第 2 章 確率が従うルール 1 2.1 この章の内容 前の章では、確率を計算するにはモデルが必要であること、そしてそのモデルはルールの 集合という形式をとることを述べた。この章では、このようなルールを公式化する。この公 式化は、1章で述べた “比率としての確率の解釈” をもとに、直感的な理解に基づいて行う。 まず最初に、事象の考え方を含む、根本的な用語や記述法について説明する。初歩的な計算 を行ったあと、確率の和のルールについて述べ(これは確率理論全体の中できわめて根本的 なものである)、それを適用した結果をいくつか述べる。 この章の主な目的は,条件付き確率と独立性という重要な概念を紹介しその利用について 考えてゆくということだ。これらはきわめて便利で効果的な考え方であり、これらを利用す ることにより,さまざまな確率問題を解くための手順が得られる。この章の最後には、あな たはよく知られた確率問題のかなりの部分に挑戦できるようになる。 前提となる知識 集合と関数についての根本的な考え方とともに、初等的な式変形を繰り返し 利用する。 2.2 記述法と実験 私たちは日々の経験の中で、確率の考え方や概念に親しんでいる。この知識は Loto、ボー ドゲーム、スポーツ、気象を観察することにより得られる。あなたは、自身の経験にもとづ き、これらのランダムな現象についていろいろと話すことができる。しかし、日常会話には 混乱や,あいまいさがあり、ここで取り上げることはできない。たとえば、これまで chance, likelihood, probability といった言葉を、ときには言葉を選んで、ときにはあまり意識せずに 使ってきた。これからは、probability(確率) という用語だけを用いることにする。 次の表現は、確率の文脈で用いられるものを並べたものである。 1 である. 2 雨の確率は 90% である. 1 6 の出る確率は である. 6 衝突の確率は 10−9 である. 表のでる確率は 確率を用いたこのような例はいくらでもある: ためしに 2 つ 3 つ書き足してほしい (練習問 題).このような確率表現は次のように抽象化できる. (1) A の確率は p である. 1 1 A は “表”, “雨”, “6”, “衝突” であり,p は, , 90%, , 10−9 だった.この表現を頻繁に使う 2 6 ため,(1) をより簡潔にして,次のように表す. (2) P (A) = p この (2) の表現が使われる. ここで p は第 1 章で紹介した確率尺度の位置を表している.大切なことは,この値 p が, (3) 0≤p≤1 2 を満たしていることに注意されたい.確率を計算していてこの区間の外の値が得られたとす れば,それは計算間違である. . 次の節では,任意の事象 A, 確率関数 P (·), そして確率 P (A) についてより詳しく説明す る.この節では,確率表現の背景にはランダムな結果を伴う作業や活動があることに注目し ながら話を進めてゆく (表 2.1). 作業 サイコロを振る 馬のレースを行う Loto の券を買う 表 2.1: 結果 1, 2, 3, 4, 5, 6 のいずれか一つ どれかの馬が勝つ あたるか外れるかのどちらか 私たちは,作業の結果の確率について様々な表現を行う.しかし,日常用いる表現では,こ の作業と結果がはっきりしないことが多い.これから扱う厳密なモデルでは,そのようなこ とがあってはならない.どのような作業なのか,そして,それにより起こりうる結果として どのようなものが考えられるのかを明確に定義しなければならない.そうでなければ,間違 いがおきやすい.このルールを明確に示すため,これらの試行,作業,活動を説明する専門 用語を与える. 定義 2.2.1 明確に定義された “起こり得るすべての結果からなる集合” のどれかの要素を生 じる活動あるいは作業を実験と呼ぶ. 定義 2.2.2 起こり得るすべての結果からなる集合を Ω で表し,標本空間 と呼ぶ. 最初の定義の中で使われている “明確に定義された” とは,実験が生起しうるすべての結果 が前もって分かっていることを意味していて,望まれればすべてを書き下すことができると いう意味だ.実験の前に,どの結果が起こるかを知ることはできない.実験が行われたら一 つの結果が生起する.一つ一つの結果を ω で表す.もちろん ω ∈ Ω が成り立つ.Ω が馬の レースの結果で,Dobbin が参加するなら, { Dobbin が勝つ } ∈ Ω と書ける.ここで { } はその中に結果が一つあるいはそれ以上入っていることを示すために 用いられている. この節の最後に,2 つの重要 (そうは見えないが) な事実について述べる.まず 1 つめは, どの実験にもいくつかの標本空間が考えられるということだ. 例 2.2.1 コインを 2 個投げるとき,標本空間を, Ω = {HH, HT, T H, T T } とできる.これ以上詳しい標本空間はないので,これ以上大きくしても意味はない.しかし, 表の出る数だけにしか興味がないならば, Ω = {0, 1, 2} で十分である. (例終) 3 2 つめは,最初の事実の補足となるものだ.いくつかの要素が実際には起こりえないと思 われるときでも,標本空間を十分大きくとっておくとよいということだ. 例 2.2.2 フィルターに引っかかった花粉の粒子の数を数えると仮定しよう.この場合の標本 空間として適切なのは,負ではない整数の集合である. Ω = {0, 1, 2, 3, · · · }. もちろん,(花粉の数は有限だから) 可能性のある結果は有限の数なのだが,どこかで数を区 切るとしてもそれは恣意的なものに過ぎず,小さすぎるかもしれない.(例終) 可能性としてどのような数も許されると仮定した方が,ありえないとしても,確率を計算 しやすくなる.実際,数に限度をつけるとそれをいつも考慮に入れなければならず,計算が 手に負えなくなると同時につまらないものになってしまう. 2.2 節の練習問題 1. 次の実験に対する適切な標本空間 Ω を示せ. (a) 壺に j 個の黒いボールと k 個の白いボールが入っている.この壺から m 個ボー ルを取り出す. (b) ある橋を渡る車の数を 1 週間数えた. (c) 2 人のテニスプレーヤーが 2 戦先勝方式で戦った. (d) ポーカーで,4 人のプレーヤーに手札を配った. 2.3 事象 (event) 一つ一つの結果 ω がすべて集まって標本空間 Ω が構成されるとしよう.一つ一つの結果 の確率だけでなく,いくつかの結果の集合の確率を知りたい場合がある.そこで次のような 定義を与える. 定義 2.3.1 標本空間の部分集合を事象と呼ぶ. 事象は一つあるいはそれ以上の結果 ω からなる集合である.慣行にしたがい,事象は A, B, C, · · · のように大文字を使って表す.場合によっては A1 , Ai , · · · のように添え字を使う こともある. 例 2.3.1 (2 つのサイコロを振る) (i) 2 つの目を記録するときの標本空間は Ω = {(i, j) : 1 ≤ i, j ≤ 6} であり,最初のサイコロの目が偶数で次のサイコロの目が奇数であるという事象を考えると, 以下のように表される. A = {(i, j) : i ∈ {2, 4, 6}, j ∈ {1, 3, 5} }. 4 (ii) 2 つの目の和を記録するときの標本空間は, Ω = {k : 2 ≤ k ≤ 12}. 目の和が 7 か 11 である事象は B は, B = {7, 11}. 例 2.3.2 一週間のうちの雨の日数を記録するときの標本空間は, Ω = {0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7}. 雨の日が一日ならば, ω1 = 1. 雨の日が多いという事象は,4, 5, 6, 7 の結果から成り, A = {4, 5, 6, 7}. 例 2.3.3 医者が患者の体重を測って四捨五入してキログラムで表すときの標本空間は,十分 に広くとって, Ω = {i : 0 ≤ i ≤ 1000} としても損はない.すると,70 キログラムから 75 キログラムであるという事象は, C = {i : 70 ≤ i ≤ 75} となる. (例終) 例 2.3.4 壺の中に,a 個の赤いボールと b 個の黒いボールが入っている.ただし, c ≤ min{a, b} = a ∧ b とする.この壺から元に戻すことなく c 個のボールを順に取り出す.すると Ω 長さ c の 赤と黒のボールからなる列全体となる.赤いボールと黒いボールの個数が同じであるという 事象を D とする.もしも c が奇数ならば,この事象は起こりえないので,∅ = {} である (例終) 事象は集合だから,第 1 章の付録で述べた集合理論の考え方と記述法を使うことができる. もしも実験の結果 ω が集合 A に含まれるならば,事象 A が起こったと言う.この場合,ω ∈ A である.A ⊂ Ω は常に成り立つ.もし,A が起こらなければ,その補集合 Ac が起こらなけ ればならない.なぜならば,ω は A か Ac のどちらかに含まれるからだ. 集合理論の記法と考え方は,事象の組み合わせを考えるときに便利である. 例 2.3.5 普通のトランプ(52 枚)から 1 枚取り出すとしよう.単純な事象には, A ≡ カードはエースである. B ≡ カードは赤である. C ≡ カードはクラブである. 5 集合の和と共通部分の演算を用いると, より複雑な事象を表すことができる.例えば, A ∩ C ≡ カードはクラブのエースである. A ∪ B ≡ カードはエースか赤かその両方である. カードが赤であり,かつ,クラブであることはありえないので,B ∩ C = ∅ である.∅ は起 こりえない事象,あるいは空集合とよばれる. 定義 2.3.2 2 つの事象 A, B が共通部分をもたなければ ( A ∩ B = ∅ のとき),それらは “ 互いに素 (disjoint) である”, “両立しない” あるいは “互いに排反である” と言われる. A がどのような集合であっても, A ∩ Ac = ∅ が成り立つ.明らかなことだとは思うが,A と B が事象ならば,その組み合わせで得られる C = A ∪ B, D = A ∩ B もまた事象である.いくつかの事象の和集合,共通部分,補集合も また事象である. 表 2.2: 事象と記法 確実な事象 or 標本空間 起こりえない事象 事象 A が起こる 事象 A が起こらない 事象 A, B が両方起こる 事象 A, B のどちらかまたは両方起こる 事象 A が起これば事象 B も起こる 事象 A は起こるが,B は起こらない 事象 A と B は互いに素である Ω ∅ A Ac A∩B A∪B A⊆B A\B A∩B =∅ 表 2.2 は,集合の記法を用いた事象の表し方をまとめたものである. 定義 2.3.3 A1 , A2 , A3 , · · · , An , · · · を事象列とする.このとき,i ̸= j ならば Ai ∩ Aj = ∅ で あり,かつ, ∪i Ai = Ω ならば,A1 , A2 , A3 , · · · , An , · · · は Ω の分割であるという. 以前にも述べたように,事象間の関係は Venn の図解を用いればとても分かりやすい.例 を挙げよう.図 2.1 は, (A ∪ B) ∩ C = (A ∩ C) ∪ (B ∩ C), A ∪ (B ∩ C) = (A ∪ B) ∩ (A ∪ C) であることを簡潔に示してくれる. 2.3 節の練習問題 1. 下のリストは,標本空間と興味ある事象である.それぞれの場合に適切な標本空間 Ω を書き下し,Ω の要素を使って興味ある事象を定義せよ. 6 A B A C B C 図 2.1: Venn の図解: 左は (A∪B)∩C = (A∩C)∪(B∩C) を, 右は A∪(B∩C) = (A∪C)∩(A∪C) を表している. (a) 2 つのサイコロを振る;それらの和が 3 である. (b) 100 個の電球を試験する;せいぜい 4 個に欠陥がある. (c) ある家族には 3 人の子供がいる;彼らは同じ性別である. (d) 木の高さを四捨五入してメートルで表す;その高さが 10 メートルと 15 メートルの 間である. (e) Rod と Fred が 2 戦先勝でテニスの試合をする;Rod が勝つ. (f) Tom と Jack の体重を四捨五入してキログラムで表す;Jack が重い. 2. 任意の事象 A と B に対して,下が成り立つことを示せ. (a) (A ∪ B)c = Ac ∩ B c (b) A ∩ (B ∪ C) = (A ∩ B) ∪ (A ∩ C). 7 2.4 確率; 初歩的な計算 事象を定義したので,その確率について検討する.ある実験の結果全体を Ω とし,Ω の事 象を A とする.このとき A の起こる確率は P (A) と表され, 0 ≤ P (A) ≤ 1 (1) を満たす.このように P は Ω の各事象 A に数 P (A) ∈ [0, 1] を割り振るルールであると考 えてよい.数学用語ではこのようなルールを関数と呼んだ.このように P (·) は Ω に含まれ る事象の関数で,[0, 1] の値をとる.P の一般的な性質を扱うまえに,単純で明らかな例をい くつか観察し経験を積むことが望ましい. 例 2.4.1 (ベルヌイ試行) 結果が2通りしかない実験が数多くある.例えば,表か裏,偶数か 奇数,勝ちか負け,飛ぶか落ちるとかがあげられる.これをさらに単純化して,成功か失敗, S と F , の2つの結果を持つ実験と考えることができる.このとき事象 S と F の確率を次 のように書く. P (S) = p, and P (F ) = q = 1 − p 例 2.4.2 (等しく起こりやすい結果) ある実験の標本空間が Ω であり,Ω の中の |Ω| 通りの 結果が等しく起こりやすいとする.これは何らかの物理的な対称性,あるいは,実験の行わ れる条件から仮定されるとしよう. A を何らかの事象とし,それが含む要素数は |A| と表さ れる.この場合事象 A の起こる確率は, (2) P (A) = |A| A に含まれる結果の数 = . |Ω| Ω に含まれる結果の数 この等しく起こりやすいというのは思い切った仮定なのだが,ごく自然に使ってしまうもの である.この仮定は直感に訴えかけるものであるため,16 世紀にはこの仮定が明確に用いら れた.それ以前の数学者の考え方や書物でも,この仮定が用いられていたことは明らかであ る.この等しく起こりやすいという考え方が使われている例をもう少し挙げよう. 例 2.4.3 サイコロを 2 個,順に振る.A を 2 番目の目が 1 番目の目よりも大きいという事象 とする.ここで,Ω = {(i, j) : 1 ≤ i, j ≤ 6} だから, |Ω| = 36. そして,A = {(i, j) : 1 ≤ i < j ≤ 6} であり, A = {(5, 6), (4, 5), (4, 6), (3, 4), · · · , (1, 5), (1, 6)} であって,|A| = 1 + 2 + 3 + 4 + 5 = 15 である.よって, P (A) = 15 5 = . 36 12 例 2.4.4 コインを n 回フリップする.このとき,すべてが同じ面である確率はいくらだろう か?Ω は H と T を用いて作られる長さ n の列すべてからなる集合であり,その要素は等し く起こりやすい.つまり |Ω| = 2n であり,事象 A は,H を n 個並べたものと, T を n 個 並べたものの 2 つの要素からなるので,この確率は, 2 = 2−(n−1) . n 2 8 例 2.4.5 (chain) チェーンの破壊実験をするとしよう.n 個のつなぎ目のあるチェーンの両 端を引っ張ってどこが外れたかを見る.このときどのつなぎ目で外れるかは,どれも等しく 起こりやすいと考えてよい. A をこれらのつなぎ目からなる集合とすれば,A に属するつ なぎ目で外れる確率は,|Ω| = n として, P (A) = |A| . n 例 2.4.6 (lottery) 1 から 20 まで番号を付けられた切符 20 枚を壺の中に入れ,そこからラ ンダムに切符を一枚だけ取り出す.この場合, Ω = {1, 2, 3, · · · , 20} = {n : 1 ≤ n ≤ 20} であり,これに含まれる事象として次のようなものが考えられる. A ≡ 取り出した数が偶数 B ≡ 取り出した数が 5 で割り切れる C ≡ 取り出した数が 8 よりも小さい ランダムに取り出すということは,どの数も等しく起こりやすいと考えられるので,それぞ れの確率は, |A| 10 1 = = |Ω| 20 2 |B| 4 1 P (B) = = = |Ω| 20 5 |C| 7 P (C) = = . |Ω| 20 P (A) = 例 2.4.7 (dice) 3 つのサイコロを振って目の和を求める.和が 9 になる確率と 10 になる確 率とではどちらが大きいか? Ω = {(i, j, k) : 1 ≤ i, j, k ≤ 6}, |Ω| = 6 × 6 × 6 = 216 である.和が 9 になるのは, {1, 2, 6}, {1, 3, 5}, {1, 4, 4}, {2, 2, 5}, {2, 3, 4}, {3, 3, 3} の 6 つの 組み合わせからなる合計 25 通りである. {1, 2, 6}, {1, 3, 5}, {1, 4, 4}, {1, 5, 3}, {1, 6, 2}, {2, 1, 6}, {2, 2, 5}, {2, 3, 4}, {2, 4, 3}, {2, 5, 2}, {2, 6, 1}, {3, 1, 5}, {3, 2, 4}, {3, 3, 3}, {3, 4, 2}, {3, 5, 1}, {4, 1, 4}, {4, 2, 3}, {4, 3, 2}, {4, 4, 1}, {5, 1, 3}, {5, 2, 2}, {5, 3, 1}, {6, 1, 2}, {6, 2, 1}, 9 一方,和が 10 になるのは, {1, 3, 6}, {1, 4, 5}, {2, 2, 6}, {2, 3, 5}, {2, 4, 4}, {3, 3, 4} の 6 つの 組み合わせからなる合計 27 通りである. {1, 3, 6}, {1, 4, 5}, {1, 5, 4}, {1, 6, 3}, {2, 2, 6}, {2, 3, 5}, {2, 4, 4}, {2, 5, 3}, {2, 6, 2}, {3, 1, 6}, {3, 2, 5}, {3, 3, 4}, {3, 4, 3}, {3, 5, 2}, {3, 6, 1}, {4, 1, 5}, {4, 2, 4}, {4, 3, 3}, {4, 4, 2}, {4, 5, 1}, {5, 1, 4}, {5, 2, 3}, {5, 3, 2}, {5, 4, 1}, {6, 1, 3}, {6, 2, 2}, {6, 3, 1}, よって, 25 27 , P (10) = > P (9) 216 216 である.この問題はガリレオが 1642 年以前に解いた. P (9) = 例 2.4.8 トランプをよくシャッフルして,裏返しにポーカーの手札を 5 枚置く.そして 5 枚 目(最後)のカードを手に取る.このカードがエースである確率はいくらか?答えは, P (A) = 4 1 = 52 13 だ.この確率は最初の 4 枚に依存するという反対意見がでることがあるが,それらはまだ下 を向いてるのでこの確率には影響を及ぼさない.対称性により,どのカードもエースである 1 である.ただ1枚のカードがエースかどうか調べるとき,トランプが既に配られ 確率は 13 ているか,まだ手元に残っているかに関係しない. この対称性の考え方は,これ以外にも,自然現象を説明するのに用いられる. 例 2.4.9 (rope) ロープの破壊実験を行う:ロープの両端をラムにつなぎ,どこかの点 S で破 断するまでロープを引っ張る.テストの前のロープはどこも同様に良好であると仮定すると,ど の点でも等しく破断が起きやすいと考えてよい.ロープを 10 メーターとするとき,端の 1 メー ターずつ計 2 メーターの部分で破断の起こる確率は,P (S が端の 2 メータの部分で起こる) = 2 1 = となる.この確率は,どの 2 メートルの長さの部分で破断の起こる確率とも等しい 10 5 し,また,合計が 2 メートルとなる部分で起こる確率とも等しい (例終). 例 2.4.10 (meteorite) 朝起きて車に乗ろうとしたら隕石が当たっていた.それはいつのこ となのか?隕石には何の意図もないので,どの時刻でも等しく起こり得ると考えてよい.車 1 で を降りて次に乗るまでに 10 時間あったので,午前 1 時から 2 時までに落ちた確率は 10 ある (例終). 実験によっては,結果が時間あるいは直線の区間 [a, b] 上のどの点においても等しく起こ りやすいと仮定できる場合がある. このような場合実験の確率関数を次のように定義できる,標本空間は Ω = [a, b] で,その 長さは,b − a. 事象 A を Ω 上の区間 A でその長さを |A| = l とする.するとどの点でも等 しく起こりやすいという仮定のもとで,事象 A の確率は, P (A) = |A| l = . |Ω| b−a 10 例 2.4.11 (rope:再び) ロープが,真ん中の 5 メートルの部分で破断する確率は,両端の 5 1 2.5 + 2.5 = 5 メートルの部分で破断する確率と等しく, = である. 10 2 点が平面からランダムに取られるとしても話は同様である.Ω を平面上のある領域とし, その面積を |Ω| と書く.A を Ω 上の区域とし,その面積を |A| と書く Ω 上のどの点も等し く選ばれやすいとすれば,点 P が A 上にある確率は, P (A) = |A| . |Ω| 例 2.4.12 あなたの庭を領域 Ω とし,|Ω| = 100m2 とし,半径 1m の円形の池を A とする. 隣から電話があって,あなたの池に小さな隕石が落ちたという.隕石が池に落ちた確率は, P (池に落ちる) = |A| π = . |Ω| 100 この節の終わりに,単純だが大切な点について説明する例を与える. 例 2.4.13 (確率として同等) 次のような 3 つの実験を考えよう. (i) 偏りのないサイコロを振って,その目を記録する. (ii) 壺の中に 5 個の雪花石膏の玉と 1 個の緑柱石の玉が入っている.ここから緑柱石が出 るまで玉を取り出してゆくとき何個目に取り出したかを記録する. (iii) 宝くじの抽選で 6 個の番号が順に選ばれる.そのうち最も小さい数が抽出された順番 を記録する. どの場合も標本空間は, Ω = {1, 2, 3, 4, 5, 6} であり,どの場合も等しく選ばれるので, 1 P (i) = , 6 1≤i≤6 であり,どの実験も標本空間 Ω と確率 P (·) が共通であるので,確率的に同じである. 同じ確率を与える様々な実験があるとき,標準的なフォーマットを与えると便利である.こ の場合,歴史的な理由もあって,壺のモデルがよく用いられる. つまり,直前の例では (ii) が標準的な表現である.壺のモデルが用いられるには,3 つの 理由がある.ひとつめは,コインやサイコロで表現すると複雑なものになりがちなのに対し, 壺のモデルはシンプルに表現できるからだ.ふたつめは,勘違いが少なく直感を働かすこと ができるからだ.最後は歴史的なもので,壺のモデルはくじ引きの抽選や投票に用いられて きた.これを使えば,抽選の場合はインチキができない,投票の場合は無記名性が保証され たからである.それゆえ,確率を学ぶ際の最初のモデルとしては壺のモデルがふさわしいと いえる. 2.4 節の練習問題 11 1. ルーレット ( 0, 1 ∼ 36 の合計 37 個のポケットがあるヨーロピアン・ルーレット) を回 して,奇数がでる確率を求めよ. 2. 52 枚のカードからランダムに 2 枚取り出したとき, 2 枚ともエースである確率を求 めよ. 3. 三角形 ABC 上の一点をランダムに選ぶとき,その点が ABD 上にある確率はいくら か.ただし,D は辺 BC 上の点とする. 4. 円上の一点をランダムに選ぶとき,その点が周辺よりも中心に近い確率はいくらか? 5. 壺のなかに,a 個の赤い玉と b 個の黒い玉が入っている.ここから一つ一つ玉を取り出 してゆくとき,最後の玉が黒である確率はいくらか?(ヒント:あなたは途中の玉の色 を一切確認しない). 2.5 確率の和のルール 実験が等しく起こりやすい結果を生起させるとは限らない.そこで,確率関数 P が一般的 に持つ性質をいくつか取り上げる.これまで通り, (2.5.1) 0 ≤ P (A) ≤ 1 は成り立っている.そして確実な事象の確率は 1 だから, (2.5.2) P (Ω) = 1. 確率が従う,もっとも重要なルールは以下である. 和のルール (Additionrule). A と B が互いに素 A ∩ B = ∅ ならば, (2.5.3) P (A ∪ B) = P (A) + P (B). このルールはもっとも重要なものである.A と B が事象ならば,A ∪ B もまた事象であ るので,確率を求めなければならない.このルールを複数回適用すれば,A1 , A2 , · · · An がど のペアも互いに素な集合列とすれば, (2.5.4) P (∪ni=1 Ai ) = P (A1 ) + P (A2 ) + · · · + P (An ) が成立することが分かる. また,事象の列を有限個に限定する必要はなく,次のように拡張できる. 確率の和のルールの拡張 A1 , A2 , · · · をどのペアも互いに素な集合列とすれば, (2.5.5) P (A1 ∪ A2 ∪ · · · ) = P (A1 ) + P (A2 ) + · · · . (2.5.1), (2.5.2), (2.5.5) を合わせて,確率の公理 と呼ぶことがある(これらのルールを満 たすものを確率と呼ぶ).これらが,Ω の部分集合族( 集合を要素とする集合を集合族とい う)上で定義される確率関数の性質を決める.実際には,確率関数というより,確率分布と いう表現を使うことが多い. 12 定義 2.5.1 Ω を標本空間とし,P (·) を (2.5.1), (2.5.2), (2.5.5) を満たす Ω の部分集合族上 で定義された確率関数とする.このとき,P は確率分布と呼ばれる. “確率とは標本空間 Ω の各要素(結果)に分配されたもの” であると考えれば,分布とい う言葉が使われるのもうなずける.関数 P はどのように分配されているかを示している.こ の点から考えると,確率というのは分配された質量 (mass) とも言える.この譬えを利用すれ ば,“確率は質量のように加えることができる” 事実を直感的に理解できる.また,確率は質 量と同じく負にはならない. 確率の和のルールが,これまでの確率の解釈においても,成り立つことを示そう. まず,“比率としての確率” であるが,この場合,標本空間 Ω に属する要素 (結果) が,“い ずれも等しく起こりやすい ( equally likely) と仮定し,事象 A の起こる確率は, P (A) = |A| |Ω| と表される.事象 |A|, |B| が互いに素ならば (A ∩ B = ∅), |A ∪ B| = |A| + |B| であるので, P (A ∪ B) = |A ∪ B| |A| |B| = + = P (A) + P (B). |Ω| |Ω| |Ω| 次に,確率を “長い目で見た相対比率” が近づいてゆく先という観点から見る.実験を N 回 繰り返すとしよう.各実験において,事象 A, B が起こるか起こらないか観察する.A ∩ B = ∅ ならば,同時に起こることはない.このとき,事象 A の起こる回数を N (A), 事象 B の起こ る回数を N (B) とすれば, N (A ∪ B) = N (A) + N (B) なので,両辺を N で割ってやれば, P (A ∪ B) = P (A) + P (B) . 3 番目に,期待値として確率を解釈する場合を考えよう.慈悲深いお金持ちが再登場して, ランダムに $1 恵んでやろうと決意した場面を考える.事象 A, B は互いに素であるとする. 事象 A が起これば,あなたの右手に $1, 事象 B が起れば,左手に $1, どちらも起こらなけ れば Bob に $1 与えられる.あなたが獲得する期待値 $P (A ∪ B) の内訳は,右手の期待値 $P (A) と左手の期待値 $P (B) の合計なので, P (A ∪ B) = P (A) + P (B). 最後に,Ω をある平面上の区域とし,その面積を |Ω| とする.この Ω から一点をランダム に選び出すとき,それが,A(⊂ Ω) に属する確率は, P (A) = |A| |Ω| である.面積は和のルールに従うので,A ∩ B = ∅ ならば, P (A ∪ B) = P (A) + P (B). 13 この場合,確率を質量に例えてみると,確率分布は Ω 上一様な重さを持つものとなる.広さ |Ω| の区域を,密度 Ω−1 の薄膜で覆ったものをイメージしてもよい.このようなイメージは, あとあと役に立つこともある. この節をまとめる.確率の和のルールは,確率をどのように解釈しようと,自然なもので 説得力がある.確率は,どのような場合であれ,このルールを守っていると言い切ってしま うことには抵抗があるかもしれない.しかし,これをルールとして扱うことにより,確率論 ば発展し,その結果,現実をエレガントにかつ正確に描写できるようになってきた. 2.5 節の練習問題 1. Bernoulli trial ベルヌイ試行 ベルヌイ試行において, P (S) + P (F ) = 1 であること を示せ. 2. Ω が有限個の要素からなるとき,拡張された和のルールが必要ないことを示せ. 3. (2.5.4) は (2.5.3) から導かれることを示せ. 4. P (A ∩ B) ≤ min{P (A), P (B)} であることを示せ. 5. A, B がどのような事象であっても,P (A ∪ B) ≤ P (A) + P (B) であることを示せ. 2.6 単純な結論 これまで,確率分布 P は次の 3 つを満たす. (2.6.1) A がどのような事象でも, P (A) ≥ 0, (2.6.2) P (Ω) = 1, (2.6.3) A ∩ B = ∅ ならば, P (A ∪ B) = P (A) + P (B). これらのルールは単純であるにが,導かれる結論は広範囲に及ぶ.これらを利用して得られ る結論をいくつか紹介しよう. 補集合 任意の事象 A に対し,Ω = A ∪ Ac かつ A ∩ Ac = ∅ である.そこで,(2.6.2),(2.6.3) と図 2.2 を見れば分かるように, 1 = P (Ω) = P (A ∪ Ac ) = P (A) + P (Ac ). よって,A の起こらない確率は, (2.6.4) P (Ac ) = 1 − P (A). 特に,絶対に起こらない事象 ∅ の確率は, P (∅) = P (Ωc ) = 1 − P (Ω) = 0 である.ルールを用いて得られた結果が直感と一致することは喜ばしいことである.ただし, 逆は成り立たないことに注意しよう.次の例から分かるように,P (A) = 0 であっても,A = ∅ とは限らないのだ. 14 A Ac W 図 2.2: P (A) + P (Ac ) = 1. 例 2.6.1 一辺の長さ 1 の正方形上の 1 点をランダムに取り出す.事象 A を,“この点が正 方形の対角線上にある” とおけば,先に見たように,|A| を A の面積とするとき, P (A) = |A| = |A|, |Ω| である.しかし線分は面積を持たないので P (A) = 0 となる.事象 A は全く起こりえないこ とではないのだが,確率は 0 になる. 次に,補集合のルール (2.6.4) を用いた例をいくつか考えよう. 例 2.6.2 サイコロを一つ用意し振る.このとき何回振れば,6 の目が一回は出る確率が,一 度も出ない確率を上回るだろうか? 解答 サイコロを r 回振るとき,6r 通りの結果が起こり得る.各回において,6 の目が 出ないのは 5 つの面であるので 5r 通りの 6 の目の出ない結果が考えられる.それゆえ, P ( 6 の目が一度も出ない) = 5r 6r となる.この結果を (2.6.4) に当てはめると, 5 P ( 6 の目が一度は出る ) = 1 − P ( 6 の目が一度も出ない) = 1 − ( )r . 6 1 5 これが五分五分よりも有利になるためには,r が 1 − ( )r > を満たすよう十分大きければ 6 2 よい.少し計算すれば,r = 4 であることが分かる. 例 2.6.3 次のうちどちらが起こりやすいか? (i) サイコロを 4 回振って 6 の目が少なくとも 1 回出る. (ii) サイコロ 2 つを 24 回振って, 6 のぞろ目が少なくとも 1 回出る. 解答 A を (i) の事象,B を (ii) の事象としよう.Ac は 6 が一度も出ない事象だから,全部 で 64 通りの等しく起こりやすい結果のうちの,5r 通りの結果が 6 の目を持たない.だから, (2.6.4) より, 5 P (A) = 1 − P (Ac ) = 1 − ( )4 . 6 15 また,同様に, P (B) = 1 − P (B c ) = 1 − ( 35 24 ) . 36 電卓等を用いて計算すれば, 671 1 = P (A) ≥ ≥ P (B) ≃ 0.491. 1296 2 よって A の方が起こりやすい. 差のルール. B ⊆ A としよう.すると,A = B ∪ (B c ∩ A) = B ∪ (A \ B) でありまた B ∩ (B c ∩ A) = ∅ が成り立つので, P (A) = P (B) + P (B c ∩ A) であり,それゆえ, B ⊆ A ならば, P (A \ B) = P (A) − P (B) が示される.図 2.3 を見れば,説明をするまでもない.同様に,A, B の関係がどうであっ ても, (2.6.5) P (A \ B) = P (A) − P (A ∩ B) である.A ∩ B ̸= ∅ のとき,P (A ∪ B) はどのように表されるのだろうか.答えは次のルー ルにより与えられる. A AB B 図 2.3: B ⊆ A のとき P (A \ B) = P (A) − P (B). 包含除外ルール. A, B がどのような事象であれ,そのどちらかが起こる確率は,以下のよ うに与えられる. (2.6.6) P (A ∪ B) = P (A) + P (B) − P (A ∩ B). 証明 和のルールを 3 回用いて, P (A) = P (A ∩ B) + P (A ∩ B c ), P (B) = P (A ∩ B) + P (B ∩ Ac ), P (A ∪ B) = P (A ∩ B) + P (A ∩ B c ) + P (Ac ∩ B). 上の 2 つの式を加えたものから 3 番目の式を引けばよい. 図 2.4 のように Venn の図解を描 いてみればすぐにわかる.このルールの例をいくつか挙げる. 16 A AÝB B 図 2.4: P (A ∪ B) = P (A) + P (B) − P (A ∩ B) であることが分かる. 例 2.6.4 ( wet and windy. ) 気象データによれば,ある島の冬至の天気は,雨の確率が 30%,風の強い確率が 40%, その両方である確率が 20% である. これまでに述べたルールに基づき,様々な確率を求めてみよう. (i) P (dry) = P (not wet) = 1 − 0.3 = 0.7 ; (ii) (2.6.5) を用いて P ( dry and windy ) = P (windy\wet) = P (windy)−P (wet and windy) = 0.2. (iii) (2.6.6) より P (wet or windy ) = P (wet) + P (windy) − P (wet and windy) = 0.4 + 0.3 − 0.2 = 0.5 例 2.6.5 (警報器) ある台所には,煙を感知する警報器と熱を感知する警報器の 2 つが取り 付けられている.実際に火事が起こったとき,煙感知器は確率 0.95 で 1 分以内に鳴り,熱感 知器は確率 0.91 で 1 分以内に鳴り,両感知器が鳴るのが 0.88 とする.少なくともどちらか 一方が鳴る確率を求めよ. 解答 明らかに, P (H ∪ S) = P (H) + P (S) − P (H ∩ S) = 0.91 + 0.95 − 0.88 = 0.98. 包含排除ルールは 3 つ以上の事象についても成り立つが,式は長くなり計算は厄介になる. 場合によっては,確率の上限が分かるだけでよい.次はその有名な例である. Boole の不等式. A1 , A2 , · · · , An がどのような事象であっても,下の不等式が成り立つ. (2.6.7) P (A1 ∪ A2 ∪ · · · ∪ An ) ≤ n ∑ P (Ar ). r=1 証明 n = 2 のときは (2.6.6) よりあきらか.いま,n ≥ 2 のとき成り立っているとすれば, P (A1 ∪ · · · ∪ An ∪ An+1 ) ≤ P (A1 ∪ · · · ∪ An ) + P (An+1 ) ≤ n+1 ∑ r=1 数学的帰納法を用いて任意の n について成り立つことが示される. 17 P (Ar ). 2.6 節の練習問題 1. A ⊆ B ならば P (A) ≤ P (B) であることを示せ. 2. A (wet), B (windy), C (warm) としよう.すると, P (A ∪ B ∪ C) = P (A) + P (B) + P (C) − P (A ∩ B) − P (B ∩ C) − P (C ∩ A) + P (A ∩ B ∩ C) であることを示せ. 3. 2 個のサイコロを投げるとき,少なくとも 1 回の 6 のぞろ目を出す確率が 0.5 より大 きくなるためには何度投げればいいのだろうか? 4. ガリレオの問題:( 例 2.4.7 をもう一度 ) Sk を 3 個のサイコロの目の和が k になる という事象とする.P (Sk ) をすべての k について計算せよ. 5. ピーピス (Pepys) の問題 (a) 6 個のサイコロを振るとき,6 の目が 1 個でも出る確率を求めよ. (b) 12 個のサイコロを振るとき,6 の目が少なくとも 2 個ある確率を求め,(a) の答 えと比較せよ. remark ピーピスはこの問題をアイザック・ニュートンに提示し答えを求めたが,ニュー トンの正しい答えをなかなか受け入れようとしなかった. 6. 事象 A , B のどちらか一方のみが起こる確率が P (A) + P (B) − P (A ∩ B) であること を示せ. 18 2.7 条件付き確率:積のルール 現実の場面において,実験がランダムな結果を生じる分離できないただ一つの行為である ことは珍しい.実験はより複雑な構造を有していて,実験が完了し最終的な結果がでるまで に何らかの情報が与えられるのが普通である.あるいは実験の条件が変化することも考えら れる.この状況を扱うために,2.5 節与えた和のルールに加えて,新たなルールを紹介する. これは条件付けルールと呼ばれるものだ.まず例をいくつか示す. 例 2.7.1 片手に 1 個ずつサイコロを持ち,2 個のサイコロを振る.右手のサイコロの目が左 手のそれよりも大きい確率はいくらか? 合計 36 通りの結果があり,そのうち 15 通りで右の数が大きい.だから, (2.7.1) P ( 右手のサイコロの目が大きい) = 15 . 36 次に左手のサイコロを先に振ると 5 の目が出たとする.このとき右手のサイコロの目がこれ 15 より大きくなる確率はいくらか? でないことは明らかである.この場合 6 の目が出ると 36 1 きに限り,右手のサイコロの目が大きくなるので確率は である. 6 上の例は,“条件が違えば結果は異なる” という普遍的な観察の一例である.特に,実験が 行われる条件が変更されれば,様々な結果の確率も変更される場合がある.次の例を示そう. 表 2.3: 腎臓結石の大きさでグループ分けした処置の結果 結果 Size success(S) failure total small 315 42 357 large(L) 247 96 343 total 562 138 700 例 2.7.2 (結石.) 腎臓結石は大きい (> 2cm ) か,小さいかに分類され,処置は成功したか 失敗したかに分類される.700 名の患者について,表 2.3 のような結果が得られた.事象 L を “結石が大きい” とする.すると,この 700 名の患者から 1 名ランダムに選ぶとき, (2.7.2) P (L) = 343 . 700 また,700 名の患者からランダムに 1 名選ぶとき,成功の確率は, (2.7.3) P (S) = 562 . 700 しかし,結石が大きい患者からランダムに 1 名選ぶときの成功の確率は,(2.7.3) ではなく, 247 ≃ 0.72. 343 つまり,結石が大きいときの成功率は,結石の大きさについての情報が全くないときの成功 率とは異なる. 19 これは自然であり明らかであるが,実験の条件が異なっているという事実をはっきりとさ せるために,新たな記述法を導入するとよい.そこで,P (S|L) を L が与えられたときの条 件付き確率と呼ぶ. (2.7.4) P (S|L) ≃ 0.72 同様に,成功した患者から 1 名ランダムに選びだし,その患者の結石が大きかったかどうか 質問する.これは S が与えられたときの L の条件付き確率であり,表 2.3 より, 247 (2.7.5) P (L|S) = ≃ 0.44 562 であることが容易にわかる. 以上の説明を終え,条件付き確率を支配するルールを述べる準備が整った. 条件付けのルール. 事象 A , B に対して,B が与えられたときの A の条件付き分布は, P (B) > 0 ならば, (2.7.6) P (A|B) = P (A ∩ B) P (B) により定義される. この定義は少々恣意的に見えるかもしれないが,比率としての確率の解釈から導かれるも のである.このことについて,順に示してゆく. まず,結果が等しく起こりやすい場合を考えよう.この場合, P (A) = |A| |B| , P (B) = . |Ω| |Ω| B が起こったと仮定すると,B に属する結果は,なお,どれも等しく起こりやすい.実質的 には,|B| 個の等しく起こりやすい結果を持つ実験と考えられる.この実験で A が起こるの は,A ∩ B が起こる場合でありその場合に限られる.よって,この場合においては, P (A|B) = である.しかし, |A ∩ B| |B| / |A ∩ B| |A ∩ B| |B| P (A ∩ B) = = , |B| |Ω| |Ω| P (B) であり,(2.7.6) そのものである. 次に,相対度数から考えてみよう.実験を非常に大きな数 n だけ繰り返し,その結果事象 B が N (B) 回起こるとする.B が起こったとするならば,これらの N (B) 回のみに注目す ればよいことになる.そのなかで A の起こる回数はちょうど N (A ∩ B) 回であり,実験の結 果として, / N (A ∩ B) N (A ∩ B) N (B) P (A ∩ B) P (A|B) ≃ = = , N (B) n n P (B) であり,(2.7.6) と一致する. 3 つめに,確率をフェアプライスとして解釈する場合に戻って考えよう.金持ちが $1 を提 供する.この場合は事象 A, B が共に起こったら $1 貰えるものとする.この申し出は,私に とって,$P (A ∩ B) の価値がある.この手続きを小分けにしてみよう.B が起こったら $1 札は机の上に置かれ,さらに A が起れば私のものになる.つまり, 20 (i) 机の上に置かれているものの価値は $P (B) である. (ii) 机の上に置かれている $1 の価値は $P (A|B) である. この申し出の価値は変わらないので,机を経由するかしないかにかかわらず同じである.よって, P (A ∩ B) = P (B)P (A|B) が成立し,この場合も (2.7.6) と同じである. 最後に平面上の領域 Ω の点をランダムに抽出する場合を考えよう.任意の事象 A, B に対 し,B が起こったとき A が起こるのは,A ∩ B が起こったときに限る.P (A|B) が |A ∩ B| に比例すると考えることは自然である.つまり,何らかの値 k を用いて, P (A|B) = kP (A ∩ B) と表される.P (Ω|B) = 1 だから, 1 = kP (Ω ∩ B) = kP (B) であり,この場合も (2.7.6) が得られる.図 2.5 はこの関係を図示している. A AÝB AÝB B W B 図 2.5: 左の図は,すべての起こり得る結果 Ω の中の関係を示している.一方右の図は,結果 が B に属しているという知見に基づいている;P (A|B) は確率の比 P (A ∩ B)/P (B) である. 例 2.7.1 再び ルールに従って, P (右は 6 で左は 5) P (左は 5) / 1 1 1 = = 36 6 6 P (右のサイコロの目が大きい | 左は 5) = 例 2.7.2 再び ルールに従って 247 P (S ∩ L) = P (S|L) = P (L) 700 であり,これは (2.7, 4) .また, P (L ∩ S) 247 P (L|S) = = P (S) 700 で,(2.7.5) となる. 21 / / 343 , 700 562 , 700 例 2.7.3 一個のコインを 3 回フリップ (f lip) する. A を最初のフリップが表を見せる事象 とし,B を表がちょうど 2 回である事象とする.このとき, Ω = { HHH, HHT, HT H, HT T, T HH, T HT, T T H, T T T }, A = { HHH, HHT, HT H, HT T }, B = { HHT, HT H, T HH}, A ∩ B = { HHT, HT H }. よって,(2.7.6) より, P (A|B) = P (A ∩ B) |A ∩ B| |Ω| 2 = = P (B) |Ω| |B| 3 であり,また, P (B|A) = P (A ∩ B) 1 = . P (A) 2 条件付き確率を計算するときには,注意深くまた労をいとわない姿勢が必要だ.学生は直感 的な短絡思考により間違いをおかすことが多い.次の例はこれを示すものだ. 例 2.7.4 箱の中には,両面表のコイン,両面裏のコインそして普通のコインの計 3 枚が入っ ている.ここからコインを 1 枚取り出してフリップしたら表が出た.このコインが両面表の コインである確率はいくらか? solution. 3 つのコインには合計 6 面ある.だから |Ω| = 6. D を取り出されたコインが両 面表であるという事象,A を表を見せるという事象としよう.すると,A が 3 つの面からな るので, 1 P (A) = 2 2 つの面が A かつ D を満たすので, 1 P (A ∩ D) = , 3 最後に, P (D|A) = P (A ∩ D) 2 = . P (A) 3 この例で言いたいことは,多くの人は次のように議論しようとするということだ:もしコ インが表を見せるとしたら,そのコインは両面表か通常のコインのどちらかである.コイン はランダムに選ばれるので,これらは等しく確からしい.それゆえ P (D|A) = 12 である. この議論は表面的には正しいように見えるが,これは全くの間違いである.このインチキ な議論では,標本空間 Ω について全くふれていない.この例は,確率を求める際に行われる, 間違った理由づけの典型的なものである. この節の終わりに,(2.7.6) をもう一度考える.P (A|B) を得るのに,P (A ∩ B) を P (B) が 分かっていることを仮定している.しかし場合によっては,P (A|B) と P (B) が分かってい て P (A ∩ B) を求めたいこともある.そのため,(2.7.6) を次のように書き換えよう. 22 積のルール 任意の事象 A, B に対して, (2.7.7) P (A ∩ B) = P (A|B)P (B). この式で注目すべきは,P (B) ̸= 0 という但し書きがいらないということだ;もしも P (B) = 0 ならば,式の両辺が 0 になるだけである.確かに面倒ではないが意味のある関係ではない. 次は,(2.7.7) が利用される例である. 例 2.7.5 (socks.) 箱の中に 5 つの赤いソックスと 3 つの青いソックスが入っている.ここか ら 2 つのソックスをランダムに取り出すとき,両方とも青いソックスである確率はいくら? solution. 事象 B を “最初のソックスが青である” とし,事象 A を “ 2 つとも青である” と しよう.一つ目が青の場合,残りは赤が 5, 青が 2 だから P (A|B) = 2 7 ここで,P (A ∩ B) = P (A) だから,(2.7.7) より, P (A) = P (A|B)P (B) 2 3 3 = × = . 7 8 28 もちろん,標本空間の大きさを数え上げ,事象の大きさを数え上げることにより確率を求め ることもできるが,上の計算の方が楽だろう. 積のルールは以下のように拡張され,使い勝手のよいものとなる. 拡張された積のルール A1 , A2 , · · · , An を任意の事象とし, (2.7.8) P (A1 ∩ A2 ∩ · · · ∩ An ) > 0 と仮定する.このとき次の拡張された積のルールを得る. P (A1 ∩ A2 ∩ · · · ∩ An ) = P (An |An−1 ∩ · · · ∩ A1 ) × P (An−1 |An−2 ∩ · · · ∩ A1 ) .. . × P (A2 |A1 ) P (A1 ). この式は,すべての k について, P (Ak |Ak−1 ∩ · · · ∩ A1 ) = P (Ak ∩ · · · ∩ A1 ) P (Ak−1 ∩ · · · ∩ A1 ) を右辺に当てはめてゆけば求まる. 最後に,条件付き確率が不自然でも純粋に理論的なものの見方でもないことを強調する. もしもあなたが,保険を掛ける,ゴルフをする,競馬を観戦するといった経験を持つならば, 条件付き確率に親しんでいると言える.無数の例の中から 3 つを紹介する. 23 Insurance. 保険会社は P (請求 | 若いドライバー) > P (請求) であることを知っているので, 若いドライバーに対しては高い保険料を要求する.同様の理由で,より年配者の生命保険料 はより高くなる. Golf. あなたがオープンチャンピオン優勝者と対戦するとしたら,P (you win) ≃ 0 だろう. しかし十分なストローク数が与えられれば,P (you win|handicap) ≃ 12 となるよう調整でき る.このように,どのような対戦でもほぼ対等な戦いが可能になる. Horse Race. 上の例と同様に,馬のレースでは,早い馬には重りをつけるよう要求するこ とで,よりオープンなレースにできる.賭博業の多くは,ハンディキャップ設定者達が行う 重りの設定に依存している. ハンディキャップ設定者の目的は,重りを適切に選びすべての馬が勝つ確率をほぼ同じにす ることであり,それによってレースの不確実性を高めることにある.事前のオッズは,ブック メーカーによる重りの設定がどれだけ成功しているかの評価であり,スタート時点でのオッ ズはギャンブラーによる評価である. ( オッズについては 2.12 節で紹介する ). もちろん重りだけがレースの条件ではない;例えば,レース前にひどく雨が降ったなら,厳 しい条件に強い馬を好む方向にオッズが変化する. 条件付き確率を考えることは,どの実験においても,有用である.次の練習問題を考えよう. 2.7 節の練習問題 1. 雨の降る確率は 25% であり,また 2 日続けて雨の降る確率は 10% とする.今日雨が 降ったとして,明日雨が降る確率はいくらか?明日雨が降るとして,今日雨である確率 はいくらか? 2. 条件付き確率 P (A|B) が 3 つの確率の公理を満たすことを示せ. (a) 0 ≤ P (A|B) ≤ 1, (b) P (Ω|B) = 1, (c) A1 と A2 が互いに素のとき P (A1 ∪ A2 |B) = P (A1 |B) + P (A2 |B) また,P (A|B) = 1 − P (Ac |B) であることを示せ. 3. 拡張された積 次を示せ. P (A ∩ B ∩ C) = P (A|B ∩ C)P (B|C)P (C). 4. あなたのバッグの中には 15 個のリストバンドが入っている.そのうち 6 個が青で,5 個が赤で, 4 個が緑である.ここから 3 個をランダムに取り出すとする.(a) すべて赤 である確率を求めよ.(b) すべて同じ色である確率を求めよ. 5. 下を証明せよ. P (A ∩ B|A ∪ B) ≤ min{P (A ∩ B|A), P (A ∩ B|B)}. 6. procecutor’s fallacy 事象 G を起訴された人が有罪であるとし,事象 T は提示さ れた証言あるいは証拠が事実であるとする.法律家の間では, P (G|T ) = P (T |G) を 仮定して議論することが知られている.この関係が成立するための必要十分条件は, P (G) = P (T ) であることを示せ. 24 2.8 分割ルールとベイズのルール この節では,条件付き確率の定義を用いて得られる単純な結果のいくつかを紹介しよう.ま ず最初に示すことは,条件付き確率が確率関数のルールを満たすことである(そうでなけれ ば,名前が誤解を生むものとなる). 条件付き確率は確率である 任意の A, B に対して, 0 ≤ P (A ∩ B) ≤ P (B) だから, 0 ≤ P (A|B) ≤ 1. (2.8.1) 次に,任意の B にたいして P (B) > 0 ならば, P (Ω|B) = P (Ω ∩ B)/P (B) = 1. 3 番目に,A1 と A2 が互いに素ならば,A1 ∩ B と A2 ∩ B も互いに素である.それゆえ, (2.8.2) P (A1 ∪ A2 |B) = {P (A1 ∩ B) + P (A2 ∩ B)}/P (B) = P (A1 |B) + P (A2 |B). 次に,条件付き確率の重要な応用例をいくつか考える.事象 A, B に対する積のルールは, P (A ∩ B) = P (A|B)P (B) (2.8.3) であることを思い出そう.この関係はどのような事象のペアに対しても成り立つので, P (A ∩ B c ) = P (A|B c )P (B c ) (2.8.4) が成り立つ.B と B c は互いに素であるので, (2.8.5) P (A ∩ B) + P (A ∩ B c ) = P ((A ∩ B) ∪ (A ∩ B c )) = P (A) (2.8.3),(2.8.4), (2.8.5) を結びつけるとき,非常に重要な関係が得られる. 分割ルール (2.8.6) P (A) = P (A|B)P (B) + P (A|B c )P (B c ) 条件付き確率の場合の分割ルールも求められる; A, B, C に対して, 条件付き確率の分割ルール (2.8.7) P (A|C) = P (A|B ∩ C)P (B|C) + P (A|B c ∩ C)P (B c |C). 分割ルールはさほど重要なものには見えないかもしれないが,重要で頻繁に利用されるルー ルである.利用例をいくつか挙げる. 25 例 2.8.1 (海賊版) Acme Gadgets Inc. はある高価な電子玩具を製造していて,不良率は 10−3 である.この玩具は大変人気があって,そのコピー商品が不法に安く出回っている.海賊版は 1 市場の 10% を占め,不良率は である.もしこれを 1 個購入するとき,不良率はいくらか? 2 solution. 事象 A を本物を買う.事象 D を製品が不良であるとしよう.すると, P (A) = 9 , 10 P (Ac ) = 1 , 10 P (D|A) = 1 , 1000 P (D|Ac ) = 1 2 なので,分割ルールを用いて, P (D) = P (D|A)P (A) + P (D|Ac )P (Ac ) 9 1 = + ≃ 5% 10000 20 例 2.8.2 (検査) ある集団の中で,ある病気に罹っている割合が p であるとする.個人がこ の病気に罹っているかどうかを示す検査を行う.完璧な検査というものは存在しない.この 場合,病気の人が陽性を示す確率を 0.95,病気でない人が陽性を示す確率を 10% としよう. この集団から 1 名ランダムに選び出すとき,その人が陽性を示す確率を求めよ. solution. 事象 R を陽性を示すものとし,D を病気であるとする.すると,(2.8.6) より, P (R) = P (R|D)P (D) + P (R|Dc )P (Dc ) = 0.95p + 0.1(1 − p) = 0.85p + 0.1 このような質の悪い検査では,病気が非常に希なものであっても多量の陽性を生む.そし て,病気が希であればあるほど,間違いの陽性が大多数になってゆく. 例 2.8.3 患者には,いくつかの薬の中の 1 つが割り当てられ,それぞれの薬は副作用を生じ させる.ある薬 C は,副作用を起こさないときの治癒率は 99% であり,5% の確率で副作 用を起こす.副作用が起こった時の治癒率は 30% である.もしも C が使われるとき,病気 が治癒する事象 A の確率を求めよ. solution. 事象 B を副作用が起こらないとすると, 99 100 95 P (B|C) = 100 30 c P (A|B ∩ C) = 100 5 c P (B |C) = 100 P (A|B ∩ C) = であることが分かっているので,(2.8.7) より, P (A|C) = 99 95 30 5 9555 × + × = ≃ 95%. 100 100 100 100 10000 26 もちろん集団はいくつかのグループに分けられるし,いくつかの実験をすれば事象はいく らでも増える.こういった場合のために,分割ルールをより一般化しなければならない. 拡張された分割ルール A を任意の事象とし,事象列 (Bi ; i ≥ 1) を, A ⊆ B1 ∪ B2 ∪ · · · = ∪i Bi かつ,i ̸= j ならば Bi ∩ Bj = ∅ つまり,Bi が互いに素であるとする.このとき,(2.5.5) の 和のルールより, (2.8.8) P (A) = P (A ∩ B1 ) + P (A ∩ B2 ) + · · · ∑ P (A ∩ Bi ) = i = ∑ P (A|Bi )P (Bi ). i であることが示される.これを拡張された分割ルールと呼ぶ.条件付きの場合には, ∑ (2.8.9) P (A|C) = P (A|Bi ∩ C)P (Bi |C) i 例 2.8.4 (Coins.) あなたは両面表のコインを 3 枚,両面裏のコインを 1 枚,通常のコイン を 5 枚持っているとしよう.この中からランダムに 1 枚取り出し,フリップしたとき表の出 る確率はいくらか? solution. D, T , N を,それぞれ,あなたが両面表,両面裏,通常のコインを取り出す事象 とする.このとき,表のでる確率は, P (H) = P (H|D)P (D) + P (H|T )P (T ) + P (H|N )P (N ) 3 1 1 5 11 =1× +0× + × = 9 9 2 9 18 分割ルールを用いた例はいくらでも上げることができる.次に,これまでの例を違うポイ ントから眺めてみよう. 例 2.8.1 海賊版再び まず考えるのは,製品の不良率であるが,ここでは不良品と分かった ときに,それが正規の製品かどうかである.正規の製品ならばメーカーに交換を求めること ができるが,海賊版ならば何の保証もない.ここで知りたいのは,P (A|D) なのであり,こ れはあなたが交換をしてもらえる確率の上限である. 例 2.8.2 検査再び 個人にとっての最も重要な問題は,陽性であったとして本当に病気であ るかどうかである.この場合,P (D|R) がいくらかということである. もちろんこれらの問題は,条件付き確率により直接求められる.つまり, P (A|B) = P (A ∩ B)/P (B) である.しかし,こういった問題では,P (B|A) と P (B|Ac ) が与えられていることが普通で ある.そこで,分母の P (B) に対して分割ルールを適用して次の結果を得る. 27 ベイズのルール (Bayes’ Rule) (2.8.10) P (A|B) = P (B|A)P (A) P (B|A)P (A) + P (B|Ac )P (Ac ) 以下はこのルール(ベイズの定理とも呼ばれる)の適用例である. 例 2.8.2 間違った陽性:続き. ここで,上で述べた質問の答えが導かれる.P (D|R) はい くらだろう. Solution ベイズのルールを用いて, P (R|D)P (D) P (R|D)P (D) + P (R|Dc )P (Dc ) 0.95p = 0.85p + 0.1 P (D|R) = まず,p = 1 2 として計算すると, 19 21 であり,かなり高い.しかし,病気の確率がとても低いとき p = 10−6 として計算すると, P (D|R) = P (D|R) ≃ 10−5 であり,とても使えるものではない.このような場合には,もう一度追加的な検査を行うと 改善される. 次にベイズのルールの分かりやすい例を挙げよう(少し不真面目なものではあるが). 例 2.8.5 (試験) 選択肢が c 個ある問題があるとする.学生は解答を確率 p で知っていて, 確率 1 − p で知らない.知らない学生はランダムに答えるとする.このとき,学生の解答が 正しいとき,その学生が答えを知っている確率はいくらか? solution. 事象 A を正しく解答するとし,事象 S を学生が答えを知っているとする.ベイ ズのルールを使うには,P (A) を知らなければならない. P (A) = P (A|S)P (S) + P (A|S c )P (S c ) = p + c−1 (1 − p) 次に,条件付けして, P (A|S)P (S) P (A) p = −1 p + c (1 − p) cp = 1 + (c − 1)p P (S|A) = c が大きくなればなるほど,答えを知っている学生である可能性が高くなる.この結果は, 私たちのこういった問題に対する直感と一致する.そうでなければ,たくさんの選択肢を設 定する意味がなくなってしまう. 28 2.8 節の練習問題 1. 保険会社はいろいろな確率を知っていて,25 才未満の保険契約者が 1 年の契約期間中 に事故を起こす確率は β で,25 才以上の場合の確率は σ である.保険契約者のうち 25 才未満の割合は ϕ である.次の確率を求めよ. (a) ランダムに選んだ保険契約者が事故を起こす確率. (b) 事故を起こした契約者が 25 才未満である確率. 2. ある工場では道具の部品を作っている;このうち 5% が不良品である.この部品を検査 する機械があって,これは確率 10−3 で不良品を見逃し,確率 10−4 で良品を不良品と して reject する.次の確率を求めよ. (a) reject された部品が良品である確率. (b) ランダムに選ばれた部品が検査に通る確率. . 3. Red ace. クラブのカード 2 枚と,赤のエース 2 枚の合計 4 枚のカードを持っている. (a) あなたの友人が 2 枚ランダムに取り出しそのうち 1 枚がハートのエースだと告げ る.残りのカードがダイヤのエースである確率はいくらか? (b) あなたの友人が 2 枚ランダムに取り出し,それらを見る.あなたは,友人に “ど ちらか一方はハートのエースなのか?” と質問したら “そうだ” と答えた.もう一 枚がダイヤのエースである確率はいくらか? 4. 条件付き確率の分割ルール (2.8.7) と (2.8.9) を証明せよ. 29 2.9 独立性と積のルール 2.7 節において,ある種の実験では条件が変わると様々な結果の確率も変化すると述べた. このことから条件付き確率が導かれた. しかし,実験の条件が変化しても結果や事象の確率に全く影響を及ぼさないこともある.例 えば,あなたが宝くじを毎週買うとする.先週の結果が今週当選する確率に影響を及ぼすだ ろうか?もちろん,当選番号は,あなたの購入履歴とは独立に,選ばれる.これを定式化す るとどうなるだろうか?A を今週のくじの結果とし,B をあなたが前の週に勝った事象とす る.すると, P (A|B) = P (A|B c ) (2.9.1) であることに異論はないだろう.B が起ろうが B c が起ろうが,A の起こる確率に変化がな いような A, B の例はいくらでも見つけられるだろう.例えば,A をサイコロを降って 6 の 目がでるという事象とし,B をドル交換率が下がる事象とすればよい.明らかに,(2.9.1) が 成り立つと仮定してよい.また, A ≡ this coin shows a head, B ≡ that coin shows a head A ≡ you are dealt with flush, B ≡ coffee future fall といった例も考えられる.いくつか自分で考えてみよう. 分割ルールに (2.9.1) の関係を適用すると, (2.9.2) P (A) = P (A|B)P (B) + P (A|B c )P (B c ) = P (A|B){P (B) + P (B c )}, by (2.9.1) = P (A|B). つまり,(2.9.1) が成り立てば, (2.9.3) P (A) = P (A|B) = P (A|B c ). そのうえ,条件付き分布の定義より, (2.9.4) P (A ∩ B) = P (A|B)P (B) = P (A)P (B), by (2.9.2) この事象間の関係を独立性と言い, (2.9.4) を満たすとき A,B を独立な事象と言う.通常, 最後の表現 (2.9.4) を定義として用いる. 積のルール 事象 A, B が独立であるための必要十分条件は, (2.9.5) P (A ∩ B) = P (A)P (B). 例 2.9.1 サイコロを振って,通常のトランプから 1 枚ランダムに取り出す.6 の目が出て エースを引く確率はいくらか? Solution. 2 通りの考え方をしよう.最初は 2 つの事象, 30 A ≡ roll a six, B ≡ pick an ace が独立であることを利用する.つまり,P (A|B) = P (A) であり,また P (B|A) = P (B) であ ることも明らかなので, P (A ∩ B) = P (A)P (B) 4 1 1 = × = . 6 52 78 もう一つは,第 1 章の議論を利用するもので,サイコロとカードの合わせて 6 × 52 通り の現割れ方が等しく起こりやすいという対称性にもとづいている.この中の 4 通りで,6 の 目とエースとなるので確率は, P (A ∩ B) = 4 1 = . 312 78 このように 2 つのアプローチが同じ答えを導くのは喜ばしいことだが,驚くことではない. なぜならば,対称性を利用する場合,暗黙にサイコロとトランプの独立性を想定しているの だ.もしも互いに影響を及ぼすならば対称性は成り立たない. A と B が独立ではないとき,従属であるという.独立と従属は,あきらかに,因果関係と いう直感的な概念とつながっている.一つのコインが他のコインに影響を与えるとは考えら れない.ここで述べているのは事象間の独立性,従属性であって,事象を定義する現象間の 独立性ではない.独立性を仮定すると,モデルが単純なもので済み,計算も楽になる.しか し,独立性の仮定が間違いならば,結論は不正確なものとなることに注意されたい. 積のルール (2.9.5) の拡張版はつぎのように与えられる. n 個の事象の独立性 事象の列 (Ar ; r ≥ 1) が独立であるための必要十分条件は,整数の任 意の集合 (s1 , s2 , · · · , sn ) に対して, (2.9.6) P (As1 ∩ As2 ∩ · · · ∩ Asn ) = P (As1 )P (As2 ) · · · P (Asn ) が成り立つことである. 例 2.9.2 n 個の通常のコインをフリップする.いずれのコインも,互いに独立に,表と裏が 等しい確率 12 で起こる.それゆえ,すべてが表を見せる確率は,2−n である.実際,任意に与 えた n 個の表裏の列が出現する確率もまた 2−n である.つまり,例えば n = 6 とするとき, P (HHHHHH) = P (HT T HT H) = 2−6 である. 独立の考え方を示す例を与えよう. 例 2.9.3 (central heating.) 暖房システムでは,ポンプとボイラーがパイプでつながれてい る.これを図 2.6 のように表すこともできる.Fp と Fb をそれぞれポンプとボイラーが働か ないという事象とすれば,システムが正常に働くという事象は, W = Fpc ∩ Fbc . 31 pump boiler Radiators 図 2.6: セントラル・ヒーティング・システム である.ポンプとボイラーが働かないのは独立であると仮定するかもしれない.するとこの 場合, P (W ) = P (Fpc )P (Fbc ). (2.9.7) が成り立つ.しかし配管工は “電源の供給がなければ,ポンプもボイラーも働かない” と反論 するだろう.そうなると,独立性の仮定は不適切なものになる.この反論に応えるために次 のような事象を考えることにしよう. Fe ≡ power supply failure Mp ≡ mechanical failure of pump Mb ≡ mechanical failure of boiler このように定義すると,事象 Fe , Mp , Mb が独立であると仮定してよいだろう.このシステ ムを図 2.7 のように表すことができる.ついでながら,この図における矢印は水の流れでは ないことに注意しよう. pump boiler power 図 2.7: 3 つの要素がすべて作動するときのみシステムが作動する この場合, W ′ = Fec ∩ Mpc ∩ Mbc , Fbc = Mbc ∩ Fec Fpc = Mpc ∩ Fec . 32 それ故,システムが作動する確率は, (2.9.8) P (W ′ ) = P (Fec )P (Mpc )P (Mbc ). この結果を Fp と Fb が独立であると仮定したときの答えと比較すると面白い.(2.9.7) より, P (Fpc )P (Fbc ) = P (Mpc )P (Mbc )[P (Fec )]2 = P (W ′ )P (Fec ), であり,(2.9.8) で与えられる確率よりも小さくなる.独立性の仮定を間違えると誤解を与え ることに注意しよう. 上の例では,要素が直列に並んでいた.しかし並列に並ぶことも多い. 例 2.9.3 central heating:続き 電源供給は非常に重要な要素である(特に病院では).そこ で,緊急の場合に備えて予備電源を用意することになる.電源システムは図 2.8 のように表 されるとしよう.E を予備電源が失われる事象としよう.ここで Fe と E が独立ならば,少 なくとも一方の電源が働く確率は, P (Fec ∪ E c ) = P ((Fe ∩ E)c ) = 1 − P (Fe ∩ E) = 1 − P (Fe )P (E), by (2.9.5) ≥ P (Fec ), となり予備電源を加えることにより,システムが作動する確率は大きくなる. power supply emergency power supply 図 2.8: このシステムはどちらか 1 つの要素が働けば作動する 多くのシステムでは,独立な要素が直列あるいは並列にならんだブロックから成り立って いるが,P (W ) はブロックを結合してゆくことにより得られる. 例 2.9.4 システムが図 2.9 のように表されるとしよう.ここで各要素は他の要素とは独立に 確率 p で作動する.隣り合う要素をブロック化することにより,図 2.10 のように表される. 33 A p p p p p B p 図 2.9: 各要素は互いに独立に確率 p で作動する.作動する要素を通って A から B までたど りつくルートがひとつでもあればシステムが作動する, p2 p2 p p 1 - H1 - pL I1 - p2 M 2 p 図 2.10: システムをブロック化してゆき,解を求める手順を示す.このシステムが作動する 事象を W とするとき 確率 P (W ) = p {1 − (1 − p)(1 − p2 )2 } が得られる. より複雑に要素が配置されることもある.そのような場合,条件付き確率を用いるとうま くゆくかもしれない. 例 2.9.5 (snow.) 図 2.11 のように,4 つの街が 5 つの道路で結ばれている.各道路は互い に独立に確率 σ で雪のため閉鎖される.A から D にたどりつける確率 δ はいくらか? 解答. R を道路 BC が開通しているという事象とし,Q を A から D にたどりつけるとい う事象とする.すると, P (Q) = P (Q|R)(1 − σ) + P (Q|Rc )σ = (1 − σ 2 )2 (1 − σ) + [1 − {1 − (1 − σ)2 }2 ]σ となる.最後の式変形は,例 2.9.4 で用いた方法を利用した. R あるいは Rc が起こったと き,システムは直列あるいは並列のブロックに帰着できるのだ. 34 B A D C 図 2.11: 街と道路の略図 事象の独立性は,そのように見えないときでも,成り立つことがあることに注意しよう. 例 2.9.6 3 個の通常のコインをフリップする. A を 3 個が同じ面である事象,B を表が高々 1 個である事象としよう.事象 A と B は独立なのだろうか?‘yes’ か ‘no’ を記してから答 えを読もう. 解答. 8 通りの結果が互いに等しく起こりやすい. |A ∩ B| = 1 = |{T T T }|, |A| = 2 = |{HHH, T T T }|, |B| = 4 = |{HT T, T HT, T T H, T T T }|. であることから, 1 2 1 4 1 P (A ∩ B) = , P (A) = = , P (B) = = 8 8 4 8 2 であり,P (A ∩ B) = P (A)P (B) が成立し,A と B は独立である. これまでとは少し違った形の独立性を用いることがある.P (A|C) は P (A) とは異なるよ うに,P (A ∩ B|C) は P (A ∩ B) とは異なる振る舞いをするかもしれない.明確に言えば,A と B とは独立でなくても, C が与えられた条件付きで独立かもしれない.これを条件付き独 立性と言い,次のように定義する. 定義. (2.9.9) P (A ∩ B|C) = P (A|C)P (B|C) が成り立つとき,事象 A と B は, C を与えた条件付きで独立であると言う. 次に例を示そう 例 2.9.7 (high and low rolls.) サイコロを 2 回振る.A2 を最初の目が 2 である事象とし, B5 を 2 回目の目が 5 である事象とする.また,L2 を小さい方の目が 2 である事象,H5 を 大きい方の目が 5 である事象とする. 35 (i) A2 と B5 は独立であることを示せ. (ii) L2 と H5 は独立ではないことを示せ. (iii) D をどちらか一方の目が 3 より小さく,他方が 3 より大きい事象とする.このとき, D を与えたとき L2 と H5 が条件付き独立であることを示せ. 1 解答 (i) は,P (A2 ) = P (B5 ) = 16 であり,P (A2 ∩ B5 ) = 36 であることから,P (A2 ∩ B5 ) = P (A2 )P (B5 ) が成り立ち独立性が示される. 2 9 9 1 1 (ii) は P (L2 ∩ H5 ) = 36 なのに対し,P (L2 ) = 36 = 14 , P (H5 ) = 36 = 14 なので, 18 ̸= 16 であり,L2 と H5 は従属である. (iii) は,P (D) = 12 = 13 であるので,D を与えたとき, 36 P (L2 ∩ H5 |D) = 一方, P (L2 |D) = P (L2 ∩ D) 6 12 1 = / = P (D) 36 36 2 P (H5 |D) = 4 12 1 P (H5 ∩ D) = / = P (D) 36 36 3 であり, また, なので, 16 = 1 2 × 1 3 P (L2 ∩ H5 ∩ D) 1 1 1 = / = . P (D) 18 3 6 が成立するため,L2 と H5 は D が与えられた条件付きで独立である. 条件付き独立性は大切な考え方だが,あまり明確にされないことが多い.これは独立性を 意味するものでも,独立性から示されるものでもない.下の練習問題を見てほしい. 2.9 節の練習問題 1. A と B が独立であるための必要十分条件は,Ac と B c が独立であることを示せ. 2. 事象 A, B は P (A) = 0.3, P (A ∪ B) = 0.5 であるとしよう.次の場合の P (B) を求 めよ. (a) A と B は独立である. (b) A と B は互いに素である. (c) P (A|B) = 0.1. (d) P (B|A) = 0.4. 3. コインは確率 p で表を見せ,確率 q = 1 − p で裏を見せる.このコインを表が出るまで 振るときを考えよう.このとき n 回 (表の回数も含む) のフリップが必要である確率は pn = q n−1 p であることを示せ. 4. 子供が男児であるか女児であるかは等しく確からしいとし,アンナには 3 人の子供が 居るとする.A を家族が男女両方の子供を持つ事象とし,B を家族が高々一人の女の 子を持つ事象とする. (a) A と B は独立であることを示せ. 36 (b) 男児と女児が等しく起こりやすくないときでも独立であるか? (c) アンナに 4 人の子供が居る時はどうなるか? 5. A と B は独立だが,C を与えたとき A と B は条件付き独立ではないような事象 A, B, C の例を示せ. 6. A と B は独立ではないが,C を与えたとき A と B は条件付き独立であるような事象 A, B, C の例を示せ. 7. 通常のサイコロを 2 個を振る.目の和が 7 になるという事象は,一つ目のサイコロの 目と独立であることを示せ. 8. ある種の予防法では,処置された 1 年間病気にならない確率が 90% であると言われて いる.この予防法を続けるとき,7 年間病気にならない確率は,病気になる確率よりも 小さいことを示せ. 37 2.10 樹形図とグラフ 実生活で,互いに依存する事象の長い列に遭遇するかもしれない.例えば,あなたのコン ピュータがいくつかの故障を引き起こすかもしれない,あなたはいくつかのサービス代理店 を選び,彼らはそれを修正できるかもしれないしできないかもしれない,そして結果は予想 つかない. そのような場合,拡張された積のルール を利用する必要がある. (2.10.1) P (A1 ∩ A2 ∩ · · · ∩ An ) = P (An |A1 ∩ A2 ∩ · · · ∩ An−1 ) · · · P (A2 |A1 )P (A1 ) この証明は簡単であり,2.7 節の (2.7.8) 式の後に概略を説明しておいた. ここで各事象が,ランダムな複式選択の段階を表すとしたら,生徒は少し混乱してしまう かもしれない.そこで役に立つのが,何が起こっているのかを図示する樹形図である. (これ は非常に自然なものであり,それまでの確率の問題を記述するために 17 世紀 C. ホイヘンス が最初に用いた. )これらの図を用いてもなお計算と代数は用いなければならないが,すべて の確率と可能性を追跡できる.例を示す. 例 2.10.1 (故障.) (i) ある工場には,capek という玩具を作るロボットが 2 つある.一つの ロボットは古く,もう一つは新しい.新しい方のロボットは古いロボットの 2 倍の量の capek を作る.いまあなたがランダムに capek を抽出するとき,それが新しいロボットによりつく られた確率はいくらか?答えは明らかに 32 であり,図 2.12 を用いて,自然かつ説得力のある 説明ができる.樹木の矢印は起こり得る事象に向いている.この例では,N (new) か N c (old) のどちらかである. old= N c new= N W 図 2.12: 小さな樹形図 (ii) ここで古いロボットでつくられたものの 5% が不良品 (D) であり,新しいロボットの 場合 10% が不良品であることを知らされたとする.このときランダムに選んだ capek が不 良品である確率はいくらか?この場合まず図を描く.すると,図 2.13 のようになる.こうす ると,なぜ樹形図と呼ばれるかが分かってくる.この場合も矢印は起こり得る事象に向いて いる.しかし,右の 4 つの矢印は条件付き確率を表している.なぜならば,始点は与えられ た事象だからである.つまり, P (D|N ) = 1 , 10 P (Dc |N c ) = 19 ,· · · 20 を示している.樹形図のルートをたどる確率は,(2.10.1) 式が示すように,ルート上の確率 38 1 10 N 2 3 D º defective 9 10 Dc W 1 3 Nc 1 20 D 19 20 Dc º not defective 図 2.13: 左から右に伸びる樹形図:capek を分類している. を掛け合わすことにより求まる.この場合 capek が不良品になるルートは 2 つあって,その 確率は, 1 1 1 2 × + × 3 10 3 20 = P (D|N )P (N ) + P (D|N c )P (N c ) 1 = 12 P (D) = と求まる.これはもちろん分割のルールである.いつでも決まりきった代数を用いて確率を 求めることもできるが,図を描くとよく理解できる. この例をすこし違った観点から眺めてみよう.条件付き確率, 4 P (N |D) = , 5 1 P (N c |D) = , 5 19 36 , P (N c |Dc ) = , 55 55 を求めることにより,図 2.14 のような逆の樹形図を描くことができる. P (N |Dc ) = 図 2.13, 2.14 のように,各分岐点から 2 つの枝が伸びている樹形図を 2 項樹形図と呼ぶ. どの事象を先に考えるかは,その問題によるが,2 つの事象が A と B があるとき,2 通りの 樹形図が考えられる. これらの図の記法は明らかである.節 (node) や頂点 (vertex) により事象が表され,辺 (edge) が事象に対応している.関連する確率が辺の近くに書き加えられている.最初の樹形図を記 号を用いて表せば図 2.15 のようになる. 辺 (edge) は分枝 (branch) とも呼ばれ, 最後の節は葉 (leaf) とも呼ばれる.どの節であれ, 確率はそれに至る分枝に書き加えられた確率を掛け合わすことにより得られる.例えば, (2.10.2) P (Ac ∩ B) = P (B|Ac )P (Ac ). その上,B はアスタリスクのついた二つの葉において起こるので,図は, (2.10.3) P (B) = P (B|A)P (A) + P (B|Ac )P (Ac ) 39 N 4 5 D 1 12 1 5 Nc W N 36 55 11 12 Dc 19 55 Nc 図 2.14: capek の逆の樹形図: N, N c の前に D, Dc が位置している. PHB È AL A PHAL PHBc È AL PHA L PHB È Ac L W c AÝB * A Ý Bc Ac Ý B * Ac PHBc È Ac L AcÝ Bc 図 2.15: A と Ac が B と B c の前に置かれている. であることを示している.図 2.16 は A,B の順を逆にした樹形図である.もしも片方の樹形 図の確率が示されたら,ベイズのルールを用いてそれを逆にした樹形図の確率を求めること ができる.このような樹形図は,ウィンブルドンのような勝ち抜きトーナメントを表すのに も用いられる.その場合の図はこれまでのものとは違っていて,樹形図の根に優勝者が位置 する. 例 2.8.2 検査:再び ある集団で病気に罹っている比率が p である場合を思い出そう.検査す れば病気であるかを決定する助けになる.ただ不幸なことに,検査があまり正確でないなら ば,間違いの陽性をたくさん発生させる.正確な検査をしようとすれば,そのような信頼性 のある検査は切開して生体をとるものである.このこと自体が好ましくない結果を引き起こ すかもしれない.そのため,2 段階の検査を行うのが普通である.最初により負担の少ない より信頼性のない検査を行うのだ.この検査により陽性になった人にだけ,生体検査を行う. この場合の樹形図は,図 2.17 のように表される; T は生体検査で陽性であるこをを示す. 40 AÝB PHA È BL B PHBL PHAc È BL PHB L PHA È Bc L W c Ac Ý B A Ý Bc Bc PHAc È Bc L Ac Ý Bc 図 2.16: 逆の樹形図; A と Ac の前に B と B c が置かれている. R T accurate diagnosis D Rc Tc false negatives Dc R T false positives Rc T c accurate diagnosis W population tested 図 2.17: 逐次検査.D は病気であること;R は最初の検査が陽性であること;T は次の検査 で陽性であることを表す. 例 2.10.2 (狼狽.) プライバシーは大切なものだ.例えば,あなたが直接次のような質問をさ れたとしよう.あなたは髪を染めていますか?使用者の文具を拝借していますか?飲みすぎ ていませんか?不名誉な病気に苦しんでいませんか?該当していても本当のことを言わずに いるか,回答を拒否するかだろう. しかしこのような回答者を狼狽させる質問の答えを調べたい研究者や会社の数は尽きない. 彼らは次のような方式を考案した. 特別なカードを一式用意し,そのうち比率 n のカードには “no と答えなさい”,比率 p の カードには “yes と答えなさい”, 残りの比率 q のカードには “正直に答えなさい” と書いて おく.あなたが被験者の場合,あなたは誰にも知られないようにカードを 1 枚引き,その指 示に従って回答する. カードの指示に従い本当のことを言うこともあるが,誰もそれが本当のことであると断定 することはできない.ベイズのルールを用いれば,アルコール中毒者の比率や,職場でコソ 泥を働いている比率を,長い目でみれば推定できる.樹形図を図 2.18 のように表す. 41 CARD ANSWER no 1 no yes 1 yes truth m yes 1-m no n p q 図 2.18: 捉えどころのない樹形図 研究者はこの狼狽した人の割合 m を知ろうとする.ここで分割のルールを利用して,‘yes’ と回答する確率は, (2.10.4) y = P (yes) = p + mq. 研究者はこれを m について解いて, (2.10.5) m= (y − p) . q 逆に,狼狽した人々にとっては,‘yes’ と答えた人のうち本当のことを言っている人の確率が, (2.10.6) P (truth|yes) = qm , p + qm しかないことを知っている.プライバシーを守るにはこの確率をできるだけ小さくしなけれ ばならない.このように答えをランダム化することにより,嘘の答えを避けることが可能で ある.また,被験者がこの手続きを正しく理解しなかったら,正しい確率を推定できなくな ることに注意しよう. 樹形図は無限に続くときもある. 例 2.10.3 (クラップス;craps, 無限の樹形図.) このよく知られたゲームでは,二つのサイコ ロを振り,その目の和を求める.もしも和が,{2, 3, 12} ならば,振った人の負け,{7, 11} な らば勝つ.このほかの数ならばその数を n として,再度 2 つのサイコロを振る.目の和 m が n ならば振った人の勝ち,7 ならが負け,それ以外ならば,再度サイコロを 2 個振る.こ れ以降,n ならば振った人の勝ち,7 ならば振った人の負け,それ以外なら再度サイコロを 振るという操作を繰り返す.対応する樹形図は図 2.19 のように表される. この節の終わりにあたり,樹形図とは別のグラフも役に立つことを示す. 例 2.10.4 (テニス.) Rod と Fred テニスをしていて,デュースになった.Rod はどのポイ ントにおいても確率 r で取り,1 − r で失う.R を Rod がポイントを取るという事象としよ う.次の 2 つのポイントを両者が分け合えば再びデュースとなる.この場合次のような図で 示すのが適切だろう. 42 W 7 or 11 º win n º win n Î 84,5,6,8,9,10< º continue m Ï 87, n< º continue 2 or 3 or 12 º lose 7 º lose ×××××× 図 2.19: クラップスの樹形図:ゲームは無限に続く. RºRod wins the game r R R 1-r r r deuce ××××× * deuce 1-r 1-r r Rc Rc 1-r Rc º Fred wins the game 図 2.20: この図は樹形図ではない.なぜならこの図は * で結合しているからだ. 例 2.10.5 (コイントス.) 歪んだコインを持っていたとして,表の出る確率は p 裏の出る確 率は q とする. すると,コインを繰り返し振るとき図 2.21 のように表される.なおこれは, 3 回で打ち切ったものである. 2.10 節の練習問題 1. 積のルール (2.10.1) を証明せよ. 2. テニスでは,各セットで 6 − 6 になればタイブレークを行う.タイブレークを図解せよ. Rod がどのポイントも確率 p で取るならば,Rod が 7 − 1 でタイブレークを勝利する 確率を求めよ. 3. In a card game you cut for the deal, with the convention that if the cards show the same value, you recut. Draw the graph for this experiment. 4. 例 2.10.5 のコインを 4 回投げるとき,表がちょうど 2 回でる確率を求めよ. 43 TTT q TT q q p T p 8TH,HT< q H p p q p 8 TTH, THT, HTT < 8 THH, HTH, HHT < q HH p HHH 図 2.21: 表の数をカウントする.* 印のついた節 (node) にたどり着くルートは 3 つあり,そ れゆえ 3 回のフリップで表が 1 回出る確率は 3pq 2 である. 2.11 WORKED EXAMPLES 確率のルール (特に独立性と条件付きの考え方) を組み合わせると様々な問題を解くことが できる.例を示そう. 例 2.11.1 コインは確率 p で表を見せ,確率 q = 1 − p で裏を見せる.このコインを表が出 るまでフリップし続ける.このとき最初の表が偶数回目に出る事象を E とするとき,P (E) を求めよ. 解答. H と T を最初のフリップの結果としよう.すると分割のルールより, (2.11.1) P (E) = P (E|H)P (H) + P (E|T )P (T ). ここで,1 は奇数だから P (E|H) = 0. P (E|T ) は表が奇数回に現れる確率となるので, (2.11.2) P (E|T ) = P (E c ) = 1 − P (E) (2.11.1),(2.11.2) より, P (E) = {1 − P (E)}q q が求められる. となり,P (E) = 1+q この答えが正しいことは,2r 回目で表が初めて出る確率 q 2r−1 p を r について加え合わせ たものと比較するとよい. ∑ q pq = . q 2r−1 p = 2 1−q 1+q r 同じ問題をサイコロで考えてみよう. 例 2.11.2 サイコロを繰り返し振る.最初の 6 の目が奇数回目に現れる確率を求めよ. 解答. A を最初の 6 の目が奇数回目に現れる事象とし,S を最初の目が 6 である事象とす る.このとき分割のルールより, P (A) = P (A|S)P (S) + P (A|S c )P (S c ) である.明らかに P (A|S) = 1 であり,また, P (A|S c ) = 1 − P (A) 44 である.以上より, P (A) = 1 5 + {1 − P (A)} 6 6 が導かれ,これを解いて, P (A) = 6 11 を得る. もう少し扱いにくい問題を考えよう. 例 2.11.3 (ホイヘンスの問題.) 二人のプレーヤーが交替でサイコロを振る.それぞれ別のス コアを持ち,自分の順番でそのスコアを先に出した方の勝ちとする.プレーヤー A が自分の 順番で自分のスコアを出す確率を α とし,プレーヤー B が自分の順番で自分のスコアを出 す確率を β とする.プレーヤー A が先手の場合の勝率を求めよ.また後手の場合の勝率を 求めよ. 解答. p1 を A が先手で勝つ確率とし,p2 を A が後手で勝つ確率とする.最初の結果で条件 付けることにより, p1 = α + (1 − α)p2 が得られ,B が先手の場合には, p2 = (1 − β)p1 が得られる.これらを解いて, p1 = α 1 − (1 − α)(1 − β) p2 = (1 − β)α 1 − (1 − α)(1 − β) が得られる. 例 2.11.4 (ホイヘンスの問題(再び).) 二つのコイン A, B はそれぞれ確率 α と β で表を 見せる.これらが順番にフリップされ,ABABAB · · · という結果が得られる.最初に表を 見せるのは A であるという事象 E の確率を求めよ. 解答. 次の 3 つの事象を考えよう. {H} ≡ 最初のフリップが表 {T H} ≡ 最初のフリップが裏で,次が表 {T T } ≡ 最初の 2 回のフリップが裏 これら 3 つの事象は,標本空間の分割なので,分割のルールより, P (E) = P (E|H)α + P (E|T H)(1 − α)β + P (E|T T )(1 − α)(1 − β) が得られる.ここで, P (E|H) = 1, P (E|T H) = 0 であることは明らかだが,さらに, P (E|T T ) = P (E) 45 が成り立つ.なぜなら最初の 2 回とも表が出なければ,すべては最初に戻り,3 回目以降の フリップは最初の 2 回とは独立であるからである.この関係を代入して, P (E) = α + (1 − α)(1 − β)P (E) となり,これを P (E) について解けば, P (E) = α α + β − αβ が求められる. 例 2.11.5 (deuce.) Rod と Fred がテニスのゲームをしていて,デュースになった.Rod が ポイントを取る確率は,他のポイントとは独立に,p であるとする.Rod がこのゲームを取 る確率 γ を求めよ. 解答. 2 つの解法を与える. 方法 I .Rod は,Fred よりもポイントが 2 ポイント高くなり次第勝つことを思い出そう. それ故,Rod が勝つのは偶数回のポイント 2n + 2 が争われたあとである.もちろん Rod が n + 2 ポイントで,Fred が n ポイントである.W2n+2 を Rod が 2n + 2 ポイント目で勝つ事 象とする.この n 回のデュースのそれぞれに 2 通りの可能性がある:Rod がアドバンテージ を取って失う場合と Fred がアドバンテージを取って失う場合の 2 通りがある.n 回のデュー スの後,Rod が 2 ポイント連取する.W2n+2 には 2n 通りの結果があり,それぞれの確率が pn+2 q n なので,和のルールより,P (W2n+2 ) = 2n pn+2 (1 − p)n となる.P (W2n ) を Rod が 2n ポイント目で勝つ確率とすれば,拡張された和のルール (2.5.5) より, γ = P (W2 ) + P (W4 ) + · · · = p2 + 2p3 (1 − p) + 22 p4 (1 − p)2 + · · · = p2 . 1 − 2p(1 − p) ゲームの進行は図 2.22 を見ればよりはっきりする.奇数回のポイントが争われたあとはゲー ムが終了しているかどちらかがアドバンテージであり,偶数回のポイントが争われた後はゲー ムが終了しているかデュースかである. 方法 II. 図を見れば,α を Rod がアドバンテージを取ったとき Rod がゲームを取る確 率,β を Fred がアドバンテージを取ったときの Rod がゲームを取る確率とすることが考え られる. しかしさらに進めて考える. R を Rod が勝つ事象とし,Wi を Rod が i 番目のポイントを 取る事象とする.すると分割ルールを用いて, γ = P (R) = P (R|W1 ∩ W2 )P (W1 ∩ W2 ) + P (R|W1c ∩ W2c )P (W1c ∩ W2c ) + P (R|(W1c ∩ W2 ) ∪ (W1 ∩ W2c ))P ((W1c ∩ W2 ) ∪ (W1 ∩ W2c )) = p2 + 0 + γ 2p(1 − p) であり,これは最初の方法で求めたものと一致する. 46 Rod wins the game p advantage Rod p 1-p deuce deuce p 1-p advantage Fred 1-p Fred wins the game 図 2.22: Deuce. 例 2.11.6 3 人のプレーヤー A, B,C が ABCABCA · · · の順番で繰り返しサイコロを振る. 最初に 6 の目を出したプレーヤーが勝つとするとき.各プレーヤーの勝率を求めよ. 解答. 各プレーヤーの勝率をそれぞれ,α, β, 1 − α − β とし, 最初のロールで 6 の出る事象 を S としよう.すると,分割のルールより, 1 5 α = P (A wins) = P (A wins|S) + P (A wins|S c ) . 6 6 ここで, P (A wins|S) = 1. もしも,S c が起ったら,独立性よりゲームは以前と同様に進んでゆくが,ただ一つの違いは, サイコロを振る順番が,BCABCAB · · · となり A の順番が 3 番目になることだ.そのため, ここから始めるとき,A の勝つ確率は 1 − α − β に変わる.これより, α= 1 5 + (1 − α − β) 6 6 を得る. B から始まる列について同様のことを考える.A が勝つためには,B が 6 の目を出さず, その後の順番 CABCAC · · · の 2 番目で勝つなければならないので, 5 (1 − α − β) = β. 6 C から始まる列について同様のことを考える.A が勝つには C が失敗し,それから ABCABC · · · の順番で 1 番目となる賭けに勝たなければならないので, 5 β= α 6 を得る. これらの等式を解くことにより, α= 36 , 91 β= 30 , 91 を得る. 47 (1 − α − β) = 25 . 91 確率問題を解くときに役に立つもう一つの方法は,条件付けと独立性を用いて差分方程式 を導きそれを解くものある.このことについては,第 3 章以降により詳しく述べるが,ここ で少し例を挙げる.最初に簡単な例から始めよう. 例 2.11.7 歪んだコインを,最初に表が出るまで振り続ける.An を n 回のフリップが必要 である事象とするとき,pn = P (An ) を求めよ. 解答. 最初のフリップについて分割のルールを用い,さらに独立性より, P (An ) = P (An |H) p + P (An |T ) q { p if n = 1 = 0 + qP (An−1 ) otherwise それ故, pn = qpn−1 = q n−1 p1 = q n−1 p, n ≥ 1. この例は簡単で明らかなものだが,方法をよく例示している.次はもう少し骨の折れる問 題だ. 例 2.11.8 歪んだコインを 2 回連続して裏が出るまで振り続ける.An を n 回のフリップが 必要な事象とする.このとき pn = P (An ) とするとき, pn = ppn−1 + pqpn−2 であることを示せ. 解答. これまで通り,分割を用いる;この場合 H, T H, T T を用いる.これらの 3 通りの可 能性について条件付けを行い,さらに独立性より, pn = P (An |H)p + P (An |T H)pq + P (An |T T )q 2 { q2 n=2 = p pn−1 + pq pn−2 otherwise を得る. 次も条件付き分布を利用する例である. 例 2.11.9 (劣化した信号.) デジタル信号通信では,2 つの記号 0, 1 が用いられる.ノイズ やその他の劣化のため,各記号は確率 q で,他の記号とは独立に間違って相手に届き.そう でなければ,確率 p = 1 − q で正しく届く. n 個の記号からなるシグナル R を受け取り,これを S と解読する際には,可能性のある シグナルの中で,P (R|S) が最大になるものを選んでいる. 例えば,あなたが 101 というシグナルを受け取ったとし,可能性のあるシグナルは 111 か 000 だったとする.このとき, { p2 q if S = 111 P (101|S) = q 2 p if S = 000 だから,p > q ならばシグナル 101 は 111 と解読される. 48 次に,18 世紀の確率研究者により解かれた問題について考えよう.この問題は Waldegrave により考案された問題とされているが,実際は de Moivre によるものと見た方よい. 例 2.11.10 (Waldegrave の問題.) あるゲームのために n + 1 人のプレーヤーが参加して いる.これを A0 , A1 , · · · , An とし,円卓に座っているとしよう.彼らはペアを組んでは次の ように戦ってゆく.まず,A0 と A1 が対戦し,勝った方が A2 と対戦する.そしてその勝っ た方が A3 と対戦する.このようにして,初めて n 回連続して勝ったプレーヤーが最終的な 勝利を収め,ゲームが終わる.様々な事象の確率について質問が出そうだが,その中でも,r 回で終わる確率はいくらだろうか?どの対戦においても,互いの勝つ確率は 1/2 ずつである とする. 解答. 確率の問題ではよくあることがだ,問題を解く前に言い換えをするとよい.各対戦で は勝ち残りプレーヤーと新規プレーヤーが対戦する.この対戦ではどちらも等しい確率で勝 つので,コインをフリップするあるいはサイコロを投げることと同じと考えればよい.この ゲームは次のように言い換えられる. 最初の対戦はサイコロを振ることにより決する;もしそれが偶数ならば A0 の勝ち,奇数 ならば A1 の勝ちとする.2 回目以降の対戦では,コインをフリップすることにより勝者が 決まる.表がでれば勝ち残りが勝ち,裏がでれば新規のプレーヤーが勝つことにする.この とき,n − 1 回連続表が出たときゲームが終わることが分かる.また,このときだけゲーム が終了する.最初のサイコロのロールは勘定に入っていないので,(r − 1) 回目のフリップで 初めて n − 1 回連続表が出る確率 pr を求めればよいことになる.この問題は私たちがすで にその解き方を知っているものである;例 2.11.8 の拡張だからだ. まず,次のような分割を考える. {T, HT, H 2 T, · · · , H n−2 T, H n−1 } 条件付き確率とフリップの独立性より, 1 1 1 (2.11.3) pr = pr−1 + ( )2 pr−2 + · · · + ( )n−1 pr−n+1 , 2 2 2 1 n−1 であり,pn = ( 2 ) かつ, p1 = p2 = · · · = pn−1 = 0 r>n 特に,n = 3 の時には,(2.11.3) は, 1 1 (2.11.4) pr = pr−1 + ( )2 pr−2 , r ≥ 4. 2 2 この解を求めることは後の練習問題とする. 2.11 の練習問題 1. 歪んだコインを繰り返しフリップする.pn を n 回のフリップが偶数回の表を出現させ る確率とし,p0 = 1 とする.また,これまで同様,どのフリップでも P (H) = p = 1 − q であるとする.このとき, pn = p(1 − pn−1 ) + qpn−1 , n ≥ 1 が成り立っていることを示し,pn を求めよ. 2. サイコロは前回の目が出ないように処理されていて,それぞれの目が 51 の確率で現れ る.もし最初の目が 6 ならば,n 回目の目が 6 である確率 pn はいくらか?また,j ̸= 6 に対して n 番目の目が j となる確率 qn はいくらか? 49 2.12 オッズ (odds) 確率がオッズの形で表されることがある.ここで言うオッズとは賭け金の比を意味する. ブックメーカーの世界では通常オッズが用いられる.オッズと確率との間にどのような関係 があるのか調べよう. オッズを扱う際には,フェアオッズ (fair odds) と支払いオッズ (payoff odds) の区別をしな ければならない.これらは別々のものである. 定義 事象 A があってその確率を P (A) とするとき,A に賭けないフェアオッズを, (2.12.1) ϕa (A) = 1 − P (A) ≡ {1 − P (A)} : P (A) P (A) であり,A に賭けるフェアオッズを, (2.12.2) ϕo (A) = P (A) ≡ P (A) : {1 − P (A)} 1 − P (A) により表す. 例えばフェアなコインの場合,表に賭けるオッズも賭けないオッズも, ϕo (H) = 1/2 = ϕa (H) ≡ 1 : 1 1/2 で等しく,これらのオッズは五分五分と言われる.サイコロを振る場合,6 の目に賭けるオッ ズ,賭けないオッズはそれぞれ以下の通り. 1/6 ≡ 1 : 5, 1 − 1/6 1 − 1/6 ϕa (6) = ≡ 5 : 1. 1/6 ϕo (6) = コインをフリップする際,表が出ない方に賭けるフェアオッズは 1 : 1 であるにもかかわ らず,表が出る方にそのような支払いをするブックメーカーはない.そのようなことをする と,負けた方から賭金を受け取るであろう同じ金額を,逆に支払わなければいけないかもし れないからだ.それでもなお,ブックメーカーやカジノはオッズを提供する.まず,カジノ のオッズを考えよう. カジノが A の起こらない方に 35 : 1 のオッズを提供するとしよう.これは,あなたが $1 賭けて A が起れば,あなたは賭け金を回収してなお $35 貰えることを意味する.もしも Ac が起ればあなたは賭け金を失う.このことから,この種のオッズは支払いオッズとも呼ばれ る.これはどのように決められるのだろう? 実際,35 : 1 というのはあなたの選んだ一つの番号が的中したときに支払われるオッズで ある.アメリカンルーレットの回転盤は 38 個に仕切られている.よくできたものならば,ど の仕切りも等しく確からしい.よって当たる確率は 1/38 である. もしも $d を確率 P (A) で獲得し,そうでなければ何も得られないとすれば,このオファー の価値は,$P (A)d である. あなたの掛金と賭けの価値が等しければ,賭けはフェアと言える.A に賭けないフェアな オッズを (2.12.1) の通りとし,$1 を賭けたとしよう.すると,確率 P (A) で, $1 + $ 1 − P (A) P (A) 50 を得る.よってこの賭けの価値はあなたにとって, $P (A){1 + 1 − P (A) } = $1 P (A) であり,あなたの賭け金と等しく,フェアと言える.次にルーレットの場合を考えよう.こ 1 1 のとき,確率 38 で賞金 (1 + 35) を得るが,リターンは $ 18 であり,これは $1 よりも $ 19 だ 19 け少ない.これがカジノの取り分である. これで明らかなようにカジノにおいては,あなたが勝つことに賭けないフェアオッズを ϕa , 支払いオッズを πa とすると, (2.12.3) πa < ϕa が常に成り立つ.このようにカジノは支払いの期待値が賭け金よりも小さくなるようにして いる. 次にブックメーカーのオッズを考えよう.話を明確にするため競馬を取り上げる.馬に賭 ける方法は主に2つあるが,ここではトート・システム(パリミューチュエル方式ともいう) を考える.この方式では,賭ける際にその支払いオッズがいくらかは分からない.レース直 前に賭けが締め切られて初めて分かる.そのためこのオッズは starting price(最終賭率) と 呼ばれ,ギャンブラーにより設定される.これがどのように決められるか考えてみよう.n 頭 の馬が参加し,j 番目の馬には総額 $bj が賭けられたとし, $b をレースに賭けられた総額, b= n ∑ bj j=1 とする.0 < t < 1 を適当に選ぶとき,j 番目の馬に対するトート支払いオッズは, pj = bj (1 − t)b とするとき, (2.12.4) πa (j) = 1 − pj pj により与えられる. これらは何を意味するだろうか?総額 $bi を賭けた人に割り当てられる賞金総額は, (2.12.5) bj (1 + bj 1 − pj )= = (1 − t)b = b − tb pj pj となり,$tb だけ総額より小さく,j には無関係に決まる.つまり,どの馬が勝ってもブック メーカーは $tb だけの利益を上げる.場所やイベントが違っても大筋は同じであるが,もう 少し複雑な決め方をしている. ここで実際の勝率が hj であるとしよう. (そのような確率は誰にもわからないが. )すると, ギャンブラーにとっての賭け金の価値は hj b(1 − t) であり,場合によっては bj を超えるかも しれない. あなたがブックメーカーでないかぎり,支払いオッズを使わない方が良いし,次の例が示 すようにフェアオッズも使わない方がよい. 51 例 2.12.1 事象 A, B が独立であるとき,A ∩ B のオッズを A のオッズと B のオッズを用 いて表せ. 解答 定義 (2.12.2) より, P (A ∩ B) 1 − P (A ∩ B) P (A)P (B) = , 独立性より 1 − P (A)P (B) ϕo (A)ϕo (B) = . 1 + ϕo (A) + ϕo (B) ϕo (A ∩ B) = この変な式と P (A ∩ B) = P (A)P (B) を見比べてみよう.するとオッズを用いて式変形す るのは止めた方が良いと分かる.オッズはブックメーカーが物事を分かりにくくするために 用いているのだ. 最後に注意を述べる.オッズ比 (odds ratio) という用語を持ちいることがあるが,それは, R(A, B) = P (A) / P (B) P (Ac ) P (B c ) を意味する.場合によっては,荒っぽく P (A)/P (B) を指すことがあるので注意されたい. 2.12 節の練習問題 1. ある事象のフェアオッズを ϕa とし,カジノの支払いオッズを πa とするとき,カジノ の取り分の百分率は, (ϕ − π ) a a 100 % ϕa + 1 であることを示せ. 2. ある不注意なブックメーカーがいて,n 頭が出走するレースで,j 番目の馬に賭けない 支払いオッズを π(j) ,j = 1, 2, · · · , n と書くとき, n ∑ j=1 1 <1 1 + π(j) と設定した.もしもあなたが全ての馬に,それぞれ ${1 + π(j)}−1 ずつ賭ければ,必ず 勝つことを示せ. 2.13 良く知られたパラドックス 初期のパラドックスは数学者ではない人々の混乱と無知から生じたものがほとんどであっ た.パラドックスを作ることに精を出した数学者の中の一人にルイス・キャロルがいる.彼 には,眠れないとき数学の問題を解く習慣があった.次のパラドックスは 1887 年 9 月 8 日の 夜に解決された. Carroll’s paradox バッグの中に得点棒が 2 本入っていが,それぞれ白か黒であることしか 分かっていない.一つは黒でもう一つは白であることを証明せよ. 52 怪しい解答 どちらの色も等しく確からしいので, 1 P (BB) = P (W W ) = , 4 1 P (BW ) = . 2 と書いても良い.そこでバッグに黒の得点棒を追加し,よくバッグを振り,得点棒をランダ ムに取り出すとき黒の得点棒を取り出す確率はいくらだろうか? 3 通りの結果で条件付けて, 1 2 × P (BW B) + × P (W W B) 3 2 1 2 1 1 1 2 =1× + × + × = 4 3 2 3 4 3 P (B) = 1 × P (BBB) + しかし,バッグの中には 3 本の得点棒があり,黒の得点棒を引く確率が 23 なのだから,黒が 2 本白が 1 本と考えてよい.それゆえ,黒の得点棒を入れる前のバッグの中には BW つま り黒が一本白が一本入っていたとみてよい. 解決案 これら 2 つの実験は異なり,そしてそれゆえ 2 つの標本空間は異なる.ある事象の 確率が 2 つの実験で等しいとしても,標本空間が等しいと結論づけることはできない. Galton’s paradox(1894). 3 個のフェアなコインをフリップする.3 個のうち 2 つは同じ 面だから,残りの 3 枚目のコインは表か裏のどちらかである.それゆえ,すべてのコインが 同じ面を揃える確率は 12 である. 解答 実際, P (all same) = P (T T T ) + P (HHH) = 1 1 1 + = . 8 8 4 である.どこがおかしいのか? 解決案 このパラドックスも標本空間をいい加減に扱っているから起こっている.この ‘3 番 目’ というのは,残りの 2 つのコインから決まるものであり,最初から特定されているわけ ではない.それゆえ,‘3 番目’ のコインが表であるか裏であるかは条件付き確率であって,条 件のつかない確率ではない.簡単な計算によって, 1 P (3rd is H|HH) = , 4 1 P (3rd is T |T T ) = , 4 3 P (3rd is T |HH) = , 4 3 P (3rd is H|T T ) = , 4 が求められる.‘3 番目’ のコインが表か裏かは五分五分のチャンスであると言える状況では ない. Bertrand’s other paradox. 3 つの箱がある.一つの箱には 2 本の黒い得点棒,一つには 2 本の白い得点棒,もう一つには白黒 1 本ずつの得点棒が入っている.一つの箱をランダム に取り出し,1 本の得点棒を何も見ずに取り出す;この得点棒が白か黒かは等しく起こりや すい.残りの 1 本もまた白黒が等しく起こりやすいので,色が同じ得点棒の入った箱の確率 は 21 である.しかしこれは明らかに間違いである:正しい答えは, 32 なのだ. 解決案 これは Galton のパラドックスとよく似ている.一つの箱とそこから 1 本の得点箱を 取り出したとき,もう 1 本の得点棒が同じ色というのは条件付き確率であり,条件の付かな 53 い確率ではない.誤解のない記法を用いた簡単な計算より, (2.13.1) P (both black |B) = 2 = P (both white |W ); 3 が成り立ち,いずれの場合においても,白と黒が等しく起こりやすいとは言えない. Simpson’s paradox. 2 つの腎臓結石の治療法を比較する医療実験がある.治療法の一つは 外科手術 (Surgery) ともう一つは腎石切り術 (Nephrolithotomy) であり,それぞれ S と N で 表す.S に 350 人, N には 350 人の合計 700 人の患者が治療される.このときの治癒率は, 273 ≃ 0.78, 350 289 P (cure|N ) = ≃ 0.83. 350 P (cure|S) = この結果より外科手術のほうが劣っているように見える.しかし,除去された腎石の大きさ も 2 つのカテゴリーに分けて記録されている: L = 半径 2 cm 以上 T = 半径 2 cm 未満 患者を治療法だけでなく腎石の大きさについても分類すると,次のような結果が得られる. P (cure|S ∩ T ) ≃ 0.93, P (cure|N ∩ T ) ≃ 0.87, そして, P (cure|S ∩ L) ≃ 0.73, P (cure|N ∩ L) ≃ 0.69. どのサイズにおいても外科手術がよりよい成功率を持っているにもかかわらず,大きさを無視 してプールされたら,外科手術が劣った成功率を持つことになる.これは逆説的 (paradoxical) に思われ,シンプソンのパラドックスとも呼ばれている.しかしこれは分布の合理的な性質 であり,よく起こることである.よってこれはパラドックスではない. もう一つ有名な例に,カリフォルニア大学バークレイ校の大学院合格に関するものがある. 女性は男性よりどの学部においても合格率が高いにもかかわらず,学部を無視して合計をと ると合格率が男性よりも低くなる.これは女性が誰にとっても合格率の低い学部を目指して いるのに対し,男性は誰にとっても合格率の高い学部を目指しているからである. The switching paradox: goats and cars, the Monty Hall problem. テレビを見てい て次のような決断に接するときがある.3 つのドアがあって,そのうち 1 つの後ろには高価 な車が隠されていて,残りの 2 つには安い山羊が隠されている.あなたが最終的に選んだド アに隠されているものを獲得できる.まず最初の選択をする.すると司会者はそのドアを開 けず,山羊の隠されたドアを一つ開け,あなたが選ばなかった最後のドアに選択を変えるか どうか尋ねる.あなたはこの誘いに乗るべきだろうか?質問を変えよう:あなたが最初の選 択で車を得る確率はいくらだろうか?選択を変えたドアの後ろに車がある確率と比較してみ よう. 54 解答 そっけない答え方をすると,あなたはこの確率を計算できない.司会者がショーをどの ように進行しているか,それを知っているとあなたが思うなら確率を計算できる.多くの人々 はこのことを認めたがらないが,なぜこの心地の悪い事実が正しいかを知ることは大切だ.こ のことについては後に述べる;まず答えが一つではないことを示す. そのうえ,司会者の行動についてどのような合理的な仮定をおこうと,あなたが最初に選 ばなかったドアの向こうに車のある確率の方が大きいので,あなたは選択を変える誘いには いつでも乗るべきなのである.このことは多くの人々の直感に反するものである.彼らはど ちらのドアにも等しく車が隠れていると考えているようだ.正しい考え方をした Marilyn vos Savant と間違った考えをした多くの投稿者との間に有名な論争が起こった. I 普通の解答 ここでは,司会者はこのゲームの放送時間を長く,そして,間延びしないよう にと考えている.そこで,司会者は次のようにふるまうと仮定する. ルール:あなたの最初の選択がどうであれ,司会者は違うドアを開けて隠れている山羊を 見せる.もしもドアが 2 つあるときはランダムに選んで開ける. 話を明確にするために,あなたが最初に選んだドアを D1 で表し,2番目3番目のドアをそ れぞれ D2 , D3 で表すことにする.ドア Di の後ろに車が隠れている事象を Ci , i = 1, 2, 3 と すると,どのドアに車が隠れているかは等しく確からしい.司会者が3番目のドアを開いて 山羊を見せる事象を G とする.このとき,P (C2 |G) を知りたいが,条件付き確率を用いて, / (2.13.2) P (C2 |G) = P (C2 ∩ G) P (G) P (G|C2 )P (C2 ) = P (G|C1 )P (C1 ) + P (G|C2 )P (C2 ) P (G|C2 ) = P (G|C1 ) + P (G|C2 ) であるが,D2 に車があれば D3 を開けざるを得ないので P (G|C2 ) = 1. また,D1 に車があ れば D2 , D3 のドアを開く確率は二つに一つで P (G|C1 ) = 12 であることより, 1 2 P (C2 |G) = 1/{ + 1} = 2 3 となる.司会者が2番目のドアを開けて山羊を見せる場合も答えは 2 3 である. II 司会者の開け方に偏りがある場合の解答 ここでは前と少し違う仮定をおいてみよう.司会 者が次のようにふるまうと仮定する. 司会者がどちらか選択できる場合,同じ確率では開けない.実際,挑戦者が選ばなかった どちらのドアにも山羊が隠れているとき,確率 1 − p で2番目のドアを,確率 p で3番目の ドアを開けるものとする.つまり, P (G|C1 ) = p. これを,(2.13.2) に代入すると,選択を変えるときの獲得率は,1/(1 + p) が得られ,1/2 よ りは大きくなる.2番目のドアが開かれる場合,選択を変えるときの獲得率は,1/(2 − p) で ある.いずれにせよ,選択を変えることにより獲得率を上げることができる. 注意. この問題は司会者の名前から Monty Hall 問題とも呼ばれる.ある雑誌にここで書か れた形で紹介され,その後いくつかの記事が後を追った.しかしながら,形式の違う同様の 問題はそれ以前から知られていた. 55 これは,人を楽しませる他愛のない問題ではあるが,重要でもある.その重要性とは,い かなる実験であれ,標本空間と確率を決定する手続きとルールを,実験を開始する前にはっ きりと固定しておかなくてはならないことにある.前もって決められている構造をプロトコ ルと呼ぶ.プロトコルをしっかりと決める前に実験を行うことにより,間違った結論が導か れてきたし,今後もまたそうなるだろう. 2.13 節の練習問題 1. Prisoners paradox. 3 人の囚人 A,B,C がそれぞれ独房に入れられている.看守 W はそれぞれの囚人に,2 人は解放され 1 人は鞭打たれることを告げる.囚人 A は自分 が解放される確率は 32 であると分かる.このとき看守が囚人 A に,解放される一人は B であると暴露する(この看守は本当のことを言っているとする).いずれにせよ,B か C は解放されることを A は知っているが,その名前を知ることにより A が解放さ れる確率が違ってくるのだろうか? 2. Goats and cars revisited. 司会者のものぐさと無能さにより,彼はどのドアに車が 隠れているかを忘れてしまった.あなたが1番目のドアを選択したとき,彼は車の入っ ていないことを祈ってランダムにドアを開けるとき,P (C2 |G) = 12 であることを示せ. 2.14 復習:記法とルール この章では,確率についての直感を用いて,確率が一般的に従うルールを公式化してきた. このことを行うために,いくつかのシンプルな標準的記法を用いた.そこで,記法とルール をまとめよう. I 記法 Ω : 結果の標本空間 A, B, C, · · · : Ω に含まれる(起こり得る)事象 ∅ : 起こりえない事象 P (·) : 確率関数 P (A) : A の起こる確率 A ∪ B : 集合の和;A か B あるいは両方が同時に起こる A ∩ B : 集合の共通部分;A と B が同時に起こる Ac : 余事象(Ω における A の補集合) A ⊆ B : 包含;A が起これば必ず B が起こる A \ B : 差;A は起こるが B は起こらない. I 記法 56 範囲 : 0 ≤ P (A) ≤ 1 不可能な事象 : P (∅) = 0 確実な事象 : P (Ω) = 1 和 :A ∩ B = ∅ ならば P (A ∪ B) = P (A) + P (B) 加算和 :(Ai ; i ≥ 1) が互いに素ならば P (∪i Ai ) = ∑ i P (Ai ) 包含排除 P (A ∪ B) = P (A) + P (B) − P (A ∩ B) 余事象 :P (Ac ) = 1 − P (A) 差 : B ⊆ A のとき P (A \ B) = P (A) − P (B) 一般的な場合の差 : 任意の事象 A, B に対して P (A \ B) = P (A) − P (A ∩ B) / 条件付き :P (A|B) = P (A ∩ B) P (B) 和 :A ∩ C と B ∩ C が互いに素ならば P (A ∪ B|C) = P (A|C) + P (B|C) 積 :P (A ∩ B ∩ C) = P (A|B ∩ C)P (B|C)P (C) 分割のルール : (Bi ; i ≥ 1) が互いに素で A ⊂ ∪i Bi ならば P (A) = ∑ i P (A|Bi )P (Bi ) 独立性 : A, B が独立であるための必要十分条件は P (A ∩ B) = P (A)P (B) である.これは P (A|B) = P (A) や P (B|A) = P (B) と同等である. 条件付き独立性 :P (A ∩ B|C) = P (A|C)P (B|C) が成り立つとき,事象 A と B は, C が与 えられた条件付きで独立であるという. 期待値 : ある実験において,確率 p で数値 a が起こり,そうでなければ 0 になるとき,そ の期待値は ap である. 2.15 付録:差分方程式 これまでのいくつかの場面で,条件付き確率と独立性を用いて差分方程式を導き,それを 解けば確率が求まるのを見てきた.例えば例 2.11.7 では, (2.15.1) pn = q pn−1 , であったし,例 2.11.8 では, (2.15.2) pn = p pn−1 + pq pn−2 , pq ̸= 0, また 2.11 節の練習問題 1 では, (2.15.3) pn = (q − p)pn−1 + p 57 を導いた.このような方程式を体系的に解く必要がある.列 (xr ; r ≥ 0) が先行する項の関 数として表されるとき,つまり, xr+k = f (xr , xr+1 , · · · , xr+k−1 ), r ≥ 0 (2.15.4) と表されるとき,この列は再帰関係 (2.15.4) を満たすという.f が線形のとき, (2.15.5) xr+k = a0 xr + a1 xr+1 + · · · + ak−1 xr+k−1 + g(r), a0 ̸= 0 は次数 k の差分方程式と呼ばれる.g(r) = 0 のとき, (2.15.6) xr+k = a0 xr + a1 xr+1 + · · · + ak−1 xr+k−1 , a0 ̸= 0 差分方程式は同次であると呼ばれる.(2.15.1) を解くと,pn−1 = qpn−2 , pn−2 = qpn−3 であ ることから, pn = q n p 0 となる.(2.15.3) を解くには,まず, 1 2 が特殊解であることに気づけば,楽に解ける.このとき,pn = pn = 1 2 + xn とすると, xn = (q − p)xn−1 = (q − p)n x0 であり,それゆえ, pn = 1 + (q − p)n x0 2 となる. 方程式 (2.15.2) はそれほど楽ではないが,少し手順を省略すると,解は,c1 , c2 を任意の定 数とし,λ1 , λ2 を, x2 − p x − p q = 0 の根とするとき, (2.15.7) pn = c1 λn1 + c2 λn2 により表される.(2.15.7) を (2.15.2) に代入すれば確かめられる. これらの予備的な結果を見た後では,一般の 2 次差分方程式, (2.15.8) xr+2 = a0 xr + a1 xr+1 + g(r) の解を見てもさほど驚かないだろう.π(r) を π(r + 2) = a0 π(r) + a1 π(r + 1) + g(r), r ≥ 0. を満たす任意の関数とし,λ1 , λ2 を, x2 = a0 + a1 x の根とすれば,(2.15.8) の解は, { c1 λr1 + c2 λr2 + π(r), xr = (c1 + c2 r)λr1 + π(r), λ1 ̸= λ2 λ1 = λ2 で与えられる.ただし,c1 , c2 は任意の定数である.また π(r) は特殊解と呼ばれる.なお, λ1 , λ2 そして c1 , c2 は無理数にもなり得る より高次の差分方程式も同様の流れで解かれる; λ. と c. の数が増える. 58 2.16 問題 1. 標準的なスロット・マシーンには 3 つの輪があり,それぞれに 20 個の絵柄が付けられ てる.レバーを使ってホイールを回転させ,それぞれがベルの絵柄で止まったらあなた の勝ちである.端のホイールにはそれぞれ 1 個のベルの絵柄が,真ん中のホイールに は 10 個のベルが絵柄がついていて,3 つのホイールは独立にどの絵柄も等しく起こり やすいものとする.このとき,次に答えよ. (a) ちょうど 2 つのベルが現われる確率を求めよ. (b) 3 つのベルが出現する確率を求めよ. 2. 通常のカードから 2 枚取り出す.このとき和が 21 になる確率を求めよ (絵札は 10, エー スは 11 と数える). 3. あなた自身に 2 枚カードを配り,あなたの相手にも 2 枚カードを配る.あなたの相手 が自身のカードの合計が 21 であると告げるとき,あなたの合計もまた 21 である確率 を求めよ. 4. 天気予報によると土曜日に雨が降る確率が 25%, 日曜日に雨が降る確率が 25% とのこ とである.週末に雨が降る確率は 50% であると言ってよいか?どのようなことだった ら言って良いのだろう? 5. 私のラッキー・ナンバーは 3 で,あなたのラッキー・ナンバーは 7 である.あなたの PIN は 1001 から 9998 までのどの番号も等しく起こりやすいとしよう.この PIN が どちらかのラッキー・ナンバーで割り切れる確率はいくらか. 6. あなたがこれまで出した目が出るまでサイコロを振り続ける.Ak をこのことが k 回目 に起こる事象としよう. (a) P (A12 ) はいくら. (b) P (A3 ) と P (A6 ) を求めよ. 7. アンは 3 本のダーツを,ボブは 1 本のダーツを的の中心めがけて投げる.ボブのダー ツが的の中心にもっとも近い確率はいくらか?アンのダーツが中心に最も近いときで条 件付けた,ボブのダーツが次に近い確率を求めよ (彼らの力量は同じとする). 8. 1710 年の宝くじでは,40 本に 1 本の割合で賞金が発生した.当時,五分五分の確率で 賞金を得るには,最低 40 本のくじを買う必要があると信じられていた.こう信じられ たことは正しかったのだろうか. 9. (a) あなたは赤いカードを 2 枚,黒いカードを 2 枚持っている.ここからカードを 2 1 枚ランダムに取り出す.これらが同じ色である確率が であることを証明せよ. 3 (b) あなたは赤いカードを 1 枚,黒いカードを 2 枚持っている.ここからカードを 2 1 枚ランダムに取り出す.これらが同じ色である確率が であることを証明せよ. 3 (c) 同じ確率を,次の場合について求めよ. (i) 赤いカード 3 枚と黒いカード 3 枚 (ii) 赤いカード 2 枚と黒いカード 3 枚 59 10. 箱の中に 3 つの赤いソックスと,2 つの青いソックスが入っている.この箱から 1 つ ずつ同じ色のベアができるまで取り出す.T をあなたが 2 回取り出さなくてはならな い事象とし,R を最初に取り出したのが赤である事象,B を最初に取り出したのが青 である事象とする.次の確率を計算せよ. (a) P (B|T ) , (b) P (R|T ) , (c) P (T ). 11. (a) No (b) 60 練習問題のヒントと解答 2.17 Section 2.2 1. (a) b と w からなる長さ m の列全体. (b) 非負整数全体 (c) 新ルールでは; (a1 , a2 ), (a3 , a4 ), (a5 , a6 ), ただし ai ≤ 7(1 ≤ i ≤ 6) (d) 各 xi を, Ω = (C, D, H, S) × (A, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, J, Q, K) から 5 枚重複なく選んだものであり,i ̸= j ならば xi ∩ xj = ∅ とするときの,す べての (x1 , x2 , x3 , x4 ) の集合. Section 2.3 1. (a) Ω = {i, j; 1 ≤ i, j ≤ 6}, A = {i, j; i + j = 3}. (b) Ω = {i; 0 ≤ i ≤ 100}, A = {i; 0 ≤ i ≤ 4}. (c) Ω = {B, G} × {B, G} × {B, G}, A = {BBB, GGG} (d) Ω = 非負整数 , A = [10, 15] に含まれる整数. (e) Ω = {(r1 , f1 ), (r2 , f2 ), (r3 , f3 )} ただし 0 ≤ ri , fi ≤ 7, A = {r1 = r2 = 7} ∪ {r1 = r3 = 7} ∪ {r2 = r3 = 7}. (f) Ω = {x, y; x, y ≥ 0}, A = {x, y; x > y}. 2. Venn の図を二つ描け. Section 2.4 1. 18 . 37 1 2. ペアの数は全部で × 52 × 51. エースのペアはそのうち 6 通り.よって P (two aces) = 2 1 −1 . (13 × 17) = 221 1 × |BD| × height area ABD |BD| 3. = 2 = . 1 area ABC |BC| × |BC| × height 2 1 π( r)2 1 2 4. = . 2 πr 4 5. b . a+b Section 2.5 1. S ∩ F = ∅ であり S ∪ F = Ω だから 1 = P (Ω) = P (S) + P (F ). 61 2. もしも |Ω| = n ならば,Ω に含まれる事象はせいぜい 2n しかないからである. n 3. (2.5.3) より P (∪n+1 r=1 Ar ) = P (∪r=1 Ar ) + P (An+1 ) が成り立つ.数学的帰納法を用いて (2.5.4) が導かれる. 4. A = (A \ B) ∪ (A ∩ B) だから和のルールより,P (A) = P (A \ B) + P (A ∩ B), それ故 P (A ∩ B) ≤ P (A). 同様にして P (A ∩ B) ≤ P (B) が示される. 5. 和のルールより P (A∪B) = P (A)+P (Ac ∩B).また,上の設問より P (Ac ∩B) ≤ P (B). これらを合わせて.P (A ∪ B) ≤ P (A) + P (B). Section 2.6 1. P (B) = P (A) + P (Ac ∩ B) ≥ P (A) . 2. P (A ∪ B ∪ C) = P (A) + P (B ∪ C) − P (A ∩ (B ∪ C)) =. P (A) + P (B) + P (C) − P (B ∩ C) − P (A ∩ B) − P (A ∩ C) + P (A ∩ B ∩ C). 上の式では,A ∩ (B ∪ C) = (A ∩ B) ∪ (A ∩ C) だから,P (A ∩ (B ∪ C) = P ((A ∩ B) ∪ (A ∩ C)) = P (A ∩ B) + P (A ∩ C) − P (A ∩ B ∩ C) であることを利用している. 3. P (r 回投げて少なくとも 1 回 6 のぞろ目が出る) = 1 − ( 1−( 35 r ) である. 36 35 24 1 35 ) ≃ 0.491 < < 0.506 ≃ 1 − ( )25 . 36 2 36 よって 25 回必要になる. 4. それぞれの場合を数え上げることにより,確率 P (Sk ) = ak /216 で表される.なお ak は a3 から順に a18 までを並べると, 1, 3, 6, 10, 15, 21, 25, 27, 27, 25, 21, 15, 10, 6, 3, 1. 5 5. (a) 1 − ( )6 ≃ 0.6651. 6 5 1 5 (b) 1 − ( )12 − 12 × × ( )11 ≃ 0.6187 6 6 6 Section 2.7 1. 0.1 0.25 = 0.4. 2. (a) 0 ≤ P (A ∩ B) ≤ P (B) が成り立っていて,これを P (B) で割れば求められる. (b) P (Ω|B) = P (B∩Ω) P (B) = 1. 2 ∩B)) (c) P (A1 ∪ A2 |B) = P ((A1 ∩B)∪(A なので,右辺の分子を展開して前半が示される. P (B) c 後半は,A1 = A, A2 = A とすれば得られる. 3. 左辺 = P (A∩B∩C) P (B∩C) P (C) P (B∩C) P (C) = 右辺. 4. P (すべて赤) = P (3 回目が赤 | 最初の 2 回が赤)P (2 回目が赤 |1 回目が赤)P (1 回目が赤) 3 4 5 2 4 2 4 = 13 = 91 . また P (同じ色) = P (青) + P (赤) + P (緑) = 91 + 91 + 455 . 14 15 62 5. P (A ∩ B|A ∪ B) = P (A∩B) P (A∪B) であり,P (A ∪ B) ≥ max(P (A), P (B)) であるから示される. Section 2.8 1. (a) P (事故) = P (25 未満)P (事故 |25 未満) + P (25 以上)P (事故 |25 以上) = ϕβ + (1 − ϕ)σ (b) ϕβ ϕβ+(1−ϕ)σ 2. P (reject) = P (def ective)P (reject|def ective) + P (good)P (reject|good) = 0.05 × (1 − 10−3 ) + 0.95 × 10−4 , P (good and reject = P (good)P (reject|good) = 0.95 × 10−4 . よっ て,(a) P (good|reject) = 0.95 × 10−4 /P (reject). (b) 1 − P (reject). 3. (a) あなたがこの確率を言い当てることができるのは,あなたの友人がどういう状況 でどのような答えをあなたに告げるかをすべて知っていなければならない.次の ような状況を考えてみよう. (i) あなたの友人は 2 つのカードが共に赤のエースであるときに “一枚はダイヤ のエースだ” と告げる決意をしているとしよう.すると,友人が “一枚はハー トのエースだ” と告げるとき,もう一枚も赤のエースである確率は 0 である. (ii) あなたの友人はエースが一枚のとき “私はクラブを 1 枚持っている” と言い, 2 枚ともエースのときは “私はハートのエースを持っている” と告げるとする. すると,友人が “エースのハートを持っている” と言うとき,2 枚ともに赤の エースである確率は 1 である. (b) この場合は,決まった質問に対して,正直な答えが返ってくるので確率を計算す ることができる. P (どちらかがハートのエース) = 1 − P (どちらもハートのエースではない) 3×2 1 =1− = 4×3 2 2×1 1 P (両方とも赤のエース) = = , 4×3 6 よって, 1 1 1 P (両方とも赤のエース | どちらかがハートのエース) = / = . 6 2 3 ∑ ∑ 4. P (A|Bi ∩ C)P (Bi |C) = P (A ∩ Bi ∩ C)/P (C) = P (A ∩ C)/P (C). Section 2.9 1. P (Ac ∩ B c ) − P (Ac )P (B c ) = P ((A ∪ B)c ) − (1 − P (A))(1 − P (B)) = P (A ∩ B) − P (A)P (B) = 0 であることから必要十分条件であることが分かる. 2. (a) 72 , (b) 0.2, (c) 92 , (d) 0.32 63 3. P (n − 1 回裏が出たあと表が出る) = {P (T )}n−1 P (H). 4. P (Boy) = p, P (Girl) = q, p + q = 1 とする. (a),(b) P (A) = 1 − p3 − q 3 , P (B) = p3 + 3p2 q, P (A ∩ B) = 3p2 q. である.A と B が独立 であるための必要十分条件は,P (A ∩ B) = P (A)P (B) であり, (1 − p3 − q 3 )(p3 + 3p2 q) = 3p2 q が成り立つときである.(1 − p3 − q 3 ) = 3pq であることから,上の方程式は, 3p2 q 2 (p − q) = 0 と変形され,p = 0 あるいは q = 0 あるいは p = q = 1 2 のとき独立となる. (c) P (A) = 1 − p4 − q 4 , P (B) = p4 + 4p3 q, P (A ∩ B) = 4p3 q. である.A と B が独立 であるための必要十分条件は,P (A ∩ B) = P (A)P (B) であり, (1 − p4 − q 4 )(p4 + 4p3 q) = 4p3 q が成り立つときであるが,この式は, 2p3 q(−3p4 + 7p3 − 10p2 + 8p − 2) = 0 の解であり,p = 0 あるいは p = 1 のとき成立するが,それ以外に p ≃ 0.411 のと きに成り立つ. 5. 例 2.9.7 において,A2 と B5 は独立だが,C を目の和が 6 以下の事象とすれば,P (A2 ∩ 4 1 B5 |C) = 0 である一方 P (A2 |C) = 15 , P (B5 |C) = 15 である.故に,P (A2 ∩ B5 |C) ̸= P (A2 |C)P (B5 |C). 6. 例 2.9.7 の L2 , H5 , D. 7. Ai (i = 1, 2, 3, 4, 5, 6) を最初のサイコロの目とし,B をサイコロの目の和が 7 である 1 事象とする.このとき,P (Ai ∩ B) = 16 , P (B) = 16 また P (Ai ∩ B) = 36 8. P (7年間病気にならない) = 0.97 = 0.478297 Section 2.10 1. 右辺に対して P (A1 |A2 )P (A1 ) = P (A1 ∩ A2 ) という変形をしてゆけば,分子と分母が 打ち消しあって左辺を得る. 2. Rod が 7 − 1 で勝つということは, 6 − 1 から最後の 1 ポイントを取ることを意味す るので 7p7 q . 3. Modified version of figure 2.19. 4. 6p2 q 2 Section 2.11 64 1. 最初のフリップで条件付けることにより, pn = P (even number in n) = P (odd number in n − 1)P (H) + P (even number in n − 1)P (T ) = (1 − pn−1 )p + qpn−1 1 1 = + (q − p)n . 2 2 2. Sn を n 回目のロールが 6 である事象とする.すると,pn = P (Sn |S1 ), n ≥ 1 と表さ れ, 特に (1) p1 = 1 である.n ≥ 2 のとき条件付き確率の場合の分割ルールより,差分方程式 (2) c c pn = P (Sn |Sn−1 ∩ S1 )P (Sn−1 |S1 ) + P (Sn |Sn−1 ∩ S1 )P (Sn−1 |S1 ) 1 = 0 · pn−1 + · (1 − pn−1 ) 5 1 pn = · (1 − pn−1 ) 5 が導かれる.(2) の特殊解は 般解は, となる.(1) より x1 = ( )n−1 1 であり,xn = − 15 xn−1 より xn = − 15 x1 だから一 6 ( )n−1 1 1 pn = + − x1 6 5 5 であることが分かり, 6 ( )n−2 1 1 1 − , n≥1 pn = − 6 6 5 を得る. Section 2.12 1. 定義より,1 単位の賭け金に対して,確率 P (A) で 1 + πa を得る.よってこの賭けは (1 + πa )P (A) の価値があり,カジノの取り分は, t = 1 − (1 + πa )P (A) −1 である.(2.12.1) より,P (A) = (1 + ϕa ) だから, t = 1 − (1 + πa ) (1 + ϕa )−1 = (ϕa − πa ) (1 + ϕa )−1 . Section 2.16 ( )2 1 1 1 1 19 1. (a) × +2× × × 20 2 20 2 20 1 (b) × 2 65 ( 1 20 )2 2. 32 663 3. 15 442 4. (a) , 32 15 × 663 442 言えない (b) 1 1 ≤ P (週末に雨が降る) ≤ 4 2 2999 1286 , P (PIN は 7 で割り切れる) = , 8998 8998 429 P (PIN は 21 で割り切れる) = であることから, 8998 3856 P (PIN はいずれかで割り切れる) = . 8998 / / 6. (a) P (A12 ) = 0 (b) P (A3 ) = 60 63 , P (A4 ) = 100 64 5. P (PIN は 3 で割り切れる) = 7. 1 1 , 4 3 8. 違う.実際 28 で十分. 9. (c) (i) 2 , 5 (ii) 2 5 10. (c) 前問の (iii) より 2 1 . それゆえ,(a) , 5 4 66 (b) 3 4 第 3 章 Counting and Gambling 67 3.1 Preview 前の章で見たように、確率実験の結果が等しく起こりやすい場合がよくある。そのような 場合、興味ある事象が含む結果を数え上げることにより、さまざまな確率を計算できる。そ のうえ、より一般的な環境においても、単純な数え上げが便利かつ効果的であることが判明 することもよくある。 それ故、これに続く節では、数え上げ方の基本について復習する。数え上げ理論を、誕生日 問題や lottery 問題を含むよく知られた問題を用いながら、例証する。その中でも特記すべき は、有名な得点問題を解くということだ。この問題は近代的な方法を用いて解かれた最初の ものであり、それゆえ、確率の誕生を公式に表すものである。この問題に自然なパートナー は、より有名なギャンブラーの破滅問題である。この章の締めくくりとして、確率の歴史の 簡潔な概略と、その他の有名な例を与える。 前提となる知識 初等的な代数の基本的な知識があればよい。次の階乗の記法を用いる。 r! = r(r − 1) × · · · × 3 × 2 × 1. また、慣例として 0! = 1 であることに注意しよう。 3.2 いくつかの最初の原則 数多くの確率実験では、結果が等しく確からしい場合がある。その場合事象 A の確率は、 P (A) = |A| |Ω| であり、A と Ω の要素の数を計算するだけでよい。例を挙げよう。あなたに 5 枚の手札が配 られたとするとき、そればフルハウスである確率はいくらだろう。まず 5 枚の手札が配られ る通り数を計算し、次にフルハウス(3 枚が同じ数字で、残りの 2 枚が別の同じ数字である。 例えば QQQ33 )となる通り数を計算すればよい。この問題の解答はすぐに与えるが、その 前に数え上げの基本的なルールを思い出してほしい。間違いなくあなたは既に知ってはいる がだろうが、ここでまとめて公式にはっきりと表してもいいだろう。 最初のルールは明らかだが基礎となるものである。 Corresponding rule (1:1 対応のルール) いま 2 つの有限集合がある.A の要素数を |A|, B の要素数を |B| とするとき,A の要素にたいして B の要素が一つただ一つだけ対応し,逆 もまた成り立つならば,|A| = |B| である. 例 3.2.1 A = {11, 12, 13} , B = {♡, ♢, ♣} とするとき,|A| = |B| が成り立つ. 例 3.2.2 A を互いに異なる実数からなる集合とするとき,集合 |B| を次のように定義する. B = {b : −b ∈ A}. すると,|A| = |B| が成り立つ. 68 例 3.2.3 A を大きさ n の集合としよう.この n 個の中から重複することなく k 個取り出す ときの通り数を,c(n, k) で表すことにすれば, c(n, k) = c(n, n − k) が成り立つ.なぜなら,取り出された k 個の要素の選び方は,残される n − k 個の要素の選 び方と 1 : 1 対応するからだ. 次のルールも前のそれと同様に明らかである. Addition rule (和のルール) A と B が共通部分を持たない有限集合とする.つまり, A∩B = ∅ ならば, |A ∪ B| = |A| + |B|. 例 3.2.4 A を大きさ |n| の集合とする. |c(n, k)| は |n| 個の要素の中から |k| 個の要素を選 び出すときの相異なる通り数を表すことを思い出してほしい.このとき, c(n, k) = c(n − 1, k) + c(n − 1, k − 1) (1) であることを証明せよ. 解答: A の各要素に勝手にラベルを付けてもよいので,ある一つの要素に f irst というラ ベルを付ける.次に B を A の要素のうち k 個取り出したものの集合としよう.この集合 B は 2 つの集合 B(f ) と B(∼ f ) に分割される.B(f ) は B のなかで,f irst が含まれる集 合で,B(∼ f ) は f irst が含まれない集合である.そうすると,B(f ) の要素には必ず f irst が含まれているので, |B(f )| = c(n − 1, k − 1) が成り立つ.また,B(∼ f ) の要素にはどれにも f irst が含まれないので, |B(∼ f ) = c(n − 1, k) が成り立つ.B(f ) ∪ B(∼ f ) = B かつ B(f ) ∩ B(∼ f ) = ∅ なので和のルール より, |B| = c(n, k) = |B(f )| + |B(∼ f )| = c(n − 1, k − 1) + c(n − 1, k) が成り立つ.よって (1) が示された. 和のルールはより多くの互いに共通部分を持たない集合の場合にも拡張できる (いくつか 例を挙げてみよう). 3 番目の数え上げルールもまた驚くに値しない.第 2 章でも見たように,いくつかの実験 を組み合わせてより複雑な結果を得てきた.例えば,いくつかのサイコロを振ることも,コ インを何度もフリップしてもよい.このような場合には次のルールが役に立つ. Multiplication rule ( 和のルール ) A,B を有限な集合とし,集合 C を A に属する任意の 要素と B に属する任意の要素を選ぶことにより構成される集合としよう.すると C は次のよ うな順序づけられた要素を持つ集合, C = {(a, b) : a ∈ A, b ∈ B} 69 と表され, |C| = |A||B| (2) が成立する.(2) を示すには,C のすべての要素を次のように表示すればよい. ¯ ¯ (a1 , b1 ) . . . ¯ ¯ C ≡ ¯ ... ¯ ¯(am , b1 ) . . . ¯ (a1 , bn ) ¯¯ .. ¯ . ¯¯ (am , bn )¯ ただし,|A| = m, |B| = n である.ルール (2) は和のルールを用いても示される.ここでも, いつくか(3つ以上)の集合の積に拡張できる. 例 3.2.5 :列 A を有限な集合とする.A の要素からなる長さ r の列を考える(列を構成する 要素に重複があっても構わない).このような列は,(a1 , a2 , . . . , ar ) と表される.|A| = n と すれば,積のルールより,このような長さ r の列は全部で nr 個存在する. 例 3.2.6 :立方体を横切る A,B を立方体の真反対にある頂点とする.A から出発し,ちょ うど 3 つの辺を通って B にたどり着くのに,何通りの道筋があるのだろう. 解答: 最初のステップでは 3 通りの選択があり,2 つ目のステップでは,それぞれ 2 通り の選択があり,最後のステップでは 1 通りである.よって,答えは 3! 通りである. 最後に,A と B が共通部分を持つとき,|A ∪ B| を求めることを考えよう.答えはは,次 の包含除外ルールにより与えられる. Inclusion-exclusion rule(包含排除のルール) 任意の有限集合 A, B にたいして, |A ∪ B| = |A| + |B| − |A ∩ B| (3) が成り立つ.理由を示そう.A ∩ B に属していない要素は,A か B のどちらか一方に含まれ ているので,1 回だけカウントされる.一方 A ∩ B に属する要素は,1 + 1 − 1 回カウント される.よって示される.3 つの集合の場合には, (4) |A ∪ B ∪ C| =|A| + |B| + |C| − |A ∩ B| − |A ∩ C| − |B ∩ C| + |A ∩ B ∩ C| 数学的帰納法を用いれば,n 個の集合 A1 , A2 , . . . , An に対し次の結果が得られる. ∑ ∑ (5) |A1 ∪ · · · ∪ An | = |Ai | − |A ∩ B| + · · · + (−1)n+1 |A1 ∩ · · · ∩ An | i i<j 例 3.2.7 :derangements. ある壺の中に 1,2,3 と番号つけられたボールがはいっている. この中からボールを元に戻すことなく順に取り出してゆく.このとき,取り出した順番とボー ルの番号が全く一致しない確率はいくらか. 70 解答. 積のルールより Ω = 6 である.Ai を i 番目に番号 i のついたボールを取り出す事 象とする.すると, |Ai | = 2 |Ai ∩ Aj | = 1, i < j |A1 ∩ A2 ∩ A3 | = 1 だから,(4) を用いて, |A1 ∪ A2 ∪ A3 | = 2 + 2 + 2 − 1 − 1 − 1 + 1 = 4 それゆえ,取り出す順番と番号が全く一致しない取り出し方は 2 通りとなり,その確率は, p= 2 1 = 6 3 となる. 3.2 章の練習問題 1. A, B を立方体の真逆に位置する頂点とする.A から出発し同じ頂点を通過することな く辺を通って B に到達するパスの数は,(a) ちょうど 5 個の辺を通過する,(b) ちょう ど 6 つの辺を通過する,(c) ちょうど 7 個の辺を通過するときいくらになるか. 2. 公式 (1) c(n, k) = c(n − 1, k − 1) + c(n − 1, k) が, c(n, k) = n! k!(n − k)! のときも成り立つことを示せ. 3. サイコロを 6 回振るとき,6 つの面が 1 回ずつすべて現れる確率が約 0.015 であること を示せ. 4. あるサイコロを 1000 回振る.このとき目の和が 1100 になる確率は,目の和が 5900 に なる確率に等しいことを示せ. 3.3 ARRANGING AND CHOOSING; 配列と選択 3.2 節では,重複を許容した.例えばサイコロを振る際には,6 の目が 2 回以上出る可能 性があった.しかしこのような繰り返しが許されない場合もたくさんある.例えばポーカー の手札の中にスペードのエースが 2 枚あったらびっくりするに違いない.この節では,重複 のない選択や配列について考える. 例 3.3.1 あなたは確率の本を 5 冊持っている.これを本棚に並べるとき,何通りの並べ方が あるか. 解答: 1 番左の位置には 5 通りの置き方がある.これにより, 左から 2 番目には 4 通りの 置き方があるが,積のルールより,最初の 2 冊の並べ方は 5 × 4 = 20 通りある.左から 3 番 71 目に置く本には 3 通りの選択があるので,最初の 3 冊の並べ方は全部で,5 × 4 × 3 = 60 通 りとなる.4 番目には 2 通りの選択があり,最後には選択肢がなくなり,合計 5 × 4 × 3 × 2 × 1 = 120 の並べ方ができる.上の説明の中で示したようにk,r (0 ≤ r ≤ n) 冊の本の並べ方は下のよ うに求められる. 5! 5 × · · · × (5 − r + 1) = . (5 − r)! より一般的には,n 個の何かを r 個取り出して並べるときも同様の考え方ができる.まず 最初に n 通りの選択が可能で,次は n − 1 通りの選択が可能になり,最後には n − r + 1 通 りの選択がある.積の法則を用いれば,全部で n(n − 1) . . . (n − r + 1) 通りの並べ方がある. このような順序付け,あるいは並べ方のことを,順列 (permutation) と呼ぶ. 順列 n 個のモノから r 個を並べるときの順列の数は, (1) n(n − 1) . . . (n − r + 1) = n! , 0 ≤ r ≤ n. (n − r)! よく知っている記法や慣例を使って表現するとこのようになる.私たちは,階乗の記法をよ く知っていて,n が正の整数であるとき, n! = n(n − 1) × · · · × 2 × 1 であり,慣例上 0! = 1 である.n 個のモノから r 個を並べる順列の数は (1) で与えられるが, 非常によく用いられるため特別の記法を与えられる.つまり, (2) x(x − 1) . . . (x − r + 1) = xr と表される.これは x がどのような実数でも定義され,慣例として x0 = 1 とする.x が 正の整数の場合, x! xr = (x − r)! である.特に r! = rr である. この記法だけでなく,もっとも一般的なのは (x)r であり,x が整数の場合には x Pr も用 いられる. 本を用いた例では,それらが互いに区別できることを前提としていた.しかし何らかの理 由があって,2 冊同じ新本が含まれていて区別が付かない場合,順列の数はどう変化するだ ろう.相異なる順列の数は実際 60 となる.その理由は,例 3.3.1 における 120 通りの順列に は 60 組のペアがあって,一方の見分けのつかない 2 冊の順を取り換えたら他方になるよう なペアである.しかしながら,これらのペアは区別が付かないので,順列の数は 60 である. この結果を一般化しよう.n このモノがあって,そのうち n1 個の見分けのつかないグルー プ,n2 個の見分けのつかないグループ,. . . , nr 個の見分けのつかないグループに分かれてい るとしよう.つまり, (3) n1 + n2 + · · · + nr = n 72 であるときの相異なる順列の数は, (4) M (n1 , n2 , · · · , nr ) = n! n1 !n2 ! · · · nr ! この証明は易しい.M 通りの順列のそれぞれに対して,各グループのモノに番号を付けてみ る.最初のグループは n1 ! 通りに並べ替えられ,同様の作業を繰り返し,最後に nr ! 通りに並 べ替えられる.それ故すべての要素が互いに区別できるならば,順列の数は,n1 !n2 ! · · · nr !M 通りとなる.互いに区別できる n 個のモノを並べるときの順列の数は n! であることが分かっ ているので,等式で結べば (4) が得られる. この議論は,一見すると難しく思えるかもしれないが,実は単純なものである. 例 3.3.2 ‘dada’ という単語を考えよう.この場合 n = 4, n1 = n2 = 2 だから (4) より, M (2, 2) = 4! =6 2!2! が求まる.このことはすべてを書き出すことにより確かめられる. aadd, adad, adda, daad, dada, ddaa. そこで,上で述べたように a′ s と d′ s に番号を付け,上の 6 通りのそれぞれにたいして,区 別できるようになったモノを並べ替える.つまり, a1 a2 d1 d2 a a d d 2 1 1 2 aadd yields a1 a2 d2 d1 a a d d 2 1 2 1 残りの 5 通りについても同様の並べ替えを行う.その結果 4 つのモノの順列の数が 6×4 = 24 通りあることが分かる.これは我々が既に知っている 4! = 24 と一致する. ここで,名前や記法について述べる.M (n1 , n2 , · · · , nr ) は多項係数と呼ばれる数であり,下 のようにも記述される. ( ) n1 + n2 + · · · + nr M (n1 , n2 , · · · , nr ) = n1 , n 2 , · · · , n r もっとも重要であり,またもっともよく見られるのが,下の二項係数である. ( ) n! n = M (n − r, r) = (n − r)!r! r これは n Cr とも記述される.また, ( ) xr x = r! r と書けるが,この場合 x はどのような実数でも定義できる.例えば, ( ) −1 = (−1)r . r 73 二項係数は,これから見るように,順番を気にせずに数え上げる際,自然に現れる. 順列の数を求める際には順番が重要だった.しかしながら,何を選ぶかが重要で,取り出 された順番を気にしない場合がよくある. 例 3.3.3 :quality control. 番号のついた部品の入った箱があり,その中から決まった 数 ( r で表す) を選んで検査を行う.箱の中に n 個の部品が入っているとして,異なる選択 は何通りあるのだろうか. n = 4 で r = 2 ならば,次のように 6 通りの取り出し方がある. ab, ac, ad, bc, bd, cd この基本的な問題には古くから多くの表現がある.もっとも頻繁にめにするのがカードの手 札である. あなたは n 枚のカードの中から r 枚を受け取る.このとき相異なる手札には何通りある か;一般に n = 52 で,ポーカーなら r = 5 であり,ブリッジなら r = 13 である この数は,n 個の中から r 個を取り出すときの組み合わせの数と呼ばれる. 次の定義は重要である. Combinations. n 個のモノから r 個を取り出すときの組み合わせの数(取り出される順 番は考慮に入れない)は, ( ) n! n , 0 ≤ r ≤ n. (5) = r!(n − r)! r である.このような r 個の選択は組み合わせ,あるいは,順序のないサンプルと呼ばれる. より普通に表現すれば大きさ r のサンプルと呼んでもよい. この結果は非常に重要で有用であるため,いくつかの方法で証明する.このことによって 二項係数の重要さについての洞察が与え,重要なテクニックや応用を例示する. First derivation of (5) 私たちは (1) より,n 個の中から r 個を並べる順列の数が,nr である ことを知っている.しかし任意の順列は次の 2 つのステップにより決定される. (i) 大きさ r の部分集合を選ぶ. (ii) 上の部分集合を順番を入れ替える. ステップ (i) の選び方が c(n, r) 通りある;この通り数を求めたい.またステップ (ii) は r! 通りあるので,3.2 節の積のルール (2) より,これらの積は nr となる.それ故, (6) c(n, r)r! = nr = n! (n − r)! が成り立ち,これより, (7) ( ) n! n c(n, r) = = r!(n − r)! r が求まる.この証明は (4) の方法にとても似ている;これに注目するとき別の証明法が導か れる. 74 Second derivation of (5) n 個のモノを一列に並べ,そのうち r 個をえらんで r 個に記号 S を付け,残りの n − r 個に記号 F を付ける.n 個の中から r 個を選ぶ組み合わせと,r 個の S と n − r 個の F の並べ方には 1 : 1 の対応がある.(4) より r 個の S と n − r 個の F の並べ 方は, (8) M (r, n − r) = n! r!(n − r)! であるが,3.2 節の 1 : 1 対応のルールより (5) が示される. 数え上げのもう一つの方法は,何か都合のよい方法を用いて集合を分解することである.次 の方法はその1例である. Third derivation of (5) 上の場合と同様に,c(n, r) は,n 個のモノからなる集合から,r 個 選ぶときの組み合わせの数を示すものとする.ここで,n 個のうちの 1 個だけ何らかの理由 で見分けがつくものとする;具体的に一つのモノがピンクとしよう.そうすると,r この集合 を選ぶとき,次の 2 つの方法に分かれる. (i) ピンクを選び,残りの n − 1 個から r − 1 個を選ぶ. (ii) ピンクを選ばず,残りの n − 1 個から r 個を選ぶ. (i) の方法で選ぶときの組み合わせの数は,c(n − 1, r − 1) 通りあり,(2) の方法で選ぶとき の組み合わせは c(n − 1, r) 通りある.和のルールを用いると合計は c(n, r) 通りとなり, (9) c(n, r) = c(n − 1, r − 1) + c(n − 1, r) が導かれる.もちろん c(n, 0) = c(n, n) = 1 であり,(9) の解が, ( ) n c(n, r) = r であることを容易に確かめることができる. ( ) n! n(n − 1)! n (10) = = r!(n − r)! r(r − 1)!(n − r)(n − r − 1)! r {1 (n − 1)! 1 } = + (r − 1)!(n − r − 1)! r n − r ( ) ( ) n−1 n−1 = + r r−1 3.3 節の練習問題 1. 次の等式を 3 通りの方法で証明せよ. ( ) ( ) n n = r n−r ∑ 2. sj = ji=1 ni とするとき,多項係数は下のように二項係数の積として表されることを 証明せよ. ) ( ) )( ( s2 sr−1 sr . ··· M (n1 , n2 , . . . , nr ) = s1 sr−2 sr−1 75 3. 2 人の男の子がいる家族から 4 人の子供をランダムに選ぶとする(重複して選ぶことは ない).男の子を全く選ばれない確率は,男の子 2 人を選ぶ確率の半分であるという. 女の子の数を求めよ. 4. フェアなコインを n 回フリップするとき,次の確率を求めよ. (a) 表がちょうど 3 回現れる. (b) 表が少なくとも 2 回現れる. (c) 表と裏が同じ回数現れる. (d) 裏が表の 2 倍現れる. 76
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