研究紀要 第 51 集 7‐(4) ( G10 ‐ 01) 平成16年度 「心の教育」についての調査研究 『他とかかわり共生しようとする 子どもを育成する心の教育のあり方』 ∼ 友だちとの関わりを深める道徳の時間の指導の工夫を通して ∼ ( 篠山城址) 平成17年3月 久留米市教育研究所 研究紀要 第 51 集 7‐(4) ( G10 ‐ 01 ) 【研究主題】 『他とかかわり共生しようとする 子どもを育成する心の教育のあり方』 ∼友だちとの関わりを深める道徳の時間の指導の工夫を通して∼ [心の教育研究班] 指 導 講 師 福 指導研究員 研 究 研 究 岡 教 育 大 学 講師 小林 万里子 久留米市立小森野小学校 校長 橋爪 晴子 員 久留米市立西国分小学校 教諭 川口 秀樹 員 久留米市立諏訪 教諭 高部 知子 中学校 【 研究主題 】 『 他とかかわり共生しようとする子どもを 育成する心の教育の在り方 ∼友だちとの関わりを深める道徳の時間の指導の工夫を通して∼ 目 次 Ⅰ 主題設定の理由 1 Ⅱ 主題の意味 2 Ⅲ 研究の目的 3 Ⅳ 研究の仮説 3 Ⅴ 研究の構想 3 Ⅵ 研究の実際 〔実践事例1〕 4 仲良しの友だちとけんかして仲直りするまでの主人公の気持ちを考え,友達と仲良く し,認め合おうとする心を育てる実践 小学校 第2学年 道徳 主題「友だちと仲良くし認め合う心」2−(3) 資料「なかなおり」(大阪書籍・生きる力) 西国分小学校 教諭 川口 秀樹 〔実践事例2〕 12 真の友情について考え,その友情を深めるために互いに励ましあい高めあおうとする 心を育てる実践 中学校 第2学年 道徳 主題「真の友情」2−(3) 資料「あるピエロの物語」中学生の道徳2年 諏訪中学校 教諭 高部 知子 Ⅶ 研究の成果と課題 19 ※ 参考文献 20 研究主題「他とかかわり共生しようとする子どもを育成する 心の教育のあり方」 ―友達とのかかわりを深める道徳の時間の指導の工夫を通してー 研究の概要 心の教育研究班では, 「他とかかわり共生しようとする子どもを育成する心の教育のあり方」を研究の 主題とした。他と共生しようとする子どもを育てるには,子どもにとって身近で切実な友達とのかかわ り方について考え,信頼・友情の価値意識を高めていくことが重要である。そこで,友達とのかかわり に視点を当て, 「心に響き,日常の行為に結びつく道徳の時間にする。 」研究を進めることにした。道徳 の時間で,子どもが道徳的価値を自分の問題としてとらえて追究するためには, 「過去の道徳的価値体験」 と「授業時の道徳的価値体験」をつないだり, 「その後の道徳的価値体験」へと発展させることが大事で あると考える。それは,道徳の時間の学習活動を大きな柱としながら,学校生活を中心とした学習・行 事・生活等の場面での子どもたちの実体験の充実や関連づけを図り,道徳的価値を深め,自分自身の変 容や成長に気づけるような学習に継続して取り組むことである。そこで,本年度は,子どもたちの友達 と関わった体験とつなぎその体験を生かす指導の工夫をすることで,主題の究明を図った。 キーワード:友達とのかかわり,共生,体験,心に響く教材,信頼友情,役割演技,討論,体験想起 Ⅰ 主題設定の理由 1 子どもの現状と社会の要請から 今日の子どもたちを取り巻く現状は,情報化, 価値観の多様化,少子化,核家族化等の様々 な面で変化し,子どもたちの生活や道徳的価値 観にも大きな影響をもたらすに至った。また,家 族や地域の教育力の低下,社会全体のモラル の低下,児童生徒の社会体験や自然体験の不 足等が挙げられるが,特に,人間関係の希薄化 が大きな問題となっている。子どもたちの人間 関係において,他者への思いやりや自分との 違いを認めることができない子どもが増えてき ている。また,自分の気持ちや考えを素直に表 現できない子もいる。そこで,他とかかわり共に 生きるという共生の理念の基に,違いを認め, 他者を思いやり,互いに励まし合うことができる 子どもを育成することが重要であると考え,本主 題を設定した。 2 道徳教育の本質から 道徳教育とは,人間が本来持っているよりよく 生きたいという願いやよりよい生き方を志向し実 践する人間の育成を目指し,その基盤となる道 徳性を養う教育活動である。この道徳性は,人 格の基盤をなすものであり,日常生活において, 自分自身、他の人,自然や崇高なもの,及び集 団や社会とのかかわりを豊かに持つことができ るような体験を充実させることによって発達する。 これからの教育においては,変化の激しい社 会においていかなる場面でも他(自分自身,他 の人,自然や崇高なもの,集団や社会・・・解説 書道徳編 4 視点)とのかかわりを豊かなものに する等,他と共生しつつ自律的に社会生活を 送れるようになるために必要な人間としての実 践力の育成が必要不可欠である。このような力 を育てる心の教育のあり方を探究したい。 3 これまでの道徳学習指導の反省から 道徳の時間は,各教科・特別活動・総合的な 学習の時間等で行われる道徳教育のかなめを 担っており,各教育活動において行われる道 徳教育を全体にわたって調和的に補充,深化, 統合する時間である。しかし,道徳の時間にお ける学習において知的には価値を意識してい ても,子どもたち自身も身近な自分の問題とし てその価値に気づいていなかったり,内面にま で深まる価値の自覚が不十分であった。また, 日常生活の中に態度や行為として十分に生き るまでにはなっていなかった。そこで,子どもた ちの体験とつないだ指導の手だてを工夫する ことで,主題の究明に取り組んだ。 ―心教 1― Ⅱ 主題の意味 1 「他とのかかわり」とは 本研究においては,学習指導要領第3章道 徳内容2の「主として他の人・・」の示す「他者」 のみでなく,自己をとりまくひと・もの・ことを含め て「他」と捉えている。その立場をとりながら,こ こでは,児童生徒が共生しようとするために一 番身近で影響力を持つ友達とのかかわりを考 えることにした。 「かかわり」とは,学習活動や日常生活での ふれあいや自然体験活動等の豊かな体験への 参加,自己を振り返る行為等を通して,自己の 内面にある道徳的価値に主体的に向き合おうと することを指す。 「他とかかわり」とは,体験や具体的活動を通 して,他者や周囲に対する自己の見方や道徳 的心情を変革させると共に,「更に進んで他に 働きかけようとする道徳的実践意欲を持つ」こと である。 2 「共生しようとする子ども」とは 「共生」とは,一般的に「人間が人間や人間以 外の事物と繋がりあって,その生活が維持され ていること」を意味する。本研究では,「共生」を 単に周囲に同調するのではなく,考え方や立 場の違い,生き方の違い等を乗り越え自他共に 生きようとすることだと捉える。 「共生しようとする子ども」とは,「自分と他を共 に生かそうとする子ども」である。「他から生かさ れていることを知り,他のよさや違いを認めるこ と」,その結果「よりよい道徳的価値の方向へ自 己を変革させていくこと」を含む。 具体的には,「違いを認め合う心」「よりよい道 徳的価値の方向へ自己を変革させようとする構 え(態度)」の二つがそろっていることを指す。 3 「心の教育」とは 「心の教育における心」とは,自分・他人の区 別なく,人間全てを「かけがえのない存在」と考 え,他を想い自己を問う態度をもたらす働きの ことである。それは,価値判断し,価値に共感し, 価値を大切にして生きようとする心であり,人間 としての価値観,人生観そのものである。 従って,21 世紀の教育課題である「生きる 力」の育成のためには,「心の教育」の充実は 欠かせないものである。 本研究班では,道徳的価値項目として,信 頼・友情・2−(3)を検証授業で取り上げた。 4 「友達とのかかわりを深める」とは 副主題でいう「友達とのかかわりを深める」と は,主題にある「他とかかわり共生する子ども」 の「他」を子どもたちに身近な「友達」に視点を 当てた取り組みである。また,その友達とかか わり合う体験をここでは次の三つの体験に分類 する。「過去の活動の道徳的価値体験」「授業 時の活動の道徳的価値体験」「授業後の活動の 道徳的価値体験」である。 「過去の活動の道徳的価値体験」とは,子ど もたちが,学校生活を含めた日常生活・教科や 行事等で,友達と関わり合った体験であり,「授 業時の活動の道徳的価値体験」とは,子どもた ちが,道徳の時間の学習過程の中に位置づけ られた資料の人物に,自己の体験を重ねて,思 いを表現する役割演技や討論等の体験である。 「授業後の活動の道徳的価値体験」とは,子ど もたちが道徳の時間で深めた道徳的価値を具 体的に生活場面に生かすことであり,友達と関 わり合う体験である。 5 「道徳の時間の指導の工夫」とは 道徳の時間の学習過程のそれぞれの段階で 「過去の活動の道徳的価値体験」「授業時の活 動の道徳的価値体験」「授業後の活動の道徳的 価値体験」を子どもにとって身近な資料を活用 しながら,子どもにとって切実に心に響く学習 活動を体験させ,道徳的価値の自覚を内面に まで深めることである。体験をその場限りの学 習で終わらせることなく,生活の場でも継続させ ながら発展させる。そのことによって,子どもの 道徳性は補充,深化,統合され,道徳的実践力 が深まり,子ども自身のよりよい生き方に結びつ いていくものと考える。そのために,①体験とつ ないだ道徳の時間の指導計画②体験を生かす 活動の工夫③体験を道徳的価値へと深める支 援の工夫等を通して研究主題の究明を図った。 ―心教 2― 本研究班では,学習過程を次のように考えた。 【道徳の時間の学習過程】 Ⅲ研究の目的 友達とのかかわりを視点として,体験を生 かした道徳の時間の指導法を工夫し,他とか かわり共生しようとする子どもを育成する指 導のあり方を明らかにする。 Ⅳ 研 究 の 仮 説 道徳の時間の学習過程で,友達とのかかわ りに視点を当てた事前の体験とのつなぎ方を 工夫し,体験が生きる手だてをとれば,道徳的 価値をより切実なものとして受けとめるので,価 値の自覚が深まり,他とかかわり共生しようとす る子どもが育つだろう。 ○仮説の具体化の視点 (1) 友達とのかかわりを視点とした,体験 の充実と体験とつないだ指導計画の工夫 (2) 体験を生かす道徳の時間の学習過程 の工夫 ①体験を生かす活動の工夫 ②体験を深める支援の工夫 段 ねらい 学習活動 支援 気 道徳的課題 体験を想起して,課 写真等の提示 づく 把握 題に気づく。 見 道徳的価値 資料の人物の道徳 主要発問,学 つ の把握 的行為や心情に気づ 習プリント,板 く。 書の工夫 階 め る 深 道徳的価値 資料の人物や友達 主要発問,学 め の内面化 の考えを取り入れ, 習プリント,板 高まった価値から自 書の工夫」 分の体験を振り返 アンケート等 る。 の提示 る ま 道徳的実践 道徳的価値について 類似体験の紹 と への意欲 の考えを整理し,実 介 め ―心教 3― 践への意欲を高め る。 Ⅵ 研究の実際 ―――― 【実践事例1】 ――――――――――――――――――――――――――― 仲良しの友だちとけんかして仲直りするまでの主人公の気持ちを考え,友達と仲良くし,認 め合おうとする心を育てる実践 小学校 第2学年 道徳 主題「友だちと仲良くし認め合う心」2−(3) 資料「なかなおり」(大阪書籍・生きる力) 久留米市立西国分小学校 教諭 川口 秀樹 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 実践の概要 本実践は,日常の生活場面での友だちとの間における道徳的体験を想起させ,友達と仲良 くしていこうという心情を育てる授業実践である。子どもたちの日常の生活体験にありがちな口 げんかをした二人が仲直りするまでの様子を心情を中心として考えさせる資料「なかなおり」の 紙芝居を用いて授業を行う。読み聞かせによる場面構成法(紙芝居),(役割演技)を取り入れ, 友達とぶつかり合い,仲直りしたくても,なかなか自分から言い出せない心の動きに共感させ, その後仲直りするまでの心の動きを考える中で,友達のよさに目を向けることの大切さと,その 友だちが自分にとって大事な存在であることに気づき,友だち自身の気持ちを考えることで, 友達と仲良くしていこうという意識を持たせたい。さらに,次時,エンカウンターで体験的に自 分の良さや友達の良さを認め合いながら,互いに感謝の言葉を交わしたり,握手したりしてス キンシップを図りながら,なかまとしてのつながりを深め合う場を設定する。そのことで,子ども 達は,自分につながりのある周りの人々へと視野を広げ,自分や友達の良さ,友だちがいるこ との安心感や喜びを自然に感じ取ってくれると思われる。また,その時だけの取り組みに終わ ることなく,事後の体験と適時結びつけながら「仲間のすばらしさ」「相手を思う心」に目を向け させ,友達と仲良く助け合おうとする心情を深め,日常の実践へとつないでいきたい。 キーワード 心の教育,他とのかかわり(転校した友達の声),共生,道徳,身近な体験(アン ケート),心に響く教材,助け合う心,役割演技,読み聞かせによる場面構成法 (紙芝居),エンカウンター 1 指導観 ○ 本学級の子どもたちは,明るく元気で友達と仲良くすることの楽しさは感じている。仲が良 いだけ関わり合う時間も長く,それだけトラブルも多い。遊びのことで,けんかになってしまう 男子や,同じように口げんかから「もう,絶交やん。」と口に出してしまう女子の姿などがこれ まで見られた。また,自分のことしか考えず,相手の友だちの気持ちを考えきれない子,自 分の素直な気持ちをなかなか言えない子等がいる。そこで,児童に,友達に関するアンケ ートをとってみると,次のような結果であった。 ・なかよしがいる。 34人 いない。 1人 ・友だちとけんかしたことがある。 28人 ない。 7人 ・けんかして,なかなおりしたことがある。 27人 ない。 1人 ・なかなおりしなかったことがある。 13人 ・なかなおりしたいことがある。 9人 この結果やこれまでの学級会や日常の子どもたちの様子を見ると,もっと友達と仲良くな りたい,友だちを増やしたい,いいところを見つけたいという思いを持っていることが分かる。 そこで,仲直りしたいのにできないときの気持ちを共感的に考え、相手の思いに気づき,お 互いを認め合うことの心地よさを感じ取らせたい。そして,友達と仲良くし,相手を思いやる 心とそれを基にした行動を大切にしながらより良い人間関係を作れるように支援していきた い。この時期に,けんかしてしまったときの心の動きを考え,その時の相手(友達)の心を知 ることは,今後,友達関係を大切にしようという気持ちを高め,「仲直りするとすっきりする。」 ―心教 4― 「きちんと相手に気持ちを伝えよう。」という意識も持たせることができると考える。 ○ 本資料は,大阪書籍・生きる力の「なかなおり」の紙芝居で、最後ににっこりほほえむぶうき ちの心に残ったいい物について想像することで,友だちと仲良くすることの価値について考 えることのできる資料である。このお話を通して,相手の気持ちを考え素直になって自分の 気持ちを伝えることが,相手のよさを認め合い友達と仲良くする満足感を得ることができるこ とで価値に迫らせたい。そこで,友だちとけんかしても仲直りしようとする気持ちや相手の良 さを知り合う活動を通して,自他を認め肯定して,明るく生活できる子どもを育てていきたい と考える。 また,資料を活用して心情面を耕した後,エンカウンターを取り入れ,自分や友達の良さを 体験できる活動を仕組むことで,自他を肯定する心地よさを実感させるとともに,日頃気づ かなかった相手への仲間意識の深まりへとつながるだろうと考えこの主題を設定した。 ○ 本時の指導に当たっては,登場人物の気持ちに自分を重ね合わさせ,役割演技を通して, 仲直りするまでの迷いに迫らせたい。さらに、友達のよさを認めることの大切さを考えさせ, 素直な気持ちを伝えることで友達と心をまた一つ強くつなぐことができるということを感じ取ら せたい。本主題では,本資料「なかなおり」は,登場人物に同化しやすく,分かりやすい話の 展開になっており,役割演技を取り入れる。 また,資料を活用して心情面を耕した後,次時にエンカウンターを取り入れ,自然に互い をほめ合い,それに対してお礼を言ったり,これからもよろしくの握手したりするスキンシップ をとる活動をすることで,体験的に自他を肯定する心地よさを味わわせたい。 そこで,本時は次の観点で支援を行う。 ・ 「気づく」段階で,アンケートの集計表で自分達のクラスの実態を確かめた後,「友達と もっとなかよくなるにはどうしたらいいだろう。」という点に目を向けさせ,本時のめあて をつかませる。 ・ 「見つめる」段階で,紙芝居を読み聞かせながら,あらすじと人物の関係を理解させ, なかなか謝れない主人公のぶうきちの心の動きについて考えさせる。次の日の朝、仲 直りできた場面を全員に役割演技させ、「ごめんね。」と言い合うことができたわけを考 えさせる。そして,最後ににっこり笑った『ぶうきちの心』に残った物は何かについて考 える。 ・ 「深める」段階では,さらに、ぶうきちのように自分もあやまってよかったという経験はな いか,友達にあやまってもらってうれしかったことはないか出し合う。 ・ 「まとめる」段階では,転校した友だちからのお礼の声のテープを聴かせ,友達のよさ を感じ取らせる。さらに,今日の学習で学んだことの感想を出し合い,本時のまとめを する。その中で,これからは、友だちのいいところを見つけ,素直に「ごめんね。」と言い 合えるもっと仲よしのクラスになることを新しいめあてとしたい。 2 指導計画(友達との関わりを視点として) 【行事】運動会 ○男女で協力する。 ・「大玉転がし」の練習 ○みんなで力を合わせる。 ・「40メートル走」の練習 【行事】社会見学 ○班で話し合い,協力し ながら見学する。 【休み時間の遊び】 ○ぶつかり合いながらも,仲良 く遊ぶことができる。 (本時1時間) 【道徳】紙芝居「なかなお り」 ○互いのよさを認め合い, 仲良くする態度を育てる。 ―心教 5― 【学級活動エンカウンター】 ○友達と自分のいいところ を見つけ認め合う。 3 主眼 ○ 『ぶうきち』の気持ちを役割演技をしたり,吹き出しに書かせたりする活動を通し て考え,友だちと互いのよさを認め合い,仲良くしていこうとする態度を育てる。 4 準備 紙芝居「なかなおり」,「ぶうきち」と「もんた」のお面,掲示用のぶうきちともんたの絵, アンケートの表,道徳プリント,遠くに行った友だちの声の便り(転校した友達) 5 本時の過程 段階 気 づ く 見 つ め る 深 め る ま と め る 学 習 活 動 1.アンケートの表から,友だちとけんかしたこと, なかなか仲直りできなかったことについて出し 合う。 ○ 仲直りしたいと思いながら,しにくかった経 験についてアンケートの表で知る。 2. 本時のめあてをつかみ、 「なかなおり」の紙 芝居を見ながら,ぶうきちの気持ちを話し合う。 教師の支援 ・アンケートから周り の友だちが,自分と 同じような経験をし ていることに気づか せる。 ・興味を持って話を 聞けるように,分かり やすく短い紙芝居 友達ともっと仲良くなるにはどうしたらいいだ で読み聞かせる。 ろう。 ・二人とも悪意がな かった点を押さえる ① ぶうきちが,仲直りしたいのに,何も言えな ・ぶうきちの気持ち かった時の気持ちを考える。 を考えやすいよう ・文句を言われるかもしれない。 に,プリントの吹き出 ・今からでは謝まりにくい。 しに書かせる。 ・自分が悪いんじゃない。 ・アンケートを紹介 ② 次の朝、ぶうきちたちが仲直りできた時の気 する。 持ちを考える。 ○ 二人が次の朝に仲直りする場面を役割 ・ 自 分 な り の 仲 直 り 演技して,ぶうきちの気持ちを考える。(教 演技ができている組 師と児童・隣同士) を紹介する。 ・すっきりした。 ・言ってよかった ・ぶうきちの気持ち ○ ぶうきちの心にのこったいいものは何か を吹き出しに書かせ について話し合う。 る。 ・友達に対するやさしさ。 ・板書で児童の考え ・仲直りできたうれしさ。 を整理する。 ・友達の大切さ。 3. ぶうきち達のような体験をしたときの,自分自 ・自分の体験を振り 返りやすいようにア 身の気持ちと行動を振り返る。 ンケートの結果を提 ○仲直りしたときの気持ち 示する。 4. 声の手紙のテープを聞き,仲良しがいること ・これから,友だちを のよさを感じ,友達ともっと仲良くなるにはどうす 大事 に しよ うと する るかを考え、まとめをする。 意欲を持たせる。 ―心教 6― 評価の観点 配時 ・ ア ン ケ ー ト 3分 を興味を持 って見ること ができたか。 (様相観察) ・ 資 料 に 興 5分 味を持って 聞いている か。(様相観 察) ・ ぶ う き ち の 7分 気持ちを考 えて、吹き出 しに表現して いるか。(プリ ント・発言) ・二人の気 持ちで役割 演技できた か。(様相観 察) ・仲直りの時 の心地よさを 感じ取って いるか。(プリ ント・発言) ・自分の経 験を振り返っ ているか。 (様相観察) ・友達と仲よ くする意欲を 持てたか。 (様相観察・ 発言) 1 5 分 1 0 分 5分 6 授業の実際と考察 (1)授業仮説 《 アンケート結果 (一部) 》 アンケートを活用したり登場人物と似たような 体験をした時の自分の気持ちをふり返らせる。 また 吹き出しに書かせたり役割演技をさせたり すれば自己の体験と重ねて登場人物の気持ち に迫るのでより切実なものとして価値の自覚を 深めるので互いに相手のよさを認め仲良くして いこうとする態度を育てることができるだろう。 77 % 80 % 【 け ん か の 経 験 】 【 仲 直 り し た 経 験 26 % (2)検証の方法 ①抽出児 〈児童A〉・・・全体の前では正しい意見を述 べるが,友達に対し高圧的な言 動を取ったり,自分勝手な行動を するときがある。 〈児童B〉・・・元気で明るいが,自己中心的で 周囲の迷惑を考えず行動するの で,トラブルを起こすことが多い。 ②全体 〈児童A,B〉には,もっと友達と仲良くし ていきたいという思いが見られるかを発言, 表情,プリント記述から考察する。 全体では,プリントに表現する際にぶう きちの気持ちで書いているか。役割演技を する際に,気持ちをこめた表現ができてい るかを考察する。 (3)児童の活動と教師の手だて ①気づく段階 アンケートの集計表で自分達のクラス の実態を確かめ,「友達ともっとなかよく なるにはどうしたらいいだろう。」という点 に目を向けさせ,本時のめあてをつか む。 アンケートの結果から,友達と自分の 考えの同じところや違うところを理解させ るとともに本時学習する話に関心を持た せ,めあてをつかませた。 37% 【 仲直りしなかった経験 】 【 仲直りしたいこと 】 子ども達は,なかよしでも多くの子がけんか の経験があり,仲直りしなかった子も多いことに 気づいて,「ぼくも」と共感する子もいれば,そ の多さに驚く子も多くいた。友達ともっと仲良く なりたい,もっと増やしたいと思っている子ども 達は,この事実に,これではいけないという意 識を持たせることができたと考える。児童A,B 二人とも,指導者の問いかけに挙手していた。 ②見つめる段階 紙芝居を読み聞かせながら,主人公のぶう きちの心の動きについて考えさせる。次の日 の朝,仲直りできた場面を全員に役割演技さ せる。最後に『ぶうきちの心』に残った物は何 かについて考える。 「なかなおり」の紙芝居を見せながら,読み 聞かせを行った。お話をポイントで区切りな がら学習を進めていく(場面構成法)の手法 を取った。 最初に二人が口げんかをする場面では, そのときの二人の気持ちを考えさせ数人に 発表させた。このことで,子どもたちは,二人 の気持ちをよく理解することができ,たがい に悪気があってしたことではないことを確か ―心教 7― {写真1:教師と児童の仲直りの役割演技} めることができた。 児童A,Bは,一生懸命聞いていた。自分 の意見は出さず,友達の意見を黙って聞い ていた。次の場面で,ぶうきちが,仲直りした いのに,何も言えなかった時の気持ちを考え させた。 {写真2:隣同士での仲直りの役割演技} 最後に,ぶうきちの心にのこったいいも のは何かについて話し合ったが、「友達は いいな。」「仲直りはいいな。」「けんかはし ないぞ。」というものが多かった。児童Bは, 「友達っていいな。」と発言した。全体的に, 日ごろ発言しない子もよく発言できてい た。 ③ 深める段階 ぶうきちのように自分もあやまってよ かったという経験はないか,友達にあや まってもらってうれしかったことはないか 出し合う。 児童A 児童B {資料1:ぶうきちの気持ちを考えた吹き出し} ここで,子どもたちのアンケートに注目させ, 自分たちもぶうきちと同じような気持ちで仲直 りできなかったことに気づかせた。 次の朝,ぶうきちたちが仲直りできた場面 では,役割演技したが,児童Aは,相手の目 を見て演技できず。児童Bは,はずかしがり ながらも演技できていた。他の子どもたちは 相手の目を見ながら元気に演技していた。 「すっきりした。」「いい気持ちになった。」とい う声が聞かれた。 仲直りしたときは,いい気持ちであっ たことをどの子も出していたが,アンケ ートから,「仲直りして前よりもっと仲良く なった。」という子が何人もいる(66%) ことに気づかせた。 66% 【仲直りして前より仲良くなった経験】 その後,仲直りしていないことがある子に, もっと仲良くなろうという問いかけたところ,子 ―心教 8― どもたちは,仲直りをすることになった。指導 者自身も謝りたいことがあるとして,二人に謝 っていたが,児童Bは,自分の方から指導者 に近づいてきた。そこで,話したが,いい表 情で聞いていた。 {写真3:もっと仲良くなろうと話しかける子} ④ まとめる段階 転校した友だちからのお礼の声のテ ープを聴かせ,友達のよさを感じ取らせ る。さらに,今日の学習で学んだことの 感想を出し合い,本時のまとめをする。 9月に転校した友達から届いた声の テープを聞いたとき,真剣な顔やうれ しそうな顔ばかりであった。泣いてい る子もいた。児童A,Bは,ニコニコ しながら聞いていた。 {写真4:転校児童の声テープを聞く} 子どもたちに「今日の学習で」を書 かせ,本時のまとめをした。次の文は 子どもたちの感想である。 ・みんなといっぱい遊ぼうと思いまし た。 (A児) ・友達っていいな。(B児) ・友達は,離れていても友達なんだな。 ・友達は大事だなあ。 ・仲直りっていいものだと思いました。 ・あまり,けんかをしないようにしよう。 ・友達をうんと大切にして仲良くなろうと 思った。 ・心に転校した友達の気持ちがいっぱ い残りました。 ・意地悪を少なくして,倍にやさしさを 増やしたい。 ・道徳ってすっきりするんだなあ。 (4)考察 本実践を,仮説で述べた視点から考察する。 〈視点1:資料の人物に体験を重ねた吹き出し や役割演技の有効性〉 吹き出しに書かせることで,自分の考えをまと めることに生かされ,発言の苦手な子も活発に 発言することができた。役割演技については, 仲直りの模擬体験の形になり多くの子どもが 「すっきりした。」「いい気持ちだ。」と感想を言っ ていることからも,登場人物の気持ちに同化し, 自分の過去の体験と自然に重なって感じること ができたことがよかった。初めは,2回の役割演 技を考えていたが,演技が生かされるためには, ポイントを絞り1回だけにしたことが有効であっ た。 〈視点2:アンケートを利用した自己体験の想 起の有効性〉 低学年の子ども達に,学習過程において体 験を想起させることは簡単ではない。そこで,ア ンケートを導入時と深める段階で活用したこと は,子ども達に体験をすぐに想起させ友達の考 えもつかみやすいので特に有効であった。自 分自身のアンケートが紹介されるときなどは, 身を乗り出したりして,友達の意見にも強い興 味を持って聞くことができた。低学年の児童にと ってアンケートの活用は効果的であった。けん かをしても仲直りしたいと言う気持ちが強かった り,仲直りしてもっと仲良くなった児童が多くい たことが,紙芝居の中の登場人物の気持ちを考 ―心教 9― える際に生かされ,友達がいることの大切さを 実感できた。このことは,互いに相手のよさを認 め合いながら仲良くしようとする態度を育てるこ とにつながったと思う。 具体的にどんな行為が,友だちともっと仲よく なれるかについて考えた際の児童の意見は, ・けんかをしない。 ・自分から仲直りをする。 ・たくさん遊ぶ。(抽出児 A を含む) が大部分であった。次時のエンカウンターの学 習において成果で述べているように抽出児 A の心は転校した友達に素直に向いていた。ここ で出された考えが今後どのように友達関係に影 響するのか丁寧に子ども達の様子を見ていか ねばならない。 {資料3:エンカウンターでの エンカウンターでの A 児のプリント} {資料3: A 児のプリント} {資料3:エンカウンターでの A 児の感想と転校した 友達に書いたカード} 〈視点3:児童の生活体験につながりの深い資 料(紙芝居・声のテープ)の有効性〉 子どもたちの身近な体験に類似した内容の 資料「なかなおり」を用いたことで,子どもの関 心を引くことができた。話を最後まで読まず,紙 芝居にして,場面を構成しながら読み聞かせて いったことは,状況や心情をとらえる上で有効 であったと考える。児童A,B二人とも興味を持 って真剣に紙芝居を見ることができた。また,日 常的に読み取りの苦手な子も内容をよく理解し ていた。しかし,途中で話を切りすぎると思考が とぎれてしまうので,子どもたちの思考が話の 流れに沿って,流れるように進むようなわかりや すい発問を心がけるとともに,時間配分も十分 に考慮すべきであることが分かった。 また,まとめる段階での転校した友達の声の テープは,それまでのその友達との思い出が 子どもたち一人一人に豊かによみがえり,友達 のよさを実感するには十分であった。 「・・・たくさん楽しい思い出があって,3組に 帰りたくなります。でも,がんばります。 いつまでもなかよしでいてください。 みんなのことはわすれません。」 {転校した友達の声のテープの一部} 7 成果と課題 【成果】 ○事前事後の体験と道徳の授業をつないだ指 導計画 2学期の大きな行事「運動会」や「社会見学を 通して,クラス全員で一つの目標に向かって力 を合わせることの満足感と喜びを味わわせるこ とができた。また,社会見学での班活動を通し て,意見を出し合いながら協力して班行動する 姿が見られた。そこでそのときの体験をアンケ ートを書く段階で振り返らせることから,友達と の関わりをもう一度見つめ直す機会を作った。 学習過程で,そのアンケートを基に今までの児 童自身の体験をいくつかの点から振り返らせる ことで,児童は登場人物と自分を比べ重ねるこ とができた。そのことによって,よりいっそう登場 人物の気持ちになって友達について考えること ができた。 次時の学活の取り組みでは,授業の中で気 づいた友達の良さを基にして、互いの良さをま ず最初はとなりの友達そして班の友達さらに他 の班の友達へと視野を広げながらそれぞれの 友達の良さを見つけ合った。友達から自分のよ さを見つけてもらったことで,他から認められる 喜びや今まで気づかなかった自分のいいとこ ―心教 10― ろを知りセルフイメージを高めることにつながっ た。このとき,抽出児童Aは,前時に学習した際 の転校した友達に対して「声のお手紙をもらっ てうれしかったからお礼を書きたい。」と言って クラスでただ一人その転校した子にカードを書 いている。そのときのうれしそうな表情に友達の 存在の喜びと気持ちを伝えるうれしさを見ること ができた。 9月のアンケートで仲良しのいない子が一人 いたが,12月のアンケートでは全員が複数の 仲良しがいるという結果になった。このことから も,友達関係の広がりと深まりが感じられる。 【仲良しはいるか】 100% 80% 60% 34 35 40% 20% 0% 【1学期より仲良しが増え 【1学期より友達とも たか】 っと仲良くなったか】 ○吹き出しと役割演技で登場人物の気持ちに 迫る 全員が吹き出しに書き込めており,そのこと で考えがまとまり活発な発言につながった。日 頃発言の消極的な児童も何人も発言し,登場人 物の気持ちに迫ることができ,多くの友達の意 見と比べることもできた。 役割演技をすることで,思考だけでなく体全 体で体験を想起することができた。例えば,相 手の目を見て謝る姿や謝った後のすっきりとし た笑顔からも分かるが,ほとんどの児童からは, 「気持ちよかった。」「すっきりした。」という声が 聞かれ,素直に謝り仲直りする心地よさを味わう ことができた。このことにより,これからもっと仲 良くなりたいという意欲を高めることができた。 ○資料と自分の体験を重ねながら、学習を深 めさせるための手立ての工夫 子ども達の体験につながりの深い資料を利 用することは,個々の過去における体験を想起 する上で非常に有効であった。例えば紙芝居 の内容は,ほとんどの子達が似たような経験を しているため,登場人物の気持ちに共感しやす く自分の体験やそのときの気持ちと重ねて考え ることができた。また,転校した友達からの声の メッセージを聞いたことは,たとえ遠く離れて会 えなくなっても自分たちの心とつながっている ことに気づき,友達の存在のよさを実感する上 でも有効であった。 視覚(絵)や聴覚(テープ)に訴えるような資 料や手だては,低学年の子どもたちに大いに 役立った。また,アンケートを利用することで、 児童自身の体験の想起や学習への意欲付け, 並びに,友達と比べる際にわかりやすくスムー ズに生かすことができた。 【1学期より友達はいいなあと思うか】 【課題】 ●細やかな支援の工夫 日常的な学習の中でスムーズに自己を表現で きる雰囲気作りを行い,かつ,抽出児をはじめ どの子も表現しやすいような場の設定と同じよう な学習形態を繰り返し取り組むことで,さらに自 分を素直に振り返り,表現できるものと考える。 ―心教 11― ―――――【実践事例2】――――――――――――――――――――――――――――― 真の友情について考え、その友情を深めるために互いに励まし合い高め合おうとする心を育て る実践 中学校第 2 学年道徳主題「真の友情」2−(3) 資料「あるピエロの物語」中学生の道徳 2 年 久留米市立諏訪中学校 教諭 高部 知子 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 実践の概要 本実践は,生徒の生活の中で身近に起こり得る信頼・友情の価値に関わる資料の活用と,生徒 が道徳的価値を想起したり小集団で意見を交流しあったりするような場の設定によって,道徳的価 値を揺さぶり,道徳的実践意欲を高めることをねらいとした授業実践である。 「真の友情について考え,その友情を深めるために,互いに励まし高め合おうとする心を育てる」 という目的から,生徒が普段の友だちとの関わりの中で経験した,または,これから経験し得る内 容の資料に基づき,友だちとの関わり方について考えをまとめさせた。さらに,小集団での話し合 い活動を通して,自分の考えを伝えたり友達の考えを聞いたりすることで,友情についてより良い 道徳的価値に導こうとした。 本実践を通して,生徒は自分と共感できる考えや自分とは異なる考えを聞き,望ましい友情とい う道徳的価値を高め,その友情を深めるためには,お互いが励まし合い共に向上していこうとする ことが大切だと自覚を高めた。 キーワード 心の教育,道徳,信頼,友情,体験の想起,討論 1 指導観 ○ 本学級の生徒は,これまでの学校行事等を通して,学級としてのまとまりを作り,学級内での 友だちとの関わりを増やしてきた。9月に行われた体育祭では,良い成績は残せなかったものの, 生徒はその練習や準備の過程においても,本番当日においても,皆で協力し合い全力で頑張 っていた。体育祭の後にとったアンケートにも,その頑張りや感動が表れていた。 11月には,韓国への修学旅行が控えており,皆で良い思い出となる楽しい旅行にしようという 気持ちで,事前の学習や準備に取り組んでいるところである。しかし,新学期から半年経った今, 生徒同士の間で,自己中心的な面や,無関心な面が見えてきたのも事実である。一見仲が良 い関係であるはずの生徒同士でも,付き合いが表面的でどこか遠慮しがちで,友だちの不正を 見て見ぬふりをしたり,それに流されてしまったりする場面も見られる。そこで,生徒に,友だち に関するアンケートをとってみると,次のような結果になった。 ・親友と呼べる友達がいる。 94% ・お互いのことを理解している。 91% ・親友とは・・・何でも話せる人 29% 困ったときに助けてくれる人 17% 注意してくれる人 11% お互いをよく分かっている人 11% 話を聞いてくれる人 10% など このように,親しい友だちがいることはいるのだが,「何でも話せる」「何かしてくれる」人が親友 だと考えている生徒が多い。しかし,この「何でも話せる」ことが引き金となって,友人関係に問 題が生じていることも少なくない。生徒の中には,「一緒にいて楽しく,家族に話せない秘密を話 ―心教 12― せて,相談にのってくれる」のが,親友であるという意識が強いようである。その考えも間違いで はないのだが,その友人関係がお互いを励ましたり,時には意見をぶつけ合ったりして,共に高 めあっていくというところまではたどり着いていないようである。 ○ 「自分のことを理解してくれている」という思いから,相手と通じ合い,同じ時間を共有し,一人 の人間として共感し合ったり尊敬し合ったりすることで,人と人との間に友情が生まれる。特に, 思春期にある中学生にとっては,真の友情関係を築いていくことは,難しいことでもあり,非常に 大切なことでもある。しかし,さまざまな社会状況を背景に,現代の生徒たちの人間関係は希薄 になっており,生徒たちはあまり人と深く関わろうとせず,目先の楽しみのために軽く浅い人間関 係しか築くことができないでいる。孤立を恐れて周りに流され追従したり、自分の思いを伝えるの を避けたり,また,相手のことを理解しようとせずに些細なことで誤解が生じ,けんかや仲間割れ を起こすこともある。 本資料は,おとなしい性格のサムと明るく積極的なトムが仲良くなり友情を育む中で,二人の 「友だち」としての関わり方の違いから,悲しい別れ方をするという話である。この資料の二人の 立場や考え方にせまり,生徒たちは自分の「友だち」についての考え方を見直していくことがで きる。友だちを大切にするためには,どのような行為が好ましいのかを考えるきっかけにできる。 中学生のこの時期に,人と人との関わりについて、より理解を深めることで,真の友情とは何かを 考え,また,互いに励まし合い高め合うことのできる友だち関係を築いていこうとする態度を育成 することは,大変意義深いと考える。 ○ 本時の指導にあたっては,二人の登場人物サムとトムの心情にせまり,そこから自分のことを 見つめたり,体験を振り返ったりする中で,どんな行為が友だちを大切にすることにつながるの かを生徒に考えさせたい。そこで,次のような援助を行う。 ・「気づく」段階では,生徒が本時の学習のめあてにせまることができるように,協力し合って頑 張った体育祭の様子を写真やアンケートで紹介し,自分たちの体験を振り返らせる。 ・「見つめる」段階では,生徒が自分の体験を踏まえながら,「忠告する」「忠告しない」というどち らかの立場を明らかにし,その考えについて友だちと共感したり批判したりすることができるよう に,班内討論の場を設ける。 ・「深める」段階では,友情に対する考えを深めるために,主人公トムと似たような体験があるか、 また,それはどういうものだったかを考えさせ、出させる。 ・「まとめる」段階では,どんな行為が友だちを大切にすることにつながるかという考えをまとめさ せたり,教師の体験談を聞かせたりすることで,生徒にこれからの真の友情や信頼を育てようと いう実践意欲を持たせる。 2 指導計画(友だちとの関わりを視点として) ( 1 時 間 ) 体 育 祭 ・学級旗作成 ・学年競技 道 徳 の 時 間 ○真の友情について考 え,自己を見つめる 修 学 旅 行 ・釜山市内班別散策 ・沙下中学校との交流 3 主眼 ○ 真の友情の意味,心から信頼することの意味について,自分自身を振り返りながら再考し, 真の友情や信頼を育てるため,お互いが励まし高め合おうとする態度を育てる。 4 準備 資料を録音したテープ,資料プリント,学習プリント,場面絵,体育祭のときの映像 ―心教 13― 5 本時の過程 段階 気 学 習 活 動 教師の支援 1.体育祭を振り返り,めあてを確認する。 評価の観点 ・生徒が体育祭までの奮闘,当 ・体育祭のときの づ ・体育祭までの過程や当日の様子,気 日の様子を振り返りやすいよう 様子を興味を持っ く 持ちを思い起こす。 に,写真や振り返りアンケート て見ているか。 ・めあてを確認する。 の結果を紹介する。 (様相観察) 配時 5分 友だちを大切にするとはどう いうことか考えよう 2.資料の人物の気持ちについて考える。 (1)サムの立場だったらどうするのか意見 20 分 ・生徒が資料の人物の気持ち を出し合う。 を考えやすいように,中心とな 見 ・班で出し合う。 る場面の資料プリントを配布す ・自 分 の立 場 と理 つ ・全体発表を聞く。 る。 由を明らかにし, ・考えをまとめるところを学習プ 班内討論に取り組 リントに設ける。 んでいるか。 ・生徒同士が自分の考えを伝 (学習プリント め る 忠告する ・トムのため だから ・友だちだから 忠告しない ・嫌われたくない えやすいように,班活動を設定 から 様相観察) する。 ・勇気がないから ・友だちの意見をきくことができ るように,全体発表の場を設け る。 (2)サムに忠告したトムの気持ちを考える。 ・サムを大切に思っているから忠告した。 ・生徒の考えを吸い上げて,構 造的な板書をする。 ・サムによくなってほしいから忠告した。 5分 3.トムのような体験があるか,自分自身に ついて振り返る。 ・価値に気づくこと 気持ちを構造的に板書する。 ができているか。 ・体育祭での協力 (学 習プリント,発 ・部活動の中でのアドバイス 表) 4.どんな行為が友だちを大切にすること 深 につながっていくのか,考えをまとめ,発 め 表する。 る ・登 場 人 物 の気 持 ちと生 徒 の ・体験を振り返りやすいように, ・自分自身を見つ 発問を工夫する。 めることができてい 10 分 るか。 ・勇気を持ってアドバイスをする。 (学習プリント ・友だちを信じて注意しあう。 発表) ・これからの生活実践意欲につ ・友 だちを大 切 に ま ながるように,教師の体験談を することについて と 紹介する。 考えることができて め いるか。 る (学習プリント 発表) ―心教 14― 10 分 6.授業の実際と考察 (1)授業仮説 「見つめる」段階において,登場人物サムの 立場と自分の体験を重ねて班内討論させたあ と,もう一人の登場人物トムの気持ちを考えさ せることで,友だちを大切にするという価値に 気づかせることができるだろう。また、「深める」 段階において,登場人物と似た体験があるか 自分自身を見つめることで,互いに励まし高 め合おうとさせることができるだろう。 (2)検証の方法 ①抽出生徒 <生徒A> 授業にも部活動にも真面目に取り組む生徒で あり,また,物事をよく考え,課題意識を持ち自 分の意見や考えをしっかりと持つことができてい る生徒である。ただ,その考えや意見をなかな か人前で発表することができず,周りを気にする ところもある。しかし,普段の生活においては, 友達とも問題なく親しく交流できる。 <生徒B> 2学年からの転校生であるが,明るく積極的で 誰とでも仲良くなれる性格である。授業中の発 表も積極的で,自分の考えをきちんと述べること ができる。私立中学からの転校生で,今この学 校での友だちとの関わりの多い生活を心から楽 しむことができている。リーダー性を持っている ので周りへの影響力もある。 ②全体 本授業を通して,友達を信頼し互いに励まし 合おうとする姿勢が見られるかどうかを,学習プ リントや発言から考察する。特に,次の点に注目 する。 ・資料の登場人物と自分の体験を重ねて考える ことができているか。 ・班内討論で,自分の立場を明らかにし,友だ ちに伝えることができているか。 (3)生徒の活動と教師の手だて ①「気づく」段階 体育祭の画像を見て,当日やそれまでのこと を振り返り,本時学習のめあてをつかむ。 年間でも最も生徒が盛り上がる 2 学期の体育 祭の画像(特に,学級旗の作成の様子,クラス 対抗の学年競技の様子,テント内の生徒の笑 顔)を見ることで,当時までの練習や準備のとき のこと,当日協力できたことやみんなで楽しめた ことなどを思い出させ,友だちとの関わりに目を 向けさせ,本時の学習のめあてに気づかせた。 {写真1:学級旗作成の様子} {写真2:学年競技の様子} ②「見つめる」段階 資料の登場人物サムと自分の体験を重ね て,班内討論をさせ,そのあと,もう一人の登場 人物トムの気持ちを考えさせることで,友だち を大切にするという価値に気づかせる。 生徒自身が資料の登場人物である気弱で友 だちの少ないサムの立場だったら,やっと友だ ちになったトムに忠告できるか,という発問に対 し,サムと自分の体験を重ねて自分の立場を明 らかにし,その理由を含めて班内で討論をさせ た。その討論や全体発表によって,生徒は友だ ちの考えを聞くことができた。生徒の考えは次の ようなものである。 ―心教 15― ○「忠告しない」という立場の生徒の理由 ・ 嫌われるのが怖い ・ 友だちがいなくなりそう ・ 相手が傷つくから ・ 自分の印象を悪くしたくないから ○「忠告する」という立場の生徒の理由 ・ 相手のためを思って ・ 見た目だけの友だちになりたくない ・ 本当の友だちならはっきり忠告してあげるべ き ・ 友だちがみんなに嫌われるのが嫌だから ・ 一人ぼっちになってほしくない ・ 忠告することが相手のことを思っているとい うことだから ・ 友だちに言われるなら素直に受け入れられ ると思うから (生徒A) {写真4:班内討論の様子(4 班)} その後,もう一人の登場人物である陽気な トムが,サムに対して忠告したのはどういう気 持ちからなのかを考えさせる(発問「サムはど んな気持ちからトムに忠告したのか」ことで, 友だちを大切にするという価値に気づかせた。 その際,このトムの気持ちが,「忠告する」とい う立場をとった生徒の考えと同じであることを 確認させた。 ③「深める」段階 登場人物トムのように,友だちに忠告すると いう似た体験をしたことがあるかを振り返ること で,自分自身を見つめる。 {資料1:抽出生徒Bの記述} {写真3:班内討論の様子(5 班)} 前段階で,生徒は友だちを大切にするという 価値に気づいている。そこで,登場人物トムのよ うに友だちを大切にする気持ちから,今までにと った行動を振り返らせた。自分からそのような行 動に出たことがない生徒については,友だちが 自分のことを思ってしてくれたこと,言ってくれた ことについて,振り返らせた。手だてとしては、 生徒が具体的に体験を振り返ることができるよう に,例を挙げながら発問した。 <生徒の体験> ・いつも泣いている友だちに「泣いてるだけじ ゃ伝わらないよ」と言った。その友だちが転校 するときに「もう泣かない」と言ってくれた。 ・調子に乗りすぎている友だちに注意したら,そ の人の人気が上がった。 ・部活で自分が気を抜いているときに,友だち や先輩が注意してくれた。 ―心教 16― ・部活で失敗して落ち込んで,やる気がなくなっ ている友だちに説教した。 ・レッスンで友だちから「声が小さいから大きくし たほうがいいよ」と言われて,声を大きくしたら, 先生から「よくなったね」って言われた。 ・自分の欠点を言われてちょっといやな気持ち になったけど,自分のどういうところが人にき らわれているかって分かって,ちょっと感謝し た。 *生徒Bは記述できていなかった。 {資料2:抽出生徒Aの記述} {写真5:自分の体験を振り返る} ④「まとめる」段階 どんな行動が友だちを大切にすることにつな がっていくのか,考えをまとめさせる。その際, 生徒が具体的に考えることができるように,ま た,これからの実践意欲を持つことができるよう に,教師自身の体験談を紹介する。 前段階までの学習から,友だちを大切にする ためにこれから自分が具体的にどんな行動をと っていくのかをまとめさせた。その際,生徒が考 えをまとめやすいように教師自身が友だちに対 してとった行動をいくつか紹介した。生徒のまと めた考えは次のようなものである。 ・悪いところはお互いに注意して,自分も相手も よりよくなっていけば、友情とか信頼が深まる と思った。がんばって実行できたらいいなと思 った。 ・自分のことだけじゃなくて,相手のことも考えて 行動する。 (4)考察 本実践を,仮説で述べた4つの視点から考察 する。 <視点1:協力し合った体育祭の画像を見せて, 体験を想起させることによる,めあて設定の 有効性> 体育祭用の学級旗の作成の様子や,当日のク ラス対抗の学年競技の様子を,パワーポイント を用いて紹介し,同時に,体育祭のあとにとっ たアンケートの感想を紹介した。生徒は画像を 楽しそうに見て,当日までに友だちと協力した こと,当日にみんなで楽しんだことを振り返る ことができた。その体験の想起は,めあてを確 認する上で,有効であった。 <視点2:登場人物と自分の体験を重ねて,考 えを明らかにし,班内討論をすることの有効 性> 「自分が登場人物サムの立場だったら,相手 に忠告するか,しないか」という発問に対して, 今までの自分の体験を想起して,自分の立場 を明らかにし,その理由を含めて,班でそれ ぞれの立場に分かれて討論をすることで,自 分の考えを相手に伝えること,お互いの考え を交流しあうことができた。しかし,2つの班で は,「忠告する」という一方の立場に,生徒の 考えが集中してしまうという事態も起こってし まった。その際,教師がその班の生徒に対し て,生徒と反対の立場から「相手が怒ったらど うする?」「嫌われるかもしれないよ」などと揺 さぶりをかけてみた。その発言に対しても,生 徒は自分の考えをしっかりと返した。意見が 一方に偏って討論にならなくても,自分たち の考えをしっかりと交流しあうことで,共感する ことができていたので、その点では,班内討 論は有効であった。 ―心教 17― <視点3:登場人物の体験と似たような体験を したことがあるかを振り返ることの有効性> 友だちに忠告をした登場人物トムのように,友 だちのことを思って勇気を持って自分がとった 行動があるかどうかを振り返らせることは,具体 的にどんな行動が友だちのためになるのかとい う考えを深めるのに,有効であった。また,その ような行動をとったことがない生徒には,自分の ために友だちがしてくれたことを振り返らせた。 このことは,友だちが自分のことを大切に思って くれていることを確認することにつながった。 <視点4:教師の体験談を踏まえながら,これか ら自分が友だちを大切にするためにどのよう な行動をとっていくのかを考えさせることの有 効性> 生徒が「お互いがよりよくなっていけば・・・」と, 学習プリントに記述している内容から考えると, ここまでの学習と教師による体験談を参考にし ながら,今後自分が友だちのためにどのような 行動をしていくのかを考えることは,お互いを高 めあいながら友情・信頼を深めようとする態度を 育てるという点で,有効であった。 7.成果と課題 【成果】 ○資料と自分の体験を重ねながら,班内討論を させる手だての工夫 登場人物の体験と自分の体験を重ね合わせ た上で,自分の立場を明らかにし,その理由も 含めて班の中で考えを交流することで,自分と 同じ立場の生徒とは共感しあい,反対の立場の 生徒とはお互いの考えをぶつけ合うことで,考 がえを深めることができた。一方の立場に意見 が偏ってしまった班に対しては,教師が揺さぶり の発問をすることで,考えを深めることができ た。 ○事前・事後の体験と道徳の授業をつないだ計 画 1 学期の学校行事を通して,学級がひとつに まとまったことを機に,2 学期の学校行事を通し て,友達との関わりについてもう一度考えさせよ うという視点から,体験と道徳の授業をつなごう と計画を立てた。 2 学期の大きな行事である体育祭までの取り 組みと当日の協力を通して、生徒たちはさらに 盛り上がりを見せていた。準備や練習の段階で もよく協力し合う姿が見られた。そこで、そのとき の体験を道徳の授業で振り返らせることから、友 だちとの関わりをもう一度考え直させる機会を作 った。学習過程で、今までの体験を幾度か振り 返らせることで、生徒は資料の内容を自分自身 のこととして捉えることができたと思う。そして、 授業の中で自分が考えたり、気づいたりしたこと を基に、韓国への修学旅行のさまざまな活動の 中で自分がとるべき行動や、さらには、その後の 学校生活の中で自分が友だちとどんなふうに関 わっていくべきかを考え、実践できることを狙い とし、体験をつないだ授業の展開をした。その 成果を、次の項目の中で紹介する。 ○友だち関係を中心とした主題設定 表面的で浅く軽い人間関係しか築くことができ ない生徒たちにとって、この主題・教材の設定 は効果的であったようである。抽出生徒Bの事 例を紹介する。検証授業後に、生徒Bは友だち 関係でぎくしゃくしていたが、授業を振り返った あとに次のような記述を残した。 {資料3:抽出生徒Bの授業後の記述} その記述をしたあとに,「思い切って友だちに 忠告してみる」と担任に話しに来た。その後,実 際に生徒Bは友だちにはっきりと自分の気持ち を伝え,その友だちとの関係を築きなおすことが できた。以前よりももっとお互いがいろんなことを 言い合い,対等の立場で接しているようである。 このように,抽出生徒Bは友だちとの関わりの 中で,お互いがより深い友情を築くことができ, ―心教 18― 高めあおうとする態度を育てることができたので はないかと考える。 【課題】 ●班内討論におけるグループ構成の工夫 討論の形態を生活班にせず,生徒がどちらの 立場をとっているかをある程度確認した後に, 臨機応変に必ず両方の立場の生徒がいるグル ープを作るなどの工夫。 {資料4:「あるピエロの物語」(抜粋)} Ⅶ 研究の成果と今後の課題 1 研究の成果〈友達との関わりを深める道徳 の時間の指導の工夫として〉 この取り組み後,小・中学校とも抽出児は 自分から友達との関わりを進んで求めたり, 何事にも意欲的に取り組むようになった。他 の子ども達も表面だけで決め付けることなく, 相手の気持ちを考えて自分たちで問題を解 決するように変わってきた。どの子においても, 自己肯定感の高まりが周りへのより良い行動 へとつながっているようである。 (1) 事前事後の体験と道徳の時間をつな いだ指導計画の工夫 事前の体験とつないだ継続的な取り組 みにより,友達との関わりをより深めようとす る意識に高めることができた。事前事後の アンケートを比べても意識の高まりが見ら れた。また,事後の行事「修学旅行」や授 業「エンカウンター」につないだことで,友 達にあたたかい目を向けた見方や行動が できた。 ―心教 19― (2) 道徳の時間の学習過程の ○体験を生かす活動の工夫 吹きだし・役割演技や体験を重ねた班内討論 を取り入れたことにより,児童自身の道徳的心 情を見つめることにつながり,常の友達とのか かわりのあり方を身をもって体験したと言える。 また,班討論は,少人数なので意見も出しやす く,班の友達の意見を聞きながら自分の考えを 見直していく上でも有効であった。 ○体験を深める支援の工夫 運動会のスライドやアンケート表の提示が,体 験を想起させ,道徳的課題の把握に有効であ った。また,深める段階での提示も道徳的価値 の内面化に効果的に働いた。 まとめる段階で,類似体験として,転校した友 達の声のメッセージや指導者自身の体験を聞か せることで,互いに仲よくし,高め合おうとす る態度を伸ばすことができた。 2 今後の課題 ○ 他の価値項目における体験を生かした 道徳の指導計画の工夫 ○ 心にひびき,心をゆさぶる身近な資料や 児童生徒の生活体験とつながった内容の さらなる開発 ※参考文献 著者名 文部科学省 文部科学省 押谷由夫 書 名 小学校・中学校学習指導要領 財務省印刷局 解説―道徳編― 小学校・中学校 心に響き,共に未来を拓く道徳 教育の展開 新しい道徳教育の理念と方法 東洋館出版社 よりよい実践に結びつく道徳教育のあり方 押谷由夫 出版社名 道徳の授業をひらく(1,2年) ―心教 20― 福岡県教育センター
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