中国人が使う中国語

中国人が使う中国語
Ⅱ
就職、結婚、転職(1999 年 7 月∼2002 年 6 月)
二 出社
2 食堂
私が勤務した会社は工場やった。中国の工場には必ず食堂「食堂(shi2 tang2)」があって、食費は会社負担。毎
月会社から社員に一か月分の食券が配られる。食事はアルミプレートに山盛りで、ご飯とおかず五種類、スープ
に果物「饭(fan4),五种菜(wu3 zhong1 cai4),汤(tang1),水果(shui3 guo3)」がある。王将の定食でも、ここま
で多くないと思う。私はその三分の一も食べれたらいい方やけど、中国人は女性でも全部ペロリと食べてしまう。
工場の作業員になると、おなかが空くからか、山盛りおかわりしてる。
私は入社当初、同じ課の中国人女性たちと一緒に食事をした。そこで学んだこと。
1.「頂きます」
中国語には食べる前に言う「頂きます」という言葉はない。
(「頂きます。
」という習慣は、日本人独特のもの
で、海外ではあまり見られない習慣やと思う。
)中国人は、食べる前に手を合わせて何か言うような動作も何もな
い。強いて言うなら、
「我们吃吧(wo3 men2 chi1 ba)。」 私たち(一緒に)食べようや。
「不好意思,我先吃。(bu4 hao3 yi4 si, wo3 xian1 chi1)」 悪いな、私先に頂くわ。(自分が先に食べる時)
「你先吃吧。(ni3 xian1 chi1 ba)」
あんた先に食べや。(相手に先に食べるように促す時)
「吃吧,吃吧!(chi1 ba, chi1 ba)」 食べよ、食べよ!(親しい仲間と一緒に食べる時)
このくらいかな・・・。
2.「ご馳走様」
この言葉も中国語にはない。
「ご馳走様」っていうのは「お料理が大変おいしく、素晴らしい食事でした。
」
っていう意味やから、そのまま訳すと「好吃(hao3 chi1)。
(おいしかった)。」となるかもしれへん。
例えば、中国人の家にお呼ばれして、そこで出してもらった手料理を食べ終わった後には
「今天的菜,很好吃啊。
(今日の料理、とってもおいしかった)
」
jin1 tian1 de cai4, hen3 hao3 chi1 a
と言うのは大丈夫。でも、食堂で食べた後に「好吃(hao3 chi1)」と言うのはおかしい。
ほな、どう言うのか。
「慢慢吃。(man4 man4 chi1)」
ゆっくり食べてな。
数人で一緒に食べてて、自分が先に食べ終わると、まだ食べてる人に対して言う言葉。これが、日本語の「ご
馳走様」の代わりになる。ほな、自分が最後に食べ終わったらどう言うのか。何も言わんでもええし、強いて言
うなら、
「我吃好了。(wo3 chi1 hao3 le)」
私、食べ終わった。
(注意:「好吃(hao3 chi1)」と「吃好了(chi1 hao3 le)」は全然意味が違う。
「好吃(hao3 chi1)」は「おいしい、おいしかった」。
「吃好了(chi1 hao3 le)」は「食べ終わった」
。
3.魚の食べ方
上海、蘇州近辺の中国人は、魚を食べるのがごっついうまい。日本人のほとんどの人は、魚を食べる時、手
で魚の肉と骨を分けると思う。でも、蘇州人は手は絶対に使わへん。小さい骨が多い川魚を食べることが多いけ
ど、お箸と口(舌)だけで、魚の肉と骨を分けて、骨は口から「ペッ!」と吐き出す。
最初、見てたら「汚いな∼。」と思ったけど、蘇州人から言わせたら、私の食べ方の方が汚いらしい。手は汚
いから、その汚れた手で魚を触って、その魚を食べる、不衛生と言う訳や。
「ペッ!」と吐くのは下品かもしれん
けど、合理にかなってると思った。
4.えびの食べ方
これは、魚の食べ方よりもっとすごい。中国では、えびの皮もそのままで調理されてることが多い。皿の上
に乗ってるのは、ひげも足も皮も全部ついたままのえび。私は、そのえびの皮を手で剥がしてからやないと食べ
ることができへん。でも、蘇州人はすごい。えびをそのまま口の中に入れて、口の中でえびの皮と肉を分けてし
まう。達人になると、えびの皮が脱皮したみたいに、そのままの形で舌の上に乗って出てくる。食べるコツは、
えびを口の中に入れる時、えびの背中を口に向けて入れる。つまり、えびが口の中に入った後でも、えびの足が
口から出ている状態。そして、えびの皮と肉を口の中でモグモグと分けている間、口からえびの足が出たままで、
口をモグモグするたびに、えびの足がぴらぴらと動く。しばらくしたら、舌の上に脱皮したようなえびの皮が乗
って出てくる。ほんまにすごい!