学校長通信・卒業式号

VOL.20
2016
3月8日
成田国際
校長通信
卒業式号
卒
業
歌 松 山千 春 作詞 ・作 曲 松山 千春
「 こみ あ げる 淋し さに 問 いか けた のは
足 ばや に過 ぎた 時 の流 れ
青い 空 青い 海 風の ささ やき 帰 らな い日 々が か けぬ けて ゆく
だ けど 今 夢が ある さ さや かな 夢 だけ ど あし たが ある から 」
20世紀を代表する人物に喜劇王と呼ばれたチャーリー・チャッ
プリンがいます。彼は、監督としても、さらに役者としても大変有
名であり、皆さんも彼の映画を一度は観たことがあるのではないで
しょうか。初期の映画は無声映画でしたので、彼が当時一世風靡し
たパントマイムの喜劇映画で彼の声を聞くことはできませんでし
た。しかし、彼はある社会的風刺の映画で初めて自分の肉声を披露
します。彼はこの映画で自分の考えを自分の声で伝える必要性を感
じたにちがいありません。その映画は邦題で「独裁者」、The Great
Dictator です。当時ナチスドイツを率いたアドルフ・ヒトラーを風
刺する映画です。この映画が公開されたのは1940年。まさしく
ヒトラーが全盛を極めていた頃の映画です。映画の作成には様々な
妨害があったと聞きます。しかし、チャップリンは決して怯むこと
なくこの映画を完成させます。そして、映画を通して、ヒトラーを
痛烈に批判するのです。この映画の中でチャップリンは独裁者とユ
ダヤ人の床屋の二役を演じます。映画の中で、この2人が瓜二つであったことから、ある時
偶然に独裁者と床屋が入れ替わってしまいます。そして、映画のエンディングでは独裁者に
入れ替わった床屋が人類に対して演説を行うのです。しかし、この演説は床屋の役ものでは
なく、完全にチャップリン自身の演説でした。彼は戦争や差別で苦しむ人々に本来の人間の
姿、あるべき世の中について訴えます。
We all want to help one another. Human beings are like that. We want to live by each other's
happiness, not by each other's misery. We don't want to hate and despise one another. In this world
there is room for everyone and the earth is rich and can provide for everyone.
「私たちは皆、互いに助け合いたいと思っています。人間とはそういうものです。相手の
不幸ではなく、お互いの幸福によって生きたいのです。私たちは憎んだり、軽蔑しあったり
したくはありません。この世界には、全ての人々が暮らせるだけの場所があり、大地は豊か
で、私たち皆に恵みを与えてくれます。」
そして、チャップリンはこの映画の中で独裁者の下に何もすることができず、悲しみに打
ちひしがれた人々に対してこう言います。
You the people have the power, the power to create machines, the power to create happiness. You
the people have the power to make life free and beautiful, to make this life a wonderful adventure.
「あなたたちには力があるのです。機械を作りだす力、幸福を作り出す力があるのです。
あなたたちには人生を自由に美しくする力があるのです。そして、この人生を素晴らしい冒
険にする力があるのです。」
同じ時代に生きた2人。ヒトラーは独裁者として戦争で人々に苦しみや差別を与えました。
そして、チャップリンは映画監督・役者として映画で人びとに平和の大切さを伝えました。
ヒトラーは1989年4月20日生まれ、そして、チャップリンは同年同月の16日生まれ
です。わずか4日違いの生まれの2人が全く正反対の人生を送ることになったわけです。
私はチャップリンのこの映画に対する思いを知った時、私なら何ができるかを考えました。
そして、私にできることは、映画ではなく、教育で平和の大切さを、そして、差別のない世
の中の大切さを生徒たちに伝えることだと強く思いました。
卒業生の皆さん、皆さんにも、チャップリンのように正しいことを正しいと伝える手段と
勇気を持って欲しいと思います。平和を愛し、誰もが幸福な生活を送れる社会を築く大人に
なって欲しいと思います。
蚤の箱
次代を背負う われらの使命
5つのミッション(使命)
ミッション1 出会いを大切にする。高校を卒業して、新しい学校、職場での出会いがあります。海外に出
る機会があれば、異文化との出会いがあります。
ミッション2 (相手の人や文化との)違いを知り、違いを理解する。異文化との出会いにおいてはこの
態度こそがグローバルリーダーに求められます。文化の違いに優劣はありません。
ミッション3 (相手や文化との)違いをコミュニケーションで克服する。違いを力で押さえつけても解
決にはつながりません。
ミッション4 何事も主体的に判断する。グローバルリーダーに求められるのは、客観的資料に基づく確固
たる信念と判断力です。そして、特に、選挙権を持った皆さんには主体的判断は必須です。
ミッション5 新しいもの(苦手なもの)に挑戦する。決められたものを愚直にこなすことも社会人として
は大切なことです。しかし、グローバルリーダーは常に問題意識を持って新たなものに挑戦し
ます。失敗を恐れずにまずやってみる。何かを始めなければ何も生まれないのです。