4 集客交流施設、MICE関連産業 Ⅲ-4 集客交流施設、MICE関連産業 1 集客交流施設 遊園地・テーマパークは過去最高の集客 三世代、体験、外国人旅行者がキーワード 表Ⅲ-4-1-1 遊園地・テーマパークの売上高などの推移 売上高 (百万円) 前年度比(%) 入場者数 (人) 前年度比(%) 従業者数 (人) 前年度比(%) 2009年度 437,316 △ 5.1 66,593,043 △ 5.0 33,545 △ 4.7 2010年度 444,287 1.6 67,174,455 0.9 33,479 △ 0.2 2011年度 458,713 3.2 66,924,043 △ 0.4 34,181 2.1 2012年度 505,649 10.2 72,150,405 7.8 34,659 1.4 2013年度 589,305 16.5 76,315,825 5.8 35,895 3.6 資料:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」 旅行年報 2014 99 観光産業 (2)遊園地・テーマパークの動向 ●積極的な投資が続く 前年度に続き、13年度も多くの遊園地・テーマパークで積 極的な投資が展開された。遊園地では、13年7月に富士急ハ イランド(山梨県富士吉田市)で、入園口に位置する入場無料 ゾーンに「リサとガズパール」の絵本の舞台となるパリの街並 みを再現したテーマパークがオープンした。また、14年3月に は東武動物公園(埼玉県宮代町)で、街をテーマとしたアトラ クションエリア「ハートフルタウン」がオープンした。 テーマパークでは、 「アンパンマン」をテーマとしたミュージ アム「神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール」 (兵庫県 神戸市)が13年4月にオープン、13年5月には東京ディズニーラ ンド(千葉県浦安市)で、映画「スターウォーズ」をモチーフと 第Ⅲ編 (1)遊園地・テーマパークの売上高、入場者数などの推移 ●売上高、入場者数とも過去最高 13年度の遊園地・テーマパークの売上高は5,893億500万円 (前年度比16.5%増) 、入場者数は7,632万人(前年度比5.8% 増)であり、2000年の調査開始以降最も多かった。また、従 業者数は35,895人(前年度比3.6%増)と前年度を上回った (表Ⅲ-4-1-1) 。主要施設の入場者数も多くの施設で前年度か ら増加した(表Ⅲ-4-1-2) 。この好調の背景には、景気の緩や かな回復を背景とした旅行機会の増加や、韓国など近場の 海外旅行をしていた人の国内旅行へのシフト、円高の是正に よる外国人旅行者の増加などの好環境に加え、アトラクション の拡充など積極的な投資やイルミネーションなど各種イベント 展開が進められたことがあると考えられる。 した新アトラクション「スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・ コンティニュー」がオープンした。また、13年7月にはユニバー サル・スタジオ・ジャパン(大阪府大阪市)で、日本で唯一の 「4KHD×3D」アクションとして「アメージング・アドベンチャー・ オブ・スパイダーマン・ザ・ライド」のリニューアルが、サンリオ ピューロランド(東京都多摩市)で、営業面積の5分の1の規模 に当たる大規模リニューアルがそれぞれ行われた。 ●主要テーマパークの動向 <東京ディズニーリゾート> 13年度は東京ディズニーランド開業30周年に当たる年で、 記念の大型パレードや3Dアトラクションの刷新などが人気を 集め、入場者数は3,130万人と初めて3,000万人を突破した。 また、30周年関連商品売れ行きの好調などにより入場者単 価も11,076円と前年度比4.5%増となった。東京ディズニーリ ゾートを運営する株式会社オリエンタルランドは、13年度の売 上高が4,735億円(前年度比19.7%増) 、営業利益が1,144億円 (前年度比40.5%増)となり、6期連続で最高益を更新した。 14年度は、5月に新しいナイトエンターテインメント「ワンス・ アポン・ア・タイム」をスタートするなどの動きはあるものの、 株式会社オリエンタルランドは、開業30周年の翌年であること から、売上高4,176億円、営業利益831億円と減収減益、入園 者数も2,800万人と減少を見込んでいる。 <ユニバーサル・スタジオ・ジャパン> 13年度は8月から連続5カ月間100万人以上の月間入場者 数を記録、また13年11月から14年2月まで連続4カ月間、当該 月の最高入場者記録を塗り替えるなど、好調な集客で推移 した。その結果、開業初年度(2001年度)以来の年間入場者 数1,000万人突破となる1,060万人となった。ユニバーサル・ス タジオ・ジャパンでは、2年ほど前から新エリアのオープン、人 気アトラクションの刷新、季節イベントの規模拡大などの取り 組みを進めており、家族客や女性客などが増加していること が好調な集客につながったと考えられる。 表Ⅲ-4-1-2 主要施設の入場者数の推移 施設名 (単位:万人) 開業年 09年度 10年度 11年度 12年度 13年度 第Ⅲ編 観光産業 東京ディズニーリゾート (千葉県浦安市) 1983 2,582 2,537 2,535 2,750 3,130 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪府大阪市) 2001 800 816 880 975 1,050 ハウステンボス(長崎県佐世保市) 1992 141 174 180 192 248 ナガシマリゾート (三重県桑名市) 1964 528 637 619 623 620 鈴鹿サーキット (三重県鈴鹿市) 1962 202 196 195 198 197 富士急ハイランド(山梨県富士吉田市) 1969 195 186 189 196 216 よみうりランド(東京都稲城市) 1964 73 95 102 122 123 沖縄美ら海水族館(沖縄県本部町) 1979 280 284 264 277 304 海遊館(大阪府大阪市) 1990 221 231 225 218 242 東京都恩賜上野動物園(東京都台東区) 1882 303 268 471 383 349 名古屋市東山動植物園(愛知県名古屋市) 1937 228 218 203 208 223 旭川市旭山動物園(北海道旭川市) 1967 246 206 172 163 165 東京ドームシティ アトラクションズ(東京都文京区) 2003 576 605 204 429 501 資料:新聞・雑誌記事および聴き取り調査により(公財)日本交通公社作成 14年度に入っても、4月に「ウィザーディング・ワールド・オブ・ ハリー・ポッター」のシンボルである壮大なホグワーツ城を初 お披露目するとともに、オープン日を7月15日と発表するなど 大型投資による新エリア開業を進めており、13年度を上回る 集客も期待される。 <ハウステンボス> 13年度の入場者数は247万人で前年度比5.6%増となった。 13年9月期(12年10月-13年9月)の売上高が216億円(前年同 期比29.6%増) 、営業利益が48億円(前年同期比100.0%増) 、 また、14年9月期中間決算(13年10月-14年3月)の売上高が 148億円(前年同期比35.2%増) 、営業利益が51億円(85.3% 増)と好調な業績で推移している。 好調の要因としては、新アトラクションとして、地上5階建て (高さ13m) 、延べ床面積900㎡の迷路型アトラクション「The Maze」や、廃病院をテーマとしたホスピタルホラー「監禁病 棟」 、森の中に子ども向けの遊具を配置した「メルヘン不思議 の森」 、光のスケートリンク「リンクファンタジア」をオープンさ せたことや、 「100万本のバラ祭」 「水の王国」 「世界花火師競 技会」 「九州一花火大会」 、イルミネーション展開1,000万球超 の「光の王国」 「チューリップ祭」など、イベントの拡充により 年間を通した集客力を高めたことが考えられる。 (3)大規模商業施設の動向 ●三世代、体験をキーワードとした展開 団塊世代の多くが65歳となり完全退職を迎えていること による三世代での外出の増加、他施設やインターネット通販な 100 どの競合との差別化、モノへの消費からコトへの消費への価 値観のシフトなどを背景として、三世代や体験をキーワードと した施設の新設などの動きが見られた。 セガは横浜市のみなとみらいエリアに13年6月にオープンし た、三世代をターゲットとした商業施設「MARK IS みなと みらい」内に、英BBCの自然番組の世界を体感できる施設 「Orbi Yokohama(オービィ横浜) 」を開業した。地球上のさ まざまなシーンを舞台にしたエンターテインメントエキシビショ ンゾーンや、オリジナルストーリーが上映されるスペシャルシア ターなどがあり、大人も楽しめる施設となっている。 イオンモール株式会社は千葉市の幕張エリアに大型ショッピ ングセンター「イオンモール幕張新都心」を13年12月にオープ ンした。体験型の施設としては、ナムコと東映が共同で出店 した、歴代の東映特撮ヒーローの世界観の中で各種体験がで きる「東映ヒーローワールド」 、警察署や銀行、航空会社など 約30種類の仕事を子どもたちが体験できる「カンドゥー」があ る。カンドゥーは中心のレストラン席を囲むように体験施設が 作られており、付き添いの親や祖父母がレストランでゆったり くつろげることが特徴となっている。 ●増加する外国人旅行者の取り込み 13年度は訪日外国人旅行者が初めて1,000万人を超え、外 国人旅行者の消費も拡大した。大規模商業施設でもこうし た需要を取り込む動きが見られた。 13年4月に千葉県酒々井町にオープンした「酒々井プレミア ム・アウトレット」は、成田国際空港から車で10分ほどの場所 にあることから、外国人旅行者の来場を狙い、空港との間を 4 集客交流施設、MICE関連産業 結ぶ路線バスや外貨両替所も整備された(15年春までに店舗 面積を約6割増床する予定) 。 14年3月、東京の日本橋エリアにオープンした「COREDO 室町2」 「COREDO室町3」は、開業2週間の来場者数が130万 人を超えるなど想定を超える好調ぶりを見せた。同施設は グローバル対応にも着手し、先行してオープンしていた 「COREDO室町」の地下1階では「日本橋案内所」を増床オー プンし外国人コンシェルジュによるインフォメーションやガイド ツアーサービスを開始した。また、COREDO室町3の3階には 和のレンタルスペース「橋楽亭/囲庵」を設け、来街者や外国 人が茶道や着物などの伝統芸能を気軽に体験できる機会を 提供している。 13年6月に閉店した松坂屋銀座店の跡地には、売り場面積 約46,000㎡の商業施設や文化・交流施設「観世能楽堂」など で構成される、銀座エリア最大級となる大規模複合施設が整 備されることが14年4月発表された(16年11月開業予定) 。同 施設でも外国人旅行者の取り込みのため、1階に観光バスな どの乗降スペースを新設する他、外国語に対応した観光案内 所が設けられる予定となっている。 (守屋邦彦) 表Ⅲ-4-1-3 2013年1月以降にオープンあるいはリニューアルなどを行った主な集客交流施設 施設名 所在地 整備主体 事業費 (約) 開設 施設内容 2011.9~ 2013.3 11年度より、開村以来、最大規模となるリニューアルを継続的に実施。 13年3月16日にはその第4弾として、屋内型体験アトラクション「忍者 修行道場」をオープン。入場者数の増加を見込んで、受付業務の強化 と年間パスポートの販売開始を決定。 2013.4 ショップ&レストラン、産官学集積拠点「ナレッジキャピタル」や「イン ターコンチネンタルホテル大阪」が開業。 また地上48階建て分譲住宅 のオーナーズタワー、約10,000㎡の憩い空間「うめきた広場」も併設。 事業主は、NTT都市開発(株)、 (株)大林組、オリックス不動産(株)、関 電不動産(株)、新日鉄興和不動産(株)、積水ハウス(株)、 (株)竹中工 務店、東京建物(株)、日本土地建物(株)、阪急電鉄(株)、三井住友信 託銀行(株)、三菱地所(株)の計12社。 2013.7 オープン以来の大規模リニューアルで、営業面積の5分の1の規模に 当たる約4,000㎡の規模で展開し、四つのアトラクションと一つのレス トランから構成される。 「世界で一番サンリオな場所」をテーマにキャ ラクターの世界観をより立体的に表現。 22億円 2013.9 「黄色いビル」の再開発事業として、3階に屋内型スポーツコンプレッ クス「スポドリ!」が2013年9月、6階に宇宙をテーマにしたエンターテ インメント・ミュージアム「TeNQ(テンキュー)」が2014年7月に開業し た。 「TeNQ(テンキュー)」は、 これまで同エリアに欠けていた“文化教 養要素”を持つ参加体験型のミュージアムで、シアターやサイエンス・ ラボ、イベントスペース、 ショップなどで構成。 あべのハルカス 近畿日本鉄道(株)、 大阪府 (株)近鉄ホテルシス 1300億円 大阪市 テムズ、 (株)近鉄百 貨店 2014.3 高さ日本一となる300mの超高層複合ビル(地下5階地上60階建て)。 展望台「ハルカス300」 「大阪マリオット都ホテル」、オフィス、美術館、 「あべのハルカス近鉄本店」などの都市機能が集積した立体都市。 鶴岡市立加茂水族館 山形県 (一財)鶴岡市開発 鶴岡市 公社 2014.6 新水族館へリニューアル。地上3階建てで延べ床面積約4,000㎡。世界 最大級の直径5mの円形水槽を設置し、1万匹のクラゲを展示する。 リ ニューアルに当たり、新水族館の愛称を募集。 「クラゲドリーム館」に 決まった。 東京都 (株)歌舞伎座 中央区 松竹(株) 180億円 東映太秦映画村 (リニューアル) 京都府 (株)東映京都 京都市 スタジオ 30億円 サンリオピューロランド 「サンリオタウン」 東京ドームシティ内 「黄色いビル」 大阪府 大阪市 NTT都市開発(株) 他計12社 東京都 (株)サンリオ 多摩市 エンターテイメント 東京都 (株)東京ドーム 文京区 ※事業費が確認できるもののみ。およそ15億円以上を対象。 6000億円 15億円 30億円 資料:新聞・雑誌記事をもとに(公財)日本交通公社作成 旅行年報 2014 101 観光産業 グランフロント大阪 第Ⅲ編 2013.2 今回のリニューアルで第5期を迎える歌舞伎座は、最新の舞台装置や バリアフリー対応はもちろん、日本初となる字幕ガイドサービスも開 始。併設された「歌舞伎座タワー」には、歌舞伎についての展示や発信 を行う 「歌舞伎座ギャラリー」や「屋上庭園」などもある。 歌舞伎座 (リニューアル) 2 MICE関連産業 MICE各分野で前年を上回る開催実績 国は日本再興戦略にMICEを位置づけ、積極的に推進 各都市でもMICE施設整備や推進体制強化が活発化 * MICE:企業などの会議(Meeting) 、企業などの行う報奨・研修旅行(Incentive Travel) 、国際機関・団体・学会などが行う会議(Convention) 、展示会・ 見本市/イベント(Exhibition/Event)の頭文字。概念としては外国人参 加者の有無を問わない。 第Ⅲ編 観光産業 (1)MICEの現況 ①ミーティング(M) 、インセンティブ(I)の現況 ミーティング、インセンティブ分野は、統計データも未整備で あり各分野の全体的な現況把握は困難である。しかし海外 から日本を訪れるインセンティブ分野については、日本政府 観光局(JNTO)各現地事務所が把握している情報に限定さ れるものの、主要な市場に関する動向が毎月「市場動向ト ピックス」として発表されているため、この内容を基に、主要 な市場別の日本へのインセンティブ旅行の現況を整理する。 <東南アジア> 日本へのインセンティブ旅行が最も活発な地域はタイ、マ レーシア、インドネシアといった東南アジアであった。 タイのインセンティブ旅行は一般の旅行シーズンである10月 に入る前の9月に催行されることが多いが、13年は9月、10月 とも日本へのインセンティブ旅行が好調であった。9月は60人 以上のツアーが8団体あり、東京や京都を回るゴールデンルー トが5本、北海道が2本、沖縄が1本催行された。業種は、電気 メーカー2社、化学メーカー2社、その他教育関係、タイヤメー カー、広告関係、空調設備がそれぞれ1社ずつであった。また、 大学関係のインセンティブ旅行や政府関係(特に県単位)のイ ンセンティブ旅行も多くなってきており、政府関係のインセン ティブ旅行は、日本のごみ処理場、リサイクルなど環境関連施 設、さらに行政の町おこし視察の人気が高くなってきている。 10月は50人以上のツアーが13団体で、行き先としては、東京、 箱根、日光、富士方面が多く、業種は、食品会社、自動車関連 会社など多様であった。昨年は、冬のシーズンのインセンティ ブ旅行も好調であり、14年3月に催行された60人以上の日本 へのインセンティブ旅行は22団体(約2,000人)で、うち9団体 は100人以上の規模で、業種は保険、製薬、化粧品、銀行、タ イヤメーカーなど多岐にわたった。訪問先は北海道の人気が 高く、22団体のうち10団体が北海道行きのツアーであった。 マレーシアは13年5月に総選挙が実施された影響で、5月、6 月のインセンティブ旅行は停滞したものの、7月の訪日ビザ (査証)免除を契機に、経済市況が堅調なことも後押ししてイ ンセンティブ旅行が好調となった。9月、10月もインセンティブ 旅行の需要は拡大し、前年同期比で取り扱いが2倍に増加し た大手旅行会社も見られた。 インドネシアは、例年10月が訪日旅行のオフシーズンであり、 これを好機に日系企業だけでなく、インドネシアの現地の銀 行やメーカーなどが日本へのインセンティブ旅行を催行した。 訪問先の多くはゴールデンルート、および北海道であった。ま た、11月22日~12月1日に東京ビッグサイトで開催された「東 102 京モーターショー2013」に合わせて、インドネシアに進出して いる日系自動車メーカーなどが、インドネシア各地のディーラー を対象としたインセンティブ旅行を実施した。訪問地は東京 ビッグサイト~富士五湖周辺、東京ビッグサイト~ゴールデン ルートなどが中心であった。また、航空券やツアーのプロモー ション料金が設定されやすい冬のシーズンである14年2月に は、日系企業のみならず、インドネシアの現地の金融系企業に おいても、20~30人規模の訪日インセンティブ旅行が活発で あった。 <東アジア> 中国からのインセンティブ旅行は、広東省の大手旅行会社5 社が取り扱った人数ベースで、13年3月~5月は毎月200人前 後であったものが、6月には350人以上と大きく増加、更に7 月には700人、8月には500人と好調に推移し、日本へのインセ ンティブ旅行の回復傾向がうかがえた。訪問先も北海道や和 歌山など、多様化している。また、台湾からは13年4月に 2,000人規模のインセンティブ旅行が催行された。 <欧州> 14年5月、スペインの大手保険会社「Catalana Occidente」 社の大型インセンティブ旅行(約600人)がチャーター機で来 日した。これは東日本大震災後の欧州からのインセンティブ 旅行としては最大のものであった。一行は京都に2泊、東京 に3泊の5泊6日の日程で滞在し、寺社仏閣を中心とした日本 の伝統文化を堪能できる観光地を巡るツアーの他、国立京都 国際会館での表彰式、八芳園での夕食パーティーを行った。 ②コンベンション(C)の現況 コンベンション分野は、国際会議〔日本政府観光局(JNTO) の選定基準に準ずる〕の統計データが整備されているため、 このデータを基に現況を整理する〔国内会議(外国人参加者 数が基準に満たない会議等)の統計データは未整備〕 。 ●国際会議の開催件数、参加者数の状況 12年に我が国で開催された国際会議(13年数値は未発表) の件数は2,337件(前年比23.5%、445件増) 、参加者総数は 1,472,069人(前年比37.6%、402,563人増)となった。参加者 数の内訳は、国内参加者が1,315,155人(全体の89.3%) 、外国 人参加者が156,914人(同10.7%)であり、外国人参加者の構 成比が昨年より2.1ポイント上昇した。11年は3月に発生した 東日本大震災の影響で1,892件と2,000件を下回ったが、12年 表Ⅲ-4-2-1 国際会議の開催件数・参加者数の推移 参加者数(人) 開催 件数 (件) 総数 うち国内 2008年 2,094 1,072,163 961,311 89.7 110,852 10.3 2009年 2,122 1,252,545 1,143,616 91.3 108,929 8.7 2010年 2,159 1,130,631 985,663 87.2 144,968 12.8 2011年 1,892 1,069,506 977,713 91.4 91,793 8.6 2012年 2,337 1,472,069 1,315,155 89.3 156,914 10.7 うち 構成比(%) 外国人 構成比(%) 資料:日本政府観光局(JNTO) 「国際会議統計」 4 集客交流施設、MICE関連産業 は震災前を上回る件数、参加者数となったことから、前年比 も大きく上昇した(表Ⅲ-4-2-1) 。 月別では、9~11月の秋のシーズンでの開催が多く、この3カ 月で件数ベースでは41.9%、参加者数ベースでは44.7%を占 表Ⅲ-4-2-2 月別の国際会議開催件数・参加者数(2012年) 件数 参加者数 前年差 (件) 構成比 (人) (%) (ポイント) 構成比 前年差 (%) (ポイント) 1月 82 3.5 △ 2.1 44,768 3.0 △ 1.4 2月 154 6.6 △ 0.3 61,458 4.2 △ 0.7 3月 173 7.4 0.7 86,362 5.9 2.9 4月 116 5.0 3.3 123,578 8.4 6.2 5月 172 7.4 2.1 140,569 9.5 △ 1.3 210 9.0 0.5 149,455 10.2 1.1 171 7.3 △ 0.1 82,449 5.6 △ 4.2 8月 136 5.8 0.8 56,070 3.8 △ 2.7 9月 264 11.3 △ 1.6 182,303 12.4 △ 3.5 10月 356 15.2 1.4 271,166 18.4 3.2 11月 360 15.4 △ 2.1 204,483 13.9 0.8 △ 2.6 69,408 4.7 △ 0.4 1,472,069 100.0 12月 143 6.1 合計 2,337 100.0 資料:日本政府観光局(JNTO) 「国際会議統計」 観光産業 表Ⅲ-4-2-3 分野別・規模別の国際会議開催件数 (分野別) (規模別) 2012年 件数(件) 2012年 構成比(%) 前年差(ポイント) 件数(件) 政治・経済・法律 245 10.5 1.9 科学・技術・自然 1,015 43.4 △ 4.1 医学 495 21.2 0.0 産業 111 4.7 1.8 芸術・文化・教育 220 9.4 △ 2.1 400~499人 社会 150 6.4 2.8 500~999人 運輸・観光 10 0.4 △ 0.2 1,000~1,999人 136 社交・親善 26 1.1 0.1 2 0.1 △ 0.3 宗教 スポーツ 9 0.4 △ 0.1 54 2.3 0.1 2,337 100.0 その他 合計 構成比(%) 前年差(ポイント) 100人未満 601 25.7 △ 0.7 100~199人 655 28.0 △ 0.4 200~299人 285 12.2 0.1 300~399人 182 7.8 0.6 88 3.8 △ 0.1 223 9.5 0.5 5.8 △ 0.5 167 7.1 0.3 2,337 100.0 2,000人以上 合計 資料:日本政府観光局(JNTO) 「国際会議統計」 表Ⅲ-4-2-4 都市別の国際会議開催件数 2011年 2012年 順位(件数) 都市 件数(件) 参加者数(人) 順位(件数) 都市 件数(件) 参加者数(人) 1 東京(23区) 470 251,460 1 東京(23区) 500 214,425 2 福岡市 221 89,018 2 福岡市 252 171,049 3 横浜市 169 159,582 3 京都市 196 114,257 4 京都市 137 84,391 4 横浜市 191 225,951 5 名古屋市 112 111,682 5 大阪市 140 96,544 6 神戸市 83 42,472 6 名古屋市 126 126,500 7 札幌市 73 49,771 7 千里地区 113 20,896 8 大阪市 72 56,015 8 神戸市 92 124,681 9 千里地区 54 14,689 9 仙台市 81 32,406 つくば地区 46 13,478 10 札幌市 61 61,675 10 (注)つくば地区:茨城県つくば市、土浦市 千里地区:大阪府豊中市、吹田市、茨木市、高槻市、箕面市 第Ⅲ編 6月 7月 めている。最も多かった月は、件数では11月(360件、全体の 15.4%) 、参加者数では10月(271,166人、同18.4%)であった (表Ⅲ-4-2-2) 。 ●分野別・規模別の国際会議開催状況 分野別では、 「科学・技術・自然」が1,015件と他の分野と 比較し非常に多く、全体の43.4%を占める。以下「医学」 (495 件、全体の21.2%) 、 「政治・経済・法律」 (245件、同10.5%) と続く。構成比の前年比較では、大きく増加したのは「社会」 (2.8ポイント増) 、 「政治・経済・法律」 (1.9ポイント増) 、 「産業」 (1.8ポイント増) 、一方、減少が大きかったのは「科学・技術・ 自然」 (4.1ポイント減) 、 「芸術・文化・教育」 (2.1ポイント減) であった(表Ⅲ-4-2-3) 。規模別では、 「100~199人」が最も 多く655件、次いで「100人未満」が601件であり、これら200 人未満の規模の国際会議が全体の53.7%を占める(表Ⅲ-42-3) 。 ●都市別の国際会議開催状況 都市別では、開催件数は東京(23区)が500件で最も多く、 以下、福岡市252件、京都市196件と続く。上位2都市に順位 の変動はなかったが、京都市は昨年4位から一つ順位を上げ、 昨年3位の横浜市を上回った。しかし参加者数では横浜市が 資料:日本政府観光局(JNTO) 「国際会議統計」 旅行年報 2014 103 した。東日本大震災の影響を受けた11年の233件からこの2 年で100件以上の増加となっている。 都市別に見ると、13年にアジア・大洋州で最も国際会議が 開催された都市はシンガポールで175件(世界第6位)であっ た。アジア・大洋州のトップ10に入ったのは東京のみであり、 79件(アジア・大洋州第7位、世界第26位)であった(表Ⅲ-42-6) 。東京は、東日本大震災の影響を受けた2011年の50件か らは着実に開催件数を増やしているが、シンガポールやソウ ル、北京といったアジア・大洋州の他都市とはまだ差がある (表Ⅲ-4-2-6) 。一方で、国としての開催件数では日本はアジ ア・大洋州で1位であることから、国際会議を開催できる施 設・体制などを備えた都市が多く存在することが我が国の特 長の一つとなっているといえよう。 第Ⅲ編 225,951人で最も多く、件数で1位の東京(23区)を上回った。 以下、東京(23区)の214,425人、福岡市の171,049人と続く (表Ⅲ-4-2-4) 。 ●会場別の国際会議開催状況 会場別では、開催件数はパシフィコ横浜が84件で最も多く、 次いで大阪大学が82件であった。11年は1位であった九州大 学(福岡市)は3位の80件であった。参加者数でもパシフィコ 横浜が185,518人と昨年に続き最も多く、以下、福岡国際会 議場の101,976人、国立京都国際会館の84,755人と続く。件 数では上位11会場(10位が2会場)のうち大学が七つを占め たが、参加者数の上位10会場は会議場施設が九つとなった (表Ⅲ-4-2-5) 。 ●国際的に見た日本のコンベンションの開催状況 ICCA( 国 際 会 議 協 会:International Congress and Convention Association)が発表した、13年に世界で開催さ れた国際会議数の統計によれば、世界全体の開催数11,685 件のうち、日本での開催数は342件と、アジア・大洋州では2 年連続1位となり、世界での順位も昨年の8位から7位に上昇 ③エキシビション(E)の現況 ●展示会の開催件数・出展者数・出展小間数・来場者数の状況 13年に我が国で開催された展示会の件数は655件(前年比 7.4%、45件増)であった。また、出展者数95,574社(前年比 表Ⅲ-4-2-5 会場別の国際会議開催件数、参加者数 (件数) (参加者数) 観光産業 2011年 順位 2012年 件数 順位 (件) 会場 2011年 件数 (件) 会場 順位 2012年 参加者 順位 数(人) 会場 会場 参加者 数(人) 1 九州大学 118 1 パシフィコ横浜 84 1 パシフィコ横浜 143,497 1 パシフィコ横浜 185,518 2 パシフィコ横浜 69 2 大阪大学 82 2 名古屋国際会議場 88,284 2 福岡国際会議場 101,976 3 京都大学 47 3 九州大学 80 3 国立京都国際会館 62,369 3 国立京都国際会館 84,755 4 東京大学 46 4 京都大学 65 4 福岡国際会議場 52,857 4 神戸ポートピアホテル 80,339 5 北海道大学 43 5 東京国際フォーラム 53 5 東京ビッグサイト 46,449 5 大阪国際会議場 68,962 6 名古屋大学 41 6 名古屋大学 52 6 大阪国際会議場 40,011 6 神戸国際会議場 65,473 7 国際連合大学 40 7 国立京都国際会館 47 7 京王プラザホテル 29,932 7 幕張メッセ 56,262 8 国立京都国際会館 40 8 国際連合大学 46 8 幕張メッセ 24,989 8 東京国際フォーラム 41,100 神戸国際会議場 22,499 9 東京ビッグサイト 39,945 神戸ポートピアホテル 21,634 10 名古屋国際会議場 28,546 9 10 大阪大学 34 9 つくば国際会議場 32 10 つくば国際会議場 41 9 東京大学 37 10 東北大学 37 資料:両表とも日本政府観光局(JNTO) 「国際会議統計」 表Ⅲ-4-2-6 アジア・大洋州の都市別国際会議開催件数(順位上位の都市) 2011年 104 2012年 順位 都市名 件数(件) 世界順位 1 シンガポール 142 5 2 北京 111 3 ソウル 99 都市名 2013年 件数(件) 世界順位 都市名 件数(件) 世界順位 シンガポール 150 6 シンガポール 175 6 10 北京 109 13 ソウル 125 9 13 バンコク 105 16 北京 105 18 4 台北 83 20 ソウル 100 17 バンコク 93 20 5 クアラルンプール 78 21 香港 96 23 シドニー 93 20 6 香港 77 22 シドニー 86 24 香港 89 23 7 上海 72 24 台北 80 26 東京 79 26 8 バンコク 70 26 クアラルンプール 69 31 台北 78 28 9 メルボルン 62 31 東京 69 31 上海 72 29 10 シドニー 57 34 上海 64 35 クアラルンプール 68 33 11 東京 50 41 資料:日本政府観光局(JNTO)発表資料およびICCA発表資料 4 集客交流施設、MICE関連産業 の902,800人であった。次いで来場者数が多かった「第8回大 阪モーターショー」 (会場:インテックス大阪)の304,319人とは 約60万人の差があり、東京で2年に1度開催されるモーター ショーがB to Cの展示会としていかに集客力を持っている かが分かる。また、最も出展者数が多かったのは「FOODEX JAPAN2013(第38回国際食品・飲料展) 」 (会場:幕張メッ セ)の2,544社・団体であった。なお、出展者数が2,000社・団 体を超えた展示会は同展示会および「第76回東京インターナ ショナル・ギフト・ショー秋2013」 「第75回東京インターナショ ナル・ギフト・ショー春2013」 (会場:ともに東京ビッグサイト) の三つのみであり、この状況は昨年、一昨年と同様である。 ●第三者認証を取得した展示会 日本では、12年度から「展示会統計に係る第三者認証制 度」が導入されている。本制度は、展示会の「来場者数」また は「来場数」 「出展数」 、および「出展面積」について、展示会 統計に係る認証制度のガイドラインで定めた定義と指標に基 づき、展示会統計情報に利用可能な展示会として認証する 表Ⅲ-4-2-7 展示会の開催件数・参加者数の推移 前年比(%) 出展者数 (社) 前年比(%) 出展小間数 (小間) 前年比(%) 来場者数 (人) 前年比(%) 2011年 573 △ 6.2 88,469 △ 18.4 135,165 △ 2.4 14,295,977 △ 4.9 2012年 610 6.5 89,476 1.1 133,834 △ 1.0 14,157,197 △ 1.0 2013年 655 7.4 95,574 6.8 136,563 2.0 15,319,246 8.2 観光産業 開催件数 (件) 資料: (株)ピーオーピー「展示会データベース」 「展示会とMICE」 (注)調査基準 ①主催事務局への電話調査もしくはHPによる実数把握が可能なもの ※小間数は非公開のものを除く ②商談性の高い展示会 ③一般来場者をターゲットにするイベントにおいても事務局が出展者への営業活動を展開しているもの ④関係者のみの来場者のため数値を公表しない展示会でも聞き取りが可能なもの ⑤企業単独のプライベートショーは除く 表Ⅲ-4-2-8 月別の展示会開催件数・出展者数・出展小間数・来場者数(2013年) 件数 (件) 構成比 前年差 (%) (ポイント) 出展者数 (社) 出展 小間数 構成比 前年差 (%) (ポイント) (小間) 構成比 前年差 (%) (ポイント) 来場者数 (人) 構成比 前年差 (%) (ポイント) 1月 53 8.1 2.5 6,065 6.3 1.2 8,013 5.9 1.7 1,352,389 8.8 △ 3.5 2月 62 9.5 △ 1.3 9,381 9.8 △ 1.9 13,373 9.8 △ 4.1 1,625,877 10.6 △ 1.8 3月 46 7.0 0.3 6,640 6.9 △ 1.4 14,445 10.6 0.6 1,413,081 9.2 0.3 4月 55 8.4 △ 0.5 5,591 5.8 △ 0.2 7,928 5.8 0.6 1,684,316 11.0 2.7 5月 78 11.9 3.9 10,631 11.1 3.0 12,976 9.5 1.9 1,836,483 12.0 4.0 6月 59 9.0 △ 1.8 7,692 8.0 △ 1.9 9,106 6.7 △ 3.3 860,636 5.6 △ 4.1 7月 51 7.8 △ 0.6 7,621 8.0 △ 0.1 9,281 6.8 3.6 801,367 5.2 △ 0.3 8月 25 3.8 △ 0.5 4,127 4.3 0.3 5,988 4.4 △ 0.8 444,900 2.9 △ 0.1 9月 63 9.6 0.3 8,188 8.6 0.1 10,906 8.0 △ 2.7 1,334,321 8.7 △ 0.6 10月 103 15.7 3.7 12,629 13.2 1.9 19,422 14.2 2.9 1,743,562 11.4 1.5 11月 43 6.6 △ 5.5 14,542 15.2 △ 0.2 18,798 13.8 △ 0.2 1,426,955 9.3 0.1 12月 17 2.6 △ 0.5 2,467 2.6 △ 1.1 6,327 4.6 0.0 795,359 5.2 1.7 合計 655 100.0 - 95,574 100.0 136,563 100.0 15,319,246 100.0 (注)構成比は四捨五入により合計100%にならない場合がある - - - 資料: (株)ピーオーピー「展示会データベース」 「展示会とMICE」 旅行年報 2014 第Ⅲ編 6.8%、6,098社増) 、出展小間数136,563小間(前年比2.0%、 2,729小間増) 、来場者数15,319,246人(前年比8.2%、1,162,049 人増)と、全ての項目で前年を上回った(表Ⅲ-4-2-7) 。 月別に見ると、件数では10月が103件(全体の15.7%)で最 も多く、次いで5月(78件、同11.9%)が多い。出展者数は11 月が14,542社(同15.2%)で最も多く、件数が多い10月、5月 を上回っている。出展小間数は10月が19,422小間(同14.2%) で最も多く、11月(18,798小間、同13.8%) 、3月(14,445小間、 同10.6%)と続く。 来場者は5月が1,836,483人で最も多いが、6~8月および12 月以外は各月とも100万人を超えている。これは本統計が商 談性の高い展示会、すなわちビジネスパーソンの来場者が多 い展示会を対象としていることが理由と考えられる(表Ⅲ -4-2-8) 。 ●13年に開催された主な展示会 13年に開催された展示会で最も来場者数が多かったのは 「第43回東京モーターショー2013」 (会場:東京ビッグサイト) 105 ものである。13年に認証された展示会は9件で、14年6月末現 在では合計19件の展示会が認証を取得している(表Ⅲ-4-29) 。なお、同制度は14年6月にUFI(国際見本市連盟:Union des Foires Internationales)により、UFIが定義しているグ ローバルスタンダードを満たしている制度であると承認された。 表Ⅲ-4-2-9 これまでに認証された展示会一覧 展示会名称(略称) 主催者 第Ⅲ編 観光産業 1 第22回ファインテックジャパン リードエグジビションジャパン(株) 2 Bio tech 2012 リードエグジビションジャパン(株) 3 第9回国際フラワーEXPO 第6回国際ガーデンEXPO リードエグジビションジャパン(株) 4 危機管理産業展2012 5 Japan IT Week 秋 2012 リードエグジビションジャパン(株) 6 コールセンター/CRM デモ& コンファレンス2012in東京 UBMジャパン(株) 7 nano tech 2013 8 スマートエネルギーWeek2013 リードエグジビションジャパン(株) 9 Japan IT Week 春 2013 リードエグジビションジャパン(株) 10 日本ものづくりワールド2013 リードエグジビションジャパン(株) 11 危機管理産業展2013 12 Japan IT Week 秋 2013 リードエグジビションジャパン(株) 13 コールセンター/CRM デモ& コンファレンス2013in東京 UBMジャパン(株) 14 ネプコンジャパン2014 リードエグジビションジャパン(株) 15 ネット&モバイル通販 ソリューションフェア2014in東京 UBMジャパン(株) 16 ENEX2014 Smart Energy Japan 2014 (一財)省エネルギーセンター (株)ICSコンベンションデザイン 17 nano tech 2014 (株)ICSコンベンションデザイン 18 スマートエネルギーWeek2014 リードエグジビションジャパン(株) 19 Japan IT Week 春 2014 リードエグジビションジャパン(株) (株)東京ビッグサイト (株)ICSコンベンションデザイン (株)東京ビッグサイト 資料:日本展示会認証協議会ホームページ(14年6月末現在) (2)MICEを巡る動き ①国の動き ●日本再興戦略にMICEを位置づけ 13年6月に閣議決定された「日本再興戦略」において、 MICEは多くの人や優れた知見、投資を日本に呼び込む重要 なツールと位置づけられるとともに、 「2030年にはアジア NO.1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という 目標が掲げられた。取り組み内容は、有識者やMICE関係者 からなる「MICE国際競争力強化委員会」で12年11月より議 論が始められ、13年6月に取りまとめられた提言を受けたも のとなっており、グローバルMICE戦略都市の育成、MICEア ンバサダープログラムの導入、ユニークベニュー開発や利用促 進などが挙げられた。 ●グローバルMICE戦略都市の選定 観光庁は13年6月、我が国のMICE誘致を先導し、誘致能 力・体制・受け入れ環境において世界トップレベルのMICE 都市を育成するため、東京、横浜、京都、神戸、福岡の5都市 106 をグローバルMICE戦略都市に、大阪および名古屋を同強化 都市に指定した。指定した都市に対しては、海外アドバイザー 派遣なども通じて、マーケティング能力向上の支援を行った。 なお、14年は支援を深化させるとともに、2年間の事業の成 果と評価を踏まえ、支援対象都市の絞り込みや入れ替えの実 施を検討するとしている。 ●ユニークベニューの利用促進 日本には、会議・レセプション会場として利用することで 特別感や地域特性を演出できる歴史的建造物や文化施設な ど(ユニークベニュー)が多く存在するものの、その利用開放 が進んでいなかったことから、施設関係者、利用事業者、自 治体、政府の関係省庁をメンバーとした「ユニークベニュー利 用促進協議会」が13年8月に立ち上げられた。協議会では課 題や対策について議論されるとともに、会合自体の東京国立 博物館での開催や、協議会の議論を踏まえた、ユニークベ ニューのケーススタディーや貸し出しまでのステップなどを示 した「ユニークベニューHANDBOOK 博物館・美術館編」の 作成などが取り組まれた。また、三菱一号館美術館を舞台と したイベント、文化学園服飾博物館での展示解説と講演会、 国立新美術館のエントランスロビーでのファッションショーなど が、協議会での検討の一環として行われた。 ●MICEアンバサダーによる誘致活動 13年12月、観光庁長官により医学系の大学教授などの有 識者8人に対してMICEアンバサダーへの委嘱が行われた。国 内外で影響力の強い研究者や産業界のリーダーがMICEアン バサダーに就任することで、そのネットワークや影響力を生か した、MICE開催の意義に関する普及・啓発、MICE開催地 としての日本のPR、日本への国際会議などの誘致・開催の 促進などが期待されている。なお、観光庁では14年度、さら に産業界や女性を含むキーパーソンを委嘱し、プログラムの拡 充を図ることとしている。 ●「展示会」が日本標準産業分類に例示掲載 国の経済構造や各種経済指標の基準改定の基礎資料を提 供することを目的に作成されている日本標準産業分類が、13 年10月25日付で改訂(14年4月1日施行)された。この改訂の 際に、 「展示会(見本市を含む)の企画・運営業」が、大分類 R-サービス業(他に分類されないもの)/中分類92-その 他の事業サービス業/929-他に分類されない事業サービス 業/9299-他に分類されないその他の事業サービス業、に例 示記載されることとなった。これまで展示会は産業としての 位置づけが不明確であったが、今回の例示記載により、展示 会の企画・運営業が一つの業種として客観的に認められた こととなった。 ●展示会産業の概要を学べる教材の作成 経済産業省は、展示会産業に関する専門知識を持たない 教育者・研究者でも、一定水準の包括的かつ実践的な教育 が可能となる教材開発のための調査を実施し、その成果をテ キスト「展示会産業概論」として14年3月に取りまとめた。こ のテキストは、展示会産業を初めて学ぶ学生や、この産業に 初めて携わる社会人を主な対象とした「展示会産業の入門 書」として位置づけられるものであり、4月には日本展示会 4 集客交流施設、MICE関連産業 協会の人材育成セミナーで同テキストを活用した研修が実施 された。 ●「展示会産業議員連盟」が設立 14年3月、日本の展示会産業の競争力を強化し、その発展 を図り、日本の貿易振興と経済の発展に尽くすことを目的と して、自由民主党内に「展示会産業議員連盟」が設立された。 議員連盟では今後、展示会関係者や自治体などからのヒアリ ング、展示会の視察なども行いながら、具体的な成果を上げ るべく活発な議論を重ねることとしている。 旅行年報 2014 107 観光産業 ③各都市での動き ●MICE施設整備の検討、具体化が活発化 国のMICE推進の方針を受けるように、各都市でもMICE に関する取り組みが進められている。特に首都圏および九 州・沖縄でのMICE施設の整備に向けた検討あるいは具体 化が活発化しており、その主な動きは以下の通りである。 東京都では、東京ビッグサイトの拡張計画の具体化に向け て、14年度に拡張規模や具体的な機能を盛り込んだ基本計 画が策定される予定。拡張施設は20年の東京オリンピック・パ ラリンピックで国際メディアセンターとして利用された後、 MICE施設として活用される予定となっている。また、横浜 市ではパシフィコ横浜の改修工事、および多目的ホール1万㎡、 会議室6,500㎡の新たなMICE施設の整備が隣接地で計画さ れており、13年には事業性や採算性の検討が進められた。14 年度にPFI(民間資金を活用した社会資本整備)手続きなど が進められる予定で、20年の東京オリンピック・パラリンピック までに整備予定となっている。 福岡市では、14年3月議会で、博多港沿いのコンベンション 地域にPFIを念頭に約5,000㎡の新たな展示場整備を進める ことが報告された。長崎市では、5,000人収容のホールを備え るMICE施設をJR長崎駅西側に19年の開館を目指し整備す る方針が13年12月に公表された。しかし市議会から市民な どへの説明が不十分との意見もあり、14年6月現在、具体的 な整備の動きにはまだ至っていない。熊本市では、市中心部 第Ⅲ編 ②業界(企業)の動き ●国際会議の誘致決定相次ぐ 日本側主催者がJNTOはじめ国や各都市のコンベンション 推進機関などの支援を受け、13年度上半期(4~9月)に誘 致に成功した国際会議は41件、総参加予定者数43,948人と なり、昨年度同時期実績の23件、17,418人を大きく上回っ た。開催都市は東京、京都、神戸などの主要都市の他、岡山、 紀伊白浜、松江など地方都市を含め多岐にわたるものと なっている。 また、20年のオリンピック・パラリンピックの東京開催決定以 降、国際水協会世界会議(東京開催、6,000名参加予定) 、国 際栄養学会議(東京開催、4,500名参加予定) 、世界神経学会 議(京都開催、7,000名参加予定)といった大型会議の誘致決 定も相次いだ。 ●MICEに関する商談会を含めた大規模国際観光イベント の開催 14年9月に開催予定の国内最大のインバウンド商談会 「VISIT JAPANトラベルマート2014」に、MICE専用コーナー として「VISIT JAPAN MICEマート2014」を設置し、インセ ンティブ旅行を中心としたMICEに関する商談が拡大される こととなった。さらに両トラベルマートを「ツーリズムEXPO ジャパン2014」 〔これまで開催されてきた二つのイベント(国 内観光博覧会「旅フェア日本」主催: (公社)日本観光振興協 会、国際博覧会「JATA旅博」主催: (一社)日本旅行業協会) を統合したもの〕と同時開催することで、世界最大級の旅の 総合イベントとして実施する予定である。前夜祭は東京国立 博物館を舞台に、日本の文化や食、祭りの体験の他、日本の さまざまな美術品を鑑賞できるようにする予定であり、事務 局は来場者を世界第1位のITBベルリン(来場者数17万4千 人)に次ぐ15万人を予定している。 ●PCOによる誘致支援の活発化 日本でのMICE開催需要の高まりを受け、会議運営の専門 企業であるPCO(Professional Congress Organizer)によ る、学術団体や自治体の誘致支援、コンサルティング事業が積 極的に展開されている。例えば、日本コンベンションサービス (株)は、学術団体や自治体向けのプレゼン・資料作成などの ノウハウを伝授する誘致支援事業の強化や、同業の世界大手 であるMCIグループ(本社:スイス)と連携した海外での誘 致活動のサポートを行っている。13年9月に京都招致が決まっ た「世界神経学会議」 (17年開催)では、日本神経学会や京都 市のウィーンでのPRやロビー活動の支援を行った。また、 (株) ICSコンベンションデザインは、ICN2021日本誘致委員会や東 京都、 (公財)東京観光財団が行ってきた「国際栄養学会議」 (21年の東京開催が9月に決定)の誘致活動を支援した。 ●PCO直営のMICE施設がオープン 13年5月、PCO大手の株式会社コングレが、JR大阪駅北口 の商業施設「グランフロント大阪」内に、直営施設「コングレコ ンベンションセンター」を開設した。同社の直営施設は12年に 東京都中野区に開設した「コングレスクエア」に続いて2カ所 目である。同センターは60~600人まで対応可能な計九つの 会議室、および最大1,750人収容可能な約1,700㎡のホール(2 分割、3分割可能)で構成され、国際会議や学術会議、展示 会、レセプションなどに利用可能となっている。 ●日本経済団体連合会が大規模MICE施設の開発に関す る提言を公表 13年6月、一般社団法人日本経済団体連合会は「新たな成 長を実現する大規模MICE施設開発に向けて~国際競争力 と情報発信力の強化、観光立国の実現のために~」を公表し た。提言では、MICEの重要性と国際競争の激化、日本の相 対的地域の低下を指摘した上で、新たな成長に向けたMICE 戦略の策定と、戦略を体現するフラッグシップ型の大規模 MICE施設を整備することを求めている。フラッグシップ型と は、世界最大級の国際会議、国際見本市を誘致可能な世界 最先端のMICE施設を指し、30万㎡の屋内展示場、5万㎡の 会議施設の他、ホテル、物販・飲食施設、シアター・各種遊戯 施設で構成され、空港から30分以内で都市鉄道・地下鉄駅 から直結した立地が想定されている。 第Ⅲ編 観光産業 再開発の目玉事業として、最大3,000人収容のホールや約 1,700㎡の展示スペースを持つ施設の計画案が13年11月に公 表された。14年6月には事業費抑制などを目的に施設規模や 仕様の見直し案が市議会で報告されるなど、整備の具体化 に向けた検討が進められている。 沖縄県では最大2万人規模の大型MICE施設の整備検討 が進められており、これを受けて県内各地で施設誘致の動き が見られた。具体的には、宜野湾市では施設誘致に向け「宜 野湾市MICE施設建設誘致推進協議会」が14年2月に発足、 豊見城市では誘致推進総決起大会が14年3月に開催、糸満 市では市民大会が14年3月開催。浦添市では市長が県を14年 1月訪問、与那原町では大型MICE施設の誘致実行委員会が 13年12月立ち上げ、那覇市では市長が副知事を訪問し、米軍 那覇軍港を共同使用する形での建設が14年2月要請された。 ●MICE推進のための体制強化も活発化 施設整備だけでなく、MICE推進の中心的組織の強化や地 域全体での連携体制の強化の動きが見られた。 中心的組織の強化の主な動きとしては、 (公財)東京観光 財団は14年4月、国際会議の誘致に取り組む海外主要都市の 連携組織である「ベストシティーズ・グローバルアライアンス」に 国内で初めて加盟した。加盟都市はベルリン、ケープタウン、シ カゴ、コペンハーゲン、ドバイ、エジンバラ、ヒューストン、メルボ ルン、シンガポール、バンクーバーで東京が11都市目となる。 これにより加盟する世界各都市のノウハウや誘致に関する情 報の共有などが期待される。また福岡市では、市の外郭団体 である(公財)福岡観光コンベンションビューロー内に、市場 調査から営業、誘致後の活動支援までを一体的に行う官民 一体の専門部署「Meeting Place Fukuoka」を14年4月から 設置した。 地域全体での連携体制の強化の主な動きとしては、大阪 観光局は、13年5月に、ホテルや鉄道、空港、飲食業者など MICE事業者の連合体「大阪MICEビジネス・アライアンス」を 組織、山梨県の外郭団体「 (公社)やまなし観光推進機構」 は、13年12月、誘致体制を整えるための「MICE推進協議会」 を立ち上げ、大分県は13年1月、官民一体で誘致する組織 「大分県MICE誘致推進協議会」を設立といった動きが見ら れた。 (3)IRを巡る動き 13年12月、超党派の「国際観光産業振興議員連盟(カジノ 議連) 」により取りまとめられた、カジノを中心とした統合型 リゾート(Integrated Resort :IR)推進法案「特定複合観光 施設区域の整備の推進に関する法律案」が衆議院に提出さ れた。IRとはホテルやテーマパーク、劇場、ショッピング・グル メモール、MICE施設などにカジノを含んだ複合施設のことで あり、法案ではIRを設置することができる区域(=特定複合 観光施設区域)を国が地方公共団体の申請に基づき認定す ることや、IRの設置および運営は民間事業者によって行われ ること、国や地方公共団体がカジノ施設の設置および運営を する者から納付金を徴収することができることなどが示さ れている。 14年の通常国会で審議入りしたものの、採決は見送られ 継続審議となっており、14年6月に閣議決定された日本再興 戦略(改訂2014)では、 「統合型リゾート(IR)については、観 光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待される。 他方、その前提となる犯罪防止・治安維持、青少年の健全育 成、依存症防止などの観点から問題を生じさせないための制 度上の措置の検討も必要なことから、IR推進法案の状況や IRに関する国民的な議論を踏まえ、関係省庁において検討 を進める」とされた。 各都市でもIR誘致に関する動きが活発化している。主な 動きとしては、北海道では釧路、小樽、苫小牧が誘致に名乗 りを上げており、道庁を中心に北海道にふさわしいカジノの あり方が検討されている。首都圏では、千葉で幕張沖に人工 浮島「メガフロート」を整備する提案を柱とする試案が作成さ れ、東京ではお台場でのIR構想の提案がなされている。横浜 でもIR誘致に関する研究に着手されている。大阪では、市内 臨海部の人工島「夢州」への立地を軸に誘致を目指す方針が 定められ、長崎では県による政府の予算編成に向けた要望策 の中で、ハウステンボスを有力候補地とした県内誘致が新規 施策として示された。また、沖縄では13年12月に県知事が首 相にIRの候補地として沖縄を入れることを要請、14年度には 基本構想を策定することとしている。 また、外資系のIRリゾート運営企業が日本進出に意欲を見 せたり、大手広告代理店主催のIR整備に関するセミナーなど が各地で開催されたりなど、企業側の動きも活発になって いる。 (守屋邦彦) 108
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