排泄のメカニズムを知ろう!

排 泄に関する基礎知識 1
排泄のメカニズムを知ろう!
vol.01
介護のはじまりは、排泄ケアのはじまりです。戸惑ったり焦ったりおむつを手にする前に、ちょっとひと息。人のからだ
の「排泄」のメカニズムについて、確認してみましょう。
尿と便の排泄メカニズム
からだの中にたまった不要な老廃物を、おしっこや便としてからだの外に出すことを「排泄」といいます。排泄の介護
を必要としている人は、毎日普通にしているはずの排泄行動で、どこかがうまくいかなくなっている、と考えられま
す。排泄でのトラブルは、デリケートな問題でありその人の自尊心を脅かす事態です。排泄ケアは介護される側のそ
うした気持ちをくみ、
「どこがうまくいかなくなっているか?」を知ることから始まります。
尿意のメカニズム
最初の尿 意はこうして起こる!
尿は、腎臓でろ過された、からだの老廃物や余分な水分。これを一旦ためておくのが膀胱で、150ml ∼
200ml の尿がたまると膀胱壁が圧力による刺激を受けて、脊髄から排尿中枢を通って脳に信号が送られて、
「おしっこをしたい」と感じます。これが最初の尿意です。
尿 が 出るまで
尿意を感じてもすぐにトイレに行けない場合には、大脳がはたらき尿意をコントロールすることができます。
膀胱内の尿は 1 時間あたり 60mL ∼ 120ml 程度と少しずつ増えていきますが、しばらくは余裕をもって膀胱
が膨らみます。個人差はありますが、一般的には、
尿量が 300ml ∼ 500mL を超えるようになるとがまんが
できなくなり、トイレに行って「おしっこをしても大丈夫!」と膀胱反射中枢に命令が出され、膀胱がしぼむと
ともに尿道がゆるんで尿が出ます。
尿をコントロールする機 能
尿のコントロールには、2 つの膀胱の機能が重要です。
①膀胱内にある程度の尿量まで状況に応じてためておく機能
②条件が整ったときに尿をスムーズに排出する機能
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便意のメカニズム
便は、消化によって分解された食物の残り(食物繊維など)、新陳代謝によってはがれた腸内細胞、大腸菌な
どの腸内細菌、腸内分泌液、からだにたまっていた老廃物からできています。
大腸を経て直腸に便が到達すると、直腸壁がそれを感知して骨盤神経から脊髄、さらに大脳に信号が伝わっ
て、
「便をしたい」と感じます。これが便意です。
反射的に直腸が活動して、内肛門括約筋がゆるむだけでは排便につながりません。かがんだりいきんだり、意
図的に排便する動作に入ることで外肛門括約筋もゆるみ、おなかの筋肉や横隔膜が収縮して腹圧が高まり、
便が排出されます。
排泄を困難にする原因はさまざまです。複数の原因が重なることもあります。
尿の問題
自分の意思とは関係なくもれてしまう尿失禁以外に、排尿機能障害によるさまざまな症状があります。
尿 失 禁 のタイプ
● 切迫性尿失禁 強い尿意切迫感、膀胱収縮によりこらえきれずもらしてしまう
● 腹圧性尿失禁 咳やくしゃみ、重いものを持ち上げた時など、腹圧によるもれ
● 機能性尿失禁 運動機能の障害、認知症でトイレが間に合わない、わからない
● 溢流性尿失禁 尿閉状態で尿があふれる。排出障害が基礎疾患にある
排 尿 機 能の 障 害
● 蓄尿障害 がまんできずにもれる(過活動膀胱、膀胱弾力性の低下など)
● 排出障害 出し切れないでもれる(尿道がゆるくなる尿道括約筋不全など)
● 下部尿路系障害以外の尿もれ 運動機能障害や認知症が原因
[男性の場合]
男女 で 違うおしっこの問 題
[女性の場合]
男性は尿道が長く、女性にない臓器「前立腺」がありま
女性は尿道が短く、尿道を囲む筋肉が、出
す。これが加齢によって大きくなって尿道を圧迫すると、
産や加齢によってゆるみやすくなります。膀
尿が出にくくなったり頻尿になったり場合があります。こ
胱が下がって尿道を締める力が弱まると、
れを「前立腺肥大症」といいます。
尿がもれやすくなるのです。
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便の問題
便がスムーズに出ない便秘と、便をためておく機能と便を出す機能がうまく働かず、便意をがまんできずに無意識の
うちに便がもれてしまう便失禁があります。
便 秘 の 種 類と原 因
● 機能的便秘
腸のはたらきに問題がある
● 弛緩性便秘
大腸の便を送り出す力の低下による
● 直腸性便秘
直腸のはたらきに問題がある
● けいれん性便秘
大腸のけいれんや緊張による
便 失 禁 の原 因
● 寝たきりになり排便するための姿勢がとれず強度の便秘による
● 薬の副作用、下剤の乱用による
● 脳卒中、脊髄神経の損傷など、神経系の障害による
● 運動機能の障害、認知症など、機能的な障害による
尿意、便意は、排泄行動の最初のシグナル。本人が「気づかないうちにモレる」というのは、このシグナル機能がうまく
いかなくなるからなのです。
また、尿意や便意のシグナルがあっても、トイレに行く、下衣を下げる、座る、拭く、下衣を上げるという一連の行動•
動作がうまくいかないということもあります。排泄状況と合わせて、
「ADL(日常生活能力)」について把握しておくこ
とは大切なポイントです。さらに、排泄しやすい住居やトイレの環境、着脱しやすい衣服などについても、心にとめて
おきましょう。
排泄状況と日常生活能力について、うまくいっている部分とうまくいっていない部分を確認して、介護される方に最
もふさわしいおむつを選んでください。
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