Metalworking World 2/2008

北京の建設ラッシュ
オリンピック建築
A BUSINESS
TECHNOLOGY
MAGAZINE FROM SANDVIK COROMANT
サン
ドビッAND
ク・コロマン
トが発信するビジネス&テク
ノロジー情報誌
#2/2008
メレシ社、
チップリサイクル
で環境に貢献
切削加工の改善が
医療の世界を
押し上げる
大学+企業=
瞬時の成功
エアバスA320用
エンジンの前に立つ、
呉第二工場長
大谷宏之氏
IHI社:
航空宇宙産業の革命家
EDITORIAL
未来の地平線
成功を手にすることは難しく、失うのは簡単
です。成功に所有権はなく、
それは今日の実
うか?」
「お客さまのコスト削減や利益性を
実現するための技術革新が未来に何をもた
績よりも明日の行動によって評価されます。 らすのか?」
サンドビック・コロマントでは、
お客さまの成
功への貢献度合いによって当社の成果を測
この課題を解決するため、
当社と他の先端
先事項なのです。
ールド大学の先進加工技術研究センター
ります。
お客さまの成功こそが、
当社の最優
エンジニアリング会社はイギリスのシェフィ
(AMRC)と提携し、新しい素材のテストをし
日本のIHI社の相馬第二工場では、優位性へ
ています。AMRCに建築中の世界有数の先
ョンに信頼を寄せています。
スイスでは、
サ
のメタル・ワーキング・ワールド誌面でお読
の道としてコロマント・キャプトのソリューシ
ンドビック・コロマントと工作機械メーカー
のトルノス社との提携が、両社の競争力をと
もに引き上げました。
「お客さまに常に最善
進研究施設「未来型工場」
については、本号
みいただけます。
「サンドビック・コロマントでは、
のソリューションを提供し、他社より常に一
歩リードして頂くための鍵は、
このようなパ
お客さまの成功への貢献度合い
ートナーシップを作りあげることにあるので
によって当社の成果を測ります。」
ャーのフィリップ・シャルルは語ります。
ここでは、科学理論、環境基準を満たすソル
今日の成功がすぐに昨日のニュースになるよ
の難題への新たなソルーションを開発してい
す。」
とトルノス社の医療技術分野マネージ
うに、一歩先を行くことはさらに重要性を増
しています。切削工具の技術を常に向上させ
るため、私たちは自問し続けます。
「お客さま
のトータル加工コストの経済性を更に改善
できないだろうか?」
「他に方法はないだろ
ーション、
および製造原理を適応し、製造上
ます。我々はさらなる飛躍を信じています。
未来を心に思い描くには、存在しないものに
ついて想像する必要があります。本号では、
これから行われるオリンピックが北京の街並
みをどのように変えてきたかがお分かりいた
だけるでしょう。豊かな文化遺産と将来のビ
ジョンとのバランスを取ることに力が注がれ
ました。過去の実績に自信を持ちながらもよ
りよい明日を信じることが出来るとき、
このよ
うな時こそ成功がもたらされるのです。
マッツ・ジョンホルト
Your success in focus,
2
METALWORKING WORLD
ケネス・スンド
ABサンドビック・コロマント代表取締役社長
目次
スイスの工作機械メーカー
トルノス社のコルタト・レオン氏
が、完成に近い機械の中を
メタルワーキングワールド 2008年第2号
チェック
テクノロジー
ダーリン・バンセロー/ GETTYIMAGES
6 高精度の医療機器加工
人体の内部で生涯使用されるのであれ、治療
の手助けとして使われるのであれ、医療部品の
製造はあらゆるレベルにおいて高精度が必要
とされる。
サンドビック・コロマントが提供する
製品、性能、
サポート体制は、医療機器部品の
中核を担っている。
90 肩削りフライス加工が大きな変革を迎えて
いる理由の一つは、生産技術者が新しい加工
要求を反映して小型機械を選んでいるというこ
とである。
20 コストを削減する
新たなツール
コロミル490は、エンドミル工具の新しいシリ
ーズの第一弾で、取り分け低切り込みの小、中
ロットでの正面及び肩削りフライス加工のコス
トを削減する。
新世代のコーティングチップの新材種と独創
的なチップ形状の組合わせにより、常に高品質
な部品を提供する。
30 微小な動きにさようなら
ねじ切り旋削加工において、
スローアウェーチ
ップの微小な動きはよくある破砕の原因であ
る。昨今のスローアウェーチップに関わる技術
の飛躍的進歩によってチップをツールホルダー
やカッターシートに正確に位置づけする新しい
手法が開発された。
コロスレッド266によって
ねじ切り旋削加工の生産性が向上する可能性
が広がった。
16
4 メタルワーキング・
ニュース
30
9 IHI社:空への道のり
16 小物部品加工機械の
大いなる成功
22 メレシ社、環境配慮が
利益に
25 メタルワーキング・
ニュース
26 AMRC:利益を生む
32
© CCTV/OMA レム・クーハーズとオレ・シェーレン 15 最先端の正面フライス加工
パートナーシップ
32 北京を一新する
壮大な建築
METALWORKING WORLDメタルワーキングワールドはサンドビック・コロマントABがお届けするビジネス&テクノロジーマガジン。
811 81 Sandviken, Sweden, 電話 +46 (26)26 60 00。年3回、米語、英語、チェコスロバキア語、中国語、デンマーク語、オランダ語、
フィンラン
ド語、
フランス語、
ドイツ語、ハンガリー語、イタリア語、日本語、韓国語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、スウェーデン語各言語で発
行され、サンドビック・コロマントの世界中の顧客に無料で提供されています。出版はスウェーデン、ストックホルム、Spoon Publishing
ISSN 1 652-5825。
編集主幹兼スウェーデン出版法による発行人: Pernilla Eriksson 契約担当: Christina Hoffmann 編集管理人: Johan Andersson
アートディレクター: Erik Westin 写真編集: Christer Jansson 技術記事編集: Christer Richt 編集補佐: Valerie Mindel, Asa Brolin
コーディネータ: Mia Gustafsson 言語コーディネータ: Sergio Tenconi レイアウト: Ulrika Jonansson 製版: Markus Dahlstedt
原稿持込みは受け付けておりません。本誌の記事は許可なく転載できません。許可の申請についてはメタルワーキングワールド気付シンジケーション
マネージャー宛にお送りください。メタルワーキングワールド掲載の論説や記事は、サンドビック・コロマントや発行人の見解であるとは限らないこと
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本誌に関するご意見やご質問を歓迎します。
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印刷: 中国。Papyrus AB社製マルチアートマット紙 115gとマルチアートグロス紙200gを使用し、ISO14001適合、EMAS登録。
コロマント・キャプト、
コロミル、
コロカット、
コロプレックスMT、
コロターン、
コロドリル、
コロボア、
コログリップ、ハイドログリップ、オートTAS、GCはす
べてサンドビック・コロマントの登録商標です。
メタルワーキングワールドは情報提供を目的に発行されています。掲載情報は一般的
内容であり、助言と見なすこと、決定のための根拠とすること、具体的な事例について
使用することを推奨するものでありません。掲載情報のご利用は使用者の責任におい
て行われるようお願いいたします。サンドビック・コロマントは、直接損害、付帯損害、結
果損害、間接損害を問わず、メタルワーキングワール
ドに掲載された情報の利用を事由として発生するい
かなる損害についても責を負うものではありません。
METALWORKING WORLD
3
ニュース
スーパーソフトウェアのもたらす
時間の節約
工具データを効率良く管理することは容
TDMデータ・グラフィックス・ジェネレー
易なことではない。
しかしサンドビック・コ
ターを使用した。
ロマントのパートナーであるTDMシステ
「TDMデータ・グラフィックス・ジェネ
ムズ社の、効率的な工具データ管理ソフ
レーターにより、
たった6週間で2,450以
トを導入すれば話は別である。充填及び
上もの部品に関するデータをデータベー
包装用システムや機械の販売を世界規
スに入力することができました。」
とクロ
模で展開するクロネス社は、その工具管
ネス社のCAM技術担当役員、
マクシミリ
理にTDM社のソフトを導入したおかげ
アン・クラクスナー氏は言う。
「ジェネレーターは
ドイツ、ニュートラブリングにあるクロ 高速で、
操作が簡
ネス社が新しい工具データプロジェクト
単です。」
に着手したときの狙いは、企画や生産部
で手作業入力に比べて70%もの時間を
短縮することができた。
門にデジタル化された工具データを供給
することだった。生
マクシミリアン・クラクスナー
展示会 2008年
・SIAMS スイス、
ムーティエ
5月20−24日
・Farnborough Air Show
イギリス、
ファンボロー
7月14−20日
・IMTS アメリカ、
シカゴ
9月8−13日
・AMB ドイツ、
シュトゥットガルト
9月9−13日
・ITF Plovdiv ブルガリア、
プロブディフ 9月29日−10月4日
・Vienna-Tec オーストリア、
ウィーン 10月7―10日
・CIMES 中国、北京 10月9−13日
・TATEF トルコ、
イスタンブール
10月14−19日
・MD&M Minneapolis アメリカ、
ミネアポリス 10月22−23日
・JIMTOF 日本、東京
10月30日−11月4日
・Prodex スイス、
バーゼル
11月18-22日
クロネス社、CAM技術担当役員、
マクシミリア
ン・クラクスナー氏
産部門での工具フ
「メーカーのカタログから得る工 具
ローを正確に計画
データをエレクトロニクス統合したこと
するためには 、
により、通常入力に要する時間を70%短
N Cプログラミン
縮することができました。
ジェネレーター
グでの工程計画か
は高速且つ操作が簡単で、
データ配信は
ら加工に至るまで
正確です。その上、様々なフォーマットで
の全行程でデータ
の3Dグラフィック画像も得られます。」
WMXブレーカのワイ
パーチップは、最高の
表面仕上げを保ちな
がら送りを上げる
フローが裏付けさ
れる必 要がある、
という見識によってこのような変革が後
押しされた。その解決策には、工具デー
クロネス社−世界規模の強さ
クロネスグループは、斬新な充填及び包
タ管理(TDM)ソフトウェアが最適だっ
装用システムを開発し、
プロダクトサポー
た。
トを行っている。グループには、
アメリカ、
工具や部品のデータを手入力するの
カナダ、中米、西インド諸島のクロネス社
ではなく、クロネス社は工具データや部
を含み、国内外にいくつかの支店を展開
品のマスターデータを記録的な速さでデ
している。クロネス社はドイツのニュート
ー タ ベ ース に 入 力 す る の に 優 れ た
ラブリングに本部を置いている。
ワイパーチップで無駄な時間なし
ワイパーチップの新しいWMXブレー
動の発生が少ないので「滑らかな音」
カにより、今まで以上の送り速度と理
が安全性を保証する。
サンドビック・コ
想の表面仕上げが実現できる。
り揃えているが、2008年後半にこの
ことなく部品加工数を増やし、生産性
新ブレーカが導入されると更にその種
を高めることができる。
類が増える予定である。
加えて、ワイパーチップWMXは振
4
METALWORKING WORLD
ロマントは多様なワイパーチップを取
それにより、表面仕上げで妥協する
コロマント・キャプトが基準を打ち立てる
サンドビック・コロマントが1980年代後
サンドビック・コロ
半に開発し、1990年に売り出したツー
マント、工具システ
ルホルダ、コロマント・キャプトは近々国
ムマネージャー、
ロ
際標準規格のISOを取得する予定であ
ナルド・シュライ
る。
バー
ISOへの応募は審査登録機関によっ
て2007年の終わりに認められ、2008年
や複合加工機にとって安定した安全なシ
今年度を持ってサンドビック・コロマン
多様な機械を使用するメーカーには、標
トの持つ特許は失効する。ISO認証の取
準工具インターフェースとして大変有用
得により、特許失効後もこの工具システ
であることが証明されました。」
ムの持つ特異な機能性を保護することが
できる。
「 ISO認証によってコロマント・キ
「今後ずっと、これが
第二四半期に登録された。
「今後ずっとコ
ロマント・キャプトが優れたシステムであ
中心的なシステムにな
り続けるという指針を、
この認証によって
要になります。」
とシュライバーは言う。
ステムとなります。また生産工程の中で
ャプト自体が持つ厳しい公差に対応でき
る高い公差と形状を維持することができ
ます。」
とシュライバーは言う。
るでしょう。」
サンドビック・コロマント、工具システム
マネージャー、
ロナルド・シュライバー
コロマント・キャプトであれば、加工や
得ることができました。」
とサンドビック・
コロマントの工具システム担当マネージ
ャー、ロナルド・シュライバーは言う。
「コ
ロマント・キャプトは独創的な構造を持っ
ていて、旋削、
フライス加工、穴あけ加工
機械の種類にかかわらず、ホルダは一種
類ですむ。
これにより異なる種類の機械
間で工具交換が可能となり、多種の機械
や工程のあるメーカーにとって大変有益
なシステムとなる。
「通常であれば、
このよ
ご存じ
今日の ですか?・・
スロー
・
ア
チップ
は、19 ウェー超硬
57年に
導入さ
最初に
れた物
に比べ
の生産
て5倍
能力が
ありま
す。
うな場合、様々な異なる種類の工具が必
カナダの産業界を活性化させる新計画
サンドビック・コロマントは北アルバータ
ネスや産業界と長期にわたる関係を築い
工科大学(NAIT)とマクマスター加工技
てきました。」
術研究所(MMRI)と合同で、カナダの産
もう一つのパートナーシップにより、
カ
業界の生産性を向上させる二つのプロ
ナダの最も大きい大学の加工技術研究
グラムを後援している。
NAITは会計士から溶接工に至るま
所の一つであるMMRIは、サンドビック・
コロマント・カナダのお客さまに焦点を
で、様々な職業分野の研修と技術開発プ
向けた研究開発施設としての機能を果た
ログラムを提供している。
この中には専
している。
門的な加工技術プログラムもある。新し
「サンドビック・コロマントとMMRIに
いパートナーシップの一部として、
このプ
は、生産性の向上、生産コストの削減や
ログラムは今後10年間サンドビック・コ
品質の改善をもたらす加工上のソリュー
ロマント加工技術センターと呼ばれる。
ションを共に実践してきたという折り紙
「サンドビック・コロマントはコースの
付きの実績があります。」
とフィリップと
全期間を通して、実地訓練と理論の研修
緊密に仕事をしてきたMMRI加工システ
プログラムに携わります。」
とサンドビック
ム研究所、研究マネージャーであるユー
・コロマントの営業及び生産性開発担当
ジーン・ング氏は言う。
シニアマネージャーであるブライアン・フ
サンドビック・コロマントとMMRIは過
た。サンドビック・コロマントと大学間で
ィリップが言う。
「アルバータ州の特に力
去にいくつかの顧客研究プロジェクトで
行われている様々なパートナーシップに
強い成長性を見せるカルガリーとエドモ
協 力したことが あり 、参 加 企 業 に は
ついては、26ページの記事をお読み下さ
ントンの間の地域においてNAITはビジ
200万カナダドルもの節約効果があっ
い。
北アルバータ工科大学(NAIT)は、
サンド
ビック・コロマントと共同で一流の加工技
術の研修を提供する
METALWORKING WORLD
5
テクノロジー
エレイン・マックラレンス
高精度の
医療機器加工
課 題:現代医療における人工移植技術の要求レベルに応える部品を製造するにはどうすればよいのか?
解決策:難削材の加工に関する知識に基づいた最適な工具を使用する。
人体の内部で生涯使用されるのであれ、治療の手助
レス鋼(316LVM)やチタンといった一連の生体適合
けとして使われるのであれ、医療部品の製造は難削
性のある材質を、
より広い用途で使用する可能性を
を美しい表面仕上げで厳しい公差を満たす製品に
材を高い精度と厳しい公差で切削するという課題を
模索している。
しなければならない点は全てに共通している。切りく
抱えている。
サンドビック・コロマントは、
ボーンスクリューなど
どの部品も切削時に様々な課題があるが、難削材
サンドビック・グループの中では、
サンドビック・バ
ずをコントロールしバリ発生を抑制し、
それぞれの
イオラインがこのような用途に合う独自の材質を提
部品の的確な特徴を作り出す配慮が必要である。
の医療部品を製造する際に重要な小物部品加工に
供し、更にサンドビック・コロマントは難削材の加工
ついての製品、能力、
サポート体制に対して多くの投
について幅広い製品プログラムと知識を備えており、
資をしている。医療現場ではコバルトクロム、
ステン
専門家との緊密な連携のもと様々な側面から生産
れぞれ特殊な形状をしている。旋削、溝入れ、ねじ切
工程を理解するよう努めてきた。既にこのような知識
りなど加工において、鋭い刃先、厳しい要求公差を
は、
ヒップジョイントの主要部品であるボールや球面
満たし、
そして難削材加工の大量生産に適している
カップ加工の解決法として人口関節置換に役立って
工具が必要である。
利点
・生産性の向上
いる。丸チップを利用して球面旋削を行う加工方法
ボーンスクリューといった医療部品は往々にして
細く長い、
そして人体への移植に適合するようにそ
サンドビック・コロマントは外径、
内径加工、
フライ
・大量生産への経済的な解決策
は、産業界から広く受け入れられており、生産性は
ス加工や穴あけ加工といった工程に必要な小物部
・信頼性と安定性に優れた加工
2倍になり、工具コストは1/3になった。
品加工用工具を幅広くカバーしている。
この工具群
・切りくず処理やバリの制御
・ミクロン単位の要求公差への対応
ヒップジョイント部品製造のた
めの丸チップ技術などの効果的
な工具ソリューション
人工ヒップジョイントはボール
とカップからなり、高精度な製
造が求められる
6
METALWORKING WORLD
ケーススタディ:有効な変革−本当の成果
歯科用器具製造会社
医療用部品製造会社
歯科用器具製造会社に採用されたクイックチ
あるドイツの会社では、
コロターンXSとコロカ
ェンジシステムにより、歯科用ドリル部品製造
ットXSツーリングにより多様な小型医療用部
時の工具交換時間が3分から20∼30秒に短
品の製造が最適化された。
縮された。同社で使われる材質はチタンやステ
ンレス鋼である。
結 果 、製 造 時 間が 年 間 6 7 時 間 短 縮され
それらの部品は極めて微細で品質に問題が
生じやすく、外径は1ミリメートルしかなく0.3ミ
リメートルの内径穴あけ加工が求められた。
4,000ユーロ以上のコストが削減された。加え
サンドビック・コロマントの工具設定により
て工 具 当たりの 部 品 加 工 数 が 1 , 0 0 0 から
同社の生産性は飛躍的に改善し、加工時間に
2,500に増加した。
して57時間、13,000ユーロの年間経費を削
減 することが できた 。また 、年 間 生 産 高 は
50,000部品に増加した。
技術情報
工具設定:
・スイス型自動旋盤の工具交換を迅速に
行うクイックチェンジシステム
・コロターン107のチップ技術
・コロカットXSとコロターンXS
・コロドリル デルタCドリル
・超硬ソリッドエンドミル
コロミルプルーラ
チップと材種:
・ステンレス鋼やチタン用GC1105
・鋭い刃先を持つDCET
スローアウェイチップ
ボーンスクリューなどの医療
部品は、加工が困難な素材で
できている。
総括
はスイス型自動旋盤のクイックチェンジシステムにも
ップは薄膜PVDコーティング技術によって得られる
組み込まれており迅速なチップ交換を容易にする。
非常にシャープな刃先を持ち、
こうした加工において
製造工程で厳しい公差と高い精度が要
一般的な旋削または、小径の内径加工にはコロ
抜群の性能を発揮する。
コロターンXSの旋削用チッ
求される。人工移植で使用される生体適
ターン107が最適である。加えてボーンスクリューな
プは高精度加工用に作られている。
コロミルプルー
どに使われている素材に対応するため、GC1105が
ラやコロドリルデルタCシリーズの超硬ソリッドドリ
特別に開発された。
コロカットMBやコロターンXSに
ルやエンドミルは小物部品加工を対象としている。
より旋削、溝入れ加工やねじ切りが可能であり、直
径わずか0.3ミリメートルの穴も一連の小径加工用
医療機器産業では大量生産体制下でも
合性のある素材は切削が難しく、そのた
めには小物部品加工についての十分な知
識が必要である。
サンドビック・コロマント
はこの成長産業のニーズに応えるソリュ
ーション開発のために積極的な投資を行
❯❯ 詳細は最寄りの営業所へお問い合わせください。
っている。
工具で対応できる。
それに加えて、新開発のDCETチ
METALWORKING WORLD
7
ニュース
起爆剤となった
グローバル・パートナシップ
SAFRANグループのSNECMA
カミト社のペーター
・オガストソン氏と
ゴラン・ヘルトステド
氏、
そして教授で
AKDAS社社長の
ニヤジ・アクダス氏
トルコ:カミト社の
切り拓く新天地
トルコの鋳造工場AKDASは、鋳造場とし
いものでした。我々は、AKDAS社が今年
ては世界で初めて、
スウェーデンのカミト
中にも初の注文を受けるものと期待して
社のキャストミックスツーリング法を使用
います。」
スウェーデン、
ハステヴェダ市に
する資格を得た。
あるカミト社の鋳造工場、
カミト・テクノロ
カミト社は、
スウェーデンのオロフスト
ジー・センターも、
2008年中旬には認
ロム市にある小さな会社である。同社は、
定を受ける予定である。
「しかし、当分の
新型車の車体用プレス金型(成形金型)
間はこれで打ち止めです。」ヘルトステド
製造に、
自社が特許を有するキャストミッ
氏は言う。
「認定された鋳造工場は、
その
クスツーリング法を用い、本格的な生産
能力を確立するまでに時間を要します
社の会計主任) は説明する。
社(フランス)は、航空機や打ち上げロケ
オムニテック社はCFM56のチタン
ット、人工衛星のエンジンの設計、開
製タービンシャフトを生産するため、台
発、製造を行なう、世界有数の大手航
湾メーカー、
ジョンファード社の3メー
空エンジンメーカーである。
中国、蘇州
トルの水平型ST130BX旋盤を投入し
の新工場に配備する3台の旋盤にコロ
た。
「シャフトは径400ミリメートルなの
マント・キャプトを採用する
に対し長さは1,800ミリメー
という同社の決定は、
ヨーロ
トルもあるので、
カッティング
ッパからアジアに至る国際
ヘッドはできる限り高剛性で
協力への道を切り開いた。
ある必要があるのです。」
と、
ゴルチェ氏が説明する。
「そ
ピエール・ネゾンデによっ
こで、
16タレットにコロマント
て創設され同氏が社長を勤
・キャプトC6を使いました。」
めるフランスの工作機械デ
ィーラー、
オムニテック社は、
ブルーノ・ゴルチェ
エアバスA320やボーイング737をは
「私たちは、SNECMA社
と共に台湾ですべてをテストし、納入前
じめとするさまざまな航空機に使われ
にプロセスを実証しました。」
と、
ゴーテ
ているCFM56ジェット・エンジンの部
ィエアは言います。「その工程は、緊密
品を製造するのに用いる旋盤の最後の
で多国籍なものでした。」「プランニン
3台を蘇州工場に設置し終えた。
「コロ
グ、設計、調整から取付けにいたるま
マント・キャプトの剛性がもたらす有益
で、全フェーズに渡るツール・サプライ
性は歴 然 、という観 点から、S N E C -
ヤーとの緊密な共同研究は、
このよう
MA社の旋盤にはぜひともコロマント・
な国際的規模のプロジェクトを成功さ
キャプトを装備してほしかったのです。」
せるためには重大な要件なのです。」
と、
ブルーノ・ゴルチェ氏 (オムニテック
への第一歩を踏み出した。
カミト社は、生
「私たちの持つメソ
するため、
サンドビック・コロマントと協力
ッドに寄せられる
した。
関心は非常に
トルコ最大の民間製鋼所のAKDASド
大きいです。」
クムは、
キャストミックスツーリング法(同
産開始に必要とされるプレス金型の加工
に要する時間とコストを可能な限り圧縮
じ鋳造シリンダーの中で工具鋼とねずみ
鋳鉄を溶かす工程)の使用が認められた
世界で初めての会社である。
カミト社の事業開発を担当するゴラン
ゴラン・ヘルトステェト、カミト社 の
ビジネス・デベロッパー
が、
この種の事業は、立ち上げるのも同じ
・ヘルトステド氏は、AKDAS社が認定さ
くらいに時間がかかるものです。それは、
れた2007年のクリスマス前に現場を訪
複雑で手間のかかる作業なのです。」新型
ねた。
「トルコの自動車産業界には、
自社
車で実施されたテストによれば、
カミト社
のプレス金型部署を持つ会社が何社かあ
のメソッドならば、通常一年がかりの作業
り、
また、
プレス金型下請け会社も数多く
となる車体用プレス金型の製造に要する
存在します。数社を訪ねてみたところ、
こ
リードタイムを約4分の1も節約すること
のメソッドに寄せられる関心は非常に高
が出来る。
8
METALWORKING WORLD
3台の旋盤で長さ1.8メート
ルのタービンシャフトを加工
する。
このためカッティング
ヘッドはできる限り高剛性で
ある必要がある
空を飛ぶ
投資
日本。株式会社IHI(以下IHI社)が日本の二つの工場において大規模な機
械投資を行う必要に迫られたとき、
サンドビック・コロマントの協力を求め
た。それはすぐに最も回収率の高い効率的なプロジェクトとなった。本誌は
設備投資が行われた二つの工場を訪れ、すでに大きな成果を上げている
投資内容に目を向けた。
福島
相馬
❯❯
日本の巨大企業
日本のIHI社は様々な分野で事業を
行っている巨大企業である。航空エ
東京
広島
呉
ンジン部門はその一つに過ぎない。
同社の二つの工場は、福島県東部に
ある相馬市と、広島県南部にある呉
GETTY IMAGES
市にある。
METALWORKING WORLD
9
❯❯
独特な
ビジネス
呉工場:
IHI社の呉工場では、航空エンジンシャフトで世界をリードする地位を維
持するために、生産性を上げる努力が常に行われている。単に標準的な
解決方法に甘んじることはない。
「この工場が深刻な問題に直面したら、世界が止まっ
てしまうのではないかと自問することがしばしばありま
す。」
と広島県南部にある呉市のIHI社呉第二工場工場
といった要素が相まって、航空宇宙産業の急伸につな
呉第二工場の工場長
がった。
大谷宏之氏
ジェットエンジン用シャフトの世界のトップメーカー
長の大谷宏之氏は思いをめぐらす。それはあながちあり
であることが呉第二工場の強みである。全てのエンジン
得ない話ではない。航空機エンジンシャフトとは全ての
に不可欠であるこの長いシャフトを製造することは難し
エンジンに不可欠な重要部品であるが、
この工場では
く、必ずしも利益の上がる事業ではない。
しかしこの専
世界の大型航空エンジンシャフトの半分が製造されて
門性こそが、IHI社が競合他社を凌いで優位に立ってい
いる。
る由縁である。
「IHI社で製造されるシャフトは全世界に出荷されて
「お客さまは、当社がジェットエンジン用部品の全製
います。」
と大谷氏は言う。
「 多くのジェットエンジンが当
造工程を取り扱えることをよくご存じなので、当社を選
社のシャフトを使用しています。万一生産体制に問題が
んでいただけるのです。」
と大谷氏は説明する。
生じるようなことがあれば、航空宇宙産業に甚大な影響
しかし高い信頼性を維持するためには、呉工場は常
に顧客のニーズに応えなければならない。
このために、
ーカーである以上、生産段階でのいかなる問題にもお
大谷氏は、更なる機械への投資、新たな従業員の採用、
客さまの要求に応えるためならば、費用の多少にかかわ
工程の外注などあらゆる手段をとってきた。
しかし最終
らず対処する用意があります。」
日本のIHI社は、様々な分野で事業を行っている重工
業の巨大企業である。収益の1/4は航空エンジン部門
が占め、その分野で自慢の工場を有している。一つが福
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を与えるでしょう。世界をリードするジェットエンジンメ
追いつかないということは、周知の事実である。燃料価
的には、すでにある設備の中で生産性を向上しなけれ
ばならない。
サンドビック・コロマントとのパートナーシッ
プは、生産性を向上させるために不可欠であると大谷
氏は言う。
島市の東にある相馬第二工場であり、もう一つは呉第
格の上昇による航空各社の小型でエネルギー効率が良
「これからの4年間で、当社にある殆どのATC機(自
二工場である。
い機種の選定、中国や他のアジア諸国の急速な工業
動工具交換式加工機)をタレットタイプにグレードアッ
化、新型のボーイング787への需要の急激な増大など
プします。工場面積に限りがあるのでリードタイムを短 ❯❯
昨今の航空宇宙産業の急成長により、生産が需要に
10
METALWORKING WORLD
先端をゆく
コロマント・キャプトはIHI社の期待に沿うものであっ
た。航空エンジン部門が急成長産業の要求に応えるた
めに不可欠な、時間の節約が可能になった。
「コロマント・キャプトを市場に売り出したのと同時
にIHI社にアプローチしました。IHI社の行う全ての種類
の加工工程にぴったりのツーリングシステムであると確
信したからです。」
とサンドビック株式会社コロマント事
業部・営業技術部の川向利和は説明する。
大型航空機のエンジンシ
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ャフトの製造リーダーで
旋削の熟練オペレーター
「航空宇宙産業では複雑な形状をした特殊部品が
沢山あり、工具を頻繁に交換する必要があります。自動
車産業に比べると最低でも10倍の交換頻度になるかも
しれません。」
また、
コロマント・キャプトによって工具交
換時間が平均8分から1分にまで短縮されるので、タレ
ット内にある工具一つにつき生産を約30時間多く行う
の松村隆司氏と宇高忠
ことができると付け加える。その結果、数ヶ月で投資回
三氏。
GE90コーンシャフ
収をすることができる。
トを前に
コロマント・キャプトのもう一つの大きな利点はその
安定性にある。航空宇宙産業で必要な耐熱合金の切削
では切削抵抗が通常の切削に比べて2倍以上になる。
川向によるとコロマント・キャプトを使用すると切削時
の振動を抑えることができる。
さらに、川向によるとIHI社にとってサンドビック・コロ
マントのサイレントツールは、
「 安定した加工と高い生産
性をもたらす唯一の解決策で、サイレントツールによっ
て多くの利益を得ることができます。」長いエンジンシャ
フトの内側を切削するのにはリーチの長い工具が必要
である。チップの破損、品質や生産性の低下をもたらす
振動を、サイレントツールの防振ボーリングバーによっ
て除去することができる。
「IHI社には標準的なサイレントツールを長い間ご利
用いただいています。」
と説明する。
「 1990年に特注の
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長いサイレントツールがIHI社に納入され、その後ご利
用いただいているサイレントツールの数は増え続けてい
ます。」
トレント700
コンプレッサー・ディスク
METALWORKING WORLD
11
❯❯
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呉工場
「工場面積に限りが
あるのでリードタイ
ムを短縮し、機械を
効率的に使用しなけ
ればなりません。」
呉第二工場の工場長大谷宏之氏
縮し、機械を効率的に使用しなければなりません。機械
への設備投資が完了した時点で当社の全てのNC旋盤
にはコロマント・キャプトが搭載されている予定です。」
と
言う。
コロマント・キャプトの役割は軽視できない。
「信じられないほど時間が節約されます。」
と呉工場
トを搭 載した6 台のタレット
任務は、工具の性能を最大限にするためにその設計や
の治工具設計者である波多進一氏は言う。
「今まで一つ
型NC旋盤をたった二人の作
形状を調整することである。
の機械の工具交換に10分かかっていたものは1分にな
業員で操作している。
り、一時間要していたものは、10分に短縮されました。
こ
のような迅速な工具交換により、格段に少ない作業員で
製造を行えるようになりました。」
実際、呉第二工場の工作現場ではコロマント・キャプ
最近、桑原氏は技術情報交換のためにスウェーデン・
生 産 性を向 上させるため
サンドビケン市にあるサンドビック・コロマントの本社に
のもう一つの鍵は技術革新で
招待された。そこで桑原氏はサンドビック・コロマントの
ある。航空宇宙産業では標準規格の製品というものは
技術者に対して、刃先性能、大量切削時のスピードや高
使われない。IHI社の治工具設計者である桑原賢吾氏の
硬度材の切削を向上させることなど10の要求をした。
波多進一氏
「この時点で問題点を洗い出し、全てを解決させるこ
GETTY IMAGES
呉第二工場の治工具設計士の
桑原賢吾氏
とが大切です。」
と言う。
「今回の会議によって、IHIとサン
ドビック・コロマントは顧客とサプライヤーという関係か
ら、共に働くパートナーになることができました。」
キャロル・ホイ
呉第二工場
課題の概略
工場のニーズ:
中型から大型のジェットエンジン用シャフトや部品製
造の最適化。
増大する受注に対応するためのジェットエンジン用部
品の増産。
ソリューション:
コロマント・キャプトを全面的に採用。長い部品の切削
には防振ボーリングバー「サイレントツール」
を使用。
結果:
遊休時間の削減と生産性の向上。
振動の低下と一貫して高品質な製品。
従業員数の節減。
12
METALWORKING WORLD
GETTY IMAGES
コロマントキャプトの
カッティングヘッドを
交換する相馬第二工場の
オペレーター、塚野麻美氏
当時は急場しのぎだった解決策が工作機
械の世界を変えようとしている。
全ては手に持った一本のハンマーとひら
めきから始まった。
相馬第二工場部長である樫村竜也氏は、
自ら物事を進め
ることを好み、物事の本質を見極めるタイプの男である。
5年前、呉工場の3つの生産ラインを担当していたが、
そのうちの1ラインでコロマントキャプトの長いブレード
(双型)
をもつ深溝側面倣い加工用ツールに共振による
振動が生じるという問題に繰り返し
直面した。工具デザイナーの波多進
一氏と共にブレード部をハンマーで
たたき、振動を抑えるために穴を開
けるべき箇所を探し、
自分たちでブ
レード部に穴を開けた。
GETTY IMAGES
手作りの
解決策
相馬工場:
それは独自の解決策だったが、結
果は良好だった。更に、
ブレード部に
カウンターウェイトを加えることによ
樫村竜也氏
る防振効果の可能性を探るため、
ブレードにマイクロメー
タを付け、
ブレード部をハンマーでたたき、
その効果を実
証してみせた。
この現場での解析・実験をもとにサンドビック・コロマ
ントは今では世界中で使われている長いブレード部の振
動を抑える防振ソリューションの開発に世界ではじめて
成功した。樫村氏は、
このような提案をしたことを殆ど覚 ❯❯
METALWORKING WORLD
13
GETTY IMAGES
❯❯
「我々は、賢く機械への
投資を行います。市場
に出たばかりの最新鋭
の機械ではなく、当社
のニーズにあったもの
だけを買うのです。」
相馬第二工場部長の樫村竜也氏
❯❯ えていないという。急場を工夫でしのぐことは日常的なこ
オペレーターの鈴木麻由氏、
とだからである。
班長の皆川貴夫氏、
プロセス・エンジニアの
「現場を止めないために必要なことをしているだけで
川村威史氏(左から)
す。」
と言う。
樫村氏は同社の相馬工場の25台の機械にコロマント
・キャプトを搭載するという実利的な決断をした。
「我々は、賢く機械への投資を行います。市場に出た
ばかりの最新鋭の機械ではなく、
当社のニーズにあったも
のだけを買うのです。」
と説明する。
ジェットエンジンの製造においてコロマント・キャプト
が不可欠であるという樫村氏の考えに基づき2008年
効率的な生産をハード、
ソフト、
ヒューマンという3つの主
要な柱を土台にもつ家に例える。
「高品質、厳格な納期、費用効率を屋根とするのであ
れば、3本の柱は屋根を支えるために必要不可欠です。一
つでも柱が短ければ、屋根が堂々と建つことありません。
7月に完成予定の新相馬工場への同製品の導入が決ま
ニーズに合った機械に工夫を盛り込んだNCプログラム
った。新工場ではいずれコロマント・キャプトを搭載した
を搭載し、数名の知識が豊富な作業員が効率的に操作
旋盤のみを使用して、
ジェットエンジン用の大型タービン
すれば、
より高度の家ができるのです。
この実現こそが当
・ディスクを製造する予定である。
この新工場では27台
社のお客さまに高品質な製品を合理的な価格で期日通
のタレット式旋盤と14台のATC機が設置される予定で
りに出荷することを可能にするのです。」
昨年6月にスウェーデン・サンドビケンでの技術交換に
ある。
樫村氏は、新工場がIHI社の効率的な生産体制のモデ
出席した樫村氏は、
サンドビック・コロマントに対してリク
ルになるとみている。新工場は、現在600人が働く相馬第
エストをする。
「我々の業界では原材料がコストの50%を
二工場に比べ、面積は1/2であ
占めます。
よって試験で原材料を無駄にすることは避けな
るが、従業員数は1/5の120人
ければなりません。
サンドビック・コロマントの推奨切削
程度で操業する予定である。
条件と現場での適応切削条件には大きなギャップがあり
「コロマント・キャプトによっ
ます。
サンドビックの推奨切削条件の範囲外で、
その工具
て作業員を置く必要がなくなり
がどのような性能を示すかというデータをいただければ、
ます。
これが新工場の成功の鍵
試験における時間と原材料の節約につながります。」
となります。」
と相馬第二工場長
である根本徹氏は説明する。
このような情報交換こそが信頼のおけるパートナーシ
相馬第二工場の工場長
樫村氏は相馬新工場のより 根本徹氏
14
METALWORKING WORLD
ップの真の証なのかもしれない。
キャロル・ホイ
相馬第二工場
課題の概略
工場のニーズ:
小型から中型のジェットエンジン用部品やロケット
ターボポンプ製造の最適化
ソリューション:
コロマント・キャプトを全面的に採用
結果:
工具交換時間が短縮。従業員数の節減
テクノロジー
リントン・マクレイン
21世紀の肩削り
フライス加工
課題:多様性を高め、小ロットフライス加工でのコスト削減をはかる。
解決策:多様性に富んだ、高精度の肩削りフライス加工により、生産性の向上と
コスト削減を実現。
肩削りフライス加工は、世界中で行われているフラ
イス加工の半分以上を占めている。加工現場では
生産性の向上とコスト削減のために重要な変革を
進めており、
この分野は急速に成長する見込みであ
最新鋭のコロミル490は肩削り・
正面フライス加工の新基準を打
ち立てた
る。加工現場は既に目的のために無駄を省き、適応
している。
90 肩削りフライス加工が大きな変革を迎えて
いる理由の一つは、生産技術者が新しい加工要求
を反映して小型機械を選んでいるということであ
る。
では、90 肩削りフライス加工と小型機械との
間にどのような関係があるのか?高品質でニヤー
ネットシェイプの鋳造や鍛造が多用されるようにな
ったため、部品の仕上げ加工が少なくてすむように
なった。部品の仕上げ加工が減ると、低切込みで小
径サイズの工具が使用されるようになる。多くの場
小、中規模の加工現場では生産ロットが縮小傾
新しいコロミル490のような洗練されたデザイ
合このような小形工具は、肩削りフライス工具でテ
向にあり、殆ど使われることのない、或いは短い生
ンを有し精密性があり、
そして卓越した多様性を特
ーパーサイズが#30や#40のスピンドルの小型機
産工程でしか使われないような非能率工具を含む
徴として持つ、性能の高い肩削りフライス工具が開
発されている。
械に搭載される。そして、小型機械であれば作業ス
多種の工具を持つことは望まない。逆に、工具在庫
ペースが節約でき、投資や加工コストの削減につ
や保管場所を減らし工具の柔軟性を高めるために
ながる。
は、
より少なくて多様性に富んだ工具が好まれる。
コロミル490の特徴の一つに、チップブレーカ
形状が優れているため、
ラジアル方向の切削抵抗
が低いことがあげられる。
これは、肩削りフライス
総括
加工で過剰なラジアル方向の切削抵抗が働いた
フライス加工現場では、高品質でニヤーネット
ストの削減につながる。生産ロットが小口化す
シェイプの鋳造や鍛造のワークが増えてきて
るとより少なくても多様性の富んだ工具が必
いる。
これにより表面仕上げの工程が減り、低
要となってくる。
このような多様性は逆に在庫
切込みで小径サイズの高精度肩削りフライス
や保管場所を減らし、加工現場での柔軟性を
工具が必要となってくる。
これらは、場所をとら
高める。
コロミル490はこのような要件を満た
ない小型機械に搭載されるので投資や加工コ
すよう開発された。
時に、
ワークと工具のたわみを避けるのに重要であ
る。過剰な抵抗は部品の品質を低下させ面精度に
影響を与える可能性がある。
また、振動のため切削
条件にマイナス影響が出るのは避けられない。 ❯❯ 詳細は最寄りの営業所へお問い合わせください。
METALWORKING WORLD
15
GETTYIMAGES/ダーリン・バンセロー
医療技術の
パイオニア
スイス。工作機械メーカー、トルノス社は医療機器
産業に特化した製造手法を提供している。トルノス社
とサンドビック・コロマントのパートナーシップは、
お客さまの競争力向上に役立っている。
ジュラ山脈の中央に位置するムーティエは、真っ青な湖、
両側にそびえ立つ岸壁に挟まれた渓谷、
「ウォッチ・バレ
ー」
と呼ばれる岩だらけの山に囲まれている。工作機械メ
ーカートルノス社の本社はこの小さな町にあり、
この町は
精密旋削部品産業の発祥の地でもある。
初めて主軸移動型自動旋盤は、1880年にムーティエ
にお目見えした。
これは、
その8年前にこの渓谷の麓のビ
エヌにてヤコブ・シュワイツァーが開発したものである。
ま
もなくトルノス社は設立され、以降120年にわたりスイス
の時計産業にシングルスピンドル型やマルチスピンドル型
の高精度自動旋盤を供給し続けてきた。
しかしこの時計
分野への売上は今では全体の20%に過ぎない。
トルノス
16
METALWORKING WORLD
GETTYIMAGES/ダーリン・バンセロー
の
現在トルノス社は、医療技術のプロ
との連携を構築している
トルノス社概略
自動旋盤の設計および製造を行うトルノス社は、
医療技術分野マネージャー、
フィリプ・シャルル
社は、
ムーティエで従業員730名、実習生35名を
1905年にウィリー・メゲル氏によってピーターマ
雇用する。
また、海外子会社では185人のスタッ
ン社とベクラー社と並ぶ形で設立された。
トルノ
フ、世界中で50以上の代理店を抱える。2006年
ス社とピーターマン社は1960年代に合併し、そ
の売上は2億5000万スイスフラン以上(約1億
の10年後ベクラー社も加わった。今ではトルノス
5050万ユーロ)
だった。
ご提案しています。」
と医療技術分野マネー
「我々にとってこのようなパートナーシップを結ぶこ
ジャーのフィリップ・シャルルは言う。
「単な
とが、
お客さまに対して常に最良のソリューションを提
るサプライヤーから満足いただける解決策
案し、競争で一歩先に行くための秘訣です。」
シャルルは
の提案者になることを目指しています。」
説明する。
「サンドビック・コロマントはトップメーカーの
一員であり、
それこそがわれわれの目指していることで
社の自動盤は、
自動車、
エレクトロニクス、医療や歯科産
業でも使われている。
2007年の初め、
トルノス社とサンドビッ
す。
このような評価が我々にとって絶好のビジネスチャ
ク・コロマントは医療技術について独占パ
ンスになるのです。」
ートナーシップ契約を締結した。
これは、
それぞれのお
2008年2月よりトルノス社は、
パートナーシップの中
客さまに対するソリューション開発と生産性の改善を
核としてシグマ20とシグマ32旋盤にコロマント・キャプ
あり、
この部門を拡大するために専門家との連携を強め
行うという両社の関心の高まりを反映したものである。
ト・ツールホルダーを採用している。
ている。
医療手当に必要な生体適合性材料に適した穴あけ工
今日トルノス社が力を入れているのは医療技術産業で
「全ての既存のお客さまにこのソリューションを提
「医療技術分野との取引はまだ20年あまりですが、
こ
具、旋削加工用工具、
また旋削チップといった高い専門
案する予定です。」
とシャルルは言う。
「これは、高硬度や
の産業でのパイオニアとして当社は外傷学、整形外科、脊
性を持った工具をサンドビック・コロマントは、幅広く提
中硬度合金といった硬度の比較的高い被削材に付加価
髄治療、医療器具や歯科産業向けに最適な製造方法を
供している。
値をもたらす精密で安定したシステムです。医療産業は ❯❯
METALWORKING WORLD
17
「部品を作るのは機械です
が、
その周辺機器も重要で
す。高性能なソリューショ
ンに至るためには最良のパ
ートナーが必要です。」
医療技術分野マネージャー、フィリプ・シャルル
❯❯ もとより、このような被削材を扱う全ての産業に有益な
システムだと言えます。」
トルノス社の旋盤は比較的小さく、高付加価値、小規模
技術センターマネージャー、
生産を行うヨーロッパの小規模専門部品メーカーで使
パトリック・イレー氏と
用されている。以前は大型旋盤を扱う機械メーカーに受
コロマント・キャプトが搭載
け入れられていたコロマントキャプトシステムの利点を、
されるデコ・シグマ20旋盤
テスト
モジュラー式なので、
加工方法を標準化する
ことができる
GETTYIMAGES/ダーリン・バンセロー
測定機械で三次元
コロマント・キャプトは
このような自動盤にも使用される機会が増えた。
「工具のクランプ剛性が高ければ、機械の性能をフ
ルに生かすことができる。」
とエンジニアリング・マネージ
ャーであるバートランド・フェーブル氏は言う。
「コロマン
トキャプト クイックチェンジシステムのスピードと効率
性は大きな節約をもたらします。
また、技術力は堅固で
信頼でき、高い繰返し精度があります。
これらは全てお
客さまの利益につながるのです。」
サンドビック・コロマントの行った収益性分析による
と、
コロマント・キャプトへの初期投資額は標準的なツー
ルホルダシステムに比べて確かに2倍ではあるが、投資
回収はわずか8ヶ月ほどで行える。
このシステムはモジュ
ラー式なので、加工工程を標準化することができ、
しか
も全ての機械で使用できます。
「全ての生産を標準化す
三カ国語で連携
「一世紀前、スイス時計は大量に生
カーとなっています。」
とサンドビック・コ
「他社よりも優れた技術革新を行うこと
産されていました。」
とサンドビック・コロ
ロマント・スイスの技術コンサルタントで
です。
トルノス社の機械であればそれが
マント・フランスの地域スペシャリスト、
ロ
あるラルフ・ガーバーは言う。
「 在庫は持
できるのです。結果、素晴らしいコラボレ
ーレン・カルティエは言う。
「しかしデジタ
たず、部品のライフスパンはますます短く
ーションと真のパートナーシップが実を
語のスイスでは言葉の数には困りませ
ル時計の席巻により業界全体が自動車、
なり、世界規模で競争は激化しています。
結びました。
また、
スイスとフランスのサン
ん!」
とガーバーは言う。
「 地理的距離は
「それは言葉の問題でもありますが、
ドイツ語、
フランス語、イタリア語が公用
家電、医療技術、
エレクトロニクスやコン
より早く生産し、変化が激しく予測の難
ドビック・コロマントのコラボレーション
克服できても言語はビジネス上障壁とな
ピュータといった年々小型化が進む産業
しい市場に敏感でなければなりません。
が成功した好事例でもあります。エンジ
りえます。
トルノス社とサンドビック・コロ
に注目するようになってきました。」
このような時に我々がお手伝いできるの
ニアリングと設計部門はフランスにあり、
マントとは共通言語を共有していると言
です。」
お客さまはスイスにいます。
ラルフがお客
えるでしょう。」
「 以 前 大 量 生 産を行っていた会 社
は、今では独自の課題を抱える中小メー
18
策を見出したのです。」
METALWORKING WORLD
「鍵となるのは」
とカルティエは言う。
さまとのコンタクトを担当し、我々が解決
GETTYIMAGES/ダーリン・バンセロー
トルノス社内で使用される
工具の製造や修理を担当する
ミシェル・フリューリー氏
ることを求められるお客さまのニーズに応えることがで
に連絡をとり設計を行いました。」
とバートランド・フェ
きます。」
とフェーブル氏は言う。
ーブル氏が説明する。
「研究の第一段階の計画をいただ
「そのシンプルさも魅力の一つです。」
と技術センタ
き、
それに対してこちらのフィードバックを返しました。
ーマネージャーであるパトリック・イレイ氏は言う。
「工
当社の要望が設計の次の段階に反映されたのです。」
具交換時の手間のかかる寸法調整が不要になるので、
コロマント・キャプトは外径及び内径加工を含むあら
未熟な夜間シフトの作業員でもカッティングヘッドを必
ゆる加工領域に対応でき、
トルノス社の機械に必要な全
要な時に交換することができます。
これにより24時間生
ての工具で使用可能である。
産が可能になるのです。
「シグマ20と32から採用が始まっていますが、
トル
「このような機械は、60%ぐらいの時間しか稼働し
ノス社の全ての機械にコロマントキャプト・システムを
ておらず、残りの時間は機械の清掃、
メンテナンスや工
搭載することを提案する予定です。」
フィリップ・シャル
具交換に費やされています。」
と説明する。
「コロマント・
ルは付け加える。
「お客さまの機械に対する考え方を刷
キャプトを搭載することによって稼働時間を80%、
もし
新するお手伝いをし、
システム導入がもたらす多大な利
くはそれ以上に引き上げることができます。」
点を示す必要があります。部品を作り出すのは機械です
が、
その周辺機器も重要です。高性能のソリューション
何ヶ月にもわたる二社の努力と密接な協力の結果、
トル
を生み出すためには最良のパートナーを見つけること
ノス社の小型旋盤にシステムを適応することができた。
「
が重要です。」
サンドビック・コロマントは当社の技術センターと緊密
アナ・マックィーン
トルノス社
課題の概略
ニーズ:
激化する国際競争に立ち向かうために、
ヨーロ
ッパの中小部品サプライヤーは生産性を向上
しなければならない。
ソリューション:
トルノス社とサンドビック・コロマントは、業務
慣行の簡素化、作業方法の単純化、
ダウンタイ
ムの削減、信頼性の向上をもたらす最良の解決
策を共同で開発した。
結果:
コロマント・キャプトをトルノス社の旋盤で使用
することによって、
ヨーロッパの部品サプライヤ
ーは生産性、敏捷性や利益率を向上し、国際的
な競争社会での地位を確保することができる。
METALWORKING WORLD
19
テクノロジー
リントン・マクレイン
低抵抗設計による軽快な高精度加工は勝利の組合せ:
正面・肩削りフライス
加工の新基準
課題:切込み低減が要求された、小型スピンドル仕様の機械のニーズに応え、
生産性の改善。
解決策:切削の生産性を高めるために新たに設計された優れたブレーカ形状。
フライス加工に新基準を打ち立てる。
コロミル490は多様性のあるエンドミル工具の
利点
・工具コストや在庫の少ない標準フライス
工具
・広い適応性、高精度とより良い公差
・軽快で静かな切削と低い抵抗
・独創的なチップ形状と新材種がもたらす
高生産性
・シャープなエッジラインとバリのない滑ら
かな仕上げ
・ワンパス加工で完成
・掘 込み加 工 側 面の段 差の少ない真の
90 加工
的なチップ形状と新しい材種の組合せで、切削は軽
新しいシリーズの第一弾で、取り分け低切込みの小、
快で静か、
アキシャル角度は大きくポジティブ設計さ
中ロットでの正面及び肩削りフライス加工のコスト
れ、表面仕上げはバリもなく切削時の抵抗は少な
を削減する。
ケーススタディーによってコロミル
い。
これによりシャープはエッジラインと、滑らかな輪
490が工具コストや在庫を低減し、適応性が広く高
郭が得られ仕上げ加工が殆どいらなくなる。
このチ
精度、
そしてより良い公差をもたらすことは実証済み
ップ形状と材種により肩削りの掘込み加工側面の段
である。
またコロミル490はあらゆる面で既存の工
差が少なく、側面段差が0.03mm以下で、滑らかな
具よりも優れている。
コロミル490は、正面フライス
表面をもつ90 切削が行えるカッターとなった。
加工、90 肩削りフライス加工、掘込み90 肩削りフ
省スペースで小型スピンドルサイズを有する小型
ライス加工、
エッジ加工やコンタリング加工、取代
工作機械は、
ニヤーネットシェイプ鋳造や鍛造品の低
2mmのヘリカルボーリング加工(中仕上げ)
や溝幅
切り込みの仕上げ加工に使われる。
このような精度の
公差−0.15mmの溝加工といった加工用に設計さ
高い製品は、
最終加工工程に使用される。
コロミル
れている。
490は完成品をワンパスで仕上がるよう設計されて
コロミル490は4コーナ仕様チップ採用。独創
いるため、
このような製品加工に最適な工具である。
コロミル490でのフライス加工
肩削りフライス加工
20
METALWORKING WORLD
正面フライス加工
エッジ加工とコンタリング加工
溝加工
ボーリング加工
ケーススタディー:新しいソリューションが生産性を高める
バリの終結
完璧な切りくず排出
ドイツ自動車産業のある部品メーカーの課題
同じくドイツの加工機械産業での重切削加工
は、突き出し量の長いワークでのバリの発生と
では、
ワーク当たり1,000Kgの切りくずが排出
過剰なアキシャル方向の負荷だった。
この問題
された。切りくず排出は、全ての工具メーカーに
を解決し生産性を引き上げるためには、
アキシ
とって量が課題となる。長さ4m、幅450mm、
ャル方向の抵抗が低い工具が必要だった。
コ
高さ2 3 0 m m の 大 きなワークでは 、溝 深さ
ロミル490の切削抵抗は低く、
カッターの刃数
4mmの溝加工に、突き出し量の短いクランプ
は多い。
この新工具によってバリの発生はなく
ツールが使用される。長さ130mmのコロマン
なり、低いアキシャル方向の負荷のもとテーブ
トキャプトの エクス テンション にコ ロミル
ル送りは1,400mm/minから1,760mm/
4 9 0 を装 着し、アキシャル 方 向 の 切 込 みが
minに上昇した。
1刃当りの送りは0.2mmか
1.5mmの溝加工を行った。
チップのコーナRは
ら0.18mmに減少させた。
1.6mmのもので、切りくず排出は向上し、工具
90
4
ミル
コロ
技術情報
・4コーナ仕様チップ
・ハイポジティブ切削
・真の90 切削;肩削りの掘り込み加工側
面の段差0.03mm以下
・高い初回試行値
・カッター径25-80mmの品揃え
・ブレーカはL、M、H。
ノーズRは、0.4-1.6mm
寿命が改善。
そして動力消費量も低くなった。
ま
た、チップやワークの安全性が増し、切削加工
音が静かになった。
総括
コロミル490は、特に低切込みで小、
中ロ
ットの正面及び肩削りフライス加工のコ
ストを削減するエンドミル工具の新しい
シリーズの第一弾である。
コロミル490は
サンドビック・コロマントの新世代コーテ
ィングチップと独創的なチップ形状を使
用しているため、高品質な部品を高い生
産性と優れた公差で安定して加工する。
鋳鋼で作られた自動車産業用部品
印刷機用スチール製ベースプレート
ワンパスで完成品が仕上がるよう設計さ
れている。
フライス工具の新基準であるコ
ロミル490の多様性により、正面及び肩
削りフライス加工のコストが削減され、在
庫を最適化し、生産管理が簡素化され
コロミル490はサンドビック・コロマントの新世
代のフライス加工用チップを使用している。新しい材
❯❯ 詳細は最寄りの営業所へお問い合わせくだ
る。
さい。
種はより優れた公差のもと、生産的で予測可能な手
法で高品質な部品が常に製造されるように、独創的
なチップ形状と組み合わされている。
ユニークな平行
ランドを持った新しいブレーカもあり、非常に細い切
技術革新を通じた節約
りくずを排出する。
また、4コーナ仕様で性能や正確
コロミル490では、高精度フライス加工ができ
により生産性が向上する。
コロミル490はカッ
性という点での予測可能性の改善が特徴としてあげ
る。チップを取り付けた工具のカッター径公差
ター径が25-80mm、
アーバー取付けタイプ、
コ
られる。
フライス加工の新しい標準工具であるコロミル
490の多様性は、正面及び肩削りフライス加工のコ
は−0.15mmである。
アキシャル角をポジティ
ロマントキャプト取付けタイプ、円筒シャンクや
ブに大きく設計することにより被削材に静か
ウェルドンシャンクタイプから選定が可能で、刃
に、且つ滑らかに入っていく。
数ピッチはL、M、Hの3種類(ミリタイプ及びイ
ストを削減し、在庫を最適化し、生産管理を簡素化
コロミル490の初回試行値は高く、
アウトプ
ンチタイプ)。またチップはP種用を導入、後に
ットの生産性も高い
(コロミル490でLとMブレ
M、K種用を導入予定である。
コロミル490は今
させる。全般的に見れば、
コロミル490の性能は切
ーカを使用した場合、コーナ当たりの送りは
後125mmまで拡大予定。ブレーカはL、M、
削抵抗が低く軽快で高精度加工である。
これらは
fz=0.1から0.2mm。
コロミル390は0.1mm)。
H。
ノーズRは0.4-1.6mm。
小、
中ロットの生産と低切込み加工には、最適の組
精度は高い推奨切削条件を可能とし、高い送り
合せといえる。
METALWORKING WORLD
21
イタリアの部品メーカ
ー、
メレシ社は、
ミラノ
からわずか一時間で行
けるコルテノーヴァに
ある
グリーンビジネス
賢い手法で
イタリア。リサイクル事業に熱心な部品メーカー、メレシ社は常に環境問題への関心
が高い。使用済み超硬チップを回収することで、同社は臨時収入を得ると同時に環境
への負荷低減を誇りにしている。間もなくISO認証取得も見込まれている。加えて、超
硬チップの交換時期を正確に知ることでコスト削減にもつながっている。
トはメーカーに関わら
ず全ての使用済み超硬
チップをリサイクルして
いる
マウリツィオ・カマニャ
サンドビック・コロマン
オフィシネ・アムブロジオ・メレシ社は、北イタリアの数あ
あるが、生活ペースも環境品質も全く異なる。
メレシ社
る中規模会社の一社に過ぎない。
しかし、石油ガス業界
は、
このような自然あふれる環境で
「生まれ育った」
とも
向けに部品を製造する当社の所在地は、灰色に汚
言え、従来から環境問題への関心が高かった。
染された工業地域ではない。
コモ湖東部のサッシーナ
渓谷内、
コルテノーヴァにある工場のすぐ近くには、
タレ
をいろいろな種類の塗装炉の燃料として使用する家具
ッジョやカゼーラといった有名チーズのためにミルクを
メーカーに売っている。原材料の2∼3パーセントを占
供給する牛や羊の群れが草の茂った山の斜面に放牧
める鋳造スラグである酸化鉄をリサイクルし、
コンクリー
されている。
ト混合物に使用するセメント会社に売却している。潤滑
コルテノーヴァはミラノからわずか一時間のところに
22
METALWORKING WORLD
同社は、木箱やパレットから木材をリサイクルし、
それ
油やエマルジョン切削油もリサイクルしている。切りくず
マウリツィオ・カマニャ
オペレーティングマネ
ージャー、
アントニオ・
ガッロ氏と加工マネー
ジャー、
ロベルト・ベネ
デッティ氏
は、鋼材として再生利用される製鋼所に売っている。
そ
して、
サンドビック・コロマントとのパートナーシップによ
り、重金属で作られているため環境に有害な可能性の
ある超硬チップをリサイクルしている。
メレシ社は、同社の環境への負荷低減を証明する
ISO14001認証取得のための手続きを始めた。同社の
認証団体であるデット・ノルスケ・ベリタス社が2008年
には認証を発行する予定である。
「最近では多くの大手
のお客さまから、
当社の生産工程についての環境への
メレシ社は、1989年
影響の少なさに関する証明書を依頼されます。」
とオペ
からチップのリサイクル
を始めていた
レーティングマネージャーであるアントニオ・ガッロ氏
は言う。
「これは、環境に責任を持つ全ての会社が行う
べきことです。
また環境への配慮を生産工程で保証でき
社はサンドビック・コロマントが運営するプログラムに
ト・ベネデッティ氏は言う。
「現在は、環境意識から動か
ない競合会社も多く、私たちが彼らに対して優位に立て
参加した。
当時、他のイタリアのリサイクル会社やチップ
されることの方が多いです。
サンドビック・コロマントは、
る点でもあります。」
製造業社がメレシ社の使用済みチップの回収を行うと
当社の廃棄物をリサイクルする際、環境に優しい工程を
メレシ社は、1989年には地元のリサイクル会社を通
提案した。
「当初、我々は経済的理由からリサイクルする
とることを知っていたので、我々はパートナーとしてサン
して既にチップのリサイクルを始めていた。2006年に同
ことを決めたものですが、」
と加工マネージャー、
ロベル
ドビック・コロマントを選びました。」
METALWORKING WORLD
❯❯
23
❯❯
使用済みチップを回収する際、
サンドビック・コロマン
ビック・コロマントの刃先交換式ドリルであるスーパー
トは常に同じ方法をとる。
チップは、
メーカーに関係なく
Uドリルのシリーズは、
メレシ社を含む数社との協力のも
専用の送付用木箱に収集され、
そのケースは通常の宅
と開発された。
配便で回収センターに送られる。
サンドビック・コロマン
トが重量に基づいて換金する。
メレシ社はチタンや、
ニッケルを多く含む高合金鋼の
切削を行う。
これらの被削材はチップの摩耗を早める。
毎年、
メレシ社からは600Kgあまりの超硬スクラップ
が排出されるため、工具摩耗を管理することは、
リサイク
ルを行うことと同じぐらい重要である。
「チップの摩耗の仕方は機械によって異なります。」
その摩耗はあまりにも早いのでサンドビック・コロマン
とメレシ社でのリサイクルプログラムの責任者であり、
サ
トの技術者が新たなチップ材種をテストするためにスウ
ンドビック・コロマントのスペシャリストであるコラド・ガ
ェーデンから頻繁に訪れるほどである。例えば、
サンド
ルブセラは言う。
「我々は、
それぞれの加工コストを正確
に計算することで30%の節約を可能とする刃先の摩耗
主要な市場はアジア
からアメリカまで
管理手順を提案しました。」現在のところベネデッティ氏
がチップを管理しているが、
メレシ社は近い将来、
この役
割だけに特化した担当者を任命するかもしれない、
と言
ーコードを読み取ることによってそれを管理プログラム
に設立されたが、間もなく石油ガス業界向けにフ
にアップロードしている。
オペレーターに新しいチップを
る工場内では、
プレス機、鍛造設備、金属加工機
械を使用し、従業員数は138人である。2006年
の原料の使用量はおよそ2800万Kgで、年間売
課題の概略
ニーズ:
環境に優しい手法で使用済みチップをリサイクルする
パートナーを見つける。
ソリューション:
サンドビック・コロマントのリサイクルプログラムに参
加。
結果:
環境への負荷低減を評価するISO14001認証を取得
する見込み、
リサイクルされたチップの収入と工具摩耗
の管理から得た経済性の改善。
う。
ベネデッティ氏は新しいチップを機械に割り当て、
バ
メレシ社は、農業用工具製造会社として1914年
ランジを製造し始めた。43,000平方メートルあ
メレシ社
氏は言う。
「多くの場合、同じあるいは別の機械で、
チッ
手渡す時に、使用済みチップを替わりに受け取る。
「チッ
プの別のコーナーで切削する加工など、異なる箇所でチ
プを捨てるかどうかを決める前に、
どのように、
そしてど
ップを更に使用することができます。」
のぐらい摩耗しているかを確認します。」
とベネデッティ
マッシモ・コンドロ
上高は9300万ユーロ、2007年の売上高は1億
3300万ユーロであった。主要マーケットは、中
東、
アジア、北及び南アメリカとヨーロッパ(主に
北海の海上プラットフォーム向け)である。
ハブのホットプレス。
メ
レシ社は工場内でプレ
ス機、鍛造、機械加工が
行われている
マウリツィオ・カマニャ
24
METALWORKING WORLD
ニュース
CATARINA THEPPER, KAROLINSKA UNIVERSITETSSJUKHUSET
新型心臓弁は、
初の純チタン製である
新しいチタン製心臓弁
きたるべき成功
2006年秋、二人の患者が新型の人
工心臓弁──数十億ドル規模の世界
的 な 産 業 になる可 能 性 のある製 品
──の移植を受けた。
2004年の開校以来、2000人の
深刻な危機だったが、
この国はお
社会人が、
アルゼンチンのサンド
どろくべき復活を遂げ、
さらには
ビック・コロマント大学の研修プ
数年のうちに製造能力を向上さ
ログラムに参加している。そして
せた。
アンケートによると、9割の参加
者がとても満足している。
サンドビック・コロマント・アル
ゼンチンは、中小企業向きの熟
今年は更に400から500人の
練労働者を教育する目的でサン
参加が予想されており、
そして来
ドビック・コロマント大学のトレ
年にはアルゼンチンの大学と提
ーニング計画を設置した。
携して拡大研究コースも計画さ
「現在、サンタ・クルーズ、ニュ
れている。
この研修プログラムは
ーケン、
メンドサなどの石油業界
アルゼンチン社会の変化に貢献
が中心の地域で、例えばパイプや
する成功例として評価されてい
ねじ切り加工といった専門コース
る。
を提供できるようにコースを更新
2000年、経済政策の失敗の
しています。」
とサンドビック・コロ
結果、工場や製造業が閉鎖され
マント・アルゼンチンのマーケティ
たばかりでなく、熟練した労働力
ング営業マネージャーであるホ
や科学技術のノウハウまでもが
ルヘ・ガルシアは語る。
「これも当
失われていた。
社がアルゼンチンの経済発展に
それはアルゼンチンにとって
貢献する方法の一つです。
」
新型心臓弁は、初の純チタン製であ
る。
「特に飛躍的に進歩したのは三しん
弁のデザインです。」
と、
レンテル氏。
「流
「患者の経過は良好です。」
というジ
れが本物の心臓弁同然で、流れを妨げ
ャン・レンテル氏。
レンテル氏は、手術の
るものもなく乱流も発生しません。静か
行われたスウェーデン、
ストックホルム
で、動物の生体弁と同等の生体適合性
にあるキャロリンスカ大学病院のケン
があり、しかも寿命は著しく長いので
ネス・ペールソン氏とともに装置の設計
す。」
・開発に携わった。
アルゼンチンの社会人大学
レンテル氏は人工器官が大量生産さ
れることを期待している。
「 心臓弁は循
「厳しい国際基準に
準拠した高精度旋削
やフライス加工が
求められています。」
心臓弁の設計・開発責任者、
ジャン・レテル氏
環系の一部であり、生命を維持する要
です。」彼は言う。
「それゆえに、厳しい国
際基準に準拠した高精度な旋削とフラ
イス加工を必要としているのです。」
「チタンの切 削 加 工には鋭い刃 先
が非常に重要です。」
とサンドビック・コ
ロマントの小物部品加工担当者である
ハカン・エリックソンは言う。
「当社の最
新超硬チップ──GC1105は、
この種
シークハ・ルブナ・アルカーシミ(アラブ首長国連邦の経済企画大臣)(左)PVラ
マナ(ITMビジネス・スクール会長 兼ITM大学理事)とともに写るアンダシュ・ヴ
ァリーン(右)
ブランド・リーダーシップ賞
2007年9月、
インドのムンバイ市で開催された第16回アジア・ブランド会議で、
サ
の切削加工に非常に適しています。
サン
ンドビックがブランド・リーダーシップ賞を受賞した。
2007年の会議のテーマは
「今
ドビック・コロマントには、
チタンの旋削
日のマルチ・チャンネル世界におけるブランドの持続性と明確さの確保」
であった。
「私たちは、スウェーデン医薬品庁
や穴あけ、
そして小物部品のフライス加
「サンドビック・グループ、
特にサンドビック・インドはこの評価を大変歓迎してい
から、数ヶ月以内にあと3件、年間では
工に対応した製品がそろっています。」
ます。
」
とサンビックABのグループコミュニケーション副社長アンダシュ・ヴァリーン
およそ1,000の手術の許可がおりるの
を待っています」
金属医療機器部品の切削加工につ
いての詳細はP.6をご覧下さい。
は語る。
「サンドビックは、
全てのお取引先に最高のサービスと製品をお届け出来る
よう、
努力を続けます。
」
METALWORKING WORLD
25
利益を生む
パートナーシップ
英国。シェフィールド大学の先進加工技術研究センター(AMRC)と
切削技術を生産現場に早期に導入するために、世界で
のグループから、世界的に見ても最も先進的な
最先端を行くエンジニアリング会社数社とトップクラス
加工工程の研究設備がある組織が誕生した。
の研究者は一体となって取り組んでいる。
このような共同事業は英国シェフィールド大学の先
進加工技術研究センター(AMRC)で行われている。
リッジウェー教授は共同研究の手法をと
り、
これにより
「共通目標に向かって参画者全
AMRCと提携企業と
の間では頻繁に意見
交換がされている
員が働くよう促され、動機づけられます。」
と
AMRCは、
シェフィールド大学のキース・リッジウェ
AMRCの営業部長であるエイドリアン・アレン
ー教授率いる機械加工グループが航空宇宙産業向けに
氏は説明する。
プロジェクト立ち上げ時に産学
開発した新技術に基づいて、2001年に設立された。
こ
ポール・マクマリン
製造業者は互恵的な共同事業を行っている。
官から専門家が集まってそれぞれが何を提供で
き、何を見返りにほしいかを話し合う。
「これによ
AMRC概略
・シェフィールド大学にある総工費4500万英国
ポンドの施設
・先端成形材料の革新的、先進的ソリューション
開発を行う世界に通用する研究機関になること
が目標
・2012年までに更に7500万英国ポンドが投資
される予定
・従業員数60名。半数が博士号取得
・大企業、世界をリードする航空宇宙サプライチ
ェーンや国際学術機関を含む41社と提携
・主なスポンサー:欧州連合、英国企業及び規制
改革省、工学及び物理化学研究評議会、高等教
育革新基金、
ヨークシャー開発公社
26
METALWORKING WORLD
って、重複、不透明さや対立を避けることができ
ます。」
とアレン氏は言う。
また、
チームは時機良
く、効率的に共同作業を行い、個人やグループ
の目標達成のために助け合うことを約束する。
このセンターの成功の鍵となったのは、産業界との
AMRCは新素材、特にチタンやニッケル合金といった
緊密な関係と、AMRCで行われたプロジェクトが産業
航空宇宙産業が特に関心をもつ難削材の切削について
界に直接的な影響を与えたからだと振り返る。
豊富な専門知識を持つ。
ボーイング、
ロールス・ロイス、
例えばチタン製のファンブレードやファンディス
MESSIER DOWTY、GEアビエーションといった主要
クの切削時間を66%短縮するという目標を立てた際、
な航空宇宙部品メーカーが同センターのスポンサー企
AMRCの研究者はワークに大きな損傷なしに工具摩耗
業である。
「シンシナティMAG、森精機、
スターラグ・ハ
を改善し、最終的に切削時間を97%短縮した。
またあ
ースといった主要な工作機械メーカーはサンドビック・
る時には、
チタン軸棒の切削時間を66%短縮する目標
コロマントとより良い製品をより早く、
より容易に製造す
を立てた。
ここでも目標を大きく越え88%の時間短縮を
ることについてのプロジェクトを共同で行っています。」
達成した。
この際、
ワークには大きな損傷はなく、工具摩
とアレン氏は言う。
耗は減りさらに表面仕上げが改善された。
チタン製の航
将来へのアクセス
サンドビック・コロマントはAMRCに最初に加入した一社
であり、同センターと密接に共同開発をしている。
サンド
ビック・コロマントU.Kの国内販売担当シニア・マネージ
ャー、
アンディー・スミスによると両者の関係の中で、
「サ
ンドビック・コロマントは専門的で有能な会社として位置
づけられています。」取引先は、
サンドビック・コロマントの
スローアウェーチップ工具についての専門知識を得て、
サ
ンドビック・コロマントは将来のプロジェクトや被削材を
知ることで利益を得ることができる。
また、製造業者が新
しい部品や工程開発の早い段階で直面する課題につい
て、
サンドビック・コロマントは理解を深めることができま
す、
とスミスは言う。
AMRCの営業部長、
エイド
リアン・アレン氏は、
センター
の成功の秘訣は取り扱われ
る全てのプロジェクトが産業
界に直接的な影響を与える
ことだと言う
AMRCは新素材につ
持つ人々と出会うことができ、将来動向についての展望
いて豊富な専門知識
を知ることができます。」
を持つ
AMRCのプロジェクト・ディレクターであるジョン・バラ
ワナ氏は、AMRCで開発された製造技術によって英国
の製造業者の競争力が著しく高められたと指摘する。
「
これは、切削に関するどちらかといえば成熟した研究分
野について特に言えることです。」
と言う。
「AMRCで開
ポール・マクマリン
発された技術によって、難削材から大型部品を切削する
「同じような考えを持つ人
々と出会うことができ、将
来動向についての展望を
知ることができます。」
アンディー・スミス、
サンドビック・コロマントの
シニア・マネージャー
際の加工時間が飛躍的に短縮されました。」
ある企業が新しい部品の製造や新素材を扱う時、
を備えることで、研修や技術移転を目的とした独自の環
AMRCはグループや提携企業の中から専門知識を集め
境を作り出すことができます。」
カーボンニュートラルな
空機着陸装置の部品加工をMESSIERDOWTY社と行
製造環境に適した最善の方法を見出す。
目標は提携企
設備の推定建設費用は2000万英国ポンドであるが、
こ
った事例もある。結果、過去の最高タイムよりも加工時
業が競争力を保持できるよう生産性を向上し、部品当た
の生産セルの中で技術者は、工程のモデル作り、企画立
間が80%短縮された。MESSIER DOWTY社は契約を
りの製造コストを引き下げ、生産高を増加させることだ。
ち上げや最適化をし、被削材や切削工具の性能を確か
勝ち取り、英国での切削に関する競争力がついた。
めることができる。
このような研究によって提携企業は
開発の第二段階として2008年の前半に
「未来型工場」
将来の顧客ニーズに応える解決策を見出すことができ
る。取締役会や他の会議の中で、提携企業とAMRCの
を開業する予定である。
ここでは科学理論、環境基準に
るようになる。
スタッフは意見交換し現在や将来の研究内容について
も耐えられる解決策や製造原理を適用して、製造上の
話し合うことができる。
「ネットワークを構築するのに絶
難題を解決することを目標としている。
ボーイングやロ
AMRCの営業部長、
エイドリアン・アレン氏は、
センター
AMRCの取締役の85%以上は民間企業出身であ
好の場所です。」
とサンドビック・コロマントの英国国内
ールス・ロイスといった大企業のバックアップを受けて
の成功の秘訣は取り扱われる全てのプロジェクトが産
セールス担当シニア・マネージャーでAMRCへの代表
いるこの施設は、
「現センターの4倍の設備に展望ギャ
業界に直接的な影響を与えることだと言う。
でもあるアンディー・スミスは言う。
「同じような考えを
ラリー、
バーチャルリアリティー体験装置や最先端設備
ポール・マクマリン
METALWORKING WORLD
27
全国技術力選手権では
学生たちは87の異なる
職業分野で競い合う
国家の技術力
構築するには
米国。今日のような世界規模の競争社会では、技術力に優れた人材を確保すること
は最も重要である。全国組織であるSkillsUSAはこのようなニーズに応える。
SkillsUSAは、技術、
スキルやサービス分野でのキャリ
SkillsUSAで高精度切削部門の競技を運営
アを志望する教師や学生向けに包括的な研修プログラ
するジェームス・ウォー氏は言う。
グループで運営されている。高精度切削部
門の競技では実技だけではなく筆記試験に
ムやイニシアチブを行う米国組織である。
も合格しなければならない。
高校や大学レベルの学生に高品質の教育機会を提
毎年6月にはミズーリ州カンザスシティーで
供し、
自信、
良い職務態度やコミュニケーションスキルを
行われる年次総会と就職フェアーで、全国大
身につけてもらうことが目標である。
会の決勝戦が開催される。SkillsUSAの年
寄付金、現物出資、職員の活動への参加という形でビ
間行事の中で最大のイベントである。
イベン
加えてスポンサー企業は学校での授業
内容に影響を与え、校内研修プログラムを
改善する機会を得ることができる、
とウォー
これにより世界市場で競
ジェームス・ウォール氏 ル氏は指摘する。
ジネス、産業や労働団体がSkillsUSAのスポンサーとな
トの中の全国技術力選手権では、学生たち
っている。地元でのプログラムを提供するだけではなく、
が87の異なる職業分野で競い合う。各分野では地方大
高校生や大学生が技術力の実技を競う全国大会を毎
会を勝ち抜いた各州2名のみが出場できる。
「来場者は
年主催している。
「技術レベルや期待度の基準を設ける
15,000人を越え、
そのうち5,000人が競技に参加しま
絶好の機会です。」
と金属切削技術研究所副理事であり
す。」
とウォール氏は言う。2日の競技日程はボランティア
28
METALWORKING WORLD
うことができる技術力のある人材を獲得す
ることができる。
サンドビック・コロマントU.S.Aは、SkillsUSAのスポ
ンサー企業の一社である。
「我々は、
この競技に切削工具を提供しています。」
と
技術革新の絆
ミレニアム工場研究所(IFM)により世界で8カ国にしか
使われない高速研削加工技術をブラジルが習得した。
ミレニアム工場研究所(IFM)により世界で8カ国にしか
使われない高速研削加工技術をブラジルが習得した。
高精度部品を製造するためには、高速研削加工
が不可欠である。
自動車産業では生産所用時間の約
25%をエンジンやトランスミッション部品の研削加工
「技術レベルや期待度の
基準を設ける絶好の機会
です。」
に費やしている。
ブラジルには巨大な自
動車産業があり、高速研
ブラジルサンパウロ州にあるIFM本部内の
削技術を開発することは
メイン切削研究所
その競争力を国内外で増
金属切削技術研究所副理事、
ジェームス・ウォール氏
すことにつながった。
具用レーザーについての研究によって、鋳鉄加工での
「自動車産業界のニ
ーズに応えるため、研削
ドリルの工具寿命は10倍になった。
ジョアン・フェルナンド・
ゴメスドオリベイラ氏
サンドビック・コロマントU.S.Aの研修担当者であるブレ
工具製造メーカーであ
ント・ストグシルは言う。技術委員会のメンバーでもある
るゼマ社は機械の運転速度を毎秒45mから毎秒
ストグシルは学生からの質問に特定のガイドラインの範
100mに引き上げる目標を立てました。」
とミレニアム
サンドビック・コロマントのようなスポンサー企業
は素材、機械、奨学金や試験のために自社設備を提供
することなどで貢献している。
「サンドビック・コロマントは、IFM本部にある研究
囲内で回答している。
サンドビック・コロマントU.S.Aは
工場研究所(IFM)のコーディネーター、
ジョアン・フェ
室の一つに設備を完備しました。今では、
その研究室
筆記試験の時間を使って学生の指導者にもトレーニン
ルナンド・ゴメスドオリベイラ氏は振り返る。2002年
のことを
『サンドビック・コロマントルーム』
と呼んでい
グを実施している。
にゼマ社とIFMは、
ゼマ社が機械の原型を提供し
ます。」
とオリベイラ氏は言う。
「文字通り技術革新の
IFMが様々なサプライヤーの協力を得ながら高速研
余地が生まれたのです。」
「若くても腕のいい労働者や企業家を育てていると
いう満足感が得られます。」
と言う。
エレイン・マクラレンス
立した。
このパートナーシップは成功し結果として生まれ
SkillsUSA概略
・1965年設立
・年間28万人の学生や指導者が利用
・54の州や領土にある13,000もの学校と
リンク
・プロ会員の中には14,500人以上の指導
者や管理者を含む。研究所や教室での職
業技術訓練の産業基準を決める各種プ
ログラムを用意
ミリアム・モラエス
削加工を様々な形でテストするという合弁企業を設
た高速切削加工技術は、GMコルサ車の鋳造クラン
クシャフトやホンダ125ccバイクのバルブといったブ
ラジルで生産されている車両部品の製造のために使
われている。
IFMはブラジル政府主導で行われているミレニアム
・プログラムの一環である。特に資本財を生産してい
る製造業者の科学、技術知識や競争力を向上するこ
とを主目的としている。
またブラジルの生産サイクルの
持続性を促進する狙いもある。
最近の、
ナノ単位のテクスチャリングを行う切削工
IFMネットワーク
2001年に設立されたIFMは、
ブラジルの科学技術省
の支援を受けた団体である。32大学に所属する39研
究団体の800人あまりの研究者が会員である。金属加
工インフォメーションセンターがIFMネットワークの通
信手段であり、最近ではIFMのウェブサイトへのアクセ
スは一ヶ月に150万件にも及ぶ。関連大学の学部生や
大学院生は指導者との調整のもとこのプログラムに参
加することができる。
詳しくこちらのサイトをご参照ください:
www.ifm.org.br and www.cimm.com.br.
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テクノロジー
クリスター・リヒト
レールに
確実にロック
課題:ねじ製造工程の改善
解決策:微小な動きを取り除く
CNC旋盤でねじ切り旋削を行う際によくある問題
の一つは、
チップがチップシートの中でわずかに動く
ことである。微小な動きでさえもねじの輪郭は公差
切削抵抗
題である。
チップスクリューや時としてクランプで補強する
を外れ、工具摩耗が早まり、加工の信頼性が損なわ
形で、
チップをシートに三カ所で位置決めする従来
れる。更に、多くの機械加工で認識されている通り、
の手法は、
その適正についていくつかの工程で疑問
これは切削抵抗に影響するため、切削条件は低く制
視されている。
このため、数年前サンドビック・コロマ
限され加工の効率性も損なうことになる。
ントは微小な動きを排除し、
チップを正確に安定的
このように、特に高精度のねじ切削に関しては刃
に固定する方法の研究開発を始めた。
この成果が今
先の不安定性への懸念が高まっている。
しかしなが
日のiLOCKコンセプトである。
これは限られた加工
ら、
いくつかの問題に取り組むことで、ねじ切り加工
に現在使われており、今後その利用範囲は拡大する
が必要な基準に達し工具寿命が予測可能で生産性
予定である。既にこのコンセプトは、特に高精度の旋
が高い、加工に到達することができるようになる。
削やフライス加工においてわずかなチップの動きが
チップが動く原因は、主にねじ旋削工程の特性に
性能や結果に悪影響を及ぼすといった状況を改善
ねじ切り旋削用の刃先の鋭いチップは、
クラ
ある。
クランプされたねじにてこの原理が働き、力が
ンプスクリューに働くてこの原理により不安
加えられるので尖った倣い加工用のチップと同様、
定になりやすい。ねじを完成するのに必要な
ねじ切り旋削用のチップは脆弱になる。
これは、ね
じを完成させるのに必要な多くのパスで、加工初め
と終わりに生じる。切削抵抗の変化によってシート
の中でチップが動きやすくなり、支持ポイントが変
動する。
またねじ形状やピッチの違いによって必然
的にチップシートの中でのチップサポートが変化す
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る。
これは全ての加工工程の鍵となる安定性の問
METALWORKING WORLD
多くのパスで加工初めと終わりに送り方向切
削抵抗(FA)の影響が生じる。
良くも悪くも方
向性がチップに影響を与える。
このような変
動要因によりシート内でチップがわずかに動
き、
シート拘束面が変形し、
ひいては不安定
さが増す。
している。
また安全な高速加工を確保する要素とな
っている。
ねじ切り旋削のチップは、
チップの微小変動に対して
脆弱である。
よって、
本年iLockコンセプトがコロスレ
ッド266という形で優先的に導入された。
コロスレッド266チップにはツールホルダーのレー
ル部に合う凹所がある。
クランプねじはチップを、
一
箇所のシート部側面に向けて締め付けながら、
正確
非常に安定したiLockイン
ターフェースは、
切削抵抗に
変動があっても切れ刃位置
を正確に維持する
安定性:より丈夫な材種への鍵
新世代のコーティングチップの開発は、ねじ切
昨今の微粒子チップ母材の技術開発によ
り旋削を更に最適化し、高い切削条件と長くて
り、P V D コ ー ティング が 施 され た 新 材 種
予測のつきやすい工具寿命を得るための手段
GC1125が開発された。ねじ切り旋削や突切
をもたらした。更なる利点としてコロスレッド
り、溝入れ加工にも最適化されており、高速切
266の安定性によりこの可能性が十分に活用
削により生産性を向上させる可能性もある。
こ
できることがあげられる。
れはねじ切り旋削ではまだ発揮されていない
高速ねじ切り旋削は高温を伴い生み出され
可能性である。
この材種は、
より広範囲で総合
る熱は鋭い刃先に集中するので、材種は刃先
的な能力をもつ基本材種、GC1020を最適化
の熱変形に耐えられるものでなければならな
し補完する。
い。
つまり、不安定性により生じる機械的負荷
にさらされる刃先の靱性を制限する高温硬度
は、
より高いものが求められることになる。
しかし今ではこれは、
コロスレッド266の安
GC1125
定性によって埋め合わされている。
より硬く、耐
久性のある材種が使用され、
これにより切削速
度が向上し、工具寿命がより長く予測可能とな
る余地ができた。
利点
コロスレッド266によってねじ切り旋削の
効率性が高められる。ねじ切り旋削の倣い
加工の精度や生産性が高まったのは、安定
性が増したおかげでスローアウェーチップ
の微小変動が排除され、
より丈夫な材種を
使用した結果である。
総括
ねじ切り旋削において、
スローアウェーチ
ップの微小変動はよくある破砕の原因で
ある。早すぎる工具寿命、不安定な加工
や不満足な結果の要因を探ると加工中
コロスレッドは、頑丈なねじ切り工
に生じた切れ刃の微細な動きに行き着く
具であり、高い精度が求められる加
ことが多い。
工に最適
昨今のスローアウェーチップ技術の飛
躍的進歩によってチップをツールホルダ
ーやカッターシートに正確に位置づけす
な位置に固定する。
送り方向に対してiLockのレール
が直角であるため加工中の切削抵抗がレールサポー
トに吸収され、
確実、
正確で安定した位置決めがなさ
れる。
これはシートの標準的な拘束面を一新し、
変形
❯❯ 詳細は最寄りの営業所へお問合わせください。
る新しい手法が開発された。
コロスレッド
266によって切れ刃の安定性が目覚まし
く改善し、ねじ切り旋削の生産性が向上
する可能性が広がった。
や変動が生じがちな従来の傾向をも一掃する。
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© CCTV/OMA レム・クーハーズとオレ・シェーレン CCTV本部はオリンピッ
クのために建設された幾
多の素晴らしい建物の一
つである
贅沢な建築
中国。8月に開催される北京オリンピックは、スポーツの祭典だけではなく、
中国や世界中の一流建築家による新しい建築物をお披露目する場にもなる。
北京の空の眺めは急速に変化している。
この街の胡同(フートン:伝統的な路地裏)
の狭い路地や中庭のそば
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METALWORKING WORLD
「私は、北京の南にある古代の天壇こそが、世界で最も美しい建築
物だと思います。」オーストラリアの建築家のジョン・ビルモンは言う。
「
には、オリンピックのために建てられた近未来的なビルが立ち並んでい
柱の台座が四角く、屋根が円形であることは、
『人々が二つの空間、
つま
る。
り天と地の間を占める』
という中国の建築哲学を表すものです。」
これらの巨大なプロジェクトには、海外の建築家や中国内のパート
「国家水泳センターは四角く、軽く、青くて繊細です。」
と続ける。
「国
ナーが集まり、伝統や想像力の「るつぼ」
と、中国全土のための建築遺
家水泳センターの背景には、丸く、巨大で赤い北京国家体育場が見え
産を作った。
ます。
それぞれの建物がお互いを活かしあっています。私達は
(この二つ
GETTY IMAGES
の建物からも)伝統的な中国建築のもう一つの側面を実感することが
できます。
それは、陰陽思想です。」
2008年北京オリンピックの象徴的な建物の一つである国家水泳
センターのデザインを引き受ける前から、
ビルモンは長年中国で働いて
きた。
シドニーのPTWアーキテクツのチームを率い、中国建築工程総
公司、深セン設計公司(現在のCCDI)、
シドニーのエンジニアオフィス
であるアラップと共に、
この「水立方」
と呼ばれるプロジェクトに携わっ
た。
また、PTWは北京オリンピック村建設の組織にも関わっている。
これ
らのプロジェクトのために国際的なコンペが行われ、PTWが選ばれた
のだ。
近代北京を背景に
同社は2000年シドニー大会の総合企画や国際アクアティックセ
たたずむ故宮
ンター建築に関わったことで、オリンピックの世界に足を踏み入れた。
これにより、4年後のアテネオリンピックの立案や遂行に、一層大きな
関わりを持つことになった。現在、中国に3つの事務所と25人余りの
スタッフを抱えている。
20年前にビルモンが初めて北京を訪れたころの街や風景は、現在
とは全く違っていた。
「 オリンピックのお陰で、
この街は自信に満ちあ
ふれるようになりました。」
と言う。
「それは人々の精神の中に見て取れ
ます。」
ビルモンは、オリンピックのために計画された建物の品質を評
価する。
理由の一つは、最先端の建築デザインを受け入れることのできる北
京の規模そのものにある。
「ここは、
ノーマン・フォスターがデザインした空港、
フランス人建築
2008 北京オリンピック
北京オリンピックは、
「ひとつの世界、
ひとつ
たかう。競技は北京、青島、香港、天津、上
の夢」
をキャッチ・コピーに、
8月8日∼24日
海、瀋陽、秦皇島で行われる。
さらに、
9月6
にかけて開催される。今回の五輪大会では、
日∼17日には、
身体障害者を対象とした世
それを報道する世界各国2万人のマスコミ
界最高峰のスポーツ競技大会であるパラリ
陣、数万人の観衆と世界中のテレビ中継の
ンピックが、
同じ北京で開催される。
中、
1万5百人以上の選手が28の競技をた
家がデザインした涙型のオペラハウス、驚くような構造を持つCCTVビ
ルがある場所ですから。」
とビルモンは言う。
北京は上海と違い、
ビルモンが愛するまとまりなく広がるビル、胡同
の狭い路地や中庭などの建築の中に、今も伝統的な中国文化が反映さ
れている。
「オリンピックのおかげで、この街は
自信に満ちあふれるようになりま
した。」
オーストラリアの建築家ジョン・ビルモン氏
金属の流体状ループとイグルーの、本質的に異なる要素に関する考
え方によって、水泳センターのデザインは何度か大きく変わった。
「私達は、デザインに関する多くのパラメーターを定め、現地のパー
トナーの意見も聞きました。」
ビルモンは言う。
「オリンピックグリーンへ
の入り口は印象的でなくてはなりません。水や、水の体感を反映するも
のでなくてはなりません。そして中国の伝統的な建築の理想を現代風
に表現しなくてはなりません。
エネルギーや水の節約も任務の一つでし
たので、
グリーンハウスのようなものを建てることになりました。」
「中国の哲学では、形は特別の意味を持ちます。」
と言う。
「 丸は天や
火に関係し、四角は地や水に関係します。」
「北京には高層ビルがある地域もありますが、他の大都市と違って
「中国の伝統に対する最も適切な対応
超高層ビルはありません」
と言う。
「北京は常に街の持つ深い文化、
ロマ
は、燃えるように赤く丸い建物であるナショ
ンスや音楽で知られています。文化的な記憶や人々のあこがれが、建築
ナル・スタジアムからヒントをもらうことだと
を通して表現されおり、北京の新しい建築物は、大きな経済力を持つ街
考えました。青は水を、四角は地を象徴しま
としての将来への自信を表しています。」
す。建物の中で照明をつけて光の反射を見
「建物の品質を大幅に上げることへのこだわりがあり、
これは都市計
画の質や優れた公共スペースを作ることにも反映されています」
ビルモ
ンは続ける。
「環境に優しく低エネルギーの建物、総合的な環境コストを
ジョン・ビルモン
ると、建物の外側からも建物の表面を透か
して建物の構造や、中にいる人々のシルエッ
トを見ることができます。私は今もこの様子に感動してしまいます。」
下げることなどへの意識も高まっています。
その中にも、水立方を含む新
しい建築物には、過去に対するわずかなこだわりが見られます。」
ジェーン・ガーナー
❯❯
METALWORKING WORLD
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北京の壮大な空
2008年北京オリンピックの新しい建物に込められた建築思想と勇気は、
新たなチャレンジに向かっている
北京は世界でも最も地震活動の激しい地域の一つなの
で、2008年のオリンピックのための建築物は耐震性に優
れていなければならない。
中国国家水泳センター 水立方
もう一つの課題は、
この都市では水が貴重な資源で
国家水泳センターの
「バブル」壁の内側には1万7千
あるということだ。
オリンピック施設はこのことを必ず考
規模の客席のほか、
プール、
ウェーブ・マシーン、ウォ
用されている。断熱温室効果を求めて設計されてお
ーター・スラーダーとレストランがある。壁の
「バブル」
り、太陽光によりプールとビルを暖めるように出来て
は、重さはガラスパネルのわずか1%、
そして雨のたび
いる。
慮にいれなければならず、水のリサイクルや再利用、下水
処理設備を組み合わせている。
に表面の汚れを自浄する特殊なプラスティックが使
オリンピックが始まる頃には北京の風景の中に、世界
中から一目置かれるランドマークとなる一連のビルが含
まれることになる。北京の21世紀の建築は素晴らしく最
共に作られることになっている。加えて、
ロンドンの高層ガ
イメージが変わることを望んでいる。
中国は、全ての外国
先端だ。
そして昨今の開発はオリンピック規模で進められ
ーキンビルなどを手がけたノーマン・フォスターとアラッ
の建築家が現地のパートナーと共に取り組むことを強く
ている。
これらの象徴的な建築物の地下や周辺には、
プの設計による新しいターミナルが、北京国際空港に建
求めており、
これは新しい世代の中国建築や都市計画に
2008年オリンピックまでに、150キロ近くにわたる新型
設された。北京当局は、第29回オリンピックを開催するこ
とって好ましいことである。
ここではオリンピックにあわせ
軽量鉄道や地下鉄がこの巨大都市の第5、第6環状路と
とで、1992年のバルセロナと同じように国際的な立場や
てオープンする予定の見事な建築物を3つ紹介する。
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METALWORKING WORLD
© ARUP/CSCEC/PTW
❯❯
中国の明るい展望
オリンピックは、中国の人々の中に楽観主義を
作り出しているが、製造業にはほとんど影響を
与えていない。
オリンピックによって中国の人々は将来に対
しより楽観的な見方をするようになった、
と中
国サンドビック・コロマットのマネージャー、
イー
・シャン・リーは言う。
「そして、オリンピックが終わってもこの楽観
主義は消えないと思います。」
と言う。
中国の市場は1990年代後半からすさまじ
い勢いで成長した。サンドビック・コロマントは
1985年に中国に参入して以来、
この成長に貢
献している。今では北京本部にいる300人以上
の従業員に加えて、他のサントビックグループ企
業と共有するサンドビック・コロマントの工場に
も従業員を抱えている。
「1998年から2007年の間に、私達は平均
© ヘルゾグ&デ・ミューロン
22%の成長率を記録しまし
た。」
リーは言う。
「 昨年の成
長率は35%でした。」
オリンピックは、インフラ
などの分野にも大きな影響
をもたらしたとリーは言う。
し
かし製造業に対するオリンピ
ックの影響力が大きいと言う
「鳥の巣」のような国家体育場
国家体育場では、
8月8日と24日に北京オリンピックの開
ほとんど感じられないくらいではあるが街の地面は優
の建築を貫く一番重要な考えは、
オリンピック後も機能し
しく盛り上がり、
スタジアムの台座を形作っている。
このた
続け、
北京のこのエリアの人々の生活を楽しませ、
公共生
めスタジアムの入り口は少しだけ高くなっており、
オリンピ
活を形作る新しいタイプの都市拠点を作り出すことだっ
ック関連の建物が見渡せるようになっている。
ンに
「鳥の巣」
というニックネームをつけて呼んでいる。
遠目に見るとシンプルな一つの建築物に見えるが、近く
でじっくり観察すると、支柱や梁、階段が混沌と絡み合って
「私達は、それほどオリン イー・シャン・リー
ピックの影響は受けていませ
幾何学とスタジアムが一つの要素となっている。
会式と閉会式が行われるほか、
陸上競技が開催される。
こ
た。
建築が始まる前から中国人はこのスタジアムのデザイ
ことには躊躇する。
ん。」
と言う。
「私達のお客さまは主に自動車、航
空、
エネルギー産業に従事していますが、
直接オ
リンピックの影響は受けていません。法律や制
度という外的要因や国際関係などの方が、私達
への影響は大きいのです。」
歩行者は、
スタジアムから伸びる格子状の滑らかなス
レートの歩道を歩く。
歩道と歩道の間の空間は、
水中庭園
や石庭、
竹林、
鉱石の丘、
スタジアムの台座へつながる空
間など、
楽しめる場所となっている。
中国中央電視台 − CCTVの本社
CCTV本社の形は「三次元に曲がったループ」
と呼ば
れ、高層ビルの形状を再定義すると言われている。
かにも、重大な構造的課題を乗り越える必要があった。
外観に見て取れるダイアグリッドの支えは、重力の分布
二つの傾いたタワーが途切れることのないチューブ
を反映している。CCTVビルの隣にはCCTVビルより小
を形作るCCTV本社は、
オランダの建築事務所OMAに
さなTVCC(テレビジョン・カルチュラル・センター)
が建
所属するレム・コールハースとオーレ・シェーレンがデザ
てられ、300室のホテルができる予定である。
これらの
インした。
この建物の高さは234メートルあり、
オリンピ
部屋は天蓋の下に、明らかにランダムに積み重ねられて
ックの期間中、国際放送センターが置かれる。
この建物
いる
(シロアリの巣にインスピレーションを得たと言わ
は、地震の可能性や極寒や極暑という厳しい気候のほ
れている)。
© CCTV/OMA レム・クーハーズとオレ・シェーレン いることがわかる。
まるで木とその根のように、
柱の台座の
METALWORKING WORLD
35
www.coromant.sandvik.com/jp
Print n:o C-5000:525 JAP/01
© AB Sandvik Coromant 2008:2