加藤光広:神経細胞移動障害の分子機構.

日本小児科学会雑誌 111巻11号 1361∼1374(2007年)
総
説
神経細胞移動障害の分子機構
山形大学医学部発達生体防御学講座小児医科学分野
加 藤
要
光 広
旨
神経細胞移動障害は広義には滑脳症とほぼ同義語であり,大脳皮質の層構造の乱れを特徴とす
る.Miller-Dieker 症候群で染色体の微細欠失が発見されてから,原因遺伝子の同定,遺伝子の機
能解析,動物モデルの解析が進み,病態のみならず脳の発生自体についての理解が急速に進んだ.
臨床でも画像解析の進歩により,新しい脳形成障害が多数報告され,研究の進展に拍車をかけて
いる.神経細胞の移動障害は移動様式の変化とそれを支える細胞内信号伝達によるアクチンフィ
ラメント・微小管の制御,そして移動の停止のいずれかの障害で起きる.これまでにヒトにおけ
る神経細胞移動障害の原因遺伝子が複数判明し,LIS1 遺伝子の欠失解析はすでに一般診療に応用
され,DCX と ARX 遺伝子も先進医療として遺伝子診断が可能である.それぞれの遺伝子変異は
特徴的な頭部画像所見を呈し,遺伝子診断の前に,正確な画像診断が重要である.また家族に対
しての心理的なケアと遺伝カウンセリングが欠かせない.
キーワード:脳発生,神経細胞移動障害,滑脳症,異所性灰白質,介在ニューロン
はじめに
脳の発生
細胞移動は,胎生期には神経の発生のみならず他臓
脳の発生は,ヒトでは胎生 3∼4 週の神経管形成に始
器の形態形成においても重要な役割を果たし,生後も
まり,3 脳胞(前脳胞・中脳胞・菱脳胞)の一次脳胞期
神経幹細胞の移動1)のほか,炎症反応に際しての白血球
から 5 脳胞(終脳・間脳・中脳・後脳・髄脳)の二次
の移動や悪性腫瘍の転移機構などの病態にも深く関わ
脳胞期を経て,胎生中期(20∼22 週)には複雑な脳構
る重要なテーマである.細胞移動は細胞膜の伸展と核
造が概ね完成する.それぞれの時期において,細胞の
の移動,尾突起の退縮の 3 つのプロセスによって行わ
増殖とともに領域の特異化すなわち細胞個々の役割分
れる.細胞の種類により制御機構は異なるが,移動に
担が行われ,形態の変化とともに機能の分化が進む.
直接関わるアクチンフィラメントや微小管など構造タ
神経幹細胞は脳室に面した部位に存在し,細胞増殖は
ンパク質には共通事項も多い.本稿では,小児の特徴
特定の部位のみで行われる.神経細胞の移動は,細胞
である発達を支える脳,特にヒトにおいてもっとも発
が増殖した後に,限られた空間内で細胞を最終目的地
達を成し遂げた大脳新皮質の発生を取り上げ,急速に
に整然と配置し,神経細胞が効率よくネットワークを
解明の進んでいる神経細胞の移動機序とその障害に
形成するために必須の過程であり,神経細胞の移動に
よっておこる 2 つの脳形成障害―滑脳症と異所性灰白
よって,機能分化した神経細胞が正しく信号を伝達す
質―の分子機構について最近の知見を述べたい.なお,
ることが可能になる.
画像所見や臨床所見については簡潔な記述にとどめた
ので,文末の参考図書を参照されたい.
連絡先住所:(〒990―9585)山形市飯田西 2 丁目 2―2
山形大学医学部発達生体防御学講座小児医科
学分野
加藤 光広
大脳皮質の発生
脳の各部位において,神経細胞の移動は行われるが,
移動距離が長く,移動障害が顕著に表れるのは大脳皮
質である.大脳皮質は,表のように旧皮質,古皮質,
日児誌 111(11)
,2007
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marginal zone と深部の subplate に分割される(図 2
B)
.Preplate すなわち最初の神経細胞がどこを起源と
するかはまだ決着がついていないが,ヒトでは胎生 4
週には preplate を形成する神経細胞が観察され,突起
の形態の特徴から脳室帯以外で産生されると推測され
ている5).辺縁帯は,大脳皮質の第 I 層となり,subplate
と皮質板に先に到達した細胞層を通り抜けて層構造の
深部(第 VI 層)から表面(第 II 層)へ新しい層が次々
に積み上げられ(inside-out)
,最終的に 6 層構造が完成
する(図 2C)
.また神経細胞から伸びた軸索は,皮質の
入 力 も し く は 出 力 線 維 と な り 中 間 帯 intermediate
zone を形成し,将来の白質となる.従来は皮質直下の
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脳室帯で全ての神経細胞が増殖し,放射状グリア radial glia 細胞の突起を足場に移動するという考え方が
支配していた6)7).しかし,細胞動態の観察技術が進ん
だこの 10 年間で神経細胞の移動についての概念は大
きく変化した.
1)錐体細胞と非錐体細胞
ヒトの脳ではまだ議論があるものの8),マウスでは図
1 に示したように,錐体細胞と非錐体細胞では,細胞の
新皮質に分類される(表 1)
.大脳新皮質は,他臓器と
産生場所と移動様式が異なる9).大脳皮質の神経細胞は
比べて進化の速度は速く,現在 も 進 化 を 続 け て い
グルタミン酸を神経伝達物質とする興奮性の投射
る2)∼4).大脳新皮質(以下大脳皮質と略)の顕微鏡的な
ニューロン(錐体細胞)と,γ アミノ酪酸(GABA)を
形態の特徴は,神経細胞の種類と分布の違いによって
神経伝達物質とする抑制性の介在ニューロン(非錐体
構成される 6 層構造であり,神経細胞の移動が正しく
細胞または顆粒細胞)の二つに大別される(表 2)
.新
制御されることによって完成する.大脳皮質における
皮質の 6 層構造は,錐体細胞と非錐体細胞の分布の違
神経細胞移動障害は層構築障害といえる.
いにより区別される.これまでは,新皮質の約 80% を
大脳皮質を構成する神経細胞は,脳室面の脳室帯で
占める錐体細胞(興奮性投射ニューロン)が機能的に
増殖し脳表へ放射状に法線移動もしくは放射移動 ra-
主に注目されていたが,数的には約 20% の非錐体細胞
dial migration する細胞と,内側基底核原基で増殖し脳
(抑制性介在ニューロン)のほうが,形態・生理・分
表に平行に接線移動 tangential migration する細胞の
子・シナプスの特徴においてより多彩な表現型を示
2 種類に分けられる(図 1).大脳皮質も,神経管のと
す10).
きには一層の神経上皮でしかなく,ある一定の高さの
2)放射状グリアまたはマトリックス細胞
範囲内(脳室帯)で核が細胞周期に一致して上下運動
放射状グリア自身が神経細胞の母細胞であることが
(エレベーター運動)を繰り返し,脳室帯の脳室面で対
判明した11)∼13).放射状グリアが神経細胞を産生するこ
称性に分裂・増殖する(図 2A)
.発生の進行とともに
とは,すでに京都府立医科大学の藤田晢也博士によっ
非対称分裂により増殖した細胞は神経細胞(ニューロ
て 1960 年代初頭に観察され「マトリックス細胞」と名
ン)に分化し,脳表へほぼ垂直に法線移動し,先に形
付けられていた14)15).放射状グリアまたはマトリックス
成された原始網状層 preplate の間に割って入り,皮質
細胞は神経細胞の産生後にグリア細胞を産生する.
板 cortical plate を形成する.preplate は脳表の辺縁帯
平成19年11月 1 日
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3)移動様式
gration:脳室下帯で多数の突起を伸縮させ移動方向
神経細胞の移動には,細胞形態・動態の異なる少な
を頻繁に変えながら徐々に脳表面に向かう様式で,慶
.1.
トランスロケー
応義塾大学の仲嶋博士らに よ っ て 発 見・命 名 さ れ
ション:脳室帯で生まれた細胞が,脳表まで伸びた神
た17).トランスロケーションにより脳室下帯に到達し
経突起を分裂に際して母細胞(放射状グリアまたはマ
た細胞が脳表面に伸ばした突起を離して収縮させ多極
トリックス細胞)から受け取り,脳室面の突起を離し
性移動を行う細胞も観察されている.3.ロコモーショ
て,脳表面へ核および胞体が突起内を移動する様式で,
ン:従来から提唱されていた様式で,進行方向に短い
発生の比較的初期に多い.2.
多極性移動 multipolar mi-
先導突起をもつ双極細胞が放射状グリアの突起(非錐
くとも 3 つの様式が存在する
16)
17)
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日本小児科学会雑誌 第111巻 第11号
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体細胞では軸索と考えられている)を足場として,そ
れに沿って突起の伸展と核の移動を繰り返し移動す
る.多極性移動により中間帯に移動した細胞はロコ
モーションにより皮質板に移動する.突起の伸展と核
の移動は独立して観察され,それぞれ独自の機構に
よって制御されていると考えられる.
神経細胞移動障害の分類
神経細胞移動障害の分類は,MRI の普及による新た
な脳形成障害の知見・報告と原因遺伝子の解明によ
り,数年ごとに改訂・更新されている18).現在推定され
ている病態と形態的特徴に基づいた分類を表 3 に示
す.本稿では,FLNA,LIS1,14-3-3ε.DCX,ARX,
RELN などの原因遺伝子が判明し分子機構の解明が比
較的進んでいる 1)と 2)について詳しく述べたい.3)
から 5)を簡潔に述べると,3)丸石様皮質異形成 cobblestone cortical dysplasia は,皮質板での移動が停止
せずにグリア境界膜を突き破って脳表に到達した状態
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であり,先天性筋ジストロフィーに伴うことが多い19).
特に日本では福山型先天性筋ジストロフィーに併発す
化症と病理所見が類似しており,共通の病態が考えら
ることが多く,
すでに 2006 年に本誌の総説として詳述
れている26)∼28).片側巨脳症の脳組織を用いた発現遺伝
多小脳回!
裂脳症は,ともに先天性サ
されている20).4)
子プロファイルから,Wnt!
β-catenin pathway の活性
イトメガロウイルス感染症や血流障害など 2 次障害に
化が想定されているが29),特定の遺伝子は判明してい
よって生じることがあり,必ずしも遺伝子異常が原因
ない.
とは限らない .両側前頭頭頂優位の多小脳回におい
21)
て,G タンパク質共役受容体で細胞内信号伝達に関与
する GPR56 遺伝子の変異が報告されている
脳室周囲異所性灰白質 Periventricular heterotopia
.多小
22)
23)
脳回の約 60% はシルビウス裂を中心として前後に病
異所性灰白質 heterotopia は,灰白質すなわち神経
変が広がっており,両側傍シルビウス裂多小脳回 Bi-
細胞(核と胞体・樹状突起)の集まりが,本来神経細
lateral perisylvian polymicrogyria とよばれ,男性患者
胞が存在しない白質または脳表・脳室に本来の灰白質
では Xq28 に連鎖していることが報告されたが,原因
と肉眼的には離れて存在する状態である.脳室周囲異
遺伝子は未同定である .裂脳症 schizencephaly は,
所性灰白質は,異所性灰白質が側脳室壁に存在し,一
当初イタリアから EMX2 遺伝子変異が報告された
部側脳室内に結節状に突出する(図 3)
.部位や程度は
が25),その後は国内の我々の解析(未報告)を含め異常
様々であり,色素失調症や伊藤白斑など神経皮膚症候
は見つからず,現在その意義は不明である.5)限局性
群や多彩な先天奇形症候群に併発する他,先天感染な
24)
皮質異形成!
片側巨脳症は,病理学的に巨細胞やバルー
どの 2 次障害でもみられる.これまでのところ,2 つの
ン細胞の出現と病変が部分的であることなど結節性硬
遺伝子が脳室周囲異所性灰白質の原因遺伝子として同
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定されている. 遺伝子同定のきっかけは, 1993 年に,
であるが,大脳皮質は肉眼的には正常に形成され,精
X 連鎖性優性遺伝,すなわち女性を介して女性のみに
神遅滞や運動障害は少なく,てんかん発作が主体であ
発症する 2 家系が日本から報告 さ れ た こ と で あ っ
り,成人でも無症状の場合がある39).また,男性致死の
た30)31).その後,同様の症例報告が相次ぎ,5 年後にア
ために患者の多くは女性であるが,男性の脳室周囲異
クチン結合タンパク質であるフィラミン A(FLNA)の
所性灰白質でも FLNA 遺伝子の変異が報告されてい
遺伝子変異によって生じることが明らかにされた32)33).
る40)∼42).このことからフィラミン A の機能欠失に対す
さらに常染色体劣性遺伝形式をとる 2 家系が報告さ
る代償作用が存在し,一部の異常細胞のみが異所性に
, ADP-ribosylation factor guanine nucleotide-
灰白質をつくると考えられ,代償機構の因子として
exchange factor-2(ARFGEF2)遺伝子の異常が同定さ
フィラミン B が候補に挙げられている43).フィラミン
れた35).
B もフィラミン A と同じくマウスでは胎生期の脳室
れ
34 )
FLNA 遺伝子はヒト染色体 Xq28 に位置する全長
帯と脳室下帯の神経細胞に発現し皮質形成に関与する
26kb の塩基配列の中に 48 個のエクソンを有し,その
が,ヒトでは FLNB 遺伝子変異による異所性灰白質の
翻訳産物は 2,647 個のアミノ酸残基によって構成され
報告はなく,4 種類の骨系統疾患(脊椎・手根足根骨症
る分子量 28 万の細長いタンパク質であり,C 末端同士
候群,常染色体優性 Larsen 症候群,骨発生不全症 I
が結合し V 字型のホモ二量体を作り,N 末端のアクチ
型,III 型)が報告されている44)45).
ン結合ドメインがアクチン分子の重合体であるアクチ
FLNA 遺伝子変異による脳室周囲異所性灰白質に
ンフィラメント(F アクチン)を架橋する.フィラミン
は,Ehlers-Danlos 病や動脈管開存症,小血管構築異常,
A は,本来マクロファージのアクチン結合タンパク質
凝 固 異 常,造 血・免 疫 異 常 が 併 発 す る こ と が あ
として発見され36),メラノサイトなど筋以外の細胞に
る32)39)46)47).重度の全身出血をきたし新生児期に死亡し
発現し,細胞骨格や運動に関係することが知られてい
たヘミ接合の男児が報告されており,血管障害による
た.移動細胞の伸展突起(先導突起)の先端部分であ
出血が男性致死の原因と推測されている33).フィラミ
る先導端(ラメリポディア葉状仮足,フィロポディア
ン A 欠失マウスでは,オスでは胎生中期に出血をきた
糸状仮足)には,アクチンフィラメントが集積し裏打
しヒト同様に致死性であり,血管内皮細胞と神経上皮
ち構造として作用しており ,フィラミン A のアクチ
細胞において細胞接着分子である カ ド ヘ リ ン cad-
ン結合部位の欠損により細胞移動が抑制される38).ま
herin の発現の低下と分布の変化を認め,中間結合 Ad-
た,フィラミン A は脳室帯から中間帯への移動過程で
herence junction の破綻が報告された48).フィラミン A
多極性から双極性へ細胞形態の変化を促すが,アクチ
欠失マウスでは異所性灰白質は認められないため単純
ン結合部位を欠損すると多極性に留まる .脳室周囲
に応用はできないが,細胞接着は細胞移動の重要な要
異所性灰白質で同定された FLNA 遺伝子変異の多く
素であり病態を考える上で興味深い.
37)
38)
はノンセンス変異やフレームシフトによるナル変異
一方,フィラミン A の N 末端から C 末端の間には
(機能喪失)
であり,細胞の基礎実験同様,
アクチンフィ
96 アミノ酸残基の繰り返しが 24 個存在し,フィラミ
ラメントの動態制御を介した神経細胞の先導突起の伸
ンリピートと名付けられている.特にフィラミンリ
展と分化に引き続く移動が制限され,分裂後も脳室帯
ピートの後半部分は 45 種類以上の様々なタンパク質
または脳室下帯に留まったと考えられる.女性は X
と結合・相互作用し,アクチンフィラメントの架橋以
染色体のランダムな不活化により,半数の細胞はヘミ
外に細胞内の信号伝達など多数の機能を持つ49).実際
接合の男性同様フィラミン A の機能を持たないはず
に,フィラミンリピート部位のミスセンス変異では,
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フィラメントの架橋状態を変化させ,最終的に細胞の
形態・運動を制御する.細胞の種類や細胞内局在の違
いによりアクチンフィラメントの働きや情報伝達のタ
ンパク質が異なっており,ミスセンス変異によるフィ
ラミンリピートのアミノ酸置換により 3 次構造や関連
タンパク質との結合に変化をきたし,多彩な表現型を
きたすと推測される.
ADP-ribosylation
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exchange factor-2(ARFGEF2)遺伝子
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ARFGEF2 遺伝子は,ヒト染色体 20q13.13 に位置
し,1785 アミノ酸残基からなるタンパク質,brefeldininhibited GEF2
(BIG2)
をコードする.BIG2 の発現は,
マウスでは大脳皮質神経細胞の産生時期に一致し,脳
室帯の神経上皮層,特に細胞内のゴルジ体に限局して
いる.BIG2 の機能は,ゴルジ体からの細胞内蛋白輸送
trafficking に関係し,β カテニンや E-cadherin などの
細胞接着分子を細胞表面の膜まで運ぶ.BIG2 は神経上
脳室周囲異所性灰白質をきたすことは少なく,表 4 に
衣細胞でフィラミン A と重複して発現し,フィラミン
示すように遺伝子変異の部位と種類により心臓,血管,
A タンパク質をゴルジ体から細胞表面へ小胞輸送す
免疫系,腸管,骨など多彩な病像を示す.アクチンフィ
る際に働くと考えられる50).ARFGEF2 遺伝子変異は
ラメントは微小管とともに細胞内の主要な構造蛋白で
まだ 2 家系 4 名(男女 2 名ずつ)
のみの報告であるが,
あり,細胞の形態・運動を制御する.フィラミン A
脳室周囲異所性灰白質とともに小頭症を呈し,重度の
はアクチンフィラメントを架橋する物理的な役割だけ
発達遅滞,てんかんなど症状は FLNA 遺伝子変異の女
でなく,細胞膜の受容体や信号伝達物質など種々のタ
性患者よりも重度である34)35)51).
ンパク質と結合し,それらの情報に基づいてアクチン
平成19年11月 1 日
1367―
(7)
A
B
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を厚脳回と呼んでいる(図 4∼8)
.一人の患者で無脳回
と厚脳回(図 5,8)
,もしくは厚脳回と皮質下異所性灰
白質(図 6)を併発することもあり,ともに顕微鏡的に
は正常な 6 層構造が失われている.LIS1 と DCX 変異
ਤ
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では,以前から指摘されていた 4 層構造(1.分子層,
2.表在細胞層,3.細胞希薄層,4.深部細胞層)を示
す.各層の細胞形態と層特異的な分子(FOXP1,TBR1)
に対する抗体を用いた免疫染色によると,分子層が
正常皮質の第 I 層に,表在細胞層が第 II,III,IV 層
に,細胞希薄層が第 V,VI 層に所見が一致し,深部細
胞層は正常皮質には認められなかった52).厚脳回と正
常脳回+皮質下異所性灰白質の併発例では,病理学的
無脳回!
厚脳回!
皮質下異所性灰白質
に深部細胞層は皮質下異所性灰白質へ移行することが
確認されており53),特に DCX 変異による 4 層構造で
無脳回!
厚脳回!
皮質下異所性灰白質は,
「滑脳症 lis-
は,LIS1 変異と異なり深部細胞層と白質との境界に異
sencephaly」
でみられる代表的な脳形成障害であり,い
所性灰白質が散在し54),深部細胞層と皮質下異所性灰
ずれも LIS1 遺伝子と DCX 遺伝子の変異により生じ
白質の間に質的な違いはないと考えられる.無脳回と
ることが判明し,移動障害の程度の差はあるものの共
厚脳回を合わせて滑脳症と呼び,脳以外の併発症の有
通の病態が明らかにされつつある.Reelin や ARX な
無 に よ り 滑 脳 症 単 独 シ ー ク エ ン ス Isolated lissen-
ど,そのほかの原因遺伝子も明らかにされ,神経細胞
cephaly sequence(ILS)とミラー・ディーカー Miller-
移動障害の研究の中心となっている.
Dieker 症候群(MDS)に分けられる.
無脳回 agyria と厚脳回 pachygyria はいずれも肉眼
的に脳回の幅(脳表に水平方向)と皮質の厚さ(脳表
滑脳症単独シークエンス Isolated lissencephaly se-
に垂直方向)が厚くなっていることが特徴である.無
quence(ILS)
脳回と厚脳回の違いは程度の差のみであり,脳葉のほ
ぼ全体で脳溝が消失し脳葉全体が一つの脳回として認
ILS は,MDS と異なり,滑脳症以外の合併奇形を伴
められる場合を無脳回とよび,脳葉に複数の脳溝を認
わない.脳回形成障害の程度は,脳溝が全く失われ,
めるが正常よりも少なく,脳回が厚くなっている場合
MRI 横断像で 8 の字形を呈する完全な無脳回(グレー
1368―
(8)
日本小児科学会雑誌 第111巻 第11号
ド 1,図 4)から全体的な厚脳回(グレード 4,図 7A)
LIS1 のノックアウトマウスと同様に大脳皮質と海馬
まで含まれる55).臨床症状として乳児期から精神運動
の形成障害と神経細胞の移動障害を呈し,14-3-3ε と
発達遅滞,てんかんを示し,特に点頭てんかんの併発
LIS1 の二重変異ヘテロ接合体では,より強い障害を認
が多い.臨床的な重症度は,脳回形成障害の程度に比
めた59).以上の知見から,MDS でみられる完全な無脳
例し,DCX 変異の男児にみられる最重度のグレード 1
回は,LIS1 と 14-3-3ε 両者の機能不全により重症化し
では,MDS と同じく生命予後も不良である.
た結果であることが明らかになった.
ILS は,LIS1 遺伝子もしくは DCX 遺伝子の変異に
LIS1 遺伝子はヒトの神経細胞移動異常症の原因遺
よって生じるが,約 3 割の症例では両者に異常を認め
伝子としてはじめて同定され,神経細胞の移動機序が
ず他の遺伝子が関与していると推測される.LIS1 変異
解明されるきっかけになった.LIS1 遺伝子はヒト染色
が確定した症例の中で,FISH により LIS1 遺伝子の欠
体 17p13.3 に位置し全長 80kb で 11 個のエクソンによ
失を認める症例は 2!
3 であり,残り 1!
3 は LIS1 遺伝
り 411 個のアミノ酸残基をコードする.LIS1 は,コウ
子内の欠失や点変異である56).LIS1 遺伝子の変異は後
ジカビ Aspergillus nidulans における核移動に必要な
頭優位に皮質形成障害をきたし(図 5)
,DCX 遺伝子変
分子の NudF とアミノ酸配列で 42% の相同 性 を 有
異では前頭優位に異常を示し(図 6)
,画像的に鑑別が
し,全有核細胞で保存されていると考えられる60).LIS1
可能である.LIS1 遺伝子のミスセンス変異は欠失に比
は全ての組織で発現しており,特に脳と心臓,骨格筋
べて軽症な表現型を呈し,厚脳回が後頭部に限局した
での発現量が多い.細胞内では LIS1 は核の周囲の微
知能正常例も存在する .
小管,特に移動方向前端側に位置する中心体(微小管
57)
形成中心 microtubule organizing center(MTOC)
)
に
Miller-Dieker 症候群(MDS)
局在している.微小管 microtubule は α と β の 2 種類
のチューブリン tubulin が規則的に共重合してできた
Miller-Dieker 症候群は,
「滑脳症」の代名詞として一
管状のタンパク質線維であり,プラス端からチューブ
般に用いられているが,遺伝的な原因が明らかになっ
リンが付加され,マイナス端から解離して,長さが調
た現在,特異顔貌と 8 の字形の完全な無脳回を呈する
節されている.微小管はアクチンとともに細胞内の主
多発奇形症候群に限って用いられることが望ましい.
要な構造タンパク質であり,有糸分裂,細胞運動,細
顔貌の特徴は,小頭,広い前額,前額正中から眉間に
胞内輸送に関わる.微小管には微小管関連タンパク質
かけての膨隆と陥凹,側頭部の陥凹,耳介低位,小さ
microtubule-associated protein(MAP)が付着し,微
く短い鼻,上向きの鼻孔,薄い口唇,小顎で,時に心
小管の安定性を制御している.LIS1 は,微小管のマイ
臓・腸管・腎臓・指趾など他の奇形を伴う.重度の精
ナス端におけるチューブリンの核形成と重合を抑制
神運動発達遅滞を呈し,筋緊張低下,難治性のてんか
し,微小管を短縮させる.その結果,微小管のプラス
ん,摂食障害の他,肺炎を繰り返し,生命予後は不良
端が存在する伸展突起の先端方向へ核が移動すると考
である.
えられていた61).その一方,マイナス端が集まる中心体
MDS は全例で LIS1 遺伝子を含む 17p13.3 領域の微
を超えて核が先行して移動する様子も観察され,異な
細欠失を伴い,LIS1 遺伝子をカバーする BAC クロー
る 仮 説 も 提 唱 さ れ て い る62).LIS1 は,NDEL1
ンをプローブに用いた染色体 fluorescence in situ hy-
(NUDEL)
,NDE1
(NUDE)
と結合し,CDK5!
CDK5R1
bridization(FISH)法による診断が可能であり,国内
(p35)によってリン酸化されるシグナル伝達経路 LIS
では保険適応されている.多発奇形を示す MDS は以
1 pathway を構成する.LIS1,NDEL1,NDE1 はダイ
前から隣接遺伝子症候群と推察されていた.シカゴ大
ニ ン と 結 合・相 互 作 用 す る こ と が 報 告 さ れ て い
学では 17p13.3 領域を欠失する MDS,ILS および非
る63)∼65).鉄道に例えれば,微小管はレールとして作用
脳奇形患者において,LIS1 遺伝子の前後の領域をカ
し,微小管依存性モータータンパク質のダイニンが機
バーする多数のプローブを用いて FISH 法による欠失
関車として,リン酸化という石炭によって機関士の
範囲の解析を行い,MDS の責任領域を明らかにした.
LIS1 などに制御されながら,貨物の核を進行方向のマ
MDS では LIS1 遺伝子の欠失とともに,ILS とは異な
イナス端に運んでいるのかもしれない.LIS1 の RNA
り 14-3-3ε(YWHAE)と CRK の両遺伝子の欠失を認め
干渉による観察では,細胞移動以外にも脳室帯での核
た .14-3-3ε 遺伝子は,LIS1 遺伝子と同じく 17p13.3
の上下移動の阻害による細胞分裂の抑制,多極細胞か
に位置し,14-3-3ε タンパク質は,LIS1 のリン酸化シグ
ら双極細胞への移行停滞による移動開始の遅滞,軸索
ナル経路を構成し,CDK5!
CDK5R1 によってリン酸化
の変形と伸展速度の低下を認め,多様な影響を及ぼし
された NDEL1 に結合し,NDEL1 のリン酸化状態を維
ている66).LIS1 は血小板活性化因子アセチルヒドロ
持!
制御する.また,14-3-3ε のノックアウトマウスは,
ラーゼアイソフォーム Ib(PAFAH1B)のサブユニッ
58)
平成19年11月 1 日
1369―
(9)
トでもあるが,神経細胞の移動との関係は未だ不明で
る75).一方,RNA 干渉を利用し DCX の発現を胎生期に
ある .
抑制すると,脳室帯から皮質への神経細胞の放射状移
67)
動 radial migration が阻害され,ヒトと同様にラット
D C X
では皮質下に帯状の異所性灰白質が形成される76).こ
の異所性灰白質には RNA 干渉が導入されなかった正
DCX 遺伝子はヒト染色体 Xq22.3-q23 に位置し,全
常な神経細胞も含まれており,これまで考えられてい
長 100kb のなかに 9 つのエクソンを有するが,実際に
た DCX 変異の直接的な影響(細胞自律性)のみでは説
アミノ酸配列をコードするのは 6 つであり,360 アミ
明できない.ヒト SBH 患者でも functional MRI を用
ノ酸残基からなる doublecortin(DCX)タンパク質を
いた研究により異所性灰白質の神経細胞も皮質とネッ
産生する.DCX は微小管関連タンパク質であり,核周
トワークを形成し,正常機能に関与していることが明
囲と中心体の他に,LIS1 と異なり,移動神経細胞の先
らかにされている77).
導突起内の微小管にも強く局在し,微小管の形成を促
進し,安定させ,束状化させる68).DCX も CDK5 によっ
小脳低形成を伴う滑脳症 Lissencephaly with cere-
てリン酸化され,微小管への親和性と微小管形成促進
bellar hypoplasia(LCH)
DCX の過剰発現による変異 LIS1
効果を低下させる69).
の代償作用も示され,DCX と LIS1 の相互作用が明ら
滑脳症の病変は通常大脳皮質に認められるが,小脳
かになった .DCX のミスセンス変異は微小管結合ド
の低形成を伴う場合があり,形態と臨床症状により現
メインに集中しており,DCX 変異による神経細胞移動
在 a∼f の 6 つに分類されている78)79).前頭優位ながら
障害は LIS1 同様に微小管を介していると考えられる.
も大脳皮質全体が厚脳回を呈し,小脳の広汎かつ著明
63)
DCX 変異がヘミ接合体の男性では前頭優位の滑脳症
(無脳回または厚脳回)をきたし,ヘテロ接合体の女性
な低形成を伴うタイプ b(図 7A,B.)で,RELN 遺伝
子と VLDLR 遺伝子の変異がみつかっている80)81).
では皮質下帯状異所性灰白質 subcortical band heteroRELN,VLDLR
topia(SBH)を呈する.
皮質下帯状異所性灰白質 subcortical band heterotopia(SBH)
RELN 遺伝子はヒト染色体 7q22 に位置す る 全 長
400kb 以上の塩基配列に 65 個のエクソンを有し,分子
量 38.8 万の巨大なタンパク質「リーリン reelin」をコー
SBH は二重皮質症候群 Double cortex syndrome と
ドしている80).リーリンは,大脳では基底核原基から辺
同義で,表層の大脳皮質と側脳室の間の白質内に,帯
縁帯に移動したカハール・レチウス(Cajal-Retzius)細
状の異所性灰白質を認める(図 6)
.症状は,てんかん
胞によって分泌され,放射状グリアに沿って移動する
が最も多く,精神遅滞も約 7 割の患者で認める.運動
神経細胞の放射状グリアからの離脱を促進すると考え
障害を伴うことは少ない.重症度は,厚脳回など脳形
られているが,まだ正確には解明されていない82)∼84).
成障害の程度に比例する.孤発例が多いが,MDS と異
リーリンが遺伝的に欠損しているリーラーマウスでは
なり家族例もまれではなく,遺伝相談が重要である.
脳室帯から移動した細胞が preplate の間に割って入
症例の約 90% は女性であり,孤発女性例の 85% は
ることができずに,分裂・移動した細胞順に脳表から
DCX 遺伝子の変異が原因である
.DCX 遺伝子の変
70)
71)
脳室に向かって配置され,層構 造 が 逆 転 し て い る
異が体細胞モザイクの場合, 男性でも SBH を示す72).
(outside-in)
.また,小脳のプルキンエ細胞は深部に集
一部の男性では DCX のミスセンス変異によって SBH
塊を作り小葉構造が失われている.もう一つの原因遺
を生じるが,その場合母が保因者であっても画像上の
伝子であ る VLDLR(very low density lipoprotein re-
異常を示さない場合があるので遺伝相談の際には注意
ceptor)遺伝子は,ヒト染色体 9p24 に位置し,全長約
が必要である .また LIS1 遺伝子のミスセンス変異で
40kb で 19 個のエクソンによって構成される.VLDLR
も皮質下異所性灰白質をきたすことがある74).女性の
すなわち超低密度リポタンパク質受容体は骨格筋,心
X 染色体は,どちらか片方が細胞毎にランダムに不活
筋,腎臓,脳に多く発現し,リーリンの 4 つの受容体
73)
化されている.SBH は,野生型の DCX を発現した神経
のうちの一つでもある.VLDLR とリーリンの別な受
細胞が正常に皮質に移動し,変異型 DCX の発現細胞
容体である ApoER2 の二重欠損マウスでは,リーラー
が白質内にとどまり異所性灰白質を形成すると考えら
マウスと同様の脳奇形をきたし,リーリンからの信号
れていた.しかし,DCX のノックアウトマウスは海馬
を細胞内の DAB1 へ伝える85).DAB1 は,小脳失調をき
の構築異常を示すのみで,新皮質の構造は正常であ
たす突然変異モデルマウスのスクランブラー scram-
1370―
(10)
日本小児科学会雑誌 第111巻 第11号
bler とヨタリ yotari の責任遺伝子であり,両者ともや
なっている54)91)101).また ARX 遺伝子のポリアラニン伸
はりリーラーマウスと同様の大脳皮質の層構造逆転や
長変異は脊髄小脳変性症などでみられるポリグルタミ
小脳形成異常をきたすことが明らかにされている
.
86)
87)
ン病と同じく凝集体を形成し細胞死を誘導する102).私
たちは最近,乳児早期から短い強直発作を主体とし
外性器異常を伴う X 連鎖性滑脳症 X-linked lissen-
suppression-burst とよばれる脳波を特徴とする大田
cephaly with abnormal genitalia(XLAG)
原症候群103)104)も ARX 遺伝子変異によって生じること
を明らかにした105).XLAG と大田原症候群や点頭てん
外性器異常を伴う X 連鎖性滑脳症 XLAG は,ヒト
かんでみられる高いてんかん原性は,GABA の活性低
で接線移動の障害が明らかにされた初めての疾患であ
下が原因と考えられ,共通の病態として「介在ニュー
る55).小陰茎,停留睾丸,尿道下裂など外性器低形成を
ロン病 interneuronopathy」の概念を提唱した89)98)105).
きたし,ときに女児と間違われることもあるが,男児
ARX 以外にも LIS1 や DCX が介在ニューロンの移動
(46,
XY)のみに認められる88).前頭が厚脳回,後頭が
にも関与することが報告され注目されている106)∼108).
無脳回(Grade 3:約 70%)の後頭優位の滑脳症と脳梁
欠損に加え,基底核の囊胞・断片化・低形成をほとん
結
語
どの症例で認める(図 8)
.症状は非常に重篤で,全例
が生後 24 時間以内にミオクローヌスを主とする難治
脳の発生について主に神経細胞の移動機序と,移動
性のけいれん発作を起こし,最重度の発達障害(脳性
に関与する分子の遺伝子変異によって起きる脳形成障
麻痺・精神遅滞・球麻痺)をきたすほか,低体温,慢
害―滑脳症と異所性灰白質―について述べた.大脳の
性難治性の下痢,代謝性アシドーシスを併発し,約半
発達は,ヒトの進化と密接に関係し,今まさに科学の
数は生後 1 年以内に死亡する .
もっとも関心を呼んでいる分野である.本稿で述べた
89)
ことは国内または国外でも日本人によって成し遂げら
A R X
れたことが多い.若手の小児科医にも興味を持ってい
ただければ幸いである.神経細胞の移動障害による滑
XLAG の原因遺伝子の ARX はヒト染色体 Xp22.1
脳症などの脳形成障害を診療する機会は一般には少な
に位置し,全長 12.5kb に 5 つのエクソンでコードされ
いかもしれないが,発達の基盤となる脳の発生を知る
た 562 個のアミノ酸残基を産生する.ARX は,ホメオ
ことは,ヒト自体を知ることでもある.ARX 遺伝子の
ドメインを有する転写因子で,主に胎児期の前脳と精
研究により,形態異常と機能異常との境界はなくなり,
巣,膵臓に発現し,DLX 遺伝子によって制御され,下
発生異常が必ずしもマクロの形態異常をきたすとは限
流遺伝子の転写を抑制する90)∼93).遺伝型と表現型との
らないことが明らかになった.最近では小脳低形成を
間には強い相関があり,
ARX 遺伝子のノンセンス変異
伴う滑脳症の原因遺伝子である RELN と自閉症や統
やフレームシフト変異による機能喪失変異は XLAG
合失調症との関連性についても注目されている.今後
の他,水無脳症や脳梁欠損など脳奇形を生じ,女性保
さらに脳の発生,とりわけ脳の機能局在・領域化につ
因者の約半数は脳梁欠損を示す .一方,ARX 遺伝子
いての研究が進み,自閉症や学習障害・注意欠陥多動
のポリアラニン配列の伸長変異は転写の抑制を強める
障害など臨床への展開を期待したい.
88)
機能獲得変異であり ,精神遅滞やウエスト症候群な
なお神経細胞移動障害の家族の情報交換として「滑
どのてんかん,ジストニア型脳性麻痺など非奇形群の
脳症親の会」が組織されており,様々な活動を行って
原因となる94)∼99).ミスセンス変異の位置を比較すると
いる.
90)
XLAG ではホメオボックス内に多いが,非奇形群はホ
メオボックス外に多い88).
参考図書
「小児神経画像診断」秀潤社 2008 年 4 月刊行予定
介在ニューロン病 interneuronopathy
ARX は 基 底 核 原 基 に 強 く 発 現 し γ ア ミ ノ 酪 酸
(GABA)作動性介在ニューロン GABAergic interneuron の産生・移動・分化に関与する91)100).ARX 欠損マ
ウスと XLAG 患者の双方の脳で大脳皮質から介在
ニューロンと考えられる非錐体細胞が消失しグルタミ
ン酸を神経伝達物質とする興奮性の錐体細胞優位に
文
献
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