隻数も昨年は100隻を下回る水準となっていた。だが今年、檜垣幸人社長が年頭あいさつで 「今年からは操業を元に戻すべく増産体制を図る」との方針を表明。昨年も新造船の受注が好調だったことが背景に ある。線表を最も先となる2018年にまで伸ばしている尾道造船も、工場の操業を2016年頃から戻していく方針。需要低 迷で新造船縮小と事業再構築策を進めていた佐世保重工は、操業を一部戻す。新造船の引き渡し隻数をパナマックス・ バルカー換算で年12隻体制から6-7隻体制に縮小していたが、2015年度から現行比2隻増の年8隻体制に増産する方針 をこのほど決定した。操業回復の流れは、中小規模の造船所にも及んでいる。操業をピーク比半減にまで絞っていた臼 杵造船は、ケミカル船の受注拡大で操業を徐々に戻し、2015年はリーマン・ショック前後の水準近くにまで戻す方針だ。 各社ともピーク時の操業にまで一気に戻るわけではなく、また、現在の低操業を当面継続する造船所もいるが、日本全 体として見れば操業は底離れの時期を迎えたといえる。国内造船所では金融危機発生後、新造船の需要低迷と船価の 採算割れを背景に、工場の操業を一斉に落として減産体制を前提に受注を進めていた。操業を維持している大島造船 所のような例外は一部にあるものの、各社とも工場操業は足元でピーク時から10%-30%程度落としている。造船所に よっては残業抑制だけでなく、別部門への人員配転や子会社への出向、応援派遣などの人員対策にも手を打っている ほか、社外協力工やブロックの外注加工業者などとの契約見直しも行っていた。一方、昨年は新造船の需要が急回復し たほか、船価も上向いたこともあり、造船各社は1年分以上の仕事量に相当する受注を確保。引き合いが今も強いほか、 得意顧客である邦船社が発注再開に動く場合に備える必要もあり、操業を戻す検討を進めていた。また、造船所にとっ ての今後の大きなテーマは採算改善にあるが、この点でも操業回復は1つの手段となる。増産や操業の最適化によっ て1隻当たりの固定費を下げたり、船価上昇後の案件を期近な納期ポジションで新規に受注して採算を好転させる狙い もあるようだ。ただ、今後各社で操業回復が本格化すれば、人材不足と材料不足がネックとなる可能性が高い。造船所 や協力会社などでは団塊世代の退職が進み、人的リソースが縮小傾向にあるが、ここ数年間の操業ダウンでこれが加 速した可能性がある。操業回復を図るにも、社内外での人材確保は以前ほど簡単ではなさそうだ。また、資機材につい ても不況の影響で供給力が細っている。採算改善などを見込んで行う増産が、かえってコストアップを招く懸念もある。 ◆バルカ一新造発注、高水準続く/1月だけで12年の半分 バルカーの新造発注が今年に入ってからも高水準で推移 している。ノルウェーの海運ブローカー、RSプラトーのレポートによると、今年1月のバルカ一発注量は151隻・1,250万重 量㌧で、1月だけで2012年の年間発注量の半分近くに達した。船型別の発注隻数は、ケープサイズ30隻、パナマックス15 隻、ハンディマックス72隻、ハンディサイズ34隻で、昨年に続きケープサイズとハンディマックスが特に目立っている。1 月は、イタリア系船主スコルピオ・バルカーズがケープサイズ20隻を中国、韓国、ルーマニアの造船所に発注。ベルギー CMBグループのバルカー船社ボシマールによる今治造船へのケープサイズ5隻の発注も表面化した。ハンディマックス は、ローリッツェン、ダミコ、シノトランス、ウイズダム・マリンなど海外有力船社の発注が相次ぎ、船型は昨年同様6万重 量㌧超の“ウルトラマックス”がほとんどだった。バルカーの新造発注は、ドライ市況の回復期待と船価の底値感、省エネ 船への代替ニーズから13年に急増。IPO(新規株式公開)などで資金を調達した投機筋や、欧州・アジア系の有力オペレ 一夕ー、船主が発注に動いた。RSブラトーの集計による13年のバルカ一発注量は904隻で、12年の311隻から約3倍に増 加。船型別の内訳はケープサイズ161隻、ポストパナマックス7隻、パナマックス141隻、ハンディマックス344隻、ハンディ サイズ251隻で、ケープサイズは前年比約8倍、ハンディマックスは約3倍に増加した。 ◆ニュース深読み 《止まらぬ新造船発注、1月200隻突破》新造船の発注が止まらない。1月は全世界で200隻を突破 した。造船、内航、行政などのこの1カ月を振り返る。デスク 年明けからの1カ月を振り返ろう。まず造船業界はどうだっ たかな。A これは、実は年末から話題となっていたことなのですが、12月にある邦船大手が開いた造船関係者を招い てのパーティーで、会場がざわついたそうです。B わたしも聞きました。造船側代表のあいさつで、いつまでたっても 主催した海運会社への言及がなく、会場に詰め掛けた造船関係者の間で「?」とざわざわしたそうです。C わたしも 聞きました。あちこちの新年会で話題になりました。そのスピーチは結局、自社の宣伝に終始し、主催者への言及がひと 言もなかったそうです。デスク どう受け止めたらいいのだ……。その根底にあるものは何だ。個人的なものか、組織 的なものか、あるいはその両方か。いずれにしても、造船業界にとってプラスになる事象ではあり得ないことは確かだ な。さて、新造船マーケットに移ろう。この1カ月も新造発注はすごかった。A 1月は全世界で200隻を超えました。本紙 集計で232隻です。これには、オリジナルのオーダーが昨年発注された時点で確認されていたオプションを含めていま せん。昨年時点で確認されていなかったオプションが1月に行使され、新たに表面化したものや、新規発注に付いたオ プションは含まれます。200隻突破は、昨年の6月、10月、12月に続くものです。デスク 傾向は?B船種はバルカーが引 き続き中心ですが、タンカー、コンテナ船、オフショア船と幅広い船種で発注されました。C 新造発注残が相対的に少 ない船種が、消去法的に投資対象として選ばれる傾向が近年続いていますが、投資対象としてVLCC(大型原油タンカ - 7 - ー)、ケミカルタンカーがはっきりとターゲットとなったのが1月と言えるかもしれません。デスク バルカーでは、ドライ バルク業界のレジェンド(伝説)、マーク・サベリス会長率いるボシマールも動いたな。A ケープサイズバルカーを今治 造船に、ハンディサイズバルカーを中国ヤードに発注したことが表面化しました。B ただし、この案件は2012年末にか けて固まったものとの見方もあります。C 13年12月期決算での公表を考慮すると、あり得ます。そうだとすると、08年 秋のリーマン・ショックから現在までの期間では、大底での発注となります。デスク 足元の新造船マーケットは中国の 旧正月入りもあり、やや落ち着いてきたが、引き続き情報収集していこう。《中堅4社4-12月期 名村除く3社苦戦》デスク 上場している中堅造船4社の2013年4-12月期連結決算はどうだったかな。A 名村造船所は建造量の抑制があった ものの、円高修正効果で増収増益でした。一方、サノヤスホールディングス(HD)は利益全項目で2桁減益、佐世保重工 業、内海造船2社は赤字となりました。操業のスローダウンによる建造隻数減、リーマン・ショック以降に受注した低船価 の新造船の売り上げが計上されたことなどが収益に響きました。B 佐世保重工は12年10月、厳しい事業環境での生き 残りを目指し「向こう3カ年の経営方針」を発表。新造船事業の比率縮小、新規事業拡大などによる事業のポートフォリ オ(構成)変革、建造体制の年間12隻から6-7隻への縮小、最適配置による人員削減などを盛り込みました。数値目標と して14年度の連結売上高400億円と単年度の黒字化の必達-を設定しました。数値目標を再検証した結果、14年度の 売り上げ計画、黒字化の実現が困難な見通しとなったことを踏まえ、13年5月に新中期経営計画を発表。15年度での連 結売上高360億円および黒字化の実現を目指します。人員体制の最適化、組織のスリム化を図るため、希望退職を実施 しています。C 佐世保重工に関しては1月30日に、新造船の増産方針を打ち出しています。年間の引き渡し隻数を現行 の6隻から15年以降8隻にします。海運マーケットの環境変化に伴い新造船の受注環境が回復傾向にあること、為替相 場が急速に円安水準となったことなどを総合的に勘案しました。デスク 超円高の是正により受注は増えているね。A 13年4-12月期は、4社が前年同期の受注高、受注隻数を上回りました。受注内容は、名村が省エネ3万4,000重量㌧型 (34型)バルカーを中心に39隻。この中には中型油送船も入っています。このほか、契約未了の内定船9隻があります。 サノヤスが82型バルカー、60型バルカーなど計6隻を確保したほか、3隻を受注内定しました。佐世保重工は77型バル カー7隻、85型バルカー1隻の計8隻、内海造船は貨物船、プロダクトタンカー(石油製品船)、RORO船など計11隻を成約 しました。B 受注高(サノヤスHD、佐世保重工、内海造船は修理工事含む)は、前年同期実績を公表していない内海造 船を除き名村、サノヤスHDが4倍、佐世保重工も2桁増でした。13年12月末の受注残は、名村が小幅減だったものの3社 が増えました。C 佐世保重工の増産方針発表などは明るい話題だ。円高是正などを追い風に受注拡大に期待したい。 《13年度建造申請、リーマン以降最多》デスク 最近、内航関係の記事で「バブル後」「リーマン・ショック後」という言葉が 出てきている。2013年度の内航船建造申請も「リーマン・ショック後」最多だったな。A 日本内航海運組合総連合会(内 航総連)がまとめた14年1月期の船舶建造募集にする組合員(内航事業者)からの建造申請(改造含む)は、全船種合わ せ24隻・5万700対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)でした。この1月期の申請を加えた13年 度の建造申請隻数は改造・転用含めて116隻で、08年のリーマン・ショック以降で最多でした。B 100隻超は11年度から3 年連続となりますね。今年度、建造申請が伸びた理由としては、年度前半に油送船の申請が多かったことが挙げられま す。5月期と7月期は5,000-6,000立方㍍型の大型船の応募が目立ちました。C 関係者らに聞くと、13年度の油送船建 造が多かった要因として「エネルギー供給構造高度化法」も関係したようです。同法に対しては、石油元売り各社が13 年度末までに製油所再編を進めており、内航各社は輸送距離拡大に対し船舶大型化を図る動きがあったようです。デ スク 貨物船もコンスタントに申請があったな。A 1万総㌧を超えるRORO船など大型船も含め、応募が相次ぎました。 一方で、一般貨物船の主力船型の499総㌧型は今年度の申請は鈍かったのですが、ここにきて一般貨物船の代替の動 きが徐々に出始めましたね。1月期の応募(6隻)は13年度単月期で最も多い申請状況でした。B 14年度も499総㌧建造 の動きは活発との見方が広がっています。内航業界では足元、内需の高まりで鋼材船などの荷動きが高水準です。4月 の消費増税による落ち込みも懸念されていますが、「谷はそれほど深くない」との声も聞かれます。東日本大震災の復 興や東京五輪などで需要は底堅いようです。需要の高まりに対応し安定輸送を図るため、代替期を迎えた船の建造に 向けた動きが出てきそうです。A 内航関係者からは「内航船を建造する造船所では15年の受注も入っている」との声 も聞きます。14年度も全体の申請が100隻を超える水準になりそうですね。C 内航船主は、リーマン・ショック後に用船 料水準が下落したこともあり、厳しい経営環境が続いてきました。建造意欲があっても、なかなか代替に踏み切れませ んでした。今春の用船料更改で、代替建造が可能な水準に近づいていくのかも注目です。 ◆時期尚早の「造船不況終了論」 《仕事確保に操業回復も、採算は悪化へ》昨年の受注拡大のためか、年明けから造 船業界のムードは明るい。手持ち工事も平均2年以上が確保され、操業回復の動きも出てきた。早くも「造船不況は終わ った」という意見まで出始めた。一方では、供給過剰の不況構造はほとんど解消されていない。採算悪化はこれからが 本格化するうえ、コストアップ圧力が強まる可能性も出てくるなど、予断を許さない状況は続いている。《幅広い造船所 が受注増》 司会:皆が言っていることだが、今年は年明けから関係者の表情が明るい。賀詞交換会や新年会でも、会話 が弾んでいたように見える。紙面でも年明けからこれまで、明るいニュースが多いような気がする。ー 不況の出口が 見えてきたという発言を何度か耳にしたが、中には「もはや不況ではない」という「造船不況終了論」を唱える人まで いる。ー さすがに終了宣言は業界内でも受け入れられないだろう。ー 不況の定義を需要不足と仕事の枯渇とするな ら、今のような状況は不況ではない、ということのようだ。まず昨年の受注回復がある。さらに、いまも引き合いが強い ということが終了論の理由のようだ。ー 確かに、昨年の受注は、統計で改めて実態を見てみると、非常に多かった。ー 輸組(日本船舶輸出組合)統計では、日本の受注は362隻・1,462万総㌧でリーマン・ショック後では最高だった。海外建 - 8 - 造分も加えればもっと数字は増える。昔の感覚だと「発注ラッシュ」だね。実際、2003-08年の造船ブーム期を除けば、 オイルショック以降では最高の受注量だったという。ー 各造船所がどの程度の隻数を受注したのかという数字もいろ いろ見えてきた。日本の場合は、特定の造船所に受注が偏っているわけではなく、幅広く行き渡っているように見える。 日本の造船所で、不況という感覚があまりしないのもそのせいだろうか。でも、昨年の受注は一時的なものという見方 も強い。ー 海外からの引き合いは今年に入ってからも強いままだ。LNG船をはじめとしたプロジェクト案件も残されて いる。それに、長らく発注を止めている邦船社の今後の動きも残されている。船価上昇の傾向も続いている。当面は良 いのではないか。ー 造船所は受注をさらに進めるのか、当面様子見かという判断がまた分かれるところだ。ー そうい う選択肢がある点も、不況色は薄い。《操業も回復期へ》― 受注拡大で、各社が当面の仕事量にめどがついた点も「不 況終了」論の理由になっている。司会 最も遠くまで線表を進めているのは尾道造船の2018年春で、グループの佐伯 重工も2018年に入っていると記事にあった。ー 大島造船もそろそろ線表が2018年に入りつつあるはずだ。でも、これ ほど埋めた造船所は例外的だろう。輸組統計では、全体平均は2年ちょっと、ということだった。ー 内定なども含めれ ば、2年以上先まで各社ともめどをつけたというのが実態だと思う。もちろん造船所によって差はあるけれど、船型に よっては2016年船台が出てこなくなったという詰も聞くから、平均3年近く早ま埋めたのではないだろうか。ー ここま で埋まると、邦船社が発注再開に動き出したときに船台が残っているかどうかが気になる。ー そこはある程度、造船 所がリザーブしているとは思うけれど…。ー それも造船所次第じやないかな。発注の規模がどれくらいになるかにも よるけれど、数は限られていると思う。ー 造船所でスローダウンしていた工場の操業を戻す動きが出てきた点も、不況 から回復期に入ったことを示している。司会 今治造船が操業を戻し始めるというのがニュースになっていたね。ー 今治だけではない。専業造船所で受注が多かったところは、操業を戻し始めていると思う。ー 全体の動きとしては、ま だだと思うよ。重工系はまだ低操業が続く見通しだろう。赤字で無理に仕事を埋めるより、という考えは、重工系に限 らず他にもある。ー 操業を戻すといってもすぐには対応できないから、検討は各社とも始めているようだ。邦船の発 注が出てくれば、操業回復の動きは広がるんじやないかな。ー さすがにピーク時の水準までには戻さないだろうね。 あれは負荷をかけ過ぎた増産という造船所も多かった。ー それはそうだ。むしろ[適正操業への回復」ということだろ う。《供給過剰は変わらぬまま》ー 以上が「不況終了論」の理由だけれど、反論はあるかい?ー 違和感はある。まず、供 給過剰の構造が全く変わっていない。需要回復で、海外の新興造船所にまで受注が戻ってきている。これでは淘汰が ほとんど進まない。ー でも、供給力の調整がある程度進んでいるのは間違いないと思う。受注が増えたとはいえ、中 国では、受注できているのは上位30社だけだ。幅広く受注している日本とはそこが違う。中国の中小規模の造船所の 淘汰は確実に進んでいくよ。ー いわゆる「世界の造船建造能力1億総㌧」がどの程度まで減ったかは厳密にはわから ないが、いま淘汰が見込まれている中国の中小造船所の能力は、たかがしれている。ー 昨年の発注量は、少なくとも 8,000万総㌧規模はあった。世界の有力造船所が十分食っていける需要といえるが…。ー この需要がいつまで続くの か。あくまで一時的なもの、という慎重な見方は強いし、昨年の大量発注が今後の本格回復の足を引っ張る可能性も ある。ー 有力造船所が当面の仕事量を埋めたという点は間違いない。仕事確保のための船価攻勢などは、当面はな いだろう。ー 数年前のように世界で発注がほどなくなる事態がまた起こる構造は残されたままだ。2-3年分くらいの 受注残は、発注が止まればすぐに尽きてしまう。手持ちが増えたといっても、操業ダウンをベースにしたものだし、そも そも採算が悪い船が中心だから、その点では各社がこの数年を乗り切った状況と違う。 《採算改善とコストアップ》ー も う1つは、やはり採算の問題だ。今期の決算見通しが出ているが、日本でも赤字決算が出始めている。ー 一方では好決 算の造船所もある。ー 船価が良かった時代の船が多少残っている点と、受注工事損失引当金の戻入でかさ上げされ ている分があるけれど、実態としては悪化し始めているだろう。為替もまた円高方向で予断を許さない。ー 韓国では、 造船専業が昨年、軒並み赤字決算になったようだ。ウォン高要因もあるし、リーマン・ショック後の低船価船が売上げに 立つのが日本よりも早いということを考えれば、明日の日本の姿といえるかもしれない。採算改善にいかに手を打つ かは、これからの大きなテーマだ。ー 仕事量があれば、何らかの対策は打てる余裕がある。ー そうだね。一方では、こ れからの人手不足、モノ不足への懸念も出ている。ー 人手不足は造船だけでなく日本全体の問題になってきている。 そもそも今に始まった話ではないが。ー でも、これからいろいろと顕在化してくる可能性がある。品質維持も含めて、 人材の重要性が大きくなる。ー 鋼材価格も気になるし、資機材の価格動向も見えない。ー 造船所からの値引き要請が ずっと続いているので、もうこれ以上は取引も結構、というメーカーも出てきているようた。採算改善を図ろうにも、コ ストアップ圧力は強いようにも見える。ー いつか見た光景のような気もする。ー 不況が終わったとは言い難いし、楽 観できる状況でないのは確かだ。 ◆日本財団、造船業設備資金57億円貸付 日本財団は2013年度第2回目の造船関係事業に対する設備資金貸付と して、21件に計56億9,450万円を融資する。融資額は前年度第2回目に比べて21%増加した。融資申請全件が認められ た。貸付実行予定日は3月4日。同制度は、日本財団が造船関係事業の振興を目的に、設備資金を長期・低利で融資する もの。毎年2回募集・実施しており、今期の第1回目では5件に計18億5,800万円を融資していた。 ◆新造船価、小幅続騰/VL9,600万㌦・ケープ5,550万㌦ 新造船価相場が小幅続騰している。VLCC(大型原油タンカ ー)は9,600万㌦と直近のレベルに比べ100万㌦、ケープサイズバルカーは5,550万㌦と50万㌦それぞれ上昇した。マ ーケット筋によると、新造船価相場は、タンカーでは大型船、バルカーでは全船型で小幅続伸した。タンカーは、VLCCに 加えスエズマックスも上昇し、50万㌦高の6,350万㌦(船型15万7,000重量㌧型)となった。バルカーは、パナマックスが2 0万㌦高の2,900万㌦(船型7万6,000重量㌦型)、ハンディマックスは50万㌦高の2,730万㌦(同6万2,000重量㌧型)、ハ - 9 - ンディサイズは30万㌦高の2,330万㌦(同3万5,000重量㌧型)となった。ガス船では、VLGC(大型LPG(液化石油ガス) 船)が7,600万㌦(船型8万2,000立方㍍型)と50万㌦上昇した。足元の新造船マーケットは、5日まで続いた中国の春節 の影響で成約そのものが減り、落ち着いている。一方、海運市況や新造船マーケットの先行指標となる中古船マーケッ トは、ハンディサイズバルカーの新造リセール(転売)価格が2,500万㌦と100万㌦上昇したほかは、横ばいで推移してい る。足元の中古船価相場は、タンカーではVLCCが新造リセール9,300万㌦、船齢5年物6,800万㌦、船齢10年物4,600万 ㌦、船齢15年物2,800万㌦。バルカーは、ケープサイズ=新造リセール5,700万㌦、船齢5年物4,600万㌦、船齢10年物は 3,300万㌦、船齢15年物は1,900万㌦▽パナマックス=新造リセール3,250万㌦、船齢5年物2,700万㌦、船齢10年物2,05 0万㌦▽ハンディマックス=新造リセール3,200万㌦、船齢5年物2,600万㌦、船齢10年物1,950万㌦▽ハンディサイズ= 船齢5年物2,100万㌦、船齢10年物1,600万㌦-でそれぞれ推移している。 ◆新造船価、VLCC小幅続伸9,700万㌦/バルカーは全船型横ばい 新造船マーケットでVLCC(大型原油タンカー)の 新造船価が気配値先行で小幅続伸した。足元は直近のレベルに比べ、100万㌦高の9,700万㌦を付けている。一方、新造 船マーケットが中国の旧正月明け後、落ち着いているのを受け、バルカーの新造船価は全船型で横ばいで推移してい る。マーケット筋によると、足元の新造船価相場は、タンカーはVLCCが9,700万㌦、スエズマックスは6,400万㌦と50万㌦ 上昇した。アフラマックスは5,400万㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,700万㌦と横ばい。 バルカーは、ケープサイズが5,550万㌦、パナマックスは2,900万㌦、ハンディマックスは2,730万㌦、ハンディサイズは2, 330万㌦と横ばい基調となっている。年明けの1月は、新造発注が200隻を超え、新造船マーケットは活況が続いた。しか し、先週半ばの旧正月明け後、新造船マーケットはこれまでのところ静かになっている。 ◆新造船マーケット/欧州勢、発注一巡 《16年船台完売で様子見》 新造船マーケットが落ち着いてきた。昨年来新造 発注ブームをけん引してきた欧州船主・オペレーターの新造発注が一巡したことが主因で、日本の主要造船各社の201 6年船台がほぼ完売したことが影響したとみられる。一方で、新造船価レベルは、バルカー、タンカー双方とも大型船で じり高傾向が続いている。「海外からの新造引き合いはかなり落ち着いている」「バルカーの引き合いはハンディマック ス以下はかなり少なくなった」主要造船各社の新造船営業関係者の間からは、最近このような声が上がっている。12年 末に始まった円高修正局面を受け、13年は日本の造船各社が受注確保という意味で復活。同年の世界の新造船発注 は、投機筋の新造発注が増え、3年ぶりに2,000隻を突破した。14年に入り、1月末まではオプション行使などもあり、世界 の新造発注は単月で200隻を超えた。しかし、中国の旧正月入りを待つかのように、2月に入ってから発注が表面化する 案件は極端に減り、足元がオフショア船がちらつく程度となっている。他方、邦船オペレーターの間では、一部で新造発 注を再開している。主要造船各社は操業をスローダウンさせているため、年間の建造隻数を減らして新造船を受注して いる。邦船オペレーター・国内船主が短納期を希望した場合、そのオファーに対し、操業量を上げてでも短納期船台に応 じるのか否か、市場関係者は注目している。マーケット筋によると、足元の新造船価レベルは、大型船で小幅続騰してい る。タンカーでは、VLCC(大型原油タンカー)が9,800万㌦と直近の相場に比べ100万㌦上昇した。スエズマックスは6,40 0万㌦、アフラマックスは5,400万㌦、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは3,700万㌦と強含み横ば い。バルカーは、ケープサイズが50万㌦高の5,600万㌦(船型18万重量㌧型)、パナマックスは30万㌦高の2,930万㌦ (船型7万6,000重量㌧型)となった。ハンディマックスは2,750万㌦(船型6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズは2,330 万㌦(船型3万5,000重量㌧型)と横ばいで推移している。 ◆造船各社、短納期船台/復興提示困難 《復興需要に下請け流出》邦船オペレーターの間に新造発注再開が徐々に 広がる中、国内主要造船各社は短納期船台の提示が事実上困難になっている模様だ。操業をスローダウンさせ、年間 建造隻数をピーク時に比べ減らしており、船価次第では短納期船台を提示する可能性が高まるはずだったが、2012年 まで続いた造船不況時に削減した協力工が東日本大震災の復興需要に吸収されたのに加え、現在も復興需要へ下請 けが流出する傾向が続いているため。主要造船各社の船台は16年がほぼ完売しており、新規商談の納期は早くても17 年となる。「下請けが逼迫してたいへんだ」造船各社の間にそんな声が広がってきた。関係筋の話を総合すると、下請 け逼迫に関する情報は、昨年末ごろから海運・造船業界であいさつ代わりに交わされるようになったという。ほとんど の国内造船各社は、超円高と海運市況・新造船価暴落により、造船不況に突入した09年以降、操業を落として年間建造 隻数を減らし、赤字を最小化する路線に舵を切った。スローダウンした操業に合わせ、協力工も減らした。12年末以降の アベノミクス効果に震災復興需要が重なり、造船業界から離れた協力工は、より条件が上向いている復興需要へ流れ、 造船各社で現在働く協力工からも復興需要へ流れる傾向が強まっているという。一方、海外船主が主導した13年の新 造発注ブームにより、造船各社の船台は16年がほぼ埋まった。船価次第では、スローダウンした操業を上げれば短納期 船台を捻出することは可能なはずだった。03年から5年にわたり続いた史上空前の海運・造船ブームでは、新造船価が 続騰する中、短納期船台捻出が相次いだ。しかし、足元は、下請けが復興需要に流れているため、短納期船台を捻出す るにも「マンパワーの確保が無理」(造船筋)だという。加えて、新造船価は上昇局面とはいえ、ブーム時と異なり、上げ 脚は鈍い。アベノミクス効果でモノの価格は上昇基調となりつつあり、短納期船台といえどもコストを読みづらい状況 になってきた。下請け逼迫がボトルネックとなり、それを新造船価や資材コストなど不透明さを増してきたファクターが 覆う状況となっている。 ◆新造船価、バルカー横ばい基調 《ハンディサイズ小高い》バルカーの新造船価レベルが足元のドライ市況の調整を 反映し、ほぼ横ばい基調に転じた。ケープサイズ、パナマックス、ハンディマックスの3船型が横ばい、ハンディサイズだ け20万㌦高と小高い展開となっている。マーケット筋によると、足元のバルカーの新造船価相場は、ケープサイズが5, - 10 - 600万㌦(船型18万重量㌧型)、パナマックスは2,930万㌦(船型7万6,000重量㌧型)、ハンディマックスは2,750万㌦(船 型6万2,000重量㌧型)と横ばいで推移している。ドライ市況が中国の春節入り後、調整局面に入ったのを受け、バルカ ーの新造船価レベルはそれ以前のじり高傾向から落ち着きつつある。ハンディサイズの新造船価レベルは、2,350万㌦ (船型3万5,000重量㌧型)と直近に比べ20万㌦上昇した。タンカーの新造船価レベルは、VLCC(大型原油タンカー)が9, 850万㌦(船型32万重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーが3,730万㌦(船型5万1,000重 量㌧型)とそれぞれ50万㌦、30万㌦上昇した。スエズマックスは6,400万㌦(船型15万7,000重量㌧型)、アフラマックス は5,400万㌦(船型11万5,000重量㌧型)と横ばい。 ◆中古船、大・中型船でじり高続く 《ケープ6,000万㌦/VL9,500万㌦》中古船マーケットで、大・中型船の中古船価の じり高傾向が続いている。バルカーではケープサイズ、タンカーはVLCC(大型原油タンカー)、アフラマックスで50万-2 00万㌦高となっている。マーケット筋によると、バルカーの足元の中古船価は、ケープサイズが直近に比べ、新造リセ ール(転売)で100万㌦高の6,000万㌦、船齢5年物は200万㌦高の4,800万㌦をつけている。船齢10年物は3,300万㌦、 船齢15年物は1,900万㌦とそれぞれ横ばい。パナマックスは、船齢10年物が50万㌦高の2,200万㌦、船齢は年物は100 万㌦高の1,450万㌦となった。新造リセールは3,300万㌦、船齢5年物は2,700万㌦と強含み横ばい。ハンディマックス は、船齢10年物が50万㌦高の2,000万㌦に上昇した。新造リセールは3,200万㌦、船齢5年物は2,600万㌦、船齢15年物 は1,350万㌦と強含み横ばいで推移している。ハンディサイズは横ばい基調。新造リセールは2,550万㌦、船齢5年物は 2,100万㌦、船齢10年物は1,600万㌦、船齢15年物は1,100万㌦を維持している。タンカーは、VLCCが新造リセール9,500 万㌦、船齢5年物7,000万㌦とそれぞれ100万㌦、200万㌦上昇した。船齢10年物は4,600万㌦、船齢15年物は2,800万 ㌦と横ばい。アフラマックスは、新造リセールが100万㌦高の4,700万㌦、.船齢5年物は100万㌦高の3,700万㌦と上昇し たものの、船齢10年物は250万㌦安の2,300万㌦、船齢15年物は100万㌦安の1,300万㌦と下落し、若齢船と高齢船で値 動きがばらついた。 Ⅲ.各国造船業の動向 ◆新造発注1月200隻突破/バルカーけん引100隻超 2014年1月の世界の新造発注が200隻を突破した。バルカー が100隻超と引き続きけん引したのに加え、タンカー、コンテナ船と幅広い船種で発注が積み上がった。単月で200隻を 超えるのは、13年から続く新造発注ブームで4度目。足元の新造船マーケットは、中国の旧正月入りの影響で落ち着い ている。ほとんどの船種・船型で08年秋のリーマン・ショック前後に大量竣工した若齢船の割合が5割を占める中、昨年 来続くブームをけん引してきた海外船主の発注が今後も続くのか、邦船オペレーターや国内船主が新造発注を本格的 に再開するのかが今後の最大の焦点となる。1月に表面化した世界の新造発注は、本紙集計で229隻。昨年発注された 新造船のオプションが行使されたケースを除く。新規発注に付いたオプションは含む。船種別では、バルカーが109隻と 最多。タンカーは40隻、コンテナ船は35隻、ガス船は16隻、自動車船(PCTC)は4隻、オフショア船・その他が25隻だった。 バルカーの船型別内訳は、ケープサイズ41隻、VLOC(大型鉱石船)6隻、カムサマックス17隻、ハンディマックス36隻、ハ ンディサイズ9隻。タンカーは、ケミカルタンカーが15隻、VLCC(大型原油タンカー)が11隻と他船型に比べ積み上がっ た。ケミカル船は3,500重量㌧型リージョナル・タンカー2隻を含むものの、それ以外はほとんどが2万重量㌧前後のディ ープ・シーに配船されるステンレス船。臼杵造船所(大分県)が4隻、北日本造船(青森県)が7隻(16-17年竣工予定)をそ れぞれ受注したのが表面化し、世界のステンレス船建造の9割を占める日本のケミカル船建造ヤードに新造発注が戻り つつある傾向が一段と強まってきた。一方で、米投資ファンドと組む新興勢力のナビゲイトが、ケミカル船は新造発注残 が極めて少なく、燃費効率の高いモダン船を割安な船価で発注したと指摘。VLCCに続きケミカル船にも投機色が出て きた。タンカーの他船型の新造発注は、スエズマックス2隻、LR(ロングレンジ)2型プロダクト(石油製品)タンカー4隻、LR 1型プロダクト船2隻、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト船6隻。ガス船はVLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船)9隻、中小 型LPG船7隻だった。コンテナ船は、1万4,000TEU級18隻、9,000TEUクラス13隻、1,800TEU型4隻。PCTCは8,000台積み2 隻、6,700台積み2隻だった。竣工年別では、16年が50%強を占めた。2,000隻を突破した13年の新造発注は、その50% が15年デリバリー。世界の主要造船各社の15年船台がほぼ完売し、デリバリーポジションの中心は16年にシフトした。 ◆昨年の新造受注量、史上2番目 《IHS統計、07年以来の1億総㌧突破》昨年の世界の新造船受注量は1億総㌧を突破 し、2007年に次ぐ史上2番目の水準だったことが明らかになった。IHS(旧ロイド)統計速報値によると、昨年1-12月の受 注量は計3,346隻・1億388万総㌧。各国と、も受注量を前年から伸ばしたが、特に中国造船所がウルトラマックスやケー プサイズを中心としたバルカーの受注量を大きく増やし、2位の韓国に約800万総㌧の差を付けた。秋以降に受注量が 拡大しており、ケープサイズ・バルカーやVLCCなどの大型船の運賃市況が年末にかけて急回復したことが受注拡大を 後押ししたようだ。昨年は、低船価などを背景に年間を通じて新造発注が続き、受注ラッシュの様相を呈していたが、こ の実態を統計が裏書きした格好だ。これまで年間の受注量が1億総㌧を超えたのは、過去最高の約1億6,000万㌧を記 録した2007年だけで、13年はこれに次ぐ水準になった。また、13年の大量受注は、前年の低迷が反動として表れた結果 との見方もある。13年と12年の受注量を合計すると約1億4,000万総㌧で年平均では7,000万総㌧となることから、「中 期的な新造需要と予測されていた年平均5,000-7,000万総㌧の範囲内にある」(造船関係者)との見方だ。実績はIHS - 11 - 統計の1-9月実績の確定値と10-12月速報値の合計。国別の受注量は、中国が前年比3.1倍の4,410万総㌧、韓国が3倍 の3,612万総㌧、日本が66%増の1,407万総㌧だった。世界シェアはそれぞれ43%、35%、14%で、中国が、商船から海 洋構造物に軸足を移している韓国を引き離した。日本は受注量で中国や韓国に大きく引き離されたものの、省エネ性 能への評価や円高の是正などを背景に6万重量㌧超型などのハンディマックス級を中心に受注を重ねた。日本船舶輸 出組合の輸出船契約実績も1,462万総㌧だったため、昨年の受注規模はほぼこの水準だったとみられる。年間を通じて の受注推移を見ると、秋以降の受注量が大きく伸びていることが特徴。昨秋以降にケープサイズ・バルカーの市況が 回復し、年末にかけてVLCCの運賃市況が急騰したことを受けて、大型船の受注量が増加したようだ。第4四半期の受注 量は年間の34%を占めた。受注船の船種別では、バルカーが計1,040隻・4,901万総㌧で、全体の5割近く(㌧数ベース) を占めた。ウルトラマックスの大量発注を受けて6万-8万5,000重量㌧型が計492隻・1,891万総㌧で、2012年の4.1倍に達 した。また、昨秋以降の用船市況の回復などを受けて、13万重量㌧以上のバルカーは計188隻・1,918万総㌧となり、2012 年の6.4倍に達した。両船型とも、受注を牽引したのは中国で、ウルトラマックスで7割、ケープサイズで5割のシェアを占 めた。タンカーの受注は542隻・1,987万総㌧で、前年の2.7倍だった。MR型プロダクト船がタンカー全体の4割を占め、韓 国ヤードが受注を拡大した。また、昨年末にVLCCの運賃市況が回復した影響もあり、VLCCの受注量が前年の4倍となっ た。世界全体の新造船の竣工量は計2,868隻・6,967万総㌧で、前年比26%減少した。国別では中国が2,544万総㌧、韓 国が2,448万総㌧、日本が1,436万総㌧。中国がキャンセルなどに加え、操業水準を大幅に落としていることが鮮明にな っている。12月末時点の世界の手持ち工事量は計5,994隻・1億8,286万総㌧で、1年前と比べて約1,500万総㌧増加した。 昨年の竣工量をベースにすると、約2.6年分の工事量に相当する。国別では中国が2.8年分、韓国が2.4年分、日本が1. 8年分に相当する工事量を確保している。12年末時点で手持ち工事は1.5-1.7年となっていたが、受注の増加と竣工量 の減少によって工事量は大幅に増加した。 ◆日本の造船シェア20%台回復 《3年ぶり、昨年の新造船竣工量》日本造船業の新造船竣工量の世界シェアが昨年、 3年ぶりに20%台を回復したようだ。昨報のとおり、IHS(旧ロイド)統計速報値によると、昨年1-12月の日本の新造船竣 工量は510隻・1,436㌧。総㌧数ベースでの世界シェアは20.6%となった。竣工量は前年に比べて17%減少したが、韓国 と中国の竣工量の落ち込みが日本よりも大きかったことで、相対的にシェアが高まった格好だ。日本の世界シェアは長 らく30%以上をキープしてきたが、造船ブーム期に中国と韓国が建造量を急激に拡大したことで、相対的に減少傾向 が続き、2011年に初めて20%台を割り込んでいた。2012年も縮小傾向が続いたが、昨年はシェアが増加に転じた。日本 は造船各社が操業を落として建造量を絞っているが、韓国と中国は大手による海洋へのシフトや、中小造船所の破綻 により、建造量の減少が日本を上回り、韓国は22%減、中国は34%減だった。この結果、・昨年の竣工量シェアは、中国 が36.5%、韓国が35.1%と僅差になった。 ◆新造船竣工量、来年から増加か 《昨年の大量受注が影響》世界全体の新造船竣工量は、昨年-今年を底にして、来 年から再び増加に転じる可能性が出てきた。昨年の記録的な新造船発注により、造船所が操業を戻したり、休眠してい た工場が再稼働するなどの動きが出てくるもようだ。IHS(旧ロイド)統計によると、昨年の世界の新造船竣工量は6,967 万総㌧で、ピーク時の2011年に比べて31%減少した。リーマン・ショック後の需要低迷の影響で、日本・韓国・中国の主要 造船所が操業縮小や製品転換を進めて、新興ヤードの撤退などもあり、建造量が縮小傾向にある。ただ、昨年の需要回 復で主力造船各社が受注を確保し、期近な船台では2015年頃の納期から受注残が拡大した。これにより、日本では操 業を戻す動きが出始めている。韓国造船業でも、現在の受注残からすると2015年の建造量が昨年を上回る見通し。大 手は海洋などに軸足を移しているが、経営危機にあった振興造船所などが受注を拡大して建造量を回復させることが 影響しているもようだ。 ◆韓国、造船・鉄鋼が不振 《市況低迷に通貨高、現代重・ポスコ、2ケタ減益、前12月期》韓国の主要な企業の2013年1 2月期決算は、サムスン電子や現代自動車の減速に加え、共に成長をけん引してきた造船や鉄鋼など重厚長大の輸出 型企業の不振が鮮明になった。世界的な市況の低迷に、ウォン高による価格競争力の低下が追い打ちをかけている格 好だ。既存の大企業が先行に懸念を深める一方で、化粧品やテレビ通販、IT(情報技術)など、海外展開をテコに成長す る企業も出てきた。造船大手の現代重工業とサムスン重工業が発表した13年12月期決算は、営業利益の2社合計額が 前の年に比べて46%減った。最大手の現代重工業は連結ベースで、営業利益が60%減の8,020億ウォン(約800億円)。 リーマン・ショック後の不況時に安値で受注した船舶の引き渡しが相次ぎ、精油など非船舶部門の採算も悪化。10-12月 期は871億ウォンの営業赤字に転じた。同社関係者は「造船景気の停滞が続き、船価の下落が止まらない」と危機感を 強める。ウリ投資証券など韓国の証券大手は6日の決算発表後、業績の改善が当面難しいとみて、同社の目標株価を3 0万-33万ウォンから一斉に28万ウォンへと引き下げた。サムスン重工業は造船の価格下落に加え、液化天然ガス(LNG) の沖合生産施設建設で追加負担が発生。24・2%の連結営業減益となった。同じく基幹産業の鉄鋼も、国内景気の回復 感の乏しさに苦しむ。最大手のボスコの連結営業利益は18%減。現代製鉄も17・7%の減益だ。割安な中国産が韓国に流 入し、ウォン高で価格競争力も落ち込んだ。日本向けの輸出が減少し、中国や東南アジアなどへの輸出も採算が悪化し ている。韓国銀行(中央銀行)によると、通貨ウォンの13年の平均レートは1㌦=1,095ウォンで、12年より2・9%上昇。円に 対しては13年12月の平均レ一トで1年前より2割上昇した。造船や鉄鋼は日本企業との競争も激しく、環境は悪化してい - 12 - る。ボスコの朴基洪(バク・ギホン社長)は「日本メーカーに奪われた韓国内の高級鋼板の注文を取り戻す」と表明。輸出 の採算改善を期待しにくいため、14年は内需の取り込みを図る考えだ。ただ、ライバルの現代製鉄は昨秋に新たな高炉 を稼働。グループの現代自動車向け販売を拡大する見通し。ボスコ社内でも「自動車など向けの売り渡し価格引き上げ は厳しい」(金在烈=キム・ジェヨル常務)と悲観的な見方がうかぶ。韓国経済を支えるサムスン電子と現代自動車も先 行きに不安を抱える。サムスン電子はスマ一トフォン(スマホ)の販売が伸び悩み、13年10-12月期にほぼ2年ぶりの連結 営業減益となった。現代自動車もウォン高で日本勢との競争環境が悪化し、主に先進国市場で苦戦。13年の連結営業利 益は前の年に比べて1・5%減った。 Ⅳ.造船・造機以外の産業動向 ◎外航海運 ◆ばら積み船、用船料下げ止まり 《中国の需要回復期待で》下落基調を続けたばら積み船の用船料(チャーター料) が下げ止まりつつある。大型のケープ型(積載重量17万㌧超)のスポット市場の用船料は現在、1日あたり8,600㌦程度。 中国の春節(旧正月)休暇明けで鉄鉱石の輸送需要が回復するとの期待もあり先週から小幅に反発した。ケープ型の 用船料は昨年12月下旬に付けた高値(約3万9,000㌦)から軟化し、2月初めには8割安まで落ち込んでいた。中国の2013 年の鉄鉱石輸入量は8億2千万㌧だったが、「今年はさらに5-7%増える見通し」(日本郵船)との見方が広がっている。 中国の買い付けが増えるとの予想を背景に、1年間の長期契約分の用船料はすでに1月中旬と比べて約2割上昇。1日あ たり2万4千㌦程度となった。「長期契約価格が上がっていることも、スポット価格を下支えしている」(調査会社のトラン プデータサービス=東京・千代田)という。 ◆欧米向け海上スポット/コンテナ運賃上げ 日本郵船など海運各社が海上コンテナの運賃を3月半ばから引き上げ る。幅はアジア発欧州向けで5-6割、アジア発米国西海岸向けで15%。欧米景気の底堅さを背景に荷動きは上向く傾向 にある。運賃の引き上げにより採算の改善をはかる。《家具・車部品など需要好調》日本郵船や商船三井、川崎汽船など が上げるのは、荷主と随時決めるスポット(短期契約)運賃。欧州向けスポットは現在、1TEU(1TEUは20フィートコンテナに 相当)あたり1,200㌦程度で、日本郵船と川崎汽船は600-730㌦引き上げる。米国西海岸向けスポット運賃は1FEU(1FEU は40フィートコンテナに相当)あたり1,900㌦程度だが、日本郵船と商船三井はこれに対して約300㌦上げる。スポット運 賃は1月以降、欧州向け、北米向けとも下落に転じており、欧州航路では海運会社の採算ラインを下回っている。海上コ ンテナはスポットと長期契約に分かれる。スポットが上昇すると、長期契約の上げ材料になる。海運会社はこれから、201 4年度の長期契約運賃について荷主と交渉に入る。アジア発では長期契約とスポット契約が半分ずつといわれる。日本 海事センターによると、アジア発欧州向けの荷動きは昨年10-12月期に約342万TEUと3四半期連続して前年同期の実績 を上回った。アジア発米国向けも昨年10-12月期が349万TEUで2四半期連続で増えた。1月以降も「欧米向けともに堅調 な荷動きが続いている」(商船三井)という。家電や家具、衣類などの一般消費財のほか、自動車部品やタイヤなど、自 動車関連の品目の輸送堅調が目立つ。現在も「荷積みはおおむね満杯に近い状況だ」(商船三井の小西俊哉常務執行 役員)という。船のスペースの供給は増加傾向だ。日本郵船によると、現在稼働しているコンテナ船の合計スペースは2 013年末時点で約1,725万TEUと前年比7%多くなっている。このため、海運会社の値上げによっていったんスポット運賃 が上がっても定着せず、下落に転じることが多い。コスト削減を狙った海運会社の動きも出ている。川崎汽船など内外 の船会社4社が加盟するCKYHグリーンアライアンスは、台湾の船会社のエバーグリーンをメンバーに加え、アジア発欧 州向けで共同運航を4月から始める。一部航路ではこれまで5社の路線合計で80近い港に寄っていたが、今後は寄る 港を2割ほど減らす。「港の重複を減らして効率化を図りコストを削減する」(川崎汽船)という。 ◆4航路平均1万㌦台回復 《ケープ市況、期間用船料も高止まり》ケープサイズ・バルカーのスポット用船市況が続伸 し、英ボルチック・エクスチェンジが公表している主要4航路平均用船料の21日付は前日比393㌦高い日建て1万144㌦と なった。同用船料が1万㌦台に回復するのは1月27日以来およそ4週間ぶり。豪州/中国間の鉄鉱石トレードの活発化を 受けて、太平洋ラウンドの気配値が約1万3,000㌦と直近の底値から約6,000㌦上昇した。期間用船料もスポット用船料の 先高感から1年物が2万5,000㌦前後に高止まりしている。ケープサイズの主要4航路平均用船料は昨年9月以降急騰し たが、年明けから急落。1月18日には7カ月ぶりに1万㌦台を下回った。中国が春節(旧正月)休暇から明けて、豪州の資源 メジャーなどの船腹手当てが活発している。ケープサイズ市況は例年、鉄鉱石トレードの季節的な変動から年明けに下 落し、年末に向けて上昇していく傾向がある。2012年と13年も年初に急落し、上半期は1万㌦を切る安値水準で推移し た。今年はケープサイズの竣工量が減少する一方、中国の鉄鉱石輸入量の増加が見込まれることから需給ギャップ改 善が一段と進展。スポット用船料の年間平均が同船型の標準的な採算ラインである2万-2万5,000㌦を上回ることが期 待される。ケープサイズの期間用船料は、スポット市況が下落しても先高観から高止まりしている。直近のマーケットレ ポートによると、2014年竣工の18万1,000㌦型が2万7,000㌦で11-13カ月用船され、その他にも2隻が2万4,000㌦台で1 年用船されている。 ◎内航海運 ◆内航貨物船の需給逼迫/復興・公共工事で需要急増 鋼材やセメントなどを輸送する内航貨物船の需給が逼迫し - 13 - ている。足元では、東日本大震災の復興需要の高まりや今年4月の消費増税前の駆け込み需要、公共工事の回復で輸 送量が急増しており、「荷物が運び切れない状況が続いている」(内航関係者)。消費増税後の反動減が懸念されるも のの、2020年の東京五輪開催の追い風もあり、中長期に内航輸送は堅調さが続くとの見方が支配的だ。内航鋼材船は 昨秋以降輸送需要が盛り上がっている。鋼材需要は昨年下期以降、建築向けの回復や東日本大震災の復興、4月の消 費増税を控えた自動車の駆け込み購入などで増加。日本鉄鋼連盟がまとめた2013年の粗鋼生産量は前年比3.1%増の 1億1,057万㌧と08年以来5年ぶりに1億1,000万㌧を超えた。同10-12月は8.6%増の2,814万㌧と増勢を強めた。経済産 業省の需要見通しでは14年1-3月の国内需要は3.7%増の1,581万㌧と堅調さが続く。需要が昨秋以降高まった一方で、 昨年9、10月の台風の影響で鋼材船の滞船が発生。そのため、「船が回り切れない状況が続いた影響で、まだ貨物を運 び切れていない」(内航船社首脳)と鋼材船不足が深刻な状況となっている。セメント輸送も震災の復興需要や公共投 資の増加などを背景に船腹の逼迫が続く。セメント協会がまとめた13年の国内販売量は前年比6.2%増の4,618万㌧で 3年連続で増加した。セメントの国内販売は、ピークの1991年には約8,500万㌧あったが、公共事業削減などで震災前に は4,100万㌧台まで減少。しかし、震災後に状況が一変した。国内需要減で減船を進めていたセメント会社や船社はセメ ント船の新造に転じた。しかし、供給が追い付かず「船腹と船員の不足が深刻となっている。予想以上に輸送需要が多 い」(オペレーター首脳)状況だ。石炭輸送も活況を呈している。福島第一原子力発電所事故後の全国的な原発稼働停 止による電源シフトで、石炭火力発電の位置付けが高まり輸送需要が堅調だ。政府が二酸化炭素(CO2)削減目標を下 方修正して石炭火力発電を後押ししていることや、石炭火力新設の動きもあり、内航石炭船の役割が一段と高まりつ つある。他方、鋼材船やセメント船では、増税前の駆け込み需要の反動減も予想されるが、「震災復興や東京五輪に向 けた需要もあり、それほど落ち込まず堅調が続くのではないか」(内航関係者)との見方が広がっている。 ◆解撤交付金申請/13年度「ゼロ」も対象船減、需要逼迫 日本内航海運組合総連合会が実施する解撤交付金交付 (引き当て資格の買い上げ)申請で今年度応募がゼロになる可能性が出てきた。来月1-20日を応募期間に2013年度最 終となる14年3月期解撤交付金交付募集が行われる。13年度の申請は買い上げ対象船自体の減少や、堅調な輸送需要 で貨物船を中心に船腹需給が逼迫している影響でゼロが続く。3月期申請船がなければ、同制度がスタートした1998年 度以降、年度を通じ交付金申請船ゼロという初のケースとなる。13年度の解撤交付金申請は暫定措置事業規程に基づ き、5、9、11月、14年3月に募集期間を設け組合員(内航事業者)から受け付けている。応募の減少は11年度以降続いてい る。申請が減っているのは買い上げ対象船自体が減少しているほか、東日本大震災後の環境変化で解撤交付金申請を せずに、船を持ち続ける船主が多くなっていることが影響していた。10年度は16隻・3万300対象㌧の応募があったが、 11年度は4隻9,900対象㌧、12年度は6隻・1万100対象㌧と低調だった。例年3月期は年度最終受付期で翌年度に交付金 額が漸減する前の応募であるため、申請船が多く出る傾向にある。ただ、今年は輸送需要が高まっていることなどを 背景に「対象船も少なくなったこともあり、申請船はほとんど出てこないのでは」(内航関係者)との観測が広がってい る。13年度の解撤交付金単価は1対象㌦(貨物船・重量トン、油送船・立方メートル、曳船・馬力など)当たり一般貨物船3 万6,000円、油送船1万8,500円、IMO船(特殊油送船)9,250円、曳船3,600円などと設定。 ◆内航荷動き沸騰 《中長期的に需給タイトも、運賃・用船料の上昇 焦点》内航貨物船の荷動きが沸騰している。東日 本大震災の復興需要や4月の消費増税前の駆け込み需要で船腹不足が顕在化。2020年の東京五輪開催を控えたイン フラ整備需要に加え、トラック運転手不足による国内物流の構造変化が起きており、中長期的に需給が引き締まるとの 見方も出ている。他方、燃料油価格の高止まりなど採算悪化要因があり、利益なき繁忙を避け「内航のデフレも脱却し なくてはならない」(内航関係者)との危機感から、内航オペレーター、船主にとっては今回の好況を運賃、用船料の上 昇につなげることが最大の焦点となる。《底堅い内需》「バブル崩壊後、最高のハイウエーブで完全に過熱」「近来にな い荷動き」「アべノミクス効果が色濃く出ている」内航関係者からは、ここ最近の荷動き活況ぶりを表す発言がぽんぽ ん出てくる。内航荷動きは昨秋以降に急加速。日本内航海運組合総連合会(内航総連)がまとめた主要元請けオペレー ター60社を対象とした輸送実績調査によると、13年12月の貨物船輸送量は前年同月比14%増の1,952万㌧だった。鉄鋼 や自動車、セメントなどの堅調な荷動きがけん引。同11月に続き、2カ月連続で対前年同月比2桁の伸びを示した。内需 の底堅さに加え、荒天での影響が少ないことも寄与した。内航荷動きの盛り上がりは「昨秋の台風の日本列島接近での 輸送障害の影響から出ている」(全国海運組合連合会の小比加恒久会長)。特に輸送需要が活発なのはセメントや自動 車、鋼材関係の原料輸送、石炭輸送、復興関係の砂・砂利船など専航船で、「鋼材船も輸送需要が高まっている影響を 受け、一般船マーケットにも波及している」(同)という。4月の消費増税による反動減も懸念されるが、「自動車では減 産の動きも出てきて影響もあるかもしれないが、建設向けなどの需要などは底堅い。谷は浅いのでは」との見方が支 配的だ。《MS進む状況に》内航輸送の堅調さは国内物流を取り巻く環境の変化も要因となっている。北部九州を発着す るフェリーやRORO船航路などでは消費増税前の駆け込み需要などに加え、運送事業者のトラックドライバー不足が顕 在化。九州から関西や関東方面への輸送で海上輸送へモーダルシフト(MS)が進む。「北部九州を発着する航路の多く の船で満船状態が続いている」(フェリー関係者)さらに12年4月に発生した関越自動車道の高速ツアーバスの事故を 受け、昨年10月から国土交通省や厚生労働省が共同でトラック事業者の過重労働防止・安全確保に動いていることも影 響している。ドライバー不足や安全強化の動きで、トラックの長時間運転は難しくなり、モーダルシフトが加速されてい る格好だ。モーダルシフトや内需増加などを背景に輸送ニーズが高まるなか、内航オペレーター、船主が求めるのは運 賃・用船料の上昇だ。内航運賃は低迷を続け、用船料もリーマン・ショック後に下落して以降なかなか浮上してこなかっ た。内航オペレーター首脳は「輸送需要増加に加え、燃料油が高止まりしているなか、運賃が上がっていくことに期待 - 14 - したい」と心情を吐露する。足元の需給タイトを反映して、長期契約でない輸送では一部に運賃値上げが容認される動 きもみられる。内航船主は用船料回復への思いを強めている。リーマン・ショック後に用船料水準が大きく下落し、船主 経営に取り巻く環境は厳しさが続いてきた。内航船の高齢化が進むなかで、新陳代謝を図っていくためには用船料上 昇が必要不可欠となる。今春の運賃・用船料更改交渉で回復がどの程度広がっていくか注目が集まる。 ◆暫定措置事業資金/借入残高400億円台に、内航総連 日本内航海運組合総連合会(内航総連)は内航海運暫定 措置事業での事業資金借入金について、今年度、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に対し67億3,800 万円を返済する。鉄道・運輸機構に借りている資金は政府保証付きの借入金。今回の返済で暫定措置事業での所要資 金の借入金残高は460億5,200万円と500億円台を割り込んだ。内航総連は2013年度下期資金管理計画について審議 し、下期に鉄道・運輸機構に対して借入金46億3,800万円を返すことを決めた。上期には21億円を返済しており、今年度 は67億3,800万円返すことになる。内航総連の上野孝会長は先週の政策委員会後の記者会見で、「暫定事業での借入 金が500億円の大台を割り込むなど順調に返済が進んでいる。今後も推移を見守っていきたい」との考えを示した。暫 定事業は、内航業界で30年以上続いた船腹調整事業の解消に伴い、財産的価値を持つ内航船の引き当て資格を内航 総連が内航事業者に解撒交付金を支払い買い上げて補償する目的で運輸相(現国土交通相)の認可を受け、1998年5 月から開始した。所要資金は金融機関などの融資を受け調達。新たに船舶を建造する内航事業者が内航総連に納める 建造納付金を借入金返済などに充てる仕組みで実施している。内航総連は暫定事業所要資金として、1,156億1,000万 円(老齢船処理事業含む)を借り入れた。このうち商工組合中央金庫など市中金融機関からの借入金530億円は12年度 中に返済を完了。現在、鉄道・運輸機構からの借入金返済を進めている。 ◆セメント船の輸送能力、5年ぶり高水準に/今年度末見通し セメント運搬船の輸送能力が5年ぶりの高水準になる見 通しだ。セメント協会(東京・中央)によると、今年度末の隻数は129と前年度に比べて5隻増えるほか、積載量も55万7,7 00㌧と同6%増える見込み。東北の震災復興や消費増税前の住宅着工の増加からセメントの需要が増えており、セメン ト各社は輸送、能力を強化している。今年度は太平洋セメントが1隻、宇部三菱セメントが3隻など各社が運搬船を増やし た。セメントは工場から全国の拠点に向け大半を海上で運んでいる。「船のフル稼働が続き荷繰りが厳しいので、船を増 やして対応する」(住友大阪セメントの石松堅物流部長)という。セメント各社合計で2014年度は5隻、15年度は6隻が建 造される予定だ。 ◆13年生産量、04年並みに減少 《国内エンジン11社、受注残は5年ぶりに増加》本紙調べによると、国内ディーゼル主 機メーカー11社の2013年の生産実績は、前の年と比べて15%減(生産馬力ベース)の865台・744万馬力となった。造船 所の建造量の減少を背景として舶用主機のエンジンの生産量は2年連続で1割以上減少し、04年並みの水準に落ち込 んだ。新規受注の増加で、受注残量は前の年と比べて2%増の944万馬力となり、微増ながらも金融危機後で初めて増 加に転じた。13年の生産量をベースにすると手持ち工事量は約1.3年分で、12年末と比べて約4カ月分増加した。本紙調 査はアンケート形式の任意回答。対象の舶用主機メーカーは、赤阪鉄工所、川崎重工業、神戸発動機、JFEエンジアリン グ、ディーゼルユナイテッド(DU)、新潟原動機、阪神内燃機工業、日立造船、マキタ、三井造船、三菱重工舶用機械エン ジンの11社となっている。調査は1975年から毎年実施している。エンジンメーカー11社の年間生産量は、01年から右肩上 がりに増加し、最盛期の2007年には1,100万馬力に到達。しかし、金融危機による新造船の需要低迷などを背景として、 08年から毎年3%程度の減少が続いていたが、造船所のスローダウンに伴う建造量の減少などを受けて2012年は、前 の年から11%減の874万馬力に減少。13年は減少幅がさらに拡大し、生産量は04年並みの水準となる744万馬力まで減 少した。一方、生産台数を04年と比較すると、13年が84台増となっており、1台当たりの馬力は約1割減少している。外航 船の主機として搭載される低速2ストロークエンジンの生産馬力ベースの上位3社は三井造船、日立造船、マキタ。台数 ベースでは三井造船、マキタ、日立造船となった。生産量は日立造船で3割減、川崎重工で4割減、三井造船で1割減と なるなど大手系メーカーの生産量の落ち込みが際立った。13年末時点の受注残量は、1年前と比べて2%増の944万馬 力だった。受注残量は2008年の2,429万馬力をピークとして減少を続けてきたが、新造船の需要回復を背景とした新規 受注の拡大によって5年ぶりに増加に転じた。メーカー別では三井造船が374万馬力で15%減となる一方、DUが4割増 の69万馬力、川崎重工が120万馬力で4割増加し、全体では微増にとどまった。受注残量の生産馬力べ-スの上位3社 は、三井造船が374万馬力、日立造船が126万馬力、川崎重工が120万馬力で、台数ベースでは三井造船が188台、川崎 重工が85台、日立造船が77台で、川崎重工と日立造船が括抗した。 ◆大規模更新・修繕に約3兆円、15年間で橋梁の床版・桁取替などを実施 東・中・西日本高速道路会社3社は22日、3 社が管理する高速道路構造物の大規模更新・大規模修繕計画(概略)を発表した。各社が管理する供用延長約2万㌔ (上下線別、連絡施設含む)の道路を対象に、今後15年程度の間に約3兆円を投じて実施する。概算事業費は、大規模更 新が1兆7,600億円(延長240㌔)、大規模修繕が1兆2,600億円(同1,870㌔)と試算した。3社が管理する道路のうち、供 用から30年以上が経過しているのは総延長の約4割。橋梁やトンネルなどの構造物も老朽化が進行している。3社は共 - 15 - 同で「高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会」(委員長=藤野陽三・東大大学院持任教 授)を立ち上げ、老朽化した構造物の対策を検討。その結果を踏まえて、今回の大規模更新と修繕をまとめたもの。 ◆13暦年鉄骨需要は約532万㌧ 《回復基調から堅調推移へ、大型商業施設・倉庫が牽引》国土交通省の建築着工統 計をベースとした昨年12月の鉄骨推定需要量は44・6万㌧となった。この結果、13暦年鉄骨需要は累計で約532・4万㌧ となり、対前年同期比15・9%増の需要水準となった。世界的な金融危機などで記録的な落ち込みをみせた09暦年実績 から4年連続で400万㌧台の低位需要が続いたが、500万㌧台まで回復した。リーマン・ショック前の600万㌧台には届か ないが、回復基調から堅調推移になったといえる。昨年は、政権交代後の年初はやや低調だったが、春先から震災の影 響で延期されていた物件の再開、大型商業施設を中心とした店舗、物流施設などが好調に出件してけん引、月別でも3 月以降は45万㌧台前後で推移。さらに中小案件の耐震改修需要の増加や、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要が 民間の教育研究・文化施設、医療・福祉施設や娯楽施設などでみられたことから、秋以降、ファブは全グレードで繁忙状 態に突入した。4月以降も、首都圏を中心に大型再開発物件が本格化するとともに、依然として倉庫や店舗が堅調に出 件すると見込まれ、東日本大震災の復興や東京五輪需要も控えており、鉄骨需要量の増加は続くとみられている。ここ にきて急激な需要の伸びから、リーマン・ショック以降、ファブ各社の倒産・廃業・撤退、工場閉鎖・集約などが進んだた め、供給能力不足に陥るという懸念材料が急浮上してきた。 ◆推定鉄骨需要量は44・6万㌧ 《17カ月連続で前年上回る》 国土交通省の12月の建築着工統計調査報告によると、 全着工床面積は前年同月比10・0%増(前月比3・3%減)の126万3,700平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が同8・ 4%増(同1・8%増)の435万3,000平方㍍、SRC造は同22・1%増(同57・1%増)の21万9,000平方㍍。全床面積中のS造、SR C造の比率は36・2%、推定される鉄骨需要量は約44万6,000㌧の水準(前年同月は約41万㌧、※表2)と17カ月連続で前 年を上回った。 ◆工作機械受注、内・外需ともに4割増 日本工作機械工業会(日工会)が12日発表した1月の工作機械受注実績(速 報値)は1,000億3,100万円で、前年同月比39・6%増と4カ月連続のプラスになった。5カ月連続で1,000億円の大台を維 持。円高の是正など1年前と比べて事業環境が好転し、内・外需ともに同約40%増と高い伸び率を示した。一方、前月比 は7・2%減で2カ月ぶりのマイナス。年始休暇があり営業日数が少なかったことに加え、外需を中心に四半期末の12月 に受注を多く獲得した反動減も出た。内需は339億6,900万円で、前年同月比41・4%増と7カ月連続のプラス。外需は66 0億6,200万円で、同38・7%増と3カ月連続のプラスになった。外需比率は同0・5ポイント低下の66・0%。前月比は内需 が7・5%減で2カ月連続のマイナス、外需は7・0%減で2カ月ぶりのマイナスとなった。昨年の1月は受注総額が34カ月ぶ りに800億円を下回るなど、内・外需ともに受注が底の時期だった。その後、円高是正の効果や政府の設備投資支援策 が奏功し、年後半にかけて内需が急回復。外需も北米向けが堅調に推移しているほか、中国向けも一部に持ち直しの動 きがあり、2014年1月の前年同月比の大幅増につながった。日工会事務局は「1月は季節要因によるマイナス効果で総額 が1,000億円を切ることも想定していたが、思った以上に回復基調が強かった」と指摘している。2月は中国向けで春節 休暇による受注の停滞が予想され、好調な内需や北米向けでどこまで補えるかが焦点となる。 ◆工作機械8社受注、1月28%増406億円/本社まとめ、5カ月連続プラス 日刊工業新聞社がまとめた工作機械主要8 社の1月の工作機械受注実績は、前年同月比28・7%増の406億3,300万円と5カ月連続のプラスになった。内需は4カ月 連続で35%を超える伸び幅を記録。外需も4カ月連続で2ケタ増と回復傾向が続いた。一方、年始休暇があり営業日数 が少なかったことや、四半期末の12月に受注が膨らんだ反動で、前月比は総額で2・8%減と3カ月ぶりのマイナスとな った。内需は前年同月比37・7%増の156億6,200万円、外需は同23・6%増の249億7,100万円だった。外需比率は同2・5 ポイント減の61・5%。前月比は内需が0・3%減、外需が4・2%減だった。内需は前年に大口受注があった反動減などによ り3社が前年同月実績を下回った。ただ「産業機械向けを中心に幅広い業種で需要があった」(東芝機械)、「自動車関 連を中心に徐々に回復してきた」(ツガミ)など全般的には増勢を維持した。牧野フライス製作所は「航空機関連の需要 が旺盛だった」としている。 ◆工作機械、輸出が急回復/1月受注額39%プラス、北米向け好調 日本工作機械工業会(東京・港)が12日発表した1 月の工作機械受注額(速報値)は前年同月比39.6%増の1,000億3,100万円で、4カ月連続で前年同月実績を上回った。 全体の7割弱を占める輸出は1月が北米向けをけん引役に38.7%増と急回復した。1月の輸出は660億6,200万円だっ た。2013年12月の22%増から伸び率が大きく増えた。低迷していた中国でも徐々に受注が増え始めていることも寄与 しているもようだ。国内向けは41.4%増の339億6,900万円。製造業の収益改善による設備投資意欲の高まりが中小企 業にも広がっている。 ◆工作機械受注、1月40%増1,005億円 《日工会まとめ、内・外需回復底堅い》日本工作機械工業会(日工会)が18日 発表した1月の工作機械受注実績(確報値)は、前年同月比40・3%増の1,005億4,500万円と、4カ月連続のプラスになっ た。例年1月は年始休業があり稼働日が少ないなどの季節要因で受注額が下がる傾向にあり、前月比は6・7%減と2カ 月ぶりのマイナス。ただ金額は5カ月連続で1,000億円を上回り、内・外需ともに回復の底堅さを示した。内需は前年同 月比42・8%増の343億円で7カ月連続のプラスになった。政府の「ものづくり補助金」関連需要や消費増税前の駆け込 み需要に一服感がみられたが、堅調に推移。一般機械、自動車、電気・精密機械、航空機・造船・輸送用機械の主要4業種 - 16 - すべてが2ケタ増を記録した。外需は同39・1%増の662億4,500万円で3カ月連続のプラスになった。中国向けはEMS(電 子機器製造受託サービス)関連のスポット受注があり、同2・2倍の172億9,100万円に拡大。北米向けはカナダでスポット 受注があり、航空機・造船・輸送用機械関連が同2・7倍の36億7,000万円と、初めて30億円を超えた。同日会見した日工 会の花木義麿会長(オークマ社長)は「稼働日が少ない中で1,000億円を超えたことは非常に大きい。手応えのあるス タートを切れた」と評価した。 ◆環境装置受注、2年ぶり増加 昨年4%増 日本産業機械工業会が13日発表した2013年12月の環境装置受注実績 は、前年同月比52・6%増の574億8,400万円で3カ月ぶりに前年同月を上回った。民需は減少したものの、全体の8割以 上を占めた官公需が都市ゴミ処理装置が好調で、同90・7%増の491億9,400万円と伸びた。13年1-12月累計は前年比4 ・3%増の5,238億円で、2年ぶりに前年を上回った。12月の民需は同27・9%減の68億3,400万円。内訳は製造業が食品、 鉄鋼、その他向けの産業廃水処理装置の減少で同17・5%減の47億5,1OO万円、非製造業が電力向け排煙脱硫装置や排 煙脱硝装置の減少で同44%減の20億8,300万円だった。外需は排煙脱硝装置や産業廃水処理装置の減少で同38・9% 減の14億5,600万円。装置別では大気汚染防止装置が同58・6%減の20億1,000万円、水質汚濁防止装置が同21・4%減 の161億2,900万円。ゴミ処理装置は同3・3倍の392億円。 ◆昨年の産機受注、8%減4兆7,742億円 《産機工まとめ 内需は2年ぶり増》日本産業機械工業会(産機工)が13日発 表した2013年(1-12月)の産業機械受注実績は、前年比8・9%減の4兆7,742億4,000万円となり、2年連続で前年実績を 下回った。内需は2年ぶりにプラスに転じたが、鉱山機械の減少などで外需が4年ぶりにマイナスとなった。内需は同1・5 %増の2兆8,526億8,300万円、外需は同20・9%減の1兆9,215億5,700万円だった。内需は製造業向けが2年連続で前年 割れとなったが、農林漁業や建設、運輸など非製造業向けが2年ぶりにプラスとなった。外需はオセアニアが減少した ことが響いた。主要約70社の産業機械輸出は前年比22・4%減の1兆8,004億1,200万円となり、4年ぶりのマイナス。オ セアニアが減少した。単体機械はアジア、中東、欧州、北米、ロシア・東欧が増加した。一方、12月単月の受注実績は前年 同月比5・7%減の3,964億4,600万円となり、3カ月連続の前年同月割れ。内需は2カ月連続で、外需は3カ月連続でそれ ぞれマイナスとなった。内需のうち製造業向けは横ばいだったが、非製造業向けが5カ月ぶりにマイナスとなった。主 要約70社の輸出契約高は同10%減の1,318億1,500万円となり、3カ月連続で前年同月割れとなった。 ◆産業機械受注額、3ヵ月連続減/12月5.7%マイナス 日本産業機械工業会(東京・港)が13日発表した2013年12月の 産業機械受注額は、前年同月比5.7%減の3,964億4,600万円だった。マイナスは3カ月連続。内需でボイラー・原動機が 落ち込み、外需はキャンセルが響いた。内需は5.6%減で、非製造業向けが29.1%減と大きく落ち込んだ。単価が高い電 力など向けのボイラー・原動機が4割以上減少した。外需はキャンセル分でのマイナスが370億円強あり6.0%減。ただ アジアは前年同月比2倍と3カ月ぶりプラスだった。同日発表した2013年1-12月の産業機械受注は前年比8.9%減の4兆 7,742億円だった。 ◆13年2年ぶりプラス、環境装置受注額 日本産業機械工業会(東京・港)が13日発表した2013年の環境装置受注額 は、前年比4.3%増の5,238億1,200万円。2年ぶりに前年実績を上回った。 ◆民生用電子機器、国内出荷額1月25%増 電子情報技術産業協会(JEITA)が20日発表した1月の民生用電子機器 の国内出荷額は、前年同月比25・3%増の1,145億円だった。プラスは2カ月ぶり。薄型テレビなど映像機器が22・9%増の 519億円と大幅に伸びた。 ◆「白物」高額品ほど売れる/消費増税後「反動小さい」見方も 《冷蔵庫・エアコン…、1月出荷額34%増》4月からの消費 増税を控え、駆け込み需要による白物家電の出荷増が一層鮮明になってきた。日本電機工業会(JEMA)が24日発表した エアコンなど白物家電の1月の国内出荷額は前年同月比34・7%の大幅増。増税分の影響が大きくなる高額の高機能商 品ほど売れ行きが伸びており、出荷するメーカー、実売する量販店の双方とも好調が続いている。1月の出荷額は1,772 億円で前年同月比プラスは8カ月連続となる。昨年11、12月も2桁増だったが、それぞれ12-13%増。年が明けて増税時 期が近づき、販売ペースが一気に上向いた。製品別で最も出荷増が顕著なのが冷蔵庫で82・7%増の317億円。容量401 ㍑以上の大型製品が好調で、金額では前年同月の2倍を超えた。調査会社のGfKジャパン(東京・中野)によると、2013年 1月時点で冷蔵庫販売台数のうち501㍑以上の機種の比率は約15%だったが、今年1月には約20%に上昇した。2月も高 額の冷蔵庫が好調、パナソニックの場合、店頭価格30万円以上の最上位機種「ⅩGシリーズ」が前年の同等の機種の約 5倍のペースで売れている。省エネ性能も評価されている。ルームエアコンは462億円で47%増。洗濯機も278億円と3 8・9%増えた。三菱電機はエアコンの最上位機の販売台数が、昨年末から1月にかけて同等機種の前年同期の2倍以上 だった。家電量販店の店頭もにぎわう。ビックカメラは1月の家電の販売額が前年比3割増。2月1-23日は6割増だった。 ヨドバシカメラも「3月にかけて販売は加速する」(マルチメディアAkiba)と話す。購入を検討中の消費者が多く、まとめ 買いも増える見通し。懸念される4月以降の反動減は、1997年の増税時に比べ小さいとの見方が広がってきた。ヨドバ シの藤沢昭和社長は「増税分以上に価格が下がる可能性がある」と予測。ビックカメラの宮嶋宏幸社長は「価格が下が るのを待っている消費者もいるようだ」と話す。前回の増税時と比べるとネットなど価格や性能を見極める手段が多様 - 17 - 化し、増税だけを購買の基準にしていないという。 ①乗用車 ◆国内4輪生産1,000万台割れ/昨年 日本自動車工業会(自工会)がまとめた2013年(1-12月)の生産・輸出実績によ ると、4輪車の国内生産は963万70台(前年比3・1%減)となり5年連続で1,000万台を割り込んだ。12年に終了したエコカ ー補助金の反動により13年前半の生産が低調に推移し、2年ぶりに前年水準を下回った。足元では各社の新車投入や消 費増税前の駆け込み需要で前年水準を上回るが、届かなかった。車種別では軽乗用車の生産が168万2,550台(同4・2 %増)で過去最高。バスは13万2,681台(同8・6%増)で過去2番目に高い水準となった。一方、普通乗用車や小型乗用 車、普通トラックが減少した。13年の輸出は2年ぶりに前年を下回り、467万4,667台(同2・7%減)となった。海外で現地生 産化が進む小型乗用車が同22・2%減と大幅に減少した。13年の2輪車の国内生産は国内販売の低迷と海外への生産移 管により、56万3,169台(同5・4%減)となり、3年連続で過去最低を更新した。輸出は43万897台(同10・1%減)。12月の4 輪車の国内生産は軽乗用車が過去最高となるなど全力テゴリーで前年同月を上回り、78万6,609台(前年同月比12・2 %増)。4カ月連続で前年同月を上回った。4輪の輸出は5カ月ぶりに前年を下回り、37万9,276台(同5・1%減)となった。 ◆新車販売29・4%増 1月 日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽協)が3日発表し た2014年1月の新車販売台数は、前年同月比29・4%増の49万6,105台となった。消費増税前の駆け込み需要が寄与し た。登録車の販売台数は同27・5%増の29万2,446台で、5カ月連続の前年同月超え。「アベノミクスと新車効果、駆け込 み需要の複合要因」(自販連)が効き、68年の統計開始以来6番目の高水準となった。車種別では乗用車が同28・0%増 の26万4,278台、貨物車が同24・4%増の2万7,587台と伸長。バスは前年同月実績を割った。軽自動車は同32・1%増の2 0万3,659台で7カ月連続の前年同月超えとなり、1月として過去最高を記録した。2-3月も「伸び率は分からないが、プ ラスになることは確実」(全軽協)という。1月の内訳は乗用車が同34・9%増の16万9,338台。駆け込み需要のほか、背高 ワゴンの販売好調が続いている。 ◆1月新車販売3割増/「軽」全社2ケタ伸び、最高 消費増税前の駆け込み需要を背景に、新車販売の伸びが鮮明だ。 1月の軽自動車販売は全メーカーが前年同月比で2ケタ増となり、全体でも3割強増え、1月として過去最高を記録した。 登録車を含めた全体の販売台数も同29・4%増の49万6,105台と大きな伸びとなった。全国軽自動車協会連合会(全軽 自協)によると、1月の軽の販売台数は同32・1%増の20万3,659台だった。7カ月連続で前年実績を上回った。スズキが8 日に多目的スポーツ車(SUV)タイプの新型軽「ハスラー」を発売するなど、「増税前の駆け込みに加え、新車投入が(需 要拡大を)けん引した」(全軽自協)という。メーカー別ではシェア首位のダイハツ工業が同33・9%増、2位のスズキも同 28・8%増と、大きな伸びを記録した。日産自動車は三菱自動車と共同開発した新型軽を昨年から投入した影響で伸び 率が大きくなった。日本自動車販売協会連合会(自販連)によると登録車も1月は同27・5%増の29万2,446台と5カ月連 続で前年実績を上回った。昨年以降、小型車「フィット」やミニバン「オデッセイ」など相次ぎ新車を投入したホンダが前 年同月の約2・3倍に伸ばした。足元では「人気車種に販売が集中しており、生産が間に合わない可能性がある」(自販 連)。駆け込み需要はピークを迎えたとの見方もある。さらに4月以降の反動減は確実とみられ、「(反動減の)規模や長 さを注視する必要がある」としている。 ◆駆け込み需要加速 消費税率が5%から8%になる4月が迫り、増税前にモノを買っておこうという駆け込み需要 が盛り上がってきた。1月の新車販売台数は前年の同じ月より3割も増え、家電も好調だ。食品や飲料各社はピークとみ る3月に品不足でチャンスを逃すまいと、増産に乗り出す。《1月の新車販売、3割増》東京都内の自動車販売店には先週 末、新車を求める客が途切れなかったという。日産東京販売ホールディングスは、「年が明けてから、消費増税を意識す るお客さんが急に増えた」(広報)。日本自動車販売協会連合会などが3日発表した、1月に国内で売れた新車(軽自動 車を含む)は49万6,105台で、前年同月よりも29・4%増えた。特に軽自動車は同32.1%増の20万3,659台と、1月では過 去最高になった。軽自動車だけでなく、高級車にも駆け込みは起きている。独メルセデス・ベンツの日本法人は、前年比 で7割増を記録。同社の上野金太郎社長は「計画していたよりも、駆け込みが早くきている感じだ」と話す。ただ、駆け込 み需要の取り込みにはメーカー間でばらつきがある。ホンダは64・4%、ダイハツ工業は33・7%伸びた。トヨタ自動車は1 9・5%増だった。一方、三菱自動車は9・1%、富士重工業は6・1%増にとどまった。明暗を分けているのは、「有力な新型車 があるかどうかだ」(業界関係者)。また、すでに工場がフル稼働している場合には「増産したくても増産できない」(メ ーカー幹部)という。駆け込みはいつまで続くのか。自販連は「今がピークかも」という。消費税は受注した時点ではな く、ナンバープレートを取得した時点での税率が適用される。そのため、これ以上受注しても生産が追いつかず、3月ま でに納車出来ない懸念が出始めているためだ。 ◆乗用車8社、精算14%増 1月国内5ヵ月連続プラス 《駆け込み寄与、海外は減》トヨタ自動車など国内乗用車8社が 26日まとめた1月の国内生産台数は、前年同月比14・7%増の81万7,017台と5カ月連続でプラスになった。新型車を出し た日産自動車は2012年5月以来、20カ月ぶりに増加に転じた。各社は消費増税前の駆け込み需要に、休日出勤による増 産などで対応しており、2月も高い生産水準が続く見通しだ。日産の国内生産は13・7%増の8万360台だった。昨年12 月、多目的スポーツ車(SUV)「エクストレイル」の新型車、自動ブレーキ機能を標準搭載したミニバン「セレナ」の改良車 を売り出した効果が出た。両方の車種を手掛ける日産の九州工場(福岡県・苅田町)は1月に3-4日の休日出勤を実施し - 18 - ており「2月も生産水準は高い」という。昨年は複数の車種の生産をロシアや米英に移管し、国内生産減少の一因になっ た。ホンダの伸び率は8社の中で最も大きい65・3%となった。昨年11月に軽自動車「Nワゴン」、同12月にSUV「ヴェゼル」 を発売。Nワゴンは室内の広さや力強い走りが特徴で、1月の国内新車販売ランキングで5位となった。8社合計の海外生 産は昨年6月以来、7カ月ぶりのマイナスだった。東南アジア最大の市場であるタイの減速が続いている。12年末まで実 施した政府の購入補助金が需要を先食い、政情不安も消費者の購買意欲をそいでいる。ホンダは補助金に合わせた新 型車投入の反動が響き、同国の生産は76・9%減と7カ月連続のマイナス。三菱自動車も28・4%減り、トヨタは0・7%減だ った。トヨタグループ(ダイハツ工業、日野自動車の合計)の世界販売は76万9千台と5・9%伸び、1月として過去最高を 記録した。トヨタは寒波に見舞われた米国市場の減少を中国市場の販売増で補った。 ◆1月、車8社の世界生産 《4.9%増、5社が最高更新》乗用車メーカー8社が26日に発表した2014年1月の生産・販売・ 輸出実績によると、8社合計の世界生産は前年同月比4・9%増の220万3,033台だった。トヨタ自動車、日産自動車、ホン ダを含む5社が1月単月として過去最高を記録した。軽自動車販売の好調持続や消費増税前の駆け込み需要を受け、国 内生産が同14・7%増の81万7,017台となった。海外も中国などで販売が順調に伸び、世界生産台数を押し上げた。国内 では生産・販売ともに8社が前年同月実績を上回った。従来輸出していた車種を海外でつくる傾向は続いているもの の、新車効果や軽を含む小型車の好調、駆け込み需要で国内販売が底上げされた。日産は新型「エクストレイル」「セレ ナ」などの台数が増え国内生産が同13・7%増と20カ月ぶりに前年同月実績を上回った。販売では軽の売れ行きが好調 なダイハツ工業やスズキが1月単月として過去最高となった。米国では1月初旬の寒波の影響でトヨタとホンダが生産、 販売ともに前年同月実績を下回った。ホンダは寒波により部品が停滞するなど操業が停止し、当初計画より1万1,000台 の生産の遅れが発生した。日産は米国での生産、販売ともに好調で1月単月として過去最高を記録した。中国の生産で はトヨタ、日産、ホンダが前年同月実績を上回った。しかし販売ではトヨタとホンダが前年実績を上回ったが、日産は稼 働日数の減少により前年同月実績を下回った。自動車購入優遇策の終了による反動減と政情不安の影響で需要が低 迷するタイでは、各社の販売が減少した。 ◆「駆け込み」備え、自動車フル生産/休日返上、残業延長も 4月の消費増税前に車を買おうとする「駆け込み」に対 応するため、乗用車メーカーが「目いっぱい」の生産を続けている。注文を受けても、3月末までに車両登録が済まない と、消費者は8%の税金を払わなくてはいけなくなるからだ。2月の大雪による生産停止分を取り戻すため、増産にさら に拍車がかかっている。メーカー8社が26日に発表した1月の生産や輸出の実績には、「目いっぱい」感があふれた。国 内生産は、8社とも前年同月を上回り、合計では約15%増の81万7,017台。海外工場での生産比率を高めている日産自 動車が前年実績を上回ったのは、2012年5月以来、1年8カ月ぶりだ。「目いっぱい」の生産を支えるのは休日出勤や残 業だ。たとえばホンダは既存の主力工場に加えて、昨夏に稼働した寄居工場(埼玉県)でもフル生産。前年比で6割以上 も生産台数を増やし、去年1月は全く必要が無かった主力工場での休日出勤も2日行った。輸出の割合が大きい富士重 工業やマツダは、あえで輸出を減らしてまで、国内販売に回す車を増やしている。値引きも少なくて済むため、「今は利 益が出る国内に振り向けている」(富士重の高橋充専務)。独フォルックスワーゲンや伊フィアットの日本法人も、売れ筋 の車種を優先的に日本に回すよう、本社と掛け合っている。追い打ちをかけそうなのが今月中旬の大雪による一時的 な生産停止だ。群馬県にある富士重の工場では、2日分の生産が止まって約5千台の生産が遅れた。「残業時間を延ば すなどして対応する」(同社)というが、すでに限界に近く、3月末でも約3千台分の遅れは残りそうだ。ダイハツ工業や ホンダなどでも「影響が出ないようにしたいが、追いつけるかどうかは精査中」だという。 ②トラック ◆トラック販売1月、50%増 トラック業界筋がまとめた1月の普通トラック(積載量4㌧以上)の販売台数は前年同月比 50・9%増の4,873台となった。前年同月を上回るのは7カ月連続。建設業界を中心に公共事業に伴う需要が伸びたほ か、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」効果による荷動きの良さも需要を押し上げる要因となった。また環境規制 に伴う買い替え需要も下支えした。車種別に見ると、大型トラックは同52・0%増の2,928台、中型トラックは同49・3%増 の1,945台だった。消費増税の影響について業界では駆け込み需要はあるが、「厳密にどのような影響が出ているかを 判断するのは難しい」としている。 ◆過去最高の昨年、下期は減少 《鉄鋼の輸出 失速気味、アジア低迷 国内を優先》鉄鋼の低迷輸出が失速してきた。 日本鉄鋼連盟か4日まとめた2013年の鉄鋼輸出量は前年比2・3%増の4,345万6千㌧と3年ぶりに過去最高を更新した が、7-12月の下期は半期で最大の輸出量だった1-6月から5・8%減。アジアを中心に供給過剰や需要伸び悩みで市況が 低迷しているためで、国内鉄鋼各社は堅調な内需に支えられる国内への供給を優先している。13年下期の輸出量は2,1 07万8㌧で、前年同期と比べても2・9%減少した。円安で日本の鋼材の価格競争力は高まっているが、足元では輸出増 に結びついていない。仕向け地で落ち込みが目立ったのはタイで前年同期を10・5%下回った。自動車購入を補助する 制度が終了し、新車販売が落ち込んだのが響いた。最大の輸出先である韓国は2・8%減、台湾も4・1%減だった。鋼材の 品種別では自動車の車体などに使われる亜鉛めっき鋼板が13・5%減。自動車各社の現地調達に対応し、鉄鋼メ一カー が東南アジアなどでの亜鉛めっき鋼板生産を拡大している影響が大きい。めっき鋼板の母材になる熱延広幅帯鋼の輸 出は2・2%伸びた。アジアでは中国を中心に生産過剰の状態が続いており、鋼材の市況低迷が深刻になっている。一 - 19 - 方、日本国内は震災復興需要のほか、自動車生産などの回復で鋼材需要が堅調。そのため輸出が伸び悩んでいても、 新日鉄住金やJFEスチールといった鉄鋼大手はフル生産が続く。各社とも増産で輸出を伸ばす選択肢はまだあるが、 採算悪化につながる可能性があるため「輸出には慎重」(JFEスチール)という。一方、国内では13年に入って減少傾向 だった輸入が増加に転じてきた。13年10-12月の普通鋼材の輸入量は前年同期比7・6%増。円安による競争力低下で伸 び悩んでいたが、日本メーカーの供給余力が乏しくなったことに加え、世界的にみても日本の鉄鋼市況が堅調なこと から海外メーカーが供給を増やしている。過去最高となった13年通年の輸出を仕向け地別にみると、中国が前年比0・3 %増と微増ながら3年ぶりに増加に転じた。12年に尖閣諸島問題で輸出が滞った反動もある。ベトナムは12・2%増で、輸 出先として米国(前年比3・7%減)を抜き5位に浮上した。 ◆内需3年ぶり増、昨年の鋼材用途別受注/建設・製造業用伸びる 日本鉄鋼連盟がまとめた2013年の普通鋼鋼材の 用途別受注高は前年比2・8%増の7,259万8,000㌧で2年連続のプラスだった。建設用が継続して堅調で製造業用も復 調した。内需は同5・1%増の4,594万㌧で3年ぶりのプラス、輸出は同1・0%減の2,665万8,000㌧で2年ぶりのマイナス。 建設用は同10・9%増の1,233万9,000㌧で4年連続のプラスとなり1,000万㌧超も4年連続。製造業用は同0・5%増の1,95 9万9,000㌧と3年ぶりのプラス。船舶用は同8・7%減と不振だったが、自動車用が同0・7%増、建設機械など産業機械用 も同10・9%増と伸びた。 ◆粗鋼生産量、1月6・1%増 日本鉄鋼連盟が21日発表した1月の粗鋼生産量は前年同月比6・1%増の940万1千㌧だ った。首都圏でのマンション開発や復興需要の拡大で好調な建材がけん引。鉄筋に使う小形棒鋼が5・9%増、ビルのは りに用いるH形鋼が9・2%増となるなど大きく伸びた。消費増税前の駆け込み需要で高水準な生産が続く自動車など、 製造業向けも堅調だった。1月の粗鋼生産が900万㌧超となるのは2011年以来、3年ぶり。 ◆1月、粗鋼生産量、5カ月連続プラス/建設・自動車向け堅調 日本鉄鋼連盟がまとめた1月の粗鋼生産量は前年同 月比6・1%増の940万1,000㌧となり5カ月連続のプラスだった。引き続き建設関連や自動車を中心とする製造業向けが 堅調。月内に高炉1基が改修工事に入ったものの高水準を維持した。2013年4月-14年1月累計では9,333万7,000㌧とな り、13年度で1億1,000万㌧超は確実な情勢だ。1月の1日当たりの粗鋼生産量は30万3,300㌧で前月比で0・7%増だっ た。高炉系の転炉鋼が前年同月比5・2%増の742万3,000㌧で5カ月連続、電炉鋼は同9・5%増の197万8,000㌧で6カ月 連続のプラスだった。品種別では建設向けの条鋼類が同9・2%増の165万3,000㌧で11カ月連続、製造業向けの鋼板類 も同1・0%増の492万8,000㌧で5カ月連続のプラス。条鋼類の主要品種ではH形鋼が同9・2%増の34万9,000㌧で20カ 月連続、小形棒鋼も同5・9%増の73万9,000で㌧6カ月連続のプラス。鋼板類では最大のウエートを占める広幅帯鋼が 同0・5%増の393万5,000㌧、自動車向けの亜鉛メッキ鋼板が同4・4%増の107万㌧でともに5カ月連続のプラス。厚板も 造船の輸出船契約が復調し、同4・3%増の94万㌧で3カ月ぶりにプラスに転じた。また建設機械など産業機械向けが多 い特殊鋼熱間圧延鋼材も同14・1%増の171万4,000㌧と5カ月連続のプラスとなった。2月は豪雪の影響で物流面に支障 が出ているほか、建設者工の遅れの影響も指摘されている。だが鋼材需要は総じて底堅さを維持しそうだ。 以 - 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