数物 - 金沢大学 理学部

金沢大学 理工学域 数物科学類 コース紹介
金沢大学へようこそ。この冊子では皆さんに、数物科学類の3コ
ースのうち、数学コースの内容を紹介します。
数物科学類には、数学コース、計算科学コース、物理学コース、の3つのコース(専
門領域)があります。入学試験や基礎教育は数物科学類として合同で実施され、入学者
は2年もしくは3年進級時にコースを選択します。
数物科学類においては、各コースに人数の上限を設けていませんので、全員が希望
するコースに進むことができます。
以下では、数学コースについて、分野の紹介や就職の話などをしたいと思います。
少しでも、皆さんに数学の魅力が伝われば幸いです。
目次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
数学とはどのような学問か
分野紹介 代数学
分野紹介 幾何学
分野紹介 解析学
卒業後の進路・就職実績
終わりに
おまけ
1.数学とはどのような学問か
証明の大切さ
皆さんは、中学や高校で数学を学んできて、数学というものに対してどのような印象
を持ったでしょうか?
何となく苦手だと思った人、面白いと思った人、人によって
様々な感じ方があると思います。数学と他の教科の大きな違いは、数学には「証明」が
あるという点です。この「証明」に親しめるかどうかが、数学に親しめるかどうかの分
かれ目になっているような気がします。
古代エジプト人は、畑を直角に区割りするのに、一辺の長さが
3:4:5の三角形を用いたそうです。実生活に役立てるためだ
けならば、その三角形で直角が得られれば十分です。しかしつく
づく考えてみれば、その三角形が直角三角形になるというのは不
思議なことです。これを不思議に思う人が誰もいなかったら、数学の発展は無かった
かもしれません。
おそらく好奇心の旺盛な人たちが色々と三角形を作ってみたのでしょう。A2+B2=C2
を満たす三角形が直角三角形になるということが発見されました。しかし事実に気付い
ただけでは全てを理解したとは言えないのです。もしかしたら、A2+B2=C2 を満たすよ
うな三角形で直角三角形でないものがあるかもしれないし、A2+B2=C2 を満たさないよ
うな直角三角形があるかもしれないからです。最終的に、三平方の定理が証明されて、
万人の納得する答えが得られました。このように、真実を完全に確かめるには証明とい
うものは無くてはならないものなのです。
皆さんが古代エジプト人だとしたらどう感じるか、想像してみてください。実際の役
に立てばそれでいいと思うでしょうか?
足でしょうか?
例を見つけて何となく法則性がわかれば満
それとも真実を完全に理解したいと思うでしょうか?
数学という学問の位置づけ
現実の世界には完全な直角三角形というものは存在しません。紙に鉛筆で書けば線に
は太さがありますし、定規で測って直角を描いても誤差が生じます。しかし、頭の中で
完全な直角三角形を考えることはできます。頭の中で完全な直角三角形を考えた時点で、
現実の世界から離れ、抽象化した思考を行っていることになります。
世の中のほとんどの学問は、研究されるべき対象が存在してはじめて意味を持ちます。
例えば、私たちの住む世界が存在するから物理学があり、物質が存在するから化学があ
り、宇宙が存在するから天文学があり、地球が存在するから地学があり、生物が存在す
るから生物学があり、人間が存在するから歴史学や文学や経済学があるわけです。
しかし数学は、自然現象や社会現象とは関係なく普遍的なものです。もちろん数学と
自然科学には密接な関係がありますが、数学自身は抽象的なものであり、仮に、私たち
の住んでいる宇宙とは別の宇宙があったとしても、その宇宙においても数学は同じよう
に成立すると考えられます(例えば、どんな世界のどの時代においても、円周率は同じ
値ですし、17は素数です)。そのような意味で、数学は世界のあらゆるものに先んじ
て存在する根本原理であると言えます。
ピタゴラス派の学者は「万物は数である」と言いました。数学を学び理解するという
ことは、まさしく森羅万象を理解することに繋がるのです。数学は世界の共通語とも言
われる理由でもあります(宇宙の共通語であると言っても良いでしょう)。
数学には様々な分野がありますが、次節以降で、数学の代表的な分野である、代数学、
幾何学、解析学についてトピックをいくつか紹介します。紹介だけで詳しい説明は省き
ますが、興味のある方は各自、本やネットなどで調べるなり、金沢大学に入学して勉強
するなりして下さい。
2.分野紹介
代数学
代数学というのは、数や数式などの構造について研究する分野です。数にも色々あり
ますが、整数の性質について研究する整数論も代数学に含まれます。ここでは、素数に
ついてのある性質、音楽に関係する数学、定規とコンパスによる作図問題、について紹
介します。
素数についてのある性質
1とその数自身以外に正の約数を持たない整数を素数といいます。素数を小さい順に
並べると、2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、…、となり、
素数が無限に存在することは良く知られています。素数には色々と面白い性質があるの
ですが、例えば次のような事実があります。
「4で割って1余る素数は、a2+b2 の形で書ける(a と b は正の整数)
。
しかもこの表し方は一通りだけである(a と b の入れ替えを除く)
」
例えば、5=12+22、13=22+32、17=12+42、29=22+52、37=12+62、41=42+52、…、と実
際に a2+b2 の形で書けていますし、確かにその表し方は一通りしかありません。実はこ
の事実の背景には整数論の基礎理論が存在します。
音楽に関係する数学
音楽において1オクターブには半音が 12 個あります。実はこの 12 という数には数
学的な理由があります。具体的には、log 3 / log 2=1.5849625…を分数で良く近似した
ときの分母が 1 オクターブの半音の数として適当な数になります(理由はここでは述べ
ません)。これには連分数およびディオファントス近似という理論が関係しており、そ
れらの理論を用いて log 3 / log 2 の近似分数を求めると、分母の小さいものから、3/2、
8/5、19/12、84/53、…、となり、1 オクターブ中の音の数としては、2、5、12、53、
…、が適当であるという結果が得られます。1 オクターブに音が 2 つしかないような音
階は音楽として体を為しませんが、5 平均律はインドネシアなどの民族音楽に見られる
ようです。ある程度以上の表現力と演奏のし易さで 12 音が主流になったものと思われ
ます。
定規とコンパスによる作図問題
昔から知られている問題として、定規とコンパスだけを有限回使って描くことのでき
る図形はどういうものか、という問題があります。ここで、定規は直線を引くためだけ
に使い、長さは測れないものとします。
実はこの問題は代数学と密接な関係があり、ガロア理論という理論から以下の定理
が証明されています。
n
2
「N=2 +1 が素数の時、正 N 角形は定規とコンパスだけで作図可能である」
n=0~4 を代入すると、N=3、5、17、257、65537、となり、そのいずれもが素数とな
ります。つまり、正 3 角形、正 5 角形、正 17 角形、正 257 角形、正 65537 角形は、
いずれも定規とコンパスで作図可能ということになります。実際に正 65537 角形を作
図するのは非常に難しいですが、理論的に作図できるということが証明されている、し
かも図形の問題と、数の性質を研究する代数学が関係している、というのが面白いとこ
ろです。一方、詳しくは述べませんが、作図不可能な図形も判別できます。例えば正 7
角形は定規とコンパスでは作図不可能です。
ちなみに正 5 角形くらいなら簡単に作図できますので、作図方法を書いておきます。
1.
直線を引き、同じ半径の円弧を二つ描いて
直交する直線を引きます。直線の交点を O
とします。
O
O を中心に好きな半径の円を描き、水平な線
2.
と円の交点を A、垂直な線と円の交点を B と
M
O
します。A を中心に半径 OA の円を描き、OA
A
の垂直二等分線を引き、OA との交点を M と
します。更に直線 BM を引きます。
B
M を中心として半径 OM の円を描き、直線 BM
3.
A
M
O
との交点を C とします。次に、B を中心とし
て半径 BC の円を描き、最初に描いた円との
C
交点を P および Q とします。
P
Q
B
4.
P と Q それぞれを中心として、半径 PQ の円
S
S
を描き、最初に描いた
T
R
円との交点を R、T
とします。
R
T
後は、各点を
直線で結べば
Q
P
作図完了です。
P
3.分野紹介
Q
幾何学
幾何学というのは、主に図形や立体の性質を研究する分野です。研究対象は、多面体
のような角のあるものから、球のような滑らかなもの、紐のようなもの、グニャグニャ
と変形できるような物体まで様々です。平面や空間の図形だけではなく、4 次元空間や
更に次元の高い空間の立体も研究の対象になります。ここでは、オイラーの多面体定理、
非ユークリッド幾何学、結び目理論、について紹介します。
オイラーの多面体定理
まず、3 次元の立体の性質について少し調べてみましょう。まず、以下の5つの立体
を見てください。
これらの立体は、プラトンの立体、もしくは正多面体と呼ばれている立体で、全ての面
が同一の正多角形で構成され、かつ、どの頂点においても接する面の数が等しいような
立体です。左から、正 4 面体、正 6 面体(立方体)
、正 8 面体、正 12 面体、正 20 面体、
と名前が付いています。
さて、これらの立体について「頂点の数-辺の数+面の数」を計算すると、
正 4 面体
:
4-6+4
= 2
正 6 面体
:
8-12+6
= 2
正 8 面体
:
6-12+8
= 2
正 12 面体
:
20-30+12= 2
正 20 面体
:
12-30+20= 2
となり、全て値は 2 になります。正多面体だけではなく、適当に作った多面体でもこの
値は 2 になります。例えば、右のような立体で
も、16-24+10=2 となります。はたしてこれ
は偶然なのでしょうか?
実はこれは偶然ではなく、この 2 という値は、
オイラー標数というものに関係している、幾何
学では非常に重要な値なのです。ちなみに、穴
が一つ開いている多面体の場合には、この値は 2 ではなく 0 になります。
非ユークリッド幾何学
平面において、直線以外の一点を通り、その直線
に平行な直線が1つしかないような平面の幾何学
はユークリッド幾何学と呼ばれています。中学・高
校で習う幾何学はユークリッド幾何学です。しかし、
そのような平行線が何本も存在するような平面や、
そのような平行線が存在しないような平面上で幾
何学を考えることもできます。そのような幾何学を
非ユークリッド幾何学といいます。例えば球面上の
幾何学を考えると、この上では二本の平行線は必ず交わり、右図のように三角形の内
角の和は 180°より大きくなります。
同じようなことは 3 次元以上の空間でも考えられ、曲がった空間における幾何学を
構成することができます。ただし、空間が「曲がっている」というのを正確に定義す
るには色々と議論が必要です(ここでは詳細は述べません)
。ちなみに、私たちの住ん
でいる宇宙の空間は曲がっていると考えられています。ただ、その曲がり具合は非常
に小さいので、人間が日常の生活をする上では気が付きません。
結び目理論
幾何学では変形できるものも扱います。その一つの例が結び目です。ただし、数学で
扱う結び目は、紐の端と端がくっ付いているようなものです。
さて、以下の二つの結び目は、一方をグニャグニャと変形させるともう一方と同じに
なるので、結び目理論ではこれら
二つは同じものとして扱います。
しかし、下の結び目は、どのように変形しても上の結び目とは同じになりません。そこ
で、二つの結び目があったとして、それが同じであるか
異なるのか判別するにはどうしたら良いのか、結び目を
どのように分類するのか、などが問題になってきます。
そのためには、変形によっても変化しないような量(不
変量)を考える必要があり、実際、様々な不変量が考案
され、それに基づいて分類が行われています。
4.分野紹介
解析学
解析学は、微分や積分などの手法を用いて関数などの性質を研究する分野です。数列
に関する研究や確率に関する研究も解析学に含まれます。ここでは、オイラーの公式、
確率と e、フーリエ級数、について紹介します。
オイラーの公式
大学の数学の最初の方で、テイラー展開というものが出てきます。これを用いると以
下のような式が得られます(最後の「…」は無限に足していくことを意味します)
。
sin x
=
x3
x5
x7
x9
x11
x13
x - 3 ! + 5 ! - 7 ! + 9 ! - 11 ! + 13 ! - …
cos x
=
x4
x6
x8
x10
x12
x2
1 - 2 ! + 4 ! - 6 ! + 8 ! - 10 ! + 12 ! - …
ex
=
x2
x3
x4
x5
x6
x7
1 + x + 2! + 3! + 4! + 5! + 6! + 7! + …
綺麗な式だと思いませんか?
例えば一番上の式に x=2 を代入してみると、左辺は
sin 2 =0.909297426…、となりますし、一方で右辺を 13 次の項まで足すと
25
27
29
211
213
5529506
23
2 - 3 ! + 5 ! - 7 ! + 9 ! - 11 ! + 13 ! = 6081075 = 0.909297451…
となり、確かに成り立っているらしいことがわかります(少し値がずれていますが、13
次の項までではなく、無限に足せば等しくなります)
。
もともと三角関数や指数関数は実数の範囲で考えられてきたものですが(高校でもそ
う習います)、この展開式を用いると、これらの関数の複素数における値を考えること
ができます。実際、上の展開式より
eix
=
cos x + i sin x
という関係式が成立します。この関係式はオイラーの公式と呼ばれ、数学上で最も重要
で美しい公式であると言う人もいます。オイラーの公式に x=π を代入すると
eiπ + 1 =
0
が得られます。この式はオイラーの等式と呼ばれています。
確率と e
当たる確率が1%のクジがあるとします。何回くらい引けばどれくらい当たるでしょ
うか?
確率1%ですから、直感的には 100 回引けば一回くらい当たりそうです。し
かし 100 回引いても当たりが出ない可能性もあります。そこで、確率 n 分の一のクジ
を n 回引いて、少なくとも一回当たりが出る確率を調べてみます。この確率を求めるに
は、一回も当たりの出ない確率を求めて1から引けば良いので、
1 -
 1 - 1 
n 

n
で計算できます。n が大きくなると、この値は 1-e-1 = 0.632120558… に近付くこ
とが知られています。n=10 の時には既に 0.651321559…という値ですから、近い値に
なっています。つまり、当たる確率が1%のクジを 100 回引いた時に一回でも当たる
確率は約 6 割強であるということがわかります。
このように、e は確率の様々な所に顔を出します。もう一つ例を出しましょう。n 人
でプレゼント交換をするとします。n 人がプレゼントを持ち寄り、ランダムに配ったと
き、全ての人が他の人のプレゼントを受け取るような確率はどれくらいでしょうか?
計算してみると、n=1 の時は 0、n=2 の時は 1/2、n=3 の時は 1/3、n=4 の時は 3/8、に
なることがわかります。実はこの確率は、n が大きくなると e-1 = 0.367879441… に
近付きます。
フーリエ級数
1
周期的な関数の多くは三角関数の和で
表されるということが知られています。例
 2

0
えば、右のような凸凹した関数(矩形波)

2
1
は、三角関数を用いて
4 
sin 3x
sin 5x
sin 7x
sin 9x
sin 11x

sin x +
+
+
+
+
+ …
3
5
7
9
11
π 

と表すことができます(「…」は無限に足
1
していくことを意味します)。このような
級数をフーリエ級数といいます。右の図は、
sin 7x の項まで足した時の様子です。無限
 2

0
1
に足せば上のようなグラフになります。
角のある関数が、滑らかな関数の和で表せるというのは面白いですね。

2
5.卒業後の進路・就職実績
大学で数学なんか勉強していたら就職先が無いよ、と言われたことのある人もいる
かもしれません。昔はどうだったのか知りませんが、数学の重要性が広く認識されてい
る現在では全くそんなことはありません。数学を学んだ学生は、物事の本質を見極め、
理論立てた思考のできる人材だというので、企業からも評判が良いのです。
それでは実際に、卒業生の進路を見ていくことにしましょう。数物科学類数学コー
スは出来たばかりですのでまだ卒業生がいませんが、基本的には旧理学部数学科のカリ
キュラムを継承していますので、過去5年間の理学部数学科の卒業生について見ていく
ことにします。
過去5年間の理学部数学科卒業生の進路
進路
大学院修士課程へ進学
内訳
45.4%
金沢大学の大学院
他大学の大学院
40.4%
就職
8.5%
民間企業へ
22.0%
教員
14.9%
3.6%
公務員
就職浪人・進学浪人
36.9%
14.2%
その他
表にある通り、大学院へ進学して勉強を続ける人と就職する人に二分されています。
大学で教員免許を取る人も多く、教員になる人が全体の 15%ほどいます。どちらかと
いうと高校の数学の先生になる人が多いようです。
次に大学院へ進学した人の進路を見てみましょう。
過去5年間の理学部数学科修士課程卒業生の進路
進路
大学院博士課程へ進学
就職
不明
内訳
9.6%
75.0%
金沢大学の大学院
9.6%
民間企業へ
46.0%
教員
29.0%
15.4%
この表を見ると、修士課程を卒業した人は、ほとんど就職の道を選んでいることが
わかります。就職先は民間企業と教員が主です。一部の人は大学院の博士課程に進み、
より専門的な数学を学ぶと共に研究を行います。
以下は、数学科卒業生および数学科修士課程卒業生の、過去5年間の就職先です(卒
業後の調査ですので把握し切れていない分も多く、以下のリストはあくまで一部です)
。
技術系や金融系が目立ちます。
YKK、日立システムアンドサービス、富士通関西中部ネットテック、みずほ情報総研、
八十二システム開発、ソリマチ株式会社、伊藤忠テクノソリューションズ、松浦電弘社、
BSN アイネット、金沢ソフトウェア、ソラン北陸、ニイウス株式会社、日平トヤマ、
株式会社リョーケン、日本エルディアイ、アシックス、クロダハウス、名古屋製酪、
明光義塾、ライセンスアカデミー、三井住友海上火災、北國銀行、滋賀銀行、三谷産業、
高岡信用金庫、しずおか信用金庫、三井トラストフィナンシャルグループ、北陸銀行、
飛騨信用金庫、JA 全農にいがた、ジェイテクト、アクトインフォメーションサービス、
ダイヤモンド・ダイニング、シーエーシー、シーテック、ホロンシステム、オリックス、
富士通FIP、金大セミナー、チノー、東京ドロウィング、トランスコスモスCRM、
日立製作所、
サンテック、アベブ、コマニ、デンソーテクノ、カインズホーム、
富士通北陸システムズ、ひまわりホールディングス、静岡県警、白山市役所、福井県警、
住宅金融支援機構、独立行政法人国立病院機構、
(順不同)
6.終わりに
数学コースや数学という学問についてイメージが湧いたでしょうか?
少しでも数
学を身近に感じてもらえれば私たちも嬉しく思います。皆さんの中で、もし、数学が面
白そうだな、と思った人がいましたら、是非、金沢大学数物科学類を受けて合格し、数
学コースに来て下さい。
7.おまけ
クイズです。平面図形に関する以下の議論はどこが間違っているでしょうか?
線分 AB の両端に線分 AC と BD を立てました。
C
D
A
B
ここで、AC と BD の長さは等しいものとします。
さて、AC は∠CAB が 90°になるように立てまし
たが、BD は少し左に傾いてしまい、
∠DBA が 89°
になってしまいました。
P
AB の中点を M とします。また C と D を結び、
CD の中点を N とします。このとき、BD が少し
左に傾いているため、N は M よりも少し左側にあ
C
A
N
M
D
ります。また、CD は少し右側が下がっています。
よって、AB の垂直二等分線と CD の垂直二等分線
B
は上の方で交わります。その交点を P とします。
P から A、B、C、D、にそれぞれ線を引きます。
P
さて、P は AB の垂直二等分線上にあるので、
AP=BP が成り立ちます。また、P は CD の垂直
二等分線上にあるので、CP=DP も成り立ちます。
C
D
A
B
最初の仮定より AC と BD は等しいので、結局、
△ACP と△BDP は合同になります(三辺相当)
。
よって、∠CAP と∠DBP は等しくなります。
さて、△ABP は二等辺三角形なので、∠BAP=∠ABP も成立します。よって、
∠CAB=∠CAP+∠BAP=∠DBP+∠ABP=∠DBA が成立します。
最初の仮定より∠CAB は 90°、∠DBA は 89°でしたので、結局 90°と 89°が等し
いということが証明されたことになります。もちろんそんなことは有り得ませんから、
どこかに間違いがあるはずです。
考えてみてください。