博士 (医 学) 大 田 光 仁

博士(医学)大田光仁
学位論文題名
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(卵膜上皮細胞の細胞質と皮膚基底膜部を認識する
ユ ニ ー ク な モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 29A)
学位論文内容 の要旨
ヒ 皮 細 咆 は種 々 の 器 官 の最 タ 矚 に 存 缶す る細胞 であり 、物 理的に あるい は免疫 機構や 内吩 泌機構 を通じ て
外 界 に 対 す る バ リ ア と 1て 機 能 す る な ど 、 各 臓 瀬 こ お い て 共 通 1, た 機 能 を も つ bそ れ ゆ え に 分 子 レ ・ ベ ル に お
いて ヒ 皮 系 細 織 には 多 く の 共 通し た タ ン ソ 汐が 存 在 し 、 例え ぱ 皮 膚 と 胎 盤卵 安 @ 弼 氈醒騾 焔鸛 馳にも 共通
し た 分 子 め 鋳 購 に 似 た 尭 態 を と っ て い る こ と が 知 ら れ て b、 る 。 さ ら に 、 ヒ 皮 細 胞 日 : 問 葉 細 Hと の 問 に 基 底 膜
を 形 成 し て い る 。 基 底 膜 に 共 通 1売 機 能 と し て 、 間 葉 細 胞 と の 間 の 接 着 を 強 固 な も の と す る こ と に 加 え 、 上
皮 ff*I脆 lc彌 亮 長 、 分 f匕 、 遡 員 卦こ 関 与 す る 桟 蛸 皀を 果 たし てV、 ること も知 らaJく いる。 これ らの重 要な 機能を 果た
す覚 め に 、 数 多 くの 分 子 が 関 わっ て お り 、それ ら分子 の解明 にこれ まで 多くの モノク ローナ ル抗 錐が貢 献し
て き た 。 ヒ 皮 細 胞 に お レ 、 て 、 現 在 も な お 繖 ロ の 重 要 な 分 子 の 存 笛う ミ 示 唆 さ れ て お り、 未 知 の 分 子 の 同定 弦 正
常 組 織 の さ ら な る 機 艶 弸 、 あ る い tr撒 ロ 嚠 鬩 患 嚠 矧 鬪 嬲 に お い て 必 要 不 i玖 と 考 え ら れ る 。
本 研 究 は ヒ皮 細 胞 に 存 荏す る 未 知 の 分 子を 同 定 す る こと を 目 的 と して 、 は じ め に正 常ヒ ト胎盤 卵膜細 胞
抽 出 物 を 抗 原 と し た マ ウ ス モ ノ ク ロ ー ナ ,1彬 を 本 を 伯 戎 し た 。 モ ノ ク ロ ー ナ ′ 噛 rL除 虹E常 ヒ ト胎 盤 組 織 を 用 い
て免 痕 黼 ビ 拘 拘 にス ク リ ー ニ ング し 、 興 味 ある 染 色 陸 を 示し た モ ノ ク ロ ーナ ル 抗 体 につい てイ ムノス クリ
ーニ ン グ 法 に よ りそ の 抗 原 を 同定 す る こ と を試 み た 得 ら ゎた 候 補 分 子 に つい て り コ ンビナ ント タンパ クを
f毒 捉 し モノ ク ロ ー す ′ レ 抗 本と ¢ 堀 8ぶ 陸 を 調 ペ 、 さ らに 9硼莫 和 雛 rぐ の 候 補タ ンソ くクの 局在 を免癌 阻織 f匕学 的に
調 べ た 。 続 い て 、 別 の ヒ 皮 系 鬮 餓 で あ る 皮 贓 こ お レ 丶 て 、 作 戒 さ れた モ ノ ク ロ ー 、 ナ ル抗 体 の 抗 原 の 発 現を 検 討
し た。
最 初 に 、 正 常 ヒ ト $M鋤 冊 倒 由 出 物 を BALB/cマ ウ ス に 触 し た 後 、 r職 よ ル リ ン ′ 嚠 ミ を 取 り 出 し 培 養 マ
ウ スミ エ ロ ー マ 細 咆 と融 合 さ 世 た ハ イ プリ 卜 一 ‐ マ を fキ 戒 し た 。モ ノ ク ロ ー ナ ′ レ Gコ 善 離さ れ たハ イブ リド. ーマ
の 培 養 上 清 を 正 常 ヒ ト 胎 盤 組 織 で 免 疫 齟 織 fぽ 馳 に ス ク リ ー ニ ン グ し た と こ ろ 、 伯 或 さ れ た モ ノ ク ロ ー ナ ル
抗 f) 1っ は IgMク ラ ス で 卵 ほ 縣 田 帥 疇 田 蚋 の 一 部 に 染 色 さ れ 、 こ れ ま で の 既 知 の 抗 体 の 染 色 パ タ ー ン と
は 事 轍 っ て い た 。 こ の 抗 体 を 慫 職 と 名 付 け 、 29Aが 認 瀞 け ^ る 分 子 の 検 索 を f#l始 し た 。 ま う 丶 正 常 ヒ ト 夢 朋莫
抽 出 物 を 用 い た ウ エ ス タ ン ブ ロ ッ ト 法 弼 よ 還 ラ 酌 沖 で も 非 還 元 粂 f牛 で も 剛 歩 ヾ ン ド は 瞼 出 さ れ な か っ た 。
こ の こ と か ら 、 29Aは コ ン フ ォ メ ー シ ョ ナ ル ェ ピ ト ー プ を 認 識 ナ る も の と 考 え ら れ た 。 研 麒 湘 靤 と 表 皮 細
胞 は 非 常 に 類 以 し て い る と さ れ て い る こ と か ら 、 イ ム ノ ス ク リ ー ニ ン グ に は 、 正 常 ヒ ト 表 皮 細 胞 cDNAラ
イ ブ ラ リー を l月 孔 ヽ た 。 8 x10Bク ロ ーン ′ の cDNAに つ b、 て タ ン ソ く ク を畳 頻 Iさせ 、 筮 鴻 ー を 使 って イ ム ノ ス ク リ
ー ニ ン グ を 行 っ た と こ ろ 、 最 終 的 に 3種 類 の 陽 性 ク ロ ー ン を 得 た 。 こ れ ら の 陽 陛 ク ロ ー 、 /| ま シ ー ク エ ン ス の
結 彡 kそ れ ′ そ 封 1^ 誠 曇 全 長 に 近 い ラ ミ ニ ン レ セ プ タ ー Qamimn receptorI闘 の d) NAの 断 片 で あ る こ と が 判
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明 し た 。 リ コ ン ビ ナ ン ト LRタ ン パ ク は 全 長 の 旺 常 ヒ ト L cDNAを 細 み 込 ん だ パ キ ュ ロ ウ イ ル C叉 を 塘 藻 さ
せ た 昆 虫 ir瞬 駅 許 嗣 ミ し 、 嬲 こ 29Aが り コ ン ビ ナ ン ト LRタ ン ソ ミ ク と 反 応 す る こ と を ド ッ ト プ ロ ッ ト 法 で
繊 し た 。 さ ら に 29A抗 本 と LRに 対 す る 抗 錐 を 用 い た 螢 光 ガ 讃 く 2重 染 隹 満 こ よ り 正 常 ヒ ト 夢 隠 輔 翻 包 に お
い て 29Aが 詔 葛 け ‐ る 抗 原 と LRの 局 在 牲 が 一 蚕 げ る こ と を 禰 認 し た 。 鷲 く べ き こ と に 、 こ の 29A抗 錐 を 用
b、 て 正 常 ヒ ト 皮 膚 を 婆 也 し た と こ ろ 、 雕 缶 諜 噺 餓 で の 梁 触 と 日 : 異 な り 、 表 皮 翁 爾 包 の 綱吋 包 内 日 灘 さ れ 珂 讖
膜 部 に 線 状 に 染 色 さ れ た 。 一 . 方 、 LRの 正 常 ヒ ト 皮 膚 に お け る 局 在 を LRに 対 す う モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体
MIAlC5を 用 い て 繊 し た と こ ろ 、 LRの 局 在 牲 も 胎 盤 と 皮 膚 で は 汰 き く 異 な り 、 ! 強 こ 表 皮 知 購 lc塒 圃 贓 こ
染 屯 さ れ ′ た が 、 誹 潮 ゴ 弱 く 基 r貘 に も 謀 屯 さ れ た
イ ム ノ ス ク リ ー ニ ン グ 法 に よ る dDNAラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ の 結 駿 ド ッ ト プ ロ ッ ト 法 に よ る
り コ ン ビ ナ ン ト タ ン ソ く ク と の 反 応 性 お よ び 蛍 光 抗 本 2重 染 色 法 に よ る 卵 rll f4mlflrCcD局 を 陸 がLRと 一 致 し た
こ と よ り 、 29Aは LRあ る い は 少 な く と も LRに 関 連 1, た 分 子 を 認 識 す る も の と 結 論 し た 。 29Aが 皮 膚 に
お い て も IRを 認 識 し て い る か 、 あ る い は 構 造 ヒ 、 j3WD似 た ニ 抗 原 決 定 基 を も つ 分 子 を 言 開 峩 し て い る か を 結 諭
付 け る こと は 重 要 で ある が 非 常 に 困難 で あ り 、今後 も慎璽 こ検討 を続 けるこ とが必 要であ ると考 える 。しか
し な が ら 、 現 呑 津 で 明 ら カ 斗 こ さ れ ー て い る 皮 膚基 底 粥 め タ ン パ ク漕 鰡 ご お m、 て も 基 圃 莫 に・ 香 在 し て お り 、 胎
盤 臓 弼 湖 膜 上 皮 細 包 嚇 爾 讃 を き 職 し 、 劇 恥 爛 舗 麒 部 を 織 す る と い う 29A嬲 艶 描 謝 隲 に ユ
ニ ー ク で あ り 、 こ の 29A抗 粥 を ‘ 争 後 、 正 常 あ る い は 様 々 な 疾 患 に お け る ヒ 皮 細 咆 、 さ ら に は 基 底 膜 の 研 究
|こ 有用な モノ クロー ナ′黼 こなり 得ると 考え た
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学位論文審査 の要旨
主 査 教 授 畠 山 鎮 次
副 査 教 授 守 内 哲 也
副 査 教 授 清 水
宏
学位論文題名
Auniquem
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ofamnioti
cepitheli
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(卵 膜上 皮細胞 の細 胞質 と皮 膚基 底膜 部を認識する
ユ ニ ー ク な モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 29A)
上 皮細 胞は 種々 の器 官の 最外 層に 存在 する 細胞であり、外界に対するバリアとして機 能す
るな ど各 臓器 にお いて 共通 した 機能 をも つ。 それゆえ分子レペルにおいても、多くの共 通し
たタ ンパ クが 存在 する こと が知 られ てい る。 さらに、上皮細胞は聞葉細胞との間に基底 膜を
形成 し、 問葉 細胞 との 間の 接着 を強 固な もの としている。これらの機能を果たすために 、多
くの 分子 が関 与し てお り、 それ ら分 子の 解明 に多くのモノクローナル抗体が貢献してき た。
上皮 細胞 にお いて 、現 在も なお 未知 の重 要な 分子の存荏が示唆されており、未知の分子 の同
定は正常組織の機能解明、あるいは未知の疾患の病 態解明において必要不可欠と考えられる。
本研 究は 、上 皮細 胞に 存荏 する 未知 の分 子を 同定することを目的として、はじめに正常 ヒト
胎盤 卵臓 細胞 抽出 物を 抗原 とし たマ ウス モノ クローナル抗体を作製した。正常ヒト卵膜 細胞
抽 出 物 をBAL
B/cマウ スに 免疫 した 後、 脾臓 よル リン パ 球を 取り 出し 培養 マウ スミ エロ ーマ
細胞 と融 合さ せた ハイ ブリ ドー マを 作製 した 。モノクローナルに単離されたハイブリド ーマ
の培 養上 清を 正常 ヒト 胎盤 組織 で免 疫細 織化 学的にスクリーニングしたところ、作製さ れた
モノ クロ ーナ ルあ 淋の 1っは 卵膜 細胞 の細 胞内 の一 部に 染色 され 、こ れまでの既知の抗 体の
染 色 パ タ ー ン と は 異 な っ て い た 。 こ の 抗 体 を 29Aと 名 付 け 、 29
Aが 認識 する 分子 の検 索を
開始 した 。ま ず、 正常 ヒト 卵膜 抽出 物を 用い たウエスタンブロット法では、還元条件で も非
還 元 条 件 で も 陽 性 バ ン ド は 検 出 さ れ な か っ た 。 正 常 ヒ ト 表 皮 細胞 c
DNAライ ブラ リー を用
い た イ ム ノ ス ク リ ー ニ ン グ 法 を 行 い 、 8x 106ク ロ ー ン の cDNAを発 現さ せて スク リー ニン
グし たと ころ 、最 終的 に3種 頃の 陽陸 クロ ーン を得 た。 これ らの 陽陸 クローンはシーク エン
スの 結果 、全 てラ ミニ ンレ セプ ター (IamI
ninOe
ptor
; LR
) のCDNA
の 断片であることが 判明
した 。全 長の りコ ンビ ナン トLRタン パク を昆 虫 細胞 で作 製し 、実 際に 2
(`狐がLR
タン パク
と 反 応 す る こ と を ド ッ ト ブ ロ ッ ト 法で 確認 した 。さ らに 2g
| A抗体 とLRに対 する 抗体 を用
い た 螢 光 抗 体 2重 染 色 法 に よ り 正 常 ヒ ト 卵 膜 細 胞 に お い て 29A抗 原 と LRの 局 在 性 が 一 致
す る こ と を 確 認 し た 。 驚 く べ き こ とに 、こ の29A
抗 体 を用 いて 別の 上皮 系細 胞で ある 正常
ヒ゛ト皮膚を染色したところ、胎盤卵膜での染色陸とは異なり、基底膜部に線状に染色された。
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一 方、 抗 LR抗体 で 正 常ヒ ト 皮 膚を 染 色 した と こ ろ、 胎盤と 皮膚では 大きく 異なり、 主に表
皮細 胞の細胞 膜に染色 された が非常に 弱く基 底膜にも 染色さ れた。イ ムノスク リーニ ングの
結果 、ドット ブロット 法によ るりコンビナントタンパクとの反応性およて閏隠縣田胞での局在
性 が 一 致 し た こ と よ り 29Aは LRあ る い は 少 な く と もLRに 関連 し た 分子 を 認 識す る も のと
結 論し た 。 し かし 、 29
Aが 皮 膚に お い ても LRを認 識 し てい る か 、 ある い は 溝造 ヒ、別 の似
た抗 原決定基 をもつ分 子を認 識しているかを結論付けることは重要であ.るが非常に困難であ
り、 今後も慎 重に検討 を続け ることが 必要で あると思 われる 。現在ま で明らか にされ ている
皮膚 基底膜の タンパク は胎盤 において も基底 膜に存住 してお り、胎盤 組織では 卵膜上 皮細胞
の 細胞 質 を 認 識し 皮 膚 では 基 底 膜部 を 認 識す る と いう 2gA
の 染 色 性 は非 常 に ユニー クであ
る 。こ の 29A
抗 体 は 今後 、 正 常あ る い f
ま 様 々 な疾 患に おける 上皮細胞 、さら には基底 膜の
研究 に有用な モノクロ ーナル 抗体にな り得る と考えら れた。
公開 発表に際 し、副 査の守内 哲也教授 からは 、イムノ スクリ ーニング 法以外 の別の遺 伝子
クロ ーニング 法などに ついて の質問、 副査の 清水宏教 授から は免疫沈 降法に関 する質 問、今
回の 研究で最 も困難だ った点 などにつ いての 質問、主 査の畠 山鎮次教 授からは ラミニ ンレセ
プタ ーの分子 に関する 質問、 モノクロ ーナル 抗体のエ ピトー プマッピ ングに関 する質 問、免
疫沈 降法に関 する質問 、その 他多くの 質問が 有ったが 申請者 は大概適 切な回答 をなし 得た。
この 論文は、 上皮細 胞におい て新しい モノク ローナル 抗体を 作製した 点、さ らにその 抗原
クロ ーニング を行った 点で高 く評価さ れ、今 後作製さ れたモ ノクロー ナル抗体 により 上皮系
細胞 の研究が さらに発 展する ことが期 待され る。
審査 員一同は 、これ らの成果 を高く評 価し、 大学院課 程にお ける研鑚 や取得 単位など も併
せ 申請 者 が 博士 ( 医学 ) の 学位 を 受け る の に充分 な資格を 有するも のと判定し た。
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