1 日本下水道新聞(平成 28 年 4~ 5 月) 掲載記事 下水道経営談義と

日 本 下 水 道 新 聞 ( 平 成 28 年 4 ~ 5 月 )
掲載記事
下水道経営談義とその逸脱
-ウォーター・トリートメント事業の経営を語る-
東洋大学大学院
国土交通省
<
経営学研究科教授・博士(経済学)
水管理・国土保全局
石井
晴夫
藤川
眞行
下水道管理指導室長
下 水 道 経 営 に つ い て は 、 平 成 27 年 2 月 の 社 会 資 本 整 備 審 議 会 答
申(「 新 し い 時 代 の 下 水 道 政 策 の あ り 方 に つ い て 」)を 踏 ま え 、例
え ば 、 事 業 計 画 に お け る 収 支 見 通 し 等 の 経 営 計 画 の 重 視 、 昭 和 62
年 に 策 定 さ れ た「 下 水 道 使 用 料 算 定 の 基 本 的 考 え 方 」の 本 格 的 な 見
直 し 等 が 行 わ れ て い る な ど 、本 格 的 な 管 理 運 営 時 代 に お け る 政 策 が
新 た に 展 開 さ れ て い ま す 。そ の よ う な 中 で 、本 対 談 で は 、公 益 事 業
学 会 の 会 長 等 の 要 職 を 歴 任 さ れ 、我 が 国 の 公 益 事 業 の 経 営 論 の 大 家
で あ ら れ る 東 洋 大 学 の 石 井 教 授 と 、国 土 交 通 省 の 藤 川 室 長 に 、下 水
道経営について大所高所から議論していただきます。 >
藤川 下水道も本格的な管理運営時代が到来し「人手不足」、「収
入減少」、「施設老朽化」というハードルを乗り越えて、持続可
能な経営が確立できるよう、現場の実態も十分踏まえまして、さ
まざまな政策を展開していく時期に来ていると思っています。
下水道事業については、汚水処理に加え雨水対策もやる、汚水
処理についても高度処理等のより積極的目的もあるなど、道路、
河川のような純公共事業としての性格もあり、管理運営費(資本
費と維持管理費)については、そのような部分は公費で、それ以
外の部分は使用料等の私費で行うことになっております。純粋な
意味で企業経営が議論になるのは、後者の私費の世界です。
加 え て 、歴 史 的 に 見 る と 、水 道 普 及 率 は 昭 和 50 年 代 初 頭 に 9 割
を超えたのに対して、下水道普及率、汚水処理普及率は足元で 8
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割、9 割程度とおおよそ 年程度の遅れがあり、下水道事業は国
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の補助制度が充実しているといっても、まだ資本コストが非常に
足かせとなり、経営を縛っている段階にあります。
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このような下水道事業の特性を踏まえ、これまで、補助制度や
一 般 会 計 か ら の 繰 入 制 度 が 整 備 さ れ 、10 年 ほ ど 前 に は 分 流 下 水 道
について一定の公費を繰り入れられる制度もできました。
近 年 の 低 金 利 の 状 況 に 加 え 、平 成 19~ 24 年 度 に は 、地 方 向 け の
高金利の財政融資について補償金免除で繰上償還できる特例措置
もあり、金利負担も相当減少してきました。これらや、包括的民
間 委 託 の 導 入 な ど 経 営 の 効 率 化 努 力 も あ り 、平 成 25 年 度 で は 、全
国 の 平 均 ( 加 重 ) の 経 費 回 収 率 は 、約 92% ま で 徐 々 に 改 善 し て き
ています。
総じて見れば、やっと、経営を本格的に語ることができるとこ
ろまで来たと言っていいかも知れません。
しかしながら、今後は、歳入面では、節水機器の普及、人口減
少による使用料収入の減少、支出面では、大都市を中心に大規模
改築期の到来、人手不足等を背景とした維持管理費の上昇等も見
込まれるところであり、将来に向け持続可能な経営が維持できる
よう、まさに今、経営改善の取組みが強く求められています。
下水道経営の現状に関する前置きは、以上にし、せっかくの機
会ですので、公益事業の経営論の大家である石井先生に、下水道
経営について骨太のお話をお聞きしていきたいと思います。
まず最初に、通常の公益事業と異なる特性を持った下水道経営
について、なんでも結構ですので、全般的なご見解をお聞かせく
ださい。
石井 地方公営企業法が適用されているは、7 事業(水道、工業用
水道、交通(軌道)、交通(自動車)、交通(鉄道)、電気、ガ
ス)で、財務規定等が一部適用されているのは、1 事業(病院)
ですので、下水道と簡易水道は入っていません。それは今、藤川
室 長 が 言 わ れ た と お り 、雨 水 対 策 等 を 含 む 下 水 道 の 多 様 な 特 性 と 、
戦後ある程度たってから本格的に整備が始められ、まだ整備が進
められているという整備の遅延により、下水道がどうしても公共
事業の色彩が強くあるためです。
藤川 日本は猛スピードで近代化を進め、神田下水など結構早く建
設が始まりましたが、全国的に見ると、やはり遅れましたね。
石井
やはり日本というのはほとんど山脈の中で、海に近い可住面
積十数%の所に人が住んでいます。非常に高低差があって、雨水
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も、汚水も自然流下で河川や海にすぐ流れていくので問題は少な
かったという面があったのだと思います。それと、欧米とは異な
り農業肥料へ利用されてきたことも大きいですね。そういうこと
で、本格的な整備は戦後一定期間経てからになりました。
藤川 昨年の法改正の検討の際、いろいろ歴史も調べたのですが、
戦後すぐは、意外と下水道も浸水対策の要素が相当強かったです
ね 。そ れ が 昭 和 40 年 代 に 向 け て 、ど ん ど ん 河 川 、湖 沼 、海 が 汚 れ
て い っ て 、下 水 道 整 備 が 出 て き ま す ね 。そ れ で も 、今 後 10 年 で 下
水道整備を概成するというのが政府の方針で、まだ未普及対策が
残っています。他方、最近は、雨の局地化・集中化・激甚化で、
雨対策ニーズも大きくなっています。
石井 そういう意味では、まだ建設拡張の時代なのです。正確に言
えば、維持管理と建設拡張の時代が同時にきている。これが下水
道の悩ましいところですね。普通であれば、導入期があって、あ
る程度の時間が経過して成熟期を迎え、成熟期の中で今度は取替
え、更新となる。しかし、両方一緒にやらなければいけない。こ
れは辛いところです。しかも昔と違って財政制約、予算制約の中
で、それを効率的にやっていくことが欠かせません。
未普及対策については、下水道、合併浄化槽等のさまざまな手
法の中で、何が地域経営にとって一番いい手法なのか吟味するこ
とが何より重要でしょう。建設費だけでなく、維持管理費も含め
た評価の中で、経済効率が一番いいものを選んでいく。この点、
事業の持続性を考えると、適正な維持管理が行われることが大変
重要ですから、それぞれの手法について維持管理費を適切に推計
することも大きなポイントになります。
藤川 汚水処理の手法選択については、従来より、経済比較に基づ
き 都 道 府 県 構 想 で エ リ ア 取 り を し て き て い ま す が 、平 成 26 年 1 月
には、関係省庁が連携して都道府県構想のマニュアルを策定し、
経済比較を基本としつつ整備区域の徹底した見直しを行うことと
し ま し た 。ま た 、今 後 10 年 程 度 で 汚 水 処 理 施 設 が 慨 成 で き る よ う
アクションプランを策定することとし、早期・低コストの整備技
術、発注方法等の全面的採用なども真剣に考え、モデル事業もや
っています。
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石井 今、まさに、下水道事業は大きなターニング・ポイントにあ
るのだと思います。
下水道は基本的に地中に埋設され、一般の方々の目につかない
ものです。それに自分が飲むとか、体に触れるとかいうと神経質
になりますが、下水道は大切なものでも、どこかに流れていくと
いうイメージなので、一般の方々の関心が低かったのだと思いま
す。
ですから、どちらかと言うと、行政内部で一般会計からの繰入
金を含めなんとか経営を回すことができれば、水道料金より結構
低いレベルで料金を設定し、あまり一般の方々に目に入らない世
界でやっていればよいという感じがあったのではないでしょう
か。
日本で、下水道料金を水道料金より高く取っているところは、
ないのではないですか。
藤川 地域の特性があるのだと思いますが、この前、北海道のある
主要都市に行ったら、うちは、下水道料金の方が高いとおっしゃ
っていました。
石井 時代は変わってきましたね。だけど、それは相当、説明責任
をしっかり果たさないとユーザーは理解できないですよね。自分
が使った水よりも処理する水のほうがなぜ高いか、コスト構造が
どうなっているのか。
藤川 そうです。もはや、目立たない行政内部の世界に籠っていて
は理解は得られません。
経営の効率化に向けた努力の説明や、同規模・同種団体とのコ
スト比較等の説明も含め、水処理にかかる費用負担や公共的な機
能について一定のご負担はお願いせざるを得ないという話を分か
りやすく、丁寧にしていかなければなりません。
例 え ば 欧 米 の 都 市 の 下 水 道 料 金 は 日 本 よ り 2~ 3 倍 高 い こ と が
よくあると言われたりしますが、いろいろな素材を出して議論し
ていただくことも必要でしょう。
石井 経営情報の公開と説明責任が、なんといってもポイントです
ね。今はこういう時代になりましたから、経営についてしっかり
とした情報公開と説明責任を果たしていけば、下水道は不可欠な
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インフラですから、私はもっと下水道に対する理解が深まってく
るのではないかと思っています。
藤 川 お っ し ゃ る 通 り で す 。料 金 見 直 し の 議 論 に つ い て は 、や は り 、
とても大変なことだと思いますが、議会や市民の方々に下水道に
対する理解を得てもらうチャンスだとも言えるのではないでしょ
うか。
大義があれば、最後はコンセンサスが醸成されていくものなの
ではないでしょうか。逆に、自分の世界の論理ではとても理解は
得られないでしょう。市民感覚の指摘が正しければ、次は、それ
を経営に活かして、また説明をしていく。至極あたり前の話です
が、経営をやっていくということは、そのような地道な取組を一
歩一歩やっていくに尽きるのではないでしょうか。
国土交通省としても、地方公共団体に対して、下水道経営に関
する啓発活動を行っていくとともに、ご要望があれば、経営状況
の把握・評価、経営改善に関するノウハウを伝授するなど支援を
行 っ て い き た い と 思 っ て い ま す 。情 報 開 示 に つ い て は 、28 年 度 初
めに全国下水道データベースを立ち上げることとしています。そ
こには、公営企業年鑑、下水道統計等の一定期間のデータが入っ
て、主要事項については、他都市との比較もできることになるの
で、環境が大幅によくなります。必要に応じて、データベースの
改善を図っていくことも考えています。
石井 期待しています。これは技術的な議論になりますが、下水道
事業については、雨水対策や、公共用水域の改善対策等で、一般
会計からの繰入制度がありますが、非常にそれが分かりづらくな
っていますね。
そのあたりをユーザーに分かりやすいものとすることも、重要
ではないでしょうか。あまり、複雑な制度ではユーザーは分から
ないのです。
藤川 ご趣旨はよく分かります。ただ私も市の幹部をしていたこと
もありますので、気持ちが分からないではないのですが、財政の
やり繰りの関係から、明確な基準を設けるより、曖昧な基準にし
て 、毎 年 度 弾 力 的 に 対 応 し よ う と い う 団 体 も あ る か も 知 れ ま せ ん 。
しかし、それぞれの地域の事業特性等を踏まえ、ある程度具体的
な基準を作っておかないと、料金の見直しを議論するにしても、
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どこまでを一般会計からの繰入金の抑制に使うのか、どこまでを
維持管理、修繕、改築等の充実に使うのか分からなくなってしま
います。それでは、ユーザーの理解を得られないですね。
石井 経営情報の徹底した開示や、繰入基準等の透明なルールづく
り等を通じて、下水道管理者がユーザーとしっかりコミュニケー
ションを図り、理解を深めてもらうことが、極めて重要な課題だ
と思います。
そして、ご指摘の通り地方公共団体へのノウハウの普及の取組
みは大変重要です。これまで知識も経験もないところで、すぐ、
経営状況の把握評価、改善策の検討をしろと言われても、なかな
か難しい話ですから。
藤川 ありがとうございます。先生にも、ぜひ、引き続き、ご協力
いただければ、幸いに存じます。
石井 話は少し横に飛びますが、下水道部局の経営力を向上させる
ためには、下水道部局にやる気のある優秀な職員が来てもらうこ
とも不可欠です。その意味からも、下水道のイメージアップ戦略
は大変重要ですね。最近は、浄化センターも綺麗になってきて昔
とはイメージが違ってきていますし、資源・エネルギー活用など
新たなイノベーションにも果敢に取り組んでおられます。ただ、
世の中にはまだ広く知られていないので、どんどんPRしていく
ことが大切です。
藤川 全国で、いろいろな取組みが進んでいますが、イメージアッ
プという観点からは、例えば佐賀市は、浄化センターを「迷惑施
設」から「歓迎施設」に変えておられますし、環境政策、農業・
漁業政策、地域振興政策・雇用政策のフィールドとして、市全体
の政策を引っ張っている感があります。市役所の中で、元気で優
秀な若者が来て、がんばっておられる話も聞いています。
石井 ネーミングも重要です。下水道という名前も、私はそろそろ
横文字のものをつくった方がいいと思います。例えば世界水会議
などのフォーラムで、学者でよく分かっている人は「トリートメ
ン ト 」と い う 言 葉 を 使 う の で す 。「 ト リ ー ト メ ン ト 」と い う の は 、
よく女性が髪を洗うもの、きれいにする。「ウォーター・トリー
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トメント」とかの言葉にすると、女性に人気が出ますよ。
藤川 さて、ここまでの下水道経営の特性や今後の方向性等につい
ての議論を終えまして、次は、公益事業の経営論のお話をお聞き
していきたいと思います。
公益事業というと、典型的には、電気事業、都市ガス事業、バ
ス事業、鉄道事業などで、省庁でいうと、旧通産省、旧運輸省等
ですか。正直、旧建設省では、本格的な料金の議論は、有料道路
事業や公営住宅事業を除き、あまり馴染みのない世界だったので
はないかと思います。それも、有料道路事業は償還主義ですし、
公営住宅事業は社会政策ですから、ちょっと違いますね。
これから下水道事業が本格的に「経営」に乗り出していくと、
料金のあり方を含め、これまでの公益事業の経営論の知見、蓄積
をいろいろ勉強させていただいて、下水道事業に活用可能なもの
は 、取 り 入 れ て い く 地 平 が 相 当 あ る の で は な い か と 思 っ て い ま す 。
まず、公益事業の経営論、料金論について、一般的な話からお
話しいただけますでしょうか。
石井 公益事業というのは、昔から独占の議論があります。独占の
中には、全国レベルの独占もあるし、地域ごとの独占もあり、い
ろいろなパターンがあるのです。独占事業というのは、これを認
めてしまうと、楽して最高の利益を得ようということで、独占利
潤を生むことにもなりますが、これは経済的にも厚生を下げます
し、社会的にも批判されます。
そこで、独占の利潤は謳歌させませんよということで料金規制
が必要となり、それも、中立公正な観点から規制を行うため国が
きっちり介入することになります。ほとんどの公共料金は国が決
めていますけれども、数少ないですが自治体で決めているのは、
水道、下水道、公衆浴場等の料金です。
ただ、国の料金規制については、今世紀に入ってから一定の規
制緩和が進みました。先ほどお話があった旧通産省、旧運輸省系
の話ですけれども、昔は国がすべて適正コストを算定していたわ
けですけれど、情報の非対称性、国の職員の育成の話からして、
ちょっと難しいとなってきたわけです。それで規制を緩和して、
いろいろな角度から料金をチェックするシステムが整備されてき
ました。
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藤川
公営事業の料金決定の方式についてお話しいただけますか。
石井 まず一般論から言いますと、公益事業の料金決定の方式は、
原価に基づき算定する「総括原価方式」ということになります。
総括原価は、基本的には、原材料費、減価償却費、人件費、修繕
費、公租公課等の事業運営コストである「営業費」と、支払利息
や配当等の資金調達コストである「事業報酬」です。
事 業 報 酬 と は 、公 益 事 業 に 特 有 の 概 念 で す が 、昭 和 30 年 代 初 め
までは、個別に積み上げて算定していました。しかし、それ以降
は、資金調達に関する経営努力を促すため、固定資産等の「事業
資産の価値(レートベース)」に「事業報酬率」を掛けて算定す
ることとなっています。
事業報酬率とは、資金調達(借入、社債、株式等)について、
一般的に想定されるコストであり、国が決めた一定の算式により
一定率が決まる形になっています。電力について言いますと、率
は 、2000 年 あ た り ま で 業 界 で 一 定 で し た が 、 そ れ 以 降 は 、 各 社 の
事情も考慮して、わずかですが異なる率になっています。
藤川 営業費の算定におけるヤードスティック方式とは、どのよう
なものですか。
石 井 営 業 費 に つ い て は 、昔 は 、基 本 的 に 個 別 の 積 み 上 げ で し た が 、
1990 年 代 あ た り か ら 、 原 材 料 費 、 人 件 費 、 修 繕 費 等 に つ い て 、 ヤ
ードスティック方式というのが採用されてきています。これは、
個別積み上げではなくて、国が各社の事情も踏まえ標準的な基準
コストを定め、実際のコストが基準コストを上回る場合には、基
準コストを基にコストを算定し、また下回る場合には、基準コス
トと実際のコストの中間値を基にコストを算定するもので、経営
努力を促そうとする制度です。
藤川
原料費調整制度とは、どのようなものですか。
石井 営業費については、近年、工夫がされてきたもう一つの制度
として、原料費調整制度があります。近年、エネルギー原材料の
価格は、国際的な金融取引市場の進化・拡大、中国等の新興国の
需要拡大などさまざまな理由で、乱高下することが多いわけです
が、そのつど料金改定の申請をして、認可をもらうとなると料金
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が経営の実態についていけないことになります。準備期間も入れ
ると、料金改定にだいたい 3 年はかかるとなると、とてもついて
いけないのです。このため、原材料費が四半期で上がった分下が
った分については、それに基づいて自動的に料金を改定するとい
う の が 、 こ の 原 料 費 調 整 制 度 で 、2000 年 過 ぎ く ら い に 導 入 さ れ ま
した。
藤川 事業報酬率、ヤードスティック方式、原料費調整制度など公
益事業の経営論、料金論においては、さまざまな議論、紆余曲折
があって、いろいろな知恵、工夫が入って、現在に至っているこ
とがよく分かりました。電気事業、都市ガス事業等は、民間企業
が主体で、事業構造も下水道や水道とは異なりますが、今後、下
水道事業、水道事業において、より「経営」の度合いが高まって
いくと、これまでの公益事業の経営論や料金論の知恵、工夫も参
考にしていく場面も出てくると言えるでしょうか。
石井 そうだと思います。他にも、例えば、電気については深夜使
用で料金を安くするメニューが出てくるなど、事業特性を踏まえ
たさまざまな料金メニューが出てきています。本年度からの電力
の小売自由化で、さらにそのような料金メニューの多様性が拡大
していくでしょう。また、今回の電力の自由化では採用されませ
んでしたが、固定電話については、全国でのユニバーサル・サー
ビスを確保する観点から、ユニバーサル・サービス料を徴収する
制度も設けられています。公益事業の世界において参考になる知
恵、工夫は、たくさんあると思います。
ただ、正直なところ、これまで、上下水道事業の世界には、公
益事業の経営論、料金論が分かった人材がほとんどいなかったこ
とは否定できないでしょう。今後、上下水道事業において、「経
営」が求められる時代となっている中、国においては、いろいろ
な制度を検討されるとともに、全国の自治体に対して意識改革を
促していくことが大変重要ではないかと思っています。
藤川 国においても、地道に、継続的に、いろいろな調査研究や、
制度の検討を進めてきたいと思いますが、やはり、自治体におけ
る人材育成が重要となりますか。
石井
経営を担当する個々の職員の能力も重要ですが、何といって
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も、トップの管理者が経営のマネジメント能力を有していて、責
任をもって判断をくだせるような体制を確立することが必要で
す。これからの時代、経営の素人ではだめです。
加えて、能力を有する管理者が責任をもって判断をくだすかわ
りに、首長や議会もその人の判断が合理的であれば、できるだけ
尊重するという環境をつくっていくことも重要でしょう。
藤川 下水道経営も、やはり最後は、人の問題とそれを支える体制
の問題になりますか。経営のマネジメント能力といえば、今後、
自治体全体の運営においても、さらに重要になってくるものだと
思います。自治体において、下水道部局や水道部局が、経営のマ
ネジメント能力を身につける最先端のOJTの場として捉えられ
るようになれば、下水道、水道の「経営」めぐる状況も相当変わ
っていくかも知れません。
藤川 それでは、次に、料金対象経費としての資産維持費の話に移
ります。資産維持費については、特に、水道事業において、従前
より明確な位置づけが行われ、理論の進化や実用化が図られると
ともに、最近では、工業用水道にも明確に位置づけられました。
このような資産維持費について、ご説明ください。
石井 先ほど、公益事業に特有の概念として、事業報酬の話が出た
わけですけれど、民間企業の場合には、株式の配当等が事業報酬
に含まれ、その部分が大きなウェイトを占めるので資金面で余裕
があります。他方、水道事業は基本的に自治体経営ですので、そ
の部分がなく、料金の対象となる経費は、減価償却費や金利を含
む営業費といった実際にかかった経費だけになってしまいます。
水 道 事 業 は 、 昭 和 20 年 代 後 半 く ら い か ら 急 速 に 整 備 が 進 ん で 、
昭 和 50 年 代 前 半 く ら い に 建 設 拡 張 の 時 代 が 終 わ り 、維 持 管 理 の 時
代に入っているわけですが、何をおいても、改築更新に適切に対
応していくことが大命題です。例えば、東京都の水道でいえば、
100 万 ㌧ ク ラ ス の 浄 水 場 が 5 つ あ り ま す が 、全 部 取 り 替 え る の に 1
兆円くらいかかります。大変大きな金額です。そこで、私たち研
究 会 の 提 案 も あ り 、 資 産 維 持 費 的 に 、6 年 前 か ら 毎 年 20 億 円 ず つ
積立金を積み立て、基金として設けています。
これまで、どうしてこのような考え方が少なかったというと、
やはり、将来、莫大な改築更新費が発生しても、すべて起債を起
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こせばいいという考え方がありました。しかし、現在、起債の制
限は厳しくなっていますし、仮に起債をしてもその償還を行うた
めに、料金が大幅に上がることになります。将来の改築更新をし
っかり見据えた長期の経営戦略を立てて、どうしても必要となる
部分については、事前にしっかり積み立てていきましょうという
のが、資産維持費の考え方です。
ち な み に 、 水 道 の 資 産 維 持 費 に つ い て は 、20 年 前 の 水 道 料 金 制
度調査会の時にいろいろ議論をして位置づけたのですが、名称は
公 益 事 業 の 一 般 的 な 名 称 に 合 わ せ て 事 業 報 酬 と し ま し た 。し か し 、
「報酬」という言葉では、なかなか議会での説明が難しいという
こ と で 、私 が 委 員 長 を し た 2008 年 の 特 別 調 査 委 員 会 で は 、事 業 報
酬から資産維持費に名称を改めました。
藤川 料金の対象となる経費に入れるということは、世代間の負担
の公平性を満たす必要があると思いますが、その点、資産維持費
の対象は、改築更新費うち、新設時と比較して改築更新時にどう
しても必要となってしまう、かかり増し費用ということですね。
石井 資産維持費とは、実体資本を維持するためにどうしても必要
と な る 部 分 で す 。施 設 も 機 械 設 備 も 、性 能 が よ く な っ て い き ま す 。
同じ金額というのはあり得ないのです。水道については、いろい
ろシミュレーションをしてみて、機能向上等の資産維持費の部分
が 概 ね 資 産 価 格 の 3% 程 度 で は な い か と い う こ と に な り ま し た 。
藤川 下水道において資産維持費を位置づける検討に当たっては、
水道事業における資産維持費の議論をいろいろ参考にさせていた
だきました。
た だ 、ご 案 内 の と お り 、昭 和 50 年 代 前 半 あ た り に 概 成 し て い る
水 道 と 違 い 、下 水 道 は 全 国 的 に 見 る と ま だ 概 成 し て お ら ず 、他 方 、
事 業 開 始 か ら の 年 数 が 50 年 、 60 年 を 超 え る 都 市 も あ る な ど 、 事
業 の 熟 度 が バ ラ バ ラ で す 。ま た 、例 え ば 、管 路 の 改 築 に つ い て は 、
最近は非開削で安価に行える工法が多く出てきていますので、そ
の よ う な 工 法 が 活 用 で き れ ば 、昭 和 30 年 代 以 前 の 新 設 コ ス ト が 非
常に安い時期を除き、新設コストと比べても相当割安になる傾向
もあります。いずれにしても、水道と違って、一律にはなんとも
言えないので、どうしても、それぞれの都市ごとの長期計画等に
基づいた推計が必要になってくるものと考えられます。
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石井 推計に当たっては、実務的にいろいろな課題が出てくるでし
ょうから、できれば、事業の状況が同じような大都市が連携を図
って、いろいろ研究されたらいいのではないでしょうか。
藤川 次に、料金体系の話に移っていきたいと思います。まず、一
般的な公益事業の料金体系について、お話しください。
石井 通常、公益事業の料金体系、公共料金の体系と言われるもの
は、さまざまなパターンがあるのですが、大きく見ると、いくつ
かのパターンに整理できます。
ま ず 、料 金 体 系 が 単 一 の「 一 部 料 金 制 」が あ り ま す 。こ の う ち 、
い く ら 使 っ て も 料 金 が 同 じ で あ る の が 、「 定 額 制 」で す 。例 え ば 、
携帯電話でもよくありますね。また、使った量に比例して料金が
決まるのが、「従量料金制」です。使わなければ料金はゼロにな
ります。
次に、料金体系が 2 つの要素からなる「二部料金制」がありま
す。代表的なものは、「使った量に関係ない一定額の固定料金」
と「 使 っ た 量 に 比 例 す る 従 量 料 金 」を 合 わ せ て 取 る「〈 固 定 料 金 〉
+〈 従 量 料 金 〉制 」で す 。こ れ に も 、い ろ い ろ な パ タ ー ン が あ り 、
従量料金について量を多く使うほど単価が下がっていくものが、
「逓減型二部料金制」です。都市ガスの料金をはじめ、結構、多
くの公益事業料金で採用されている料金体系です。
これとは反対に、従量料金について量を多く使うほど単価が上
がっていくものが、「逓増型二部料金制」です。公共料金で、こ
の料金体系を採用しているものは、実は、上下水道料金と電気料
金くらいなのです。ちなみに、下水道料金は、固定料金は一定額
ですが、水道料金、電気料金は、配電のアンペアや水道管やメー
ターの口径によって固定料金が変わる仕組みになっています。
藤川 下水道は、下水道管の口径により固定料金を変えるといった
感じにはなりませんね。下水道と水道は、いろいろ違いがあり、
料金体系も違ってきますが、そのような固定料金のあり方の違い
も、料金体系全般のあり方にいささか影響を及ぼすのではないか
と思っています。
石井
そして、上下水道料金については、さらに特色的な「基本水
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量制」というのが、これまでよく取られてきました。これは、従
量 料 金 に つ い て は 、 基 本 水 量 、 - 例 え ば 、 5 立 方 ㍍ だ っ た り 、 10
立方㍍だったりしますが-、その範囲内までは、従量料金は取ら
ず、それを超える部分から従量料金を取る料金体系です。
藤川 基本水量制については、昔から指摘があったのですが、基本
水量内では水量によらず料金が同じで、あまり水を使わない人に
とって不公平感が生じるということで、近年、下水道でも、基本
水量を少なくしたり、基本水量制をなくすところが、増えていま
す。
石 井 東 京 都 の 水 道 料 金 は 、以 前 は 基 本 水 量 は 10 立 方 ㍍ だ っ た の で
すが、現在は、5立方㍍になっています。水道でも同様の見直し
が進んでいます。
藤川 二部料金制の固定料金と従量料金のウェイトについてです
が、一般的な公益事業において固定料金の対象となるのは、おお
むね資本費の部分ということなのでしょうか。
石井 そうです。一般的な公益事業においては、資本費の部分を固
定料金で回収するというのが基本的な考え方です。
しかしながら、水道や下水道は、インフラ産業といわれ、資本
費のウェイトが極めて高いのです。仮に資本費を固定料金で回収
しようとなると、固定料金が 8 割とか 9 割になってしまいます。
それでは、非常に料金体系がゆがんでしまい、利用者に説明が難
しいということで、水道の場合、固定料金と従量料金は、おおむ
ね半々にしようというのが基本的な考え方です。
藤川 固定料金については、下水道は、水道のように水道管の口径
によって金額を変えるような仕組みではなく、基本的には一律の
金 額 な の で 、固 定 料 金 の ウ ェ イ ト を 考 え る に 当 た っ て は 、さ ら に 、
悩ましい部分があるのかなとも思われます。
石井 電気料金も、やはりそこのところは配慮がされていて、資本
費も含めいろいろなコストを従量料金でしっかり取っていこうと
していますね。ですから、従量料金の逓増度を非常に高くしてい
ます。例えば、家庭用の電灯Aの区分では、単価が大幅に上がっ
13
ていきます。
藤川 そうですね。電気料金の請求書には、段階別の金額が書いて
ありますね。ちなみに、本年 4 月から、電力の自由化が始まりま
したが、新電力では、逓増度は比較的低くなっているのでしょう
か。
石井 新電力の方は、基本的に逓増度は低くなっています。他方、
従来の一般電気事業者においても、これは契約変更を行う必要が
あるのですが、新たな料金メニューを入れてきています。例えば
1
夜の 時頃から朝までに電気を使う場合には、ぐっと料金が安く
1
なるといった料金体系です。
藤川 従量料金の逓増度についてですが、下水道は水道から地下水
に転換されても料金が取れるので、水道の方が影響が深刻かも知
れ ま せ ん 。逓 増 度 が 高 い と 、近 年 の 節 水 機 器・設 備 の 技 術 革 新 で 、
大きく節水ドライブが働いて、場合によっては、料金を上げても
料金収入が減るみたいな話も聞きますが、逓増度についてどうお
考えですか。
石井 そういうことはあり得ますね。ですから、水道料金について
は 、2008 年 の 特 別 調 査 委 員 会 で は 、逓 増 度 を 見 直 そ う と い う こ と
を打ち出しましたし、現に、自治体においては料金改定の時に逓
増度を見直そうという動きが出てきています。
そもそも論として、なぜ逓増なのかというと、資源の浪費を防
ぐということですね。水道についていえば、水不足の場合は、ダ
ム を 作 る と い っ て も 、時 間 も か か る し 、莫 大 な お 金 も 必 要 に な る 。
それなら、逓増度を上げて、無駄使いを抑制し、多く使う人には
相応の負担をしてもらおうということです。
藤川 水不足の時代、或いは、今でも水不足の地域では、いたって
合理的な制度ですね。また、そういう状況がないところでも、大
口の利用者は需要変動が大きいため、その分、余裕のある施設を
確保しなければいけないので、一定のコストを負担してもらうと
いう考え方はあろうかと思います。
要は、逓増型従量料金制の課題は、逓増度の妥当性の問題であ
ろうかと思いますが、逓増度の設定に当たっては、具体的な目的
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を踏まえてどの程度であればバランスが取れたものとなっている
のか慎重に検討することが必要ですね。
石 井 水 道 で 逓 増 度 が 極 め て 高 い と こ ろ で は 、最 初 は 1 ㌧ 当 た り 10
円 く ら い の も の が 480 円 程 度 ま で に な る よ う な と こ ろ も あ り ま
す。これでは、徐々にお客さんがいなくなってしまいます。逓増
度を妥当なものに見直していくことは、社会的な潮流ではないで
しょうか。
一番大事なのはやはり、持続可能な経営を確保するということ
です。上下水道は、ライフライン中のライフラインです。事業が
倒れると、利用者の生活も成り立たなくなります。そのような観
点から、時代の状況変化を踏まえ、料金体系も不断に見直してい
く必要があるでしょう。
藤川 経営、料金のあり方の議論の最後の締めくくりとして、下水
道の経営改善に向けた取組みが現場に根付いていくためには、人
の問題は非常に重要であろうかと思います。先にトップの管理者
の経営能力の話が出ましたが、担当職員の人材確保・育成につい
て、お話をいただければと存じます。
石井
非常に大事なことだと思います。
一番基本になるのは、自治体職員の意識改革です。外に対して
いろいろな改革を打ち出していくのも重要ですが、一番大事なの
は内の人材育成に向けた意識改革です。経営と技術をどうやって
融合し、どのように次の世代に継承していくか、下水道部局とし
て真剣に考えていくことが不可欠でしょう。
そしてそれには、何といっても、個々の職員に、下水道の経営
・技術について、OJTだけでなく、OFF-JTも含め、真剣
に勉強しようというモチベーションを持ってもらわないといけま
せん。下水道部局で経営・技術を学べば、その能力が自治体全体
として評価される、勲章になるといった環境づくりが何より必要
ですし、下水道部局はそのような場になれると思います。
国においては、ぜひ自治体におけるそのような意識改革を促す
取組みをやっていただきたい。経営のマネジメントを身に着けら
れるようなマニュアル等を作成するとか、研修会や講習会等で啓
発・普及を図るとか、いろいろあると思います。
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藤川 ご指摘、ありがとうございます。人づくり・意識改革は、何
か派手な取組みを行うことよりも、地道な取組みを不断に行って
い く こ と が 重 要 で あ ろ う と 思 い ま す 。国 土 交 通 省 で は 、こ こ 1 、2
年、さまざまな経営改善のコンテンツ作りに取り組んできました
が、本年度から、まず手始めに、地方自治体に対するアドバイザ
ー制度を創設したところです。今後は、経営の意識改革について
一層積極的に取り組んでまいりたいと思います。
藤 川 こ こ ま で 、ど ち ら か と 言 う と 収 入 関 連 の 話 で し た が 、次 は 歳
出 に 関 連 す る 経 営 効 率 化 の 話 に 移 り た い と 思 い ま す 。ま ず 広 域 化
・共 同 化 の 話 で す が 、下 水 道 に つ い て は 、昨 年 の 下 水 道 法 改 正 で 、
広 域 化 ・ 共 同 化 を 進 め る た め の 協 議 会 制 度 を 創 設 し 、今 後 、具 体
的 な 案 件 形 成 を 促 し て い く こ と と し て い ま す 。公 益 事 業 の 広 域 化
・共同化について、お話を聞かせていただければと存じます。
石 井 公 益 事 業 、特 に イ ン フ ラ 産 業 、ネ ッ ト ワ ー ク 産 業 に つ い て は 、
学 問 的 に 、主 に 3 つ の 経 済 性 の 観 点 か ら 分 析 を 行 う 必 要 が あ る と
言われてきました。
一 つ 目 は 、規 模 が 大 き い 方 が 効 率 性 が 高 い と い う「 規 模 の 経 済
性 」 ( economy of scale) 、 二 つ 目 は 、 本 来 業 務 に 関 連 す る 業 務
も一緒に行った方が効率性が高いという「範囲の経済性」
( economy of scope) 、 三 つ 目 は 、 密 度 の 高 い ネ ッ ト ワ ー ク の 方
が 効 率 性 が 高 い と い う 「 ネ ッ ト ワ ー ク の 経 済 性 」 ( Economy of
network) で す 。
広 域 化・ 共 同 化 は 、こ の う ち 主 に「 規 模 の 経 済 性 」に 関 わ る 話
で す が 、 水 道 に つ い て 言 え ば 、 水 道 事 業 、 簡 易 水 道 事 業 、用 水 供
給 事 業 、専 用 水 道 事 業 と 形 態 も い ろ い ろ あ り 、事 業 数 も 非 常 に 多
いのです。
特に簡易水道事業の事業数は、平成の市町村の大合併前まで
は、なんと 1 万弱もあり、それぞれ、小さなエリアで完結して、
浄 水 場 等 も バ ラ バ ラ で 、規 模 の 経 済 性 が 全 く 発 揮 で き な い 状 況 に
あ り ま し た 。 そ こ で 、 簡 易 水 道 の 統 合 が 平 成 19 年 6 月 に 実 施 さ
れ ま し た 。厚 生 労 働 省 の 方 で 統 合 し た と こ ろ は 、補 助 を 手 厚 く し
て 約 10 年 間 は 補 助 金 を 交 付 す る 一 方 、 統 合 し な い と こ ろ は 補 助
金を減額するといった新たな制度が創設されて統合が進められ
て き ま し た 。 現 在 、 事 業 数 は 6000 く ら い で す 。
また、水道事業の方も、4 割程度は 5 万人以下の小規模事業体
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で す の で 、支 援 策 で 統 合 が 促 進 さ れ て き ま し た 。事 業 数 は 、こ の
間 ま で 1800 程 度 で し た が 、 現 在 、 1400 程 度 ま で か な り 減 っ て き
ています。
水 道 事 業 を 全 体 と し て 見 る と 、 人 口 減 少 や 、節 水 設 備 ・ 機 器 の
普 及 で 、有 収 水 量 が 減 り 、料 金 収 入 が 減 少 し て 、こ れ ま で の 収 支
予 測 と 現 実 と の 間 で 乖 離 が 生 じ て き て お り 、更 新 や 耐 震 化 等 の 財
源 が 枯 渇 し て き て い る 状 況 に あ り ま す 。経 営 の 効 率 性 の 重 要 な 指
標 と し て 施 設 の 稼 働 率 が あ り ま す が 、広 域 化 ・ 共 同 化 し て 、浄 水
場 等 の 稼 働 率 を 上 げ 、規 模 の 経 済 性 を 追 求 し て い く こ と が 求 め ら
れ て い ま す 。特 に 、中 核 市 以 上 の 都 市 の 広 域 化 は 、「 規 模 の 経 済
性 」に 加 え 、「 範 囲 の 経 済 性 」、「 ネ ッ ト ワ ー ク の 経 済 性 」も あ
るので、効果が大きいのです。
ち な み に 、ネ ッ ト ワ ー ク の 経 済 性 に つ い て は 、一 般 的 に 導 水 管
や 排 水 管 等 を 高 密 度 で 利 用 で き る と い う 経 済 性 の ほ か 、他 の 都 市
の 管 と つ な が る こ と で 、渇 水 時 、災 害 時 ・ 事 故 時 の リ ス ク を ヘ ッ
ジできるという経済性もあります。
藤 川 話 は 少 し そ れ ま す が 、3 つ の 経 済 性 の う ち 、「 範 囲 の 経 済 性 」
と い う の は 、下 水 道 事 業 で は 、具 体 的 に ど の よ う な も の を 考 え れ
ばいいのでしょうか。
石 井 例 え ば 、資 源・エ ネ ル ギ ー の 有 効 活 用 の 話 は 、「 範 囲 の 経 済 」
と 言 っ て い い で す ね 。下 水 汚 泥 か ら 発 生 す る バ イ オ ガ ス で 発 電 す
る 、水 素 を 抽 出 し て 利 用 す る 、下 水 熱 を 利 用 す る 、コ ン ポ ス ト 等
として農業利用する、みんな本来事業に由来する関連事業です
ね。
藤 川 水 道 で は 、ミ ネ ラ ル ウ ォ ー タ ー を 売 る と い っ た ほ か に 、ど う
いうものがありますか。
石井 大きいものとして、管路のマッピングシステムがあります。
大 き な 事 業 体 で は す べ て コ ン ピ ュ ー タ 化 、デ ー タ 化 さ れ て い ま す
が 、こ の デ ー タ は 、街 路 事 業 な ど 都 市 計 画 事 業 に 活 用 が で き ま す 。
た だ 結 構 、縦 割 り 行 政 に な っ て い る 傾 向 も あ り ま す の で 、な か な
か「範囲の経済性」が発揮できていない面はあります。
藤川
私 が 言 う の も な ん で す が 、下 水 道 部 局 か ら 水 道 部 局 に 料 金 徴
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収 業 務 を 相 当 委 託 し て い ま す よ ね 。そ れ も「 範 囲 の 経 済 性 」で す
かね。結構取られているという話も聞くことがありますが。
石井
「範囲の経済」ですね(笑)。
藤 川 い ず れ に し て も 、前 例 に 捕 ら わ れ ず 、儲 け る ア イ デ ア を 考 え
ていくということも立派な経営ですよね。
石 井 そ う で す 。私 な ど は「 範 囲 の 経 済 性 」等 の 観 点 か ら 、い ろ い
ろ ア イ デ ア が あ る の で す が 、現 状 、言 っ て も 聞 き 流 さ れ る こ と が
多 い で す 。実 務 家 か ら 斬 新 な ア イ デ ア が ど ん ど ん 出 て き て 、具 体
化されていく状況には、まだなっていないのではないでしょう
か。
藤 川 話 は 少 し 戻 り ま す が 、 中 核 市 以 上 は 、広 域 化 ・ 共 同 化 の 効 果
が高いとして、小さいところはどうなのでしょうか。
石 井 簡 易 水 道 に つ い て は 、 事 業 数 が 6000 強 い と 言 い ま し た が 、
こ れ 以 上 少 な く す る の は な か な か 難 し い 状 況 で す 。そ の う ち の 多
く は 地 形 等 に よ っ て 、 分 断 さ れ て い る の で す 。広 域 化 ・ 共 同 化 す
る に は 、管 を つ な が な い と い け な い わ け で す が 、田 舎 に い く ほ ど
非 常 に コ ス ト が か か り ま す 。一 番 か か る と こ ろ で は 、1 ㌔ 当 た り
1 億円とも言われます。
藤 川 下 水 道 の 広 域 化 ・ 共 同 化 に つ い て 少 し 紹 介 す る と 、現 在 ま で
の と こ ろ 、農 業 集 落 排 水 等 に つ い て 、浄 化 施 設 の 改 築 更 新 が 難 し
いので、下水道につなぐということが比較的多く行われていま
す。また、これは管をつなぐ話ではありませんが、下水道汚泥、
浄 化 槽 汚 泥 、し 尿 等 を 共 同 処 理 す る M I C S( 汚 水 処 理 施 設 共 同
整 備 事 業 )も あ り ま す 。 こ れ ら は 、市 町 村 の 支 出 を 抑 え る こ と が
で き る 話 で も あ る の で 、地 方 に い く と 喜 び の 声 を 多 く い た だ き ま
す。
こ の よ う な ハ ー ド に 関 わ る 話 で は な い の で す が 、一 定 エ リ ア の
複数の市町村が有する処理場の維持管理を下水道公社等で一括
受 託 し て 、広 域 管 理 す る 手 法 も 多 く は な い で す が あ り ま す 。特 に 、
長 野 県 の 下 水 道 公 社 は 先 進 事 例 で 、県 内 を 地 域 ブ ロ ッ ク 単 位 で 受
託 し 、拠 点 処 理 場 と 複 数 の サ ブ 処 理 場 と い う シ ス テ ム で 、民 間 事
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業 者 も 活 用 し つ つ 、維 持 管 理 の 効 率 化 を 図 っ て お ら れ ま す 。あ と 、
大都市が周辺の市町村の維持管理を事務の委託等で担うという
ケースも若干ありますし、いくつか検討も進んでいます。
石 井 長 野 県 を は じ め 、い ろ い ろ が ん ば っ て お ら れ る 県 が い く つ も
あ り ま す 。水 道 の 場 合 は 、長 野 県 で は 、企 業 局 が 天 竜 村 と 連 携 協
約 を 結 ん で 支 援 し よ う と し て い ま す 。ま た 、埼 玉 県 で は 、実 際 に 、
企業局では県内のある自治体に工事の積算等の支援を行ってい
ま す 。こ の よ う な 維 持 管 理 支 援 、発 注 支 援 の 取 組 み は 、全 国 的 に
普及させていく必要がありますね。
藤 川 そ う で す 。 た だ 、全 国 的 に 見 る と 、県 や 県 の 公 社 が 市 町 村 を
支 援 す る パ タ ー ン と 、大 都 市 が 周 辺 市 町 村 を 支 援 す る パ タ ー ン だ
けでは、対応が難しい地域もあります。
石井
相当あるでしょうね。
藤 川 そ こ で 、こ れ と は 別 の ア プ ロ ー チ と し て 、従 来 か ら の 下 水 道
事 業 団 の 支 援 に 加 え 、例 え ば 、大 都 市 が 設 立 し た 非 営 利 的 組 織 が 、
対 象 エ リ ア の 縛 り な し に 、地 方 部 の 市 町 村 を 支 援 す る パ タ ー ン も
考 え ら れ ま す 。実 際 に 、例 え ば 、横 浜 ウ ォ ー タ ー は 、宮 城 県 山 元
町 で 、包 括 委 託 の 発 注 ・ モ ニ タ リ ン グ 支 援 や 、各 種 計 画 づ く り 支
援 と い っ た 行 政 固 有 事 務 に 対 す る 支 援 を 行 っ て い ま す 。こ の よ う
な 場 合 で も 一 つ の 市 町 村 で な く 、広 域 ブ ロ ッ ク 単 位 で 支 援 す る 方
がやりやすいとのことです。
石井 市町村の固有事務に対する支援の手法は、いろいろあって、
一 つ に 決 め る の で は な く 、多 様 な 受 け 皿 を つ く っ て い く こ と が 重
要 で し ょ う 。い づ れ に し て も 、そ の よ う な 受 け 皿 を 構 築 す る た め
の環境づくりは、国が率先して担っていく必要がありますね。
藤 川 先 ほ ど 述 べ た と お り 、広 域 化 ・ 共 同 化 に 向 け た 調 整 の 場 づ く
りとしては、昨年の下水道法改正で協議会制度を創設しました。
地 味 で す が 、将 来 に 向 け た 重 要 な ア プ ロ ー チ と し て 、大 切 に 育 て
ていく必要があろうかと思います。
石井
こ の あ た り は 、将 来 に 向 け て 、機 能 を 強 化 す る な ど い ろ い ろ
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制 度 的 な 拡 充 が 考 え ら れ る 分 野 で は な い で し ょ う か 。次 の 法 改 正
では、いろいろ制度的な拡充を考えられてはいかがですか。
藤 川 法 制 度 の 改 正 は 、地 に 足 の 着 い た 制 度 で し か 結 局 は ワ ー ク し
ま せ ん の で 、 今 後 、協 議 会 制 度 を 動 か し て い く 中 に お い て は 、将
来 の 制 度 改 正 を 見 据 え る と い う こ と も 、一 つ 頭 に 描 い て お く 必 要
があると思います。
石井 協議の場として別の市町村に対する支援組織の話について
は、下水 道 は、協 会に 加 え、事業 団 もあ り ます し、県 の公 社、非
営 利 組 織 な ど 、さ ま ざ ま な 主 体 が あ り 、非 常 に 恵 ま れ て い る の で
は な い で し ょ う か 。ぜ ひ と も 、前 例 主 義 に な ら ず 、体 制 が 脆 弱 な
市 町 村 の 行 政 代 行 組 織 の あ り 方 に つ い て 、制 度 の 見 直 し を 含 め 検
討を進めていただきたいものです。
藤 川 そ こ は ま さ に 、従 来 か ら 強 く 問 題 意 識 を 持 っ て い る 点 で す の
で 、ま さ に 知 恵 を 絞 っ て い か な け れ ば い け な い と こ ろ だ と 思 い ま
す。
さ て 、広 域 化・共 同 化 の 話 か ら 始 ま っ た 市 町 村 支 援 の 話 は 、以
上 に い た し ま し て 、 次 は 、 少 し 話 題 を 変 え て 、 官 民 連 携 、 PPP/
PFI の 話 に 移 り た い と 思 い ま す 。下 水 道 の PPP/ PFI の 現 状 に つ い
ては皆さん十分理解されていることと思いますので端折ります
が、水道の現状はいかがですか。
石 井 P F I に つ い て は 、大 ま か な イ メ ー ジ は 下 水 道 と 似 て い る の
だ と 思 い ま す 。新 設 ・ 改 築 を 行 う プ ラ ン ト ・ 設 備 の 維 持 管 理 を 含
め た P F I で す ね 。例 え ば 、水 道 事 業 で も 金 町 浄 水 場 の 発 電 設 備
だとか、いろいろあります。
藤川
大規模な事例としては、どんなものがあるのでしょうか。
石 井 P F I で や っ た 一 番 大 規 模 な の は 、横 浜 市 水 道 局 の 川 井 浄 水
場 が あ り ま す 。完 全 に 古 く な っ た 浄 水 場 を 取 り 壊 し て 、新 し い も
の を つ く り ま し た 。去 年 の 4 月 1 日 に オ ー プ ン し 、契 約 期 間 は 25
年です。
藤川
個 別 の プ ラ ン ト・設 備 で は な い 事 業 全 体 の コ ン セ ッ シ ョ ン と
いうのは、いくつか検討が進められていると承知していますが、
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いろいろ課題があるのですか。
石 井 や は り 、ど う し て も 情 報 に 制 約 が あ る 中 で 、地 中 に 埋 設 さ れ
て い る も の の リ ス ク 評 価 は 難 し い で す ね 。そ の ま ま で は 、非 常 に
リスクが高いプロジェクトになりかねません。
藤 川 下 水 道 の 管 路 包 括 で さ え 、理 想 的 な 管 路 情 報 が 整 備 さ れ て い
れ ば 、完 全 な 性 能 発 注 は 可 能 で す が 、そ う で な け れ ば 、あ る 程 度
仕様発注の要素が入らざるを得ないと言われています。
石井 いろいろ検討する余地はあると思いますが、空港と違って、
上 下 水 道 の コ ン セ ッ シ ョ ン に つ い て は 、現 在 の 包 括 的 民 間 委 託 に
改 築 も 入 れ て 期 間 を 25 年 く ら い に 伸 ば す イ メ ー ジ に な る の で は
ないでしょうか。
藤 川 維 持 管 理 の 長 期 化 と 、改 築 に 対 す る 民 間 提 案 で も 、相 当 な 民
間 活 力 ・ 創 意 工 夫 の 導 入 手 法 で は な い で し ょ う か 。現 在 の 包 括 的
民 間 委 託 に つ い て も 、事 業 者 サ イ ド か ら 、雇 用 の 確 保 等 の 観 点 か
らも、長期化の要望が強く出ています。
石 井 そ こ は 上 水 道 も 同 様 で す 。第 三 者 委 託 を や っ て い る と こ ろ は
みんなそうです。
藤川 官民連携について、下水処理場の維持管理については、9 割
程 度 は 民 間 委 託 で す が 、水 道 の 浄 水 場 は 、お お む ね ど ん な 感 じ で
しょうか。
石 井 大 き な 都 市 で は 、自 前 で や っ て い る と こ ろ が 、ま だ か な り 多
い で す ね 。た だ 、 小 さ な 都 市 で は 現 在 、 半 分 ぐ ら い は 民 間 に 出 し
ているのではないでしょうか。
藤川
それでも、半分ぐらいは直営の人がやっているのですね。
石 井 本 当 に 小 さ い と こ ろ は 民 間 に 出 し た く て も 、受 け 手 が い な い
の で す 。規 模 の 経 済 性 が 発 揮 で き な い し 、仮 に 、3~ 5 年 間 受 託 し
ても、その後どうなるか分からないからです。
で す か ら 公 共 事 業 、公 営 事 業 に お い て は 、B / C 分 析 を や る よ
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う に 、 C V P 分 析 ( Cost ・ Volume ・ Profit Analysis ) を や ら な
いと駄目なのです。
性 能 発 注 で Profit が 出 る ま で 、 す な わ ち 、 C V P の ブ レ ー ク
イ ー ブ ン ポ イ ン ト( 損 益 分 岐 点 ) ま で は 、ち ゃ ん と 公 共 が 面 倒 見
るけれども、そのあとはあなた方の創意工夫で頑張ってくださ
い 、と い う 取 扱 い を す る こ と が 不 可 欠 で す 。そ の よ う な 基 本 的 な
枠 組 み が あ る と 、官 民 の リ ス ク の 押 し 付 け 合 い は そ ん な に 生 じ な
いのです。
上 水 も 下 水 も さ ま ざ ま な リ ス ク が あ り ま す が 、た だ 、リ ス ク だ 、
リ ス ク だ 、と 言 っ て い る だ け で は な く て 、民 間 事 業 と し て 回 っ て
い く よ う に 具 体 的 な レ ベ ニ ュ ー と コ ス ト を 分 析 し て 、民 間 事 業 者
が参入できる場を設定することが必要なのです。
た だ 、 そ の あ た り は 、専 門 性 や 中 立 ・ 公 正 性 が 要 求 さ れ ま す の
で 、公 益 的 な 専 門 組 織 が 自 治 体 を 支 援 す る こ と が 重 要 に な っ て き
ま す 。実 は 、水 道 に は 、そ れ が あ り ま す 。日 本 水 道 協 会 に 、ア ド
バイザリー制度というものがあるのです。
藤川 経営改善のアドバイスみたいなものかなと思っていました
が。
石 井 経 営 に 関 す る こ と な ら 、何 で も い い の で す 。協 会 で で き な け
れ ば 、ほ か を 紹 介 す る こ と を 含 め 、何 で も 相 談 事 の ア ド バ イ ス を
し て い ま す 。学 識 経 験 者 と 実 務 家 O B が ア ド バ イ ザ ー ・ グ ル ー プ
を形成しており、もう十数年前からあります。
藤川
ある程度のフィーは取るのですか。
石井
基本的なフィーは明記されています。
藤 川 案 件 組 成 な ど は 、詳 細 な 話 に な っ て い く と 、次 は 、自 治 体 と
民間コンサルタント等が詰めていくみたいになるのですか。
石 井 そ う い う こ と も あ り ま す 。す べ て ケ ー ス・バ イ・ケ ー ス で す 。
下 水 道 協 会 も 、自 治 体 の ニ ー ズ は あ る と 思 い ま す の で 、や ら れ て
はいいのではないでしょうか。
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藤 川 個 別 の 案 件 形 成 に 対 す る ア ド バ イ ザ リ ー み た い な も の は 、ま
だ で す が 、本 年 度 か ら 下 水 道 協 会 と 連 携 し て 、「 下 水 道 経 営 支 援
アドバイザー制度」を創設して、今後、自治体に対する講演会、
研 修 会 等 を 通 じ 、経 営 改 善 の 意 識 啓 発 、ノ ウ ハ ウ 伝 授 み た い な こ
とをやっていこうとしています。
相 当 の 専 門 性 が 求 め ら れ る ア ド バ イ ザ リ ー 、そ れ も 、民 間 に 任
せ に く い 政 策 判 断 の コ ア に 関 す る も の を や っ て い く と な る と 、人
材育成・体制整備が大きな課題となってきます。
石 井 そ う で す ね 。た だ 、初 め は 、実 務 に 精 通 し た 学 識 経 験 者 等 か
ら の 支 援 を 受 け て 、徐 々 に 職 員 に 勉 強 し て も ら い 、経 験 を 積 ん で
も ら っ て 、人 材 育 成 ・ 体 制 整 備 を し て い け ば い い の で は な い で し
ょ う か 。い ず れ に し て も 、組 織 の 方 向 性 の 大 き な 方 針 決 定 は 必 要
です。
藤 川 下 水 道 の 場 合 、下 水 道 協 会 に 加 え 、日 本 下 水 道 事 業 団 と い う
実 働 部 隊 も あ り ま す 。こ れ ま で の 業 務 か ら 言 う と 、い さ さ か 飛 躍
になるのでしょうが、貴重なご意見として承りたいと存じます。
ま た 併 せ て 、こ れ は 当 然 の こ と で す が 、国 土 交 通 省 自 体 の レ ベ ル
ア ッ プ も 問 わ れ る の だ と 思 い ま す の で 、当 方 も 引 き 続 き レ ベ ル ア
ップを図っていきたいと思います。
石 井 コ ン セ ッ シ ョ ン の 普 及 促 進 で 、国 土 交 通 省 が 、ま さ に 自 治 体
と 一 体 に な っ て 、汗 を か か れ て い る こ と は 承 知 し て い ま す 。そ う
い う こ と は 大 変 重 要 で す 。た だ 、案 件 組 成 み た い な 具 体 的 な 話 に
な っ て く る と 、や は り 、い く ら 国 が サ ー ビ ス 精 神 を 旺 盛 に し て が
ん ば ら れ て も 、立 場 上 の 制 約 が あ り ま す 。そ こ は 、や は り 、公 益
的な組織の出番ではないでしょうか。
藤 川 話 は 少 し 離 れ ま す が 、以 前 、市 に 出 向 し て 、全 国 に 先 駆 け た
いろいろ都市計画のルールをつくっていたことがあるのですが、
新 し い こ と に チ ャ レ ン ジ す れ ば す る ほ ど 、行 政 実 務 に 精 通 し た プ
ロ の 支 援 が ほ し い な と 思 い ま し た が 、意 外 や 、そ う い う 組 織 は な
いのですね。
石井
都市計画は私もある都市の都市計画審議会の委員をしてい
ますが、都市計画審議会という組織はあることはありますよね。
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藤 川 確 か に 。そ う い う 面 で は 、専 門 的 な 支 援 み た い な 場 は あ る の
で す が 、実 務 的 な 難 し い 話 に つ い て 、川 上 段 階 か ら い ろ い ろ ア ド
バイスしてもらう組織はありません。
自 治 体 の 執 行 体 制 の 脆 弱 化 が 叫 ば れ る 中 で 、民 間 を 最 大 限 活 用
し て も な お 残 る 行 政 固 有 業 務 に 対 す る 支 援 に つ い て 、受 け 皿 組 織
をつくるニーズは高いのだと思います。
独立行政法人、公益法人をはじめ行政の外郭団体については、
い ろ い ろ ご 批 判 が あ る こ と は 承 知 し て い ま す し 、ガ バ ナ ン ス を 強
化 し て い く こ と は 言 う ま で も あ り ま せ ん 。た だ 、こ の よ う な 分 野
は 、公 益 的 組 織 が 真 の 実 力 を つ け て 、担 っ て い く 分 野 で は な い で
しょうか。
石 井 ま さ に そ の 通 り だ と 思 い ま す 。公 益 法 人 等 は 、公 益 と い う 原
点 に 立 ち 返 り 、天 下 り 組 織 だ と の 世 の 中 の 批 判 を 払 拭 し 、い い 仕
事をどんどんやっていってほしいものです。
藤 川 歳 出 面 の 経 営 効 率 化 に 関 す る 話 も 、広 域 化・共 同 化 、官 民 連
携 の 話 を 経 て 、や は り 最 後 は 、組 織 と い う か 、人 の 話 に 戻 っ て き
ました。繰り返しは避けますが、さまざまな政策対応の中でも、
そのあたりは中長期的かつ計画的な取組みが求められる難しい
分 野 だ と 思 い ま す が 、「 倦( う )ま ず 怠 ら ず 」や っ て い か な け れ
ばなりませんね。
ま だ ま だ お 話 を お 聞 き し た い た の で が 、時 間 の 関 係 で 、下 水 道
経営に関する対談はこのあたりで締めとさせていただきたいと
思 い ま す が 、最 後 に 何 で も 結 構 で す の で 、今 後 の 下 水 道 経 営 に 対
してお言葉をいただければ幸いです。
石 井 上 水 道 と 下 水 道 は 一 体 で あ る と よ く 言 わ れ て い ま す 。災 害 や
事 故 で 、ど ち ら か 一 方 の 機 能 が 止 ま れ ば 、水 が 使 え ず 、生 活 が で
き ま せ ん 。下 水 道 に つ い て は 、現 在 、広 報 の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム を
立 ち 上 げ て 、が ん ば っ て お ら れ ま す が 、国 民 、市 民 の 方 々 に 対 し
て さ ら に 下 水 道 の 意 義・必 要 性 を P R し て い く こ と が 大 変 重 要 で
あ ろ う と 思 い ま す 。耐 震 化 、老 朽 化 対 策 を 進 め る 上 で も 、も っ と
目 を 向 け て も ら え る よ う に し て い く こ と が 不 可 欠 で す 。こ う し た
国 民 的 な 環 境 づ く り の 中 で 、下 水 道 の マ ネ ジ メ ン ト も さ ら に 進 ん
でいくものと考えます。
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藤川
ありがとうございました。
(以上)
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