技術的・経済性なき高速増殖炉開発から撤退せよ!

技術的・経済性なき高速増殖炉開発から撤退せよ!
発では資金不足のために計画が脅かされていると、
先進国は高速増殖炉開発から撤退
工業のスポークスマンは政府に警告を発していま
す。ロシアは、濃縮ウランを燃料にした高速炉で、
米国 は 、 1946年 世 界 で 初 めて 高速 増殖 炉実験
日 本 が 行 お うと し て い る 高 速 増 殖 炉 と は 違 い ま す 。
炉 の 臨 界 を 達 成 し 、 7 基 の 実 験 炉 を 建設 しま し
中国はFBR開発を目指し、実験炉を開発中で
た が 、 1977 年 に 核 不 拡 散 政 策 の 強 化 に よ り 高 速
す。開 発開始 より30年 かか ってもうまくいかず、ロシ
増殖炉原型炉「CRBR」(38万kW)の建設計画
アとの技 術協力により開発を行っています。2000年
を中止し、さらに1993 年にプルトニウムの民生利
にプーチン大統領が中国との技術協力に関する内
用 の 研 究 開 発 を 行 わ ない こ と を 決 定し 、 設 計 研 究
閣条例に署名し、内閣の承認を得ました。中国は実
を 含 め 、 高 速 増 殖 炉 に関 す る 研 究 開発 は 全 て 中 止
験炉の開発段階です。
インドでは、ウラン資源が少ないが、トリウム資源
しました。
英国 は1963年 から実験炉が稼働し、1977年には
が豊富なため、当初からこれを活用する原子力開
原 型 炉 が 稼 働 し ま し た が 、 1988年に は 政 府 は 予 算
発を進めています。カナダの重水炉を輸入し、運転
を削減 し、1992年には民間に移管し、1993年には
で得られたプルトニウムで核実験をしました。高速
政府出資を停止し、高速増殖炉から撤退しました。
増殖炉開発では、1974年よりフランスの技術協力で
独国 は 1979年 に実験炉 が 稼働し、 原型 炉を建 設
実験炉を開発しましたが、核実験後は仏の協力が
し まし た が 1991年に高速 増 殖炉計画 を中 止しま し
ストップし、独自に高速増殖炉開発をしてきました。
た。
1985年 よ り 高 速 増 殖 炉 実 験 炉 が 稼 働 し 、 2010年 に
仏国は、世界に先 駆 け1985年に高 速増 殖炉実 証
は原型炉が稼働予定ですが、電気出力が実験炉よ
炉「 ス ー パ ー フ ェ ニ ック ス 」(124 万kW)の運
り二百倍以上と大きく、急激なスケールアップは技
転 を 開 始 し ま し た 。 しか し 、 ナ ト リウ ム 漏 れ や ナ
術的に問題があり、うまくいはずがありません。
トリウム火災事故が続発し、1998 年には技術的・
経済的理由で閉鎖を決定しました。 高速増殖炉原
国
際
協
力
型 炉 フ ェ ニ ッ ク ス は 増 殖 炉 と し て で はな く高 速
炉として運転され、 マイナーアクチニドの燃焼な
2000 年、米国は「第4世代原子力システム計画」
どに関する研究開発を進めていますが、今年( 200
を 提唱 し 、 現 在、 10 ヶ国+ 1 機関 から なる「 第
9年)には運転停止予定です。高速増殖炉開発の
4世代原子力システムに関する国際フォーラム(G
最 先 端 を 走 っ て い た 仏 国 は 高 速 増 殖 炉開 発か ら
IF)」に発展し、GIFで検討対象とされた6つ
撤退しました。
の原子炉概念のうち、3つは高速炉です。2008年、
日 本 原 子 力 開 発 機 構 ( 原 子 力 機 構 )、 仏 原 子 力
庁 ( C E A )、 米 国 エ ネ ル ギ ー 省 ( D O E ) は
露・中・印は進んでいると政府はいうが・・・
「 ナ ト リ ウ ム 冷 却 高 速 実 証 炉 の 協 力 に関 する 覚
ロ シ ア で は 、 原 型 炉 B N − 600が 稼 働 し て い ま す
書 」 を 締 結 し ま し た 。 仏 や 米 は 高 速 炉を 目指 し
が 、 燃 料 に は 20% 以 上 の 濃 縮 ウ ラ ン を 使 っ て い ま
て お り 、 日 本 が 行 お う と し て い る 高 速増 殖炉 開
す。今後は解体核兵器のプルトニウムを燃やす計
発とは目指す方向が違います。
画 で 、 焼 却 炉 と し て の 高 速 炉 で す 。 B N − 600は 運
2008年 11月 、米国 エネル ギー省 の原子力諮問委
転中にナトリウム漏れ事故を度々起こしています。
員 会は 、 オ バ マ 新 政権 へ の 報 告 書「 原 子 力:21世
実証炉BN−800を開発中ですが、計画では核兵
紀の政策と技術」を諮問しました。この報告書は、
器 の プル トニ ウム を燃 料 と し 、マイ ナ ー アクチ ニ ドを
国 内 で の 原 子 力 産 業 を持 続 し 、 海 外で は リ ー ダ ー
焼却しようとする計画です。実証炉BN−800の開
シ ッ プ を 発 揮 し 、 原 子力 の 復 活 を 目指 す 、 原 子 力
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産業の復興を求めようとするものです。その中で、
は何も決まっていません。
原発での高速炉の技術開発には長期的かつ多額
の 資 金 が 必 要 な た め 、 国 際 協 力 が 必 要で あり 、
「もんじゅ」を廃炉にし、高速増殖炉開発から撤退を
特 に 予 算 が 逼 迫 さ れ て い る 下 で は 、 国際 協力 を
強化すべきであると勧告しています。米国では1
「もんじゅ」は1995年12月にナトリウム漏れ火災事
979年のTMI事故以降来原発の新設がなく、原
故 を 起 こ し 、 停 止 し た ま ま で す 。 2005年 3 月 に 改 造
発 核 燃 料 サ イ ク ル へ の 投 資 や 研 究 が 行わ れず 、
工 事 に 着 手 し 、 2007年 5 月 に は ナ ト リ ウ ム を 再 充 填
技 術 や 人 材 不 足 の た め 、 自 国 で の 開 発能 力は あ
しました。ナトリウム検出器では、2007年8月に誤作
り ま せ ん 。 そ の た め 、 国 際 協 力 を 推 進し 、日 本
動が続発し、製造、取り付け時のミスが原因だった
の 技 術 、 資 金 に 依 存 し よ う と し て い るの です 。
ため、原子力開発研究開発機構(原子力機構)は2
008年 2 月 ま で に 2 次 冷 却 系 の 同 形 式 3 2 台 す べ て
わが国の高速増殖炉実証炉開発
を交換し、同7月には経済産業省原子力安全・保安
院 の 使 用 前 検 査 を 受 け ま し た 。 し か し 、 今 年 1 月 13
2006年 8月 、 文 科 省 、 経 産省 、電 事連 、日本
日 に 再 充 填 以 降 10回 目 の ナ ト リ ウ ム 検 出 器 の 誤 動
電 機 工 業 会 、 原 子 力 機 構 の 5 者 に 学 識経 験者 を
作事故が起きました。この事態に県は、現在行われ
加 え 、「 高 速 増 殖 炉 サ イ ク ル 実 証 プ ロ セ ス 研 究
ている検出器の総点検の中で原因究明と再発防止
会」(座長 は田中 知東大 教授 )を 設置し、「ナト
対 策を 早 急 に 実 施 す るよ う 指示 し ま した 。ナ トリウ ム
リ ウ ム 冷 却 高 速 炉 の 実 証 ス テ ッ プ と 、そ れに 至
検知器の誤作動に加え、ダクトの腐食により、今年2
る 研 究 開 発 プ ロ セ ス 」 に つ い て 7 回 の検 討を 経
月再開予定の延期を決定しました。腐食した屋外
て 2 0 0 7 年 3 月 に 「 高 速 増 殖 炉 に 関す る中 間
排 気 ダ ク トの 補 修 工 事 は 5 月 末 ま で か か り 、 運 転 再
の 論 点 整 理 」 を 取 り ま と め ま し た 。 その 中で 高
開に必要なプラント全体の健全性を確認する最終
速 増 殖 炉 は 「 未 だ 開 発 途 上 」 で あ る と、 位置 づ
試験が行えず、1年近くに渡る大幅延期とならざるを
け て い ま す 。 実 証 ス テ ッ プ に お い て 、「 原 子 力
得 ま せ ん 。ダ クトの 腐 食 に ついては、10年 前に 起き
立 国 計 画 」 に 盛 り 込 ま れ て い た 「 も んじ ゅ」 の
ており、抜本的対策を採らず上からペンキを塗り、
改造による実証炉は採用をしないとしました。
放置した結果です。今回で運転延期は4度目です。
2025年 の 高 速 増 殖 炉 実 証 炉 の 運 転 開 始 を 目 指
しかし、原子力機構は「もんじゅ」の運転再開をあき
し、2010年頃に は概 念検 討を終え 、2015年頃に
らめてはいません。政府や原子力機構にとって、「も
概 念 設 計 を 終 え 実 用 化 像 を 提 示 し 、 続い て基 本
んじゅ」の運転再開は、高速増殖炉開発の試金石
設 計 を 行 う と し て い ま す 。 し か し 、 実証 炉の サ
です。ナトリウム検出器の誤動作やダクトの腐食など
イ ズ や 基 数 、 シ ス テ ム 試 験 の 要 否 、 機器 ・構 造
に見られるように、原子力機構には安全管理能力が
の 試 作 の 要 否 な ど の 問 題 は 今 後 の 検 討す べき 問
なく、運転再開すれば、重大事故が起こる可能性が
題 と さ れ て い ま す 。 判 断 す る 際 に は 、「 そ の 時
極めて高く、さらに、直下には活断層が走っており、
点 で の 予 算 に 係 る 状 況 、 海 外 の 技 術 動向 、国 際
直下地震にる原発震災は避けられません。重大事
協 力 の 進 展 状 況 等 も 含 め 、 実 証 主 体 のあ り方 や
故が起きれば、チェルノブイリのような深刻な放射能
実 証 炉 に 対 す る リ ス ク 分 担 ( 国 、 電 気事 業者 、
汚染は避けられません。高速増殖炉開発には、200
メ ー カ ー 等 ) の あ り 方 の 議 論 も 踏 ま えつ つ、 総
6年から2010年の5年間で約2500億円のもの研究開
合 的 に 検 討 を 行 う こ と が 必 要 で あ る 。」 と し て
発費が計上され、「もんじゅ」にはすでに1兆円以上
います。
もの税金が投入されています。今後、実証炉開発に
実 証 炉 へ の 繋 ぎ と し て の 原 型 炉 「 もん じゅ 」
は膨大な費用がかかることが予想されます。しかも、
の 存 在 意 義 は な く な り ま し た 。 こ の よう な実 証
技術的にもできる見込みは立っていません。危険で
炉 開 発 計 画 は 、 原 型 炉 を 経 ず し て 、 いき なり 実
金食い虫の「もんじゅ」を廃炉にし、高速増殖炉開
証 炉 へ と ス ケ ー ル ア ッ プ す る も の で 、技 術的 に
発から撤退し、原子力機構は解散すべきです。
は 非 常 に 危 険 で す 。 実 証 炉 に つ い て は具 体的 に
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