LM-09 男女の性と脳 ~男女の能力に生来的な差はあるのか~ 0611141横山佳保’ 指導教員藤掛洋子 【背景と目的】女性は社交的であり、感情的であり、言語 個人を取り巻く社会的・文化的環境における影響は大き を操る能力が高く、その一方、男性は闘争心が強く支配 い。子どもの頃、少年と少女で教育のされ方が違えば、 したがる性格で、空間能力が高い、といった男女に対す 脳も違った戦略を確立する。しかし、こういった脳の違い るイメージは強い。このような男女の能力の違いが、生来 的なものであるという言説や情報がマスメディアからも溢 は、ピアニストと水泳選手の相違よりも大きくはない。よっ て、脳には固定化されたものなど無いと断定できる。 れている。しかし、男女の間には、知的能力や社会的能 このような事実が証明され、現代社会も変化しつつあ 力において、生まれつき性差はない、と科学的に証明さ る中、未だ生物学的決定論が根強く残る。例えば、 れている。それにもかかわらず、未だ現代において、男 『NHKスペシャル女と男』は、完全に生物学的決定論と 重なる内容であったが、2009年1月に放送されている。 生物学的決定論は、単純であるが故に好かれ、メディア 女間の能力には差があるとされ、個々の意識の中にも根 付いていると思われる。 本研究では、男女の性差や能力と能の関係性につい を強く惹きつける。しかし、公共放送事業体であるNIZ〈 て文献より調査を行う。同時に、男女共同参画に積極的 が今日においてこのような番組を放送していることに筆 な取り組みをしている生活協同組合パルシステム神奈川 者は疑念を抱いた。 ゆめコープ(以下ゆめコープ)で行われた理事会研修の データをまとめ、ジェンダー視点より分析する。以上より 男女共同参画に積極的なゆめコープでは、男女が共 に仕事と家庭生活の調和が実現できるための両立支援 課題を見出し、男女がそれぞれのイメージに固執されず、 を進めている。しかし、理事会研修によると、理事会内の 社会的性差をなくしていく社会の実現に向けて何を成す 女性自身が、「女性管理職の登用に期待できない」や、 「女性は家事育児をするもの」という意見が多く聞かれた。 べきか提言する。 【方法】脳と性差に関する文献.インターネットの調査およ びゆめコープのワークショップのデータ分析も 幼い頃からの環境が影響し、男女の役割分担が染み付 いているのではないかと考えられる。男女共同参画の実 【結果及び考察】男女間の能力の差を生来的なものとす 現は、制度的にも、個人の意識という点においても、変 る言説として、生物学的決定論があげられる。生殖に関 革は容易ではないと強く感じた。 わる身体構造や機能が違うならば、能力も違うといった考 【結論】脳は生殖機能を制御しているため、男女で違う脳 を持つことは確かではあるが、脳は他の器官とは違い、 え方である。また、先史時代の生活を根拠とした説もある。 女性の平和的・協調的な性格や言語能力が優れている のは子育てをするためであり、男性の攻撃的.競争的な 性格や空間能力が優れているのは狩猟をするために発 達していったものであり、現在も受け継がれているといっ た言説である。しかし、この生物学的決定論から、現代社 会における性差を語ることの問題点は多くの研究者に指 摘されている。 思考の中枢である。脳の可塑性のおかげで、家族や社 会、文化に由来する周囲の環境により刺激され、体験と 学習によって絶えず変化している。よって、男女間で脳 の働きに違いが見られるからといって、その違いが生ま れつき脳に刻み込まれているのではない、といえる。 ゆめコープの理事会内では、様々な意見が見られる。 制度を整え、働きやすい環境を創ることはもちろん大切 現代では、磁気共鳴画像法(MRDを使用することで、 であると同時に、組織内の人々の想いが変わらなければ 知覚、運動、認知の機能で活性化された部位を明らかに することができる。この研究によって脳の動きはぴたりと 本当の男女共同参画にはならないのではないかと考え 一時停止するものではなく、個人が体験した出来事に応 る。男女間の能力に差はないのであるから、幼少期から の男女共同参画に関わる教育制度を充実させると同時 じて形成と崩壊を絶えず繰り返していることがわかった。 に、個人の能力を重視することが大切である。昔からの このことは、脳の可塑性によって証明される。脳の可塑性 とは、神経細胞間の連結の形が変化することを指す。そ 男性・女性のイメージに縛られず、それぞれがともに「仕 事と生活の調和」を実現できる権利があることを私たちは れは、日常生活でも学習と記憶を確かなものにするため きちんと知らなければならない。 に働くが、脳が損傷を受けた場合に障害をカバーしようと して働く。この脳の可塑性によって、脳は、個人が体験し た出来事や学習に応じて変化し、発達している。ゆえに、 lKaoYOKOWLMA 2藤謝羊子(2008)「生活クラブ生協パルシステム神奈Ⅱ| ゆめコープ理事研修におけるワークショップ結果」
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