Metalworking World 3/2013

3/13
サンドビック・コロマントが発信するビジネス&情報誌
エネルギー:
核融合エネルギー
への挑戦
情熱の
パワー
マノアー・インダストリーズ社はいかにして
荒加工工程だけでなく完成品までを
製造できるようになったのか
ターミネーターが気候を救う 技術 深穴ポケット加工
ブラジル 故障のない新加工工程 技術 生産性を向上させるもの インスピレーション 玩具メーカーの復活 ギアミリング上昇する注目度 技術 航空宇宙分野の加工
プロフィール
editorial
メタルワーキングワールドはサンドビック・コロ
マントABがお届けするビジネス&テクノロジ
ーマガジン。
811 81 Sandviken, Sweden,
電話 +46 (26)26 60 00。
クラス・フォーストローム
サンドビック・コロマント社長
年3回、
米語、
英語、
チェコスロバキア語、
中国
語、
デンマーク語、
オランダ語、
フィンランド語、
フランス語、
ドイツ語、
ハンガリー語、
イタリア
語、
日本語、
韓国語、
タイ語、
ポーランド語、
ポ
ルトガル語、
ロシア語、
スペイン語、
スウェーデ
ン語各言語で発行され、
サンドビック・コロマン
トの世界中のお客さまに無料で提供されてい
ます。
出版はスウェーデン、
ストックホルム、
Spoon Publishing ISSN 1652-5825。
知恵とアイデアで
リードする
編集主幹兼スウェーデン出版法による
発行人: Jessica Alm 編集長: Mats
Söderström 契約担当: Christina
Hoffmann 編集管理人: Henrik Emilson
アートディレクター: Emily Ranneby アッシ
スタント アートディレクター:Anna Boman
技術記事編集: Börje Ahnlén, Martin
Brunnander 編集補佐: Valerie Mindel コ
ーディネータ: Lianne Mills 言語コーディネ
ータ: Sergio Tenconi レイアウト: Louise
Holpp 製版: Markus Dahlstedt 表紙写
真: Audrey Bardou.
原稿持込みは受け付けておりません。
本誌
の記事は許可なく転載できません。
許可の申
請については編集管理人にお問い合わせ下
さい。
メタルワーキングワールド掲載の論説
や記事は、
サンドビ ック・コロマントや発行
人の見解であるとは限らないことをご承知お
きください。
そして知恵とアイデア。我々はこの3つの分野に特に力を
た」
と語っています。
こうした取り組みこそ、私どもに知恵
入れて日々取り組んでいます。
とアイデアをもたらし、
この業界をリードする企業として
本誌に関するご意見やご質問を歓迎
します。
ご連絡はSpoon Publishing
AB, Rosenlundsgatan 40, 118 53
Stockholm, Sweden, 電話 +46 (8) 442
9620 電子メール: [email protected] 配布
についてはサンド
ビック・コロマントのCatarina Andersson
まで
電話: +46 (26) 26 60 14 電子メール:
[email protected]
私たちは、世界中のお客さまのために全力を尽くします。
ありつづけられるのです。
印刷: 日本
サンドビック・コロマントが金属加工業界の最前線に立ち
のジル・ボジュール氏は、
その経験について
「サンドビッ
続けるカギになっているものは、やり方について言えば、
ク・コロマントは製品を販売するだけではありませんで
いいものを追求し続けるその姿勢です。技術革新、教育、
した。最も効率的なプロセスの開発を支援してくれまし
そうすることでお客さまのプロセスを分析、新しい知識
を得ることができるので、効率性・生産性を高めるため
最後に、今まで生産に関する様々な課題を共有していた
の新しい方法をご提案することができるのです。協力関
だいた、
これをお読みになっている世界中の皆さまに感
係を通じてよくそのようなことが起こります。例えばブラ
謝の意を申し上げます。私たちが得た知識と経験が、最
ジルのカミンズ社がそうです
(12ページ)
。
このエンジン
高のサービスと工具の提供につながるよう、今後も努力
メーカーは、パートナーシップを、
「two hands
してまいります。
working together(2つの手で一緒に仕事をすること
= 一緒に協力して取り組むこと)
」
と説明しています。私
たちはそれを生産性向上プログラム
(PIP)
と呼んでいま
す。名前はどうあれ、
カミンズ社は、最終的に大きなコス
クラス・フォーストローム
サンドビック・コロマント社長
コロマント・キャプト、
コロミル、
コロカット、
コロプレックスMT、
コロタップ、
コロターン、
コロドリル、
コロボア、
コログリップ、
ハイドログ
リップ、
オートTAS、
GCはすべてサンドビック・
コロマントの登録商標です。
メタルワーキングワールドは無料で配布
しています。
ご希望の方は、mww.
[email protected]まで。
ト削減に成功しました。
そしてその過程で私たちは新た
な知恵とアイデアを得ることができました。
生産性向上プログラム
(PIP)は、サンドビック・コロマン
トの提供するサービスの一つです。
このサービスは、実
際のツーリングソリューションを提供する役割を果たす
とともに、弊社の「能力」
を象徴的に表しています。サンド
ビック・コロマントの仕事は、機械投資・導入をサポート
するエンジニアリング分野から、年間30,000人が参加す
る、多彩な学習プログラムを持つ教育分野、超硬チップ
のリサイクルといったソリューションを提供する地球環
境の持続性分野といった領域まで多岐にわたります。
ま
たこのPIPサービスには、
コスト削減プログラムや、在庫
を分析するスマートロジスティックソリューションも含ま
れています。
31ページでは、
こうした支援プログラムで多くのコスト削
減に成功したフランスのマノアー・インダストリー社の様
子について説明します。
会社の工業メソッドマネージャー
2 metalworking world
メタルワーキングワールドは情報提
供を目的に発行されています。掲載情
報は一般的内容であり、助言と見なす
こと、決定のための根拠とすること、具
体的な事例について使用することを
推奨するものでありません。掲載情報
のご利用は使用者の責任において行
われるようお願いいたします。サンド
ビック・コロマントは、直接損害、付帯
損害、結果損害、間接損害を問わず、
メ
タルワーキングワールドに掲載され
た情報の利用を事由として発生する
いかなる損害についても責を負うも
のではありません。
31
content
フランス
荒加工工程だけで
なく仕上げ品完成へ
4
プロフィール
デウス社の
カスタムリサイ
クルバイク
10
12
A patented new
technique puts Voith
Turbo on the map.
5
7
8
ブラジル
工程の改善と
大幅なコスト削減
Quicktime:
世界各国からのニュース
プロフィール :
デーム エレン・マッカーサー
18
Brick by brick:
24
ギア・シフト:
エネルギー:
LEGO社はいかにしてイノベーション
を手に入れたのか
サンドビック・コロマント副社長、
ギアミリング技術の進歩を語る
高性能な風力タービン
28
イノベーション
核融合エネルギーの
課題に向き合う
Technology
新しい画期的な刃先
鋼加工を究める
長い突出しでの
加工を可能に
最適な突切り加工
最強の
エンジニアリング
次世代チップ材種はどのよ
うな将来をもたらすのか
従来以上の広範囲におい
てさらなる高速加工を可
能とし、安定かつ長寿命を
実現する高いポテンシャ
ルを有する鋼旋削加工用
超硬新材種
モジュラー式工具によ
る操作上の柔軟性、安
全性やシステム標準
化の可能性
ワークを無駄なく最大限
に利用し、加工工程の安
定性を高める最適ソリュ
ーションの適用
航空宇宙産業での穴あけ
加工の複雑な要求をどのよ
うにクリアしていくか
26
38
9
10 22
metalworking world 3
Quicktime
文:ヘンリック・エミルソン 写真:getty images
LEDでライトアップ
気候の制御。アーノルド・シュワ
ルツェネッガー氏は、ボディビル
ダー、映画俳優、政治家と、多く
の分野で成功している。ボディ
ビル元ミスターユニバース、
ターミネーター、
そして元カリフ
ォルニア州知事である彼は次
に、彼にとって最大の挑戦にな
るかもしれない「気候」に挑もう
としている。
2010年、
彼は世界中の
リーダーたちとともに、国連と協
力し、NPO法人「R20(気候変動
対策に関する準国家政府ネット
ワーク) 」
を設立した。
R20は、地方自治体の主導によ
って実行され、エネルギー消費
量および温室効果ガス排出量
の削減、かつ、地域の経済的・
環境的利益創出を行うことを目
的としたプロジェクトである。
R20の最新の取り組みは、従来
の光源に比べ二酸化炭素排出
量を大幅に削減できるLED照明
を地域や地方自治体に推進さ
せるため、
フィリップス社との
合弁会社を設立したことである。
「エネルギー効率のよいプロジ
ェクトを実現するとなれば、真の
行動を起こせるのは都市、州、
地方自治体といった組織でしょ
う」
とシュワルツェネッガー氏は
述べる。
「我々の建物・街路照明
効率化の取り組みにフィリップ
ス社が協力してくれることや、皆
さんが気候変動と戦うヒーロー
になって持続可能な社会を作っ
ていく役割を果たしてくれること
を、我々は楽しみにしています」
4 metalworking world
ベイ・ライト・プロジェクト
幅1.8マイル(2.9km)、
高さ500フィート
(152m)もある
世界最大のLEDライトの造形。
カリフォルニア州サンフランシスコ
ベイブリッジを彩るこちらは、
25,000個のきらめく白色LEDライトで
眩しいディスプレイを創り出している。
Quicktime
段ボールの
ペダルを漕いで
「アルファ」
と呼ばれる
重さ28ポンド
(12.7kg)の
シングルスピード自転車(試作品)
は、
スポーク、
リム、
フレームがすべて
段ボールから作られており、
自重の
約20倍の重さにも問題なく耐え
安全に走行することができる。
ご存知ですか?
エネルギーのブーム
麺専用フォーク
西洋料理では麺
は一般的に短く、
フォークで食され
ている。東洋で
は、麺はたいてい
長く、箸で食べら
れる。
この麺専用
フォークはどちら
のタイプの麺で
も使いやすく、
ス
タイリッシュな画
期的ツールであ
る。2012年、
シン
ガポールで開催
される国際的な
製品デザインコ
ンテスト、
「レッ
ド・ドット・デザイ
ン・アワード」
で
賞に輝いた。
新素材。リサイクルに出した段ボールが、
翌週
にはもう自転車や車椅子、ベビーカーとして
再び街に姿を現す様子を想像していただき
たい。
こうしたことを可能にするのが、
イスラ
エル企業、
カードボード(=段ボール)・テクノ
ロジー社の処理技術である。
同社は、中古車のタイヤのゴムや有機原料と
いった非金属の素材で強化された段ボール
を使って自転車車両を製造している。
素材は防水性と耐火性も兼ね備えており、金
属合金や炭素繊維に比べ、
より軽量で、
よりタ
フである。
さらに、原材料のコストも極めて低
い。n
press images
軟らかい
金属
金属細工。金属の板の上でくつろげるものだろうか?
答えは「イエス」
である。
デザイナーのピーター・ノーバ
ーグ氏が、1枚のアルミから折り紙のようにたたんでで
きた椅子であれば。
「エッジ・チェア」は、明るい色が美
的センスに優れているだけでなく、積み重ねもしやす
く、
アルミニウム製であるため屋内外のいずれでも使
用出来る。
より快適にという時にはオプションとして専
用クッションも用意されている。n
ボン市(ドイツ)の世界風力エネル
ギー協会(WWEA)の報告によれ
ば、2012年に、合計45ギガワットの
発電性能を持つ風力タービンが世
界各地に建設されました。
これによ
り、風力発電は世界規模で282ギガ
ワットの総発電容量を持つように
なりました。
これは世界の電力需要
の3%に及ぶということです。
THE WORD:
Germanane
航空宇宙
優れたデザイナ
ーの頭脳が、飛
行機のエコノミ
ー・クラスの座席
スペースやその
他の問題に取り
組んでいる。
デザ
インを専攻する
学生のアリレザ・
ヤコビ氏は、
ジェ
ームズ・ダイソン
財団のデザイン
コンペに自らの
コンセプト
「AirGo」
(エア・ゴー)
を応募した。椅
子やトレイによ
り薄い素材を使
用することでより
多くのスペース
を作るだけでな
く、ビデオモニタ
は天井から降り
てくる仕組みに
より前列の背も
たれの角度に左
右されなくなる。
(ゲルマナン)
米国オハイオ州立大学の研究者
は、炭素原子の層から成る素材、ゲ
ルマニウムについて研究してきた。
そして、ゲルマニウムの新素材の開
発に成功した。
「germanane(ゲル
マナン)」
と呼ばれるこの素材は多
層構造の結晶で構成されており、
その電子移動度は、従来のゲルマ
ニウムより5倍、
シリコンよりも10倍
も高い。
the number:
19
パーセント
2012年の風力発電の世界的容量
の成長率。
これはおもに中国と
米国が牽引したものである。
metalworking world 5
Quicktime
文:マーカス・ジョーンズ 写真:ダニエル・マンソン
ヘビー・メタル・
サンダー
かしこいリサイクルと、
ブランドイメージの創造
デウス・エクス・マキナ社は、2006年
にオーストラリアで設立された。無駄
をそぎ落としたシンプルさと最新の
部品・性能を兼ね備えた手作り
カスタムバイクが人気を集めている。
6 metalworking world
起業家。
「これこそ、私たちの理想と
していた若いバイカー世代のため
の集いの場そのものです」
デウス・
エクス・マキナのブランド&特別プ
ロジェクトマネージャー、
ステファ
ン・ウィガン氏は、
アメリカ・ロサン
ゼルス、ベニスビーチ付近のベニ
ス通りにある、小洒落たバイカーた
ちがひしめく流行の店を指してそ
う語る。
デウス・エクス・マキナ社(
以下、
デウス社)は、サーフボード、
衣服、
コーヒー、
そして人気商品で
あるカスタムバイクといった幅広
い商品を扱う企業で、
オーストラリ
アに本拠地を構えている。
同社はシドニーで誕生し、バリ、
イ
タリア
(ミラノ)
、
アメリカに、集い場
的ショップを持つ企業へと成長し
た。ベニスビーチの裏手には、
デウ
ス社のメカニック担当、マイケル・
ウーラウェイ氏がバイクの不要部
品を注文したり、時には一台丸ごと
のバイクを分解して部品にして、
デ
ウス社のカスタムバイクに再び組
み立てるためのガレージがある。
「昔の形状からインスピレーショ
ンを得て、モダンで実用的なツー
ルに生まれ変わらせる──それ
が、
デウス社のコンセプトの全てで
す」
ウーラウェイ氏は語る。
デウス社はバイクを組み上げるの
に最大2ヶ月を要する。
そうしたバ
イクのルーツは、大体1950年代の
イギリスの「カフェレーサー」
スタイ
ルに由来するが、エンジンからステ
アリングにいたるまで、使用されて
いるのは軽量化・小型化され、かつ
大きな馬力を持った最新のパーツ
である。n
Quicktime
文:ヘンリック・エミルソン 写真:CORBIS IMAGES
循環への巡回
デーム・エレン・
マッカーサー
持続可能性。
イギリスの女性プロセ
イラー、
デーム
(Dame:大英帝国勲
章を与えられた女性の称号)
・エレ
ン・マッカーサー氏。彼女は、
ヨット
による単独世界一周などの記録更
新を果たした後の2010年に、エレ
ン・マッカーサー財団を設立した。
循環型経済(再利用が可能な製品
など、
ものや情報・サービスが循環
していく産業システムの総称)への
転換を経済界に働きかけるのが、
この財団の事業である。
この団体
の最新企画は、世界中の大手企業
100社に対し、循環型経済への開発
と取組みを進めることを取り決め
ることである。
「循環型経済は、世界中の企業に
とっての明確かつ実績が明らかな
チャンスとなることを意味します」
と、マッカーサー氏は述べる。
「この
新しい構想は、人々にビジネスで
の様々な経験をシェアしたり、最高
の成功例から学んだり、
さらには実
際のビジネスでの利益獲得のため
に協力して働く、
といったようなつ
ながりの場としての機会ももたらし
ました。
この企画は、合計100億US
ドル以上の価値を持ち、有望な技
術革新、投資と雇用創出が生まれ
ると期待されています。
」
商品やサービスのフローをより強
化するため、金融、製造、人材、
ソー
シャル、
自然などあらゆる分野での
資本を再構築することが、循環型
経済の目的である。n
偉大な記録を打ち立てたセイラー、
デーム・エレン・マッカーサー氏は、
産業システムをより良くするため
帆を上げた。
metalworking world 7
Quicktime
文:ヘンリック・エミルソン イラスト:khuan + ktron
15%
%のエネルギー
生産アップ
120
mのローター径
106
デシベルを標準とす
る音響出力レベル
110
mから139m
の高さの鉄塔
舞い上がれ!
ゼネラル・エレクトリック
(GE)社が発表する新型風力ター
ビン
(ローター径がロンドンアイ観覧車とほぼ大きさであ
る、直径120m)は、巨大なだけではない。
それはインター
ネット上に配されたネットワークを駆使して 風量の変動
に対応することで、風力に関わりなく送電網に安定的な電
力を供給できる、初のスマート風力タービンである。
自動
車のアンチロックブレーキと同様、風力発電所内のタービ
ンはバラバラではなく、連動して稼動している。総合的な
出力が変わらないよう、一つのタービンが停止しても、他
のタービンが出力を上げる。新型のナトリウム電池が余剰
8 metalworking
world
電力を蓄電し、
風力が弱まるとその電力を使用する。
n
technology
文:クリスタ-・リヒト 写真:アドリアン・バート
新しい
画期的な刃先
画期的な次世代チップ材種GC4325はいかにして開発され、
幅広い鋼旋削加工にどのような将来をもたらすのか?
サンドビック・コロマントのシニアプロダクトマネージャーである
ミア・ポールソンに、
これまでの経緯と実績についてインタビューした。
記者: 鋼旋削加工においては、P25材種
が多くの加工の第一推奨です。
オールラウ
ンドで安全なこのチップは、多くの加工に
最適で、多くの難題を解決します。P25材種
チップ、GC4225がこの領域の加工を代表
するチップとして数年前に発売されたばか
りにも関わらず、新しい材種が開発された
理由とは?新材種が貢献できることとは何
でしょうか?
ミア: ISO P25の鋼旋削加工領域におい
て新しい材種を開発することの狙いは、更
に高いレベルの加工安全性と高い推奨切
削条件での加工を実現することでした。
こ
の領域におけるワーク材質、
ワーク形状、
加工工程、条件や制約の種類は、ほかの
加工と比べても非常に多く、だからこそ
ISO P25の旋削加工領域の問題を一つの
チップで解決することは難しいのです。
GC4325の開発により、我々はP25コー
ティング材種の第7世代に突入し、
この広
く多様な領域の加工により適したものが
誕生しました。第1世代から比べるとその
性能には大きな差があり、過去10年以上
の研究の中で最高の結果を誇ります。切
削加工の現場に与える影響は計り知れま
せん。
切削工具のリーディングカンパニーと
して我々は、お客さまの製造を改善してい
くことに常に全力を注いでいます。P25の
鋼旋削加工領域においては、刃先に対し
てより多くの多様な要求があることを我々
は承知しています。今回、材種の開発の過
程で、
あらゆる工具摩耗の可能性に対処
するために最も重要なコーティング密着
性の問題を改善することができました。チ
ップ超硬母材は、組織構造変化を起
こすことなく高温に対する耐性が
なければなりません。過去には
不可能でしたが、今回、
コーテ
ィングと母材の両方を新しく
開発することができました。
こ
の領域で過去最高の切削条件
を達成すると同時に、引き続き、
工程の安全性、寿命ばらつき
が少なく寿命予測のしや
すい材種を実現できた
ことが新材種の主要
な強みです。
とを説明できないでしょう。第1世代のコ
ーティング材種と比べると、目覚ましい進
化が見られます。GC4325の開発の陰で
は、他にはどのようなイノベーションがあ
ったのでしょうか?
ミア: 開発の陰には多くのことがありま
した。全ての要因について綿密なチェック
を行わねばなりませんでした。
この材種を
製造するにあたって行われた全ての製造
工程がイノべーションの結果だと言え
ます。
その中で一つ代表的な開発成果
をあげるとすれば、
アルミナコーティ
ングの新しい結晶構造でしょう。これ
により信じられないレベルの耐摩耗
性が実現したのです。
詳細は
www.sandvik.coromant.com/
gc4325をご覧下さい。
記者: コーティング
や母材の組織構造の
進化だけでは、
これほ
どの能力を達成したこ
metalworking world 9
technology
文:クリスター・リヒト 絵:BORGS
課題:材質、条件、加工工程などが多岐
にわたる鋼旋削加工を、一つのチップ材
種で行う場合、いかにして生産性や安定
性を引き上げることができるか。
解決策:多種多様な鋼旋削加工領域用に開発
された、新世代のコーティング材種を用いる。
この革新的な新材種は、従来よりもさらに広い
範囲において、さらなる高速加工を可能にし、
安定かつ長寿命を実現する高いポテンシャル
をもたらす。
鋼加工を
金属を効率的に切削加工し、満足のいく仕上げ面
を得るためには、チップの刃先が損傷のない状態に
保たれなければならない。早期に刃先が損傷してしま
う場合は、正常でないタイプの摩耗が進展した結果
であることが多い。
これにより早期に刃先が欠損した
り、
できあがったワークが公差から外れていたり、工
程の安定性が損なわれ、刃先は寿命を迎える。
現代の加工では、加工安定性の重要性が増してい
る。人が常に監視できない場面では特に重要である。
鋼の旋削加工中に刃先が損傷しない状態を長く保つ
ためにはいくつかの難題がある。一つは、ISO P25(鋼
加工)の加工領域が幅広いことである。例えば、切りく
ずの伸びやすい低炭素鋼から硬度の高い高合金鋼ま
で、丸棒から鍛造鋼まで、鋳鋼から加工済み(白皮)材
までと、複数の全く異なる材質をカバーしなければな
らない。
このため、鋼旋削加工における切削速度平均は、本
来の推奨値の約70%にとどまる。機械の性能、
ワーク
径、
オペレータの経験、
リスク回避などの要因が絡ん
でくるからである。
しかし、新開発されたP25 鋼加工)
材種であるGC4325では、切削速度を控えめに調整す
る必要がなくなる。刃先を損傷なく保ち、非常に高い
10 metalworking world
工程安定性を実現した。
この新材種がもたらした改良点は、特にベア
リングやそれに類する加工で使用される、加
工の難しい合金鋼において顕著である。
こ
こでの結果は、
この材種への当初の期待
を大幅に上回った。
これらの鋼は摩耗性
の高い硬質炭化物粒子を含んでおり、
急速にすくい面摩耗を進行させるた
め、刃先にとって脅威となる。
GC4325の超硬母材とコーテ
ィングは、高温とそれによって
生じる過剰な摩耗を低減する
よう開発された。加えてこの
材種は、切りくず排出に適し
た刃先温度を保つ性能にも
優れている。
これにより、
鋼旋削加工全
般における無人加工現場で要
求される、
より高い切削速度、
そして安定した長寿命をもた
らす刃先の性能を実現した。
n
切りくず
排出量
生産性の向上
切削速度
時間当たり
加工個数
ISO P25鋼旋削という幅広く多様な領域における生産性は、生産方法
などその個別の要件によってある程度異なってくる。
しかし、基本的に
は、
それらは加工効率(主として切りくず排出量)
と、機械稼働率(時間
当たり加工個数)の組合せである。刃先にとっては、切削条件と工具寿
命がその指標となる。加工内容にもよるが、GC4325の一般的な切削速
度は、400m/分である。
究める
ISO P25鋼旋削の加工領域におい
て、摩耗を一定かつ安定した状態に
コントロールし、突発的で制御不能な
摩耗を排除することが成功の秘訣で
ある。上の写真は、従来材種における
典型的な加工後の刃先状態のもの
である。摩耗の進行が早く、工具寿命
に達している。
下の写真は同工程・の同条件での
GC4325の刃先。刃先状態は良好で、
工具はまだ使用可能な状態である。
総括
新しいP25鋼旋削加工材種GC4325により、生産性は現状レベル
より平均30%引き上げられた。高い切削条件を実現する新材種
の性能、長寿命、高い安定性によりこの結果が可能となった。
GC4325は、新世代超硬コーティングチップとしての性能を発揮
し、幅広く多様な加工領域において新たな可能性をもたらす。
metalworking world 11
文:ヴィンセント・ベヴィンス 写真:ラロ・デ・アルメイダ
両社による
協力
ブラジル人がよく言う「working with two hands
(一緒に協力して取り組む)」 ―このようなパートナーシップが
サンパウロのエンジンブロックメーカー、カミンズ社に、
加工工程の改善と大きなコスト削減をもたらした。
ブラジル、サンパウロ.
ブラジル、
グアルーリョスにある
カミンズ社のエンジン工場。
サンドビック・コロマントとカミンズ社が
加工工程を最適化するプロセスを
共同開発した。
[1]
[2]
14 metalworking world
[1]カミンズ社の加工
ラインに立つサンド
ビック・コロマントの
穴あけ工具スペシャ
リスト、
マルコス・モリネ。
[2]プリセッタで工具の
準備をする、
サンド
ビック・コロマントの
ルイス・アダム・
ヴァヴァッロ。
ブロッ
nnn サンパウロにあるカミンズ社の工場では、
クCラインにおけるボーリング工程、
オペレーション120
での問題が悪化していた。
トラックのディーゼルエンジ
ンブロックをボーリング加工する古い機械が故障し、
そ
の間の損失コストは年間80,000ブラジルレアル(約360
万円)に達した。
また2011年の修理費は30,000ブラジ
ルレアル(約140万円)必要だった。
そして何より深刻な
問題として、
この古い機械により従業員が負傷するとい
う危険性があった。
サンパウロのカミンズ社の工場では、
カミンズ社の
加工スペシャリストや、サプライヤーからなる専門チー
ムが結成されている。
しかし工場の経営陣は、社内では
この問題を完璧に解決する技術的な手段を持ち合わ
せていないと感じていた。
そこで、故障が頻発する古い
機械の部品を交換しトラブルを未然に防ごうと、サンド
ビック・コロマントに助けを求めた。
サンドビック・コロマントの提案は、発想がそれまで
とは全く異なるものだった。
オペレーション120を完全
に廃止し、新工具を導入し、
より多機能の新機械に古い
機械の工程を再編成するというものだった。
サンドビック・コロマントのセールスエンジニア、
アン
トニオ・グランゾートのプレゼンテーションを聞き、
カミ
ンズ社の役員は納得した。
「今までにも他社から改善提
案されましたが、成功したものはありませんでした。
」
と
カミンズ社のエンジニア、エマーソン・カルロス・ドス・
サントス氏は言う。
「しかし、サンドビック・コロマントの
プレゼンテーションを聞いた時に、
『成功するかもしれ
ない。是非試してみよう。
』
と思ったのです。
」
この取り組みを実現させたのは、2005年以来工場に出
入りしていたサンドビック・コロマントとカミンズ社との
間のパートナーシップだった。全ての製造ラインを再編
成するための11名からなる実行部隊を両社で結成し
た。内8名はカミンズ社の社員で、3名がサンドビック・
コロマントの社員だった。
「初めはもっと少人数でスタートしましたが、
プログ
ラミングの問題も取り扱うようになり、徐々に人数が増
えました。
」
とカミンズ社のエンジニア、
ティアゴ・ヴァス
ケス氏は言う。
「多くのメンバーを巻き込んだ一大プロ
ジェクトでした。
できるだけ多くの人で改善に取り組も
うという考えでした。8台の機械を使っていたので、関
係するオペレータのリーダーを全員招集する必要があ
ったのです。
」
ラインの再編成には大きく二つの課題があった。
ま
ずオペレーション120を新しい機械に置き換えるのに、
防振工具という新技術が必要だった。次に、古い機械
で行われていたその他の工程を、加工時間を増やすこ
となく製造ラインに組み込まなくてはならなかった。
最も遅い機械に合わせた時間でしかライン全体を動
かせないからである。
サンドビック・コロマント、セールスエンジニアのグ
ランゾートが開発した当初案では、いかなる加工も12
分以上かからないと明記されていた。
この案では、
ライ
ン全体を加工時間が短くなるよう再編成する必要があ
った。
もしこれが成功すれば、
プロジェクトにかかる費
用を大きく上回る、年間700,000ブラジルレアル(約
2,940万円)のコスト削減が可能だと思われた。
結果は成功だった。初期段階から、操業費用だけで
年間180,000ブラジルレアル(約800万円)
ものコストが
削減された。
このように、
カミンズ社とサンドビック・コロマントとのパ
ートナーシップには、両者の協力によるソリューション
が常に開発、実践されている。
「ブロックCプロジェクト
は、
コスト面だけでなく、人間の仕事ぶりにも明らかに
大きなインパクトを与えました。
」
カミンズ社の製造監
督責任者、
ジェラルド・スミトモ氏は述べる。
「サンドビ
ック・コロマントとのパートナーシップについては、大
変満足しています。工具や加工工程についての最新技
術の提供を受けています。今年だけで8つの新しい工
具を試験中です。
」
「このようなプロジェクトは、
よく実施されています。
」
とスミトモ氏は言う。
「改善や開発の提案はどちら一方
から出ますが、
その実施は両社の協力によって行われ
ています。
」
エマーソン・カルロス・ドス・サントス氏は、最高のア
イデアは、皆でテーブルを囲んでコーヒーを飲んでい
る時に出てくることが多いと言う。また「常にコスト削
世界の自動車市場の
中で最も成長著しい
ブラジルにおいては、
自動車産業向け金属
加工業は名誉ある地
位を得ている。
しか
し、厳しい経済環境下
でコスト削減は必須
である。
カミンズ社では、ディ
ーゼルトラックエンジ
ン用ブロックやヘッド
に精密なドリル加工
を施し、自動車メーカ
ーのフォードやマン
向けに出荷している。
同工場での年間売上
高は、約1,200万ユー
ロ(約15億6,000万
円)である。
カミンズ社は製品の
15~20%を主に米国
向けに輸出する。
ブラ
ジル国内に新たに主
要工場を建設予定で
ある。
metalworking world 15
TECHNICAL INSIGHT
カミンズ社:サンパウロ、
ブラジル
オペレーション120 は、
カミンズ社の工場で
月間1,200ワークを加工していたエンジンブ
ロックのボーリング工程である。度重なる機
械停止が問題で、安全上の問題も抱えてい
た。機能が限定されている古い機械に対し
て追加のボーリング機能を提供するのでは
なく、サンドビック・コロマントはその生産性
向上プログラム
(PIP)
を通じて新たな改善
策を作り、他の機械にもその影響を広げた。
カギとなったのは、新たな工具、防振工
具である。
これは、専用機に限らず一般的な
機械を使ってΦ120ボーリング穴を精密に
加工することができるというアドバンテージ
を持っている。防振工具によるボーリング加
工工程では、機械による剛性が弱くても防
振機構により工具が安定した状態で加工す
ることができる。
この工具がカミンズ社の機
械に搭載された。
カムシャフトの荒加工時間が6分から2分
に短縮されたことも極めて重要である。
製造ライン全てが再編成され、7つの工
程がヘラー社製機械とグローブ社製機械に
移管された。新たな加工工程によりコストの
削減、効率の向上、製造時間の短縮が実現
した。
16 metalworking world
品質検査部が、加工された
エンジンブロックを出荷、
搭載する前に最終チェックする。
[1]カミンズ社の工場から見える
ドゥートラ通り。
サンパウロと
リオデジャネイロを結ぶ主要な
幹線道路である。
[2]防振工具を準備するサンドビック・
コロマントのレイソン・ヌネス。
[3]再研削され準備が完了した
穴あけ工具。
[1]
[2]
減が 求められています。エンジニアのティアゴが工具
について考え、我々は毎日チームとそれについて話し
合っています。
」
とも言う。
毎週金曜日には両社での合同ミーティングが開催さ
れ、6ヶ月毎に新たなプロジェクトを立ち上げることが
目標となっている。
「常に何かを改善する余地はきっとあるはずです。
」
グランゾートは確信している。
ブラジルの金属加工業界のトレンドを反映して、
ここ
数年、製造体制の拡大や再編成よりもコスト削減に、注
目が寄せられている。同国には巨大な国内市場と共に
アルゼンチンなど近隣諸国にも市場がある。
しかし、米
国やヨーロッパでの金融危機以降のブラジルレアルの
高騰により、活況を呈したブラジル経済においても製
造業界の競争力は相対的に低下している。2013年のブ
ロックCの生産量は前年比20%低下した。
金属加工を熟知している人材の確保と同様に、
コス
ト削減はビジネスに不可欠である。
「新たな工具や戦略が必要な時、サンドビック・コロ
マントは本当に頼りになります。
」
とドス・サントス氏は
言う。
「当社のこと、
そして当社の工場のことをよく知っ
ているからです。
」n
[3]
metalworking world 17
18 metalworking world
文:リスト・パクリネン レイアウト:アントン・ソーソン 写真:マグナス・クラマー
BRick by Brick
~ 地道な積み重ね~
インスピレーション。 「過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉がある。
玩具メーカーのLEGO社の例を見てみよう。LEGO社は、創造性に任せた製造に
管理・販売が追いつかず、2003年破綻に追い込まれた。しかし同社は、その豊かな
イノベーションをうまくコントロールする方法を見つけ出し、着実に再建へと歩を進めていった。
nnn「私は、創造性というものが過大評価されていると
思います」
と語るのは、ペンシルバニア大学の名門ビジ
ネススクールであるウォートン・スクールでイノベーシ
ョンと製品開発の教鞭をとっている、
デビッド・ロバート
ソン教授である。
ロバートソン氏は、LEGO社の混乱期
後の再建について指摘している。
1932年、
プラスチック製の組み立てブロック玩具の
会社として設立されたLEGO社。
このデジタル時代にお
いてもその存在感は色褪せない。
レゴの情報は常にネ
ット上にあふれているし、
あらゆる年齢層の子供たち
が、
ブロックが掃除機に吸い込まれる危険もかまわず
夢中で家中の床に自分のレゴの世界を日々構築してい
る。
それにも関わらず、2003年、LEGO社は破産の危機に
ひんしていた、
と
「ブリック・バイ・ブリック~LEGO社の
イノベーション・ルール見直しと世界の玩具市場の席
巻~」の著者、
ロバートソン氏は語る。
2003年、LEGO社は1億5,000万ユーロの損失を計上。ビ
ジネス開発マネージャーのヨルゲン・ビー・クヌッドスト
ープ氏は自社の今後の展望を悲観した。LEGO社は経
験豊富なイェスパー・オベソン氏をCFO(最高財務責任
者)に招いたが、彼はむしろ、今後この会社はもっと深
刻な状況になるのではないかとさえ考えていた。
そこで
同社は、従業員1,000人を解雇、本社ビルを売却し、緊
急融資を引き出し、
さらに、後には大半のテーマパーク
を売却した。
「要するに、生き残りのためのキャッシュ・フローをひ
ねり出さねばならなかったのです。
」
とロバートソン氏
は述べる。
会社として為すべき、
きわめて適切な判断をくだして
いたにもかかわらず、
そうしたことになったのは一体ど
うしてなのか。確かに、1990年代後半までさかのぼる
と、同社は子供が以前より若いうちにレゴを卒業し、ビ
デオゲームへとシフトしていたことに気づいていた。流
通経路が変化すると、新しい事業者はLEGO社の利益率
をどんどん減らそうとした。
デンマーク・クローネの為替
高の間に、競合他社は低コストの国で製品を製造する
ようになった。
また、
ちょうどLEGO社の特許の有効期限
が切れる時期でもあった。
同社は、映画、電子玩具、ビデオゲームや教育センタ
ーなど、数々の新たな技術革新を生み出した。世界中の
6個のレゴブロックに
は9億1,500万通り以上
の組み合わせがある。
毎年一年間で、
レゴで
遊ぶ人口は400万人以
上、
のべ50億時間に及
ぶ。
レゴは130カ国以上
で販売されている。
平均すると一秒あたり
7個のレゴセットが購入
されている。
地球上の全人口にな
らすと、一人あたり62個
のレゴブロックを持って
いる計算になる。
レゴブロックの製造に
おける機械公差は0.002
ミリメートルと小さい。
metalworking world 19
クリエイターを雇い、
スター・ウォーズやハリー・ポッタ
ーの取り扱いライセンスを取得した。
「スター・ウォーズやハリー・ポッターのレゴセットは
大変な成功をおさめましたが、
それは新作映画が発表
される年だけのことでした。
」
ロバートソン氏は説明す
る。
「映画のなかった2003年と2004年の前半は、深刻
な状況でした。1999年から2002年にかけての同社の
革新は、
そのほとんど全てが採算が取れない状況でし
た。
」
「さらに─」
ロバートソン氏は付け加える。
「LEGO社
は経費固定型ビジネスです。一定のレベルを超えて販
売すれば利益は急速に蓄積されますが、販売がそのレ
ベルを下回ると、損失が蓄積されてしまいます。
」
しかし、LEGO社が創造性を高めるための試みこそ
が、同社を廃業同然の状態に陥れたいちばんの原因で
あるという。
「会社のいたる所でさまざまなことが起き
ていました。LEGO社は社員に新しくひらめいたアイデ
ィアの活用を奨励しました。
それは採算性がなく、結
果、LEGO社を制御不能に追い込みました。同社は今、
創造性を維持しつつ、適切な新イノベーションシステム
を導入しました。
レゴデザイナーの仕事は、ただクール
な玩具を生み出すのではなく、
クールで、かつ”ニンジ
ャゴー”や”レゴシティ ポリスステーション”のようにヒッ
トする商品を考え出すことなのです」
「以前よりも彼らは遥かにヒット性にこだわって商品
を特化・製作しており、
したがって収益性が向上してい
ます」
収益性回復への過程で、LEGO社は自らの心臓部で
あるブロックに回帰した。
「LEGO社が得意なのは、
ブロ
ックを通じて物語を届けることや、お客様の組み上げ
た作品に素敵なドラマを見い出すことです。
」
とロバー
トソン氏は言う。
この危機はLEGO社に謙虚さを教えてくれた。かつて
は新しいアイディア発表のために大規模な社内プレゼ
ンを行い、経営陣が是非を決定した。
「今は、たとえばニ
ンジャの戦いのような物語のシーンをスケッチし、子供
たちの感想に耳を傾けます」
と、
ロバートソン氏。
「子供
たちの語りが熱くなるほど、
その製品に潜在需要がある
ということを、LEGO社は理解しています。社内では『正
直な人間は2種類しかいない。子供と、酔っ払いだ』
とい
う言葉がよく使われます。経営者の仕事は、子供たちの
LEGO社の経験から、
メーカーが学べることは?:
デビット・ロバートソン氏
ペンシルベニア大学
ウォートン・スクール 教授
意見を確認することです。
『子供たちは何と言った?そ
こから何をくみ取った?昔のやり方とは全然違うんだ
ぞ』──とね。
」
新しいイノベーション管制システムでは、注力の対象
はあくまでイノベーションである。今までのLEGO社の
経営陣は、成果に結びつかない決定を下していたので
ある。
「必要とされるのは、
コントロールなのです」
ロバート
ソン氏は語る。
「この方法はデザイナーの制作の自由度
を制約しますが、
それでも彼らははこの新しい方法を
歓迎しています。
日の目を見る可能性の皆無なものを
生み出すのでなく、
自分の作品が10回中9回も市場に
出回るようになったからです。
」
イノベーションと創造性とは別物なのだ、
と彼は言
う。
「企業内には、
さまざまな役割分担があり、
それは全
てイノベーションのためです」
と彼は言う。
「そうです
ね、例えばあなたは創造的なタイプではないかもしれ
ませんが、
クールな事業を展開している会社を見つけ
てそのアイディアを自社に導入したり、
あるいはクリエ
イティブなチームの管理職や、
または外部のパートナ
ーとの協力がすごく得意かもしれません。いろいろなア
イディアを持ち寄り、
それらを体系的に連携させること
は、本当に価値のあることです。
これが、有益なイノベ
ーションの秘訣なのです。
」
「創造力は、
そうしたイノベーションの一部ではあり
ますが、特に大きな部分を占めているわけではありま
せん」
ロバートソン氏は述べる。
「私は、創造性というも
のが過大評価されていると思います。私は創造的なア
イディアは、優れたプロセスから自然に生じる副産物だ
と思いますし、やるべきことをやっている際にはよく発
生するものなのです」
LEGO社の新システムが整って約10年、
それらは今で
も変わらずうまく機能しているようである。
「5年間での24%の年間売上高の成長率と40%の年
間利益成長率は、めざましい業績です」
ロバートソン氏
はそう述べる。
「偉大なイノベーション主導型企業の例
として、誰もがアップル社の名前を出しますが、LEGO社
もそれにふさわしい会社です。最近の成果はアップル
社をも凌ぎます。
」n
[1]イノベーションが常に利益を生むとは限らない。創造性と効率性のバランスをとる方法を理解すべきである。[2] 定期的に事業の取り組み
方や成果を見直し、上手くいかない部分は変える。[3]適応性は長期的な成功への鍵である。多様化のための新たな可能性を見逃さずキャッ
チする。[4] 遊び心を失わず、楽しむこと!
20 metalworking world
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metalworking world 21
technology
文:エレイン・マックラレンス 絵:BORGS
課題:突切り加工の改善。
解決策:ワークを無駄なく最大限に
利用し、加工工程の安定性を高める
最適ソリューションの適用。
突切り加工に
最適な
コンセプト
バーフィーダー付き機械でワークを大量生産するメ
ーカーは、全体的なコストを下げるため、
またバーフィ
ード能力を余すところなく使うために、
より無駄なく効
率的にワークを使用するためのソリューションを常に
求めている。特に、突切り加工においては、安定した寿
命を継続できる工具で、工程の安定性を確保すること
も、
ワークの品質を維持しつつ生産するために重要で
ある。
このような要求を満たすため、サンドビック・コロマ
ントは突切り加工のための新たなソリューション、
コ
ロカットQDを導入する。
コロカットQDは、Q-カットや
コロカットといった、既に実績のあるシリーズを開発
の基礎とし、柔軟性があり使いやすく、選定しやすい工
具シリーズにより、選択肢を広げている。
コロカット
QDは、板バイト、
ツールブロック、角シャンクバイト、
自
動旋盤用バイトなどのホルダ類と、前述の要求に応え
る新開発チップで構成されている。
開発においては、新たな工具材質の開発や、
より安
定した加工を行うためにFEM(有限要素法)
で計算さ
れた工具デザイン改善といった点に焦点があてられ
た。
チップの取付けには、洗練されていながらも簡単
で利用しやすいクランプメカニズムが採用されてい
る。
チップシートは、20度傾いており、高い切削抵抗に
対しても耐えうるよう、後部に当たり面を配置してい
る。幅2㎜以上のチップは、
クランプ剛性向上のため、
底面をレール形状とした。
また、新たに進化した突切り用のブレーカを開発す
22 metalworking world
ることにも重きが置かれた。突切り加
工では、切削抵抗を最小限に抑え、切
りくず排出を効率的に行うことが重要
である。良好な切りくず排出と仕上げ
面を持つ突切り加工を行うためには、
で
きるだけ小さいチップ幅と、溝幅よりも細
い切りくずが生成されるようなブレーカ形
状が必要になる。
コロカットQDでは、多様な
加工・被削材に対応できるよう、突切り用チ
ップブレーカ5種類、旋削用チップブレーカ
1種類、
カスタマイズプラス
(テーラーメイ
ド)のオプションを用意している。PVDコーテ
ィングチップは、
コーティング密着性が高く、
刃先品質、刃先処理精度を従来より向上さ
せている。
多くの最新式旋盤では高圧クーラント(HPC)
が使われることが増えてきている。
コロカットQD
では、
チップ幅が2㎜以上の工具に、バイト内部クー
ラントスルーの選択肢がある。配管は簡単で、機械・ポ
ンプが対応していれば、高圧クーラントが使用できる。
バイトだけでなくチップも、高圧クーラント・内部給油
の使用を想定した設計となっている。
コロカットQDは突切り幅を細くした工具を提供す
ることで、
ワーク材料コストの問題解決にアプローチ
し、高合金被削材の使用増加トレンドや、機械のバー
フィード能力向上には、高圧クーラントの活用で寄与
している。n
ケーススタディ:
工業用測定機器及び自動化装置のト
ップメーカーであるエンドレス・ハウザ
ー社は、最大径60㎜のバー材から製品
を製造している。加工時間は2分から10
分とワークの種類によって異なるが、突
切り加工が最終工程の一つである。製
造コスト低減のため、
より安定的な加工
工程を開発するべく、同社はサンドビッ
ク・コロマントの助けを求めた。
ワーク
の材質は、ハステロイかステンレスであ
り、全ての突切り工程に同一の材種とブ
レーカを使用することが目標だった。
エンドレス・ハウザー社はコロカット
QDを試し、
その結果、加工工程の安定
性が向上し仕上げ面品質が改善しただ
けでなく、工具寿命も延ばすことができ
た。中でも素晴らしく改善できた例で
は、
ステンレス用の工具寿命は6倍、ハ
ステロイ用の工具寿命は3~5倍も延ば
すことができた。新しい工具ソリューシ
ョンがもたらしたもう一つの利点は、
コ
ストの節減である。
より小さいチップ幅
を使用することにより被削材が節約さ
れ、
コストが削減された。チップを一つ
の材種とブレーカに集約することにより
在庫が削減され、
これもコスト節減に貢
献した。
総括
バー材からワークを大量生産するた
めには、コストを削減し、被削材を最
大限に活用する突切り加工が必要で
ある。コロカットQDは、サンドビック・
コロマントの持つ安全で生産的なバ
ーフィーダー付き機械による突切り加
工の長い実績に基づいて完成した最
新のソリューションである。その結果、
使い易く選び易いシリーズができあ
がった。
突切り加工の際には、切削抵抗の最小化と
効率的な切りくず排出が重要である。
metalworking world 23
文:ポール・レッドストーン
ギアミリング、
上昇する注目度
Per Morten Abrahamsen
新しい切削技術により、精度の向上と生産時間の短縮が
可能となり、ギアミリング加工の世界が変革されようとしている。
最大90%に達する時間の節約は、今までとは異なる、
全く新しいレベルの競争力を手にすることを意味する。
「少し前までは不可能と
考えられていたことを
実現しています」
サンドビック・コロマントの
副社長ラース・ブッシェ
は語る。
nnn ギアミリング加工で最も重要とされる
のは、
その品質である。
そのため業界は、新
技術が登場した時も、効果が完全に明らか
になるまではなかなか取り入れようとせ
ず、新技術の採用はなかなか進まない。
し
かし、刃先交換チップ技術、全く新しいコン
セプトのディスクカッターやホブカッターと
いった技術革新は、見落とすことができな
いほど劇的に生産性を向上させる可能性
がある。
「この技術革新は、発展的というより革
命的なものです」
と、サンドビック・コロマン
トの副社長ラース・ブッシェは言う。彼は、
産業が重要な岐路に立っており、将来の市
場の勢力図は、
メーカーが新技術にどのよ
うに対応するかにかかっているだろうと考
えている。
Q: これは本当に革命なのでしょうか?
A: 間違いありません!従来のソリューション
と比較して50~90%もサイクルタイムを短
縮するような工具や加工方法を、他になん
と呼べばよいのでしょう。
このような変化
は、
メーカーによっては取っつきにくいかも
しれません。
しかし彼らは自らに問うべき
です。
この技術を採用せずにいられるのだ
24 metalworking world
ろうか?と。
Q: 何かリスクはありますか?
A: きわめて少ないです。
この技術革新であ
る新しい工具は、3年から5年は使い続ける
ことができるでしょう。一般的に、私たちは
工具費用の回収期間を3ヶ月未満と提案し
ています。今日の歯車メーカーは、ハイス
(HSS)ホブを1つだけ購入するということ
はありません。多くの場合、生産ラインを円
滑に保つため、脱膜、再研磨、および再コー
ティングの作業に対応するために同サイズ
のホブを10個は購入するでしょう。
Q: サンドビック・コロマントは、
ギアミリング
加工やホブ加工におけるどのような飛躍的
進歩を実現したのでしょう?
A: ギアミリング 加工においては、切削工具
技術の可能性を最大限に活用することを推
し進めています。他に類を見ないフルプロ
ファイルのホブカッター、
コロミル176のよ
うに、サンドビック・コロマントは、少し前ま
では不可能と考えられていたことを実現し
ています。
当社の新型ディスクカッターコンセプト
は、生産性と工具寿命を大幅に改善する道
A: インボミリング加工は、一つのカッター
で異なるモジュールサイズのギア加工に対
応できる柔軟性があるため、小ロット生産
や試作生産のようなニーズに適していま
す。
また、昨今増加傾向にありますが、ホブ
盤等の専用加工機を持っていないお客様
にも適しています。
インボミリング加工は溝
加工やターンミリング加工を融合させてお
り、機械に1回セットアップするだけで、様々
なモジュールサイズやねじれ角のギアやス
プライン加工を可能にします。工具の刃形
状によってではなく、工具のツールパスに
よって創成されインボリュート形状を加工
するタイプのギア
(平歯車やはすば歯車)
用に開発された複合加工機の新しい加工
方法となります。
アップギアテクノロジーは、ベベルギア
の加工の生産性と柔軟性を高めます。
ま
た、使い勝手の良い専用ソフトウェアと、
ア
プリケーションに応じた各々のギアミリング
カッターとのセットで、多軸マシニングセン
タで使用可能です。
Q: 精度に関して、刃先交換式工具はハイス
(HSS)工具と比較するとどうでしょう?
A: ハイス
(HSS)ホブを再研磨すると、必然
的に品質精度が損なわれます。一方、最新
の超硬刃先交換式ホブならば、チップを交
換するたびに、新品同様の新しいホブに生
まれ変わります。
そして生産時間は50~90
%短縮し、完成した歯車1個当たりのコスト
はかなり安価になることでしょう。
は、50年前の機械で使用しても50%以上の
加工時間短縮につながったという良好な
結果が出た事例もあります。
しかし、新型カ
ッターを新型のホブ盤、例えばコロマント
キャプト工具ホルダに取り付けたときに
は、
あなたは魔法を体験することでしょう!
を切り拓いてきました。先進的な設計と計
測ソフトウェアを駆使したことにより当社の
開発した、仕上げ加工用ディスクカッター
についても素晴らしい進歩を遂げました。
現在では、
カッター製造前の時点ですでに
カッターの品質を予測することが可能とな
ります。
ホブ加工において、加工方法や要求精度
に応じて、
プロチューバランスの有無にか
かわらずチップをカスタマイズして製作す
ることができます。サンドビック・コロマント
の新しいコンセプトのホブカッターで加工
すると、多くの場合、通常のハイス
(HSS)ホ
ブでの加工と比較して、
より研削に適したワ
ーク表面と精度で仕上げることができます。
そしてプリハードン鋼材のギアを加工する
場合は特に、サンドビック・コロマントのコ
ンセプトホブカッターは、ハイス
(HSS)ホブ
カッターの性能をはるかに上回りま
す。HRc52の歯車の切削加工が可能なの
は、超硬工具のソリューションだけです。
Q: 中小企業で使用しても、大企業のような
メリットがありますか?
A: はい!大規模な製造メーカーは、
コロミ
ル176やコロミル177のような、新型コンセ
プトホブカッターを常に採用すべきでしょ
う。ギアの製造数量が約1,000~1,500個/
年の中規模メーカーの場合も、
このホブカ
ッターを使用するメリットがあります。小規
模メーカーの場合は、新型ディスクカッター
コンセプト、たとえば、
コロミル172が最適
です。
また、小規模メーカーもインボミリン
グ加工やアップギアテクノロジーといった
当社の革新的な新しいギアミリング加工を
採用することでメリットがあります。
Q: 最新の工具は最新の機械を必要とする
のでしょうか?
A: いいえ。我々の新型コンセプトカッター
Q: インボミリング加工やアップギアミリング
テクノロジーが向いているのは、
どのような
アプリケーションでしょう?
Q: 低い切削条件で加工した場合、工具寿
命の面でどのようなメリットがありますか?
A: 私たちは、少なくとも2〜3倍の工具寿命
が向上する可能性があるとご提案していま
すが、実際のところ、5倍もの効果が見られ
るケースもあります。切削条件を見ると、切
削速度は低い場合で80m/分程度です。
しか
し、生産力を高めたい場合には、
ドライ加
工で、250m/分程度まで切削速度を上げら
れる性能を有しています。当社のコロミル
176の刃先交換式ホブは、
コロマントキャプ
ト仕様でも製作することが可能で、複合加
工機や、5軸加工機でも使用することが可能
です。
Q: 新技術を駆使して製造可能なのはどの
サイズのギアですか?
A: 現時点で、M1.5(インボミリング加工の
場合)からM50のモジュールサイズのギア
です。
しかしそれは真の限界ではありませ
ん。サンドビック・コロマントのフルプロフ
ァイルチップは、現在M10までに限定され
ていますが、
さらにラインナップを増やす
ため開発を続けています。
プログラム拡大
と技術革新に不断の精進が続きます!
metalworking world 25
technology
文:トゥルッカ・クルマラ 絵:BORGS
課題:コーナR15mmで、深さ125mmに
もなる深いポケットのエンドミル加工
を、難削材の航空宇宙産業用部品に施
す方法。
解決策:ヘビーメタル製アンダーサイズ
円筒シャンクとヘッド交換式(EH)カッター
の効果的使用。
柔軟で
コンパクト
ツーリングにおけるモジュラー性とは、基本的には操
作上の柔軟性を高めるために意識的に選択肢を狭め
ることである。標準化されたカップリングは剛性を損
なうことなく工具在庫を効率化し、多機能性を実現す
る。
(メタルワーキングワールド2010年第2号 7ペー
ジ参照)
サンドビック・コロマントのコロマントキャプトとコ
ロマントEH(ヘッド交換式カップリング)は、モジュラ
ー性を利用した例である。
これらは非常に高い剛性と
強度を実現するため、両者ともテーパ部とフランジ部
の2面拘束という同じ原理に基づいたカップリングで
ある。
コロマントEHシステムは、1本のシャンクでソリ
ッド・刃先交換式超硬エンドミルからボーリング工具
まで様々な用途をカバーし、10~32㎜の中程度の径
に対応している。
この領域は、従来の超硬ソリッド工
具と刃先交換式工具の典型的な領域の中間に位置す
る。
以下のような、二つの全く異なるアプリケーション
がどちらもコロマントEHシステムのコンパクトな構造
の恩恵を受けている。一つは、大型マシニングセンタ
において長い突出しが必要とされる工具径10
26 metalworking world
~32mmの加工である。
もう一つは小・中型マシニン
グセンタおよびターニングセンタの回転工具ホルダ
で、工具長に厳しい制限がある加工である。
ターニン
グセンタのタレットの典型的なインターフェースのう
ちの1つは、
コロマントキャプトのC3~C5サイズであ
り、
また生産性が重要要件となる小型マシニングセン
タではBT30やHSK40/50である。
突出しの長い加工には、
スリムでありながら剛性の
あるツールが基本的に必要である。
コロマントEHシ
ステムはこれに最適で、
カッターヘッドに比べてやや
小径のシャンクであるため、深いポケットに必要なク
リアランスが生まれる。
航空宇宙産業における深いポケット加工は、
コロマ
ントEHカッターヘッドと超硬シャンク或いはヘビーメ
タルシャンクの組合せにより、工程安全性を損なうこ
となく必要な突出し長さで加工を行うことができる好
例である。ヘッド交換式システムの代わりに、専用設
計された工具を使用することももちろん可能である
が、
コストが追加で発生し、製造納期も長くなる上、工
具が破損したときには高いコストが発生することに
生産性に大きな影響を与える
ため、
ゲージラインからの長さ
が短いことは小型マシニングセ
ンタではとくに重要となる。
なる。
コロマントEHシステムのもう一つの重要な特徴は、
そのコンパクトさである。
スピンドルから刃先までの
間にはシャンクとそれに対応するカッターヘッドの二
つの部品しかなく、別のホルダは不要である。
これは、
短い突出し長さが必要なアプリケーションにおいて
有益である。例えば、
ターニングセンタの回転工具ホ
ルダの様に、工具長が旋回径で制限される場合(タレ
ットの外周にクリアランスが必要な場合)などである。
このようなアプリケーションにおいて、工具長が短く
剛性のあるヘッド交換式(EH)工具が生産性へ与える
インパクトは大きい。切込み深さは最大で従来の10
倍にもなることもある。
総括
コロマントEHシステムのようなモジュラー式工具は、様々
な形状のヘッドを交換できる操作上の柔軟性、安全性や標
準化の可能性を提案実現。ヘッドが交換可能なモジュラー
式工具は、深いポケット加工に対して長い突出しでの加工
を可能にし、狭いタレット上でも短い突出し長さで加工を
可能にする。いずれの場合においても高い剛性が生産性
アップに大いに役立っている。
metalworking world 27
文:ヨハン・ラップ イラスト:khuan + Ktron
アインシュタイン
からの系譜
イノベーション。ITER(イーター:国際熱核融合実験炉)と呼ばれる
核融合エネルギーのための新型研究炉建設が進められている。
目標におかれるエネルギー増倍率は従来の10倍。寄せられる期待も
大きいが、課題もまた多い。
nnn フランス地方、マルセイユの北東に位置するサン・ポール・
レ・デュランスでは、核融合エネルギーのために設計された世界最
大の研究炉、ITERの建設が進行中である。研究者たちによれば、
こ
の炉が未来の人類のエネルギー問題を解決する鍵となるかもしれ
ないという。
「核融合の目的は、実際に使用可能な恒星のエネルギーを地球上
に創り出すことです」
と、EFDA(European Fusion Development
Agreement:欧州核融合開発協定)の会長、
フランチェスコ・ローマ
ネリ氏は語る。
現在、商用原子炉で使用される核エネルギーは、原子の分裂時に
放出されるエネルギーを基盤としている。核融合エネルギーは、原
子が融合する際にエネルギーを放出する。
水由来の重水素や地上に存在するリチウムといった豊富な原料を
利用するため、核融合は事実上、燃料が枯渇することがない方法
だ。核融合は温室効果ガスや放射性廃棄物を発生させず、
また連
鎖反応を起こす可能性がないため、核分裂よりはるかに安全であ
ると見なされている。ITER関係者によれば、事故があったとしても
極めて限定的で、影響も局所的なものになるだろうと考えられると
いう。
核融合反応の実現に必要とされる膨大なエネルギー量は、大きな
課題となっている。極端な高温のなか、物質がプラズマ化してしま
うのである。
1991年、
ヨーロッパの試験施設(JET)が初めて、制御核融合で相当
量の電力(1.7メガワット)
を生産した。
28 metalworking world
その後の試験では、
さらに多くの電力が出力された。
しかしこれま
でのところ、生成されるエネルギーよりも遥かに多くのエネルギー
が生成のために投入されている。ITERに期待されているのはその
部分の改善である。高圧力下で摂氏1億5,000万度に達し、50メガワ
ットの入力電力から500メガワットの電力を生み出す性能を持つ施
設として建設されている。
ITERは2007年に建設が始まった。技術棟の建設予定地の基礎を整
地するのに、
ブルドーザー100台がかりで1年以上を費やした。
そし
て今年初頭、ITERのモダンなオフィスビルが開設された。
ITERの設備建設はまだ終了しておらず、段階的に進んでいる。研究
者たちは、
ここに至るまでに判明した主要な問題を解決する必要が
ある。一つには、排熱の問題がある。
プラズマはトカマクと呼ばれる
巨大なドーナツ型の磁場に閉じ込められる。
ドーナツの底部に配置
されるステンレス鋼とタングステン製のダイバータは、極めて高温
の排気と接触する。
これは、炉をわずか数分間動作させるだけの研
究環境ならば作動するが、継続的にギガワット規模の発電をする施
設ではそうは行かない。
別の未解決の問題は、
トカマク内部や他のプラズマに接触する部
品の素材である。核融合は、浴びることで固形物を溶かし劣化させ
る高エネルギーの中性子を生成する。
このプロセスに耐え得る素
材を見出す研究が不可欠である。
解決済の問題よりも未解決事項のほうがはるかに多い。一部の批
評家は、核融合エネルギーの商用使用は実現不可能な夢物語であ
トカマク型ITER
(国際熱核融合実験炉)
ITERは、EU、
インド、
日本、中国、
ロシア、
韓国、米国の資金
提供を受け運営
されている
トカマク型ITERの
温度は、太陽中心部
の10倍以上に相当
する1億5,000万度
に達する
トカマク型ITERは、
重量2万3,000トンに
達する見込みである。
これはエッフェル塔3基分
に相当する
ITERのトロイダル
磁場マグネットのためには
ニオブ・スズ合金製の
超伝導コイル約8万kmが
必要である
トカマクの建造物は
地上高60メートル、
地下13メートルに及ぶ
29 metalworking world
ヘリウム
重水素
パー・フォーセル
サンドビック•コロマント
エネルギー事業部マネージャー
「 答えはイノベーション」
中性子
サンドビック・コロマントは、新しいソリ
ューションを持つ発電会社を支援する
ために、研究開発に多額の投資を行っ
ている。エネルギー事業部のマネージ
ャーであるパー・フォーセルに、現在と
将来のニーズについて尋ねた。
Q:「ITERの建設は、素材と技術に高水準
の難しい要求事項があります。サンドビッ
ク•コロマントはどのようなかたちで参加
するのでしょうか?」
トリチウム
当社は、発電産業の高度な金属加工
技術において、その最先端におりま
す。ITERの部品を提供している企業
に、
ソリューションやアプリケーション
を提供しているのが当社です。
Q:「発電産業のお客様とどんな風な仕事
をしているのでしょうか?」
ると口にする。
「課題はまだまだありますが、未開の荒野を切り拓くのに充分すぎる
だけの潜在的価値があります」ITERの広報部長ミシェル・クレサンズ氏
は言う。
「私たちは、
その批評が誤りであることを証明するために一生
懸命取り組んでいます」
2020年に、最初のプラズマ試験を行うことを目標としている。ITERのタ
イムラインによれば、
その7年後、外部入力エネルギーの10倍の出力
を目的とした核融合実験が開始される。
ITERの計画は、2030年代には、
「DEMO」
と呼ばれる試験的な原子炉に
承継される。
それが送電網に供給される最初の核融合発電エネルギ
ーとなるだろう。EFDAの計画によれば、2050年までには、核融合が実
際に使用可能な商用エネルギー源となることが期待されている。
アルバート・アインシュタインが「E = mc²」
という有名な方程式で恒星
のエネルギー源についてのヒントを提示して、約150年が経つ。
この式
は、少ない質量(m)がきわめて大きなエネルギー(E)を生み出しうると
いうことを予言するものであった。やがて研究者は、核融合の秘密の
鍵を解き明かし始めた。
もしあなたが、核融合炉の機能する仕組みについて興味を持ったなら
ば、太陽について調べてみるといいだろう。太陽は水素原子核がヘリ
ウムに変化する核融合によってエネルギーを発生させている。太陽の
中心部では、毎秒6.2億トンの水素が融合しているのである。n
30 metalworking world
トリチウムと重水素
の融合は 中性子を
放出してヘリウム4を
生成し、17.59 MeV
(ミリオン-エレクトロ
ン-ボルト)のエネル
ギーを放出する。
石炭、ガス、水力、風力、原子力発電で
使用される部品の金属切削という分
野において、当社は傑出した実績を持
っています。サンドビックの提供する
工具やソリューションに関するニーズ
は、発電システムによってさまざまで
す。システムが複雑で、操業停止に多
くのコストがかかる発電方法場合はと
くに、問題回避のためには最高品質
のワーク部品が不可欠です。それを提
供できるのが当社なのです。
Q:「発電産業の将来についてあなたの展
望を聞かせてください。」
気候変動の問題は非常に深刻で
す。ITERなどのソリューションを実際
に使うことができるようになるまでに
は時間がかかります。少なくとも今後
20年間は、石炭火力発電に依存する
ことになるでしょう。石炭などの火力
発電に依存することになるでしょう。
石炭は環境を汚染するので、焦点をあ
てるべきは、現行システムの汚染物質
排出量削減と効率改善です。その中に
は、従来以上の高圧と高温条件下で
も作動しうる新素材を用いたタービ
ンが不可欠であり、その開発には高い
レベルの金属切削技術を要します。
こ
れまでの研究開発に注力してきた長
い実績があるので、当社はそうした難
しいニーズを満たすことができるの
です。
文:アナ・マックイーン 写真:オードリー・バルボウ
パートナーシップ
と進化
フランス、ピートル。
マノアー・インダストリーズ社は、原子力発電
産業向けのエルボやパイプといった大型ワークを製造している。
サンドビック・コロマントとのパートナーシップ関係を結んだことにより、
同社は、荒加工工程だけではなく、仕上げ加工工程まで全て行った
完成品を納品できるようになった。
metalworking world 31
小型部品の中仕上げ
加工中。新しい機械によって
最高16トンのワークを加工する
ことができる
このようなエルボは重量が8トン
にもなる、原子力産業にとっては
重要な部品である
リンゴ園。牛が
nnn 緩やかに波打つ丘陵、
青々と茂った牧草を食み、
その牛乳を使って
人々はカマンベールチーズを作る。
そういっ
たノルマンディー地方の牧歌的な光景も、
北フランス、ルーアン近くのピートルにある
マノアー・インダストリーズ社に足を踏み入
れるとすぐに忘れてしまうだろう。炎や溶け
た鋼、重工業・原子力発電産業向け巨大ワ
ークのハイテク加工が目に飛び込み、すぐ
さま別次元の現実に直面する。
マノアー・インダストリーズ社は、原子力
発電所用の原子炉金型製造で世界をリード
する企業で、石油化学及び原子力発電産業
でのアプリケーションで求められる特殊な
要件に合う複雑な形状をしたワークを、素
材から専門的に作る。
このようなワークに
は、失敗の余地はない。
32 metalworking world
2011年、同社は新たな機械への投資を決
め、バルブ本体や、重量が最高16トンにもな
るポンプ部品のワークを加工するため
に、TOS Varnsdorf社の横中ぐりフライス盤
WRD130を約3億円で購入した。
この投資
は、世界中の原子力発電所建設においてマ
ノアー・インダストリーズ社が主要なパート
ナーになるという意気込みの表れである。
ま
た、
フランスのエネルギー複合企業、
アレヴ
ァ社と2012年に締結した同国の第一世代原
子力発電所の原子炉を取り替えるパートナ
ーシップ契約を全うする決意の表れでもあ
る。
「今では原発用原子炉
の内側を加工できるよう
になりました。
」
とマノア
ー・インダストリーズ社の
工業メソッドマネージャー、
ジル・ボジュー
ル氏は言う。
「これら大型エルボやチューブ
は、
ピートルの鋳造所で以前から製造され
ていました。
しかし、
これまでは仕上げ加工
をしていない状態でお客さまに納品してい
たのです。今では、
これまでのお客さまには
完成品を納品し、仕上げ加工のソリューショ
ンを模索されている新しいお客さまには、
問題解決の門戸を開くことができるようにな
りました。パイプ、
エネルギー、バルブやポン
プ、
そして軍需などの産業のお客さまが新し
い取引の対象になります。
この機械は、2011年10月にフランスの代
理店REPMO社を通じてチェコ
の工作機械メーカー、TOS
Varnsdorf社に発注され、2012
年5月に引き渡された。同機の
WRD130機は、
コロマントキャプト
クランプホルダのC10、C8、C6サイズを
使用する。交換が素早く、剛性、信頼性が
あり、使いやすいソリューションである。
設置自体が複雑で技術的に難しく、設置す
る基礎を作るためにトラック34台分のコン
クリート、軽量コンクリートブロック1400個、
スチール補強材11トン、基礎工事用の石900
トンが必要だった。
機械の発注が済むと、マノアー・インダスト
リーズ社はどのような工具類を今後使用し
ていくか、
また、
さらに重要なことであるが、
どこからそれらの工具類を購入するかを決
める必要があった。
ボジュール氏は、
まずマノアー・インダスト
リーズ社の既存の工具サプライヤー3社に
意見を求め、同時にクルーニーにある国立
高等工芸学校(ENSAM)の研究開発センター
と共に研究を始めた。
「最高の切削技術と切
削工具を見出すためのプロジェクト立ち上
げを任されたのです。
」
自身がENSAMの卒
業生であるボジュール氏は言う。
「新しい製
造手法を最適化し、切削速度、切りくず排
出、摩耗状態の3つを最高のパフォーマンス
になるように組み合わせるために、切削工
具を検証する必要がありました。
」
そうして最適な工具を探す中で、サンドビ
ック・コロマントのコロマントキャプトを気
に入ったボジュール氏は、サンドビック・コ
ロマントのオルレアンオフィスに勤務する
ツーリングシステム・スペシャリスト、
ダミア
ン・ベノアと協力してプロジェクトを進め始
めた。
「原子炉の90度のエルボワークは、直
径が787.4㎜あり、重量が8トンあります。
」
と
ベノアは言う。
「このようなワークを加工する
際にでる切りくずの総重量は、約2.5トンに
もなります。最大の技術的課題は、
これら巨
ツールホルダには、いくつかの専用
コロマントキャプトC10カ
ッティングヘッドを採用。
長さや勝手方向(右、左、勝手なし)
には、
様々なバリエーションがある。
使用される刃先交換式超硬チップは、
サンドビック・コロマントによって
マノアー・インダストリーズ社のために
リサイクルされている。
metalworking world 33
失敗の余地なし。
マノアー・インダストリーズ社の
ジル・ボジュール氏と同社の社員たちは、
原発用成形一次ループで世界をリードする。
metalworking world 35
稼働中のTOS
Varnsdorf社の機械。
初めて加工されたエ
ルボは2012年10月に
納品された。
36 metalworking world
マノアー・インダストリーズ社の
ジル・ボジュール氏には、同社の
明るい将来が見えている。
大ワークを加工できるだけの機動性を持
工中のワークがどれほどびびりや
ち、完成ワークから4~20㎜の厚さの切りく
すいものかを考慮に入れてなかっ
ずをすべて排出することができる工具シス
たことにすぐ気がついた。
「エルボ
テムを設計することでした。
」
自体の9トンもの重量がワークを固
このアプリケーション専用に設計された
定すると思っていたのですが、加工
C10サイズのコロマントキャプトクランプホ
応力があまりに大きいので、
ワーク
ルダ及びカッティングユニットが使用される が力と共にびびり始めたのです。
ワ
こととなった。
「ダミアンは、私の希望する仕
ークを固定する専用のマウントを
様を取り入れて、工具案を出してくれました。 開発するための研究を、すぐ
ENSAMと共同で始めました。初め
サンドビック・コロマントは単に製品を売り
つけるのではなく、最も効率的な工程を考え て加工したワークは、結局、途中で
頑丈なチェーンを巻いて下ろして
られるよう手助けをしてくれたのです。
」
こなければなりませんでした。
」
と
ベノアが提案したのは、工具交換時間を
ボジュール氏は思い起こす。
短縮するためにカッティングヘッドが二つ
取付く工具を使うというアイデアだった。
「ダ また研究チームは、両サイドから
切削した切削面が本当に同じライ
ブルヘッド式あるいはツインターボ式と呼
ワークの大き
ばれるこの工具は、主に自動車用アプリケー ンに揃うのか、懐疑的だった。
さのために、一方から切削をした後、
ワーク
ションとして使われていますが、今回の加工
も、
この技術に最適な条件が揃っているよう を180度回転させ、反対の一方から切削を行
に思えたのです。
」彼は続ける。
「ACES(特殊
う必要があったのだ。
「両サイドからの切削
工具センター:サンドビック・コロマントの特 面の段差が0.1mm以下だということが最終
殊工具設計部門)のミッションは、標準的な
的にわかったときにはとても感心しました。
ソリューションでは解決できない技術的な
」
とボジュール氏は言う。
難題を抱える加工に対して、最先端の技術
初めて加工されたエルボは10月終わりに
を駆使しつつ費用的にも現実的な工具を開 納品された。
エルボ1個を加工するのに約
発することです。
」
250時間かかり、約2キロの超硬チップが使
マノアー・インダストリーズ社はまた、
コロ われる。
これらのチップはサンドビック・コロ
マントキャプトによるソリューションを社内
マントが集め、
リサイクルする。
に設置されている他の機械の標準仕様にす 情熱を共有していたからパートナーシッ
ることにも前向きである。
「当社の長期的な
プが成功したのだ、
と関係者は口を揃える。
コスト節減戦略を鑑みると、素早い工具交
「共通の目標を持ち、最適なソリューション
換、
モジュール性、互換性は非常に重要で
を見つけるのに、共に働きました。人間関係
す。
また私たちがほかのワーク加工にも仕
のレベルで響き合うものがある時に、パート
事を拡大した時のことを考えて、標準工具で ナーシップが成功するのだと信じています。
加工できる範囲を広げられる余地を持つ必
」
要がありました。
」
とボジュール氏は言う。
マノアー・インダストリーズ社にとって、今
こうして新しく設置された機械は、2012年 は興奮するような時期である。新たな投資
9月に稼働し始めた。
家が、
ビジネスを拡大させるための5年計画
しかしマノアー・インダストリーズ社は、加 を提案してきたのだ。同社は既存の設備の
交換や更新を行う新たな戦略に着手してい
る。
「将来の見通しは明るいです。
」
とボジュ
ール氏は言う。
「高い付加価値のある完成品
を、TOS Varnsdorf社の機械を使って製造す
前ページ下写真:
サンドビック・コロマントのソフィー・マリー(左)
、
るということは、未来の産業の形に一歩近づ
ダミアン・ベノア
(中央)
とマノアー・インダストリーズ社
くということだと思っています。
」n
のテリー・グリル氏(中央右)
、
ジル・ボジュール氏(右)
。
「最適なソリューションを見つけるため共に働きました」
と
ボジュール氏。
1917年、
ノルマンディー地方に設
立されたマノアー・インダストリー
ズ社は、今では世界レベルの地位
を築いている。
グループの主要部門は3つ:
石油化学と原子力、
エネルギーと産業、
鉄道と建設。
従業員数は1,600名。
年間売上高は約286億円。
2013年、同社は以前からパートナ
ーシップ関係にあった中国の金属
加工大手、烟台市台海集团有限
公司によって買収された。
お客さまとの仕事の中で着想、設
計される単発のワーク加工を得意
とするので、優れた品質とカスタ
マーサービスが鍵となる。
マノアー・インダストリーズ社は原
材料に関する専門知識に自信を
持っており、専用のソリューション
開発のためにできるだけ早い段
階からお客さまとの話し合いを始
める。結果として長い取引関係が
生まれるのである。
metalworking world 37
technology
文:エレイン・マックラレンス イラスト:チェル・ソーソン
最強の
エンジニアリング
航空宇宙産業の中でも、複雑
度や加工精度において最高
のエンジニアリングが求めら
れるのはエンジン部門であ
る。今後15年で同産業の生産
量は倍増することが予測され
ている。同時に、最新の高強
度かつ高硬度な材料の使用
38 metalworking world
が増加する見込みである。
こ
のことは、既に非常に高い要
求が課されている製造現場に
とって更なる負担となる。耐熱
合金(HRSA)への穴あけ加工
について、サンドビック・コロ
マントは実績のある新しいソ
リューションを用意している。
これらは航空宇宙産業の主
要な工程や、石油、
ガスといっ
た産業における妥協を許さな
い加工の要求精度に応えるこ
とができる。
加工中に生じる高い切削抵
抗により圧力及び温度が上昇
し、
その結果加工硬化を起こ
すため、HRSAの加工は非常
に困難である。加えて、熱伝導
率が低いため、穴あけ加工中
に生じる熱はワークに蓄積さ
れ、
この熱がドリルに伝わるこ
とによりドリルの早期欠損・摩
耗が生じる可能性がある。n
最高の精度
コロドリル846
薄肉ワークには、精密な
穴あけ加工が求められる。
進化したコロドリル846は、
均一な刃先処理と軸方向の
切削抵抗の低減により、
安全で安定した加工工程を
実現する。
専用の刃型形状
コロリーマ835
極端な応力にさらされる最新式の
複雑な形状をしたエンジンの
クリティカルパーツには、
穴品質にも
高い要求が求められる。
多様なアプリケーションや被削材専用の
刃先形状を提供する高性能超硬リーマ
のコロリーマが、
この問題を解決する。
安全なねじ切り加工
コロタップ耐熱合金加工用
ISO-S(耐熱合金)やその他
耐熱被削材のタップ加工は、
工具摩耗の進行が速い工程
であり、切削抵抗を最小に
抑えることが要求される。
刃先形状と材種が改良された
コロタップは、軸方向の切削
抵抗と所要トルクを低減する
ことができる。
優れた表面仕上げ
コロボア824XS
厳しい公差や優れた表面仕上げが
求められるケーシングやシャフトへの
小径穴ボーリング工具。
ミクロン単位に
径を調整できる調整スケールが付いている。
確実な工具性能
コロチャック970とコロチャック930
これらの高精度油圧チャックは、
タップ
加工や穴あけ加工において安定した
工具性能を発揮する。専用のトルクレンチ
によって迅速に取付けが行え、素早く簡単
なセットアップや工具交換が可能になるため
効率性も向上する。
metalworking world 39
Inveio
Inveio
Inveio™
結晶方向制御テクノロジー
鋼旋削加工用新材種 GC4325
鋼旋削加工用新材種
鋼旋削加工用新材種
鋼旋削加工用新材種 GC4325
GC4325
GC4325
その秘められた性能
その秘められた性能
その秘められた性能
鋼旋削加工用新材種 GC4325
TM TM 第一弾チップ材種
Inveio
Inveio
TM 第一弾チップ材種
Inveio
InveioTM 第一弾チップ材種
第一弾チップ材種
InveioTM 第一弾チップ材種
原子レベルの技術革新が切削加工の世界を一変させ
原子レベルの技術革新が切削加工の世界を一変させ
原子レベルの技術革新が切削加工の世界を一変させ
原子レベルの技術革新が切削加工の世界を一変させ
ました。絶妙に制御されたコーティング結晶構造に
ました。絶妙に制御されたコーティング結晶構造に
ました。絶妙に制御されたコーティング結晶構造に
ました。絶妙に制御されたコーティング結晶構造に
より、GC4325は広範な鋼旋削加工においてより長
より、GC4325は広範な鋼旋削加工においてより長
より、GC4325は広範な鋼旋削加工においてより長
より、GC4325は広範な鋼旋削加工においてより長
い工具寿命とより良好な耐摩耗性の達成を確実なも
い工具寿命とより良好な耐摩耗性の達成を確実なも
い工具寿命とより良好な耐摩耗性の達成を確実なも
い工具寿命とより良好な耐摩耗性の達成を確実なも
のにします。
のにします。
のにします。
のにします。
原子レベルの技術革新が切削加工の世界を一変させ
ました。絶妙に制御されたコーティング結晶構造に
新材種GC4325は鋼旋削加工領域の新たな新基準を
より、GC4325は広範な鋼旋削加工においてより長
新材種GC4325は鋼旋削加工領域の新たな新基準を
新材種GC4325は鋼旋削加工領域の新たな新基準を
新材種GC4325は鋼旋削加工領域の新たな新基準を
打ち立て、お客さまが常に求めていたものすべてを
い工具寿命とより良好な耐摩耗性の達成を確実なも
打ち立て、お客さまが常に求めていたものすべてを
打ち立て、お客さまが常に求めていたものすべてを
打ち立て、お客さまが常に求めていたものすべてを
このチップが実現します。
のにします。
このチップが実現します。
このチップが実現します。
このチップが実現します。
新材種GC4325は鋼旋削加工領域の新たな新基準を
打ち立て、お客さまが常に求めていたものすべてを
このチップが実現します。
寿命予測の信頼性向上 優れた耐久性
優れた耐久性
寿命予測の信頼性向上
品質標準を確実なものとす
機械の稼働率を
寿命予測の信頼性向上
寿命予測の信頼性向上
寿命予測の信頼性向上
優れた耐久性
優れた耐久性
優れた耐久性
品質標準を確実なものとす
機械の稼働率を
い
最大に維持します
品質標準を確実なものとす
品質標準を確実なものとす
品質標準を確実なものとす
機械の稼働率を
機械の稼働率を
機械の稼働率を
る
た め にる
Xた
線め
もに
使X
用線
しも
て使
い用 し て
最大に維持します
ます
る
る
るた
た
ため
め
めに
に
に
X
X
X線
線
線も
も
も使
使
使用
用
用し
し
して
て
てい
い
い
最大に維持します
最大に維持します
最大に維持します
ます
ます
ます
ます
寿命予測の信頼性向上
品質標準を確実なものとす
るためにX線も使用してい
ます
優れた耐久性
機械の稼働率を
最大に維持します
鋼旋削加工の新基準
鋼旋削加工の新基準
広範な鋼旋削加工に対応
鋼旋削加工の新基準
鋼旋削加工の新基準
鋼旋削加工の新基準
広範な鋼旋削加工に対応
広範な鋼旋削加工に対応
広範な鋼旋削加工に対応
広範な鋼旋削加工に対応
鋼旋削加工の新基準
広範な鋼旋削加工に対応
詳細は下記ウェブサイトでご覧いただけます
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www.sandvik.coromant.com/gc4325
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Print n:o C-5000:571 JPN/01
© AB Sandvik Coromant 2013:3
結晶方向制御テクノロジー
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